(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
a)重合ステップであって、酸基を有しかつ少なくとも部分的に中和されていてもよい少なくとも1種のエチレン性不飽和モノマーMと少なくとも1種の架橋剤とを含むモノマー水溶液を重合させて、水性ポリマーゲルを取得するステップ、
b)造粒ステップであって、35〜70質量%の固形分および75〜125℃の温度を有する前記水性ポリマーゲルを、高圧域からダイプレートを通過して低圧域へと押して造粒体を取得し、その際、前記高圧域と前記低圧域との圧力差は4バール〜14バール未満であり、かつ前記ダイプレートの開口率は30〜80%であるものとするステップ、
c)乾燥ステップであって、前記造粒体を乾燥させて含水率を10質量%未満にするステップ、
d)粉砕ステップおよび分級ステップであって、その際、吸水性ポリマー粒子を取得するステップ、および
e)前記吸水性ポリマー粒子を表面後架橋させるステップ
を含む、吸水性ポリマー粒子の製造方法。
ステップa)において、中和されていないモノマーMを基準として少なくとも0.25質量%の架橋剤を使用することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。
ステップa)において、モノマー溶液を、軸に平行に回転する少なくとも2つのシャフトを備えた重合反応器中で重合させることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
造粒ステップb)を押出機中で行い、前記押出機は、長い押出機ハウジングと、ダイプレートを備えた出口開口部と、前記押出機ハウジング内で回転する少なくとも1つのスクリューシャフトとを含み、前記スクリューシャフトによって、背圧の発生下にポリマーゲルが前記出口開口部の方向へと搬送されることを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項に記載の方法。
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い自由膨潤速度と高い保持力とを示しつつ、保持力に対する膨潤ゲル層の透過性の有利な比を示す吸水性ポリマー粒子の製造方法に関する。前記方法は、モノマー水溶液の重合、造粒ステップ、乾燥ステップ、粉砕および分級ステップ、ならびに表面後架橋を含む。本発明は、前記方法により得ることができる吸水性ポリマー粒子にも関する。
【0002】
吸水性ポリマー粒子は、おむつ、タンポン、生理用ナプキンおよび他の衛生用品の製造に使用されており、また市場園芸における保水剤としても使用されている。吸水性ポリマー粒子は、超吸収体とも呼ばれる。
【0003】
吸水性ポリマー粒子の製造は、研究論文”Modern Superabsorbent Polymer Technology”,F.L.Buchholz and A.T.Graham,Wiley−VCH,1998,p.71−103に記載されている。
【0004】
吸水性ポリマー粒子のポリマー鎖は、互いに橋かけ構造を成している。これによって、特にポリマー粒子は水に不溶性となる。吸水性ポリマー粒子の特性は、使用される架橋剤の量によって調節可能である。架橋剤の量の増加に伴って保持力(いわゆる遠心分離保持容量(Centrifuge Retention Capacity,CRC)という形で示される)が低下し、かつ圧力下での吸収力(いわゆる荷重下吸収力(Absorption under Load,AUL)という形で示される)は最大値を通る。
【0005】
おむつの設計においては、目下、セルロース繊維の割合を低くして超吸収体の割合を高くした、より薄い構造が製造される傾向にある。より薄い構造物とすることによる利点は、装着感の改善に反映されるだけでなく、包装および保管にかかるコストの削減にも反映される。より一層薄いおむつ構造が求められる傾向に伴って、超吸収体に対する要求プロファイルは明らかに変化を遂げてきた。目下、決定的に重要であるのは、ヒドロゲルが液体を伝導し(透過性)、そしてこの液体を分配する能力である。衛生用品の負荷(単位面積当たりの超吸収体の量)が比較的高いため、膨潤状態にあるポリマーが後続の液体に対してバリア相を形成すること(ゲルブロッキング)が生じてはならない。製品が良好な輸送特性を示さなければ、衛生用品全体の保持力を最適に利用することはできない。
【0006】
超吸収体の透過性(いわゆる食塩水流れ誘導性(Saline Flow Conductivity,SFCという形で示される)および圧力下での吸収力と並んで、特に超吸収体粒子の吸収速度(1秒当たりで超吸収体1g当たりに吸収される液体の量、あるいは自由膨潤速度(Free Swell Rate,FSR)で示される)も重要な基準の一つであり、これによって、この超吸収体を高濃度で含む吸収性の吸収コアが液体と初めて接触した際にこの液体を迅速に吸収できる(いわゆる「アクィジション」)か否かを判断することができる。吸収コアが高割合の超吸収体を有する場合には、この「アクィジション」は特にこの超吸収体材料の吸収速度に依存する。
【0007】
使用特性、例えばおむつにおける膨潤ゲル層の透過性、および圧力下での吸収力を向上させるために、吸水性ポリマー粒子には一般に表面後架橋が施される。これによって粒子表面の架橋度が高まると共に、圧力下での吸収力と保持力とを少なくとも部分的に切り離すことができる。表面後架橋に適した架橋剤は、吸水性ポリマー粒子の少なくとも2つのカルボキシレート基と共有結合を形成しうる化合物である。
【0008】
自由膨潤速度を高めるべく、吸水性ポリマー粒子にマイクロ孔構造を付与することが提案されている。このことは、例えば重合の際に発泡剤を併用することによって可能である。しかしこれまでに、自由膨潤速度を高めることによって常に、膨潤ゲル層の透過性が同等である状態での保持力の低下か、または保持力が同等である状態での膨潤ゲル層の透過性の低下が生じてきた。高められた超吸収体含量を有する衛生用品における超吸収体の品質に関する指標として適しているのが、保持力に対する膨潤ゲル層の透過性の比率である。この比率が所定の値を超えなければ、所与の透過性で十分に高い保持力が達成される。
【0009】
軸に平行に回転する少なくとも2つのシャフトを備えた重合反応器(混練機)内での吸水性ポリマー粒子の製造は、例えば、国際公開第01/038402号(WO 01/038402 A1)、国際公開第03/022896号(WO 03/022896 A1)、国際公開第03/051415号(WO 03/051415 A1)、国際公開第2006/034806号(WO 2006/034806 A1)、国際公開第2006/034853号(WO 2006/034853 A1)、および国際公開第2009/115472号(WO 2009/115472 A1)に記載されている。
【0010】
重合時に生成されるポリマーゲルの押出しは、欧州特許出願公開第0497623号明細書(EP 0497623 A2)に記載されている。その際、架橋された水性ポリマーゲルが、高められた温度で押されてダイプレートに通され、乾燥され、そして粉砕される。こうした得られた吸水性ポリマー粒子が有する抽出可能なポリマーの割合は低く、またこうした吸水性ポリマー粒子は吸収率の向上を示す。
