【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成26年度、文部科学省、科学技術試験研究委託事業「次世代がん研究推進のためのシーズ育成支援基盤」(有望な創薬シーズの効果的な導出に向けたDDS技術支援)、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願;平成29年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、研究成果展開事業 センター・オブ・イノベーション(COI)プログラム「スマートライフケア社会への変革を先導するものづくりオープンイノベーション拠点」、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願;平成29年度、国立研究開発法人日本医療研究開発機構
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
組成物中における前記ブロックコポリマー由来のアミノ基のモル濃度と前記核酸由来のリン酸基のモル濃度との比(N/P比)が、1〜20である、請求項7に記載の核酸送達用組成物。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[A.ユニット型ポリイオンコンプレックス]
本発明によれば、ポリエチレングリコールセグメントとカチオン性ポリアミノ酸セグメントとを有する特定数のブロックコポリマーと、特定数の核酸と、から構成されるユニット型ポリイオンコンプレックスであって、該ユニット型ポリイオンコンプレックスにおけるブロックコポリマーのカチオン性ポリアミノ酸セグメントの側鎖由来の正の電荷量の合計が、核酸由来の負の電荷量の合計で相殺されていないユニット型ポリイオンコンプレックス(結果として、電気的に中和されていないユニット型ポリイオンコンプレックス)が提供される。以下、本発明の実施形態について説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。なお、本発明に用いられるブロックコポリマーおよび核酸はそれぞれ、重合反応物として得られる場合に、ある程度の多分散性を示し得る。よって、本明細書において、ブロックコポリマーの特性(分子量、重合度、電荷等)および核酸の特性(塩基長、電荷等)について言及する際は、特段の記載がない限り、多分散性を示す重合反応物全体の平均について言及するものとする。したがって、例えば、ブロックコポリマーの電荷量は、実際に測定して得られるカチオン性アミノ酸残基の重合度を平均重合度とし、該平均重合度に基づいて算出される。また例えば、ポリエチレングリコールセグメントの分子量としては、実際に測定して得られる平均分子量(例えば、数平均分子量)が適用され得る。
[A−1.第1の実施形態]
[A−1−1.ユニット型ポリイオンコンプレックスの全体構成]
図1(a)〜(d)は、本発明の第1の実施形態におけるuPICの一例を説明する概略図である。具体的には、
図1(a)は、本発明で使用され得るブロックコポリマーの概略図であり、
図1(b)は、本発明で使用され得る核酸の概略図であり、
図1(c)は、
図1(a)のブロックコポリマーと
図1(b)の核酸とから構成されるuPICの概略図であり、
図1(d)は、
図1(c)のuPICにおけるPEGセグメントの空間的な広がりを示した概略図である。
【0012】
図1(a)に示されるブロックコポリマー10a、10bはそれぞれ、二鎖分枝型のPEGセグメント13a、14a、13b、14bとカチオン性ポリアミノ酸セグメント12a、12bとを有する。また、
図1(b)に示される核酸20aは、各々2塩基のオーバーハングを有する二本鎖核酸である。ブロックコポリマー10a、10bと核酸20aとは、カチオン性ポリアミノ酸セグメント12a、12b由来の正電荷と核酸20a由来の負電荷との間の静電的相互作用によって会合し、これにより、uPIC100を形成している(
図1(c))。uPIC100において、ブロックコポリマー10a、10bは、代表的には、核酸20aの主鎖方向において互いに逆向きに配列し得る。これにより、PEGセグメント13a、13b、14a、14b相互の重なりに起因する立体障害を抑制することができる。その結果、分枝型かつ長鎖のPEGセグメントを有するブロックコポリマーであっても核酸と好適に静電結合してuPICを形成することができる。また、このように配列することにより、
図1(d)に示されるとおり、4本のPEGセグメント13a、13b、14a、14bが、核酸20aの全体を覆うように広がることができ、核酸20aの高度な保護に寄与し得る。1つの実施形態において、4本のPEGセグメントは、各々の端部が略正四面体の頂点となるように位置し得、核酸は、該正四面体内に位置し得る。
【0013】
