特許第6646476号(P6646476)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6646476
(24)【登録日】2020年1月15日
(45)【発行日】2020年2月14日
(54)【発明の名称】排ガス計測装置及び排ガス計測方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/22 20060101AFI20200203BHJP
   G01M 15/12 20060101ALI20200203BHJP
【FI】
   G01N1/22 G
   G01M15/12
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-38933(P2016-38933)
(22)【出願日】2016年3月1日
(65)【公開番号】特開2016-212084(P2016-212084A)
(43)【公開日】2016年12月15日
【審査請求日】2018年12月19日
(31)【優先権主張番号】特願2015-93662(P2015-93662)
(32)【優先日】2015年4月30日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000155023
【氏名又は名称】株式会社堀場製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(72)【発明者】
【氏名】大槻 喜則
【審査官】 福田 裕司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−127735(JP,A)
【文献】 特開2014−153132(JP,A)
【文献】 特表2013−521473(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0133440(US,A1)
【文献】 中国実用新案第203971918(CN,U)
【文献】 芳賀 一郎 他,気動車の排出ガスを分析する,RRR(Railway Research Review),2009年11月,2009年11月号,26〜29頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/22
G01M 15/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
排ガスが希釈されてなる希釈排ガスが流れる希釈排ガス流路を有し、当該希釈排ガス流路に設けられたフィルタに予め設定された試験条件に応じた流量の前記希釈排ガスを流すことによって前記希釈排ガス中の粒子状物質を捕集して計測する排ガス計測装置であって、
前記希釈排ガス流路における前記フィルタの上流から分岐して前記フィルタの下流に合流するバイパス流路と、
前記フィルタに前記希釈排ガスを流しつつ、前記バイパス流路に流れる前記希釈排ガスの分流流量を制御する分流流量制御部とを具備し、
前記分流流量制御部が、車両の走行状態を示す複数の走行モードと、各走行モードそれぞれに対して予め定められた重み付け値とを含む試験条件データを取得し、前記重み付け値に基づいて前記分流流量を制御することを特徴とする排ガス計測装置。
【請求項2】
全ての前記走行モードにおいて、前記希釈排ガスが共通のフィルタに流れることを特徴とする請求項記載の排ガス計測装置。
【請求項3】
排ガスが希釈されてなる希釈排ガスが流れる希釈排ガス流路を有し、当該希釈排ガス流路に設けられたフィルタに予め設定された試験条件に応じた流量の前記希釈排ガスを流すことによって前記希釈排ガス中の粒子状物質を捕集して計測する排ガス計測装置を用いた排ガス計測方法であって、
前記排ガス計測装置が、前記希釈排ガス流路における前記フィルタの上流から分岐して前記フィルタの下流に合流するバイパス流路を具備し、
前記排ガス計測方法が、
前記希釈排ガスを第1流量で前記フィルタに流す第1走行ステップと、
前記バイパス流路に流れる前記希釈排ガスの分流流量を制御して、前記希釈排ガスを第2流量で前記フィルタに流す第2走行ステップと、
前記各走行ステップにおいて前記フィルタに捕集された粒子状物質を計測する計測ステップとを備え
前記第1ステップにおける前記分流量量及び前記第2ステップにおける前記分流流量が、車両の走行状態を示す複数の走行モードそれぞれに対して予め定められた重み付け値に基づいて制御されていることを特徴とする排ガス計測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の排ガスに含まれる粒子状物質を計測する排ガス計測装置及び排ガス計測方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の排ガス計測装置としては、特許文献1に示すように、内燃機関の排ガスを所定の希釈比で希釈してフィルタに導き、該フィルタで捕集された希釈排ガス中の粒子状物質(以下、PMともいう)の質量を計測するものがある。
