特許第6644498号(P6644498)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6644498
(24)【登録日】2020年1月10日
(45)【発行日】2020年2月12日
(54)【発明の名称】CIP洗浄方法
(51)【国際特許分類】
   C11D 3/20 20060101AFI20200130BHJP
   C11D 3/37 20060101ALI20200130BHJP
   C11D 3/36 20060101ALI20200130BHJP
   C11D 3/34 20060101ALI20200130BHJP
   C11D 17/08 20060101ALI20200130BHJP
   C11D 1/66 20060101ALI20200130BHJP
   B08B 3/08 20060101ALN20200130BHJP
【FI】
   C11D3/20
   C11D3/37
   C11D3/36
   C11D3/34
   C11D17/08
   C11D1/66
   !B08B3/08 Z
【請求項の数】8
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2015-164530(P2015-164530)
(22)【出願日】2015年8月24日
(65)【公開番号】特開2017-43644(P2017-43644A)
(43)【公開日】2017年3月2日
【審査請求日】2018年7月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000387
【氏名又は名称】株式会社ADEKA
(73)【特許権者】
【識別番号】593085808
【氏名又は名称】ADEKAクリーンエイド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077573
【弁理士】
【氏名又は名称】細井 勇
(74)【代理人】
【識別番号】100126413
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 太亮
(72)【発明者】
【氏名】加藤 福一
【審査官】 古妻 泰一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−280917(JP,A)
【文献】 特開2015−074668(JP,A)
【文献】 特表2008−510033(JP,A)
【文献】 特開平11−036000(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C11D 3/20
C11D 1/66
C11D 3/34
C11D 3/36
C11D 3/37
C11D 17/08
B08B 3/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)高分子分散剤、有機ホスホン酸及びこれらの塩より選ばれた少なくとも一種以上を0.01〜5質量%、
(B)ヒドロキシカルボン酸を0.1〜20質量%、
(C)水
を含有し、(A)成分と(B)成分の質量比が、(A)/(B)=0.0005〜50である酸性CIP用洗浄剤組成物を用いるCIP洗浄方法であって、
前記酸性CIP用洗浄剤組成物を、水又は湯にて(B)成分の濃度が0.001〜10質量%の濃度となるように希釈した酸性洗浄液によって酸洗浄を行った後、当該酸性洗浄液を排出し、水によるすすぎを行わずに、続けて塩素系アルカリ洗浄剤によるアルカリ洗浄を行うか、または、
前記酸性CIP用洗浄剤組成物を、水又は湯にて(B)成分の濃度が0.001〜10質量%の濃度となるように希釈した酸性洗浄液によって酸洗浄を行った後、当該酸性洗浄液の排出や水によるすすぎを行わずに塩素系アルカリ洗浄剤によるアルカリ洗浄を行うことを特徴とするCIP洗浄方法。
【請求項2】
前記酸性CIP用洗浄剤組成物における(A)成分の高分子分散剤及びその塩が、ポリアクリル酸又はその塩、ポリマレイン酸又はその塩、アクリル酸マレイン酸共重合体又はその塩より選ばれた、重量平均分子量400〜100,000の化合物の少なくとも一種である請求項1に記載のCIP洗浄方法。
【請求項3】
前記酸性CIP用洗浄剤組成物における(A)成分の有機ホスホン酸及びその塩が、2−ホスホノブタン−1,2,4−トリカルボン酸又はその塩、アミノトリメチレンホスホン酸又はその塩より選ばれた少なくとも一種である請求項1に記載のCIP洗浄方法。
【請求項4】
前記酸性CIP用洗浄剤組成物における(B)成分のヒドロキシカルボン酸がクエン酸である請求項1から3のいずれか一項に記載のCIP洗浄方法。
【請求項5】
前記酸性CIP用洗浄剤組成物は、さらに、(D)芳香族スルホン酸化合物を0.1〜10質量%含有する請求項1から4のいずれか一項に記載のCIP洗浄方法。
【請求項6】
