特許第6644311号(P6644311)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6644311家畜の体調監視装置、情報処理装置、家畜の体調監視方法及び家畜の体調監視プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6644311
(24)【登録日】2020年1月10日
(45)【発行日】2020年2月12日
(54)【発明の名称】家畜の体調監視装置、情報処理装置、家畜の体調監視方法及び家畜の体調監視プログラム
(51)【国際特許分類】
   A01K 67/00 20060101AFI20200130BHJP
【FI】
   A01K67/00 D
【請求項の数】14
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-218749(P2015-218749)
(22)【出願日】2015年11月6日
(65)【公開番号】特開2017-85941(P2017-85941A)
(43)【公開日】2017年5月25日
【審査請求日】2017年12月21日
【審判番号】不服2018-13523(P2018-13523/J1)
【審判請求日】2018年10月10日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】501203344
【氏名又は名称】国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
(73)【特許権者】
【識別番号】000227836
【氏名又は名称】日本アビオニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 亨
(72)【発明者】
【氏名】吉永 有一
(72)【発明者】
【氏名】宮田 正文
【合議体】
【審判長】 森次 顕
【審判官】 小林 俊久
【審判官】 住田 秀弘
(56)【参考文献】
【文献】 特表2005−515872(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0015945(US,A1)
【文献】 特開昭57−163418(JP,A)
【文献】 特開2006−246309(JP,A)
【文献】 特開2002−185908(JP,A)
【文献】 特開2002−153162(JP,A)
【文献】 前田龍太郎,「社会課題対応常時・継続モニタリングシステムの開発(先導研究)の成果」農業分野 スマート農業・畜産システムの開発,NMEMS技術研究機構,2014年4月24日
【文献】 HOFFMANN Gundla,SCHMIDT Mariana,AMMON Christian,ROSE−MEIERHOFER Sandra,BURFEIND Onno,HEUWIESER Wolfgang,BERG Werner,Monitoring the body tenperature of cows and calves using video recordings from an infrared thermography camera,Vet Res Commun,2013年6月,Vol.37,Page.91−99
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 29/00
A01K 67/00
A61B 5/00
JSTPlus/JST7580/JSTChina(JDream3)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
赤外線サーモグラフィーと、家畜の頭部側面を測定することができる状態に家畜の動きを制御する家畜制御装置と、前記赤外線サーモグラフィーにより取得される温度データに基づいて家畜の体調判定を行う情報処理部とを有し、
前記情報処理部は、家畜の頭部側面の表面温度を前記赤外線サーモグラフィーにより測定する処理を行う温度測定処理部と、
前記温度測定処理部により測定された前記頭部側面の表面温度より体調管理温度を検出する温度検出処理部と、
前記体調管理温度と、対象となる家畜の体調を判定する基準となる体調判定基準温度であって、体調の良・不良の判定において一定期間正常であるとみなされた場合の前記体調管理温度の前記一定期間の平均値に基づいて更新される体調判定基準温度と、の比較により、体調の良・不良を判定する体調管理部と、
前記体調判定基準温度を、環境温度に基づいて補正する処理を行う体調判定基準温度補正処理部と、
を有することを特徴とする家畜の体調監視装置。
