【実施例】
【0043】
以下、実施例によって、本発明をより具体的に説明する。本発明はこれらの例によって何ら制限されるものではない。
本発明において用いた測定および試験の方法は以下のとおりである。
【0044】
(1)砥粒の平均一次粒子径の測定
砥粒(コロイダルシリカ)の平均一次粒子径は、BET法(窒素吸着)により測定して得た比表面積を下記式[1]
平均一次粒子径(nm)=2672/比表面積(m
2/g) [1]
に代入し算出した。BET法による比表面積の測定は、(株)マウンテック社製Macsorb HM model−1201を用い行った。測定用サンプルは、コロイダルシリカを含むスラリーをホットプレート上で加熱・乾燥させた後、乳鉢で細かく砕くことにより調製した。
【0045】
(2)砥粒の平均二次粒子径の測定
砥粒(コロイダルシリカ)の平均二次粒子径は、動的光散乱法により測定した粒度分布(体積表示)の累積50%粒子径D50で示した。また、累積84%粒子径と累積16%粒子径の差の1/2をSDとした。動的光散乱法による粒度分布測定は、日機装(株)製Microtrac model UPA−UT151を用い行った。
測定用サンプルは、コロイダルシリカを含むスラリーをシリカ濃度0.1%となるようイオン交換水で希釈することにより調製した。
【0046】
(3)HECの平均分子量の測定
HECの数平均分子量(Mn)および重量平均分子量(Mw)はGPC法により測定した。GPC測定は、以下の装置および条件で行った。
GPC装置:島津製作所社製SCL−10A
カラム:東ソー社製 TSKgel GMPWXL(×1)
+TSKgel G2500PWXL(×1)
溶離液:0.1mol/kg NaCl、20%メタノール、残り純水
流速:0.6mL/min
検出方法:RI+UV(254nm)
標準物質:ポリエチレンオキシド
【0047】
(4)エッチングテスト
P型、結晶面(100)、抵抗率1〜10Ω・cm、厚さ525μmの4インチシリコンウェハを25mm×25mm角にカットした。このウェハ片は、表面の酸化膜を除去のため1%フッ化水素酸に10分間浸漬させた。フッ化水素酸から取り出した後、表面をイオン交換水でリンスし、表面が水を十分はじくこと(濡れ性0%)を確認した。ウェハ片の表面を拭きよく水分を除いた後、重量を秤量し、研磨用組成物濃縮物20g中に浸漬させた。ウェハ片は一日毎に取り出し、表面をイオン交換水でリンスした後、表面を拭きよく水分を除き秤量し、元の研磨用組成物濃縮液に戻した。元の重量からの減少量をエッチング量とした。3〜4日後まで測定を行い、減少量が実験日数に対し直線的に変化していることを確認し、(元の重量(mg)−最終日の重量(mg))/最終日までの経過日数(日)を平均エッチング量(mg/日)とした。
【0048】
(5)研磨テスト1
研磨用組成物濃縮物を所定の希釈率でイオン交換水により希釈して調製した研磨用組成物を用い研磨テストを行った。
研磨テスト1は、以下の装置および条件で行った。
研磨機:ミクロ技研社製LGP−15S−I
ウェハ:4インチシリコンウェハ
(P型、抵抗率1〜10Ω・cm、結晶面(100))
面圧:0.12kgf/cm
2
ウェハ回転速度:50rpm
パッド:フジミ社製SURFIN SSWI
パッド回転速度:50rpm
研磨スラリー供給速度:100mL/分
研磨時間:10分
研磨量は、研磨前後のウェハの重量変化から求めた。
表面の濡れ性(%)は、ウェハ表面の水に覆われた部分の面積/ウェハ表面全面積(%)であり、(1)研磨直後(ウェハを研磨機から取り外す前)および(2)研磨機から取り外し表面にイオン交換水をかけた後、の二つのタイミングにおいて目視で確認した。
【0049】
(6)研磨テスト2
研磨テスト2は、以下の装置および条件で行った。
研磨機:岡本工作機械製作所製PNX−332B
ウェハ:12インチシリコンウェハ
(P型、抵抗率1〜100Ω・cm、結晶面(100))
面圧:0.12kgf/cm
2
ウェハ回転速度:30rpm
