特許第6645544号(P6645544)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6645544産業機械部品部材に用いるポリウレタンエラストマー形成性組成物、およびそれを用いた産業機械部品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6645544
(24)【登録日】2020年1月14日
(45)【発行日】2020年2月14日
(54)【発明の名称】産業機械部品部材に用いるポリウレタンエラストマー形成性組成物、およびそれを用いた産業機械部品
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/08 20060101AFI20200203BHJP
   C08G 18/10 20060101ALI20200203BHJP
   C08G 18/16 20060101ALI20200203BHJP
【FI】
   C08G18/08 090
   C08G18/10
   C08G18/16
【請求項の数】4
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2018-162413(P2018-162413)
(22)【出願日】2018年8月31日
(62)【分割の表示】特願2014-131699(P2014-131699)の分割
【原出願日】2014年6月26日
(65)【公開番号】特開2018-204030(P2018-204030A)
(43)【公開日】2018年12月27日
【審査請求日】2018年9月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】柳原 友
(72)【発明者】
【氏名】中島 雄次
(72)【発明者】
【氏名】野村 弘二
【審査官】 工藤 友紀
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/080750(WO,A1)
【文献】 国際公開第2008/023690(WO,A1)
【文献】 特開2006−274146(JP,A)
【文献】 特開2005−314502(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0153507(US,A1)
【文献】 中国特許出願公開第1531561(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/00−18/87
C08L 75/00−75/16
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともイソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(A)、水酸基末端硬化剤(B)、酸化防止剤を含む産業機械部品部材用熱硬化性ポリウレタンエラストマー形成性組成物において、
イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(A)は、反応抑制剤(C)として、エチレンオキサイドが開環あるいは重合してなる鎖状構造を1つ以上持つリン酸エステル化合物が5〜600ppmで存在する下で反応した反応生成物であることを特徴とする産業機械部品部材用熱硬化性ポリウレタンエラストマー形成性組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の産業機械部品部材用熱硬化性ポリウレタンエラストマー形成性組成物において、
水酸基末端硬化剤(B)が、触媒(D)として、少なくともポリウレタン用ヌレート化触媒(D1)、及び/又はポリウレタン用アロファネート化触媒(D2)を含むことを特徴とする産業機械部品部材用熱硬化性ポリウレタンエラストマー形成性組成物。
【請求項3】
請求項1または2に記載の産業機械部品部材用熱硬化性ポリウレタンエラストマー形成性組成物において、
イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(A)と水酸基末端硬化剤(B)の混合比(官能基比)が、水酸基/イソシアネート基=0.2〜0.8(モル比)であることを特徴とする産業機械部品部材用熱硬化性ポリウレタンエラストマー形成性組成物。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の産業機械部品部材用熱硬化性ポリウレタンエラストマー形成性組成物を熱硬化処理して得られる産業機械部品部材のJIS−A硬度が60〜95の範囲であることを特徴とする産業機械部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、産業機械部品部材に用いられる熱硬化性ポリウレタンエラストマー形成性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
熱硬化性ポリウレタンエラストマーは、高モジュラス、高破断強度、低摩耗、低歪であることから耐久性が非常に高く、産業機械の部品部材として広く好適に使用されている。
【0003】
一般的に産業機器部品部材に用いられる熱硬化性ポリウレタンエラストマーは、イソシアネート成分からなる主剤と、活性水素含有成分からなる硬化剤とを、注型機のミキシングヘッドで混合し、得られた混合液を型内に注入し、この型内で当該混合液を加熱硬化(ウレタン化反応)させることにより製造することができる。
【0004】
ここに、熱硬化性ポリウレタンエラストマーを成形するための形成性組成物をなす成分として、イソシアネートとポリオールから成るイソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(A)(以下「NCO基末端ウレタンプレポリマー」と略記)とポリオールから成る水酸基末端硬化剤(B)(以下「OH基末端硬化剤」と略記)とを、混合し加熱硬化させる方法が一般的に用いられる。
【0005】
例えば、イソシアネート成分としてジフェニルメタジイソジアネート(以下「MDI」と略記)と、ポリオールとしてポリブチレンアジペート(以下「PBA」と略記)からなるNCO基末端ウレタンプレポリマーと、ポリオール成分として1,4−ブタンジオール、トリメチロールプロパンとPBAとを、混合したOH基末端硬化剤が好適に用いられている。
