(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
<リチウム二次電池正極活物質用前駆体>
本実施形態はリチウム二次電池正極活物質用前駆体である。以下、リチウム二次電池正極活物質用前駆体を、「前駆体」と略して記載する場合がある。本実施形態の前駆体は、特定の粒度分布を有すため、不純物であるケイ素の含有量が低い。このような前駆体をリチウム化合物と混合して焼成することにより、リチウム二次電池用正極活物質として有用なリチウム複合金属化合物を製造することができる。
【0012】
・式(1)
本実施形態の前駆体は、下記式(1)を満たす。
0.20≦Dmin/Dmax ・・・(1)
(式(1)中、Dminはレーザー回折式粒度分布測定装置によって測定し、得られた累積粒度分布曲線における最小粒径(μm)であり、Dmaxはレーザー回折式粒度分布測定装置によって測定し、得られた累積粒度分布曲線における最大粒径(μm)である。)
【0013】
前駆体の累積体積粒度分布は、レーザー回折散乱法によって測定される。分散媒として10質量%ヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液250μLを、マイクロトラック・ベル株式会社製マイクロトラックMT3300EXIIに投入して、粒度分布を測定し、体積基準の累積粒度分布曲線を得る。測定の際の透過率は85±5%となるように前駆体粉末を投入する。
【0014】
そして、得られた累積粒度分布曲線において、小粒子側からの累積体積が10%となる点の粒子径の値がD10(μm)、50%となる点の粒子径の値がD50(μm)、90%となる点の粒子径の値がD90(μm)である。さらに、最小の粒子径の値がDmin(μm)、最大の粒子径の値がDmax(μm)である。
【0015】
本実施形態において、式(1)の下限値は、0.20が好ましく、0.21がより好ましく、0.22が特に好ましい。式(1)の上限値は、0.30が好ましく、0.29がより好ましく、0.28が特に好ましい。
上記上限値及び下限値は任意に組み合わせることができる。組み合わせの例を下記(1)−1〜(1)−3に示す。
0.20≦Dmin/Dmax≦0.30 ・・・(1)−1
0.21≦Dmin/Dmax≦0.29 ・・・(1)−2
0.22≦Dmin/Dmax≦0.28 ・・・(1)−3
【0016】
式(1)を満たす本実施形態の前駆体は、特定の粒度分布を有すため不純物であるケイ素の含有量が低いことを特徴とする。このような前駆体と、リチウム化合物とを混合して焼成すると、製造されるリチウム複合金属化合物は、不純物であるケイ素の含有量が低減され、焼成反応が均一に進みやすい。不純物であるケイ素の含有量や焼きムラが低減されたリチウム複合金属化合物を正極活物質として用いると、充放電負荷が粒子によってばらつきにくく、サイクル特性等の電池特性が良好となる。
【0017】
・式(2)及び式(3)
本実施形態の前駆体は、下記式(2)及び(3)を満たすことが好ましい。
(D50−D10)/D50≦0.35 ・・・(2)
(D90−D50)/D50≦0.50 ・・・(3)
(式(2)及び(3)中、D10は前駆体をレーザー回折式粒度分布測定装置によって測定し、得られた累積粒度分布曲線において全体を100%としたときに、小粒子側からの累積体積が10%となる点の粒子径の値(μm)であり、D50は50%となる点の粒子径の値が(μm)であり、D90は90%となる点の粒子径の値(μm)である。)
【0018】
・・式(2)
本実施形態において、式(2)の下限値は、0.15が好ましく、0.16がより好ましく、0.17が特に好ましく、0.18が殊更好ましい。式(2)の上限値は0.34が好ましく、0.33がより好ましく、0.32が特に好ましい。
上記上限値及び下限値は任意に組み合わせることができる。組み合わせの例を下記(2)−1〜(2)−4に示す。
0.15≦(D50−D10)/D50≦0.35 ・・・(2)−1
0.16≦(D50−D10)/D50≦0.34 ・・・(2)−2
0.17≦(D50−D10)/D50≦0.33 ・・・(2)−3
0.18≦(D50−D10)/D50≦0.32 ・・・(2)−4
【0019】
・・式(3)
本実施形態においては、式(3)の下限値は、0.27が好ましく、0.28がより好ましく、0.29が特に好ましく、0.30が殊更好ましい。式(3)の上限値は、0.48が好ましく、0.46がより好ましく、0.44が特に好ましい。
上記上限値及び下限値は任意に組み合わせることができる。組み合わせの例を下記(3)―1〜(3)−4に示す。
0.27<(D90−D50)/D50≦0.50 ・・・(3)−1
0.28<(D90−D50)/D50≦0.48 ・・・(3)−2
0.29<(D90−D50)/D50≦0.46 ・・・(3)−3
0.30<(D90−D50)/D50≦0.44 ・・・(3)−4
【0020】
式(2)及び(3)を満たす本実施形態の前駆体は、不純物であるケイ素の含有量が低い。本実施形態の前駆体を使用して製造される正極活物質を用いた二次電池は、サイクル特性を十分に向上させることができる。
【0021】
・式(4)
本実施形態の前駆体は、さらに式(4)を満たすことが好ましい。
10μm≦D50≦30μm ・・・(4)
【0022】
本実施形態においては、式(4)の下限値は11μmが好ましく、12μmがより好ましく、13μmが特に好ましい。上限値は、27μm以下が好ましく、25μm以下がより好ましく、23μm以下は特に好ましい。
上記上限値及び下限値は任意に組み合わせることができる。組み合わせの例を下記(4)−1〜(4)−3に示す。
11μm≦D50≦27μm ・・・(4)−1
12μm≦D50≦25μm ・・・(4)−2
13μm≦D50≦23μm ・・・(4)−3
【0023】
式(4)を満たす本実施形態の前駆体を使用して製造される正極活物質は、リチウム原料との反応性が効率的に進み、優れた正極活物質を得ることが出来る。
【0024】
・式(5)
本実施形態の前駆体は、さらに式(5)を満たすことが好ましい。
0.65≦α/β≦1.45 ・・・(5)
(式(5)中、αは、CuKα線を使用したX線回折によって得られる2θ=52.4±1°における回折ピークの半値幅であり、βは、CuKα線を使用したX線回折によって得られる73.9±1°の回折ピークの半値幅である。)
【0025】
・組成式(A)
本実施形態の前駆体は、下記組成式(A)で表されることが好ましい。
Ni
1−x−yCo
xM
yO
z(OH)
2−α ・・・(A)
(組成式(A)中、0≦x≦0.45、0≦y≦0.45、0≦x+y≦0.9、0≦z≦3、−0.5≦α≦2であり、MはZr、Al、Ti、Mn、Ga、InおよびWから選ばれる1種以上の金属元素である。)
【0026】
・・x
xの下限値としては、0.01が好ましく、0.02がより好ましい値として挙げられる。xの上限値としては、0.44が好ましく、0.42がより好ましい値として挙げられる。上記上限値及び下限値は任意に組み合わせることができる。
