(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1の樹脂材料が、連続強化繊維を含む樹脂材料と不連続強化繊維を含む樹脂材料とを組み合わせたもの、または不連続強化繊維を含む樹脂材料のみからなるものであり、
前記不連続強化繊維を含む樹脂材料の割合が、前記第1の樹脂材料(100質量%)のうち、20〜100質量%である、請求項1または2に記載の繊維強化樹脂成形品。
前記第1の樹脂材料が、複数の連続強化繊維を一方向に引き揃えた強化繊維束に樹脂を含浸した第1のプリプレグの1層以上と、複数の連続強化繊維を一方向に引き揃えた強化繊維束に樹脂を含浸したプリプレグに切れ込みを形成することによって前記連続強化繊維を不連続強化繊維に切断した第2のプリプレグの1層以上とを有する積層基材、または前記第2のプリプレグの2層以上からなる積層基材であり、
前記第2のプリプレグの層数が、前記積層基材を構成するすべての層の数(100%)のうち、20〜100%である、請求項1または2に記載の繊維強化樹脂成形品。
前記第1の樹脂材料が、複数の連続強化繊維を一方向に引き揃えた強化繊維束に樹脂を含浸した第1のプリプレグの1層以上と、複数の連続強化繊維を一方向に引き揃えた強化繊維束に樹脂を含浸したプリプレグをチップ状に切断して分散させて得られた、不連続強化繊維を含むランダム材とを組み合わせたもの、または前記ランダム材のみからなるものであり、
前記ランダム材の割合が、前記第1の樹脂材料(100質量%)のうち、20〜100質量%である、請求項1または2に記載の繊維強化樹脂成形品。
前記第1の樹脂材料が、連続強化繊維を含む樹脂材料と不連続強化繊維を含む樹脂材料とを組み合わせたもの、または不連続強化繊維を含む樹脂材料のみからなるものであり、
前記不連続強化繊維を含む樹脂材料の割合が、前記第1の樹脂材料(100質量%)のうち、20〜100質量%である、請求項9に記載の繊維強化樹脂成形品の製造方法。
前記第1の樹脂材料が、複数の連続強化繊維を一方向に引き揃えた強化繊維束に樹脂を含浸した第1のプリプレグの1層以上と、複数の連続強化繊維を一方向に引き揃えた強化繊維束に樹脂を含浸したプリプレグに切れ込みを形成することによって前記連続強化繊維を不連続強化繊維に切断した第2のプリプレグの1層以上とを有する積層基材、または前記第2のプリプレグの2層以上からなる積層基材であり、
前記第2のプリプレグの層数が、前記積層基材を構成するすべての層の数(100%)のうち、20〜100%である、請求項9に記載の繊維強化樹脂成形品の製造方法。
前記第1の樹脂材料が、複数の連続強化繊維を一方向に引き揃えた強化繊維束に樹脂を含浸した第1のプリプレグの1層以上と、複数の連続強化繊維を一方向に引き揃えた強化繊維束に樹脂を含浸したプリプレグをチップ状に切断して分散させて得られた、不連続強化繊維を含むランダム材とを組み合わせたもの、または前記ランダム材のみからなるものであり、
前記ランダム材の割合が、前記第1の樹脂材料(100質量%)のうち、20〜100質量%である、請求項9に記載の繊維強化樹脂成形品の製造方法。
前記第1の樹脂材料に含まれる前記不連続強化繊維が、前記リブ部に対応する前記空間部側から、前記第1の樹脂材料の全厚さ(100%)に対して20%以上の深さにまで存在している、請求項10〜13のいずれか一項に記載の繊維強化樹脂成形品の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下の用語の定義は、本明細書および特許請求の範囲にわたって適用される。
「リブ部」は、補強等を目的として成形品本体部から突出した部分を意味し、成形品本体部の周縁から立ち上がった壁部;軸、ネジ等を通す穴が形成された円筒状のボス部を包含する。
「リブ根元部の平均高さHa」は、繊維強化樹脂成形品(試験片)におけるリブ根元部の高さ、すなわち成形品本体部とリブ部との境界からリブ根元部とリブ上部との境界までの高さHを測定し、これらを平均化した値である。
「リブ部の最大厚さTr」は、繊維強化樹脂成形品(試験片)のリブ部において、リブ部の長さ方向および高さ方向に直交する方向のリブ部の厚さが最大となる部分における厚さである。
「連続強化繊維」とは、繊維強化樹脂成形品や樹脂材料内において切断されずに連続的に存在している強化繊維を意味し、通常、100mm超のものである。