【0006】
前記のNCO基末端ウレタンプレリマー(A)を製造する際は、合成時の副反応の抑制、着色の抑制や得られるNCO基末端ウレタンプレリマー(A)の貯蔵安定性向上を目的にリン酸化合物等の酸性化合物を反応抑制剤(C)として添加し製造されている(例えば、特許文献1〜4参照)。
【0007】
近年、産業機械部品は低コスト化が求められることから、成形サイクルの短縮が行われている。これにより、生産性が向上するばかりではなく、エネルギーコストも削減できる。また、金型の回転サイクルが短くなるため、金型数も削減が図れることから、設備投資コストも抑えることが可能である。
【0008】
以上の事情から、成形サイクル短縮のため、触媒(D)としてヌレート化触媒(D1)やアロファネート化触媒(D2)が用いられている。また、得られる熱硬化性ポリウレタンエラストマーの機械強度向上のため、イソシアネート基過剰配合(水酸基/イソシアネート基=0.3〜0.8(モル比))で成形する方法が用いられている(例えば、特許文献5〜7参照)。
【0009】
特に反応制御、機械強度のコントロールの容易さから、酢酸カリウムや4級アンモニウム塩等のヌレート化触媒(D1)を用いた処方が好適に用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開昭49−75505号公報
【特許文献2】特開昭57−82358号公報
【特許文献3】特開平7−173240号公報
【特許文献4】特開平8−231669号公報
【特許文献5】特開2002−20445号公報
【特許文献6】特開2005−314502号公報
【特許文献7】特開2009−227875号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、これらの処方では過剰配合しているNCO基末端ウレタンプレポリマー(A)が、熱硬化処理時に局所的にヌレート化反応やアロファネート化反応が進まないことがあり、非常に微小ではあるが、未反応のNCO末端プレポリマー(A)が成形物中に未反応異物として残り、この部分を起点に機械強度が低下し破断等が起こりやすく産業機械部品としての特性を損ねる等の問題を抱えている。
【0012】
本発明は以上のような事情に基づいてなされたものであり、産業機械部品部材用熱硬化性ポリウレタンエラストマー形成性組成物のNCO基末端ウレタンプレポリマー(A)が反応抑制剤(C)として、少なくとも1つ以上のエチレンオキサイドを置換基骨格内に持つリン酸エステル化合物を5〜600ppm含ませることで、プレポリマーの性状を損ねることなく、成形サイクルが短く、成形物中に未反応異物の発生がない、機械強度が高く強靭な産業機械部品用の熱硬化性ポリウレタンエラストマーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、以下の(1)から(4)に示されるものである。
(1)少なくともNCO基末端ウレタンプレポリマー(A)、OH基末端硬化剤(B)からなる産業機械部品用の熱硬化性ポリウレタンエラストマー形成性組成物において、NC0基末端ウレタンプレポリマー(A)が、反応抑制剤(C)として、少なくとも1つ以上のエチレンオキサイドを置換基骨格内に持つリン酸エステル化合物を5〜600ppm含むことを特徴とする。
(2)前記(1)に記載のOH基末端硬化剤(B)が、触媒(D)として、少なくともポリウレタン用ヌレート化触媒(D1)、及び/又はポリウレタン用アロファネート化触媒(D2)を含むことを特徴とする。
(3)前記(1)または(2)のいずれか一つに記載のNCO基末端ウレタンプレポリマー(A)とOH基末端硬化剤(B)の混合比(官能基比)が、水酸基/イソシアネート基(以下「α値」と略記)=0.2〜0.8(モル比)であることを特徴とする。
(4)前記(1)から(3)のいずれか一つに記載の産業機械部品用熱硬化ポリウレタンエラストマー形成性組成物を熱硬化処理して得られる産業機械部品部材のJIS−A硬度が60〜95の範囲であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の産業機械部品用熱硬化性ポリウレタンエラストマー形成性組成物を産業機械に用いることで、従来ではなし得なかった成形物中の未反応異物を無くし、且つ、NCO基末端ウレタンプレポリマーの性状を損ねることなく、成形サイクルの短く強靭な産業機械部品用の熱硬化性ポリウレタンエラストマーを得ることが出来る。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の産業機械部品用熱硬化性ポリウレタンエラストマー形成性組成物は、少なくともNCO基末端ウレタンプレポリマー(A)が、反応抑制剤(C)として、少なくとも1つ以上のエチレンオキサイドを置換基骨格内に持つリン酸エステル化合物を5〜600ppm含む点に特徴がある。このように、1つ以上のエチレンオキサイドを置換基骨格内に持つリン酸エステル化合物を用いることで、得られるNCO基末端ウレタンプレポリマー(A)は、製造時や在庫保管時の副反応が抑えられ粘度が低く、着色も非常に少なく色数が低いNCO基末端ウレタンプレポリマー(A)が得られる。1つ以上のエチレンオキサイドを置換基骨格内に持つリン酸エステル化合物の添加量が5ppm以下の場合は、粘度が高く色数も非常に高いNCO基末端ウレタンプレポリマーが得られ、品質面で使用が難しい。この他、このNCO基末端ウレタンプレポリマー(A)を用い、近年、実施されている成形サイクル短縮のため、触媒(D)としてヌレート化触媒(D1)やアロファネート化触媒(D2)を導入した処方で得られる熱硬化性ポリウレタンエラストマーの産業機械部品は、過剰配合したNCO基末端ウレタンプレポリマー(A)が綺麗に反応し、未反応異物が無い均一で強靭な硬化物を得ることができる。上記に記載の1つ以上のエチレンオキサイドを置換基骨格内に持つリン酸エステル化合物以外の反応抑制剤を用いた場合は、過剰配合したNCO基末端ウレタンプレポリマー(A)が綺麗に反応せず、未反応異物が発生し、不均一で強度の弱い硬化物となってしまう。また、1つ以上のエチレンオキサイドを置換基骨格内に持つリン酸エステル化合物の添加量が600ppm以上の場合は、OH基末端硬化剤に添加する触媒(D)との反応バランスを崩し、熱硬化処理時に十分に反応が進まなくなり、成形サイクルの短縮が図れなくなる。