組み合わせの例としては、0.01≦x≦0.44が好ましく、0.02≦x≦0.42がより好ましく、0.03≦x≦0.40が特に好ましい。
【0027】
・・y
yの下限値としては、0.01が好ましく、0.02がより好ましく、0.03が特に好ましい値として挙げられる。yの上限値としては、0.44が好ましく、0.42がより好ましく、0.40が特に好ましい値として挙げられる。上記上限値及び下限値は任意に組み合わせることができる。
組み合わせの例としては、yは0.01≦y≦0.42が好ましく、0.02≦y≦0.44がより好ましく、0.03≦y≦0.40が特に好ましい。
【0028】
・・z
zの下限値としては、0.1が好ましく、0.2がより好ましく、0.3が特に好ましい値として挙げられる。zの上限値としては、2.9が好ましく、2.8がより好ましく、2.7が特に好ましい値として挙げられる。上記上限値及び下限値は任意に組み合わせることができる。
組み合わせの例としては、0.1≦z≦2.9が好ましく、0.2≦z≦2.8がより好ましく、0.3≦z≦2.7が特に好ましい。
【0029】
・・α
αの下限値としては、−0.45が好ましく、−0.4がより好ましく、−0.35が特に好ましい値として挙げられる。αの上限値としては、1.8が好ましく、1.6がより好ましく、1.4が特に好ましい値として挙げられる。上記上限値及び下限値は任意に組みわせることができる。
組み合わせの例としては、αは−0.45≦α≦1.8が好ましく、−0.4≦α≦1.6がより好ましく、−0.35≦α≦1.4が特に好ましい。
【0030】
・・M
式(A)中、MはZr、Al、Ti、Mn、Ga、InおよびWから選ばれる1種以上の金属元素であり、Ga、InはAlの同族元素であるであるため同様な効果が得られる。そのなかでもZr、Al、Mnが好ましい。
【0031】
・BET比表面積
本実施形態の前駆体は、BET比表面積が2m
2/g以上が好ましく、4m
2/g以上がより好ましく、6m
2/gが以上特に好ましい。また、80m
2/g以下が好ましく、65m
2/gがより好ましく、50m
2/gが特に好ましい。
上記上限値及び下限値は任意に組み合わせることができる。組み合わせの具体例としては、2m
2/g以上80m
2/g以下、4m
2/g以上65m
2/g以下、6m
2/g以上50m
2/g以下が挙げられる。この組み合わせのなかでも2m
2/g以上80m
2/g以下が好ましい。
【0032】
BET比表面積が上記の範囲である本実施形態の前駆体を使用して製造される正極活物質は、二次電池の出力特性を高めやすい。
【0033】
「BET比表面積」は、BET(Brunauer,Emmet,Teller)法により測定される値である。比表面積の測定では、吸着ガスとして窒素とヘリウムの混合ガスを使用する。
【0034】
<リチウム二次電池正極活物質用前駆体の製造方法(1)>
本実施形態のリチウム二次電池用正極活物質前駆体の製造方法(1)は、少なくともニッケルを含む金属含有水溶液とアルカリ性水溶液とを、反応槽に供給して水酸化物含有スラリーを得るスラリー調製工程と、前記水酸化物含有スラリーをスクリーンを用いて分級する分級工程と、を備える。以降において、「リチウム二次電池正極活物質用前駆体の製造方法(1)」は「前駆体の製造方法(1)」と記載する。
【0035】
前駆体の製造方法(1)は、スラリー調製工程、分級工程、任意の還流工程をこの順で備えることが好ましい。以下、各工程について説明する。
【0036】
[スラリー調製工程]
スラリー調製工程は、少なくともニッケルを含む金属含有水溶液とアルカリ性水溶液とを、反応槽に供給して水酸化物含有スラリーを得る工程である。
本工程は、金属含有水溶液と、アルカリ性水溶液とを、攪拌しながらそれぞれ連続的に反応槽に供給して反応させ、水酸化物含有スラリーを得る。このとき、アンモニウムイオン供給体を含む水溶液を供給してもよい。水酸化物含有スラリーとして、ニッケル、コバルト、マンガン及びアルミニウムを含む水酸化物スラリーを例に、本工程について説明する。
【0037】
まず、特開2002−201028号公報に記載された連続式共沈殿法により、ニッケル塩溶液、コバルト塩溶液、マンガン塩溶液、アルミニウム塩溶液及び錯化剤を反応させ、Ni
sCo
tMn
uAl
v(OH)
2(式中、s+t+u+v=1)で表される金属複合水酸化物を含む金属含有水溶液を製造する。
【0038】
上記ニッケル塩溶液の溶質であるニッケル塩としては、特に限定されないが、例えば硫酸ニッケル、硝酸ニッケル、塩化ニッケル及び酢酸ニッケルのうちの何れかを使用することができる。
上記コバルト塩溶液の溶質であるコバルト塩としては、例えば硫酸コバルト、硝酸コバルト、塩化コバルト及び酢酸コバルトのうちの何れかを使用することができる。
上記マンガン塩溶液の溶質であるマンガン塩としては、例えば硫酸マンガン、硝酸マンガン、塩化マンガン及び酢酸マンガンのうちの何れかを使用することができる。
上記アルミニウム塩溶液の溶質であるアルミニウム塩としては、例えば硫酸アルミニウムやアルミン酸ソーダ等が使用できる。
以上の金属塩は、上記Ni
sCo
tMn
uAl
v(OH)
2の組成比に対応する割合で用いられる。また、溶媒として水が使用される。
【0039】
錯化剤としては、水溶液中で、ニッケル、コバルト及びマンガンのイオンと錯体を形成可能なものであり、例えばアンモニウムイオン供給体(硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、炭酸アンモニウム、弗化アンモニウム等)、ヒドラジン、エチレンジアミン四酢酸、ニトリロ三酢酸、ウラシル二酢酸及びグリシンが挙げられる。
【0040】
スラリー調製工程において供給するアルカリ性水溶液は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが使用できる。アルカリ性水溶液を供給することにより、水溶液のpH値を調整できる。
【0041】
反応槽内は不活性雰囲気であってもよい。不活性雰囲気であると、ニッケルよりも酸化されやすい元素が凝集してしまうことを抑制し、均一な金属複合水酸化物を得ることができる。
【0042】
また、反応槽内は、不活性雰囲気を保ちつつも、適度な酸素含有雰囲気または酸化剤存在下であってもよい。これは遷移金属を適度に酸化させることで、前駆体の比表面積や半値幅を制御しやすくなるためである。
遷移金属の酸化量を増やすと、比表面積は大きくなる。酸素含有ガス中の酸素や酸化剤は、遷移金属を酸化させるために十分な酸素原子があればよい。多量の酸素原子を導入しなければ、反応槽内の不活性雰囲気を保つことができる。なお、反応槽内の雰囲気制御をガス種で行う場合、所定のガス種を反応槽内に通気するか、反応液を直接バブリングすればよい。
【0043】
また、反応槽内の均一性を高めつつ、遷移金属元素の酸化による前駆体の結晶成長を促進するため、反応槽中に設置した撹拌翼により溶液を撹拌することが好ましい。撹拌速度を調整することにより、前駆体の比表面積や粒子形状などを制御出来る。一例をあげると、攪拌速度反応槽のサイズにも依存するが300rpm以上2000rpm以下とすることが好ましい。
