【文献】
福崎 智司,次亜塩素酸ナトリウムを用いた洗浄・殺菌操作の理論と実際,調理食品と技術:日本調理食品研究会誌,日本,2010年,第16巻、第1号,第1〜14頁
前記共重合体(A)が、アクリル酸と2−ヒドロキシ−3−アリロキシプロパンスルホン酸との共重合体、アクリル酸と2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸との共重合体、及びアクリル酸と2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸とt−ブチルアクリルアミドとの共重合体のうちから選ばれる少なくとも1種である、請求項1〜3のいずれかに記載の水処理剤。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された殺菌殺藻剤組成物は、優れたスライムコントロール効果を発揮するものの、pH13以上と高アルカリ性であり、該組成物を含む薬液を配管に注入すると、水中の硬度成分がスケールを生じてノズルが閉塞することがあった。このため、通常のノズルでは配管注入が困難であり、ノズルの先端が循環水と直接接触するのを防止するための専用の薬品注入ノズルが必要であるという課題を有していた。
一方、特許文献2に記載された漂白剤組成物は、洗浄剤として使用されるものであり、水系に添加して使用されるものではない。しかも、経時安定性が不十分なものであった。特に、夏場の高温(40℃想定)条件下で、スライムコントロール効果を有する主成分が分解し、濃度が経時的に低下するという課題を有していた。
【0006】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、経時安定性を向上させ、夏場の高温下で保管した場合であっても、スライムコントロールのための有効成分の分解を抑制することができる水処理剤及びこれを用いた水処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、塩素系酸化剤及び塩素安定化剤を含有する水処理剤において、特定の(メタ)アクリル酸系コポリマーもしくはターポリマーを配合し、pH2〜6とすることにより、スライムコントロールのための有効成分の分解を抑制することを可能としたものである。
【0008】
すなわち、本発明は、次の[1]〜[9]を提供する。
[1]塩素系酸化剤と、塩素安定化剤と、アニオン性共重合体とを含み、pH2〜6であり、前記アニオン性共重合体が、モノマー成分として(メタ)アクリル酸とスルホン酸基を有する不飽和モノマーとを含む共重合体(A)、該共重合体(A)のアルカリ金属塩、及び該共重合体(A)のアルカリ土類金属塩のうちから選ばれる少なくとも1種である、水処理剤。
[2]前記塩素系酸化剤が次亜塩素酸塩である、上記[1]に記載の水処理剤。
[3]前記塩素安定化剤がスルファミン酸である、上記[1]又は[2]に記載の水処理剤。
[4]前記共重合体(A)が、アクリル酸と2−ヒドロキシ−3−アリロキシプロパンスルホン酸との共重合体、アクリル酸と2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸との共重合体、及びアクリル酸と2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸とt−ブチルアクリルアミドとの共重合体のうちから選ばれる少なくとも1種である、上記[1]〜[3]のいずれかに記載の水処理剤。
[5]pH4〜6である、上記[1]〜[4]のいずれかに記載の水処理剤。
[6]前記アニオン性共重合体を固形分濃度で1〜25質量%含有する、上記[1]〜[5]のいずれかに記載の水処理剤。
[7]さらに、アゾール系化合物を0.05〜3質量%含有する、上記[1]〜[6]のいずれかに記載の水処理剤。
【0009】
[8]上記[1]〜[7]のいずれかに記載の水処理剤を水系に添加する、水処理方法。
[9]前記水系が開放循環冷却水系又は膜濃縮水系である、上記[8]に記載の水処理方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、スライムコントロールを行うための水処理剤において、経時安定性を向上させることができる。本発明の水処理剤は、特に、夏場の高温下で保管した場合であっても、スライムコントロールのための有効成分の分解が抑制される。