本発明に用いる反応抑制剤(C)として使用する1つ以上のエチレンオキサイドを置換基骨格内に持つリン酸エステル化合物は、本発明の効果を奏すれば、特に限定されるものでないが、例として一般式1〜3等で示すことができる。
【0016】
【化1】
一般式1〜3の具体例として、n、m、l=1〜100であり、R1、R2、R3は炭素数1〜60の直鎖、分岐、又は環状の飽和又は不飽和アルキルがよく、特に好ましくはn、m、l=1〜30であり、R1、R2、R3は炭素数6〜30の直鎖、分岐、又は環状の飽和又は不飽和アルキル(フェニル基を含む)である。n、m、lの数及びR1、R2、R3の構造は同一であっても、異なっていても良い。市販化されている具体例として、ジ(C12−15)パレス−2リン酸「NIKKOL DDP−2 日光ケミカルズ社製」、ジ(C12−15)−パレス4リン酸「NIKKOL DDP−4 日光ケミカルズ社製」、ジ(C12−15)−パレス6リン酸「NIKKOL DDP−6 日光ケミカルズ社製」、ジ(C12−15)−パレス8リン酸「NIKKOL DDP−8 日光ケミカルズ社製」、ジ(C12−15)−パレス10リン酸「NIKKOL DDP−10 日光ケミカルズ社製」、リン酸(モノ,ジ)ポリエチレングルコール(5EO)C10−12アルコール「Phospholan PS−236 Akzo Npbe社製」、リン酸(モノ,ジ)ポリエチレングルコール(3EO)C10−15アルコール「Phospholan PS−222 Akzo Npbe社製」、リン酸(モノ,ジ)C10−14アルコール−3−エトキシレート「Phospholan PS−220 Akzo Npbel社製」、リン酸(モノ,ジ)ポリエチレングルコール(6EO)+トリデカノール「Phospholan PS−131 Akzo Npbe社製」、ポリオキシエチレントリデシルエーテルリン酸エステル「プライサーフ A212C、プライサーフ A215C 第一工業製薬社製」、ポリオキシエチレンアルキル(C8)リン酸エステル「プライサーフ A208F、プライサーフ A215C 第一工業製薬社製」、ポリオキシエチレンアルキル(C12、13)リン酸エステル「プライサーフ A208M、プライサーフ A215C 第一工業製薬社製」、ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸エステル「プライサーフ A208B、プライサーフ A219B 第一工業製薬社製」、ポリオキシエチレンアルキル(C10)エーテルリン酸エステル「プライサーフ A210D 第一工業製薬社製」、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテルリン酸エステル「プライサーフ AL、プライサーフ AL12H 第一工業製薬社製」、リン酸(モノ,ジ)ポリエチレングリコール(4E0)4−ノニフェニル「試薬 東京化成工業社製」、トリ(C12−15)パレス−2リン酸「NIKKOL TDP−2 日光ケミカルズ社製」、トリ(C12−15)パレス−4リン酸「NIKKOL TDP−4 日光ケミカルズ社製」、トリ(C12−15)パレス−6リン酸「NIKKOL TDP−6 日光ケミカルズ社製」、トリ(C12−15)パレス−8リン酸「NIKKOL TDP−8 日光ケミカルズ社製」、トリ(C12−15)パレス−10リン酸「NIKKOL TDP−10 日光ケミカルズ社製」、ホスフェートポリエーテルエステル「TRITON H−55、H−66、QS−44、XQS−20 ダウサーファクタンツ社製」等が挙げられる。
【0017】
本発明に用いるNCO基末端ウレタンプレポリマー(A)は、反応抑制剤(C)を用い、少なくともポリイソシアネート(A1)とポリオール(A2)とのウレタン化反応により得ることができる。また、NCO基末端ウレタンプレポリマー(A)のNCO含量は、5〜25質量%が好ましい。NCO含量が5質量%より低い場合には、主にプレポリマーの粘度が高くなり、注型時にウレタン樹脂の流れ性が著しく悪化する。25質量%より高い場合は、保存時及び使用時の性状安定性が著しく悪化し、安定した産業機械部品が得にくく、成形不良に繋がるなどの問題を抱えるため、産業機械部品部材用のNCO基末端ウレタンプレポリマーとして適さないものとなってしまう。
【0018】
NCO基末端ウレタンプレポリマー(A)は、攪拌容器内にポリイソシアネート(A1)と反応抑制剤(C)を投入攪拌し、その後、攪拌容器内の温度を40〜70℃に保ちながらポリオール(A2)を投入攪拌する。続いて、攪拌容器内の温度を70〜90℃に保ちながら、2〜5時間程度ウレタン化反応を進めることで、NCO基末端ウレタンプレポリマー(A)を得ることができる。
【0019】
本発明に用いるポリイソシアネート(A1)は、本発明の効果を奏すれば、特に限定されるものでないが、機械物性や反応制御の観点から、芳香族ジイソシアネートからから少なくとも1種類選ばれることが好ましく、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネートが特に好ましい。
【0020】
<ポリイソシアネート>
ポリイソシアネート(A1)の具体例として、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、シクロヘキシルジイソシアネート、4,4′−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、水素添加トリメチルキシリレンジイソシアネート、2−メチルペンタン−1,5−ジイソシアネート、3−メチルペンタン−1,5−ジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサヘチレン−1,6−ジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサヘチレン−1,6−ジイソシアネート等の脂肪族及び脂環族ジイソシアネート。4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2′−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、4,4′−ジベンジルジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、パラフェニレンジイソシアネート、トリレン−2,4−ジイソシアネート、トリレン−2,6−ジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート。オルトキシリレンジイソシアネート、メタキシリレンジイソシアネート、パラキシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の難黄変ジイソシアネート。また、いずれかのイソシアネートのウレタン変性体、ウレア変性体、カルボジイミド変性体、ウレトンイミン変性体、ウレトジオン変性体、イソシアヌレート変性体、アロファネート変性体等も使用できる。