パッド:発泡ウレタン
パッド回転速度:30rpm
研磨スラリー供給速度:100mL/分
研磨時間:所定の時間(×1と表記)、所定の時間の2倍(×2と表記)
パーティクル及びヘイズの測定:KLA-Tencor製SurfscanSP3
【0050】
(調製例1)
<コロイダルシリカ・スラリーの調製>
砥粒として用いたコロイダルシリカのスラリーは、第4712556号の実施例に記載の方法で調製した。
【0051】
さらに、0.5μmフィルター濾過を行い、シリカ濃度17.0wt%、NH
3濃度1560ppmのコロイダルシリカ・スラリーを得た。得られたコロイダルシリカの粒径は、平均一次粒子径19.0nm、平均二次粒子径31.6nm(SD=8.8nm、CV=0.28)であった。
【0052】
(調製例2)
<HEC溶解液の調製>
HEC(ダイセルファインケム(株)製SP200、重量平均分子量12万)15kgをイオン交換水585kgに少しずつ添加・溶解させ、2.5%粗HEC溶解液600kgを調製した。この粗溶解液を、陽イオン交換樹脂(オルガノ(株)製Amberlite200CT(H)−HG)カラムに通し、金属不純物の除去を行った。カラム処理後、25%NH
3水5.3kgおよびイオン交換水200kgを添加し、さらに0.5μmフィルター濾過を行った。以上により、HEC濃度1.7wt%、NH
3濃度1650ppmのHEC溶解液を732kg得た。
【0053】
(調製例3)
<研磨用組成物(研磨スラリー)の調製>
調製例1で調製したコロイダルシリカ・スラリーおよび調製例2で調製したHEC溶解液、並びにNH
3水、イオン交換水および下記表1に示す界面活性剤の中から選ばれたものおよび必要に応じてPEG・PPG混合溶液を所定量混合して研磨用組成物濃縮物を調製した。
研磨用組成物濃縮物は、研磨直前にイオン交換水により所定の希釈率で希釈して研磨用組成物を調製した。
【0054】
【表1】
【0055】
(実施例1)
調製例3の調製法に従って、界面活性剤としてAA−Aを用いて界面活性剤1%溶液5.00重量部、コロイダルシリカ・スラリー52.9重量部、HEC溶解液17.6重量部、4%NH
3水2.21重量部および水22.2重量部を混合して研磨用組成物濃縮物を調製した。得られた研磨用組成物濃縮物に含有される界面活性剤、砥粒、NH
3およびHECの濃度を表2に表示した。
続いて得られた研磨用組成物濃縮物をイオン交換水により表2に記載の希釈率で希釈して研磨用組成物を調製した。
【0056】
得られた研磨用組成物濃縮物および研磨用組成物を用いて、エッチングテスト、研磨テスト1および濡れ性テストを行った。その結果を表2に示した。
エッチングテストでは、エッチング量が少ないほど好ましく、平均エッチング量(mg/日)が0.10mg未満を良と、0.10mg以上を不良と判定した。
研磨テスト1では、研磨量は高いほど好ましく、本条件では、研磨量0.5mg以上を良と、0.5mg未満を不良と判定した。
研磨直後濡れ性および水リンス後濡れ性テストでは100%に近いほど好ましく、ともに90%以上を良と、90%未満を不良と判定した。
【0057】
(実施例2)
実施例1において、各成分の混合割合を、界面活性剤1%溶液2.50重量部、コロイダルシリカ・スラリー54.1重量部、HEC溶解液21.5重量部、4%NH
3水2.88重量部および水19.0重量部に変えるほかは同様にして研磨用組成物濃縮物および研磨用組成物を調製した。
得られた研磨用組成物濃縮物および研磨用組成物を用いて、エッチングテスト、研磨テスト1および濡れ性テストを行った。その結果を表2に示した。
【0058】
(実施例3および4)
実施例1および2においてそれぞれの界面活性剤をAG−Aに代えるほかは同様にして研磨用組成物濃縮物および研磨用組成物濃縮物を調製した。
得られた研磨用組成物濃縮物および研磨用組成物を用いて、エッチングテスト、研磨テスト1および濡れ性テストを行った。その結果を表2に示した。
【0059】
(実施例5)