【請求項2】
前記家畜制御装置は、
家畜の動きを制御する家畜収容部内に給餌装置又は給水装置又は搾乳装置を設けた請求項に記載の家畜の体調監視装置。
【請求項3】
前記家畜収容部に家畜が入ったことを検出する認証部を有し、
前記情報処理部は、前記認証部により前記家畜収容部に家畜が入ったことを検出すると、家畜の頭部側面を前記赤外線サーモグラフィーにより測定する処理を開始する請求項に記載の家畜の体調監視装置。
【請求項4】
前記家畜が給餌又は給水又は搾乳されていることを検出するセンサを有する請求項に記載の家畜の体調監視装置。
【請求項5】
前記家畜収容部への家畜の接近と後退とを検出し、検出している間のタイミングにおいて家畜が前記家畜収容部内で動きが制御されていると判定する請求項2から4までのいずれか1項に記載の家畜の体調監視装置。
【請求項6】
家畜は哺乳される家畜であり、
前記家畜制御装置は、
哺乳により家畜の動きを制御する家畜収容部内に設けられた哺乳装置を含む
請求項に記載の家畜の体調監視装置。
【請求項7】
前記哺乳装置は、
粉ミルク貯蔵部と、粉ミルクを溶かしてミルクを作成するミルク作成部と、前記ミルク作成部で作成したミルクを、家畜収容部に入った家畜に提供する哺乳部とを有する
請求項に記載の家畜の体調監視装置。
【請求項8】
前記温度検出処理部は、
一時的に蓄積された前記赤外線サーモグラフィーによる熱画像群の中から、前記各熱画像のコントラストを測定し、測定したコントラストに基づいて前記熱画像を選別する画像選別処理部を有することを特徴とする請求項1からまでのいずれか1項に記載の家畜の体調監視装置。
【請求項9】
前記温度検出処理部は、
前記赤外線サーモグラフィーによる各熱画像の中の一定範囲内の画素の中から、最高温度を示す画素の温度を抽出する処理を行うことを特徴とする請求項1からまでのいずれか1項に記載の家畜の体調監視装置。
【請求項10】
前記温度検出処理部は、
前記家畜制御装置が家畜の動きを制御している間の最高温度を平均化する処理を行うことを特徴とする請求項1からまでのいずれか1項に記載の家畜の体調監視装置。
【請求項11】
さらに、
前記家畜の個体識別を行う認証部を有し、
前記認証部は、家畜に付したタグ、又は、暗視カメラによる耳標の読み取りにより個体識別を行うことを特徴とする請求項1から10までのいずれか1項に記載の家畜の体調監視装置。
【請求項12】
さらに、
前記家畜を検出する家畜検出処理部を有し、
前記家畜検出処理部は、所定の場所への家畜の侵入を検出する、又は、所定の場所への家畜の接近、後退を検出することを特徴とする請求項1から11までのいずれか1項に記載の家畜の体調監視装置。
【請求項13】
監視対象となる家畜を検出する家畜検出処理ステップと、
家畜の頭部側面を測定することができる状態に家畜の動きを制御する家畜制御ステップと、
赤外線サーモグラフィーにより取得される温度データに基づいて家畜の体調判定を行う情報処理ステップと、を有し、
前記情報処理ステップは、家畜の頭部側面の表面温度を前記赤外線サーモグラフィーにより測定する処理を行う温度測定処理ステップと、
前記温度測定処理ステップにより測定された前記頭部側面の表面温度より体調管理温度を検出する温度検出処理ステップと、
前記体調管理温度と、対象となる家畜の体調を判定する基準となる体調判定基準温度であって、体調の良・不良の判定において一定期間正常であるとみなされた場合の前記体調管理温度の前記一定期間の平均値に基づいて更新される体調判定基準温度と、の比較により、体調の良・不良を判定する体調管理ステップと、
前記体調判定基準温度を、環境温度に基づいて補正する処理を行う体調判定基準温度補正処理ステップと、
を有することを特徴とする家畜の体調監視方法。
【請求項14】
コンピュータに、請求項13に記載の家畜の体調監視方法を実行させるための家畜の体調監視プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家畜の体調管理等を行うための監視技術に関する。
【背景技術】
【0002】
動物の体調管理を行うための装置としては、特許文献1、2等に開示の技術がある。特許文献1は、動物をセンシングして動物の体調等を推定する。特許文献2は、測定対象の眼からの熱放射を測定し、動物の核心温度を推定するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−253075号公報