【0021】
本発明に用いるポリオール(A2)は、本発明の効果を奏すれば、特に限定されるものでないが、機械物性やガラス転移温度の観点から、平均官能基数2〜3、数平均分子量250〜5000のポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオールから少なくとも1種類選ばれることが好ましい。なお、必要に応じて、モノマーポリオールを併用することもできる。
【0022】
<ポリエステルポリオール>
ポリエステルポリオールの具体例としては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、コハク酸、酒石酸、シュウ酸、マロン酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、グルタコン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,4−シクロヘキシルジカルボン酸、α−ハイドロムコン酸、β−ハイドロムコン酸、α−ブチル−α−エチルグルタル酸、α,β−ジエチルサクシン酸、マレイン酸、フマル酸等のジカルボン酸またはこれらの無水物等の1種類以上と、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、3,3−ジメチロールヘプタン、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサン−1,4−ジオール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール、ダイマー酸ジオール、ビスフェノールAのエチレンオキサイドやプロピレンオキサイド付加物、ビス(β−ヒドロキシエチル)ベンゼン、キシリレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の分子量500以下の低分子ポリオール類の1種類以上との縮重合反応から得られるものを挙げることができる。また、低分子ポリオールの一部をヘキサメチレンジアミン、イソホロンジアミン、モノエタノールアミン等の低分子ポリアミンや低分子アミノアルコールに代えて得られるポリエステル−アミドポリオールを使用することもできる。
【0023】
<ポリエーテルポリオール>
また、ポリエーテルポリオールの具体例としては、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、3,3−ジメチロールヘプタン、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサン−1,4−ジオール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール、ダイマー酸ジオール、ビスフェノールA、ビス(β−ヒドロキシエチル)ベンゼン、キシリレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の低分子ポリオール類、またはエチレンジアミン、プロピレンジアミン、トルエンジアミン、メタフェニレンジアミン、ジフェニルメタンジアミン、キシリレンジアミン等の低分子ポリアミン類等のような活性水素基を2個以上、好ましくは2〜3個有する化合物を開始剤として、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等のようなアルキレンオキサイド類を付加重合させることによって得られるポリエーテルポリオール、或いはメチルグリシジルエーテル等のアルキルグリシジルエーテル類、フェニルグリシジルエーテル等のアリールグリシジルエーテル類、テトラヒドロフラン等の環状エーテルモノマーを開環重合することで得られるポリエーテルポリオールを挙げることができる。
【0024】
<ポリカーボネートポリオール>
ポリカーボネートポリオールの具体例としては、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、3,3−ジメチロールヘプタン、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、シクロヘキサン−1,4−ジオール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール、ダイマー酸ジオール、ビスフェノールAのエチレンオキサイドやプロピレンオキサイド付加物、ビス(β−ヒドロキシエチル)ベンゼン、キシリレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の低分子ポリオールの一種類以上と、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等のジアルキルカーボネート類、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のアルキレンカーボネート類、ジフェニルカーボネート、ジナフチルカーボネート、ジアントリルカーボネート、ジフェナントリルカーボネート、ジインダニルカーボネート、テトラヒドロナフチルカーボネート等のジアリールカーボネート類との脱アルコール反応や脱フェノール反応から得られるものを挙げることができる。
【0025】
<モノマーポリオール>
モノマーポリオールの具体例として、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、3,3−ジメチロールヘプタン、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサン−1,4−ジオール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール、ダイマー酸ジオール、ビスフェノールA、ビス(β−ヒドロキシエチル)ベンゼン、キシリレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等が挙げられる。