【0044】
[分級工程]
本工程は、スラリー調製工程で生成した水酸化物含有スラリーを、スクリーンを用いて分級する工程である。水酸化物含有スラリーは、連続的に反応槽から抜き出され、スクリーンを備える分級装置により分級される。分級装置により、スクリーンを通過しなかったものを目的の粒子として回収し、スクリーンを通過した粒子を含むスラリーは反応槽に還流される。この時、分級装置は水平方向に対して傾斜角を有しても良く、目的の粒径に到達していない粒子が目的とする粒子に混入することを防ぐために傾斜角を調整することが好ましい。また、スクリーンを通過した粒子を含むスラリーは適宜濃度を調整して反応槽に還流しても良い。
【0045】
反応槽内に戻された目的の粒径に到達していない粒子は、再び反応槽内で成長した後、反応槽内から分級装置に導かれ、目的とする粒径に達していれば反応槽外に排出される。これを繰り返すことにより、目的の粒径に到達していない粒子は反応槽内で再び生成し、スクリーンを通過しなかった目的の粒子を選択的に反応槽外に排出する。これとともに、目的の粒径に到達していない粒子は、目的とする粒径に達するまで粒子成長を繰り返すことができる。このため、最終的に得られる前駆体の粒径が均一になりやすく、その粒度分布を所望の範囲へ調整することができる。
【0046】
本工程においては、スクリーンを備える分級装置を使用する。このような分級装置としては、固定されたスクリーンと、その内側で回転可能なスクリューとを備えたスラリースクリーナーが好ましい。
【0047】
スクリーンの材質は、高分子材料が好ましい。高分子材料としては、セルロースアセテートポリマー、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアクリロニトリル、ポリエーテル、フッ素系ポリマー、ポリアミド、ポリイミド、ポリエチレン、ポリプロピレン等が挙げられる。
【0048】
分級工程において、分級装置は固定されたスクリーンの内側に回転可能なスクリューを備えたスラリースクリーナーを使用する場合、スクリューを周速度1.0m/sec以上10.0m/sec以下で回転させることが好ましい。
【0049】
使用するスクリーンの目開きを調整することにより、製造される前駆体のDminを制御できる。
【0050】
[還流工程]
還流工程は、分級工程において、分級装置によって分級された目的の粒径に到達しなかった粒子を含むスラリーを反応槽内に戻す(還流する)工程である。還流方法は、特に限定されることなく公知の手段を用いることができる。たとえば、分級後の目的の粒径に到達しなかった粒子を含むスラリーをそのまま反応槽に戻す場合にはポンプにより直接乃至は濃縮して反応槽へ戻せばよい。
【0051】
なお、還流速度、すなわち、目的の粒径に到達しなかった粒子を含むスラリーを反応槽に戻す速度は、原料水溶液やアンモニウムイオン供給体を含む水溶液などの供給速度に応じて調整すればよい。
【0052】
<リチウム二次電池正極活物質用前駆体の製造方法(2)>
本実施形態のリチウム二次電池用正極活物質前駆体の製造方法(2)は、少なくともニッケルを含む金属含有水溶液とアルカリ性水溶液とを、反応槽に供給して水酸化物含有スラリーを得るスラリー調製工程と、前記水酸化物含有スラリーを、液体サイクロン式分級装置で分級する分級工程を備る。分級工程は、分級装置入口圧力0.01MPa以上、0.07MPa以下の条件で実施する。以降において、「リチウム二次電池正極活物質用前駆体の製造方法(2)」は「前駆体の製造方法(2)」と記載する。
【0053】
前駆体の製造方法(2)は、スラリー調製工程、分級工程、任意の還流工程をこの順で備えることが好ましい。以下、スラリー調製工程及び還流工程に関する説明は、前記前駆体の製造方法(1)における説明と同様である。前駆体の製造方法(2)における分級工程について説明する。
【0054】
[分級工程]
本工程においては、液体サイクロン式分級装置を用いる。液体サクロン式分級装置によれば、サイクロン部の形状、サイズおよび処理スラリーの導入圧力により、分級点を容易に制御することができる。水酸化物含有スラリーは、連続的に反応槽から抜き出されてスラリー貯槽に貯められ、液体サイクロン式分級装置によって大粒径部と小粒径部に分級される。分級装置により、大粒径部は目的の粒子として回収し、小粒径部は目的の粒径に到達しなかった粒子として連続的に反応槽に還流する。この時、スラリー貯槽にあるスラリーは適宜脱水しながら連続的に反応槽に還流しても良い。
液体サイクロン式分級装置の運転条件としては、分級装置入口圧力0.01MPa以上、0.07MPa以下となるように調整する。
【0055】
前駆体の製造方法(1)又は(2)が還流工程を備える場合、目的の粒径に到達しなかった粒子を核として、成長粒子を製造できる。このため、原料金属を無駄にすることなく、前駆体を製造でききる。
【0056】
前駆体の製造方法(1)又は(2)により製造される前駆体は、ケイ素等の不純物が少ないことを特徴とする。その理由としては、前記製造方法によって製造される前駆体は特定の粒度分布を有すため、脱水工程において水に含まれるケイ素等の不純物が吸着しにくくなっていることにあると考えられる。
【0057】
[脱水工程]
以上の反応後、得られた前駆体水酸化物含有スラリーを洗浄した後、乾燥し、ニッケルコバルトマンガンアルミニウム複合化合物としての前駆体水酸化物を単離する。
【0058】
前記単離には、前駆体水酸化物を含むスラリー(共沈物スラリー)を遠心分離や吸引ろ過などで脱水する方法が好ましい。
【0059】
前記脱水により得た前駆体水酸化物は、水またはアルカリが含まれる洗浄液で洗浄することが好ましい。本実施形態においては、アルカリが含まれる洗浄液で洗浄することが好ましく、水酸化ナトリウム溶液で洗浄することがより好ましい。また、硫黄元素を含有する洗浄液を用いて洗浄してもよい。
【0060】
[乾燥工程]
上記工程によって得られた前駆体水酸化物は、大気雰囲気下105℃以上200℃以下で10時間以上20時間以下乾燥させる。
【0061】
なお、上記の例では、ニッケルコバルトマンガンアルミニウム複合水酸化物を製造しているが、ニッケルコバルトマンガンアルミニウム複合酸化物を調製してもよい。
【0062】
[加熱工程]
前駆体の製造方法(1)又は前駆体の製造方法(2)は、得られた前駆体を、酸素含有雰囲気下、300℃以上900℃以下の温度範囲で加熱することが好ましい。
加熱工程を経ることにより、前駆体をリチウム化合物と混合した場合、製造されるリチウム複合金属化合物中のリチウムと、金属元素との組成比を安定させることができる。
【0063】
加熱温度は350℃以上800℃以下が好ましく、400℃以上700℃以下がより好ましい。加熱温度が上記下限値以上であると、前駆体中への水酸化物の残存を抑制できる。加熱温度が上記上限値以下であると、粒子間の焼結を抑制し、粒度分布を均一に保つことができる。
【0064】
<リチウム複合金属化合物の製造方法>