本実施形態のuPICは、特定数のブロックコポリマーと特定数の核酸とから構成されるものであればよく、上記図示例の構成に限定されるものではない。
【0014】
本実施形態のuPICは、生理的pH環境(pH=約7.4)において、ブロックコポリマーのカチオン性ポリアミノ酸セグメントの側鎖由来の正の電荷量が核酸由来の負の電荷量によって相殺されず、結果として、電気的に中和されていない。なお、本明細書において、「ユニット型ポリイオンコンプレックスにおけるブロックコポリマーのカチオン性ポリアミノ酸セグメントの側鎖由来の正の電荷量の合計が、核酸由来の負の電荷量の合計で相殺されない」または「uPICが電気的に中和されていない」との記載は、uPIC中に含まれる全てのブロックコポリマーのカチオン性ポリアミノ酸セグメントの側鎖由来の電荷量の合計(絶対値)が、uPIC中に含まれる全ての核酸由来の電荷量の合計(絶対値)の90%未満または110%超であることを意味する。uPICの開発においては、従来、カチオン性ポリアミノ酸セグメントの側鎖由来の正電荷と核酸由来の負電荷とが相殺されない場合、uPICが全体として電荷を帯びた状態となり、血液中のタンパクや酵素を静電的に誘引して血中滞留性が低下することや、電荷を帯びたuPICが相互に、または、ブロックコポリマーおよび/または核酸とさらに会合して均一性が低下することが懸念されていた。これに対し、本発明者らの検討によれば、核酸に対して所定の親和性を有するブロックコポリマーを選択し、かつ、長鎖のPEGセグメントを採用することにより、電荷を帯びたuPICであっても、その構造を安定に維持して、優れた血中滞留性を有し得ることがわかった。1つの実施形態において、生理的pH環境におけるuPIC中の全ブロックコポリマーのカチオン性ポリアミノ酸セグメントの側鎖由来の正電荷量の合計は、uPIC中の全核酸由来の負電荷量の合計の45%以上90%未満(例えば50%〜85%、または、50%〜80%)であり得る。別の実施形態において、生理的pH環境におけるuPIC中のブロックコポリマーのカチオン性ポリアミノ酸セグメントの側鎖由来の正の電荷量の合計は、核酸由来の負の電荷量の合計の110%を超え150%以下(例えば115%〜140%)であり得る。
【0015】
本実施形態のuPICは、代表的には、ミセル型PICよりも小型である。本実施形態のuPICの粒子径(流体力学的直径)は、好ましくは10nm〜30nmであり、例えば10nm〜25nm、また例えば10nm〜20nmであり得る。このように小型であることは、搭載した核酸を組織の深部まで送達することに寄与し得る。
【0016】
[A−1−2.ブロックコポリマー]
本実施形態で使用され得るブロックコポリマーは、PEGセグメントと、カチオン性ポリアミノ酸セグメントと、を有し、送達対象の核酸に対して3.0×10
5以上、好ましくは5.0×10
5以上(例えば、8.0×10
5以上、1.0×10
6以上、1.5×10
6以上、または2.0×10
6以上)の結合定数(Ka)を有する。核酸に対して上記所定の親和性を有するブロックコポリマーを用いることにより、血中においてuPICからブロックコポリマーが解離し難くなる、あるいは、解離したとしてもすぐに再会合することができ、結果として、核酸由来の負電荷とブロックコポリマー由来の正電荷とが相殺されていない状態においても、核酸を良好に保護して高い血中滞留性を得ることができると推測される。一方、結合定数(Ka)の上限値は、特に限定されないが、実現容易性の観点から、例えば、4.0×10
6以下であり得る。なお、本明細書において、ブロックコポリマーは、該ブロックコポリマーの薬学的に許容可能な塩も包含する。
【0017】
上記結合定数(Ka)は、後述の実施例に記載の方法で測定される。結合定数(Ka)は、カチオン性ポリアミノ酸セグメントと核酸との間の静電結合が多くなるにつれて、または、個々の静電結合が強くなるにつれて増大する傾向にある。よって、カチオン性ポリアミノ酸セグメントの正電荷数を調整すること、カチオン性ポリアミノ酸セグメントの構成アミノ酸の種類を適切に選択すること等によって、結合定数(Ka)を所望の範囲に制御可能である。なお、ブロックコポリマーの構成を固定した場合、結合定数(Ka)は、主として核酸の負電荷量に依存し、塩基長が同じであれば塩基配列の違いによって実質的に変化しないと考えられる。
【0018】
上記PEGセグメントは、好ましくは分枝型であり、より好ましくは二鎖分枝型である。言うまでもないが、上記PEGセグメントは、PEG鎖を1本のみ含む単鎖型であってもよい。
【0019】
上記PEGセグメントの分子量(分枝型の場合は各PEG鎖の分子量の合計)は、40×10
3以上であり、好ましくは50×10
3以上、より好ましくは60×10
3以上である。分枝型の場合、各PEG鎖の分子量は、各鎖の分子量の合計が上記範囲を満たす限りにおいて制限されず、互いに同じであってもよく、異なっていてもよい。分枝型の各PEG鎖の分子量は、好ましくは10×10
