(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6645856
(24)【登録日】2020年1月14日
(45)【発行日】2020年2月14日
(54)【発明の名称】プラズマ処理装置
(51)【国際特許分類】
H05H 1/46 20060101AFI20200203BHJP
【FI】
H05H1/46 R
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-20114(P2016-20114)
(22)【出願日】2016年2月4日
(65)【公開番号】特開2017-139164(P2017-139164A)
(43)【公開日】2017年8月10日
【審査請求日】2018年12月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000231464
【氏名又は名称】株式会社アルバック
(74)【代理人】
【識別番号】110000305
【氏名又は名称】特許業務法人青莪
(72)【発明者】
【氏名】中村 真也
(72)【発明者】
【氏名】藤井 佳詞
(72)【発明者】
【氏名】堤 賢吾
【審査官】
小林 直暉
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−096019(JP,A)
【文献】
特開2008−053496(JP,A)
【文献】
特開2015−062309(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L21/205
21/302
21/3065
21/31
21/365
21/461
21/469
21/86
H05H1/00−1/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空チャンバ内にプラズマを発生させるための高周波電力をインピーダンス整合器を介して出力する高周波電源を備えて真空チャンバ内の被処理基板に対して所定のプラズマ処理を行うプラズマ処理装置であって、
インピーダンス整合器は、静電容量が可変のコンデンサを有し、高周波電力の出力時にこのコンデンサの静電容量を起点とし、プラズマのインピーダンスと高周波電源の出力インピーダンスとが整合するようにこの起点から静電容量を減少または増加させると共に、この整合時の静電容量を次に高周波電力が出力されるときの調整点とし、調整点から静電容量を減少または増加させる制御手段を設け、
前記制御手段は、高周波電力の出力が一旦停止された後、再開されるまでの時間を計測し、この計測した時間が所定値を超えると、起点から調整点までの静電容量の減少分または増加分に応じて、コンデンサの静電容量を補正し、この補正後の静電容量を起点とすることを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項2】
真空チャンバ内にプラズマを発生させるための高周波電力をインピーダンス整合器を介して出力する高周波電源を備えて真空チャンバ内の被処理基板に対して所定のプラズマ処理を行うプラズマ処理装置であって、
インピーダンス整合器は、静電容量が可変のコンデンサを有し、高周波電力の出力時にこのコンデンサの静電容量を起点とし、プラズマのインピーダンスと高周波電源の出力インピーダンスとが整合するようにこの起点から静電容量を減少または増加させると共に、この整合時の静電容量を次に高周波電力が出力されるときの調整点とし、調整点から静電容量を減少または増加させる制御手段を設け、
プラズマからの反射波電力を測定する測定手段を更に備え、
前記制御手段は、一の被処理基板に対するプラズマ処理時に前記測定手段により測定される反射波電力と時間の積分値が、他の被処理基板に対するプラズマ処理時に予め測定された反射波電力と時間の積分値と一致するように、起点から静電容量を減少または増加させることを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項3】
真空チャンバ内にプラズマを発生させるための高周波電力をインピーダンス整合器を介して出力する高周波電源を備えて真空チャンバ内の被処理基板に対して所定のプラズマ処理を行うプラズマ処理装置であって、