本実施形態は、前記前駆体の製造方法(1)又は前駆体の製造方法(2)によって得られた前駆体と、リチウム含有化合物と混合する混合工程と、得られた混合物を酸素含有雰囲気下、500℃以上1000℃以下の温度で焼成する焼成工程を有する、リチウム複合金属化合物の製造方法である。
【0065】
[混合工程]
本工程は、前駆体と、リチウム化合物とを混合し、混合物を得る工程である。
【0066】
・リチウム化合物
本実施形態に用いるリチウム化合物は、炭酸リチウム、硝酸リチウム、酢酸リチウム、水酸化リチウム、酸化リチウム、塩化リチウム、フッ化リチウムのうち何れか一つ、又は、二つ以上を混合して使用することができる。これらの中では、水酸化リチウム及び炭酸リチウムのいずれか一方又は両方が好ましい。
【0067】
本実施形態の前駆体と、リチウム化合物との混合方法について説明する。
前駆体と、リチウム化合物とを、最終目的物の組成比を勘案して混合する。例えば、前駆体として、ニッケルコバルトマンガンアルミニウム複合水酸化物を用いる場合、リチウム化合物と前駆体は、Li[Li
r(Ni
sCo
tMn
uAl
v)
1−r]O
2(式中、s+t+u+v=1)の組成比に対応する割合で混合する。前駆体及びリチウム化合物の混合物を後の焼成工程において焼成することによって、リチウム−ニッケルコバルトマンガンアルミニウム複合酸化物が得られる。
【0068】
[焼成工程]
上記リチウム化合物と、前駆体との混合物の焼成温度としては、特に制限はないが、充電容量を高める観点から、600℃以上であることが好ましく、650℃以上であることがより好ましい。また、焼成温度としては、特に制限はないが、Liの揮発を防止でき、目標とする組成のリチウムニッケル複合酸化物を得る意味で、1000℃以下であることが好ましく、950℃以下であることがより好ましい。
焼成温度の上記上限値と下限値は任意に組み合わせることができる。
【0069】
焼成温度を650℃以上950℃以下の範囲とすることによって、特に高い充放電効率を示し、サイクル特性に優れたリチウムニッケル複合酸化物を作製できる。焼成時間は、昇温開始から達温して温度保持が終了するまでの合計時間を1時間以上30時間以下とすることが好ましい。合計時間が30時間以下であると、Liの揮発を防止でき、電池性能の劣化を防止できる。
合計時間が1時間以上であると、結晶の発達が良好に進行し、電池性能を向上させることができる。
【0070】
また、焼成には、所望の組成に応じて大気、乾燥空気、酸素雰囲気、不活性雰囲気等が用いられ、必要ならば複数の焼成工程が実施される。
本発明において、「昇温開始」とは、仮焼成をする場合には仮焼成の昇温開始時点を、複数の焼成工程を含む場合には、最初の焼成工程の昇温開始時点を意味する。
【0071】
焼成によって得たリチウム複合金属化合物は、粉砕後に適宜篩別され、リチウム二次電池に適用可能なリチウム二次電池用正極活物質とされる。
【0072】
<リチウム二次電池>
次いで、リチウム二次電池の構成を説明しながら、本実施形態により製造されるリチウム複合金属化合物を用いたリチウム二次電池用正極活物質を、リチウム二次電池の正極活物質として用いた正極、およびこの正極を有するリチウム二次電池について説明する。
【0073】
本実施形態のリチウム二次電池の一例は、正極および負極、正極と負極との間に挟持されるセパレータ、正極と負極との間に配置される電解液を有する。
【0074】
図1は、本実施形態のリチウム二次電池の一例を示す模式図である。本実施形態の円筒型のリチウム二次電池10は、次のようにして製造する。
【0075】
まず、
図1Aに示すように、帯状を呈する一対のセパレータ1、一端に正極リード21を有する帯状の正極2、および一端に負極リード31を有する帯状の負極3を、セパレータ1、正極2、セパレータ1、負極3の順に積層し、巻回することにより電極群4とする。
【0076】
次いで、
図1Bに示すように、電池缶5に電極群4および不図示のインシュレーターを収容した後、缶底を封止し、電極群4に電解液6を含浸させ、正極2と負極3との間に電解質を配置する。さらに、電池缶5の上部をトップインシュレーター7および封口体8で封止することで、リチウム二次電池10を製造することができる。
【0077】
電極群4の形状としては、例えば、電極群4を巻回の軸に対して垂直方向に切断したときの断面形状が、円、楕円、長方形、角を丸めた長方形となるような柱状の形状を挙げることができる。
【0078】
また、このような電極群4を有するリチウム二次電池の形状としては、国際電気標準会議(IEC)が定めた電池に対する規格であるIEC60086、又はJIS C 8500で定められる形状を採用することができる。例えば、円筒型、角型などの形状を挙げることができる。
【0079】
さらに、リチウム二次電池は、上記巻回型の構成に限らず、正極、セパレータ、負極、セパレータの積層構造を繰り返し重ねた積層型の構成であってもよい。積層型のリチウム二次電池としては、いわゆるコイン型電池、ボタン型電池、ペーパー型(又はシート型)電池を例示することができる。
【0080】
以下、各構成について順に説明する。
(正極)
本実施形態の正極は、まず正極活物質、導電材およびバインダーを含む正極合剤を調整し、正極合剤を正極集電体に担持させることで製造することができる。
【0081】
(導電材)
本実施形態の正極が有する導電材としては、炭素材料を用いることができる。炭素材料として黒鉛粉末、カーボンブラック(例えばアセチレンブラック)、繊維状炭素材料などを挙げることができる。カーボンブラックは、微粒で表面積が大きいため、少量を正極合剤中に添加することにより正極内部の導電性を高め、充放電効率および出力特性を向上させることができるが、多く入れすぎるとバインダーによる正極合剤と正極集電体との結着力、および正極合剤内部の結着力がいずれも低下し、かえって内部抵抗を増加させる原因となる。
【0082】
正極合剤中の導電材の割合は、正極活物質100質量部に対して5質量部以上20質量部以下であると好ましい。導電材として黒鉛化炭素繊維、カーボンナノチューブなどの繊維状炭素材料を用いる場合には、この割合を下げることも可能である。
【0083】
(バインダー)
本実施形態の正極が有するバインダーとしては、熱可塑性樹脂を用いることができる。この熱可塑性樹脂としては、ポリフッ化ビニリデン(以下、PVdFということがある。)、ポリテトラフルオロエチレン(以下、PTFEということがある。)、四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン・フッ化ビニリデン系共重合体、六フッ化プロピレン・フッ化ビニリデン系共重合体、四フッ化エチレン・パーフルオロビニルエーテル系共重合体などのフッ素樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂;を挙げることができる。
【0084】
これらの熱可塑性樹脂は、2種以上を混合して用いてもよい。バインダーとしてフッ素樹脂およびポリオレフィン樹脂を用い、正極合剤全体に対するフッ素樹脂の割合を1質量%以上10質量%以下、ポリオレフィン樹脂の割合を0.1質量%以上2質量%以下とすることによって、正極集電体との密着力および正極合剤内部の結合力がいずれも高い正極合剤を得ることができる。