「不連続強化繊維」とは、連続強化繊維に比べ長さが短く、繊維強化樹脂成形品や樹脂材料内において断続的またはランダムに存在している強化繊維を意味し、通常、100mm以下のものである。
図1〜
図7における寸法比は、説明の便宜上、実際のものとは異なったものである。また、
図2〜
図7においては、
図1と同じ構成要素には同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0014】
<繊維強化樹脂成形品>
図1は、本発明の繊維強化樹脂成形品の一例を示す斜視図である。
繊維強化樹脂成形品10は、樹脂および強化繊維を含む第1の樹脂材料からなる平板状の成形品本体部12と;成形品本体部12の第1の面から突出し、第1の面の中央から前後方向、左右方向および対角線方向の合計8方向に放射状にに延びる8枚の板状のリブ部14と;成形品本体部12の周縁から第1の面側に立ち上がり、8枚のリブ部の端部に接続する4枚の板状の壁部16(リブ部)とを有する。
リブ部14および壁部16は、成形品本体部12と連続した第1の樹脂材料からなるリブ根元部18と、リブ根元部18に接合した第2の樹脂材料からなるリブ上部20とを有する。
以下、リブ部14および壁部16をまとめて単に「リブ部」とも記す。
【0015】
(Ha/Tr)
本発明において、リブ根元部18の平均高さHaとリブ部の最大厚さTrとの比(Ha/Tr)は、1.0以上であり、1.1以上が好ましく、1.2以上がより好ましい。Ha/Trが1.0以上であれば、後述する作用機序に記載した理由から、リブ部における機械的強度が高くなる。
【0016】
なお、Ha/Trが大きくなりすぎると、リブ根元部18の平均高さHaを高くするために、後述するプレス成形の際にリブ部に対応する空間部に流れ込む第1の樹脂材料の流動性を高くする必要がある。そのため、強化繊維の長さを必要以上に短くする必要があり、その結果、リブ部における機械的強度が低下しやすくなる。この点から、Ha/Trは、10.0以下が好ましく、5.0以下がより好ましい。
【0017】
(第1の樹脂材料)
第1の樹脂材料は、樹脂および強化繊維を含む。第1の樹脂材料は、繊維強化樹脂成形品10の要求特性に応じて、他の成分を含んでいてもよい。
樹脂としては、熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂が挙げられる。
【0018】
熱可塑性樹脂としては、ポリアミド(ナイロン6、ナイロン66等)、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、変性ポリオレフィン、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等)、ポリカーボネート、ポリアミドイミド、ポリフェニレンオキシド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリスチレン、アクリロニトリル−ブチレン−スチレン共重合体、ポリフェニレンサルファイド、液晶ポリエステル、アクリロニトリル−スチレン共重合体等が挙げられる。
熱可塑性樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、ナイロン6とナイロン66との共重合ナイロンのように共重合したものであってもよい。
【0019】
熱硬化性樹脂として、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂等が挙げられる。なお、熱硬化性樹脂は、第1の樹脂材料をプレス成形する際には一部または全部が未硬化の状態であり、繊維強化樹脂成形品においては硬化した状態にある。
【0020】
強化繊維としては、無機繊維、有機繊維、金属繊維、これらの複合繊維等が挙げられる。
無機繊維としては、炭素繊維、黒鉛繊維、炭化珪素繊維、アルミナ繊維、タングステンカーバイド繊維、ボロン繊維、ガラス繊維等が挙げられる。
有機繊維としては、アラミド繊維、高密度ポリエチレン繊維、ナイロン繊維、ポリエステル繊維等が挙げられる。
金属繊維としては、ステンレスの繊維、鉄の繊維、金属を被覆した炭素繊維等が挙げられる。
強化繊維は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