インピーダンス整合器は、静電容量が可変のコンデンサを有し、高周波電力の出力時にこのコンデンサの静電容量を起点とし、プラズマのインピーダンスと高周波電源の出力インピーダンスとが整合するようにこの起点から静電容量を減少または増加させると共に、この整合時の静電容量を次に高周波電力が出力されるときの調整点とし、調整点から静電容量を減少または増加させる制御手段を設け、プラズマからの反射波電力を測定する測定手段を更に備え、
前記制御手段は、一の被処理基板に対するプラズマ処理時に前記測定手段により測定される反射波電力が、他の被処理基板に対するプラズマ処理時に予め測定された反射波電力の変化に追従するように、起点から静電容量を減少または増加させることを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項4】
真空チャンバ内にプラズマを発生させるための高周波電力をインピーダンス整合器を介して出力する高周波電源を備えて真空チャンバ内の被処理基板に対して所定のプラズマ処理を行うプラズマ処理装置であって、
インピーダンス整合器は、静電容量が可変のコンデンサを有し、高周波電力の出力時にこのコンデンサの静電容量を起点とし、プラズマのインピーダンスと高周波電源の出力インピーダンスとが整合するようにこの起点から静電容量を減少または増加させると共に、この整合時の静電容量を次に高周波電力が出力されるときの調整点とし、調整点から静電容量を減少または増加させる制御手段を設け、
プラズマからの反射波電力を測定する測定手段を更に備え、
前記制御手段は、被処理基板に対するプラズマ処理時に前記測定手段により測定される反射波電力が、予め設定された反射波電力の変化の設定値に追従するように、起点から静電容量を減少または増加させることを特徴とするプラズマ処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマ処理装置に関し、より詳しくは、真空チャンバ内にプラズマを発生させるための高周波電力をインピーダンス整合器を介して出力する高周波電源を備えて真空チャンバ内の被処理基板に対して所定のプラズマ処理を行うものに関する。
【背景技術】
【0002】
この種のプラズマ装置は、例えば半導体デバイスの製造工程にて被処理基板に対してスパッタリング法及びプラズマCVD法等による成膜処理、イオン注入処理やエッチング処理などの各種のプラズマ処理に利用される。このようなプラズマ処理装置の中には、真空チャンバ内にプラズマを発生させるために高周波電力を用いるものがあり、このとき、静電容量が可変のコンデンサを設けたインピーダンス整合器によりプラズマのインピーダンスと高周波電源の出力インピーダンスとを整合させることが知られている(特許文献1参照)。
【0003】
ところで、プラズマ処理装置としての高周波スパッタリング装置を用い、被処理基板に成膜処理を行う場合、被処理基板に成膜する薄膜の膜厚は、通常、ターゲットに出力する高周波電力(kW)とこの高周波電力のターゲットへの出力時間(所謂、スパッタ時間)とで管理される。そして、高周波スパッタリング装置の真空チャンバ内に被処理基板を順次搬送して各被処理基板に連続して成膜処理していくとき、インピーダンス整合器によりプラズマのインピーダンスと高周波電源の出力インピーダンスとを可及的速やかに整合させることで、ターゲットに高周波電力を出力したときの反射波の影響を抑制して、高周波電力と出力時間とで定まる出力電力量が各被処理基板毎に略一致するようにしている。
【0004】
ここで、各被処理基板に対する成膜処理が進むに伴って真空チャンバの温度や、真空チャンバ内壁へのスパッタ粒子のデポに起因する真空チャンバ内の圧力などの真空チャンバ内の雰囲気が変化する場合、所定の起点から静電容量を減少または増加させると、プラズマのインピーダンスと高周波電源の出力インピーダンスとを整合させる整合時間が長くなることが判明した。この場合、出力電力量が略一致せず、所望の膜厚で成膜することができない。そこで、本発明者らは、鋭意研究を重ね、最初の高周波電力の出力時にコンデンサの静電容量を起点とし、プラズマのインピーダンスと高周波電源の出力インピーダンスとが整合するようにこの起点から静電容量を減少または増加させ、この整合時の静電容量を次に高周波電力が出力されるときの調整点とし、次の被処理基板に成膜処理をする場合には、調整点から静電容量を減少または増加させることで、プラズマのインピーダンスと高周波電源の出力インピーダンスとを整合させる整合時間が各被処理基板毎に略一致することを知見するのに至った。