前記酸性CIP用洗浄剤組成物における(D)成分が、メトキシベンゼンスルホン酸、エトキシベンゼンスルホン酸、プロポキシベンゼンスルホン酸およびこれらのナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム塩である請求項5に記載のCIP洗浄方法。
【請求項7】
前記酸性CIP用洗浄剤組成物は、さらに、(E)ノニオン界面活性剤を含有する請求項1から6のいずれか一項に記載のCIP洗浄方法。
【請求項8】
前記酸性CIP用洗浄剤組成物における(A)成分と(B)成分の質量比が、(A)/(B)=0.1〜5である請求項1から7のいずれか一項に記載のCIP洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸性CIP用洗浄剤組成物およびそれを用いたCIP洗浄方法に関する。詳しくは、食品、飲料工場等の製造設備や製造機器類の洗浄に使用する酸性CIP用洗浄剤組成物及びそれを用いたCIP洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食品工場、飲料工場等では、その製造設備や製造機器類のためにCIPによって洗浄を行っている。CIPとは“Cleaning in place”の頭文字をとったもので、製造設備や製造機器類を分解することなく、そのままの状態で洗浄液を流通させてその内部を満たして循環させたり、さらには洗浄液をスプレーしたりして、残留汚れを洗浄・除去する洗浄方法であり、定置洗浄又は定置循環洗浄とも呼ばれている。このCIPには、アルカリ洗浄剤、酸洗浄剤、さらには殺菌剤などが使用されている。一般に、1.水洗浄、2.アルカリ洗浄、3.水すすぎ、4.酸洗浄、5.水すすぎ、6.殺菌、7.水すすぎという工程で行われているが、洗浄剤の配合成分、汚れの種類や状態に応じて、一部が省略されたり、順序が変更されたり、あるいは同じ工程が繰り返し実施される場合もある。
【0003】
CIPにおいて対象となる汚れは食品残渣であり、タンパク質、油脂及び炭水化物などの有機質汚れ、炭酸カルシウム、燐酸カルシウム及びケイ酸カルシウムなどの無機質汚れが挙げられるが、従来のCIPは、あらゆるタイプの汚れを常に充分に除去できるものではなかった。また、近年、生産効率向上による生産量の増加や顧客の嗜好の多様化による飲料品種の増加によって生産品の切り替えのためにCIPの頻度が増えており、これによって生産効率が著しく低下する原因となっている。
このような状況から、CIPにおける効率を更に向上させる技術として、いくつかの方法が提案されている。乳製品製造後の設備の汚れには特に無機物が多く含まれており、このような汚れに対しては、酸洗浄の後にすすぎ工程を行わずにアルカリ洗浄を行うオーバーライド(水洗浄→酸洗浄→アルカリ洗浄→水すすぎ)という方法が効果的である。また、近年では、従来のCIPでは除去が困難な汚れに対して、特徴的なオーバーライド法が提案されている。例えば、第一洗浄として、過酸化水素などを含む溶液を用い、第二洗浄として、アルカリ洗浄を行う方法(特許文献1,2)、第一洗浄として、炭酸塩などを含む溶液を用い、第二洗浄として、酸洗浄を行う方法(特許文献3)などが挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−537741号公報
【特許文献2】特表2011−511864号公報
【特許文献3】特開2010−545600号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、これらの洗浄方法は、汚れを被洗物から剥離する効果は高いが、剥離した汚れによってストレーナーなどの設備を詰まらせてしまう問題があり、満足のいくものではなかった。また、汚れの溶解には塩素系アルカリ洗浄が効果的であるが、塩素ガス発生の点からオーバーライド法は行えない。この場合、先の酸洗浄工程後に十分なすすぎを行ったり、酸洗浄液に塩素非含有のアルカリ洗浄剤を添加することでアルカリ性とし、次いで塩素系洗浄剤を添加することで改善は見られる。しかしながら、すすぎに多量の水を要したり、酸洗浄液を中和する過程において剥離した汚れの詰まりがあること及び、アルカリ洗浄剤添加時のpH確認や、pH確認後に塩素系洗浄剤を添加するという煩雑な作業を伴うことから、あまり実用的ではない。
従って、本発明が解決しようとする課題は、オーバーライド法において、アルカリ洗浄剤として塩素系洗浄剤を用いても塩素ガス発生リスクの低い酸性洗浄剤組成物およびそれを用いたCIP洗浄方法を提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明者は鋭意検討した結果、特定の酸成分および特定の芳香族スルホン酸化合物を含む酸性洗浄剤組成物が、従来のオーバーライド法が有していた問題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0006】
即ち本発明は、
(1)(A)高分子分散剤、有機ホスホン酸及びこれらの塩より選ばれた少なくとも一種以上を0.01〜5質量%、