したがって、本発明の水処理剤を用いた水処理方法は、冷却水系、RO水系、紙パルプ工程水系、スクラバー水系等におけるスライム抑制に好適に適用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の水処理剤は、塩素系酸化剤と、塩素安定化剤と、アニオン性共重合体とを含むものであり、pH2〜6である。
本発明の水処理剤は、ポリマー成分としてアニオン性共重合体である(メタ)アクリル酸系共重合体が配合され、また、pH2〜6と酸性にすることにより、スライムコントロールのための有効成分の分解の抑制を可能としたものである。
pHが6を超える場合、又はpHが2未満の場合は、高温(40℃以上)での保存安定性が十分に得られない。
前記水処理剤の液性は、保存安定性の観点から、pH3〜6であることが好ましく、より好ましくはpH4〜6である。高温(60℃以上)での保存安定性を考慮した場合は、さらにpH4.5〜5.5であることが好ましい。
前記水処理剤における塩素系酸化剤と、塩素安定化剤と、アニオン性共重合体との混合組成物は、酸性を示し、通常、pH3未満となるため、pHを高くする必要がある。pH調整には、一般的なアルカリ化合物を用いることができ、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム等が好適に用いられる。
【0013】
(アニオン性共重合体)
前記アニオン性共重合体は、モノマー成分として(メタ)アクリル酸とスルホン酸基を有する不飽和モノマーとを含む共重合体(A)、該共重合体(A)のアルカリ金属塩、及び該共重合体(A)のアルカリ土類金属塩のうちから選ばれる少なくとも1種である。
ここで、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルを意味する。また、本発明で言うアルカリ土類金属とは、広義に、ベリリウム及びマグネシウムも含む第2族元素を指す。
共重合体(A)は、モノマー成分として(メタ)アクリル酸とスルホン酸基を有する不飽和モノマーとを含むものであるが、これら以外のモノマー成分を1種以上含んでいてもよく、二元共重合体でも、三元共重合体であってもよい。
共重合体(A)が二元共重合体である場合は、共重合体(A)のモノマー構成単位である、(メタ)アクリル酸と、スルホン酸基を有する不飽和モノマーとの含有モル比率は、pH緩衝作用の観点から、99:1〜60:40であることが好ましい。高温(40℃以上)での保存安定性の観点から、より好ましくは99:1〜80:20、さらに好ましくは99:1〜95:5である。
また、三元共重合体である場合は、共重合体(A)のモノマー構成単位のうち、(メタ)アクリル酸と、スルホン酸基を有する不飽和モノマーとの合計100モル部に対して、他のモノマー成分の含有モル比率は、水への溶解性の観点から、10〜30モル部であることが好ましい。より好ましくは5〜20モル部、さらに好ましくは1〜15モル部である。
共重合体(A)の分子量は、特に限定されるものではないが、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法により測定した重量平均分子量Mwが500〜50000であることが好ましい。より好ましくは1000〜30000、さらに好ましくは5000〜20000である。
【0014】
前記アニオン性共重合体は、共重合体(A)に限られず、共重合体(A)のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩であってもよく、これらのうちの1種を単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。水への溶解性及びコストの観点からは、ナトリウム塩が好適に用いられる。
前記アルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩の種類は、特に限定されるものではないが、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、ストロンチウム塩及びバリウム塩等が挙げられる。これらは、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0015】
共重合体(A)は、二元共重合体としては、アクリル酸(以下、AAと略称する。)と2−ヒドロキシ−3−アリロキシプロパンスルホン酸との共重合体(以下、AA−HAPSの共重合体と表記する。)、又はアクリル酸と2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸との共重合体(以下、AA−AMPSの共重合体と表記する。)が好ましい。