【0011】
国際公開第2005/097313号(WO 2005/097313 A1)には吸水性ポリマー粒子の製造方法が開示されており、その際、水性ポリマーゲルが粉砕され、押出機を用いて押されて、孔直径0.3〜6.4mmのダイプレートに通され、乾燥され、そして表面後架橋されることによって、高いCRC、SFCおよびFSRを示すポリマー粒子が得られる。得られた結果は、SFC/CRCの比率が高いことを示している。
【0012】
先行出願であるPCT/EP 2014/050980には、重合を行い、得られたポリマーゲルを乾燥、粉砕および分級し、そして表面後架橋することによる、吸水性ポリマー粒子の製造方法が開示されている。この水性ポリマーゲルは、乾燥前に押出しされる。最も好ましい開口率は、10%〜20%である。
【0013】
本発明の課題は、高い自由膨潤速度と高い保持力とを示しつつ遠心分離保持容量CRCに対する膨潤ゲル層の透過性SFCの有利な比を示す吸水性ポリマー粒子の製造方法を提供することであった。
【0014】
前述の課題は、以下:
a)重合ステップであって、酸基を有しかつ少なくとも部分的に中和されていてもよい少なくとも1種のエチレン性不飽和モノマーMと少なくとも1種の架橋剤とを水溶液中で重合させて、水性ポリマーゲルを取得するステップ、
b)造粒ステップであって、40〜80質量%の固形分および75〜125℃の温度を有する前記水性ポリマーゲルを、高圧域からダイプレートを通過して低圧域へと押して造粒体を取得し、その際、前記高圧域と前記低圧域との圧力差は4バール〜14バールであり、かつ前記ダイプレートの開口率は30〜80%であるものとするステップ、
c)乾燥ステップであって、前記造粒体を乾燥させて含水率を10質量%未満にするステップ、
d)粉砕ステップおよび分級ステップ、および
e)表面後架橋ステップ
を含む吸水性ポリマー粒子の製造方法により解決された。
【0015】
本発明は、重合により製造された架橋ポリマーゲルが造粒ステップに供される際に、吸水性ポリマー粒子の特性を改善することができるという知見に基づく。この造粒ステップにおいては、ポリマーは制御された条件下で押されてダイプレートに通される。その際に生じるせん断力によって、このダイプレートを通るストランド(押出物)の表面の粗面化が生じ、これによってこのストランドが細かく砕かれて造粒体となる。この造粒体は、その均質性が高いため、例えばブロックやストランドといった緻密な形態のポリマーゲルよりも、より良好に乾燥されることができる。
【0016】
これに加えて、恐らく第2の作用が生じるものと考えられる。ダイプレートの出口での圧力低下と高温とによって、水性ポリマーゲルから水が自然に蒸発する。このポリマーゲル中には、ガスを完全に排出するための流路がほとんど含まれていない。それゆえにマクロ孔が形成され、これによって、ポリマー粒子の表面積の増大とより良好な液体伝導性とがもたらされる。したがって、全体として、表面後架橋後のポリマー粒子は、高い自由膨潤速度(FSR)と高い遠心分離保持容量(CRC)とを示す。
【0017】
前記方法は重合ステップa)を含み、その際、酸基を有しかつ少なくとも部分的に中和されていてもよい少なくとも1種のエチレン性不飽和モノマーMと少なくとも1種の架橋剤とを水溶液中で重合させることで、水性ポリマーゲルが得られる。
【0018】
前記モノマーMは好ましくは水溶性であり、すなわち、23℃での水への溶解度は、典型的には少なくとも1g/100g 水であり、好ましくは少なくとも5g/100g 水であり、特に好ましくは少なくとも25g/100g 水であり、極めて特に好ましくは少なくとも35g/100g 水である。
【0019】
適したモノマーMは、例えばエチレン性不飽和カルボン酸であり、例えばアクリル酸、メタクリル酸およびイタコン酸である。特に好ましいモノマーは、アクリル酸およびメタクリル酸である。極めて特に好ましいのは、アクリル酸である。
【0020】
さらなる適したモノマーMは、例えばエチレン性不飽和スルホン酸であり、例えばスチレンスルホン酸および2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS)である。
【0021】
不純物は、重合に重大な影響を及ぼしかねない。したがって、使用される原材料が可能な限り高い純度を有することが望ましい。したがって、モノマーMを特別に精製することが好ましい場合が多い。適した精製方法は、例えば国際公開第02/055469号(WO 02/055469 A1)、国際公開第03/078378号(WO 03/078378 A1)、および国際公開第2004/035514号(WO 2004/035514 A1)に記載されている。適したモノマーMの一つは、例えば国際公開第2004/035514号(WO 2004/035514 A1)の記載に従って精製されたアクリル酸であり、このアクリル酸は、アクリル酸99.8460質量%、酢酸0.0950質量%、水0.0332質量%、プロピオン酸0.0203質量%、フルフラール0.0001質量%、無水マレイン酸0.0001質量%、ジアクリル酸0.0003質量%およびヒドロキノンモノメチルエーテル0.0050質量%を含有する。
【0022】
モノマーMの全量に対するアクリル酸および/またはその塩の割合は、好ましくは少なくとも50モル%であり、特に好ましくは少なくとも90モル%であり、極めて特に好ましくは少なくとも95モル%である。
【0023】
得られたポリマーゲルの酸基は、通常は部分的に中和されている。この中和は、好ましくはモノマーの段階で行われる。この中和は、通常は中和剤を水溶液として混入することにより行われ、また好ましくは中和剤を固体として混入することによっても行われる。中和度は、好ましくは25〜85モル%であり、特に好ましくは30〜80モル%であり、極めて特に好ましくは40〜75モル%であり、その際、通常の中和剤を使用することができ、好ましくはアルカリ金属水酸化物、アルカリ金属酸化物、アルカリ金属炭酸塩またはアルカリ金属炭酸水素塩およびそれらの混合物を使用することができる。アルカリ金属塩に代えてアンモニウム塩を使用することもできる。アルカリ金属として特に好ましいのはナトリウムおよびカリウムであり、極めて特に好ましいのは水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウムまたは炭酸水素ナトリウムおよびそれらの混合物である。
【0024】
モノマーMは、貯蔵安定剤として通常は重合禁止剤を含有し、好ましくはヒドロキノン半エーテルを含有する。
【0025】
モノマー溶液は、中和されていないモノマーMを基準としてそれぞれ、好ましくは250質量ppmまでの、好ましくは最高でも130質量ppmの、特に好ましくは最高でも70質量ppmの、また、好ましくは少なくとも10質量ppmの、特に好ましくは少なくとも30質量ppmの、特に約50質量ppmのヒドロキノン半エーテルを含有する。例えば、相応するヒドロキノン半エーテル含分を有する酸基含有エチレン性不飽和モノマーを使用してモノマー溶液を製造することができる。
【0026】
好ましいヒドロキノン半エーテルは、ヒドロキノンモノメチルエーテル(MEHQ)および/またはα−トコフェロール(ビタミンE)である。