(B)ヒドロキシカルボン酸を0.1〜20質量%、
(C)水
を含有し、(A)成分と(B)成分の質量比が、(A)/(B)=0.0005〜50である酸性CIP用洗浄剤組成物を用いるCIP洗浄方法であって、
前記酸性CIP用洗浄剤組成物を、水又は湯にて(B)成分の濃度が0.001〜10質量%の濃度となるように希釈した酸性洗浄液によって酸洗浄を行った後、当該酸性洗浄液を排出し、水によるすすぎを行わずに、続けて塩素系アルカリ洗浄剤によるアルカリ洗浄を行うか、または、
前記酸性CIP用洗浄剤組成物を、水又は湯にて(B)成分の濃度が0.001〜10質量%の濃度となるように希釈した酸性洗浄液によって酸洗浄を行った後、当該酸性洗浄液の排出や水によるすすぎを行わずに塩素系アルカリ洗浄剤によるアルカリ洗浄を行うことを特徴とするCIP洗浄方法、
(2)前記酸性CIP用洗浄剤組成物における(A)成分の高分子分散剤及びその塩が、ポリアクリル酸又はその塩、ポリマレイン酸又はその塩、アクリル酸マレイン酸共重合体又はその塩より選ばれた、重量平均分子量400〜100,000の化合物の少なくとも一種であることを特徴とする上記(1)のCIP洗浄方法、
(3)前記酸性CIP用洗浄剤組成物における(A)成分の有機ホスホン酸及びその塩が、2−ホスホノブタン−1,2,4−トリカルボン酸又はその塩、アミノトリメチレンホスホン酸又はその塩より選ばれた少なくとも一種であることを特徴とする上記(1)のCIP洗浄方法、
(4)前記酸性CIP用洗浄剤組成物における(B)成分のヒドロキシカルボン酸がクエン酸であることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかのCIP洗浄方法、
(5)前記酸性CIP用洗浄剤組成物は、さらに、(D)芳香族スルホン酸化合物を0.1〜10質量%含有することを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれかのCIP洗浄方法、
(6)前記酸性CIP用洗浄剤組成物における(D)成分が、メトキシベンゼンスルホン酸、エトキシベンゼンスルホン酸、プロポキシベンゼンスルホン酸およびこれらのナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム塩であることを特徴とする上記(5)のCIP洗浄方法、
(7)前記酸性CIP用洗浄剤組成物は、さらに、(E)ノニオン界面活性剤を含有する上記(1)〜(6)のいずれかのCIP洗浄方法、
(8)前記酸性CIP用洗浄剤組成物における(A)成分と(B)成分の質量比が、(A)/(B)=0.1〜5である上記(1)〜(7)のいずれかのCIP洗浄方法、
を要旨とするものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の酸性CIP用洗浄剤組成物およびそれを用いたCIP洗浄方法は、塩素系アルカリ洗浄剤を用いたオーバーライド法が可能であるため、剥離した汚れにより設備を詰まらせることなく、従来のCIPでは困難な汚れの除去ができ、すすぎ水使用量の削減および洗浄時間短縮をおこなうことができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明において、上記(A)成分の高分子分散剤及びその塩としては、ポリアクリル酸、ポリマレイン酸、ポリメタクリル酸、アクリル酸型共重合体、マレイン酸型共重合体、メタクリル酸型共重合体又はこれらの塩等が挙げられる。これらは単独で用いても、2種以上を組み合わせても良い。スケール防止性の点から、ポリアクリル酸又はその塩、ポリマレイン酸又はその塩、アクリル酸マレイン酸共重合体又はその塩がより好ましく、アクリル酸マレイン酸共重合体又はその塩が特に好ましい。高分子分散剤及びその塩の重量平均分子量は400〜100,000が好ましく、1,000〜20,000がより好ましく、2,000〜10,000が特に好ましい。重量平均分子量が400未満であると、スケール防止性の点で好ましくなく、100,000を超えると貯蔵安定性の点で好ましくない。
【0009】
一方、有機ホスホン酸及びその塩としては、分子内に少なくとも1つ以上のホスホン酸基を含む化合物であり、具体的には、メチルジホスホン酸、エチリデンジホスホン酸、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸、1−ヒドロキシプロピリデン−1,1−ジホスホン酸、1−ヒドロキシブチリデン−1,1−ジホスホン酸、エチルアミノビス(メチレンホスホン酸)、ドデシルアミノビス(メチレンホスホン酸)、エチレンジアミンビス(メチレンホスホン酸)、アミノトリ(メチレンホスホン酸)、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、1,2−プロピレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ヘキサメチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、シクロヘキサンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、グリコールエーテルジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)、トリエチレンテトラミンヘキサ(メチレンホスホン酸)、トリ(2−アミノエチル)アミンヘキサ(メチレンホスホン酸)、テトラエチレンペンタミンヘプタ(メチレンホスホン酸)、ペンタエチレンヘキサミンオクタ(メチレンホスホン酸)、2−ホスホノブタン−1,2,4−トリカルボン酸、アミノトリメチレンホスホン酸等が挙げられる。