三元共重合体としては、アクリル酸と2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸とt−ブチルアクリルアミドとの共重合体(以下、AA−AMPS−tBuAAMの共重合体と表記する。)が好ましい。
【0016】
前記アニオン性共重合体は、水処理剤の取り扱い容易性の観点から、水処理剤中、固形分濃度で1〜25質量%含有されていることが好ましい。前記含有量は、より好ましくは2〜10質量%、さらに好ましくは5〜10質量%である。
【0017】
(塩素系酸化剤)
塩素系酸化剤は、塩素安定化剤との反応により安定化塩素成分を生成し、スライムコントロールのための有効成分として機能する。
前記塩素系酸化剤としては、例えば、塩素ガス、二酸化塩素、並びに、次亜塩素酸、亜塩素酸、塩素酸、過塩素酸、塩素化イソシアヌル酸及びこれらの塩等が挙げられる。これらの塩素系酸化剤は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。これらのうち、次亜塩素酸又はその塩が好ましく、より好ましくは次亜塩素酸塩が用いられる。次亜塩素酸塩としては、特に限定されるものではないが、例えば、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カリウム、次亜塩素酸カルシウム及び次亜塩素酸バリウム等が挙げられる。これらのうち、次亜塩素酸ナトリウムが、入手容易性等の観点から好適に用いられる。
塩素系酸化剤の含有量は、特に限定されないが、水処理剤中、有効成分として1〜20質量%であることが好ましい。より好ましくは1〜10質量%、さらに好ましくは1〜5質量%である。
【0018】
(塩素安定化剤)
塩素安定化剤は、塩素系酸化剤との反応により安定化塩素成分を生成し、スライムコントロールのための有効成分として機能する。
前記塩素安定化剤は、例えば、スルファミン酸又はその誘導体;5,5’−ジメチルヒダントイン等のヒダントイン;イソシアヌル酸;尿素;ビウレット;カルバミン酸メチル;カルバミン酸エチル;アセトアミド、ニコチン酸アミド、及びメタンスルホンアミド、トルエンスルホンアミド等のアミド化合物;マレイミド、コハク酸イミド、及びフタルイミド等のイミド化合物;グリシン、アラニン、ヒスチジン、及びリジン等のアミノ酸;並びにメチルアミン、ヒドロキシルアミン、モルホリン、ピペラジン、イミダゾール、及びヒスタミン等のアミン;アンモニア;硫酸アンモニウム等のアンモニウム塩等が挙げられる。これらの塩素安定化剤は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。これらのうち、スルファミン酸が特に好ましい。
スルファミン酸誘導体としては、例えば、N−メチルスルファミン酸、N,N−ジメチルスルファミン酸及びN−フェニルスルファミン酸、並びにこれらの塩等が挙げられる。
スルファミン酸塩としては、具体的には、スルファミン酸ナトリウム、スルファミン酸カリウム、スルファミン酸カルシウム、スルファミン酸ストロンチウム、スルファミン酸バリウム、スルファミン酸鉄、スルファミン酸亜鉛、スルファミン酸アンモニウム等が挙げられる。
塩素化安定剤の含有量は、塩素系酸化剤との十分な反応性の観点から、塩素系酸化剤に対して1〜5倍モルであることが好ましい。より好ましくは1〜4倍モル、さらに好ましくは1.2〜3倍モルである。
【0019】
(アゾール系化合物)
前記水処理剤は、さらに、防食効果を高める観点から、アゾール系化合物を含有していることが好ましい。
アゾール系化合物は、ヘテロ原子を2個以上含み、そのうちの少なくとも1個が窒素原子である複素5員環を有する化合物である。具体的には、イミダゾール、ピラゾール、オキサゾール、チアゾール、トリアゾール及びテトラゾール等の単環式アゾール系化合物、ベンゾイミダゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾイソオキサゾール、ベンゾチアゾール、メルカプトベンゾイミダゾール、メルカプトメチルベンゾイミダゾール、メルカプトベンゾチアゾール、ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、インダゾール、プリン、イミダゾチアゾール、ピラゾロオキサゾール及びチアベンダゾール等の縮合多環式アゾール系化合物、並びにこれらの塩等が挙げられる。これらのアゾール系化合物は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。これらのうち、ベンゾトリアゾール及びトリルトリアゾールが好ましく、ベンゾトリアゾールがより好ましい。