【0085】
(正極集電体)
本実施形態の正極が有する正極集電体としては、Al、Ni、ステンレスなどの金属材料を形成材料とする帯状の部材を用いることができる。なかでも、加工しやすく、安価であるという点でAlを形成材料とし、薄膜状に加工したものが好ましい。
【0086】
正極集電体に正極合剤を担持させる方法としては、正極合剤を正極集電体上で加圧成型する方法が挙げられる。また、有機溶媒を用いて正極合剤をペースト化し、得られる正極合剤のペーストを正極集電体の少なくとも一面側に塗布して乾燥させ、プレスし固着することで、正極集電体に正極合剤を担持させてもよい。
【0087】
正極合剤をペースト化する場合、用いることができる有機溶媒としては、N,N―ジメチルアミノプロピルアミン、ジエチレントリアミンなどのアミン系溶媒;テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒;メチルエチルケトンなどのケトン系溶媒;酢酸メチルなどのエステル系溶媒;ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン(以下、NMPということがある。)などのアミド系溶媒;が挙げられる。
【0088】
正極合剤のペーストを正極集電体へ塗布する方法としては、例えば、スリットダイ塗工法、スクリーン塗工法、カーテン塗工法、ナイフ塗工法、グラビア塗工法および静電スプレー法が挙げられる。
【0089】
以上に挙げられた方法により、正極を製造することができる。
(負極)
本実施形態のリチウム二次電池が有する負極は、正極よりも低い電位でリチウムイオンのドープかつ脱ドープが可能であればよく、負極活物質を含む負極合剤が負極集電体に担持されてなる電極、および負極活物質単独からなる電極を挙げることができる。
【0090】
(負極活物質)
負極が有する負極活物質としては、炭素材料、カルコゲン化合物(酸化物、硫化物など)、窒化物、金属又は合金で、正極よりも低い電位でリチウムイオンのドープかつ脱ドープが可能な材料が挙げられる。
【0091】
負極活物質として使用可能な炭素材料としては、天然黒鉛、人造黒鉛などの黒鉛、コークス類、カーボンブラック、熱分解炭素類、炭素繊維および有機高分子化合物焼成体を挙げることができる。
【0092】
負極活物質として使用可能な酸化物としては、SiO
2、SiOなど式SiO
x(ここで、xは正の実数)で表されるケイ素の酸化物;TiO
2、TiOなど式TiO
x(ここで、xは正の実数)で表されるチタンの酸化物;V
2O
5、VO
2など式VO
x(ここで、xは正の実数)で表されるバナジウムの酸化物;Fe
3O
4、Fe
2O
3、FeOなど式FeO
x(ここで、xは正の実数)で表される鉄の酸化物;SnO
2、SnOなど式SnO
x(ここで、xは正の実数)で表されるスズの酸化物;WO
3、WO
2など一般式WO
x(ここで、xは正の実数)で表されるタングステンの酸化物;Li
4Ti
5O
12、LiVO
2などのリチウムとチタン又はバナジウムとを含有する複合金属酸化物;を挙げることができる。
【0093】
負極活物質として使用可能な硫化物としては、Ti
2S
3、TiS
2、TiSなど式TiS
x(ここで、xは正の実数)で表されるチタンの硫化物;V
3S
4、VS
2、VSなど式VS
x(ここで、xは正の実数)で表されるバナジウムの硫化物;Fe
3S
4、FeS
2、FeSなど式FeS
x(ここで、xは正の実数)で表される鉄の硫化物;Mo
2S
3、MoS
2など式MoS
x(ここで、xは正の実数)で表されるモリブデンの硫化物;SnS
2、SnSなど式SnS
x(ここで、xは正の実数)で表されるスズの硫化物;WS
2など式WS
x(ここで、xは正の実数)で表されるタングステンの硫化物;Sb
2S
3など式SbS
x(ここで、xは正の実数)で表されるアンチモンの硫化物;Se
5S
3、SeS
2、SeSなど式SeS
x(ここで、xは正の実数)で表されるセレンの硫化物;を挙げることができる。
【0094】
負極活物質として使用可能な窒化物としては、Li
3N、Li
3−xA
xN(ここで、AはNiおよびCoのいずれか一方又は両方であり、0<x<3である。)などのリチウム含有窒化物を挙げることができる。
【0095】
これらの炭素材料、酸化物、硫化物、窒化物は、1種のみ用いてもよく2種以上を併用して用いてもよい。また、これらの炭素材料、酸化物、硫化物、窒化物は、結晶質又は非晶質のいずれでもよい。
【0096】
また、負極活物質として使用可能な金属としては、リチウム金属、シリコン金属およびスズ金属などを挙げることができる。
【0097】
負極活物質として使用可能な合金としては、Li−Al、Li−Ni、Li−Si、Li−Sn、Li−Sn−Niなどのリチウム合金;Si−Znなどのシリコン合金;Sn−Mn、Sn−Co、Sn−Ni、Sn−Cu、Sn−Laなどのスズ合金;Cu
2Sb、La
3Ni
2Sn
7などの合金;を挙げることもできる。
【0098】
これらの金属や合金は、例えば箔状に加工された後、主に単独で電極として用いられる。
【0099】
上記負極活物質の中では、充電時に未充電状態から満充電状態にかけて負極の電位がほとんど変化しない(電位平坦性がよい)、平均放電電位が低い、繰り返し充放電させたときの容量維持率が高い(サイクル特性がよい)などの理由から、天然黒鉛、人造黒鉛などの黒鉛を主成分とする炭素材料が好ましく用いられる。炭素材料の形状としては、例えば天然黒鉛のような薄片状、メソカーボンマイクロビーズのような球状、黒鉛化炭素繊維のような繊維状、又は微粉末の凝集体などのいずれでもよい。
【0100】
前記の負極合剤は、必要に応じて、バインダーを含有してもよい。バインダーとしては、熱可塑性樹脂を挙げることができ、具体的には、PVdF、熱可塑性ポリイミド、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレンおよびポリプロピレンを挙げることができる。
【0101】
(負極集電体)
負極が有する負極集電体としては、Cu、Ni、ステンレスなどの金属材料を形成材料とする帯状の部材を挙げることができる。なかでも、リチウムと合金を作り難く、加工しやすいという点で、Cuを形成材料とし、薄膜状に加工したものが好ましい。
【0102】
このような負極集電体に負極合剤を担持させる方法としては、正極の場合と同様に、加圧成型による方法、溶媒などを用いてペースト化し負極集電体上に塗布、乾燥後プレスし圧着する方法が挙げられる。
【0103】
(セパレータ)
本実施形態のリチウム二次電池が有するセパレータとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂、フッ素樹脂、含窒素芳香族重合体などの材質からなる、多孔質膜、不織布、織布などの形態を有する材料を用いることができる。また、これらの材質を2種以上用いてセパレータを形成してもよいし、これらの材料を積層してセパレータを形成してもよい。