【0026】
また、ポリオール(B)には、性能の低下しない範囲で、ポリオレフィンポリオール、アクリルポリオール、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシ化合物、シリコーンポリオール、ヒマシ油系ポリオール、フッ素系ポリオールを単独、又は2種以上を併用することができる。
【0027】
<ポリオレフィンポリオール>
ポリオレフィンポリオールの具体例としては、水酸基を2個以上有するポリブタジエン、水素添加ポリブタジエン、ポリイソプレン、水素添加ポリイソプレン等を挙げることができる。
【0028】
<アクリルポリオール>
アクリルポリオールとしては、アクリル酸エステル及び/又はメタクリル酸エステル〔以下(メタ)アクリル酸エステルという〕と、反応点となりうる少なくとも分子内に1個以上の水酸基を有するアクリル酸ヒドロキシ化合物及び/又はメタクリル酸ヒドロキシ化合物〔以下(メタ)アクリル酸ヒドロキシ化合物という〕と、重合開始剤とを熱エネルギーや紫外線または電子線などの光エネルギー等を使用し、アクリルモノマーを共重合したものを挙げることができる。
【0029】
<(メタ)アクリル酸エステル>
(メタ)アクリル酸エステルの具体例としては、炭素数1〜20のアルキルエステルものを挙げることができる。このような(メタ)アクリル酸エステルの具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシルのような(メタ)アクリル酸アルキルエステル、シクロヘキシル(メタ)アクリレートのような(メタ)アクリル酸の脂環属アルコールとのエステル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジルのような(メタ)アクリル酸アリルエステルを挙げることができる。このような(メタ)アクリル酸エステルは、単独、又は2種類以上組み合わせたものを挙げることができる。
【0030】
<(メタ)アクリル酸ヒドロキシ化合物>
(メタ)アクリル酸ヒドロキシ化合物の具体例としては、ポリイソシアネート組成物との反応点となりうる少なくとも分子内に1個以上の水酸基を有しており、具体的には、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、3−ヒドロキシ−2,2−ジメチルプロピルアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレートなどのアクリル酸ヒドロキシ化合物が挙げられる。また、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクリレート、3−ヒドロキシ−2,2−ジメチルプロピルメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレートなどのメタクリル酸ヒドロキシ化合物が挙げられる。これらアクリル酸ヒドロキシ化合物及び/又はメタクリル酸ヒドロキシ化合物は、単独、又は2種以上を組み合わせたものを挙げることができる。
【0031】
<重合開始剤>
重合開始剤は、熱重合開始剤、光重合開始剤を挙げることができ、重合方法によって適宜選択される。
熱重合開始剤の具体例としては、ジ−2−エチルヘキシルペルオキシジカーボネート等のペルオキシジカーボネート類、t−ブチルペルオキシベンゾエート、t−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、t−ヘキシルペルオキシイソプロピルカーボネート等のペルオキシエステル類、ジ(t−ブチルペルオキシ)−2−メチルシクロヘキサン、ジ(t−ブチルペルオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサンおよびジ(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン等のペルオキシケタール類等が挙げることができる。
また、光重合開始剤の具体例としては、アセトフェノン、メトキシアセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、p−ジメチルアミノアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、α−ヒドロキシ−α,α′−ジメチルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−シクロヘキシルアセトフェノン、2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モンフォリノプロパノン−1等のアセトフェノン類、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルブチルエーテル等のベンゾインエーテル類、ベンゾフェノン、2−クロロベンゾフェノン、p,p′−ジクロロベンゾフェノン、N,N′−テトラメチル−4,4′−ジアミノベンゾフェノン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン等のケトン類、チオキサンソン、2−クロロチオキサンソン、2−メチルチオキサンソン等のチオキサンソン類、ビスアシルホスフィンオキサイド、ベンゾイルホスフィンオキサイド等のホスフィン酸化物、ベンジルジメチルケタール等のケタール類、カンファン−2,3−ジオン、フェナントレンキノン等のキノン類などを挙げることができる。
【0032】
<シリコーンポリオール>
シリコーンポリオールの具体例としては、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランなどを重合したビニル基含有シリコーン化合物、及び分子中に少なくとも1個の末端水酸基を有する、α,ω−ジヒドロキシポリジメチルシロキサン、α,ω−ジヒドロキシポリジフェニルシロキサン等のポリシロキサンを挙げることができる。
【0033】
<ヒマシ油系ポリオール>
ヒマシ油系ポリオールの具体例としては、ヒマシ油脂肪酸とポリオールとの反応により得られる線状または分岐状ポリエステルポリオールが挙げられる。また、脱水ヒマシ油、一部分を脱水した部分脱水ヒマシ油、水素を付加させた水添ヒマシ油も使用することができる。