3以上、例えば20×10
3以上、25×10
3以上、30×10
3以上、または、35×10
3以上であり得る。好ましくは、分枝型のPEG鎖のすべてが、20×10
3以上、25×10
3以上、30×10
3以上、または、35×10
3以上の分子量を有する。一方、各PEG鎖の分子量はそれぞれ独立して、例えば80×10
3以下、60×10
3以下、または、50×10
3以下であり得る。PEGセグメントの分子量がこのような範囲内にあることにより、uPICが電荷を帯びた状態であっても核酸を酵素分解等から好適に保護することができる。また、uPICの生体適合性を高め、異物として分解または排出されることを防止し得る。なお、PEGセグメントの分子量は、ゲルろ過クロマトグラフィー(GFC)等によって求めることができ、その際には、分子量が既知の市販のPEG(例えば、GFC用分子量標準物質としてのPEG)を分子量マーカーとして用いることができる。
【0020】
上記カチオン性ポリアミノ酸セグメントは、生理的pH環境で所望の正電荷を有し、かつ、ブロックコポリマーの核酸への結合定数(Ka)が3.0×10
5以上となる限りにおいて、任意の適切な塩基性アミノ酸を構成単位として含み得る。該塩基性アミノ酸としては、所望の結合定数を容易に実現できることから、リシン、オルニチン、2,3−ジアミノプロピオン酸および2,4−ジアミノ酪酸から選択される少なくとも1種の塩基性アミノ酸が好ましく、なかでも、オルニチンがより好ましい。
【0021】
上記カチオン性ポリアミノ酸セグメントを構成する全アミノ酸残基数に対する、上記少なくとも1種の塩基性アミノ酸の数(2種以上の上記塩基性アミノ酸を含む場合はその合計数)の割合は、好ましくは50%〜100%であり得、例えば80%〜100%、90%〜100%または100%であり得る。
【0022】
上記カチオン性ポリアミノ酸セグメントは、所望の結合定数が得られる限りにおいて、構成単位として他の塩基性アミノ酸をさらに含み得る。他の塩基性アミノ酸としては、例えば、アルギニン、ヒスチジン等の天然塩基性アミノ酸および酸性アミノ酸側鎖にカチオン性残基を導入したアミノ酸誘導体(例えば、アスパラギン酸の側鎖にエチレンジアミン構造を導入したAsp(DET))が挙げられる。
【0023】
上記カチオン性ポリアミノ酸セグメントの側鎖由来の正電荷量(ブロックコポリマー1分子あたり)は、所望される核酸との結合定数(Ka)、uPICの構成、核酸の負電荷量、塩基性アミノ酸残基の種類等に応じて適切に設定され得る。該正電荷量(ブロックコポリマー1分子あたり)は、核酸の負電荷量、塩基性アミノ酸残基の種類等によってその好適範囲が変動し得ることから、限定されるものではないが、例えば9以上、10以上または11以上の整数であり得る。別の観点から、該正電荷量(ブロックコポリマー1分子あたり)は、同様に限定されるものではないが、核酸の負電荷量の22.5%以上、25%以上または27%以上であり得る。上記塩基性アミノ酸残基(例えば、リシン、オルニチン、2,3−ジアミノプロピオン酸または2,4−ジアミノ酪酸)を用いてこのような正電荷量とすることにより、核酸に対して所定値以上の結合定数(Ka)を有するブロックコポリマーが好適に得られ得る。一方、該正電荷量が多すぎると、ポリマー自身の血中滞留性が低下するおそれがある。よって、該正電荷量は、好ましくは50以下、例えば40以下、30以下または25以下であり得る。
【0024】
上記カチオン性ポリアミノ酸セグメントは、本発明の効果が得られる限りにおいて、非塩基性アミノ酸残基(例えば、疎水性アミノ酸残基)を含んでいてもよい。非塩基性アミノ酸残基の数は、カチオン性ポリアミノ酸セグメントを構成する全アミノ酸残基数の、例えば10%以下、より好ましくは5%以下、さらに好ましくは2%以下とすることができる。
【0025】
上記PEGセグメントとカチオン性ポリアミノ酸セグメントとは任意の適切な連結基を介して結合される。例えば、エステル結合、アミド結合、イミノ基、炭素−炭素結合、エーテル結合等を含む連結基が挙げられる。また、これらのセグメントは、生体内で開裂可能な連結基(例えば、ジスルフィド結合、ヒドラゾン結合、マレアメート結合、アセタール基)を介して連結されていてもよい。
【0026】
上記ブロックコポリマーのPEGセグメント側末端および/またはカチオン性ポリアミノ酸セグメント側末端には、本発明の効果が得られる範囲において、任意の適切な修飾がなされ得る。該修飾としては、例えば、保護基の導入、標的結合部位の導入等が挙げられる。
【0027】
上記標的結合部位は、標的となる組織や目的等に応じて任意の適切な部位であり得る。標的結合部位は、例えば、標的結合部位を有する化合物を上記ブロックコポリマーのPEGセグメントの自由末端に結合させることにより形成され得る。なお、本明細書において、標的結合部位とは、生体およびウイルスに由来する物質に対し特異的に結合して当該物質と生物学的な結合対を形成し得る、生物学的な認識機能を有する部位をいう。標的結合部位を導入することにより、標的となる所望の部位への核酸の到達性を向上できる。