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−138613号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上の知見に基づいてなされたものであり、各プラズマ処理中にプラズマに供給される出力電力量を略一定に制御することができるプラズマ処理装置を提供することをその課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、真空チャンバ内にプラズマを発生させるための高周波電力をインピーダンス整合器を介して出力する高周波電源を備えて真空チャンバ内の被処理基板に対して所定のプラズマ処理を行う本発明のプラズマ処理装置は、インピーダンス整合器が、静電容量が可変のコンデンサを有し、高周波電力の出力時にこのコンデンサの静電容量を起点とし、プラズマのインピーダンスと高周波電源の出力インピーダンスとが整合するようにこの起点から静電容量を減少または増加させると共に、この整合時の静電容量を次に高周波電力が出力されるときの調整点とし、調整点から静電容量を減少または増加させる制御手段を設けることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、インピーダンス整合時の静電容量を調整点とし、次のプラズマ処理にて調整点から静電容量を減少または増加させるため、プラズマのインピーダンスと高周波電源の出力インピーダンスとを整合させる整合時間を各被処理基板毎に略一致させて出力電力量を略一致させることができる。尚、本発明において、出力電力量とは、高周波電力の進行波電力から反射波電力を減算した実効出力電力をプラズマ処理時間積算した積分値をいう。
【0009】
ところで、何らかの原因(ロット変更等)で高周波電力の出力が一旦停止された後、再開されるまでの時間が、複数枚の被処理基板に対して連続して成膜処理をする場合と比較して長くなった場合、調整点から静電容量を減少または増加させると、プラズマのインピーダンスと高周波電源の出力インピーダンスとを整合させるのに時間がかかることが判明した。この場合、出力電力量が略一致せず、所望の膜厚で成膜することができない。そこで、本発明者らは、鋭意研究を重ね、高周波電力の出力が一旦停止された後、再開されるまでの真空チャンバ内の雰囲気の変化が影響することを知見するのに至った。この知見に基づき、本発明において、制御手段が、高周波電力の出力が一旦停止された後、再開されるまでの時間を計測し、この計測した時間が所定値を超えると、起点から調整点までの静電容量の減少分または増加分に応じて、コンデンサの静電容量を補正し、この補正後の静電容量を起点とすることが好ましい。これによれば、高周波電力の出力が一旦停止された後、再開されるまでの時間に関係なく、プラズマのインピーダンスと高周波電源の出力インピーダンスとを整合させる整合時間を略一致させることができ、各プラズマ処理中にプラズマ(負荷)に供給される出力電力量を略一致させることができる。
【0010】
本発明において、プラズマからの反射波電力を測定する測定手段を更に備え、前記制御手段は、一の被処理基板に対するプラズマ処理時に前記測定手段により測定される反射波電力と時間の積分値が、他の被処理基板に対するプラズマ処理時に予め測定された反射波電力と時間の積分値と一致するように、起点から静電容量を減少または増加させることが好ましい。これによれば、プラズマ処理中に発生する反射波電力と時間の積分値を略一定に制御することができるため、プラズマ処理中にプラズマ(負荷)に供給される出力電力量を略一致させることできる。
【0011】
本発明において、プラズマからの反射波電力を測定する測定手段を更に備え、前記制御手段は、一の被処理基板に対するプラズマ処理時に前記測定手段により測定される反射波電力が、他の被処理基板に対するプラズマ処理時に予め測定された反射波電力の変化に追従するように、起点から静電容量を減少または増加させることが好ましい。これによれば、プラズマ処理中に発生する反射波電力を略一定に制御することができるため、各プラズマ処理中にプラズマ(負荷)に供給される実効電力を略一定に制御することができる。
【0012】
本発明において、プラズマからの反射波電力を測定する測定手段を更に備え、前記制御手段は、被処理基板に対するプラズマ処理時に前記測定手段により測定される反射波電力が、予め設定された反射波電力の変化の設定値に追従するように、起点から静電容量を減少または増加させることが好ましい。これによれば、プラズマ処理中に発生する反射波電力を略一定に制御することができるため、プラズマ処理中にプラズマ(負荷)に供給される出力電力量を略一致させることできる。