【0104】
本実施形態において、セパレータは、電池使用時(充放電時)に電解質を良好に透過させるため、JIS P 8117で定められるガーレー法による透気抵抗度が、50秒/100cc以上、300秒/100cc以下であることが好ましく、50秒/100cc以上、200秒/100cc以下であることがより好ましい。
【0105】
また、セパレータの空孔率は、好ましくは30体積%以上80体積%以下、より好ましくは40体積%以上70体積%以下である。セパレータは空孔率の異なるセパレータを積層したものであってもよい。
【0106】
(電解液)
本実施形態のリチウム二次電池が有する電解液は、電解質および有機溶媒を含有する。
【0107】
電解液に含まれる電解質としては、LiClO
4、LiPF
6、LiAsF
6、LiSbF
6、LiBF
4、LiCF
3SO
3、LiN(SO
2CF
3)
2、LiN(SO
2C
2F
5)
2、LiN(SO
2CF
3)(COCF
3)、Li(C
4F
9SO
3)、LiC(SO
2CF
3)
3、Li
2B
10Cl
10、LiBOB(ここで、BOBは、bis(oxalato)borateのことである。)、LiFSI(ここで、FSIはbis(fluorosulfonyl)imideのことである)、低級脂肪族カルボン酸リチウム塩、LiAlCl
4などのリチウム塩が挙げられ、これらの2種以上の混合物を使用してもよい。なかでも電解質としては、フッ素を含むLiPF
6、LiAsF
6、LiSbF
6、LiBF
4、LiCF
3SO
3、LiN(SO
2CF
3)
2およびLiC(SO
2CF
3)
3からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むものを用いることが好ましい。
【0108】
また前記電解液に含まれる有機溶媒としては、例えばプロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、4−トリフルオロメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、1,2−ジ(メトキシカルボニルオキシ)エタンなどのカーボネート類;1,2−ジメトキシエタン、1,3−ジメトキシプロパン、ペンタフルオロプロピルメチルエーテル、2,2,3,3−テトラフルオロプロピルジフルオロメチルエーテル、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフランなどのエーテル類;ギ酸メチル、酢酸メチル、γ−ブチロラクトンなどのエステル類;アセトニトリル、ブチロニトリルなどのニトリル類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなどのアミド類;3−メチル−2−オキサゾリドンなどのカーバメート類;スルホラン、ジメチルスルホキシド、1,3−プロパンサルトンなどの含硫黄化合物、又はこれらの有機溶媒にさらにフルオロ基を導入したもの(有機溶媒が有する水素原子のうち1以上をフッ素原子で置換したもの)を用いることができる。
【0109】
有機溶媒としては、これらのうちの2種以上を混合して用いることが好ましい。中でもカーボネート類を含む混合溶媒が好ましく、環状カーボネートと非環状カーボネートとの混合溶媒および環状カーボネートとエーテル類との混合溶媒がさらに好ましい。環状カーボネートと非環状カーボネートとの混合溶媒としては、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネートおよびエチルメチルカーボネートを含む混合溶媒が好ましい。このような混合溶媒を用いた電解液は、動作温度範囲が広く、高い電流レートにおける充放電を行っても劣化し難く、長時間使用しても劣化し難く、かつ負極の活物質として天然黒鉛、人造黒鉛などの黒鉛材料を用いた場合でも難分解性であるという多くの特長を有する。
【0110】
また、電解液としては、得られるリチウム二次電池の安全性が高まるため、LiPF
6などのフッ素を含むリチウム塩およびフッ素置換基を有する有機溶媒を含む電解液を用いることが好ましい。ペンタフルオロプロピルメチルエーテル、2,2,3,3−テトラフルオロプロピルジフルオロメチルエーテルなどのフッ素置換基を有するエーテル類とジメチルカーボネートとを含む混合溶媒は、高い電流レートにおける充放電を行っても容量維持率が高いため、さらに好ましい。
【0111】
上記の電解液の代わりに固体電解質を用いてもよい。固体電解質としては、例えばポリエチレンオキサイド系の高分子化合物、ポリオルガノシロキサン鎖又はポリオキシアルキレン鎖の少なくとも一種以上を含む高分子化合物などの有機系高分子電解質を用いることができる。また、高分子化合物に非水電解液を保持させた、いわゆるゲルタイプのものを用いることもできる。またLi
2S−SiS
2、Li
2S−GeS
2、Li
2S−P
2S
5、Li
2S−B
2S
3、Li
2S−SiS
2−Li
3PO
4、Li
2S−SiS
2−Li
2SO
4、Li
2S−GeS
2−P
2S
5などの硫化物を含む無機系固体電解質が挙げられ、これらの2種以上の混合物を用いてもよい。これら固体電解質を用いることで、リチウム二次電池の安全性をより高めることができることがある。
【0112】
また、本実施形態のリチウム二次電池において、固体電解質を用いる場合には、固体電解質がセパレータの役割を果たす場合もあり、その場合には、セパレータを必要としないこともある。
【0113】
以上のような構成の正極活物質は、上述した本実施形態により製造されるリチウム複合金属化合物を用いているため、正極活物質を用いたリチウム二次電池のサイクル維持率を向上させることができる。
【0114】
また、以上のような構成の正極は、上述した構成のリチウム二次電池用正極活物質を有するため、リチウム二次電池のサイクル維持率を向上させることができる。
【0115】
さらに、以上のような構成のリチウム二次電池は、上述した正極を有するため、サイクル維持率の高い二次電池となる。
【実施例】
【0116】
次に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。
【0117】
<組成分析>
得られた前駆体粉末の組成分析は、得られた前駆体粉末を塩酸に溶解させた後、誘導結合プラズマ発光分析装置(株式会社パーキンエルマー製、Optima7300)を用いて行った。
【0118】
<BET比表面積測定>
得られた前駆体粉末を窒素雰囲気中、105℃で30分間乾燥させた後、マウンテック社製Macsorb(登録商標)を用いて測定した。
【0119】
<粒度分布の測定>
前駆体の累積体積粒度分布は、レーザー回折散乱法によって測定される。粒度分布測定装置はマイクロトラック・ベル株式会社製マイクロトラックMT3300EXIIを用い、測定条件は下記表1に示した条件に沿って測定した。そして、得られた累積粒度分布曲線において、小粒子側からの累積体積が10%となる点の粒子径の値がD10(μm)、50%となる点の粒子径の値がD50(μm)、90%となる点の粒子径の値がD90(μm)とした。さらに、粒度分布測定を複数回実施し、最小の粒子径及び最大の粒子径において、それぞれの変動誤差10%以内のデータ(n=5)のうち中央値を、最小の粒子径の値をDmin(μm)、最大の粒子径の値をDmax(μm)として求めた。