【0003】
ところで、近年のPM計測試験では、車両の走行モードに応じて計測結果に重み付けをすることが法規化されており、例えばCFR1066では、第1走行モード(コールドスタート)の計測結果に0.43の重み付けをし、第2走行モード(スタビライズド)の計測結果に1の重み付けをし、第3走行モード(ホットスタート)の計測結果に0.57の重み付けをすることが定められている。
【0004】
このような重み付けをする方法としては、各走行モードそれぞれに対してフィルタを1枚ずつ使ってPMの質量を計測し、その計測値に上述した重み付けの値を乗じる方法があるものの、近年では、排ガス中のPM濃度が低くなっており、各走行モードでフィルタに捕集されるPMが極めて少なく、その質量を精度良く計測することが難しい。
【0005】
一方、各走行モードにおける希釈排ガスの流量に重み付けをして、各走行モードで共通のフィルタを用いてPMを捕集する方法が認められている。
しかしながら、この方法では、重み付けの値が小さいと、希釈排ガス流量や希釈ガス流量が、これらの流量の計測に適したベンチュリ流量計のレンジを下回り、各ガスの流量を精度良く制御することができず、希釈排ガスの希釈比精度を担保することができないという問題が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−50194号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで本発明は、上記問題点を一挙に解決すべくなされたものであって、PMの質量を精度良く計測できるようにしながらも、希釈排ガスの希釈比精度を担保することをその主たる課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち本発明に係る排ガス計測装置は、排ガスが希釈されてなる希釈排ガスが流れる希釈排ガス流路を有し、当該希釈排ガス流路に設けられたフィルタによって前記希釈排ガス中の粒子状物質を捕集して計測するものであって、前記希釈排ガス流路における前記フィルタの上流から分岐して前記フィルタの下流に合流するバイパス流路と、前記フィルタに前記希釈排ガスを流しつつ、前記バイパス流路に流れる前記希釈排ガスの分流流量を制御する分流流量制御部とを具備することを特徴とするものである。
【0009】
このような排ガス計測装置であれば、分流流量を制御することで、フィルタに流れる希釈排ガスの流量に重み付けをすることができるので、各走行モードに対して共通のフィルタを用いてPMを捕集することができ、その質量を精度良く計測することができる。
そのうえ、バイパス流路が、希釈排ガス流路におけるフィルタの上流から分岐してフィルタの下流に合流するので、希釈排ガスの全体流量を変えることなく、フィルタに流れる希釈排ガスの流量のみに重み付けをすることができ、希釈排ガス流量や希釈ガス流量の計測にベンチュリ流量計を用いた場合であっても、希釈排ガスの希釈比精度を担保することができる。
【0010】
レギュレーションや排ガス測定規則などにより定められている試験条件に応じて、フィルタに流れる希釈排ガスの流量を制御するためには、予め設定された試験条件に応じて前記フィルタに流すべき希釈排ガスの流量に関する流量条件が定められており、前記分流流量制御部が、前記試験条件を示す試験条件データを取得するとともに、前記流量条件に基づいて前記分流流量を制御することが好ましい。
【0011】
具体的な実施態様としては、前記試験条件データが、車両の走行状態を示す複数の走行モードと、各走行モードそれぞれに対して予め定められた重み付け値とを含むデータであり、前記流量条件が、前記重み付け値に基づいて決められているものが挙げられる。
【0012】
PMの質量を精度良く計測するためには、全ての前記走行モードにおいて、前記希釈排ガスが共通のフィルタに流れることが好ましい。
【0013】
また、本発明に係る排ガス計測方法は、排ガスが希釈されてなる希釈排ガスが流れる希釈排ガス流路を有し、当該希釈排ガス流路に設けられたフィルタによって前記希釈排ガス中の粒子状物質を捕集して計測する排ガス計測装置を用いた排ガス計測方法であって、前記排ガス計測装置が、前記希釈排ガス流路における前記フィルタの上流から分岐して前記フィルタの下流に合流するバイパス流路を具備し、前記希釈排ガスを第1流量で前記フィルタに流す第1走行ステップと、前記バイパス流路に流れる前記希釈排ガスの分流流量を制御して、前記希釈排ガスを第2流量で前記フィルタに流す第2走行ステップと、前記各走行ステップにおいて前記フィルタに捕集された粒子状物質を計測する計測ステップとを備えることを特徴とする方法である。
このような排ガス計測方法であれば、上述した排ガス計測装置と同様の作用効果を奏する。
【発明の効果】
【0014】