【0013】
また、本発明は、真空チャンバ内に配置されるターゲットにインピーダンス整合器を介して高周波電力を出力するスパッタリング装置に対して、好適に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態のプラズマ処理装置を示す模式的断面図。
【
図3】
図1に示すインピーダンス整合器のコンデンサの静電容量の制御について説明するグラフ。
【
図4】プラズマ処理中の反射波電力の変化を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、被処理基板Wをシリコン基板とし、このシリコン基板Wの表面にアルミナ膜を成膜するマグネトロン方式のスパッタリング装置SMを例として、本実施形態のプラズマ処理装置について説明する。
【0016】
図1を参照して、スパッタリング装置SMは、処理室10を画成する真空チャンバ1を備える。真空チャンバ1の底壁には、ターボ分子ポンプやロータリーポンプなどからなる真空排気手段Pに通じる排気管11が接続され、真空チャンバ1の側壁にはアルゴン等の希ガスたるスパッタガスのガス源(図示省略)に通じるガス管12が接続され、ガス管12にはマスフローコントローラ13が介設されている。これにより、流量制御されたスパッタガスが、真空排気手段Pにより一定の排気速度で真空引きされている処理室10内に導入でき、成膜処理中、処理室10の圧力が略一定に保持されるようにしている。真空チャンバ1の天井部にはカソードユニットCが取付けられている。以下においては、
図1中、真空チャンバ1の天井部側を向く方向を「上」とし、その底部側を向く方向を「下」として説明する。
【0017】
カソードユニットCは、電極たるターゲット2と、ターゲット2の上面にインジウム等のボンディング材(図示省略)を介して接合されるバッキングプレート3と、バッキングプレート3の上方に配置される磁石ユニット4とを有する。ターゲット2は、被処理基板Wの輪郭に応じて、公知の方法で平面視円形の板状に形成された酸化アルミニウム製のものである。バッキングプレート3は、その内部に後述する冷媒通路30を有して、この冷媒通路30を流れる冷媒(例えば冷却水)との熱交換でターゲット2を冷却できるようになっている。ターゲット2を装着した状態でバッキングプレート3下面の周縁部が、絶縁部材Iを介して真空チャンバ1の側壁上部に取り付けられる。
【0018】
ターゲット2には、インピーダンス整合器MBを介して高周波電源Eが接続され、成膜処理時、ターゲット2にインピーダンス整合器MBを介して高周波電力が出力されるようになっている。インピーダンス整合器MBとしては、静電容量が可変のコンデンサVCを有する公知のものを用いることができる。コンデンサVCの静電容量は、後述の制御手段Cにより減少または増加されるようになっており、制御手段Cによる静電容量の制御については後述する。また、高周波電源Eは、プラズマからの反射波電力を測定する反射波電力測定部Eaを有し、この反射波電力測定部Eaが特許請求の範囲の「測定手段」に対応する。そして、反射波電力測定部Eaにより測定される反射波電力の変化(波形)は、制御手段Cの図示省略のメモリに格納できるようになっている。
【0019】
磁石ユニット4は、ターゲット2のスパッタ面(下面)21の下方空間に磁場を発生させ、スパッタ時にスパッタ面21の下方で電離した電子等を捕捉してターゲット2から飛散したスパッタ粒子を効率よくイオン化する公知の構造を有するものであり、ここでは詳細な説明を省略する。
【0020】
真空チャンバ1の底部には、ターゲット2に対向させて例えば金属製のステージ5が配置され、処理対象物Wがその成膜面たる上面を開放した状態で位置決め保持されるようにしている。この場合、ターゲット2と処理対象物Wとの間の間隔(TS距離)は、生産性や散乱回数等を考慮して25〜80mmの範囲に設定される。尚、ステージ5としては、公知の静電チャックを有するものを用いることができる。
【0021】
上記スパッタリング装置SMは、特に図示しないが、マイクロコンピュータやシーケンサやメモリ等を備えた制御手段Cを有し、制御手段Cにより高周波電源Eの稼働、マスフローコントローラ13の稼働、真空排気手段Pの稼働等を統括管理するようになっている。また、後述するように、制御手段Cは、高周波電力の出力が一旦停止された後、再開されるまでの時間を図示省略のタイマー等を用いて計測し、インピーダンス整合器MBのコンデンサVCの静電容量の制御を行う。以下、上記スパッタリング装置SMを用いて、シリコン基板Wの表面に酸化アルミニウム膜を成膜する成膜処理を例として、プラズマ処理について説明する。