【0120】
下記表1に、実施例1〜4、比較例1〜3の粒度分布の測定条件を記載する。
【0121】
【表1】
【0122】
<粉末X線回折測定>
粉末X線回折測定は、X線回折装置(株式会社リガク製UltimaIV)を用いて行った。前駆体粉末を専用の基板に充填し、Cu−Kα線源を用いて、回折角2θ=10°〜90°、サンプリング幅0.03°、スキャンスピード20°/minの条件にて測定を行うことで、粉末X線回折図形を得た。
統合粉末X線解析ソフトウェアPDXL(株式会社リガク)を用いて解析し得られた2θ=52.4±1°のピークの半値幅αと、2θ=73.9±1°のピークの半値幅βの比α/βを得た。
【0123】
(実施例1)
220φプロペラタイプの攪拌羽根を備えた攪拌機とオーバーフローパイプを備えた500L円筒形反応槽に水を入れ、次いでpHが11.8になるまで32質量%水酸化ナトリウム溶液を加え、ヒーターで温度を55℃に保持した。次いで、反応槽内に窒素ガスを5L/分の流量で連続的に吹き込み反応槽内の雰囲気を不活性雰囲気とした。
【0124】
硫酸ニッケル水溶液と硫酸コバルト水溶液とを、ニッケル原子とコバルト原子との原子比が89:11となるように混合して、混合原料液を調製し、混合溶液を一定速度にて反応槽に連続供給した。錯化剤として2.8mol/L硫酸アンモニウム溶液を用いて反応槽内アンモニア濃度が0.47mol/Lになるように一定速度にて反応槽に連続供給した。さらに、反応槽内の溶液のpHを11.8に維持するために32質量%水酸化ナトリウムを断続的に加えた。
【0125】
上記反応によって得られたニッケルコバルト複合水酸化物含有スラリーはオーバーフローパイプよりオーバーフローされ、オーバーフローされたスラリーを湿式分級機スラリースクリーナー(アコージャパン株式会社製、SS90×250)内に導入し、スラリースクリーナーのスクリューを周速度5.8m/秒で回転させて連続的に分級を行った。スクリーンはポリアミド製の目開き15μmのものを使用した。スラリースクリーナーのスクリーンを通過しなかったものを目的の粒子として回収し、スクリーンを通過した粒子を含むスラリーは適宜濃縮し、連続的に反応槽に還流した。目的の粒子の回収口側を15°の傾斜がつくように持ち上げて行った。
【0126】
得られたニッケルコバルト複合水酸化物は洗浄、脱水後、105℃で20時間乾燥、篩別し、粒度分布測定、比表面積測定、化学組成分析および粉末X線回折測定を行った。これらの結果を表3に示す。
【0127】
(実施例2)
220φプロペラタイプの攪拌羽根を備えた攪拌機とオーバーフローパイプを備えた500L円筒形反応槽に水を入れ、次いでpHが11.8になるまで32質量%水酸化ナトリウム溶液を加え、ヒーターで温度を55℃に保持した。次いで、反応槽内に窒素ガスを5L/分の流量で連続的に吹き込み反応槽内の雰囲気を不活性雰囲気とした。
【0128】
硫酸ニッケル水溶液と硫酸コバルト水溶液とを、ニッケル原子とコバルト原子との原子比が92.5:7.5となるように混合して、混合原料液を調製し、混合溶液を一定速度にて反応槽に連続供給した。錯化剤として2.8mol/L硫酸アンモニウム溶液を用いて反応槽内アンモニア濃度が0.47mol/Lになるように一定速度にて反応槽に連続供給した。さらに、反応槽内の溶液のpHを11.8に維持するために32質量%水酸化ナトリウムを断続的に加えた。
【0129】
上記反応によって得られたニッケルコバルト複合水酸化物含有スラリーはオーバーフローパイプよりオーバーフローされ、オーバーフローされたスラリーを湿式分級機スラリースクリーナー(アコージャパン株式会社製、SS90×250)内に導入し、スラリースクリーナーのスクリューを周速度5.8m/秒で回転させて連続的に分級を行った。スクリーンはポリアミド製の目開き15μmのものを使用した。スラリースクリーナーのスクリーンを通過しなかったものを目的の粒子として回収し、スクリーンを通過した粒子を含むスラリーは適宜濃縮し、連続的に反応槽に還流した。目的の粒子の回収口側を15°の傾斜がつくように持ち上げて行った。
【0130】
得られたニッケルコバルト複合水酸化物は洗浄、脱水後、105℃で20時間乾燥、篩別し、粒度分布測定、比表面積測定、化学組成分析および粉末X線回折測定を行った。これらの結果を表3に示す。
【0131】
(実施例3)
220φプロペラタイプの攪拌羽根を備えた攪拌機とオーバーフローパイプを備えた500L円筒形反応槽に水を入れ、次いでpHが11.6になるまで32質量%水酸化ナトリウム溶液を加え、ヒーターで温度を45℃に保持した。次いで、反応槽内に窒素ガスを5L/分の流量で連続的に吹き込み反応槽内の雰囲気を不活性雰囲気とした。
【0132】
硫酸ニッケル水溶液と硫酸コバルト水溶液とを、ニッケル原子とコバルト原子との原子比が92.5:7.5となるように混合して、混合原料液を調製し、混合溶液を一定速度にて反応槽に連続供給した。錯化剤として2.8mol/L硫酸アンモニウム溶液を用いて反応槽内アンモニア濃度が0.47mol/Lになるように一定速度にて反応槽に連続供給した。10.8質量%硫酸アルミ水溶液はニッケル原子とコバルト原子とマンガン原子とアルミニウム原子との原子比が91.1:7.4:1.5となるように流量を調整した。さらに、反応槽内の溶液のpHを11.6に維持するために32質量%水酸化ナトリウムを断続的に加えた。
【0133】
上記反応によって得られたニッケルコバルト複合水酸化物含有スラリーはオーバーフローパイプよりオーバーフローされ、オーバーフローされたスラリーを湿式分級機スラリースクリーナー(アコージャパン株式会社製、SS90×250)内に導入し、スラリースクリーナーのスクリューを周速度5.8m/秒で回転させて連続的に分級を行った。スクリーンはポリアミド製の目開き15μmのものを使用した。スラリースクリーナーのスクリーンを通過しなかったものを目的の粒子として回収し、スクリーンを通過した粒子を含むスラリーは適宜濃縮し、連続的に反応槽に還流した。目的の粒子の回収口側を15°の傾斜がつくように持ち上げて行った。
【0134】
得られたニッケルコバルト複合水酸化物は洗浄、脱水後、105℃で20時間乾燥、篩別し、粒度分布測定、比表面積測定、化学組成分析および粉末X線回折測定を行った。これらの結果を表3に示す。
【0135】
(実施例4)
220φプロペラタイプの攪拌羽根を備えた攪拌機とオーバーフローパイプを備えた500L円筒形反応槽に水を入れ、次いでpHが11.2になるまで32質量%水酸化ナトリウム溶液を加え、ヒーターで温度を50℃に保持した。次いで、反応槽内に窒素ガスを5L/分の流量で連続的に吹き込み反応槽内の雰囲気を不活性雰囲気とした。
【0136】