強化繊維としては、繊維強化樹脂成形品の機械的強度が高い点から、炭素繊維またはガラス繊維が好ましく、炭素繊維がより好ましい。
強化繊維の平均繊維直径は、1〜50μmが好ましく、5〜20μmがより好ましい。
【0021】
他の成分としては、難燃剤、耐候性改良剤、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、可塑剤、滑剤、着色剤、相溶化剤、導電性フィラー等が挙げられる。
【0022】
第1の樹脂材料としては、例えば、連続強化繊維を含む樹脂材料のみからなるもの、不連続強化繊維を含む樹脂材料のみからなるもの、または連続強化繊維を含む樹脂材料と不連続強化繊維を含む樹脂材料とを組み合わせたものが挙げられる。
連続強化繊維を含む樹脂材料および不連続強化繊維を含む樹脂材料の具体例、これらの好ましい形態、これらの組み合わせ等については、後述する繊維強化樹脂成形品10の製造方法における工程(a)において詳しく説明する。
【0023】
(第2の樹脂材料)
第2の樹脂材料は、樹脂を含む。第2の樹脂材料は、繊維強化樹脂成形品10の要求特性に応じて、他の成分を含んでいてもよい。
樹脂としては、射出成形に適している点から、熱可塑性樹脂が用いられる。
【0024】
熱可塑性樹脂としては、ポリアミド(ナイロン6、ナイロン66等)、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、変性ポリオレフィン、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等)、ポリカーボネート、ポリアミドイミド、ポリフェニレンオキシド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリスチレン、アクリロニトリル−ブチレン−スチレン共重合体、ポリフェニレンサルファイド、液晶ポリエステル、アクリロニトリル−スチレン共重合体等が挙げられる。
熱可塑性樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、ナイロン6とナイロン66との共重合ナイロンのように共重合したものであってもよい。
【0025】
他の成分としては、難燃剤、耐候性改良剤、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、可塑剤、滑剤、着色剤、相溶化剤、導電性フィラー、不連続強化繊維等が挙げられる。
【0026】
(作用機序)
以上説明した繊維強化樹脂成形品10にあっては、リブ上部20が連続強化繊維を含まない第2の樹脂材料からなるため、後述するプレス成形の際にリブ部に対応する空間部に第1の樹脂材料が十分に流れ込まずに形成された残りの空間に第2の樹脂材料を確実に充填できる。その結果、所定形状のリブ部を有する繊維強化樹脂成形品10となる。
【0027】
また、以上説明した繊維強化樹脂成形品10にあっては、Ha/Trが1.0以上であるため、下記の理由から、リブ部における機械的強度が高い。
Ha/Trが1.0以上の場合、後述するプレス成形の際にリブ部に対応する空間部に流れ込む第1の樹脂材料の流れ込む距離が長くなるため、第1の樹脂材料に含まれる強化繊維が流れの方向、すなわちリブ部の高さ方向に十分に配向する。その結果、リブ根元部18に含まれる強化繊維がリブ部の高さ方向に十分に配向する。リブ根元部18に含まれる強化繊維がリブ部の高さ方向に配向することによって、リブ部を倒そうとする力に対する抵抗が大きくなる。さらに、リブ根元部18に含まれる強化繊維がリブ部の高さ方向に配向することによって、強化繊維がリブ上部20に入り込み、リブ根元部18とリブ上部20との界面における接合強度が高くなる。これらのことから、リブ部の機械的強度が高くなる。リブ部における機械的強度が高い繊維強化樹脂成形品10は、高い機械的強度の要求される各種構造材に適用可能である。
【0028】
一方、Ha/Trが1.0未満の場合、リブ根元部18に含まれる強化繊維がリブ部の高さ方向に直交する方向に配向しやすくなり、リブ部の機械的強度が低くなる。
リブ根元部18に含まれる強化繊維の配向は、X線CT等を用いて観察できるが、本発明のように後述するプレス成形の際にリブ部に対応する空間部に第1の樹脂材料が流れ込む場合には、リブ部に対応する空間部への第1の樹脂材料の流入量、すなわちHa/Trから判断できる。