【0027】
適した架橋剤は、架橋に適した基を少なくとも2つ有する化合物である。このような基は、例えばラジカル機序によりポリマー鎖へ重合可能なエチレン性不飽和基、およびモノマーMの酸基と共有結合を形成しうる官能基である。さらに、モノマーMの少なくとも2つの酸基と配位結合を形成しうる多価金属塩も、架橋剤として適している。
【0028】
架橋剤は、好ましくは、ラジカル機序によるポリマー網目構造へ重合可能な重合性基を少なくとも2つ有する化合物である。適した架橋剤は、例えば、欧州特許出願公開第0530438号明細書(EP 0530438 A1)に記載されているように、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、アリルメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリアリルアミン、テトラアリルアンモニウムクロリド、テトラアリルオキシエタン、欧州特許出願公開第0547847号明細書(EP 0547847 A1)、欧州特許出願公開第0559476号明細書(EP 0559476 A1)、欧州特許出願公開第0632068号明細書(EP 0632068 A1)、国際公開第93/21237号(WO 93/21237 A1)、国際公開第03/104299号(WO 03/104299 A1)、国際公開第03/104300号(WO 03/104300 A1)、国際公開第03/104301号(WO 03/104301 A1)および独国特許出願公開第10331450号明細書(DE 10331450 A1)に記載されているように、ジアクリレートおよびトリアクリレート、独国特許出願公開第10331456号明細書(DE 10331456 A1)および独国特許出願公開第10355401号明細書(DE 10355401 A1)に記載されているように、アクリレート基の他にさらなるエチレン性不飽和基を含む混合型アクリレート、または、例えば独国特許出願公開第19543368号明細書(DE 19543368 A1)、独国特許出願公開第19646484号明細書(DE 19646484 A1)、国際公開第90/15830号(WO 90/15830 A1)および国際公開第02/32962号(WO 02/32962 A2)に記載されているような架橋剤混合物である。
【0029】
好ましい架橋剤は、ペンタエリトリトールトリアリルエーテル、テトラアリルオキシエタン、メチレンビスメタクリルアミド、15箇所エトキシル化されたトリメチロールプロパントリアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレートおよびトリアリルアミンである。
【0030】
極めて特に好ましい架橋剤は、例えば国際公開第03/104301号(WO 03/104301 A1)に記載されているように、複数箇所エトキシル化および/またはプロポキシル化されたグリセリンをアクリル酸またはメタクリル酸でエステル化してジアクリレートまたはトリアクリレートとしたものである。特に好ましいのは、3〜10箇所エトキシル化されたグリセリンのジアクリレートおよび/またはトリアクリレートである。極めて特に好ましいのは、1〜5箇所エトキシル化および/またはプロポキシル化されたグリセリンのジアクリレートまたはトリアクリレートである。最も好ましいのは、3〜5箇所エトキシル化および/またはプロポキシル化されたグリセリンのトリアクリレートであり、特に3箇所エトキシル化されたグリセリンのトリアクリレートが好ましい。
【0031】
架橋剤の量は、中和されていないモノマーMを基準としてそれぞれ、好ましくは0.20〜1.5質量%であり、特に好ましくは0.30〜1.0質量%である。架橋剤含分の増加に伴って遠心分離保持容量(CRC)は低下し、49.2g/cm
2の圧力下での吸収力(AUL
0.7psi)は最大値を通る。
【0032】
架橋剤の量の低下に伴って、抽出可能なポリマー(抽出可能物)の割合は増加する。抽出可能なポリマーの割合が高いと、特に49.2g/cm
2の圧力下での吸収力であるAUL
0.7psiが低くなり、べたついた触感が生じる。したがって、抽出可能なポリマーに対する遠心分離保持容量CRCの比が有利に可能な限り高いことは、材料特性の向上を示している。CRC/抽出可能物の比は、造粒物の乾燥後に求められ、好ましくは少なくとも2.5である。
【0033】
モノマー溶液は、モノマーMと共重合しうるエチレン性不飽和モノマーM
coを含むことができる。M
coは、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノプロピルアクリレート、ジエチルアミノプロピルアクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレートから選択される。
【0034】
モノマー溶液は、1種以上の水溶性ポリマーを含むことができる。水溶性ポリマーとしては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、デンプン、デンプン誘導体、変性セルロース、例えばメチルセルロースもしくはヒドロキシエチルセルロース、ゼラチン、ポリグリコールまたはポリアクリル酸を使用することができ、好ましくはデンプン、デンプン誘導体および変性セルロースを使用することができる。
【0035】
モノマー水溶液が使用される。このモノマー溶液の含水率は、好ましくは40〜75質量%であり、特に好ましくは45〜70質量%であり、極めて特に好ましくは50〜65質量%である。モノマー懸濁液、すなわち過剰のモノマーM、例えばアクリル酸ナトリウムを有するモノマー溶液を使用することも可能である。含水率が増加するとその後の乾燥の際のエネルギー消費量が増加し、含水率が低下すると重合熱を不十分にしか除去することができなくなる。
【0036】
開始剤としては、重合条件下でラジカルを生成するあらゆる化合物を使用することができ、例えば、熱開始剤、レドックス開始剤、光開始剤を使用することができる。適したレドックス開始剤は、ペルオキソ二硫酸ナトリウム/アスコルビン酸、過酸化水素/アスコルビン酸、ペルオキソ二硫酸ナトリウム/亜硫酸水素ナトリウム、および過酸化水素/亜硫酸水素ナトリウムである。好ましくは、熱開始剤とレドックス開始剤とからの混合物が使用され、例えば、ペルオキソ二硫酸ナトリウム/過酸化水素/アスコルビン酸が使用される。しかし、還元性成分としては好ましくは、2−ヒドロキシ−2−スルフィナト酢酸のナトリウム塩と、2−ヒドロキシ−2−スルホナト酢酸の二ナトリウム塩と、亜硫酸水素ナトリウムとからの混合物が使用される。このような混合物は、Brueggolite(登録商標)FF6およびBrueggolite(登録商標)FF7(Brueggemann Chemicals、ハイルブロン、ドイツ連邦共和国)として得られる。
【0037】
最適な作用のために、好ましい重合禁止剤は溶存酸素を必要とする。したがって、不活性化によって、すなわち不活性ガスを流すことによって、好ましくは窒素または二酸化炭素を流すことによって、重合前にモノマー溶液から溶存酸素を排除することができる。モノマー溶液の酸素含分は、好ましくは、重合前に1質量ppm未満まで下げられ、特に好ましくは0.5質量ppm未満まで下げられ、極めて特に好ましくは0.1質量ppm未満まで下げられる。