【0034】
<フッ素系ポリオール>
フッ素系ポリオールの具体例としては、含フッ素モノマーとヒドロキシ基を有するモノマーとを必須成分として共重合反応により得られる線状、又は分岐状のポリオールである。ここで、含フッ素モノマーとしては、フルオロオレフィンであることが好ましく、例えば、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、トリクロロフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、フッ化ビニリデン、フッ化ビニル、トリフルオロメチルトリフルオロエチレンが挙げられる。また、ヒドロキシル基を有するモノマーとしては、例えば、ヒドロキシエチルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、シクロヘキサンジオールモノビニルエーテル等のヒドロキシアルキルビニルエーテル、2−ヒドロキシエチルアリルエーテル等のヒドロキシアルキルアリルエーテル、ヒドロキシアルキルクロトン酸ビニル等のヒドロキシル基含有カルボン酸ビニル、又はアリルエステル等のヒドロキシル基を有するモノマーが挙げられる。
【0035】
本発明に用いるOH基末端硬化剤(B)は、前述のポリオール(A2)を用いることができるが、本発明の効果を奏すれば、特に限定されるものでない。機械物性や成形加工性を向上させる観点から、モノマーポリオールを単独で又は2種以上混合して用いることができる。また、更に平均官能基数2〜3、数平均分子量250〜5000のポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、及びポリカーボネートポリオールのいずれかのポリオールを加えた混合物を用いることができる。モノマーポリオールとしては、1,4−ブタンジオールとトリメチロールプロパンとの混合物が好ましい。また、更に平均官能基数2、平均分子量500〜3000のポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオールを加えた混合物が好ましい。
【0036】
本発明に用いる触媒(D)として用いる、ポリウレタン用ヌレート化触媒(D1)、ポリウレタン用アロファネート化触媒(D2)は、発明の効果を奏すれば、特に限定されるものでない。機械物性や成形加工性を向上させる観点から、ポリウレタン用ヌレート化触媒(D1)として、カリウム塩や4級アンモニウム塩が好ましく、ポリウレタン用アロファネート化触媒(D2)として、N,N,N’−トリメチルアミノエチルエタノールアミンやN,N−ジメチルアミノエトキシエタノールが好ましい。なお、ウレタン化反応を促進するウレタン化触媒として、トリエチレンジアミン等のアミン触媒、1−イソブチル−2−メチルイミダーゾル等のイミダゾール系触媒、ジオクチルチンジラウレート等の金属触媒等を、必要に応じて併用することもできる。
【0037】
<ポリウレタン用ヌレート化触媒>
ヌレート化反応で使用されるポリウレタン用ヌレート化触媒(D1)としては、公知の触媒から適宜選択して用いることができ、具体例としては、トリエチルアミン、N−エチルピペリジン、N,N′−ジメチルピペラジン、N−エチルモルフォリン、フェノール化合物のマンニッヒ塩基等の第三級アミン、テトラメチルアンモニウム炭酸水素塩、メチルトリエチルアンモニウム炭酸水素塩、エチルトリメチルアンモニウム炭酸水素塩、プロピルトリメチルアンモニウム炭酸水素塩、ブチルトリメチルアンモニウム炭酸水素塩、ペンチルトリメチルアンモニウム炭酸水素塩、ヘキシルトリメチルアンモニウム炭酸水素塩、ヘプチルトリメチルアンモニウム炭酸水素塩、オクチルトリメチルアンモニウム炭酸水素塩、ノニルトリメチルアンモニウム炭酸水素塩、デシルトリメチルアンモニウム炭酸水素塩、ウンデシルトリメチルアンモニウム炭酸水素塩、ドデシルトリメチルアンモニウム炭酸水素塩、トリデシルトリメチルアンモニウム炭酸水素塩、テトラデシルトリメチルアンモニウム炭酸水素塩、ヘプタデシルトリメチルアンモニウム炭酸水素塩、ヘキサデシルトリメチルアンモニウム炭酸水素塩、ヘプタデシルトリメチルアンモニウム炭酸水素塩、オクタデシルトリメチルアンモニウム炭酸水素塩、(2−ヒドロキシプロピル)トリメチルアンモニウム炭酸水素塩、ヒドロキシエチルトリメチルアンモニウム炭酸水素塩、1−メチル−1−アザニア−4−アザビシクロ[2,2,2]オクタニウム炭酸水素塩、又は1,1−ジメチル−4−メチルピペリジニウム炭酸水素塩等の第四級アンモニウム炭酸水素塩、テトラメチルアンモニウム炭酸塩、メチルトリエチルアンモニウム炭酸塩、エチルトリメチルアンモニウム炭酸塩、プロピルトリメチルアンモニウム炭酸塩、ブチルトリメチルアンモニウム炭酸塩、ペンチルトリメチルアンモニウム炭酸塩、ヘキシルトリメチルアンモニウム炭酸塩、ヘプチルトリメチルアンモニウム炭酸塩、オクチルトリメチルアンモニウム炭酸塩、ノニルトリメチルアンモニウム炭酸塩、デシルトリメチルアンモニウム炭酸塩、ウンデシルトリメチルアンモニウム炭酸塩、ドデシルトリメチルアンモニウム炭酸塩、トリデシルトリメチルアンモニウム炭酸塩、テトラデシルトリメチルアンモニウム炭酸塩、ヘプタデシルトリメチルアンモニウム炭酸塩、ヘキサデシルトリメチルアンモニウム炭酸塩、ヘプタデシルトリメチルアンモニウム炭酸塩、オクタデシルトリメチルアンモニウム炭酸塩、(2−ヒドロキシプロピル)トリメチルアンモニウム炭酸塩、ヒドロキシエチルトリメチルアンモニウム炭酸塩、1−メチル−1−アザニア−4−アザビシクロ[2,2,2]オクタニウム炭酸塩、又は1,1−ジメチル−4−メチルピペリジニウム炭酸塩等の第四級アンモニウム炭酸塩、トリメチルヒドロキシプロピルアンモニウム、トリメチルヒドロキシプロピルアンモニウム、トリエチルヒドロキシエチルアンモニウム等のヒドロキシアルキルアンモニウムのハイドロオキサイドや有機弱酸塩、酢酸、プロピオン酸、酪酸、カプロン酸、カプリン酸、吉草酸、オクチル酸、ミリスチン酸、ナフテン酸等のカルボン酸のアルカリ金属塩等が挙げられる。また、これらのポリウレタン用イソシアヌレート化触媒(D1)は、単独、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。尚、イソシアヌレート化触媒(D1)の使用量は、NCO基末端ウレタンプレポリマー(A)とOH基末端硬化剤(B)の総和重量に対して、0.001〜0.5質量%の範囲で用いられるのが好ましく、中でも、反応制御の容易さという観点から、0.005〜0.10質量%の範囲で用いられるのがより好ましい。