これらは単独で用いても、2種以上を組み合わせても良い。また、これらの塩の場合は対イオンとしてナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムが挙げられる。これらの中でも、スケール防止性の点から、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸、2−ホスホノブタン−1,2,4−トリカルボン酸、アミノトリ(メチレンホスホン酸)、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)が好ましい。
【0010】
(B)成分のヒドロキシカルボン酸としては、グリコール酸、乳酸、グルコン酸、酒石酸、リンゴ酸、クエン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸等が挙げられる。これらは単独で用いても、2種以上を組み合わせても良い。中でも、スケール溶解性および経済性の点からクエン酸、グルコン酸、リンゴ酸が好ましく、クエン酸が特に好ましい。
【0011】
(C)成分の水としては、特に限定はなく、イオン交換水、軟水、純水、水道水、工業用水、地下水などが挙げられる。これらは単独で用いても、2種以上を組み合わせても良い。経済性の点から水道水が好ましい。水道水としては、例えば、東京都荒川区の水道水(pH=7.6、総アルカリ度(炭酸カルシウム換算として)40.5mg/L、ドイツ硬度8.1°DH(そのうち、カルシウム硬度6.3°DH、マグネシウム硬度2.1°DH)、塩化物イオン21.9mg/L、ナトリウム及びその化合物13mg/L、硝酸態窒素及び亜硝酸態窒素1.1mg/L、フッ素及びその化合物0.09mg/L、ホウ素及びその化合物0.04mg/L、総トリハロメタン0.014mg/L、残留塩素0.4mg/L、有機物(全有機炭素量)0.5mg/L)が挙げられる。水は、酸性CIP用洗浄剤組成物全体が100質量%となるように配合されるものである。
【0012】
本発明の酸性CIP用洗浄剤組成物は、(A)成分の高分子分散剤、有機ホスホン酸及びこれらの塩より選ばれた少なくとも1種を0.01〜5質量%含有するが、スケール防止性及び塩素ガス発生防止性の点から、0.05〜4.5質量%が好ましく、0.1〜4質量%が特に好ましい。0.01%質量未満ではスケール防止性が低下する場合があり、5質量%を超えて配合した場合には、塩素ガス発生防止性が低下する場合がある。一方、本発明の酸性CIP用洗浄剤組成物は(B)成分のヒドロキシカルボン酸を0.1〜20質量%含有するが、好ましくは3〜15質量%の範囲で配合される。0.1質量%未満ではスケール溶解性が低下する場合があり、20質量%を超えて配合した場合には、塩素ガス発生防止性が低下する場合がある。
【0013】
本発明の酸性CIP用洗浄剤組成物は、上記(A)成分と(B)成分とを質量比で、(A)/(B)=0.0005〜50となるように含有する。(A)/(B)が0.0005未満であると、塩素ガス発生防止性が低下する場合があり、50を超えるとスケール溶解性が低下する場合がある。(A)成分と(B)成分の質量比は、スケール防止性、洗浄性の点から、(A)/(B)=0.002〜20であることが好ましく、0.1〜5であることがより好ましい。
【0014】
本発明の酸性CIP用洗浄剤組成物は、更に(D)成分として芳香族スルホン酸化合物を配合することができる。本発明の酸性CIP用洗浄剤組成物が、更に(D)成分の芳香族スルホン酸を含有する場合、塩素系洗浄剤を添加した場合の塩素ガス発生防止性をより向上できる。(D)成分の芳香族スルホン酸化合物としては、メトキシベンゼンスルホン酸、メトキシベンゼンジスルホン酸、ジメトキシベンゼンスルホン酸、ジメトキシベンゼンジスルホン酸、エトキシベンゼンスルホン酸、エトキシベンゼンジスルホン酸、ジエトキシベンゼンスルホン酸、ジエトキシベンゼンジスルホン酸、プロポキシベンゼンスルホン酸、プロポキシベンゼンジスルホン酸、ブトキシベンゼンスルホン酸、ブトキシベンゼンジスルホン酸、メチルメトキシベンゼンスルホン酸、メチルメトキシベンゼンジスルホン酸、メトキシナフタリンスルホン酸、メトキシナフタリンジスルホン酸、ジメトキシナフタリンスルホン酸、ジメトキシナフタリンジスルホン酸、メチルメトキシナフタリンスルホン酸、メチルメトキシナフタリンジスルホン酸、エトキシナフタリンスルホン酸、エトキシナフタリンジスルホン酸、トルエンスルホン酸、クメンスルホン酸、キシレンスルホン酸、置換もしくは非置換ナフタレンスルホン酸およびこれらのナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム塩等が挙げられる。