【0028】
上記ブロックコポリマーの好ましい具体例は、以下の一般式(1)または(2)で表され得る。
【化1】
【化2】
(上記各式において、
R
1a〜R
1dは、相互に独立して、水素原子あるいは未置換もしくは置換された炭素数1〜12の直鎖または分枝状のアルキル基を表し、
R
2は、水素原子、炭素数1〜12の未置換もしくは置換された直鎖または分枝状のアルキル基あるいは炭素数1〜24の未置換もしくは置換された直鎖または分枝状のアルキルカルボニル基を表し、
R
3は、ヒドロキシル基、炭素数1〜12の未置換もしくは置換された直鎖または分枝状のアルキルオキシ基、炭素数2〜12の未置換もしくは置換された直鎖または分枝状のアルケニルオキシ基、炭素数2〜12の未置換もしくは置換された直鎖または分枝状のアルキニルオキシ基あるいは炭素数1〜12の未置換もしくは置換された直鎖または分枝状のアルキル置換イミノ基を表し、
Lは、二価の連結基または原子価結合を表し、
x1〜x4は、相互に独立して、455〜1,800の整数を表し、
zは、9〜50の整数を表し、
wは、1〜4の整数を表し、
lおよびmは、相互に独立して、0〜5の整数を表す。)
【0029】
上記式(1)または(2)において、Lは、二価の連結基または原子価結合である。二価の連結基としては、任意の適切な連結基が採用され得る。例えば、式(1)において、Lは、−L
1−L
2−L
3−であり得、式(2)において、Lは、−L
4−L
5−L
6−であり得る。ここで、L
1およびL
4は、相互に独立して、−(O−(CH
2)
a)
b−L
1a−であり、ここでaは1〜5、bは0〜300の整数であり、bが2以上の時aはすべて同一である必要は必ずしもなく、L
1aは原子価結合、−S−S−、−NH−、−O−、−O−CH(CH
3)−O−、−OCO−、−OCONH−、−NHCO−、−NHCOO−、−NHCONH−、−CONH−またはCOOであり;L
2およびL
5は、相互に独立して、原子価結合または−L
2a−L
2b−L
2c−であり、ここでL
2aおよびL
2cはスペーサーとなる構造であり、特に限定はされないが、例えば置換または未置換の炭素数1〜12のアルキル基であり、L
2bは下記式(III)〜(V)に示す構造のいずれかであり;L
3は、−((CH
2)
c−O)
d−(CH
2)
e−L
3a−であり、ここでcは1〜5、dは0〜500、eは0〜5の整数であり、dが2以上の時cはすべて同一である必要は必ずしもなく、L
3aは−NH−または−O−であり;L
6は、−((CH
2)
f−O)
g−(CH
2)
h−L
6a−(CH
2)
i−CO−であり、ここでfは1〜5、gは0〜300、hは0〜5、iは0〜5の整数であり、gが2以上の時fはすべて同一である必要は必ずしもなく、L
6aは−OCO−、−NHCO−、−OCONH−、−NHCOO−、−NHCONH−、−CONH−または−COO−である。
【化3】
【0030】
上記R
1a〜R
1d、R
2、またはR
3の基で定義する、炭素数1〜12の直鎖または分枝状のアルキルオキシ基、アルキル置換イミノ基、およびアルキル基のアルキル部分としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ヘキシル基、デシル基、およびウンデシル基等を挙げることができる。炭素数2〜12の直鎖または分枝状のアルケニルオキシ基または炭素数2〜12の直鎖または分枝状のアルキニルオキシ基における、アルケニルまたはアルキニル部分は、炭素数が2以上の上記に例示したアルキル基中に二重結合または三重結合を含むものを挙げることができる。
【0031】
このような基または部分について、「置換された」場合の置換基としては、限定されるものでないが、C
1−6アルコキシ基、アリールオキシ基、アリールC
1−3オキシ基、シアノ基、カルボキシル基、アミノ基、C
1−6アルコキシカルボニル基、C
2−7アシルアミド基、トリ−C
1−6アルキルシロキシ基、シロキシ基、シリルアミノ基を示すか、またはアセタール化ホルミル基、ホルミル基、塩素またはフッ素等のハロゲン原子を挙げることができる。ここで、例えば、「C
1−6」の表示は、炭素数1〜6を意味し、以下同様な意味を表すものとして使用する。さらに、炭素数1〜24の未置換もしくは置換された直鎖または分枝状のアルキルカルボニル基の内の炭素数1〜12の未置換もしくは置換された直鎖または分枝状のアルキル部分は上述した例示を参考にでき、炭素数13以上のアルキル部分は、例えば、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ノナデシル基、ドコサニル基およびテトラコシル基等を挙げることができる。また、該置換基は、標的結合部位を含む基であってもよい。