【0029】
(他の実施形態)
本発明の繊維強化樹脂成形品は、樹脂および強化繊維を含む第1の樹脂材料からなる成形品本体部と、成形品本体部から突出したリブ部とを有する繊維強化樹脂成形品であり;リブ部が、成形品本体部と連続した第1の樹脂材料からなるリブ根元部と、リブ根元部に接合した第2の樹脂材料からなるリブ上部とを有し;リブ根元部の平均高さHaとリブ部の最大厚さTrとの比(Ha/Tr)が1.0以上であるものであればよく、図示例の繊維強化樹脂成形品に限定されない。
【0030】
例えば、成形品本体部は、図示例のような平板状のものに限定されず、後述するプレス成形が可能な範囲内において三次元形状を有するものであってもよい。
また、リブ部は、図示例のような板状のものに限定されず、柱状、筒状等の他の形状のものであってもよい。
【0031】
<繊維強化樹脂成形品の製造方法>
本発明の繊維強化樹脂成形品の製造方法は、リブ部に対応する空間部を有する金型を用いて第1の樹脂材料をプレス成形して成形品本体部とリブ根元部とを有する一次成形品を得たと同時または後に、空間部の残りの空間に第2の樹脂材料を充填してリブ上部を賦形する方法である。
以下、繊維強化樹脂成形品10の製造方法の具体例について説明する。
【0032】
繊維強化樹脂成形品10は、例えば、下記の工程(a)〜(c)を経て製造できる。
工程(a):第1の樹脂材料を準備する工程。
工程(b):工程(a)の後、第1の樹脂材料を成形可能な温度に加熱する工程。
工程(c):工程(b)の後、加熱状態にある第1の樹脂材料を、繊維強化樹脂成形品10およびリブ部に対応する空間部を有する金型を用いてプレス成形するとともに、リブ部に対応する空間部に第2の樹脂材料を充填する工程。
【0033】
(工程(a))
第1の樹脂材料としては、例えば、連続強化繊維を含む樹脂材料のみからなるもの、不連続強化繊維を含む樹脂材料のみからなるもの、または連続強化繊維を含む樹脂材料と不連続強化繊維を含む樹脂材料とを組み合わせたものが挙げられる。
【0034】
連続強化繊維を含む樹脂材料としては、複数の連続強化繊維を一方向に引き揃えた強化繊維束に樹脂を含浸した第1のプリプレグが挙げられる。
第1のプリプレグは、繊維強化樹脂成形品10の要求特性に応じてどのように用いてもよい。例えば、一方向に機械的強度が必要な場合には1層のみで用いるまたは繊維方向を揃えて2層以上積層することが好ましく、等方的な機械的強度が必要な場合には、疑似等方積層することが好ましい。
【0035】
不連続強化繊維を含む樹脂材料としては、複数の連続強化繊維を一方向に引き揃えた強化繊維束に樹脂を含浸したプリプレグに切れ込みを形成することによって連続強化繊維を不連続強化繊維に切断した第2のプリプレグ;複数の連続強化繊維を一方向に引き揃えた強化繊維束に樹脂を含浸したプリプレグをチップ状に切断し、ランダムに分散させて得られた、不連続強化繊維を含むランダム材が挙げられる。
【0036】
第2のプリプレグは、例えば
図2に示すように、複数の連続強化繊維22を一方向に引き揃えた強化繊維束24に樹脂を含浸したプリプレグ26に、連続強化繊維22を切断するように表面から裏面に貫通した直線状の切れ込み28を入れたものである。
第2のプリプレグは、繊維強化樹脂成形品10の要求特性に応じてどのように用いてもよい。例えば、一方向に機械的強度が必要な場合には1層のみで用いるまたは繊維方向を揃えて2層以上積層することが好ましく、等方的な機械的強度が必要な場合には、疑似等方積層することが好ましい。
【0037】
第2のプリプレグにおける切れ込みは、繊維強化樹脂成形品の機械的強度を維持しつつ、第1の樹脂材料の流動性を高くしてリブ部に対応する空間部への第1の樹脂材料の流れ込みを促進する点から、不連続強化繊維の長さが5〜100mmとなるように形成することが好ましく、10〜50mmとなるように形成することがより好ましい。
【0038】
プリプレグをチップ状に切断してランダム材とする場合、繊維強化樹脂成形品の機械的強度を維持しつつ、第1の樹脂材料の流動性を高くしてリブ部に対応する空間部への第1の樹脂材料の流れ込みを促進する点から、不連続強化繊維の長さが5〜100mmとなるように切断することが好ましく、10〜50mmとなるように切断することがより好ましい。
【0039】