トルエンスルホン酸、クメンスルホン酸は、それぞれo体、m体、p体の3異性体のいずれでもよい。これらは単独で用いても、2種以上を組み合わせても良い。これら芳香族スルホン酸化合物のなかでも、入手のしやすさや経済性の点からメトキシベンゼンスルホン酸ナトリウムが好ましい。上記(D)成分の芳香族スルホン酸化合物を更に配合する場合、本発明の酸性CIP用洗浄剤組成物中に、0.1〜10質量%配合することが好ましく、より好ましくは1〜6質量%である。0.1質量%未満では塩素ガス発生防止性が乏しくなり、10質量%を超えて配合しても、それ以上の性能向上は望めず、経済性に劣るものとなる。
【0015】
本発明の酸性CIP用洗浄剤組成物には、更に(E)成分としてノニオン界面活性剤が配合されていることが好ましい。(E)成分のノニオン界面活性剤としては、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンジアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエステル、ポリオキシアルキレンアルキルジエステル、ポリオキシアルキレンアルキルアリールエーテル、グリセリン脂肪酸エステル又はそのエチレンオキシド付加物、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ジポリオキシアルキレンアルキルアミン、高級脂肪酸アルカノールアミド、アルキルグリコシド、アルキルアミンオキシド等が挙げられる。これらの中でも、泡立ちが少ない点から、ジポリオキシアルキレンアルキル(アルキル基の炭素数が12〜14)アミン、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキル(アルキル基の炭素数が6〜14)エーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルケニル(アルケニル基の炭素数が6〜14)エーテル、エチレンオキシドとプロピレンオキシドのランダム或いはブロック付加体等のポリアルキレンオキシド付加物が好ましい。これらは単独で用いても、2種以上を組み合わせても良い。(E)成分であるノニオン界面活性剤を配合する場合、(E)成分は、本酸性CIP用洗浄剤組成物中において、0.01〜5質量%配合することが好ましく、0.02〜1質量%配合することがより好ましく、0.03〜0.5質量%が特に好ましい。(E)成分の配合量が0.01質量%未満であると、抑泡性や洗浄性が得られない場合があり、5質量%を超えると泡立ちが多くなる場合があるために好ましくない。
【0016】
本発明の酸性CIP用洗浄剤組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、酸性CIP用洗浄剤組成物の製剤形態に応じて、当該技術分野で通常使用される公知の成分を含有していてもよい。このような成分としては、例えば、(A)成分、(B)成分及び(D)成分以外のその他の酸成分、香料、色素、防腐剤等が挙げられる。
【0017】
(A)成分、(B)成分及び(D)成分以外のその他の酸成分としては、例えば、リン酸が挙げられる。香料としては、例えば、天然香料、合成香料、これらの調合香料等が挙げられる。色素としては、例えば、天然色素、合成色素、これらの混合物が挙げられる。防腐剤としては、例えば、チアゾリン類、ヒダントイン類や、ヨード−2−プロピニルブチルカーバメイト、イソプロピルメチルフェノール、ヘキサクロロフェン、イルガサン、トリクロサン等が挙げられる。チアゾリン類としては、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、イソチアゾリン−3−オン、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン、N−n−ブチル−ベンズイソチアゾリン−3−オン等が挙げられる。ヒダントイン類としては、1,3−ジメチロール−5,5−ジメチルヒダントイン、1又は3−モノメチロール−5,5−ジメチルヒダントイン、ジメチルヒダントイン、1,3−ジクロロ−5,5−ジメチルヒダントイン、1,3−ジクロロエチルメチルヒダントイン等が挙げられる。これら酸性洗浄剤のうち、より好ましいものとしては1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オンやイソプロピルメチルフェノールが挙げられる。これらは単独でも2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0018】