【特許文献2】特表2005−515872号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これまで家畜の体調管理を行うためには、畜主らが家畜の動きを制御し、直腸体温計を用いて一頭毎に直腸温(核心温度)を測定するのが一般的であり、そのために多大な労力と時間がかかるとともに、家畜が暴れて怪我をする等労働安全上にも問題があった。また、家畜の体調管理を行うための他の指標として、眼の温度を測定することが有効であることがわかってきたが、直腸温測定と同様に、畜主らが家畜を一頭毎に測定する必要があり、本法を用いた際においても労力と時間を要する。
【0005】
眼の温度を指標とした体調管理を行うには、まず平常時の眼の温度を知る必要があるため、一定期間にわたって継続的に温度測定する必要がある。また、平常時の眼の温度の確からしさを保証するためには、精度よく温度測定を行う必要がある。従って、眼の温度を安定して経時的に測定しなければならない。例えば、家畜が赤外線センサの時定数より早く動く場合には、正確な温度測定を行うことが困難となり、温度の確からしさが低下する。
【0006】
上記特許文献2では、測定対象の眼の温度を赤外線により測定し、その個体の核心温度を推定する技術が開示されている。しかしながら、自動的且つ経時的に眼の温度を測定する技術や方法については一切開示されていない。また、特許文献1においても、装置が自動的且つ経時的に眼の温度を測定する技術や方法については一切開示されていない。
【0007】
そこで、本発明は、家畜の眼の温度を自動的且つ経時的に測定して、それらの温度を指標にして、家畜の体調管理を精度よく行うための監視技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一観点によれば、赤外線サーモグラフィーと、家畜の動きを制御する家畜制御装置と、前記赤外線サーモグラフィーにより取得される温度データに基づいて家畜の体調判定を行う情報処理部と、を有する家畜の体調監視装置が提供される。
上記の構成により、家畜の体調を安定して自動的且つ経時的に監視することができる。
【0009】
前記情報処理部は、家畜の頭部側面の表面温度を前記赤外線サーモグラフィーにより測定する処理を行う温度測定処理部と、前記温度測定処理部により測定された前記頭部側面の表面温度より体調管理温度を検出する温度検出処理部と、を有することを特徴とする。
【0010】
前記温度検出処理部は、一時的に蓄積された前記赤外線サーモグラフィーによる熱画像群の中から、前記各熱画像のコントラストを測定し、測定したコントラストに基づいて前記熱画像を選別する画像選別処理部を有することを特徴とする。
前記温度検出処理部は、前記画像選別処理部により選別された前記熱画像に対して、前期熱画像間の加算処理を行うことを特徴とする。
前記温度検出処理部は、前記赤外線サーモグラフィーによる各熱画像の中の一定範囲内の画素の中から、最高温度を示す画素の温度を抽出する処理を行うことを特徴とする。
【0011】
さらに、一定期間測定された前記体調管理温度に基づいて、対象となる家畜の体調を判定する基準となる体調判定基準温度を算出し、前記体調管理温度と前記体調判定基準温度との比較により、体調の良・不良を判定する体調管理部を有することを特徴とする。
さらに、前記体調管理温度を、環境温度に基づいて補正する処理を行う第1の補正処理部を有することを特徴とする。
さらに、前記体調判定基準温度を、環境温度に基づいて補正する処理を行う第2の補正処理部を有することを特徴とする。
さらに、前記家畜の個体識別を行う認証部を有し、前記認証部は、家畜に付したタグ、又は、暗視カメラによる耳標の読み取りにより個体識別を行うことを特徴とする。
さらに、前記家畜を検出する家畜検出処理部を有し、前記家畜検出処理部は、所定の場所への家畜の侵入を検出する、又は、所定の場所への家畜の接近、後退を検出することを特徴とする。
【0012】
本発明は、赤外線サーモグラフィーと、家畜の動きを制御する家畜制御装置と、前記赤外線サーモグラフィーにより取得される温度データに基づいて家畜の体調判定を行う情報処理部と、を有する家畜の体調監視用の情報処理装置である。
【0013】
本発明の他の観点によれば、監視対象となる家畜を検出する家畜検出処理ステップと、家畜の動きを制御する家畜制御ステップと、赤外線サーモグラフィーにより取得される温度データに基づいて家畜の体調判定を行う情報処理ステップと、を有することを特徴とする家畜の体調監視方法が提供される。
【0014】