【0038】
本発明の好ましい一実施形態においては、重合は、不活性ガスの存在下でかつ正圧(ゲージ圧)下で行われる。
【0039】
適した不活性ガスは、窒素、二酸化炭素、水蒸気およびアルゴンである。重合反応は酸素によって阻害される。したがって、不活性ガスが含有する酸素が、好ましくは0.001体積%未満であり、特に好ましくは0.0005体積%未満であり、極めて特に好ましくは0.0002体積%未満であることが望ましい。好ましくは、重合反応器には不活性ガスが連続的に通される。不活性ガス体積流量は、好ましくは0.001〜5m
3/h・m
3 反応器容積であり、特に好ましくは0.01〜2m
3/h・m
3 反応器容積であり、極めて特に好ましくは0.2〜1m
3/h・m
3 反応器容積である。
【0040】
不活性ガスとして、好ましくは窒素が使用され、特に好ましくは工業純度の窒素が使用される。工業用窒素は、通常は、少なくとも99.8体積%の窒素および0.0005体積%未満の酸素を含有する。
【0041】
重合反応器内のゲージ圧は、好ましくは1〜500ミリバールであり、特に好ましくは5〜100ミリバールであり、極めて特に好ましくは10〜30バールである。
【0042】
本発明による方法において使用することができる重合反応器は、好ましくは、軸に平行に回転する少なくとも2つのシャフトを備えており、その際、これらのシャフト上には通常は複数の混練要素および搬送要素が存在する。
【0043】
本発明による方法において使用することができる重合反応器は、例えばList AG(アリスドルフ、スイス国)から得ることができ、かつ、スイス国特許発明第664704号明細書(CH 664704 A5)、欧州特許出願公開第0517068号明細書(EP 0517068 A1)、国際公開第97/12666号(WO 97/12666 A1)、独国特許出願公開第2123956号明細書(DE 2123956 A1)、欧州特許出願公開第0603525号明細書(EP 0603525 A1)、独国特許出願公開第19536944号明細書(DE 19536944 A1)、および独国特許出願公開第4118884号明細書(DE 4118884 A1)に記載されている。
【0044】
このような少なくとも2つのシャフトを備えた重合反応器は、混練要素および搬送要素の構成によって高い自浄性を達成している。この高い自浄性は、連続重合に関して重要な要求の一つである。好ましくは、これら双方のシャフトは互いに反対方向に回転する。
【0045】
撹拌シャフト上には、ディスクセグメントがプロペラ状に配置されている。混練要素および搬送要素としては、例えば壁面に近接するミキシングバー、およびL字型またはU字型のアタッチメントが適している。
【0046】
返送されたポリマー粒子であってその粒径が所定の下限よりも小さい粒子(「細粒」)を、モノマー水溶液に、および/または重合反応器内の重合しているモノマー水溶液に、および/または水性ポリマーゲルに、混入することができる。この細粒は、後の処理ステップにおいて分離除去されたものであり、および/または、他の製造ラインから得られたものである。この細粒に、返送の前または間に、水および/または水性界面活性剤により給湿することができる。細粒を添加することによって、水性ポリマーゲルの固形分が増加する。
【0047】
重合に混練反応器が使用される場合には、細粒は好ましくは重合の最後の三分の一の間に添加される。
【0048】
細粒が極めて早期に、例えばすでにモノマー溶液に添加される場合には、それによって、得られる吸水性ポリマー粒子の遠心分離保持容量CRCが低下する。しかし、このCRCの低下を、例えば架橋剤の使用量の調節によって補償することができる。
【0049】
造粒ステップb)において、ポリマーゲルは、押されてダイプレートの孔に通される。ダイプレートの孔開口部の形状は実質的には限定されず、例えば円形、矩形、三角形、六角形または星形であることができる。好ましくは、ダイプレートの孔開口部は円形である。孔の直径は、好ましくは2〜20mmの範囲内であり、特に好ましくは4〜15mmの範囲内であり、極めて特に好ましくは6〜10mmの範囲内である。開口部が円形でない場合には、孔の直径は、面積が等しい円の直径と定義され、すなわち、断面積が同一である円の直径と定義される。
【0050】
開口率とは、ダイプレートの最大限利用可能な面積に対する該ダイプレートの開口面積(孔面積の合計)の比と定義される。開口率は、30〜80%の範囲内であり、好ましくは40〜70%の範囲内であり、特に好ましくは50〜70%の範囲内である。
【0051】
ダイプレート内の孔の長さは、好ましくは15〜45mmの範囲内であり、特に好ましくは25〜40mmの範囲内である。孔がダイプレート内の穿孔である場合には、該ダイプレートの厚さは孔の長さに相当する。開口部はダイプレート内の管状インサートの形で実現されていてもよく、これは該ダイプレートから突出していてもよい。この場合、孔の長さはこのインサートの長さに相当する。
【0052】
高圧域と低圧域との圧力差は、4バール〜14バール未満の範囲内であり、好ましくは5〜13バールの範囲内である。圧力差が上述の値よりも小さい場合には、ダイプレートを通るポリマーゲルの流量が不所望にも低くなる。さらに、自由膨潤速度の改善も不十分にしか達成されない。圧力差が上述の値よりも大きい場合には、ポリマーゲルの内部構造が損傷し、これによって、抽出可能なポリマーの含分の増加および保持力の低下が生じかねない。
【0053】
好ましくは、造粒ステップb)は押出機内で行われ、この押出機は、長い押出機ハウジングと、ダイプレートを備えた出口開口部と、この押出機ハウジング内で回転する少なくとも1つのスクリューシャフトとを含み、このスクリューシャフトによって、背圧の発生下にポリマーゲルが出口開口部の方向へと搬送される。総じて、ポリマーゲルは、押出機の内部の高圧からダイプレートを通って、周囲、すなわち、大気圧に相当する低圧域内へと押し出される。押出中にポリマーゲルが過度に冷却または加熱されることを避けるため、押出機は、好ましくは必要に応じて随伴加熱され、特に好ましくは高温蒸気により随伴加熱されるか、または随伴冷却される。本方法は、連続式で運転されてもよいしバッチ式で運転されてもよい。
【0054】
返送された細粒を、押出機内でポリマーゲルに組み込むことができる。
【0055】
ポリマーゲルには、押出ステップにおいて、特に、回転する単数又は複数のスクリューシャフトの作用によって機械的エネルギーが投入される。造粒ステップb)の際のエネルギー投入量が多すぎると、ポリマーゲルの内部構造が損傷し、これによって今度は自由膨潤速度(FSR)および遠心分離保持容量(CRC)が劣悪となる。したがって、エネルギー投入量が多すぎることは避けなければならない。
【0056】
エネルギー投入量は、例えば押出機の内径に対する内部長さの比(L/D)に影響を受けうる。押出機の内径に対する内部長さの比は、好ましくは1〜6であり、特に好ましくは2〜5.5であり、極めて特に好ましくは3〜5である。
【0057】