本発明の酸性CIP用洗浄剤組成物は、ガラス、プラスチック、金属等の硬質表面であればいずれの硬質表面においても使用可能であり、具体的な洗浄場所としては、台所、業務用の厨房、調理器具、浴室、工場設備等が挙げられる。これらの中でも、工場設備等へのCIP(定置洗浄)による使用が好ましい。なお、本発明の酸性CIP用洗浄剤組成物を使用する場合は、使用用途にあわせて、任意の濃度に水または湯で希釈してから使用すればよい。希釈濃度としては酸性CIP用洗浄剤組成物が0.01〜30質量%になるように希釈するのが好ましく、0.5〜5質量%がより好ましい。希釈には水又は湯が用いられるが、60〜80℃の水溶液として酸性洗浄工程に用いることが好ましい。稀釈に用いる水としては、(C)成分として用いる水と同様のものを用いることができる。
【0019】
CIPは、通常、水によるすすぎ洗浄、アルカリ洗浄、酸洗浄、殺菌等の工程を組みあわせて被洗浄物を洗浄する。本発明の酸性CIP用洗浄剤組成物はCIPにおける酸洗浄工程において使用される。本発明のCIP洗浄方法は、酸性CIP用洗浄剤組成物の(B)成分の濃度が0.001〜10質量%となるように希釈した酸性洗浄液を用いて酸洗浄工程に用いるものである。
【0020】
本発明のCIP洗浄方法の一つは、被洗浄物を酸性洗浄液による1)酸洗浄工程後、酸性洗浄液を排出し、すすぎ洗浄工程を行わずに、塩素系アルカリ洗浄剤による2)アルカリ洗浄工程を経て洗浄するものである。1)酸洗浄工程、2)アルカリ洗浄工程は汚れの質や量に応じ、10〜60分間、一般に20〜40分間行われる。
【0021】
上記、2)アルカリ洗浄工程に用いる塩素系アルカリ洗浄剤としては、アルカリと塩素系酸化剤とを含有する粉末塩素系洗浄剤、液体塩素系洗浄剤が用いられる。粉末塩素系洗浄剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリを50質量%程度以上と、ジクロロイソシアヌル酸塩等の塩素系酸化剤を有効塩素濃度として1〜15質量%程度含有し、更に炭酸塩、珪酸塩、縮合リン酸塩、ノニオン界面活性剤、高分子分散剤等を配合したものが市販されている。また液状塩素系洗浄剤としては、15質量%程度以下の水酸化カリウムや水酸化ナトリウム等のアルカリと、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カリウム等の塩素系酸化剤を有効塩素濃度として1〜15質量%程度含有し、更に珪酸塩、高分子分散剤等を配合したものが市販されている。例えば市販の粉末塩素系洗浄剤としては、アデカメイトNP2(ADEKAクリーンエイド株式会社製の粉末塩素系洗浄剤の商品名、水酸化ナトリウム70質量%、塩素系酸化剤3.6質量%(有効塩素濃度として)含有)、アデカメイトAC(ADEKAクリーンエイド株式会社製の粉末塩素系洗浄剤の商品名、水酸化ナトリウム50質量%、塩素系酸化剤2.4質量%(有効塩素濃度として)含有)等が挙げられる。市販の液体塩素系洗浄剤としては、例えばアデカサイクルSNP(ADEKAクリーンエイド株式会社製の液体塩素系洗浄剤の商品名、水酸化カリウム15質量%、塩素系酸化剤3.0質量%(有効塩素濃度として)含有)、クリーンエイドUNP(ADEKAクリーンエイド株式会社製の液体塩素系洗浄剤の商品名、水酸化ナトリウム2質量%、塩素系酸化剤8.0質量%(有効塩素濃度として)含有)、デオメイトCL(ADEKAクリーンエイド株式会社製の液体塩素系洗浄剤の商品名、水酸化ナトリウム1質量%、塩素系酸化剤12.0質量%(有効塩素濃度として)含有)等が挙げられる。
【0022】
上記本発明の第一のCIP洗浄方法では、2)アルカリ洗浄工程において上記した市販の塩素系酸化剤は、通常、有効塩素濃度として0.01〜0.2質量%程度に希釈した希釈洗浄液として使用することが好ましい。
【0023】
本発明のCIP洗浄方法のいま一つは、酸性CIP用洗浄剤組成物の(B)成分の濃度が0.001〜10質量%となるように希釈した酸性洗浄剤による1)酸洗浄工程後、酸性洗浄液の排出及び水によるすすぎ洗浄を行うことなく、塩素系アルカリ洗浄剤による2)アルカリ洗浄工程を行うものである。この第二のCIP洗浄方法では、2)アルカリ洗浄工程は、1)酸洗浄工程において用いた酸洗浄液中に市販の塩素系アルカリ洗浄剤を投入して行うことが好ましい。
【0024】
本発明のCIP洗浄方法では、1)酸洗浄工程と、2)アルカリ洗浄工程の間ですすぎ洗浄工程を省くことができる。一般に、酸洗浄工程とアルカリ洗浄工程の間に、水によるすすぎ洗浄工程を行うと、水の使用量や熱エネルギー、すすぎ時間がかかってしまう。しかしながら、従来の方法では酸性溶液中に塩素系酸化剤を投入すると、塩素ガスが発生し危険である。本発明の洗浄方法においては、1)酸性洗浄液による酸洗浄工程の後に酸性洗浄液の排出や水によるすすぎを行うことなく、酸性洗浄液中に直接塩素系アルカリ洗浄剤を添加して2)アルカリ洗浄工程を行っても塩素ガスの発生がない。本発明方法において、2)アルカリ洗浄工程後、水によるすすぎ洗浄を行った後に、必要に応じて殺菌処理、次亜塩素酸ナトリウム処理、過酢酸処理、ヨウ素処理、熱水処理等の各種処理を行っても良い。