本発明は、コンピュータに、上記に記載の家畜の体調監視方法を実行させるためのプログラムであっても良く、当該プログラムを記録するコンピュータ読み取り可能な記録媒体であっても良い。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、家畜の体調管理のための監視を自動的に行うことができ、畜主らの労力と測定のためにかかる時間を大幅に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1A】本発明の第1の実施の形態による家畜の体調監視装置の一構成例を示す機能ブロック図である。
図1B】情報処理部(情報処理装置)の一構成例を示す機能ブロック図である。
図2】子牛の動きを制御することができる哺乳装置の一構成例を示す概略図である。
図3】本発明の実施の形態による家畜の体調を監視する処理の流れを示すフローチャート図である。
図4】熱画像と、その中から最高温度を示す画素の温度を抽出する対象領域を示す測定枠の一例を示す図である。
図5】実際に農場で飼育されている子牛群を対象に家畜の体調監視装置の運用試験を実施した結果(経時的変化)の一例を示す図である。
図6】ウイルス感染に伴う子牛の直腸温(図6(a))と赤外線サーモグラフィーによる体調管理温度(図6(b))のそれぞれを経時的に測定し、比較した図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明を行う。
家畜(被測定体)の体調管理を行うためには、まず、家畜の体温を監視することが重要である。家畜の体温は一般的に直腸温で測定するが、本実施の形態では、直腸温と良好に対応する家畜の眼の温度を測定する。また、主に結膜を対象とすることもできる。
以下では、家畜として、牛(子牛)を例にして説明するが、豚、羊、山羊等、監視対象となる家畜の種類は限定されるものではない。
【0018】
(第1の実施の形態)
図1Aは、本発明の第1の実施の形態による家畜の体調監視装置の一構成例を示す機能ブロック図である。家畜の体調監視装置は、家畜の眼の温度を自動で測定し、体調を例えば遠隔から監視するための装置である。図1Aに示すように、家畜の体調監視装置Aは、例えば、畜舎内に設けられた赤外線サーモグラフィー1と、暗視カメラ2と、家畜の個体識別を行うための認証部3と、畜舎内の温度や外気温等の環境温度を測定する温度計4等のセンサ部と、これらの各機能部1〜4までと、インターフェイス部8を介して有線或いは無線等で接続され、装置全体を制御する、例えばパーソナルコンピュータ等の装置制御部5と、を有している。家畜の体調監視装置Aは、さらに、家畜の動きを制御する家畜制御装置15を有している。
【0019】
装置制御部5は、例えば、監視結果等を監視センタ等の外部に出力する信号出力部7と、以下に説明する情報処理により家畜の体調判定を行う情報処理部11と、を有している。
尚、装置制御部5は畜舎外に設置されていても良い。
【0020】
図1Bは、情報処理部(情報処理装置)11の一構成例を示す機能ブロック図である。図1Bに示すように、情報処理部11は、例えば、認証部3からの信号等に基づいて家畜の検出と個体識別を行う家畜検出処理部11−1と、赤外線サーモグラフィー1からの信号等に基づいて家畜の頭部側面の表面温度を二次元温度分布(熱画像)で測定する処理を行う温度測定処理部11−2と、温度測定処理部11−2により測定された家畜の表面温度から、体調管理温度を検出する処理を行う温度検出処理部11−3と、体調管理温度の経時的変化に基づいて家畜の体調を判定する体調管理部11−4と、を有する。温度検出処理部11−3は、体調管理温度を経時的に測定する。体調管理部11−4は、体調管理温度の経時的変化により、家畜の体調判定の基準となる体調判定基準温度を算出し、体調判定基準温度と測定された体調管理温度に基づいて体調の良・不良を判定する機能を有する。
【0021】
尚、体調管理部11−4により体調不良と判定された場合には、赤外線サーモグラフィー1等の遠隔測定法とは異なる測定方法、例えば直腸温の測定等により2次診断を行っても良い。
【0022】
尚、家畜検出処理部11−1は、後述するように、家畜収容部27(図2)内への家畜の侵入を検出するようにしても良いし、又は、家畜収容部27への家畜の接近、後退を検出するようにしても良い。
【0023】
尚、図1Bでは、各処理部11−1から11−4が、情報処理部11内に設けられている例を示したが、これらの各処理部11−1から11−4のいずれかが、情報処理部11外に設けられていても良い。
【0024】
温度検出処理部11−3は、熱画像のコントラストに基づいてピンボケでない画像を選別する機能、熱画像の全画素の中から最高温度を検出する機能、最高温度をある一定期間平均化する機能、例えば家畜制御装置15が家畜の動きを制御している間の最高温度を平均化する機能のうちの少なくとも一つの機能を有している。