不連続強化繊維を含む樹脂材料がプリプレグ以外のもの(ランダム材等)である場合、不連続強化繊維を含む樹脂材料の割合は、第1の樹脂材料(100質量%)のうち、20〜100質量%が好ましく、20〜90質量%がより好ましい。不連続強化繊維を含む樹脂材料の割合が20質量%以上であれば、工程(c)においてリブ部に対応する空間部に第1の樹脂材料が流れ込みやすく、Ha/Trを1.0以上にしやすい。不連続強化繊維を含む樹脂材料の割合が90質量%以下であれば、繊維強化樹脂成形品10の機械的強度がさらに高くなる。
【0040】
不連続強化繊維を含む樹脂材料が第2のプリプレグである場合、第2のプリプレグの層数は、積層基材を構成するすべての層の数(100%)のうち、20〜100%が好ましく、20〜90%がより好ましい。第2のプリプレグの層数が20%以上であれば、工程(c)においてリブ部に対応する空間部に第1の樹脂材料が流れ込みやすく、Ha/Trを1.0以上にしやすい。第2のプリプレグの層数が90%以下であれば、繊維強化樹脂成形品10の機械的強度がさらに高くなる。
【0041】
第1の樹脂材料に含まれる不連続強化繊維は、工程(c)においてリブ部に対応する空間部に第1の樹脂材料が流れ込みやすく、Ha/Trを1.0以上にしやすい点から、少なくともリブ部に対応する空間部側に存在していることが好ましい。具体的には、第1の樹脂材料に含まれる不連続強化繊維は、リブ部に対応する空間部側から、第1の樹脂材料の全厚さ(100%)に対して20%以上の深さにまで存在していることが好ましい。
【0042】
第1の樹脂材料の具体的な形態としては、下記の第1の樹脂材料(α)または第1の樹脂材料(β)が挙げられる。
第1の樹脂材料(α)は、第1のプリプレグの1層以上と第2のプリプレグの1層以上とを有する積層基材、または第2のプリプレグの2層以上からなる積層基材である。
第1の樹脂材料(β)は、第1のプリプレグの1層以上とランダム材とを組み合わせたもの、またはランダム材のみからなるものである。
【0043】
第1の樹脂材料は、平板用金型を用いて予備プレス成形し、シート状の第1の樹脂材料(以下、繊維強化樹脂シートとも記す。)としてもよい。
繊維強化樹脂シートは、種類の異なる2種以上の繊維強化樹脂シート(例えば、プリプレグからなる繊維強化樹脂シートと、ランダム材からなる繊維強化樹脂シートと)を単に積み重ねたものであってもよい。
【0044】
(工程(b))
第1の樹脂材料(繊維強化樹脂シート等)を成形可能な温度とは、第1の樹脂材料に含まれる樹脂が溶融する温度である。
第1の樹脂材料(繊維強化樹脂シート等)を成形可能な温度に加熱する方法としては、加熱ヒータを用いる方法、金型の加熱機能を用いる方法等が挙げられる。
【0045】
(工程(c))
図3に示すような、凹部30を有する上型32と;型閉した際に凹部30と嵌合する凸部34を有する下型36とからなる金型38を用意する。
金型38においては、型閉した際に上型32と下型36との間に成形品本体部12に対応する第1の空間部40が形成される。
下型36の凸部34には、型閉した際に第1の空間部40と連続した、リブ部に対応する第2の空間部42が形成されるように、溝部44が形成されている。
下型36には、射出装置(図示略)から射出された樹脂の通り道となるランナ46、およびランナ46を通った樹脂が第2の空間部42に吐出されるゲート48とが形成されている。
【0046】
型開した状態で下型36の凸部34の上に加熱状態にある繊維強化樹脂シート50(第1の樹脂材料)を配置し、型閉してプレス成形するとともに、射出装置(図示略)から第2の樹脂材料を射出し、リブ部に対応する第2の空間部42に第2の樹脂材料を充填する。
プレス成形によって、成形品本体部12とリブ根元部18とを有する一次成形品が得られると同時に、第2の空間部42のうちリブ根元部18が形成されていない残りの空間に第2の樹脂材料が充填され、リブ上部20が賦形される。
【0047】
(作用機序)
以上説明した繊維強化樹脂成形品10の製造方法にあっては、リブ部に対応する第2の空間部42を有する金型38を用いて第1の樹脂材料(繊維強化樹脂シート50)をプレス成形して成形品本体部12とリブ根元部18とを有する一次成形品を得たと同時に、第2の空間部42の残りの空間に第2の樹脂材料を充填してリブ上部20を賦形する方法において、プレス成形の際に第2の空間部42に第1の樹脂材料が十分に流れ込まずに形成された残りの空間に第2の樹脂材料を確実に充填できる。その結果、所定形状のリブ部を有する繊維強化樹脂成形品10が得られる。