【実施例】
【0025】
以下、本発明を実施例と比較例により具体的に説明する。実施例、比較例において配合に用いた各成分を下記に示す。試験に使用した化合物を下記に記す。なお、EOはエチレンオキシド、POはプロピレンオキシドの略であり、その後の数字はそれぞれEO、POの平均付加モル数を表す。尚、表中における実施例および比較例の配合の数値は純分の質量%を表す。
【0026】
(A)成分
A−1:ポリアクリル酸ナトリウム(重量平均分子量が4000、商品名:がSokalanPA25CL(純分45%)、BASF社製)
A−2:ポリマレイン酸(重量平均分子量が500、商品名がBelclene 200LA(純分50%)、BWA社製)
A−3:ポリアクリル酸・マレイン酸共重合体(重量平均分子量が3000、商品名がSokalanCP12S(純分50%)、BASF社製)
A−4:1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸(商品名がBelclene 660LA(純分60%)、BWA社製)
A−5:2−ホスホノブタン−1,2,4−トリカルボン酸(商品名がBelclene 650(純分50%)、BWA社製)
【0027】
(B)成分
B−1:クエン酸
B−2:グルコン酸
B−3:リンゴ酸
【0028】
(B′)成分[(B)成分の比較成分]
B′−1:硝酸
B′−2:塩酸
B′−3:シュウ酸
B′−4:メタンスルホン酸
【0029】
(C)成分
C−1:イオン交換水
C−2:水道水
【0030】
(D)成分
D−1:メトキシベンゼンスルホン酸ナトリウム
D−2:クメンスルホン酸ナトリウム
D−3:パラトルエンスルホン酸ナトリウム
【0031】
(E)成分
E−1:プルロニック型ノニオン界面活性剤1(重量平均分子量が2200、商品名がアデカプルロニックL−44、ADEKA社製)
E−2:ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンラウリルエーテル(商品名がアデカトールLB−83、ADEKA社製)
E−3:N,N−ジポリオキシアルキレン−N−三級アルキル(C12〜14)アミン(商品名がトライトンCF−32、ダウケミカル社製、有効成分95%)
E−4:プルロニック型ノニオン界面活性剤2(商品名がアデカプルロニック25R−1、ADEKA社製(PO3モル、EO43モル、PO3モルのブロック付加体)
【0032】
その他成分:(F)成分
F−1:リン酸
【0033】
実施例1〜50、比較例1〜10
表1〜6に示す配合に基づき酸性CIP用洗浄剤組成物を調製した。各洗浄剤組成物について、塩素ガス発生の防止性、スケール洗浄性、アルカリ洗浄工程時における析出物の発生防止性について、試験を行った。また洗浄剤組成物の貯蔵安定性、ゴムパッキン適合性、金属腐食防止性、洗浄性の試験を行った。結果を表1〜6に示す。
【0034】
【表1】
【0035】
【表2】
【0036】
【表3】
【0037】
【表4】
【0038】
【表5】
【0039】
【表6】
【0040】
※1:塩素ガス発生防止性試験
家庭用品品質表示法の雑貨工業品品質表示規程、「四 合成洗剤、洗濯用又は台所用の石けん及び住宅用又は家具用の洗浄剤」の塩素ガス発生試験(酸性タイプ)に記載の装置を用い、同装置の容量20Lの合成樹脂容器内の底に置いた10mLビーカーに酸性CIP洗浄剤組成物を3mL取り、この中に5%次亜塩素酸ナトリウム水溶液3mLを加え、直ちに蓋をし、マグネティックスターラーで攪拌した。また、装置のファンにより下方に送風(回転数50Hzで約2500rpm)した。5分経過後、塩素ガス検知管を備えたガス採取器により容器内のガスを100mL吸引し、下記(1)式により塩素ガス濃度を測定した。
(数1)
塩素ガス濃度(ppm)=測定塩素ガス濃度(ppm)/3
×合成樹脂容器の容量(L)/20 (1)
評価基準
○:塩素ガス濃度が0.5ppm未満。
△:塩素ガス濃度が0.5ppm以上、1ppm未満。
×:塩素ガス濃度が1ppm以上。
とし、△、○の評価のものを実用性のあるものとして判定した。
【0041】
※2:スケール洗浄性試験
SUS304のステンレスパネル(2cm×7cm)に乾燥重量が50mg程度となるようにリン酸カルシウムを塗布して100℃で1時間乾燥させたものをテストパネルとした。200mLビーカーに、酸性CIP洗浄剤組成物の1質量%水溶液100mLを調製し、そこにテストピースを20分間浸漬した。以下の基準でスケール洗浄性を評価し、△、○の評価のものを実用性のあるものとして判定した。
評価基準
○:汚れの残留がない。
△:汚れの残留がわずかに確認された。
×:汚れの残留が確認された。
【0042】
※3:アルカリ洗浄工程時における析出物の発生防止性試験