実施例1において界面活性剤をAG−Bに代えるほかは同様にして研磨用組成物濃縮物および研磨用組成物濃縮物を調製した。
得られた研磨用組成物濃縮物および研磨用組成物を用いて、エッチングテスト、研磨テスト1および濡れ性テストを行った。その結果を表2に示した。
【0060】
(比較例1および2)
実施例1および2において、ともに界面活性剤の使用を省略するほかは同様にして研磨用組成物濃縮物および研磨用組成物濃縮物を調製し比較例1および2とした。得られた研磨用組成物濃縮物および研磨用組成物を用いて、エッチングテスト、研磨テスト1および濡れ性テストを行った。その結果を表2に示した。
【0061】
(比較例3)
実施例1において、界面活性剤をPEGに代えるほかは同様にして研磨用組成物濃縮物および研磨用組成物濃縮物を調製し、エッチングテスト、研磨テスト1および濡れ性テストを行った。その結果を表2に示した。
【0062】
(比較例4および5)
実施例1および2において、それぞれ界面活性剤をPOEAE−Aに代えるほかは同様にして研磨用組成物濃縮物および研磨用組成物濃縮物を調製し、研磨テスト1および濡れ性テストを行った。その結果を表2に示した。エッチングテストは省略した。
【0063】
(比較例6〜8)
実施例1において、界面活性剤溶液量を1.00重量部に変えて、かつ界面活性剤をPOEAE−B(比較例6)、POEAE−C(比較例7)またはPOEAPE−A(比較例8)に代えるほかは同様にして研磨用組成物濃縮物および研磨用組成物濃縮物を調製し、研磨テスト1および濡れ性テストを行った。その結果を表2に示した。エッチングテストは省略した。
【0064】
【表2】
【0065】
アルカノールアミドまたはアルキルグルコシドを添加した研磨用組成物濃縮物または研磨用組成物(実施例1〜5)では、テスト全てで良であった。
比較例1〜8では、エッチングテスト、研磨テスト1または濡れ性テストにおいて劣っていた。
【0066】
(実施例6)
調製例3の調製法に従って、界面活性剤としてAA−Aを用いて界面活性剤1%溶液4.50重量部、コロイダルシリカ・スラリー54.1重量部、HEC溶解液21.5重量部、4%NH
3水2.88重量部、PEG・PPG混合溶液4.50重量部および水12.5重量部を混合して研磨用組成物濃縮物を調製した。得られた研磨用組成物濃縮物に含有される界面活性剤、砥粒、NH
3、HECおよびその他の成分の濃度を表3に表示した。
本実施例で用いたPEG・PPG混合溶液は、三洋化成工業株式会社製PEG−6000Sを8000ppmと、同社製ニューポールPP1000を2000ppmを含有する水溶液である。
続いて得られた研磨用組成物濃縮物をイオン交換水により表3に記載の希釈率で希釈して研磨用組成物を調製した。
得られた研磨用組成物濃縮物および研磨用組成物を用いて、研磨テスト2を行った。その結果を表3に示した。
【0067】
研磨テスト2において、ヘイズは、下記比較例9の値を100とした相対値で示した。95未満であれば良(◎)、95以上105未満は可(○)、105以上は不良(×)と判断した。
また、パーティクル(26nm以上)は、下記比較例9の値を100とした相対値で示した。90未満であれば良(◎)、90以上200未満は可(○)、200以上は不良(×)と判断した。
【0068】
(実施例7〜8)
実施例6において、界面活性剤をAG−A(実施例7)またはAG−B(実施例8)に代えるほかは同様にして研磨用組成物濃縮物および研磨用組成物を調製し、研磨テスト2を行った。その結果を表3に示した。
【0069】
(比較例9)
実施例6において、界面活性剤の使用を省略するほかは同様にして研磨用組成物濃縮物および研磨用組成物を調製し、研磨テスト2を行った。その結果を表3に示した。
【0070】
【表3】
【0071】
表3の結果からアルカノールアミドまたはアルキルグルコシドを添加した研磨用組成物(実施例6〜8)では、ヘイズは全て良(◎)であり、パーティクルも全て可(○)以上であった。