このように構成した本発明によれば、PMの質量を精度良く測定することができるうえ、希釈排ガスの希釈比精度を担保することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本実施形態の排ガス計測装置の構成を模式的に示す図。
図2】同実施形態の制御部本体の機能を示す機能ブロック図。
図3】同実施形態の排ガス計測装置の動作を説明するフローチャート。
図4】変形実施形態の排ガス計測装置の構成を模式的に示す図。
図5】変形実施形態の排ガス計測装置の構成を模式的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に本発明に係る排ガス計測装置の一実施形態について説明する。
【0017】
本実施形態の排ガス計測装置100は、図示しない内燃機関の排ガスに含まれる粒子状物質(以下、PMともいう)を計測するものであり、ここでは、内燃機関から排出された排ガスの一部を採取して希釈したあと、その全量をフィルタFに導くように構成されている。
なお、この排ガス計測装置100は、路上を走行する車両に搭載することができ、これにより路上実走行において内燃機関から排出される排ガスに含まれるPMを計測することができる。
【0018】
具体的にこのものは、図1に示すように、内燃機関の排ガスが導入される排ガス導入路L1と、前記排ガスを希釈する希釈ガスが流れる希釈ガス流路L2と、前記排ガス導入路L1及び前記希釈ガス流路L2とが接続される希釈トンネル10と、前記希釈トンネル10で生成された希釈排ガスが流れる希釈排ガス流路L3と、前記希釈ガス及び希釈排ガスの流量を制御する流量制御機構20とを具備するものである。
【0019】
前記排ガス導入路L1は、例えば図示しない内燃機関の排気管内に接続されており、内燃機関から排出された排ガスの一部を分流採取して希釈トンネル10に導くものである。
【0020】
前記希釈ガス流路L2は、希釈ガスを希釈トンネル10に導くものであり、一端が図示しない希釈ガス源に接続されるとともに、他端が前記希釈トンネル10に接続されている。
なお、本実施形態では、前記希釈ガスは空気である。
【0021】
前記希釈トンネル10は、排ガスを所定の希釈比で希釈して希釈排ガスを生成するものであり、ここでは、いわゆるマイクロトンネルである。
なお、内燃機関から排出された排ガスの全量が導かれる、いわゆるフルトンネルであっても構わない。
【0022】
前記希釈排ガス流路L3は、始端が前記希釈トンネル10に接続されて希釈排ガスが流れるものであり、当該希釈排ガス流路L3に設けた例えば1枚のフィルタFによって、希釈排ガスに含まれるPMを捕集するように構成されている。
なお、この希釈排ガス流路L3の他端は、大気解放されていても良いし、種々の排ガス分析計に接続されていても良い。
【0023】
前記流量制御機構20は、上述した希釈ガスの流量及び希釈排ガスの流量を制御するものであり、希釈ガス流路L2に設けられた希釈ガス流量計FV1及び流量制御バルブVと、希釈排ガス流路L3における前記フィルタFの下流側に設けられた希釈排ガス流量計FV2及び回転数制御によって吸引能力が可変の吸引ポンプP(例えばルーツブロア)と、前記流量制御バルブV及び前記吸引ポンプPを制御する制御装置21とを備えている。
なお、本実施形態の希釈ガス流量計FV1及び希釈排ガス流量計FV2は、いずれもベンチュリ流量計である。
【0024】
前記制御装置21は、物理的には、CPU、メモリ、A/Dコンバータ、D/Aコンバータ等を備えたものであり、前記メモリの所定領域に格納されたプログラムに従ってCPUや周辺機器が協働することにより、各流量計FV1、FV2の計測値を示す流量信号を取得するとともに、前記流量信号に基づいて前記流量制御バルブV及び前記吸引ポンプPを制御するように機能するものである。
具体的にこの制御装置21は、希釈排ガス流量と希釈ガス流量との差分を排ガスのサンプリング流量として算出するとともに、このサンプリング流量と希釈ガス流量とから算出される希釈比をフィードバック制御している。
【0025】
しかして、本実施形態の排ガス計測装置100は、図1に示すように、希釈排ガス流路L3におけるフィルタFの上流から分岐してフィルタFの下流に合流するバイパス流路L4と、フィルタFに希釈排ガスを流しつつ、前記バイパス流路L4に流れる分流流量を制御する分流流量制御部30とをさらに具備してなる。
【0026】
前記バイパス流路L4は、希釈排ガスの一部をフィルタFに流すことなくフィルタFを迂回させるものであり、希釈トンネル10とフィルタFとの間の分岐点Xから分岐し、フィルタFと吸引ポンプPとの間の合流点Yで合流する。ところで、仮にバイパス流路Lの合流点Yを吸引ポンプPの下流側に設けた場合、希釈排ガスの一部をバイパス流路に導くためには、バイパス流路L4上或いは合流点Yより下流側に吸引ポンプを別途設ける必要が生じる。これに対して、本実施形態では、上述したように合流点YをフィルタFと吸引ポンプPとの間、すなわち吸引ポンプPの上流側に設けてあるので、バイパス流路L4上などに別途吸引ポンプを設けることなく、分岐点Xと合流点Yとの差圧によって希釈排ガスの一部をバイパス流路L4に導くことができる。