【0048】
また、以上説明した繊維強化樹脂成形品10の製造方法にあっては、プレス成形の際にHa/Trが1.0以上となるように第2の空間部42に第1の樹脂材料を流れ込ましているため、上述した理由から、リブ部における機械的強度が高い繊維強化樹脂成形品10が得られる。
【0049】
このように、繊維強化樹脂成形品10の製造方法によれば、従来のオーバーモールディングにおいて問題となっていた一次成形品と第2の樹脂材料との界面における接合強度を高くすることができ、高い機械的強度の要求される各種構造材に適用可能な、機械的強度が高いリブ部を有する繊維強化樹脂成形品10を提供できる。
【0050】
(他の実施形態)
本発明の繊維強化樹脂成形品の製造方法は、特定の構造を有し、かつHa/Trが1.0以上である本発明の繊維強化樹脂成形品を製造する方法であり、リブ部に対応する空間部を有する金型を用いて第1の樹脂材料をプレス成形して成形品本体部とリブ根元部とを有する一次成形品を得たと同時または後に、空間部の残りの空間に第2の樹脂材料を充填する方法であればよく、上述した具体例の製造方法に限定されない。
【0051】
例えば、第1の樹脂材料は、必ずしも予備プレス成形する必要はなく、予備プレス成形することなく、そのままプレス成形に供してもよい。
また、第2の樹脂材料の充填は、一次成形品を得たと同時に行ってもよく、一次成形品を得た後に行ってもよい。
【実施例】
【0052】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0053】
<測定方法および評価方法>
(Ha/Tr)
図1に示すような繊維強化樹脂成形品10(縦:200mm、横:300mm、成形品本体部12の厚さ:1.0〜2.0mmまで可変、リブ部14および壁部16の高さ:40mm、リブ部14の厚さ=最大厚さTr:3.4mm)について、
図4に示すように、8本のリブ部14をそれぞれリブ部A〜Hと称する。
高速精密切断機(平和テクニカ社製、ファインカット HS−45A II型)を用い、
図4に示すように、リブ部D〜Fおよびそれらの両側の成形品本体部12を破線で示す箇所から切り出し、
図5に示すような、リブ部14の長さ方向の長さが15mm、リブ部14の長さ方向に直交する方向の長さが35mmである試験片を得た。
試験片のリブ根元部18およびその周辺をリブ部14の長さ方向および高さ方向に直交する方向から写真撮影を行った。この際に第1の樹脂材料を黒色に着色することで、着色されていない第2の樹脂材料を含む投影図を得た。この投影図を画像処理ソフトで二値化することで第1の樹脂材料と第2の樹脂材料との境界を鮮明にした後、画像処理ソフトで境界を直線化してリブ根元部18の平均高さHaを求めた。リブ根元部18の平均高さHaをリブ部14の最大厚さTr(3.4mm)で除してHa/Trを算出した。
【0054】
(引張試験)
図6に示すように、試験片のリブ部14とは反対側の成形品本体部12の第2の面に、金属タブ52(アルミニウム製、厚さ:1mm)をエポキシ系接着剤を用いて接着した。
図7に示すような、下方に開放したスリット54を有する角筒状の支持体56と;支持体56内に配置された押さえ板58と;支持体56の上部から挿入されたボルト60とを有する冶具62を用意した。
【0055】
支持体56内に試験片を、成形品本体部12が支持体56内に位置し、リブ部14がスリット54から突出するように挿入した。支持体56の下部と押さえ板58との間で成形品本体部12を挟み、ボルト60によって押さえ板58ごと成形品本体部12を上方から押さえつけて固定した。
冶具62に固定された試験片について、インストロン万能試験機(インストロンジャパン社製、5566型)を用い、試験速度:1mm/minで引張試験を実施し、その最大荷重を記録し、これを引張強度とした。
【0056】
(実施例1)
炭素繊維(三菱レイヨン社製、パイロフィル(登録商標)TR−50S15L)を、繊維方向が一方向となるように平面状に引き揃えてシート状の強化繊維束(目付:75.0g/m
2)とした。強化繊維束の両面から、酸変性ポリプロピレンフィルム(三菱化学社製、モディック(登録商標)P958、目付:36g/m