【0025】
家畜は自由に動き回るため、固定された赤外線サーモグラフィーにより眼の温度を測定するためには、家畜を所定の場所(以下では、家畜収容部で例示する。)にとどめ、動きを制御する必要がある。
【0026】
図2に、監視対象となる家畜の動きを制御する家畜制御装置15の一例として、哺乳により子牛の動きを制御することができる哺乳装置の概略図を示す。図2に示すように、家畜制御装置15は、例えば、粉ミルク貯蔵部21と、粉ミルクをお湯で溶かしてミルクを作成するミルク作成部23と、ミルク作成部23で作成したミルクを、ホース25を介して家畜収容部27に入った子牛に提供する哺乳部26とを有している。
【0027】
家畜収容部27に子牛が入ったことを、認証部3(RFIDセンサ或いは暗視カメラ2等を用いることができる)等により検出すると、子牛の頭部側面を赤外線サーモグラフィー1により測定する処理が開始されるように構成されている。
【0028】
子牛が家畜収容部27内で哺乳していることは、タッチセンサ、ミルクを飲むことを検出するセンサ等により検出することもできる。或いは、子牛の家畜収容部27への接近と後退とを検出し、その間のタイミングにおいて子牛が家畜収容部27内で哺乳していると判定するようにしても良い。このような構成により、子牛の動きが制御された状態で子牛の頭部側面を安定して測定することができる。
【0029】
家畜制御装置15の他の例としては、ミルキングパーラー等の搾乳装置、給装置、給水装置等を用いても良い。
【0030】
次に、情報処理部11を中心とした情報処理の流れについて説明する。
図3は、本実施の形態による家畜の体調を自動的に監視する処理の流れを示すフローチャート図である。まず、ステップS1(Start)において、処理が開始され、ステップS2において、家畜検出処理部11−1が家畜を検出する処理を行い、家畜が検出されたか否かを判定する。ステップS2において家畜が検出されると(Yes)、ステップS3に進み、温度測定処理部11−2が赤外線サーモグラフィー1により家畜の頭部側面の熱画像を測定する処理を行う。赤外線サーモグラフィー1より出力された熱画像は、装置制御部5内に一時的に蓄積される。この測定処理は、ステップS4において測定終了条件が満たされる(家畜が検出されなくなる)まで繰り返され、一連の熱画像群が蓄積される。ステップS4において測定終了条件が満たされると(Yes)、赤外線サーモグラフィー1による測定を終了し、ステップS5で、温度検出処理部11−3が、蓄積された熱画像群より、体調管理温度Taを検出する処理を行う。
【0031】
次いで、ステップS6において、体調管理部11−4が、体調判定基準温度Tbに基づいて、以下の式による判定処理を行い、家畜の体調が良であるか、不良であるかを判定する。
a>Tb (1)
【0032】
ステップS6において、判定結果がNoであれば、その家畜は正常とみなされ、ステップS7において、体調判定基準温度Tbを更新する。体調判定基準温度Tbの更新により、処理が終了する(ステップS8)。体調判定基準温度Tbの更新値は、例えば、一定期間正常とみなされた時の体調管理温度Taの移動平均により求めることができる。個体毎に正常時の眼の温度がばらつくため、体調判定基準温度Tbを更新することにより、個体毎のバラつきの影響を補正することができる。
【0033】
ステップS6において、判定結果がYesの場合には、家畜が発熱しており体調不良である可能性が高いと判断され、ステップS9において、信号出力部7より畜主らに対し通報等を行う。通報には、信号出力部7に有線もしくは無線で接続された、警報灯や携帯端末等を用いることができる。これらにより、処理が終了する(ステップS10:End)。
【0034】
以上の情報処理により、家畜制御装置15により制御されている間における家畜の体調を自動的且つ精度よく監視することができる。
尚、通報を受けた畜主らは、例えば、直腸温の測定を含む2次診断を行ってもよい。
【0035】
次に、ステップS5の体調管理温度検出処理の一例について説明する。
ステップS3においてメモリ等に一時的に蓄積された熱画像群の中から、家畜が赤外線センサの時定数より速く動く(顔を振る等)ことによって生じたピンボケ画像を選別するためには、各熱画像のコントラストを測定し、測定したコントラストに基づき画像選別処理部による処理、すなわち、画像コントラスト判定処理を行う。画像コントラストが設定した基準値に満たない場合は、画像がピンボケであると判定され、その画像は熱画像群の中から除外される。
【0036】