【0022】
先ず、真空チャンバ1内のステージ5にシリコン基板Wをセットした後、真空ポンプPを作動させて処理室10内を真空引きする。処理室10内が所定圧力(例えば、1×10
−5Pa)に達すると、マスフローコントローラ11を制御してアルゴンガスを所定の流量で導入する(このとき、処理室10内の圧力が0.01〜30Paの範囲となる)。これと併せて、高周波電源Eからターゲット2にインピーダンス整合器MBを介して高周波電力(例えば、13.56MHz、2000W)を出力して真空チャンバ1内にプラズマを形成する。これにより、ターゲット2のスパッタ面21をスパッタリングし、飛散したスパッタ粒子をシリコン基板W表面に付着、堆積させることにより酸化アルミニウム膜が成膜される。所定のスパッタ時間に達すると、成膜済みのシリコン基板Wは真空チャンバ1から搬出され、次のシリコン基板Wが真空チャンバ1内に搬入され、上記と同様に、酸化アルミニウム膜が成膜される。このように、真空チャンバ1内にシリコン基板Wを順次搬送して各シリコン基板Wに連続して成膜処理が行われる。
【0023】
このようにシリコン基板Wに成膜する酸化アルミニウム膜の膜厚は、ターゲット2に出力する高周波電力(kW)とこの高周波電力のターゲット2への出力時間(スパッタ時間)とで管理される。連続処理時は、インピーダンス整合器MBにより可及的速やかにインピーダンス整合を行うことで、ターゲット2に高周波電力を出力したときの反射波の影響を抑制して、高周波電力と出力時間とで定まる出力電力量が各シリコン基板W毎に略一致するようにしている。尚、出力電力量とは、
図2に示すように、高周波電力の進行波電力Pfから反射波電力Prを減算した実効出力電力Peをスパッタ時間t積算した積分値(Pe×t)をいう。
【0024】
ここで、各シリコン基板Wに対する成膜処理が進むと、真空チャンバ1の温度や、真空チャンバ1内壁へのスパッタ粒子のデポに起因する真空チャンバ1内の圧力などの真空チャンバ内の雰囲気が変化し、整合時の静電容量も変化する。そこで、
図3に示すように、最初の高周波電力の出力時(第1ロットの1枚目の成膜処理時)に、コンデンサVCの静電容量を起点から減少させ、プラズマのインピーダンスと高周波電源Eの出力インピーダンスとを整合させる。そして、この整合時の静電容量を次に高周波電力が出力されるとき(第1ロットの2枚目の成膜処理時)の調整点とし、当該2枚目の成膜処理時に調整点から静電容量を減少させる。同様に、n枚目の成膜処理時に、(n−1)枚目の調整点から静電容量を減少させる。これにより、インピーダンスの整合に必要な時間を各シリコン基板毎に略一致させることができる。
【0025】
ところで、第1ロットから第2ロットへの変更時に、高周波電力の出力が一旦停止された後、再開されるまでの時間が、上記連続処理をする場合と比較して長くなる場合がある。この場合、第2ロットの1枚目の成膜処理時に、第1ロットの25枚目の調整点から静電容量を減少させてインピーダンスを整合させると、インピーダンス整合に長時間かかることがある。
【0026】
そこで、本実施形態では、制御手段Cにより、高周波電力の出力が一旦停止された後、再開されるまでの時間を計測し、この計測した時間が所定値以下の場合には、上記の如く、調整点から静電容量を減少させる。一方、この計測した時間が所定値を超えた場合には、
図3に示すように、起点から調整点までの静電容量の減少分ΔC1に応じてコンデンサVCの静電容量をΔC2だけ補正し、次に高周波電力を出力するとき(第2ロットの1枚目の成膜処理時)に、補正後の静電容量を起点として静電容量を減少させる。この静電容量の補正量ΔC2は、計測時間を変化させてインピーダンス整合時の静電容量を夫々求め、求めた静電容量と計測時間との関係を規定した数式やマップを予め作成しておき、これらの数式やマップを用いて求めることができる。このように、補正後の静電容量を起点に、プラズマのインピーダンスと高周波電源の出力インピーダンスとを整合させるので、高周波電力が一旦停止された後、再開されるまでの時間に関係なく、整合時間を略一致させることができる。これにより、出力電力量を各シリコン基板毎に略一致させることができる。
【0027】