2)で挟み、カレンダロールに通して、酸変性ポリプロピレンを強化繊維束に含浸し、長尺のプリプレグ(繊維体積含有率(Vf):34%、厚さ:0.12mm)を得た。
【0057】
長尺のプリプレグから複数枚の枚葉のプリプレグ(290×190mm角)を切り出し、これを第1のプリプレグ(1)(連続強化繊維を含む樹脂材料)とした。
長尺のプリプレグから複数枚の枚葉のプリプレグ(290×190mm角)を切り出した。枚葉のプリプレグの周縁から5mm以内の部分を除く領域に、カッティングプロッタ(レザック社製、L−2500)を用いて
図2に示すように一定間隔で切れ込み28を入れ、第2のプリプレグ(不連続強化繊維を含む樹脂材料)とした。切れ込みの長さは28.3mmとし、繊維方向の切れ込み28の間隔Pは25.0mmとし、繊維方向と切れ込み28の長さ方向とがなす角θは45°とした。
【0058】
8枚の第1のプリプレグ(1)および8枚の第2のプリプレグの合計16枚を繊維配向が疑似等方([0/45/90/−45]s2)になるよう積層し、積層基材(第1の樹脂材料)を得た。1〜8枚目は第1のプリプレグ(1)とし、9〜16枚目は第2のプリプレグとした。
積層基材を、プレス射出ハイブリッド成形機(佐藤鉄工所社製)に配備した平板金型によって予備プレス成形し、繊維強化樹脂シートを得た。予備プレス成形の条件は、金型温度:200℃、圧力:3MPa、保持時間:120秒とした。
【0059】
繊維強化樹脂シートを加熱ヒータ(LEIBROCK社製、TH−5)で200℃まで加熱し、樹脂を溶融させた後に、プレス射出ハイブリッド成形機(佐藤鉄工所社製)に配備した
図3に示す金型38に、下型36の凸部34側に第2のプリプレグ側が接するように配置し、型閉してプレス成形するとともに、ポリプロピレン(日本ポリプロ社製、ノバテック(登録商標)MA3)を射出し、リブ部に対応する第2の空間部42に充填させた。プレス成形および射出成形の条件は、金型温度:80℃、型締圧力:2.5MPa、射出シリンダ温度:220℃、射出速度:60mm/secとした。
【0060】
型開して
図1に示すような繊維強化樹脂成形品10を得た。
繊維強化樹脂成形品10の成形品本体部12とリブ部14との境界付近におけるX線CT画像を
図8に示す。
図8に示す立方体の下部が成形品本体部12であり、上部がリブ部14である。成形品本体部12から連続した炭素繊維がリブ部14に入り込み、リブ根元部18において炭素繊維がリブ部14の高さ方向に配向していることが確認された。
Ha/Trおよび引張強度(最大荷重)の結果を表1に示す。
【0061】
【表1】
【0062】
(比較例1)
16枚の第1のプリプレグ(1)(連続強化繊維を含む樹脂材料)のみを繊維配向が疑似等方([0/45/90/−45]s2)になるように積層して積層基材(第1の樹脂材料)を得た。この積層基材を用いた以外は、実施例1と同様にして繊維強化樹脂成形品を得た。
繊維強化樹脂成形品の成形品本体部とリブ部との境界付近におけるX線CT画像を
図9に示す。
図9に示す立方体の下部が成形品本体部であり、上部がリブ部である。成形品本体部から連続した炭素繊維がわずかにリブ部に入り込んでいたが、リブ根元部において炭素繊維はリブ部の高さ方向に配向していなかった。
Ha/Trおよび引張強度(最大荷重)の結果を表2に示す。
【0063】
【表2】
【0064】
(実施例2)
12枚の第1のプリプレグ(1)(連続強化繊維を含む樹脂材料)および4枚の第2のプリプレグ(不連続強化繊維を含む樹脂材料)の合計16枚を繊維配向が疑似等方([0/45/90/−45]s2)になるよう積層し、積層基材(第1の樹脂材料)を得た。1〜12枚目は第1のプリプレグ(1)とし、13〜16枚目は第2のプリプレグとした。この積層基材を用いた以外は、実施例1と同様にして繊維強化樹脂成形品10を得た。
Ha/Trおよび引張強度(最大荷重)の結果を表3に示す。
【0065】
【表3】
【0066】
(実施例3)
16枚の第2のプリプレグ(不連続強化繊維を含む樹脂材料)のみを繊維配向が疑似等方([0/45/90/−45]s2)になるように積層して積層基材(第1の樹脂材料)を得た。この積層基材を用いた以外は、実施例1と同様にして繊維強化樹脂成形品10を得た。