押出の際に投入される比機械的エネルギー(SME)は、好ましくは2〜60kWh/tであり、特に好ましくは5〜50kWh/tであり、極めて特に好ましくは10〜40kWh/tである。比機械的エネルギー(SME)とは、押出機のモーター出力(kW)をポリマーゲルの流量(t/h)で除したものである。それにより、押出時のポリマーゲルの損傷が回避される。
【0058】
造粒ステップb)の間に、ポリマーゲルは、好ましくは75〜125℃の範囲内の温度を有し、特に好ましくは80〜120℃の範囲内の温度を有し、極めて特に好ましくは90〜105℃の範囲内の温度を有する。
【0059】
ポリマーゲルの固形分は、ダイプレートの通過前は35〜70質量%であり、好ましくは40〜60質量%である。上述の通り、造粒ステップb)は水の蒸発を伴うため、総じて造粒ステップb)の間にポリマーゲルの固形分は増加する。ダイプレートを通過する前のポリマーゲルの固形分に対するダイプレートを通過した後のポリマーゲルの固形分の比である(FG
post−extr/FG
pre−extr)は、例えば少なくとも1.01であるか、または少なくとも1.05であるか、または少なくとも1.08である。
【0060】
造粒ステップb)で得られた造粒体は、乾燥される。この造粒体の乾燥は、これに適した任意の装置を用いて行われることができ、好ましくはベルト乾燥機を用いて行われることができる。その際、造粒体は、水平に配置された穴あきベルト乾燥機上で1つ以上の乾燥チャンバを通過する。必要に応じて、乾燥時に流動層乾燥機またはパドル乾燥機を使用することもできる。乾燥は、残留含水率が10質量%未満になるまで行われ、例えば1〜10質量%未満になるまで、好ましくは1.5〜8質量%になるまで行われる。残留含水率は、EDANAにより推奨される試験方法であるNo.WSP 230.2−05”Mass Loss Upon Heating”に従って測定される。残留含水率が高すぎると、乾燥されたポリマーゲルが有するガラス転移温度T
gが低くなりすぎて、さらなる加工が困難になる。残留含水率が低すぎると、乾燥されたポリマーゲルが脆くなりすぎて、後続の粉砕ステップにおいて150μm未満の粒径を有するポリマー粒子(細粒)が不所望にも多量に生じてしまう。
【0061】
乾燥された造粒体は、次いで粉砕および分級される。粉砕のために、通常は一段式または多段式のロールミルを使用することができ、好ましくは二段式または三段式のロールミル、ピンミル、ハンマーミルまたは振動ミルを使用することができる。分級には少なくとも2つのふるいが含まれ、その際、ふるいの目詰まりを防ぐために、付加的なふるいをいわゆるガードスクリーンとして使用することができる。分級の際に、粒径が所定の上限よりも大きいポリマー粒子(「粗粒」)と、粒径が所定の下限よりも小さいポリマー粒子(「細粒」)とが分離除去される。典型的な上限は例えば710μmであり、典型的な下限は150μmである。
【0062】
粗粒によって、自由膨潤速度が低下する。したがって、粗粒の割合が低いことが望ましい。したがって、粗粒は通常は分離除去されて、乾燥されたポリマーゲルの粉砕へと返送される。
【0063】
細粒によって、膨潤ゲル層の透過性(SFC)が低下する。したがって、細粒の割合が低いことが望ましい。
【0064】
したがって、上述の通り、細粒は通常は分離除去されて、本処理工程へと返送される。後の処理ステップにおいて細粒を分離除去することも可能であり、例えば、表面後架橋の後かまたは他のコーティングステップの後に細粒を分離除去することも可能である。この場合、返送された細粒には表面後架橋が行われるかまたは他のコーティングが施され、例えば高熱法シリカのコーティングが施される。
【0065】
生成物画分として分離除去されたポリマー粒子の平均粒径は、好ましくは少なくとも200μmであり、特に好ましくは250〜600μmであり、極めて特に好ましくは300〜500μmである。生成物画分の平均粒径は、EDANAにより推奨される試験方法であるNo.WSP 220.2−05”Particle Size Distribution”を用いて求めることができ、その際、ふるい画分の質量割合が累積的にプロットされ、かつ平均粒径がグラフにより求められる。この場合の平均粒径とは、50質量%がふるいを通過して50質量%がふるい上に残る、という仮想的な相当メッシュサイズの値である。実際には、平均粒径はふるい分析により求めることができ、例えば以下の実施例において使用したふるい一式を用いて求めることができる。その際、平均粒子直径は、累積粒径分布のd
50値である。
【0066】
最高でも710μmの粒径を有する粒子の割合は、好ましくは少なくとも90質量%であり、特に好ましくは少なくとも95質量%であり、極めて特に好ましくは少なくとも98質量%である。
【0067】
150μmを上回る粒径を有する粒子の割合は、好ましくは少なくとも90質量%であり、特に好ましくは少なくとも95質量%であり、極めて特に好ましくは少なくとも98質量%である。
【0068】
300μm〜600μmの粒径を有する粒子の割合は、好ましくは少なくとも60質量%であり、特に好ましくは少なくとも65質量%であり、極めて特に好ましくは少なくとも70質量%である。
【0069】
特性をさらに向上させるため、ポリマー粒子には表面後架橋が行われる。適した表面後架橋剤は、ポリマー粒子の少なくとも2つのカルボキシレート基と共有結合を形成しうる基を有する化合物である。適した化合物は、例えば、欧州特許出願公開第0083022号明細書(EP 0083022 A2)、欧州特許出願公開第0543303号明細書(EP 0543303 A1)および欧州特許出願公開第0937736号明細書(EP 0937736 A2)に記載されているような多官能性アミン、多官能性アミドアミン、多官能性エポキシド、独国特許出願公開第3314019号明細書(DE 3314019 A1)、独国特許出願公開第3523617号明細書(DE 3523617A1)および欧州特許出願公開第0450922号明細書(EP 0450922 A2)に記載されているような二官能性もしくは多官能性のアルコール、または独国特許出願公開第10204938号明細書(DE 10204938 A1)および米国特許第6,239,230号明細書(US 6,239,230)に記載されているようなβ−ヒドロキシアルキルアミドである。
【0070】
さらに、独国特許第4020780号明細書(DE 4020780 C1)には環状カーボネートが、独国特許出願公開第19807502号明細書(DE 19807502 A1)には2−オキサゾリジノンおよびその誘導体、例えば2−ヒドロキシエチル−2−オキサゾリジノンが、独国特許第19807992号明細書(DE 19807992 C1)にはビス−2−オキサゾリジノンおよびポリ−2−オキサゾリジノンが、独国特許出願公開第19854573号明細書(DE 19854573 A1)には2−オキソテトラヒドロ−1,3−オキサジンおよびその誘導体が、独国特許出願公開第19854574号明細書(DE 19854574 A1)にはN−アシル−2−オキサゾリジノンが、独国特許出願公開第10204937号明細書(DE 10204937 A1)には環状尿素が、独国特許出願公開第10334584号明細書(DE 10334584 A1)には二環式アミドアセタールが、欧州特許出願公開第1199327号明細書(EP 1199327 A2)にはオキセタンおよび環状尿素が、ならびに国際公開第03/031482号(WO 03/031482 A1)にはモルホリン−2,3−ジオンおよびその誘導体が、適した表面後架橋剤として記載されている。