【0032】
zは、uPICを形成した際にブロックコポリマーのカチオン性ポリアミノ酸セグメントの側鎖由来の正の電荷量の合計が、核酸由来の負の電荷量の合計の90%未満または110%超となるように設定される。また、zは、核酸との結合定数(Ka)が所定の値以上となるように設定され得る。wの値、核酸の負電荷数等によって変動し得るが、zが、例えば核酸の負電荷量の22.5%以上、25%以上または27%以上の整数である場合、核酸に対して所定値以上の結合定数(Ka)を有するブロックコポリマーが好適に得られ得る。同様に、wの値、核酸の負電荷数等によって変動し得るが、zが、9以上の整数、例えば10以上の整数または11以上の整数である場合、核酸に対して所定値以上の結合定数(Ka)を有するブロックコポリマーが好適に得られ得る。zの上限は、例えば40以下の整数または30以下の整数であってもよい。
【0033】
wは、核酸との結合定数を高める観点から、好ましくは1〜3の整数であり、さらに製造容易性の観点から、より好ましくは3である。例えば、zが14以下、特に13以下の場合、wは、1〜3の整数、例えば、3であることが好ましい。wは、属する繰り返し単位全てについて同一の基が選択されてもよく、各々の繰り返し単位について異なる基が選択されてもよい。異なる基が選択される場合、各繰り返し単位の結合順は任意であり、ランダム構造であってもよく、ブロック構造であってもよい。
【0034】
エチレングリコールの繰り返し数を表すx1〜x4は、相互に独立して、下限が例えば600、また例えば700、また例えば800であり、上限が例えば1400、また例えば1200、また例えば1100である。
【0035】
[A−1−3.核酸]
本明細書において、核酸とは、プリンまたはピリミジン塩基、ペントース、リン酸からなるヌクレオチドを基本単位とするポリもしくはオリゴヌクレオチドを意味する。例えば、オリゴもしくはポリ二本鎖RNA、オリゴもしくはポリ二本鎖DNA、または、同一の鎖にRNAとDNAが混在したオリゴもしくはポリ二本鎖核酸等の二本鎖核酸が好ましく用いられ得る。当該核酸に含有されるヌクレオチドは天然型であっても、化学修飾された非天然型のものであっても良く、またアミノ基、チオール基、蛍光化合物などの分子が付加されたものであっても良い。
【0036】
上記核酸の鎖長(二本鎖核酸においては二重鎖を構成する部分の長さ)は、代表的には10〜50塩基長、例えば10〜30塩基長であり得る。
【0037】
上記核酸としては、siRNA、miRNA mimic、shRNA、デコイ核酸等の機能性核酸を好ましく挙げることができる。
【0038】
上記siRNAとしては、例えば、標的とする遺伝子またはポリヌクレオチドに対し、任意の適切な方法で設計されたすべてのものを用いることができる。siRNAの鎖長は、二重鎖を構成する部分の長さが好ましくは15〜50塩基、より好ましくは18〜30塩基であることができ、当該技術分野で公知の化合物、また、それらと同様な作用または機能を有するすべてのヌクレオチドを包含する。限定されるものでないが、siRNAの具体例は、遺伝子療法の対象となりうる遺伝子を参照して設計することができる。
【0039】
[A−2.第2の実施形態]
本発明の第2の実施形態によれば、ポリエチレングリコールセグメントとカチオン性ポリアミノ酸セグメントとを有する特定数のブロックコポリマーと、特定数の核酸と、から構成されるユニット型ポリイオンコンプレックスであって、
該ブロックコポリマーのカチオン性ポリアミノ酸セグメントの側鎖由来の正の電荷量の合計が、該核酸由来の負の電荷量の合計で相殺されず、
該核酸の鎖長が、10〜50塩基長であり、
該ポリエチレングリコールセグメントの分子量が、40×10
3以上であり、
該ブロックコポリマーが、配列番号1で示されるセンス鎖および配列番号2で示されるアンチセンス鎖からなる二本鎖核酸(ただし、各鎖の5’末端にリン酸基が付加されていない)に対して所定の結合定数(Ka)を有する、ユニット型ポリイオンコンプレックスが提供される。
【0040】
本実施形態のuPICにおいては、生理的pH環境におけるブロックコポリマーのカチオン性ポリアミノ酸セグメントの側鎖由来の正の電荷量の合計が核酸由来の負の電荷量の合計によって相殺されず、結果として、電気的に中和されていない。生理的pH環境におけるuPIC中の全ブロックコポリマーのカチオン性ポリアミノ酸セグメントの側鎖由来の正電荷量の合計は、uPIC中の全核酸由来の負電荷量の合計の45%以上90%未満(例えば50%〜85%、または、50%〜80%)、あるいは、110%を超え150%以下(例えば115%〜140%)であり得る。
【0041】
上記ブロックコポリマーは、例えば、配列番号1で示されるセンス鎖および配列番号2で示されるアンチセンス鎖からなる二本鎖核酸(ただし、各鎖の5’末端にリン酸基が付加されていない)に対して3.0×10