【0038】
<ポリウレタン用アロファネート化触媒>
アロファネート化反応で使用されるポリウレタン用アロファネート化触媒(D2)としては、公知の触媒から適宜選択して用いることができ、例えば、カルボン酸の金属塩を用いることができる。
カルボン酸の具体例としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、カプロン酸、オクチル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、2−エチルヘキサン酸等の飽和脂肪族カルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、シクロペンタンカルボン酸等の飽和単環カルボン酸、ビシクロ(4.4.0)デカン−2−カルボン酸等の飽和複環カルボン酸、ナフテン酸等の上述したカルボン酸の混合物、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、大豆油脂肪酸、トール油脂肪酸等の不飽和脂肪族カルボン酸、ジフェニル酢酸等の芳香脂肪族カルボン酸、安息香酸、トルイル酸等の芳香族カルボン酸等のモノカルボン酸類;フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、コハク酸、酒石酸、シュウ酸、マロン酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、クルタコン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,4−シクロヘキシルジカルボン酸、α−ハイドロムコン酸、β−ハイドロムコン酸、α−ブチル−α−エチルグルタル酸、α,β−ジエチルサクシン酸、マレイン酸、フマル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等のポリカルボン酸類が挙げられる。
【0039】
また、カルボン酸の金属塩を構成する金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属、マグネシウム、カルシウム、バリウム等のアルカリ土類金属、スズ、鉛等のその他の典型金属、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ジルコニウム等の遷移金属などが挙げられる。これらのカルボン酸金属塩は、単独、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0040】
この他、アルカノールアミンとしては、N,N,N’−トリメチルアミノエチルエタノールアミン、N,N−ジメチルアミノエトキシエタノール等が挙げられる。尚、アロファネート化触媒(D2)の使用量は、NCO基末端ウレタンプレポリマー(A)とOH基末端硬化剤(B)の総和重量に対して、0.001〜0.5質量%の範囲で用いられるのが好ましく、中でも、反応制御の容易さという観点から、0.005〜0.10質量%の範囲で用いられるのがより好ましい。
【0041】
本発明に於いては、さらに必要に応じて、添加剤として、酸化防止剤、脱泡剤、紫外線吸収剤等を形成性組成物に導入使用することができる。
【0042】
本発明に於いては、これまでに述べた熱硬化性ポリウレタンエラストマー形成性組成物を用いて、工程として成形型内に於いて硬化処理(具体的には、加熱により硬化を促進する処理)を行い、ウレタン化、並びにヌレート化、アロファネート化結合を有する熱硬化ポリウレタンエラストマー成形物を製造する。
【0043】
この場合、本発明に於ける形成性組成物を用いて、熱硬化性ポリウレタンエラストマー成形物を製造する方法としては、以下のような工程を含む方法により製造されるのが好ましい。
工程(1):
NCO基末端プレポリマー(A)と水酸基末端硬化剤(B)、ただし、予め水酸基末端硬化剤(B)に触媒(D)を含ませていない場合は、触媒(D)を別途添加し、均一に混合して形成性組成物を調製する。なお、空気を巻き込み気泡が見られる場合は、真空脱泡等で気泡を取り除く。これらの工程は、専用のポリウレタン注型機を用いることが好ましい。
工程(2):
プレヒートした成形型に該形成性組成物を混合後直ちに成形型内に注入し(注型)、該形成性組成物を成形型内で硬化処理する(具体的には、加熱して硬化反応させる)。この場合、成形型の温度はウレタン化反応、及びヌレート化、アロファネート化反応を容易に且つ確実に進行させる条件であるという観点から、80〜170℃の範囲であることが好ましい。
工程(3):
形成性組成物が硬化した後、硬化物(即ち、熱硬化ポリウレタンエラストマー成形物)を成形型内から取り出す(脱型)。なお、本発明に於いては、前記の注型から脱型までに要する時間は、特に限定するものではないが、本発明の意図する熱硬化性ポリウレタンエラストマーの生産性という観点から触媒量や成形型のプレヒート温度を調整し、30〜600秒の範囲であることが好ましい。
工程(4):
熱硬化性ポリウレタンエラストマー成形物(産業機械部品)を脱型した後、室温で一週間エージング処理を行う。
【0044】
なお、注型時におけるNCO基末端プレポリマーのNCO基含量とOH基末端硬化剤のOH基含量とのモル比は、α値=0.2〜0.8(モル比)であり、0.3〜0.7が特に好ましい。0.2を下回る場合は、過剰イソシアネートによるヌレート化やアロファネート化が極端に多くなり、成形物中の未反応物の発生を抑制することが困難であり、架橋点の増加により、著しく引張物性値の低下を招く。また、0.8を上回る場合は、ヌレート化やアロファネート化による架橋点が少なくなり、初期モジュラス(100%伸長時の応力)の低下を招き、各硬度における強度が不足し、変形量が大きく適さないもになってしまう。
【実施例】
【0045】
本発明について、実施例及び比較例により、更に詳細に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。実施例及び比較例において、「%」は全て「質量%」を意味する。
【0046】
実施例1〜7、比較例1〜6