次に、各熱画像より眼の温度を検出するためには、各熱画像について、最高温度検出処理を行う。最高温度検出処理は、熱画像の中の一定範囲内(例えば、図4に示すような眼周辺に設定された測定枠31内の領域)の画素の中から、最高温度を示す画素の温度を抽出する処理である。例えば、N枚の熱画像データが取得された場合、N個の最高温度Tmax_m(m=1〜N)が抽出される。
【0037】
次に、以下の式によりTmax_mの平均値を求め、これが体調管理温度Taとなる。
a=Σ(Tmax_m)/N (2)
体調管理温度Taは、Tmax_mを平均化することで、時間軸におけるバラつきによる誤差を抑えることができる。体調管理温度Taを求めた後、一時的に蓄積された熱画像群は破棄され、体調管理温度Taがメモリ等に保存される。
【0038】
以上のように、本実施の形態によれば、牛等の家畜の体調を精度よく監視することができる。
【0039】
体調管理温度として採用する眼の温度は、測定面積が非常に狭いため、サーモグラフィーの最小検知寸法が十分に小さく(例えば、1.7mm×1.7mm)なるように設置する必要がある。最小検知寸法は、サーモグラフィーの性能と測定距離によって決まるが、測定距離を近づけられない場合は、高精細なサーモグラフィーを用いることにより解決することができる。
【0040】
さらに、体調管理温度のみによらず、複数の測定情報に基づいて判定を行うようにしても良い。例えば、体調管理温度と哺乳量とのそれぞれの基準値からのずれ量の2つの測定情報に基づいて体調の良・不良を判定することもできる。
【0041】
(第2の実施の形態)
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。本実施の形態は、周囲の環境温度を考慮した体調管理温度の補正処理を含むものである。すなわち、環境温度に基づいて補正した体調管理温度を求める第1の補正処理部11aを設けたものである。図3のステップS5において体調管理温度を検出する際に、温度計4で環境温度Tambを測定する。そして、例えば、以下の式による補正を行う。
=f(T,Tamb) (3)
ここで、Tは補正後の体調管理温度、Tは補正前の体調管理温度、Tambは環境温度、fは環境温度による補正関数である。
【0042】
補正関数fは、例えば、以下のように求めることができる。
1)家畜群に対して環境温度と体調管理温度の相関関係を示すデータベースを構築し、これらのデータをもとに家畜群に適用できる補正関数を算出し、用いることができる。この場合には、補正処理が簡略化される。
2) 1)とは異なり、家畜個体毎に環境温度と体調管理温度の相関関係を示すデータベースを構築し、これらのデータをもとに家畜個体毎に異なる補正関数を算出し、適用することもできる。この場合には、補正精度を向上することができる。
【0043】
本実施の形態によれば、周囲の環境温度の影響を抑制して、体調管理温度を精度よく求めることができる。
【0044】
(第3の実施の形態)
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。本実施の形態は、周囲の環境温度を考慮した体調判定基準温度Tbの補正処理を含むものである。すなわち、環境温度に基づいて補正した体調判定基準温度Tbを求める第2の補正処理部11bを設けたものである。図3のステップS7において体調判定基準温度Tbを更新する際に、温度計4で環境温度Tambを測定する。そして、例えば、以下の式による補正を行う。
=f(Tb,Tamb) (4)
ここで、Tdは補正後の体調判定基準温度、Tbは補正前の体調判定基準温度、Tambは環境温度、f2は環境温度による補正関数である。
【0045】
補正関数f2は、例えば、以下のように求めることができる。
1)家畜群に対して環境温度と体調判定基準温度との相関関係を示すデータベースを構築し、これらのデータをもとに家畜群に適用できる補正関数を算出し、用いることができる。この場合には、補正処理が簡略化される。
2) 1)と異なり、家畜個体毎に環境温度と体調判定基準温度との相関関係を示すデータベースを構築し、これらのデータをもとに家畜個体毎に異なる補正関数を算出し、適用することもできる。この場合には、補正精度を向上することができる。
【0046】
本実施の形態によれば、周囲の環境温度の影響を抑制して、体調判定基準温度を精度よく求めることができる。
【0047】
(第4の実施の形態)
図1Aに示す認証部3について説明する。認証部3は、家畜の個体識別を行う。認証部3は、例えば、家畜個体毎にRFID(タグ)を取り付けて、リーダにより読み取る方法、又は、暗視カメラにより耳標を読み取る方法等を用いることができる。