5以上、好ましくは5.0×10
5以上(例えば、8.0×10
5以上、1.0×10
6以上、1.5×10
6以上、または2.0×10
6以上)の結合定数(Ka)を有し得る。該二本鎖核酸に対する結合定数(Ka)は、例えば4.0×10
6以下とすることができる。このようなブロックコポリマーは、10〜50塩基長程度の短鎖核酸全般に対して高い親和性を示し、好適に会合してuPICを形成することができる。上記ブロックコポリマーとしては、例えばA−1−2項に記載のブロックコポリマーが用いられ得る。
【0042】
上記核酸としては、例えばA−1−3項に記載の核酸が用いられ得る。本実施形態のuPICにおいては、二本鎖核酸と同様に一本鎖核酸(例えば、オリゴもしくはポリ一本鎖RNA、オリゴもしくはポリ一本鎖DNA、または、RNAとDNAが混在したオリゴもしくはポリ一本鎖核酸)も好ましく用いられ得る。鎖長が10〜50塩基長である一本鎖核酸の具体例としては、micro RNA、アンチセンス核酸、アプタマー、リボザイム等の機能性核酸を好ましく挙げることができる。一本鎖核酸を用いる場合、第2の実施形態のuPICは、1分子の核酸と1分子のブロックコポリマーとから構成されるuPICまたは1分子の核酸と2分子のブロックコポリマーとから構成されるuPICであり得る。
【0043】
[B.ユニット型ポリイオンコンプレックスの調製方法]
本発明のuPICは、例えば、任意の適切なブロックコポリマーと核酸とを、必要により緩衝化された水溶液(例えば、リン酸緩衝生理食塩水、HEPES緩衝液)中で混合することにより調製することができる。
【0044】
[C.核酸送達用組成物]
本発明の核酸送達用組成物は、A項に記載のuPICと、該uPICを構成し得るブロックコポリマーであって、遊離状態のブロックコポリマーと、を含む。本発明の核酸送達用組成物によれば、uPICを単独で用いる場合よりも優れた核酸の血中滞留性が得られ得る。このような効果が得られる理由は、例えば以下のように推測できる。すなわち、uPICを含む溶液においては、核酸−ブロックコポリマー間の解離および会合が可逆反応として生じており、その結果、uPICが可逆的に分解および再形成されている。よって、uPICに加えて遊離状態のブロックコポリマーを配合することにより、平衡を会合側にシフトさせることができ、結果として、uPIC単独の場合よりも核酸を好適に保護できると考えられる。
【0045】
上記遊離状態のブロックコポリマーとしては、uPICを構成しているブロックコポリマーと置き換わってuPICを形成し得るものであればよい。具体例としては、A−1−2項に記載のブロックコポリマーが挙げられ、好ましくはuPICを構成しているブロックコポリマーと同一のブロックコポリマーが挙げられる。該ブロックコポリマーは、核酸との親和性が高いことから、血中においても核酸と好適に再会合し得る。
【0046】
本発明の核酸送達用組成物は、必要により緩衝化された水溶液中で上記ブロックコポリマーと核酸とを、所望のN/P比となるように混合することによって得られ得る。ここで、N/P比とは、組成物中における上記ブロックコポリマー由来のアミノ基のモル濃度と上記核酸由来のリン酸基のモル濃度との比を意味する。
【0047】
本発明の核酸送達用組成物において、N/P比は、例えば1以上であり、好ましくは1.5以上、より好ましくは2以上である。また、N/P比の上限は、代表的には20以下、例えば10以下、5以下、または4以下とすることができる。本発明の核酸送達用組成物においては、送達対象の核酸として二本鎖核酸を選択し、該核酸に対して、例えば8.0×10
5以上、好ましくは1.0×10
6以上の結合定数(Ka)を有するブロックコポリマーを用いることにより、N/P比が5以下(例えば、3程度)であっても投与から3時間後に10%以上の核酸の血中滞留性を実現することができる。
【実施例】
【0048】
以下、実施例によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。なお、以下の実施例においては、PEGの分子量(kDa)およびポリアミノ酸の重合度の順序でポリマー構造を記す。例えば、二鎖分枝型PEG鎖の各々の分子量が37kDaであり、カチオン性ポリアミノ酸セグメントが10個のオルニチン残基からなる場合は、「PEG−pOrn(37×2−10)」と略記する。
【0049】
<ブロックコポリマーの調製>
種々の分子量を有する二鎖分枝型のポリ(エチレングリコール)誘導体(NOF社製)を用い、特許文献1の実施例に記載のブロックコポリマーの調製方法と同様の方法で、以下のブロックコポリマー(塩酸塩):PEG−pOrn(37×2−11)、PEG−pOrn(37×2−14)、PEG−pOrn(37×2−20)、PEG−pOrn(37×2−40)、PEG−pLys(37×2−9)、PEG−pLys(37×2−14)、PEG−pLys(37×2−20)、PEG−pLys(37×2−40)の白色粉末を得た。ポリアミノ酸セグメントの重合度は、