Ha/Trおよび引張強度(最大荷重)の結果を表4に示す。
【0067】
【表4】
【0068】
(比較例2)
15枚の第1のプリプレグ(1)(連続強化繊維を含む樹脂材料)および1枚の第2のプリプレグ(不連続強化繊維を含む樹脂材料)の合計16枚を繊維配向が疑似等方([0/45/90/−45]s2)になるよう積層し、積層基材(第1の樹脂材料)を得た。1〜15枚目は第1のプリプレグ(1)とし、16枚目は第2のプリプレグとした。この積層基材を用いた以外は、実施例1と同様にして繊維強化樹脂成形品を得た。
Ha/Trおよび引張強度(最大荷重)の結果を表5に示す。
【0069】
【表5】
【0070】
(実施例4)
炭素繊維(三菱レイヨン社製、パイロフィル(登録商標)TR−50S15L)を、繊維方向が一方向となるように平面状に引き揃えてシート状の強化繊維束(目付:100.0g/m
2)とした。強化繊維束の両面から、ポリアミド(宇部興産社製、1013B)からなるフィルム(目付:34.0g/m
2)で挟み、カレンダロールに通して、ポリアミドを強化繊維束に含浸し、長尺のプリプレグ(繊維体積含有率(Vf):48%、厚さ:0.12mm)を得た。
【0071】
長尺のプリプレグから複数枚の枚葉のプリプレグ(290×190mm角)を切り出し、これを第1のプリプレグ(2)(連続強化繊維を含む樹脂材料)とした。
12枚の第1のプリプレグ(2)のみを繊維方向が直交するように[(0/90)3s]に積層し、積層基材を得た。
積層基材を、プレス射出ハイブリッド成形機(佐藤鉄工所社製)に配備した平板金型によって予備プレス成形し、第1の繊維強化樹脂シートを得た。予備プレス成形の条件は、金型温度:250℃、圧力:2MPa、保持時間:180秒とした。
【0072】
長尺のプリプレグから複数枚の枚葉のプリプレグ(290×190mm角)を切り出した。枚葉のプリプレグをシュレッダ(明光商会社製)にて10mm×3mmのチップ状に切断した。
チップ状物の適当量を、プレス射出ハイブリッド成形機(佐藤鉄工所社製)に配備した平板金型内にランダムに分散させ、予備プレス成形し、ランダム材(不連続強化繊維を含む樹脂材料)からなる第2の繊維強化樹脂シート(厚さ:0.5mm)を得た。予備プレス成形の条件は、金型温度:250℃、圧力:2MPa、保持時間:180秒とした。
【0073】
第1の繊維強化シートと第2の繊維強化樹脂シートを重ねて、加熱ヒータ(LEIBROCK社製、TH−5)で250℃まで加熱し、樹脂を溶融させた後に、プレス射出ハイブリッド成形機(佐藤鉄工所社製)に配備した
図3に示す金型38に、下型36の凸部34側に第2の繊維強化樹脂シート側が接するように配置し、型閉してプレス成形するとともに、ポリアミド(宇部興産社製、1013B)を射出し、リブ部に対応する第2の空間部42に充填させた。プレス成形および射出成形の条件は、金型温度:100℃、型締圧力:20MPa、射出シリンダ温度:260℃、射出速度:60mm/secとした。
型開して
図1に示すような繊維強化樹脂成形品10を得た。
Ha/Trおよび引張強度(最大荷重)の結果を表6に示す。
【0074】
【表6】
【0075】
(実施例5)
積層基材として、8枚の第1のプリプレグ(2)のみを繊維方向が直交するように[(0/90)2S]に積層したものを用い、第2の繊維強化樹脂シートとして、ランダム材からなる厚さ1.0mmの繊維強化樹脂シートを用いた以外は、実施例4と同様にして繊維強化樹脂成形品10を得た。
Ha/Trおよび引張強度(最大荷重)の結果を表7に示す。
【0076】
【表7】
【0077】
(比較例3)
積層基材として、14枚の第1のプリプレグ(2)のみを繊維方向が直交するように[(0/90)2S]に積層したものを用い、第2の繊維強化樹脂シートとして、ランダム材からなる厚さ0.2mmの繊維強化樹脂シートを用いた以外は、実施例4と同様にして繊維強化樹脂成形品を得た。
Ha/Trおよび引張強度(最大荷重)の結果を表8に示す。
【0078】
【表8】
【0079】
(比較例4)
積層基材として、16枚の第1のプリプレグ(2)のみを繊維方向が直交するように[(0/90)4S]に積層したものを用い、第2の繊維強化樹脂シートを用いなかった以外は、実施例4と同様にして繊維強化樹脂成形品を得た。
Ha/Trおよび引張強度(最大荷重)の結果を表9に示す。
【0080】
【表9】