【0048】
(実施例1)
以下において、上記の実施の形態による監視装置を用いて、自動で子牛の体調監視を行った結果について説明する。
【0049】
図5は、実際に農場で飼育されている子牛群を対象に本装置の運用試験を実施した結果の一例を示す図である。図5では、個体番号(90398)の牛についての、監視開始から5日間にわたる赤外線サーモグラフィーによる頭部側面の測定結果を示すが、撮影開始ならびに終了の自動化、体調管理温度(図における「+」マーク部近傍に記載の数字)の経時的且つ連続的測定、暗視カメラによる個体識別、撮影時の飼育環境温度の測定、いずれにおいても長期間にわたって安定的に動作・測定できることを確認した。これに伴い、個体毎の自動的且つ経時的な体調監視が可能であることを確認した。
【0050】
(実施例2)
図6は、パラインフルエンザウイルス感染子牛を対象に、直腸温の経時的変化(図6(a))と、赤外線サーモグラフィーによる体調管理温度の経時的変化(図6(b))のそれぞれを測定し、比較した図である。縦軸は温度、横軸は、感染後経過日数(dpi)である。両者の測定結果を解析したところ、図6に示すように、感染子牛、コントロール(非感染)子牛共に、直腸温と体調管理温度とは、良好な対応関係にあることがわかった。また、感染子牛1(2)および感染子牛2(3)はそれぞれ7dpi、8dpiにおいて、直腸温、体調管理温度共にそれまでの経過とは異なる高温値を示した。すなわち、それぞれの個体はこれらの時点においてウイルス感染に伴い発熱していたことを表している。
【0051】
以上のように、本実施の形態によれば、家畜の体調を自動的且つ経時的に監視することが可能となり、発熱個体の早期発見、畜主らの労力や時間の低減ならびに労働安全上の著しい改善が可能となる。
従って、家畜の体調管理のための監視を簡便且つ効率よく行えるという利点を有する。
【0052】
上記の処理および制御は、CPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)によるソフトウェア処理、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)によるハードウェア処理によって実現することができる。
【0053】
また、上記の実施の形態において、添付図面に図示されている構成等については、これらに限定されるものではなく、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更することが可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。
【0054】
また、本発明の各構成要素は、任意に取捨選択することができ、取捨選択した構成を具備する発明も本発明に含まれるものである。
【0055】
また、本実施の形態で説明した機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより各部の処理を行ってもよい。尚、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。
【0056】
また、「コンピュータシステム」は、WWWシステムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(或いは表示環境)も含むものとする。
【0057】
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。また前記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであっても良い。機能の少なくとも一部は、集積回路等のハードウェアで実現しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、家畜の体調監視装置として幅広く利用可能である。
【符号の説明】
【0059】
A…家畜の体調監視装置、1…赤外線サーモグラフィー、2…暗視カメラ、3…認証部、4…温度計(センサ部)、5…装置制御部、7…信号出力部、8…インターフェイス部、11…情報処理部(情報処理装置)、11−1…家畜検出処理部、11−2…温度測定処理部、11−3…温度検出処理部、11−4…体調管理部、11a…第1の補正処理部、11b…第2の補正処理部、15…家畜制御装置、21…粉ミルク貯蔵部、23…ミルク作成部、25…ホース、26…哺乳部、27…家畜収容部、31…測定枠。
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6