アゾール系化合物の含有量は、水処理剤中、0.05〜3質量%であることが好ましい。より好ましくは0.1〜2質量%、さらに好ましくは0.5〜1質量%である。
【0020】
なお、前記水処理剤は、経時安定性が損なわれず、スライムコントロール効果を低下させない範囲で、その使用目的に応じて、塩素系酸化剤、塩素安定化剤、アニオン性共重合体及びアゾール系化合物以外の添加剤を含んでいてもよい。任意成分である添加剤としては、例えば、防腐剤、スケール防止剤、剥離剤及び消泡剤等が挙げられる。
【0021】
前記水処理剤の調製方法は、特に限定されるものではなく、上述した水処理剤の各構成成分が含有されるように、水中に所定濃度となるように添加混合することにより調製することができる。
【0022】
(水処理方法)
本発明の水処理方法は、前記水処理剤を水系に添加するものである。適用される水系は、特に限定されるものではなく、例えば、冷却水系、RO水系、紙パルプ工程水系、スクラバー水系等が挙げられる。こられの中でも、特に、開放循環冷却水系又は膜濃縮水系におけるスライム抑制に好適に適用することができる。
また、前記水処理剤の水系における使用濃度は、特に限定されるものではなく、使用目的に応じて適宜調整される。通常は、前記水処理剤が100〜1000mg/Lとなるような濃度範囲で使用される。
【実施例】
【0023】
以下、本発明をより詳細に説明するが、本発明は下記実施例により限定されるものではない。
下記実施例及び比較例に示すような水処理剤を調製し、各水処理剤の経時安定性評価を行った。
【0024】
(評価方法)
下記実施例及び比較例で調製した各水処理剤を容量100mLのポリエチレン製白色細口ビンに入れ、室温(25℃)又は40℃の恒温槽で静置保管し、スライムコントロール有効成分の残留量及びpHの経時変化を調べることにより評価を行った。
スライムコントロール有効成分の残留量は、初期塩素濃度に対する残留塩素濃度の割合(安定化塩素残留率)として求めた。初期塩素濃度及び残留塩素濃度は、JIS K 0101:1998「28.3 よう素滴定法」に準拠して測定した。
【0025】
(水処理剤の調製)
[実施例1]
塩素系酸化剤(有効成分)として次亜塩素酸ナトリウム2.5質量%と、塩素安定化剤としてスルファミン酸7.5質量%(次亜塩素酸ナトリウムに対して2.2倍モル)と、アゾール系化合物としてベンゾトリアゾール0.25質量%と、アニオン性共重合体としてAA−HAPSの共重合体(モノマー含有モル比率AA:HAPS=98:2、Mw=9500)を固形分濃度4質量%と、水とを混合し、水酸化ナトリウムによりpH調整し、pH4.7の水処理剤を調製した。
【0026】
[実施例2]
実施例1において、AA−HAPSの共重合体として、モノマー含有モル比率AA:HAPS=95:5、Mw=11000のものを用い、それ以外は実施例1と同様にして、pH4.7の水処理剤を調製した。
【0027】
[実施例3]
実施例1において、AA−HAPSの共重合体として、モノマー含有モル比率AA:HAPS=90:10、Mw=11000のものを用い、それ以外は実施例1と同様にして、pH4.7の水処理剤を調製した。
【0028】
[実施例4]
実施例1において、AA−HAPSの共重合体として、モノマー含有モル比率AA:HAPS=82:18、Mw=11000のものを用い、それ以外は実施例1と同様にして、pH4.7の水処理剤を調製した。
【0029】
図1,2に、実施例1〜4についての安定化塩素残留率の経時変化をグラフとして示した。
図1は室温(25℃)の場合、
図2は40℃の場合である。
図1,2に示した結果から分かるように、AA−HAPSの共重合体を用いた場合、室温(25℃)では、少なくとも30日経過までは、安定化塩素残留率が90%以上と高く、スライムコントロール成分の残留が維持されることが認められた(
図1)。また、40℃でも、安定化塩素残留率は70%以上であり、特に、AA:HAPS=98:2(実施例1)、95:5(実施例2)の場合に、より高い安定化塩素残留率を示し、スライムコントロール成分の残留が維持されることが認められた(
図2)。
【0030】
[実施例5]
実施例2において、AA−HAPSの共重合体(モノマー含有モル比率AA:HAPS=95:5)として、Mw=5000のものを用い、それ以外は実施例2と同様にして、pH4.7の水処理剤を調製した。
【0031】
[実施例6]
実施例2において、AA−HAPSの共重合体(モノマー含有モル比率AA:HAPS=95:5)として、Mw=20000のものを用い、それ以外は実施例2と同様にして、pH4.7の水処理剤を調製した。