表1に示す配合比率で、窒素を満たした5Lの攪拌容器内に各種ポリイソシアネート(A1)と各種反応抑制剤(C)と酸化防止剤を投入攪拌した。その後、攪拌容器内の温度を40〜70℃に保ちながら各種ポリオール(A2)を投入攪拌した。続いて、消泡剤を投入し攪拌容器内の温度を70〜90℃に保ちながら、2〜5時間程度ウレタン化反応を進めることで、各種NCO基末端ウレタンプレポリマー(A)を得た。
【0047】
また、表1、及び表2に示す配合比率で、窒素を満たした5Lの攪拌容器内に各種ポリオール(A1)、各種触媒(D)と適量の消泡剤を投入攪拌し、攪拌容器内の温度を40〜70℃に保ちながら、1〜3時間程度、混合攪拌することで、各種OH基末端硬化剤(B)を得た。
【0048】
次に、表1、及び表2に示すα値に従って、NCO基末端ウレタンプレポリマー(A)と、触媒入りOH基末端硬化剤(B)とを2液混合ウレタン注型機で混合することにより、本発明の熱硬化性ポリウレタンエラストマー形成性組成物を調製し、この組成物を、予めキュア温度に予熱された2mm厚の平板シート形成用の金型に注入し、この成形物を金型から取り出し(脱型)が可能な最小限の時間、金型内で加熱硬化させ、速やかにこの成形物を脱型することにより、本発明のポリウレタンエラストマー成形物(シート)を得た。
【0049】
【表1】
【0050】
【表2】
【0051】
表1、及び表2に用いられる原料の略記号は以下の通り。
[イソシアネート]
MDI;ミリオネートMT(日本ポリウレタン工業社製)、4,4’−MDI、NCO含有量=33.5%
TDI;コロネートT−100(日本ポリウレタン工業社製)、2,4−TDI、NCO含有量=48.2%
[ポリオール]
PBA−2500;ニッポラン3027(日本ポリウレタン工業社製)、ポリブチレンアジペート、水酸基価=44.9 KOHmg/g
PBA−1000;ニッポラン4009(日本ポリウレタン工業社製)、ポリブチレンエチレンアジペート、水酸基価=112.0 KOHmg/g
PEA−2000;ニッポラン4040(日本ポリウレタン工業社製)、ポリエチレンアジペート、水酸基価=56.1 KOHmg/g
PTMG−1000;PTMG−1000(三菱化学社製)、ポリテトラメチレングリコール、水酸基価=112.0 KOHmg/g
1.4−BG;1,4−ブタンジオール(三菱化学社製)、水酸基価=1,245 KOHmg/g
TMP;トリメチロールプロパン(三菱瓦斯化学社製)、水酸基価=1,254 KOHmg/g
[反応抑制剤]
DDP−2;NIKKOL DDP−2(日光ケミカルズ社製)、ジ(C12−15)パレス−2リン酸
(10)DDP−4;NIKKOL DDP−4(日光ケミカルズ社製)、ジ(C12−15)パレス−4リン酸
(11)DDP−10;NIKKOL DDP−10(日光ケミカルズ社製)、ジ(C12−15)パレス−10
リン酸
(12)PS−236;Phospholan PS−236(Akzo Nobel社製)、モノ・ジ(C10−12)パレス
−5リン酸
(13)A212C;プライサーフA212C(第一工業製薬社製)、ポリオキシエチレントリデシルエーテルリン酸エステル
(14)PEGNPP;リン酸ジポリエチレングリコール−4−ノニルフェニル(東京化成社製)
(15)TDP−6;NIKKOL TDP−6(日光ケミカルズ社製)、トリ(C12−15)パレス−6リン酸
(16)リン酸モノ・ジメチル;リン酸メチル(東京化成社製)
(17)リン酸ジブチル;リン酸ジブチル(東京化成社製)
(18)JP−512;(城北化学社製)、アルキル(C12,C14,C16,C18)アシッドホスフェート
(19)JP−524;(城北化学社製)、テトラコシルアシッドホスフェート
[触媒]
(20)POLYCAT−46;(エアプロダクツ社製)、酢酸カリウムとエチレングリコールの混合物
(21)DABCO TMR;(エアプロダクツ社製)、四級アンモニウム塩触媒とエチレングリコールの混合物
(22)TOYOCAT RX−5;(東ソー社製)、トリメチルアミノエチルエタノールアミン
(23)TOYOCAT TEDA−L33E;(東ソー社製)、トリエチレンジアミンとエチレングリコールの混合物
[その他添加剤]
(24)I−1010;イルガノックス1010;(BASFジャパン社製)ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3',5'-ジ-t-ブチル-4'-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]酸化防止剤
(25)BYK−052;(ビックケミー・ジャパン社製)非シリコーン系消泡剤
【0052】
得られた成形シートの特性評価方法は以下の通り。
(1)JIS−A硬度;JIS K7312に準じ、A型硬度計を用い測定。
(2)引張強度、伸長率;JIS K7312に準じ測定。
(3)カット面異物数;成形シートを脱型した直後にシートを幅50mm程度の短冊に切り出し、中央部の端に1mm程度の切れ目を入れ、横に引っ張り破断させ、この破断した面をカット面と見なした。幅20mm×厚さ2mmのカット面を5枚作製し、それぞれ40倍の倍率の顕微鏡を用いてカット面の観察を行い、凹凸の数を計数し、5枚のシートの凹凸の数の合計値をカット面異物数とした。
【0053】
実施例1〜7に本発明の実施結果を示す。いずれの条件においても、イソシアネート基末端ウレタンプレポリマーの性状を損ねることなく、成形サイクルが短く、成形物中に未反応異物の発生がない、機械強度が高く強靭な熱硬化性ポリウレタンエラストマーを得ることができた。
【0054】
比較例1は、反応抑制剤(C)を用いない場合の例であり、得られるNCO基末端ウレタンプレポリマー(A)の粘度、並びに色数が非常に高い物であった。このNCO基末端ウレタンプレポリマー(A)を用いて得られた成形物の未反応異物数は少ないものの、注型作業においては、液粘度が高く流れ性が悪いため、十分に金型に注入することが困難であった。また、成形物は着色も見られ適さないものであった。
【0055】
比較例2は、本発明の反応抑制剤(C)が過剰配合された場合の例であり、得られるNCO基末端ウレタンプレポリマー(A)の色数が高い物であった。このNCO基末端ウレタンプレポリマー(A)を用いて得られた成形物は
成形時間が長く、得られた成形物は未反応異物数が多く適さないものであった。
【0056】
比較例3〜6は、本発明以外の反応抑制剤(C)を用いた場合の例であり、得られた成形物は未反応異物数が非常に多く、これら異物が起点となり、引張強度が低く適さないものであった。