【0071】
好ましい表面後架橋剤は、エチレンカーボネート、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリアミドとエピクロロヒドリンとの反応生成物、およびプロピレングリコールと1,4−ブタンジオールとの混合物である。
【0072】
極めて特に好ましい表面後架橋剤は、2−ヒドロキシエチル−2−オキサゾリジノン、2−オキサゾリジノンおよび1,3−プロパンジオールである。
【0073】
さらに、独国特許出願公開第3713601号明細書(DE 3713601 A1)に記載されているような、付加的な重合性エチレン性不飽和基を有する表面後架橋剤を使用することもできる。
【0074】
表面後架橋剤の量は、ポリマー粒子を基準としてそれぞれ、好ましくは0.001〜2質量%であり、特に好ましくは0.02〜1質量%であり、極めて特に好ましくは0.05〜0.2質量%である。
【0075】
本発明の好ましい一実施形態においては、表面後架橋の前、表面後架橋の間または表面後架橋の後に、表面後架橋剤に加えて多価カチオンが粒子表面に付与される。
【0076】
本発明による方法において使用することができる多価カチオンは、例えば、2価カチオン、例えば亜鉛、マグネシウム、カルシウム、鉄およびストロンチウムのカチオン、3価カチオン、例えばアルミニウム、鉄、クロム、希土類およびマンガンのカチオン、4価カチオン、例えばチタンおよびジルコニウムのカチオンである。対イオンとして、水酸化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、硫酸イオン、硫酸水素イオン、炭酸イオン、炭酸水素イオン、硝酸イオン、リン酸イオン、リン酸水素イオン、リン酸二水素イオンおよびカルボン酸イオン、例えば酢酸イオン、クエン酸イオンおよび乳酸イオンが可能である。異なる対イオンを有する塩、例えば塩基性アルミニウム塩、例えば一酢酸アルミニウムまたは一乳酸アルミニウムも可能である。硫酸アルミニウム、一酢酸アルミニウムおよび乳酸アルミニウムが好ましい。金属塩以外に、ポリアミンも多価カチオンとして使用することができる。
【0077】
多価カチオンの使用量は、ポリマー粒子を基準としてそれぞれ、例えば0.001〜1.5質量%であり、好ましくは0.005〜1質量%であり、特に好ましくは0.01〜0.8質量%である。
【0078】
表面後架橋は、通常は、乾燥されたポリマー粒子に表面後架橋剤の溶液を付与するというようにして、例えば吹付けるというようにして、行われる。この付与に続いて、表面後架橋剤で湿潤されたポリマー粒子は熱による後処理に供される。その際、ポリマー粒子は表面後架橋され、そして乾燥されるが、その際、表面後架橋反応はこの乾燥の前にもこの乾燥中にも生じうる。
【0079】
表面後架橋剤の溶液の吹付けは、好ましくは、可動式混合器具を備えたミキサー、例えばスクリューミキサー、ディスクミキサーおよびパドルミキサー中で行われる。水平ミキサー、例えばパドルミキサーが特に好ましく、垂直ミキサーが極めて特に好ましい。水平ミキサーと垂直ミキサーとは混合シャフトの据え付けによって区別され、すなわち、水平ミキサーは水平に据え付けられた混合シャフトを有し、かつ垂直ミキサーは垂直に据え付けられた混合シャフトを有する。適したミキサーは、例えば、Pflugschar(登録商標)水平ミキサー(Gebr.Loedige Maschinenbau GmbH、パーダーボルン、ドイツ連邦共和国)、Vrieco−Nauta連続ミキサー(Hosokawa Micron BV、ドゥーティンヘム、オランダ国)、Processall Mixmillミキサー(Processall Incorporated、シンシナティ、米国)およびSchugi Flexomix(登録商標)(Hosokawa Micron BV、ドゥーティンヘム、オランダ国)である。しかし、表面後架橋剤溶液を流動層中で吹付けることも可能である。
【0080】
表面後架橋剤は、典型的には水溶液として使用される。非水溶媒の含量かまたは溶媒全体の量によって、ポリマー粒子への表面後架橋剤の浸透深さを調節することができる。
【0081】
溶媒として水のみが使用される場合には、有利には界面活性剤が添加される。それによって濡れ挙動が改善され、かつ塊状化傾向が低減される。しかし、好ましくは、溶媒混合物、例えばイソプロパノール/水、1,3−プロパンジオール/水およびプロピレングリコール/水が使用され、その際、混合質量比は、好ましくは20:80〜40:60である。
【0082】
表面後架橋は、好ましくは接触式乾燥機中で、特に好ましくはパドル乾燥機中で、極めて特に好ましくはディスク乾燥機中で行われる。適した乾燥機は、例えばHosokawa Bepex(登録商標)Horizontal Paddle Dryer(Hosokawa Micron GmbH、ラインガルテン、ドイツ連邦共和国)、Hosokawa Bepex(登録商標)Disc Dryer(Hosokawa Micron GmbH、ラインガルテン、ドイツ連邦共和国)、Holo−Flite(登録商標)乾燥機(Metso Minerals Industries Inc.、ダンビル、米国)およびNara Paddle Dryer(NARA Machinery Europe、フレッヒェン、ドイツ連邦共和国)である。その他に、流動層乾燥機を使用することもできる。
【0083】
表面後架橋は、ミキサー自体の中で、ジャケットの加熱または温風の吹き込みによって行うことができる。後接続された乾燥機、例えば箱型乾燥機、回転管炉または加熱可能なスクリューも同様に適している。特に有利には、流動層乾燥機中で混合および乾燥が行われる。
【0084】
好ましい反応温度は、100〜250℃の範囲内であり、好ましくは120〜220℃の範囲内であり、特に好ましくは130〜210℃の範囲内であり、極めて特に好ましくは150〜200℃の範囲内である。こうした温度での好ましい滞留時間は、好ましくは少なくとも10分間であり、特に好ましくは少なくとも20分間であり、極めて特に好ましくは少なくとも30分間であり、通常は最高でも60分間である。
【0085】
本発明の好ましい一実施形態においては、吸水性ポリマー粒子は表面後架橋後に冷却される。この冷却は、好ましくは接触式冷却機中で、特に好ましくはパドル冷却機中で、極めて特に好ましくはディスク冷却機中で行われる。適した冷却機は、例えばHosokawa Bepex(登録商標)Horizontal Paddle Cooler(Hosokawa Micron GmbH、ラインガルテン、ドイツ連邦共和国)、Hosokawa Bepex(登録商標)Disc Cooler(Hosokawa Micron GmbH、ラインガルテン、ドイツ連邦共和国)、Holo−Flite(登録商標)冷却機(Metso Minerals Industries Inc.、ダンビル、米国)およびNara Paddle Cooler(NARA Machinery Europe、フレッヒェン、ドイツ連邦共和国)である。その他に、流動層冷却機を使用することもできる。