1H-NMRによって決定した。
【0050】
[実施例1]
PEG−pOrn(37×2−11)とsiRNAとを、10mM HEPES緩衝液(pH7.3)に別々に溶解し、siRNAの終濃度が10μMとなるように、かつ、N/P比が0.25、0.5、1、2、3、5または10となるように混合してPIC溶液を調製した。siRNAとしては、各鎖の5’末端にリン酸基が付加されていないsiLuc(ルシフェラーゼに対するsiRNA)を用い、必要に応じて、5’末端にAlexa647等の標識を付して用いた。
【0051】
siLucの塩基配列:
センス 5’−CUUACGCUGAGUACUUCGAdTdT−3’(配列番号1)
アンチセンス 5’−UCGAAGUACUCAGCGUAAGdTdT−3’(配列番号2)
【0052】
[実施例2]
PEG−pOrn(37×2−11)の代わりにPEG−pOrn(37×2−14)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、PIC溶液を調製した。
【0053】
[実施例3]
PEG−pOrn(37×2−11)の代わりにPEG−pLys(37×2−14)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、PIC溶液を調製した。
【0054】
[比較例1]
PEG−pOrn(37×2−11)の代わりにPEG−pLys(37×2−9)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、PIC溶液を調製した。
【0055】
[参考例1]
PEG−pOrn(37×2−11)の代わりにPEG−pLys(37×2−20)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、uPIC溶液を調製した。参考例1で得られたuPIC溶液(N/P比=10)は、特許文献1の表2において医薬製剤Bとして開示されたuPIC溶液に略相当し、1分子のsiRNAと2分子のブロックコポリマーとから構成されるuPICを含むものである。
【0056】
<uPICの構造解析1>
上記実施例1〜3および比較例1で調製したPIC溶液について、沈降平衡法による超遠心分析(SE−AUC分析)および蛍光相関分光解析(FCS解析)を行うことによって、PIC1個あたりの核酸会合数およびブロックコポリマー会合数を求めた。具体的な方法は以下のとおりである。
【0057】
[SE−AUC分析]
SE−AUC分析は、吸収光学系を備えた分析用超遠心システムBeckman Optima XL−A(Beckman Coulter社製)を用いて行った。上記実施例および比較例においてN/P比=1で調製したPIC溶液をsiRNA濃度が0.6μMになるように150mM NaClを含む10mM HEPES緩衝液(pH7.4)で希釈して測定試料とした。20℃で72時間遠心後、波長260nmにおける吸収をrの関数として測定した。各試料の測定結果を、ORIGINソフトウェアを用いて解析してPICの分子量(Da)を求めた。
【0058】
[FCS解析]
FCS解析は、40×対物レンズ(C−Apochromat、Carl Zeiss社製)およびConfoCor3モジュールを搭載した共焦点レーザスキャン顕微鏡(Carl Zeiss社製、製品名「LSM510」)を用いて行った。上記実施例および比較例においてN/P比=1で調製したPIC溶液をsiRNA濃度が100nMになるように150mM NaClを含む10mM HEPES緩衝液(pH7.4)で希釈して測定試料とした。測定試料を8ウェルチャンバーに移してサンプリング時間15秒、繰り返し回数5回にてFCS測定を行った。測定結果をConfoCor3ソフトウェアで解析することにより測定領域内における平均蛍光粒子数を求めた。次いで、以下の式(a)を用いて計算することによって、PIC1個あたりの核酸会合数を求めた。
AN
siRNA=N
siRNA/N
PIC (a)
(式中、AN
siRNAは、PIC1個あたりの核酸会合数であり、N
siRNAおよびN
PICはそれぞれ、蛍光標識したsiRNAのみを含む対照試料の平均蛍光粒子数およびPIC溶液由来の測定試料の平均蛍光粒子数である。)
【0059】
上記PICの分子量(Da)およびPIC1個あたりの核酸会合数を以下の式(b)に代入することにより、PIC1個あたりのブロックコポリマー会合数を算出した。
AN
copolymer=[MW
PIC−(MW
siRNA×AN
siRNA)]/MW
copolymer (b)
(式中、AN
copolymerは、PIC1個あたりのブロックコポリマー会合数であり、MW
PICは、上記SE−AUC分析で得たPICの分子量(Da)であり、MW