【0032】
[比較例1]
実施例1において、AA−HAPSの共重合体に代えて、AA重合体(Mw=3500)を用い、それ以外は実施例1と同様にして、pH4.7の水処理剤を調製した。
【0033】
[比較例2]
比較例1において、AA重合体として、Mw=20000のものを用い、それ以外は実施比較例1と同様にして、pH4.7の水処理剤を調製した。
【0034】
図3,4に、実施例5,6及び比較例1,2についての安定化塩素残留率の経時変化をグラフとして示した。
図3は室温(25℃)の場合、
図4は40℃の場合である。
図3,4に示した結果から分かるように、AA−HAPSの共重合体(Mw=5000,20000)を用いた場合(実施例5,6)、少なくとも30日経過までは、安定化塩素残留率が90%以上と高く、従来のAA単独の重合体(Mw=3500,20000)を用いた場合(比較例1,2)に比べて、スライムコントロール成分の残留が維持されることが認められた(
図3)。また、実施例5,6は、40℃でも、安定化塩素残留率は80%以上であり、比較例1,2よりも、安定化塩素残留率が高く、スライムコントロール成分の残留が維持されることが認められた(
図4)。
【0035】
[実施例7]
実施例1において、AA−HAPSの共重合体に代えて、AA−AMPSの共重合体(モノマー含有モル比率AA:AMPS=79:21、Mw=11000)を用い、それ以外は実施例1と同様にして、pH4.7の水処理剤を調製した。
【0036】
[実施例8]
実施例1において、AA−HAPSの共重合体に代えて、AA−AMPS−tBuAAMの共重合体(モノマー含有モル比率AA:AMPS:tBuAAM=77:12:11、Mw=5000)を用い、それ以外は実施例1と同様にして、pH4.7の水処理剤を調製した。
【0037】
図5に、実施例7,8について、室温(25℃)の場合、及び40℃の場合の安定化塩素残留率の経時変化をグラフとして示した。
図5に示した結果から分かるように、AA−AMPSの共重合体(実施例7)、及びAA−AMPS−tBuAAMの共重合体(実施例8)でも、AA−HAPSの共重合体と同様に、安定化塩素残留率が高く、スライムコントロール成分の残留が維持されることが認められた。特に、40℃の場合、AA−HAPSの共重合体よりも高い安定化塩素残留率を示し、スライムコントロール成分の残留が維持されることが認められた。
【0038】
[実施例9]
塩素系酸化剤(有効成分)として次亜塩素酸ナトリウム2.5質量%と、塩素安定化剤としてスルファミン酸13.2質量%(次亜塩素酸ナトリウムに対して3.8倍モル)と、アゾール系化合物としてベンゾトリアゾール0.25質量%と、アニオン性共重合体としてAA−HAPSの共重合体(モノマー含有モル比率AA:HAPS=95:5、Mw=11000)を固形分濃度5質量%と、水とを混合し、水酸化ナトリウムによりpH調整し、pH4.0の水処理剤を調製した。
【0039】
[実施例10]
pHを4.5に調整し、それ以外は実施例9と同様にして、水処理剤を調製した。
【0040】
[実施例11]
pHを4.7に調整し、それ以外は実施例9と同様にして、水処理剤を調製した。
【0041】
[実施例12]
pHを5.0に調整し、それ以外は実施例9と同様にして、水処理剤を調製した。
【0042】
[実施例13]
pHを5.5に調整し、それ以外は実施例9と同様にして、水処理剤を調製した。
【0043】
[実施例14]
pHを6.0に調整し、それ以外は実施例9と同様にして、水処理剤を調製した。
【0044】
図6〜8に、実施例9〜14についての安定化塩素残留率の経時変化をグラフとして示した。
図6は室温(25℃)の場合、
図7は40℃の場合、
図8は60℃の場合である。
【0045】
図6〜8に示した結果から分かるように、室温(25℃)の場合(
図6)は、pH4.0〜6.0での安定化塩素残留率の大差はなく、いずれも、少なくとも30日経過までは、安定化塩素残留率は90%以上であった。40℃の場合(
図7)は、室温(25℃)の場合(
図6)よりも、安定化塩素残留率の低下率が大きいが、pH4.0〜6.0のいずれでも、少なくとも30日経過までは、安定化塩素残留率は80%以上であった。ただし、60℃の場合(
図8)は、安定化塩素残留率の低下率が大きく、特に、pH4.0(実施例9)は経時安定性が劣り、また、pH6.0(実施例14)は、5日以内の初期の安定化塩素残留率の低下率が他に比べて大きい。このことから、高温での保存安定性の観点からは、pH4.5〜5.5が好ましいと言える。