硫酸ニッケル水溶液と硫酸コバルト水溶液とを、ニッケル原子とコバルト原子との原子比が93:7となるように混合して、混合原料液を調製し、混合溶液を一定速度にて反応槽に連続供給した。錯化剤として2.8mol/L硫酸アンモニウム溶液を用いて反応槽内アンモニア濃度が0.29mol/Lになるように一定速度にて反応槽に連続供給した。さらに、反応槽内の溶液のpHを11.2に維持するために32質量%水酸化ナトリウムを断続的に加えた。
【0137】
上記反応によって得られたニッケルコバルト複合水酸化物含有スラリーはオーバーフローパイプよりスラリー貯槽に貯められて、スラリー貯槽に貯められたスラリーを湿式分級機液体サイクロン(村田工業株式会社製、T−10B−1型)内に、液体サイクロン入口圧力0.04MPaで導入し、大粒径部と小粒径部に分級した。大粒径部は目的の粒子として回収し、小粒径部は目的の粒径に到達しなかった粒子として連続的に反応槽に還流した。さらには、スラリー貯槽にあるスラリーは適宜脱水しながら連続的に反応槽に還流した。
液体サイクロンボトムから排出されたものを目的の粒子として回収し、液体サイクロントップから排出された粒子を含むスラリーは連続的に反応槽に還流した。さらには、スラリー貯槽から反応槽にスラリーを適宜濃縮し、連続的に反応槽に還流した。
【0138】
得られたニッケルコバルト複合水酸化物は洗浄、脱水後、105℃で20時間乾燥、篩別し、粒度分布測定、比表面積測定、化学組成分析および粉末X線回折測定を行った。これらの結果を表3に示す。
【0139】
(比較例1)
350φプロペラタイプの攪拌羽根を備えた攪拌機とオーバーフローパイプを備えた2000L円筒形反応槽に水を入れた。次いでpHが11.9になるまで32質量%水酸化ナトリウム溶液を加え、ヒーターで温度を45℃に保持した。次いで、反応槽内に窒素ガスを5L/分の流量で連続的に吹き込み反応槽内の雰囲気を不活性雰囲気とした。
【0140】
硫酸ニッケル水溶液と硫酸コバルト水溶液とを、ニッケル原子とコバルト原子との原子比が92.5:7.5となるように混合して、混合原料液を調製し、混合溶液を一定速度にて反応槽に連続供給した。錯化剤として2.8mol/L硫酸アンモニウム溶液を用いて反応槽内アンモニア濃度が0.47mol/Lになるように一定速度にて反応槽に連続供給した。硫酸アルミ水溶液はニッケル原子とコバルト原子とマンガン原子とアルミニウム原子との原子比が91.1:7.4:1.5となるように流量を調整した。さらに、反応槽内の溶液のpHを11.9に維持するために32質量%水酸化ナトリウムを断続的に加えた。
【0141】
上記反応によって得られたニッケルコバルト複合水酸化物含有スラリーはオーバーフローパイプよりオーバーフローされ、オーバーフローされたスラリーを目的物粒子とした。
【0142】
得られたニッケルコバルト複合水酸化物は洗浄、脱水後、105℃で20時間乾燥、篩別し、粒度分布測定、比表面積測定、化学組成分析および粉末X線回折測定を行った。これらの結果を表3に示す。
【0143】
(比較例2)
350φプロペラタイプの攪拌羽根を備えた攪拌機とオーバーフローパイプを備えた2000L円筒形反応槽に水を入れた。次いでpHが12.3になるまで32質量%水酸化ナトリウム溶液を加え、ヒーターで温度を45℃に保持した。次いで、反応槽内に窒素ガスを5L/分の流量で連続的に吹き込み反応槽内の雰囲気を不活性雰囲気とした。
【0144】
硫酸ニッケル水溶液と硫酸コバルト水溶液とを、ニッケル原子とコバルト原子との原子比が92.5:7.5となるように混合して、混合原料液を調製し、混合溶液を一定速度にて反応槽に連続供給した。錯化剤として2.8mol/L硫酸アンモニウム溶液を用いて反応槽内アンモニア濃度が0.41mol/Lになるように一定速度にて反応槽に連続供給した。10.8質量%硫酸アルミ水溶液はニッケル原子とコバルト原子とマンガン原子とアルミニウム原子との原子比が91.1:7.4:1.5となるように流量を調整した。さらに、反応槽内の溶液のpHを12.3に維持するために32質量%水酸化ナトリウムを断続的に加えた。
【0145】
上記反応によって得られたニッケルコバルト複合水酸化物含有スラリーはオーバーフローパイプよりオーバーフローされ、オーバーフローされたスラリーを目的の粒子として回収した。
【0146】
得られたニッケルコバルト複合水酸化物は洗浄、脱水後、105℃で20時間乾燥、篩別し、粒度分布測定、比表面積測定、化学組成分析および粉末X線回折測定を行った。これらの結果を表3に示す。
【0147】
(比較例3)
220φプロペラタイプの攪拌羽根を備えた攪拌機とオーバーフローパイプを備えた500L円筒形反応槽に水を入れた。次いでpHが11.6になるまで32質量%水酸化ナトリウム溶液を加え、ヒーターで温度を50℃に保持した。次いで、反応槽内に窒素ガスを5L/分の流量で連続的に吹き込み反応槽内の雰囲気を不活性雰囲気とした。
【0148】
硫酸ニッケル水溶液と硫酸コバルト水溶液とを、ニッケル原子とコバルト原子との原子比が93:7となるように混合して、混合原料液を調製し、混合溶液を一定速度にて反応槽に連続供給した。錯化剤として2.8mol/L硫酸アンモニウム溶液を用いて反応槽内アンモニア濃度が0.41mol/Lになるように一定速度にて反応槽に連続供給した。さらに、反応槽内の溶液のpHを11.6に維持するために32質量%水酸化ナトリウムを断続的に加えた。
【0149】
上記反応によって得られたニッケルコバルト複合水酸化物含有スラリーはオーバーフローパイプよりスラリー貯槽に貯められて、スラリー貯槽に貯められたスラリーを湿式分級機液体サイクロン(村田工業株式会社製、T−10B−1型)内に、液体サイクロン入口圧力0.08MPaで導入し、大粒径部と小粒径部に分級した。大粒径部は目的の粒子として回収し、小粒径部は目的の粒径に到達しなかった粒子として連続的に反応槽に還流した。さらには、スラリー貯槽にあるスラリーは適宜脱水しながら連続的に反応槽に還流した。
【0150】
得られたニッケルコバルト複合水酸化物は脱水後、105℃で20時間乾燥、篩別し、粒度分布測定、比表面積測定、化学組成分析および粉末X線回折測定を行った。これらの結果を表3に示す。
【0151】
下記表2に、実施例1〜4、比較例1〜3の前駆体の製造条件を記載する。
【0152】
【表2】
【0153】
下記表3に、実施例1〜4、比較例1〜3の前駆体のDmin、D10、D50、D90、Dmax、Dmin/Dmax、(D50−D10)/D50、(D90−D50)/D50、BET値、α、β、α/β、不純物であるケイ素値を記載する。
【0154】
【表3】
上記結果に示した通り、本発明を適用した実施例1〜4は、不純物であるケイ素値が130ppm未満と低くなった。これに対し、本発明を適用しない比較例1〜3は、不純物であるケイ素値が130ppm以上と高い結果であった。
【解決手段】少なくともニッケルを含み、下記式(1)を満たす、リチウム二次電池正極活物質用前駆体。0.20≦Dmin/Dmax・・・(1)(式(1)中、Dminはレーザー回折式粒度分布測定装置によって測定された体積基準の累積最小粒径(μm)であり、Dmaxはレーザー回折式粒度分布測定装置によって測定された体積基準の累積最大粒径(μm)である。)