siRNAおよびMW
copolymerはそれぞれ、siRNAおよびブロックコポリマーの構造式に基づいて算出される分子量(Da)である。)
【0060】
上記構造解析の結果を表1に示す。
【表1】
【0061】
表1に示されるとおり、実際にFCS解析および超遠心分析を行って決定されたsiRNAおよびブロックコポリマーの会合数はそれぞれ、約1および約2である。ここで、各会合数の標準偏差が0.1以下であることは、実施例1〜3および比較例1で得られたPICは、構成上の均質性が非常に高く、特定の均一な構成を有することを示す。以上より、実施例1〜3および比較例1で調製されたPICが、1分子のsiRNAと2分子のブロックコポリマーとから構成されるuPICであることが合理的に理解される。
【0062】
<uPICの構造解析2>
上記参考例1で得られたuPIC溶液について、上記uPICの構造解析1と同様にFCS解析を行うことによって、PIC1個あたりの核酸会合数およびPICの平均粒子径(流体力学的直径:D
H)を求めた。なお、PICの平均粒子径(D
H)は、ConfoCor3を用いて、上記FCS測定で得られた自己相関曲線を拡散時間に変換し、次いで、該拡散時間をCy5色素を対照として用いて拡散係数(D
C)に変換し、該拡散係数をアインシュタインの関係式(Stokes−Einstein equation)に代入することによって算出した。結果を
図2に示す。
【0063】
図2に示されるとおり、参考例1のuPIC溶液においては、N/P比=1〜10の範囲にわたって、uPICの平均粒子径が約18nmであり、また、核酸会合数が約1であり、両者ともほぼ一定であった。このことから、参考例1のuPICは、uPIC相互または遊離のブロックコポリマーと二次会合をすることなく、安定な構成単位体として存在することがわかる。
【0064】
<結合定数の測定>
上記で得られた各ブロックコポリマーのsiRNAに対する結合定数(Ka)を以下の方法により決定した。結果を表2に示す。
結合定数は、エチジウムブロマイド(EtBr)とブロックコポリマーのsiRNAに対する結合の競合を、EtBrが核酸に結合すると増強する蛍光の強度を定量することにより決定した。上記蛍光強度の定量は、蛍光分光光度計(日本分光社製、FP‐6600)を用いて行った。具体的には、測定対象のブロックコポリマーと上記siRNA(実施例および比較例で用いたsiLuc、ただし、Alexa647で標識されていない)とを、150mM NaClを含む10mM HEPES緩衝液(pH7.3)に別々に溶解し、siRNAの終濃度が1μMとなるように、かつ、N/P比が0.25、0.5または1となるように混合してPIC溶液を調製した。各N/P比のPIC溶液 1mLに対して、約0.5mMのEtBr水溶液を10μLずつ10回滴下し、滴下する度に蛍光強度(ex 525nm,em 600nm)の測定を行った。得られた蛍光強度を、既報の方法(J.Chem.Edu.71,77(1994))に基づいて解析して結合定数を算出した。
【0065】
【表2】
【0066】
<siRNAの血中滞留性評価1>
実施例、比較例および参考例で得られたuPIC溶液(N/P比=1)を6週齢の雌性BALB/cマウスに尾静脈投与した。このとき、siLucの投与量が2nmol/マウスとなるように投与した。その後、In vivo共焦点イメージングシステム(Nikon A1R、ニコン社製)を用いて、マウスの耳血管内でのsiLuc由来の蛍光強度を経時的に測定し、次式によって相対蛍光強度を求めた(N=1)。投与直後、5分後、10分後、30分後および60分後の相対蛍光強度を表3に示す。
相対蛍光強度(%)=(測定時の強度−バックグラウンド強度)/(最大強度−バックグラウンド強度)×100
【0067】
【表3】
【0068】
表3に示されるように、実施例1〜3のuPIC溶液によれば、参考例1のuPIC溶液と同等以上の優れた核酸の血中滞留性が得られた。特に、核酸との結合定数(Ka)が1.0×10
6を超えるブロックコポリマーを用いた実施例1および2では、参考例1よりも優れた核酸の血中滞留性が得られた。一方、比較例1のuPIC溶液は、投与直後に蛍光強度が大きく低下し、その後は安定な測定ができなかった。
【0069】
<siRNAの血中滞留性評価2>
N/P比=10のuPIC溶液を用いたこと以外は、siRNAの血中滞留性評価1と同様にして、6週齢の雌性BALB/cマウスにuPIC溶液を尾静脈投与し、マウスの耳血管内でのsiLuc由来の蛍光強度を経時的に測定して相対蛍光強度を求めた(N=1)。相対蛍光強度の経時的変化を
図3に示す。
【0070】
図3に示されるように、実施例1〜3のuPIC溶液(核酸送達用組成物)によれば、参考例1のuPIC溶液と同等の優れた核酸の血中滞留性が得られた。一方、比較例1のuPIC溶液は、実施例および参考例1のuPIC溶液よりも核酸の血中滞留性が劣っていた。