200mLビーカーに、イオン交換水を用いて、酸性CIP洗浄剤組成物の1質量%水溶液100mLを調製し、炭酸カルシウム50mgを添加した。次に炭酸カルシウムが完全に溶解するまで攪拌し、溶解後0.1N水酸化ナトリウムでpHを12に調製した。1時間後、目視にて以下の基準で析出物の発生防止性を評価した。○の評価のものを安定性において実用性のあるものとして判定した。
評価基準:
○:透明溶液であり、析出物は見られない。
×:析出物の沈殿が見られる。
【0043】
※4:貯蔵安定性試験
各供試酸性CIP用洗浄剤組成物を250mL容量のキャップ付きポリエチレン製容器に200mL入れて、−5℃、25℃、40℃に設定されたそれぞれのインキュベーターに30日間静置した後、溶液の均一性を目視で確認した。目視にて分離や析出物の沈殿の有無を確認し、以下の基準で安定性を評価した。○の評価のものを安定性において実用性のあるものとして判定した。
安定性評価基準:
○:透明溶液であり、分離も析出物も見られない。
×:分離や析出物の沈殿が見られる。
【0044】
※5:ゴムパッキン適合性試験
各供試酸性CIP用洗浄剤組成物の10質量%水溶液50mLを100mLのキャップ付きポリエチレン製容器に入れ、このポリエチレン製容器にEPDMゴムパネル(入間川ゴム株式会社製、縦×横×厚み=50mm×25mm×2mm(体積2500立方ミリメートル))、NBRゴムパネル(入間川ゴム株式会社製、縦×横×厚み=50mm×25mm×2mm)をそれぞれ別々の容器に全体が浸るように入れ、キャップをする。80℃に昇温した後、同温度に保持して24時間静置後、ゴムパネルを取り出し、流水で洗浄した。105℃で3時間乾燥した後の外観変化を目視にて判断し、以下の基準で評価した。△、○の評価のものを実用性のあるものとして判定した。
ゴムパッキン適合性評価基準:
○:硬化、ヒビ割れ、膨張などの外観変化が見られない。
△:硬化、ヒビ割れ、膨張などの外観変化が若干見られるが、使用は可能。
×:硬化、ヒビ割れ、膨張などの外観変化が見られる。
【0045】
※6:金属腐食性防止試験
各供試酸性CIP用洗浄剤組成物の10質量%水溶液50mLを100mLキャップ付きポリエチレン製容器に入れ、このポリエチレン製容器にSUS304パネル、SUS316パネルをそれぞれ別々の容器に半分程度が浸るように入れ、キャップをする。80℃に昇温した後、同温度に保持して24時間静置後、SUSパネルを取り出し、流水で洗浄した後、SUSパネルの、水溶液につかっていた浸漬部、水溶液と空気との境の喫水線部、空気中に表出していた気相部の腐食の有無を目視にて確認し、以下の基準で金属腐食性を評価した。△、○の評価のものを実用性のあるものとして判定した。
金属腐食性評価基準:
○:浸漬部、喫水線部、気相部の何れにおいても変化が見られない。
△:浸漬部、喫水線部、気相部の何れかで若干の腐食が見られるが、使用は可能。
×:浸漬部、喫水線部、気相部の何れか又は2以上の箇所で腐食が見られる。
【0046】
※7:洗浄工程条件
SUS304のステンレスパネル(2cm×7cm)に乾燥重量が50mg程度となるように牛乳を塗布して130℃で30分加熱したものを用い、以下の条件の洗浄工程を組み合わせた洗浄法I〜IIIの何れかの方法で洗浄試験を行った。
洗浄工程の条件
a)すすぎ洗浄:常温水で5分洗浄後、すすぎ洗浄液を排出する。
b−1)酸洗浄α:各供試酸性CIP用洗浄剤組成物の3質量%水溶液により、80℃で20分洗浄後、酸洗浄液を排出する。
b−2)酸洗浄β:各供試酸性CIP用洗浄剤組成物の3質量%水溶液により、80℃で20分洗浄後、酸洗浄液は排出しない。
c)塩素化アルカリ洗浄:アデカサイクルSNP(ADEKAクリーンエイド社製、水酸化カリウム15質量%、有効塩素濃度として3質量%含有)を用いて、洗浄液のPPアルカリ度が水酸化カリウム換算で0.45質量%になるように投入し、80℃で20分洗浄後、塩素化アルカリ洗浄液を排出する。
d)殺菌:90℃以上の熱水により20分間殺菌後、熱水を排出する。
【0047】
洗浄法
洗浄法I:a)すすぎ洗浄、b−1)酸洗浄α、a)すすぎ洗浄、c)塩素化アルカリ洗浄、a)すすぎ洗浄、d)殺菌
洗浄法II:a)すすぎ洗浄、b−1)酸洗浄α、c)塩素化アルカリ洗浄、a)すすぎ洗浄、d)殺菌
洗浄法III:a)すすぎ洗浄、b−2)酸洗浄β、c)塩素化アルカリ洗浄、a)すすぎ洗浄、d)殺菌
【0048】
洗浄後のステンレスパネル表面を洗浄前と比較し、洗浄性の評価をした。また、塩素化アルカリ洗浄またはアルカリ洗浄における洗浄液中の汚れの状態を評価した。
【0049】
※7−1:洗浄性評価基準
◎:汚れの残留がない。
○:汚れの残留がほとんどない。
×:汚れの残留が確認された。
−:塩素ガスが発生し危険なため、試験ができない。
とし、評価が◎、○を実用性のあるものと判定した。
【0050】
※7−2:洗浄液中の汚れ溶解性評価基準
○:汚れが均一に溶解している。
×:剥離した汚れが浮遊している。
−:塩素ガスが発生し危険なため、試験ができない。
とし、評価が○を実用性のあるものと判定した。