【0086】
冷却機中で、吸水性ポリマー粒子は、20〜150℃に、好ましくは30〜120℃に、特に好ましくは40〜100℃に、極めて特に好ましくは50〜80℃に冷却される。
【0087】
引き続き、表面後架橋されたポリマー粒子は再度分級されることができ、その際、細粒または粗粒が分離除去されて、本方法に返送される。
【0088】
特性のさらなる向上のために、表面後架橋されたポリマー粒子に、コーティングまたは後給湿を行うことができる。
【0089】
後給湿は、好ましくは30〜80℃で、特に好ましくは35〜70℃で、極めて特に好ましくは40〜60℃で行われる。温度が低すぎると吸水性ポリマー粒子が塊状化傾向となり、温度が比較的高いと水が既に著しく蒸発してしまう。後給湿に使用される水量は、好ましくは0.2〜10質量%であり、特に好ましくは0.5〜7.0質量%であり、極めて特に好ましくは1.0〜5質量%である。後給湿により、ポリマー粒子の機械的安定性が向上し、かつ静電気の帯電傾向が低減される。有利には、後給湿は、熱乾燥後に冷却機中で行われる。
【0090】
自由膨潤速度FSRおよび膨潤ゲル層の透過性SFCの改善に適したコーティングは、例えば無機不活性物質であり、例えば非水溶性の金属塩、有機ポリマー、カチオン性ポリマー、および2価または多価の金属カチオンである。粉塵結合に適したコーティングは、例えばポリオールである。ポリマー粒子の望ましくないケーキング傾向に抗するのに適したコーティングは、例えば高熱法シリカ、例えばAerosil(登録商標)200、および界面活性剤、例えばSpan(登録商標)20である。
【0091】
本発明のもう1つの対象は、本発明による方法により得ることができ、かつ、
a)自由膨潤速度FSRが、少なくとも0.20g/g・sであること、
b)遠心分離保持容量CRCが、少なくとも26.0g/gであること、
c)49.2g/cm
2の圧力下での吸収力であるAUL
0.7psiが、少なくとも20.0g/gであること、
d)膨潤ゲル層の透過性SFCが、少なくとも85×10
−7cm
3・s/gであること、および
e)遠心分離保持容量CRCに対する膨潤ゲル層の透過性SFCの比が、最高でも3.7であること
を特徴とする吸水性ポリマー粒子である。
【0092】
遠心分離保持容量CRCに対する膨潤ゲル層の透過性SFCの比が有利な値であることは、所与のSFCで十分に高いCRCが達成されることを暗に示している。
【0093】
本発明による吸水性ポリマー粒子において、自由膨潤速度FSRは少なくとも0.20g/g・sであり、好ましくは少なくとも0.30g/g・sである。
【0094】
本発明による吸水性ポリマー粒子において、遠心分離保持容量CRCに対する膨潤ゲル層の透過性SFCの比は、最高でも3.7であり、好ましくは最高でも3.5である。
【0095】
本発明による吸水性ポリマー粒子において、49.2g/cm
2の圧力下での吸収力AUL
0.7psiは、典型的には少なくとも20.0g/gであり、好ましくは少なくとも23.0g/gである。
【0096】
本発明のもう1つの対象は、本発明による吸水性ポリマー粒子を含む衛生用品である。
【0097】
この衛生用品は、通常は、非透水性のバックシートと、透水性のトップシートと、これらの間にある本発明による吸水性ポリマー粒子および繊維、好ましくはセルロースからの吸収コアとを含む。この吸収コアにおける本発明による吸水性ポリマーの割合は、好ましくは20〜100質量%であり、殊に50〜100質量%である。
【0098】
分析方法:
以下に記載する、”WSP”を付して示した標準試験方法は、”Worldwide Strategic Partners” EDANA(Avenue Eugene Plasky,157,1030 ブリュッセル,ベルギー国,www.edana.org)およびINDA(1100 Crescent Green, Suite 115,Cary,ノースカロライナ27518,米国,www.inda.org)により共同刊行された”Standard Test Methods for the Nonwovens Industry”2005年版に記載されている。この刊行物は、EDANAとINDAのいずれからも入手可能である。
【0099】
別段の記載がない限り、測定は、23±2℃の周囲温度および50±10%の相対空中湿度で行われるべきである。吸水性ポリマー粒子を、測定前に十分に混合する。
【0100】
粒径分布(Particle Size Distribution)
粒径分布(PSD)を、EDANA(European Disposables and Nonwovens Association)により推奨される試験方法であるNo.WSP 220.2−05”Particle Size Distribution”に従って測定する。この試験方法とは異なり、以下の孔サイズを有するふるいを使用する:150μm、200μm、300μm、500μm、600μmおよび710μm。
【0101】
残留水分
残留水分(RF、ポリマーの含水率)を、EDANA(European Disposables and Nonwovens Association)により推奨される試験方法であるNo.230.2−05 ”Moisture Content”に従って測定する。
【0102】
遠心分離保持容量(Centrifuge Retention Capacity)
遠心分離保持容量(CRC)を、EDANAにより推奨される試験方法であるNo.WSP 241.2−05”Fluid Retention Capacity in Saline, After Centrifugation”に従って測定する。
【0103】
抽出可能なポリマー
抽出可能なポリマー(抽出可能物)の割合を、EDANAにより推奨される試験方法であるNo.270.2−05”Extractables”に従って測定する。
【0104】
49.2g/cm2の圧力下での吸収力(荷重下吸収力、AUL0.7psi)
49.2g/cm
2の圧力下での吸収力(AUL
0.7psi)を、EDANAにより推奨される試験方法であるNo.WSP 242.2−05 ”Absorption Under Pressure, Gravimetric Determination”と同様に測定するが、但し、21.1g/cm
2の圧力(AUL
0.3psi)に代えて49.2g/cm
2の圧力(AUL
0.7psi)となるように設定する。
【0105】
自由膨潤速度(Free Swell Rate)
自由膨潤速度(FSR)を測定するために、吸水性ポリマー粒子1.00g(=W
1)を25mlガラスビーカーに量り入れ、その底部に均一に分配する。その後、ディスペンサーを用いて0.9質量%塩化ナトリウム溶液20mlを第二のガラスビーカーに量り入れ、この第二のガラスビーカーの内容物を第一のビーカーに迅速に添加し、ストップウォッチを始動する。この塩溶液の最後の液滴が吸収されたら(これは、液面上での反射の消失により確認される)すぐに、ストップウォッチを停止する。第二のガラスビーカーから注ぎ出されて第一のガラスビーカー内のポリマーにより吸収された液体の正確な量を、第二のガラスビーカーの再秤量によって正確に測定する(=W