かかる出力電力量を各シリコン基板毎により一致させるためには、プラズマ処理中の反射波電力Prの変化を各シリコン基板毎に略一致させることが好ましい。即ち、例えば、第1ロットに対する処理を行う前に、シリコン基板に対するプラズマ処理時の反射波電力の変化を測定手段Eaにより測定し、この測定した
図4において破線L1で示すような反射波電力の変化を制御手段C内のメモリに格納する。そして、第1ロットの1枚目の成膜処理時に、メモリから上記反射波電力の変化L1を読み出し、測定手段Eaにより測定される反射波電力L2が上記反射波電力の変化L1に追従するように、起点から静電容量を減少または増加させる。このとき、
図3に示すように起点から静電容量を減少させるだけでなく、反射波電力L2に応じて静電容量を一旦増加させることも行う。ここで、予め測定された反射波電力の変化L1に追従するとは、反射波電力L2が厳密に一致することを言うものではなく、
図2において斜線で示すように反射波電力Prをスパッタ時間t積算した積分値(面積)が同等であることを意味するものとする。
【0028】
また、予め測定された反射波電力の変化L1に追従させるのではなく、予め設定された反射波電力の設定値L3(
図4参照)に追従させてもよい。これは、反射波電力を精密に追従させる必要がない場合に特に適している。これによれば、十分に制御の余裕を持たせて設定値L3を設定すれば、静電容量の制御を簡単にできて有利である。
【0029】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記に限定されるものではない。上記実施形態においては、連続処理時にコンデンサVCの静電容量を徐々に減少させる場合を例に説明したが、プラズマ処理の種類によっては連続処理時にコンデンサVCの静電容量が増加側に変化することがあるため、連続処理時にコンデンサVCの静電容量を増加させる場合にも本発明を適用することができる。この場合、1枚目のプラズマ処理時に起点から静電容量を増加させることでインピーダンスを整合し、この整合時の静電容量を調整点として記憶し、2枚目のプラズマ処理時に調整点から静電容量を増加させる。そして、高周波電力の出力が一旦停止された後、再開されるまでの時間が所定値を超えると、起点から調整点までの静電容量の増加分(ΔC1)に応じて、コンデンサVCの静電容量を補正し、補正後の静電容量を起点とすれば、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0030】
ここで、コンデンサVCの静電容量は、減少側及び増加側のいずれか一方向に調整してインピーダンスを整合させるため、その反対側に調整する場合には時間がかかる。このため、上記実施形態の如く静電容量を徐々に減少(または増加)させる場合に、その反対側である増加側(または減少側)に補正すれば、インピーダンスの整合時間を短縮できて有利である。
【0031】
上記実施形態では、第2ロットの1枚目の起点の静電容量を、第1ロットの1枚目の起点の静電容量よりも大きくなるように補正しているが、計測時間が比較的短い場合には、第1ロットの1枚目の起点の静電容量よりも小さくなるように補正してもよい。
【0032】
上記実施形態では、平行平板型のプラズマ処理装置(スパッタリング装置SM)を例に説明したが、コイルにインピーダンス整合器を介して高周波電力を出力する誘導結合型のプラズマ処理装置に対しても本発明を適用することができる。
【0033】
また、上記実施形態では、絶縁物製のターゲットを用いて絶縁物膜を成膜する場合を例に説明したが、アルミニウムや銅のような金属製のターゲットを用いて金属膜を成膜する場合にも当然に本発明を適用することができる。さらに、プラズマ処理装置はスパッタリング装置のような成膜装置に限定されず、イオン注入装置やエッチング装置などの他のプラズマ処理装置に対して本発明を適用することができる。
【0034】
また、上記実施形態では、高周波電力の出力が一旦停止された後、再開されるまでの時間が所定値を超える場合の例としてロット交換時を挙げて説明したが、これに限定されず、連続処理中に何らの理由により当該時間が所定値を超えた場合にも本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0035】
C…制御手段、E…高周波電源、Ea…反射波電力測定部(測定手段)、MB…インピーダンス整合器、SM…スパッタリング装置(プラズマ処理装置)、VC…コンデンサ、W…シリコン基板(被処理基板)、1…真空チャンバ。