2)。ストップウォッチで測定したこの吸収に要した期間を、tとする。表面上での最後の液滴の消失を、時点tと定める。
【0106】
ここから、自由膨潤速度(FSR)を以下のように算出する:
【化1】
【0107】
しかし、吸水性ポリマー粒子の含水率が3質量%を上回る場合には、この含水率を考慮して質量W
1を補正すべきである。
【0108】
【化2】
【0109】
食塩水流れ誘導性(Saline Flow Conductivity)
0.3psi(2070Pa)の圧力負荷下での膨潤ゲル層の食塩水流れ誘導性(SFC)を、欧州特許出願公開第2535698号明細書(EP 2535698 A1)に記載されている通り、吸水性ポリマー粒子1.5gの初期重量を用いて、膨潤ゲル層の尿透過性測定値(UPM)として求める。流量を自動的に検知する。
【0110】
食塩水流れ誘導性(SFC)を、以下の通り算出する:
【化3】
【0111】
ここで、Fg(t=0)はNaCl溶液の流量(g/s)であり、これは流量測定のFg(t)データの線形回帰分析をもとにt=0への外挿によって得られるものであり、L
0はゲル層の厚さ(cm)であり、dはNaCl溶液の密度(g/cm
3)であり、Aはゲル層の面積(cm
2)であり、かつWPはゲル層上の静水圧(dyn/cm
2)である。
【0112】
実施例
ステップ1
ポリマーゲルの製造
水、50質量%苛性ソーダ溶液およびアクリル酸を連続的に混合することにより、42.7質量%のアクリル酸/アクリル酸ナトリウム溶液を製造した。これにより、中和度は75.0モル%であった。このモノマー溶液を、成分の混合後に熱交換器により連続的に冷却して温度を30℃とし、窒素を用いて脱気した。多価エチレン性不飽和架橋剤として、3箇所エトキシル化されたグリセリントリアクリレート(約85質量%)を使用した。使用したアクリル酸を基準とする(based on the acrylic acid used:boaa)使用量は、0.39質量%であった。ラジカル重合を開始するために、以下の成分を使用した:0.002質量%boaaの過酸化水素(2.5質量%水溶液として計量供給したもの)、0.1質量%boaaのペルオキソ二硫酸ナトリウム(15質量%水溶液として計量供給したもの)、および0.01質量%boaaのアスコルビン酸(0.5質量%水溶液として計量供給したもの)。モノマー溶液の流量は、800kg/hであった。
【0113】
個々の成分を、List ORP 250 Contikneter型の反応器(List AG、アリスドルフ、スイス国)に連続的に計量供給した。この反応器の前半に、さらに、分離除去された粒径150μm未満の細粒26.3kg/hを添加した。この細粒は、ポリマーを粉砕および乾燥した後に分級した際に得られたものである。
【0114】
この反応溶液は、入口で30℃の温度を有していた。反応器内での反応混合物の滞留時間は、約15分間であった。
【0115】
押出
このようにして得られたポリマーゲルを、ECT EXR T80型の押出機(ECT GmbH、ミュールアッカー、ドイツ連邦共和国)を用いて押出した。押出時のポリマーゲルの温度は、86℃であった。押出機のジャケットを150℃の高温油で加熱した。押出機の内径に対する内部長さの比(L/D)は、4であった。ダイとして、直径8mmの孔を有する、厚さ33mm、直径90mmのダイプレートを使用した。ダイプレートを機械的に取り付けた結果、押出に利用可能であるのは直径80mmのみである。これにより、ダイプレートの最大利用可能面積は6400mm
2となる。この面積は、押出機シャフトの出口面積に等しい。表1に示した開口率は、孔の数を変化させることによって調整したものである。押出の比機械的エネルギー(SME)は、試験において24〜52kWh/tであった。
【0116】
押出条件(実施例および比較例で使用したダイの開口率を含む)を、表1に示す。
【0117】
ポリマーゲルの乾燥、粉砕および分級
この押出したポリマーゲルを、ふるい底部(メッシュサイズ250μm、線径130μm)を備えた乾燥シート上に分配し、空気循環式乾燥棚中で175℃で70分間乾燥させた。この乾燥シートのポリマーゲル負荷は、0.81g/cm
2であった。
【0118】
この乾燥させたポリマーゲルを、一段式ロールミルを用いて粉砕した(3つの粉砕ステップ、第1の粉砕ステップ:間隙幅2000μm、第2の粉砕ステップ:間隙幅600μm、第3の粉砕ステップ:間隙幅400μm)。
【0119】
粉砕しかつ乾燥させたポリマーゲルを、分級し、そして以下の通り人為的な粒径分布(PSD)となるように混合した:
【表1】
【0120】
ふるいの細粒(粒径150μm未満のふるい画分)の一部を、重合の際に反応器に一緒に供給するために使用した。
【0121】
このようにして得られたベースポリマーを、その遠心分離保持容量(CRC)と抽出可能なポリマーの量とに関して、16時間後に試験した。算出の際に常に乾燥ポリマー材料を使用することにより、CRCおよび抽出可能物を残留水分に関して補正した:
【化4】
【0122】
乾燥させたポリマーゲルの特性を、第1表にまとめる。Δpは、ダイプレート前の押出機中での圧力と周囲圧力との圧力差である。
【0123】
ポリマーゲルの表面後架橋
人為的なPSDを有する乾燥させたポリマー各1200gに、表面後架橋のために、M5型の加熱ジャケットを備えたPflugschar(登録商標)ミキサー(Gebr.Loedige Maschinenbau GmbH、パーダーボルン、ドイツ連邦共和国)中で、23℃で、シャフト回転数200rpmで二流体吹付けノズルを使用して、以下の溶液をコーティングした(それぞれベースポリマーを基準とする):
0.994質量% イソプロパノール
0.14質量% 1,3−プロパンジオール50質量%とN−(2−ヒドロキシエチル)−2−オキサゾリジノン50質量%とからの溶液
0.70質量% 1,2−プロパンジオール
2.273質量% 22質量%乳酸アルミニウム水溶液
0.004質量% ソルビタンモノラウレート(Span 20(登録商標)、Croda International PLC)
0.431質量% 水
吹付け後、生成物をミキサーから取り出し、238℃の高温の加熱液体で予備加熱しておいた同一の型の第二のミキサーに移した。シャフト回転数を50rpmに設定し、生成物を185℃の生成物温度にした。この温度を維持するために、加熱液体の温度を適宜下げた。この反応混合物から、ポリマー充填の25分後から開始して5分おきに、それぞれ約20gの試料を採取した。合計で10個の試料を採取した。これらの生成物試料をメッシュサイズ710μmのふるいでふるい分けし、凝集物を取り除いた。すべての試料のSFC値を測定した。比較のために、SFC値が100(cm
3・s)/10
7gに最も近い試料を選択した。その特性を第2表に示す。
【0124】
【表2】
【0125】
第1表は、圧力差が4〜14バール未満である場合には、抽出可能なポリマーExtr.に対する遠心分離保持容量CRCの比が有利な値であるポリマーゲルが生じることを示す。圧力差がこれよりも大きいと、この比が劣悪になる。
【0126】
第2表は、自由膨潤速度FSRが十分に高い場合には、比較例よりも低いSFC/CRCの比を達成できることを示す。唯一、実施例2における自由膨潤速度FSRは、比較例および実施例1よりも著しく劣悪である。