【0027】
前記分流流量制御部30は、フィルタFに流れる希釈排ガスの流量を変更するために、前記バイパス流路L4に流れる分流流量を制御するものであり、バイパス流路L4に設けられたマスフローコントローラ31と、前記マスフローコントローラ31を制御する制御部本体32と有する。
なお、本実施形態のマスフローコントローラ31は差圧式のものであるが、熱式のものを用いても構わない。
【0028】
前記制御部本体32は、物理的には、CPU、メモリ、A/Dコンバータ、D/Aコンバータ等を備えたものであり、前記メモリの所定領域に格納されたプログラムに従ってCPUや周辺機器が協働することにより、図2に示すように、試験条件格納部321及び制御部322としての機能を発揮するように構成されている。
【0029】
以下、各部について、図2及び図3のフローチャートを参照しながら、制御部本体32の動作の説明を兼ねて詳述する。
【0030】
前記試験条件格納部321は、図2に示すように、前記メモリの所定領域に設定されており、試験結果を得るために予め設定された試験条件を示す試験条件データを格納している。ここで、前記試験条件とは、例えば、レギュレーションや排ガス測定規則などにおいて定められている試験条件や、オペレータが任意に設定した試験条件などであり、本実施形態の試験条件格納部321は、前記試験条件データを複数格納している。
【0031】
本実施形態の試験条件格納部321は、前記試験条件データとして、車両の走行状態を示す複数の走行モードと、各走行モードそれぞれにおいてフィルタFに流すべき希釈排ガスの流量に関する流量条件とを結び付けて格納している。
前記流量条件は、1つの試験結果を得るために各走行モードで計測されるPMの質量それぞれに対して定められている重み付けの値(以下、重み付け値ともいう)であり、ここでは、例えばレギュレーション(CFR1066等)により定められている重み付け値である。
すなわち、前記試験条件格納部321は、複数の走行モードと、各走行モードそれぞれに対応して予め定められた重み付け値とを結び付けて格納している。
より具体的には、3つの走行モードと各走行モードに対応する重み付け値とが結び付いているものが1つの試験条件データとして格納されており、例えば、第1走行モードの重み付け値を43%、第2走行モードの重み付け値を100%、第3走行モードの重み付け値を57%としてある。
【0032】
前記制御部322は、図3に示すように、例えばオペレータが入力手段を用いて選択した試験条件を示す試験条件データを前記試験条件格納部321から取得するとともに、該試験条件データに基づいて、分流流量を制御するものである。
より詳細にこの制御部322は、各走行モード毎にバイパス流路L4に設けられたマスフローコントローラ31の図示しない流量制御弁に制御信号を送信して、各走行モードにおいてフィルタFに流れる希釈排ガスの流量が、所定の基準流量に各走行モードに対応する重み付け値を乗じた流量となるようにしている。
より具体的には、フィルタFに流れる希釈排ガスの流量の比率、すなわち第1走行モードにおける第1流量、第2走行モードにおける第2流量、第3走行モードにおける第3流量の比率が、上述した重み付け値の比率、すなわち43:100:57となるようにしている。
本実施形態では、第1走行モード、第2走行モード及び第3走行モードを連続的に切り替えており、各走行モードに対応する流量条件で流れる希釈排ガスが1枚の共通のフィルタFを通過するようにしている。
【0033】
このように、各走行モードにおいて希釈排ガスがフィルタFに流れたあと、オペレータは上述したフィルタFを取り外して捕集されたPMの質量を計測し、この計測値及び希釈排ガスの希釈比に基づいて、排ガスに含まれるPMの質量を算出することができる。
【0034】
このように構成された本実施形態に係る排ガス計測装置100によれば、分流流量を制御することで、フィルタFに流れる希釈排ガスの流量に重み付けをすることができるので、各走行モードに対して共通のフィルタFを用いてPMの質量を精度良く計測することができる。
そのうえ、希釈排ガスの全体流量を変えることなく、フィルタFに流れる希釈排ガスの流量のみに重み付けをすることができるので、希釈ガス流量計FV1及び希釈排ガス流量計FV2としてベンチュリ流量計を用いて、希釈ガス及び希釈排ガスの流量を精度良く測定することができ、希釈排ガスの希釈比精度を担保することができる。
【0035】
また、分岐点Xより上流側における希釈排ガスの流量を変えることなく、フィルタFに流れる希釈排ガスの流量に重み付けをすることができるので、フィルタFの上流における希釈排ガスの滞留時間を試験条件によらず一定にすることができ、この滞留時間が試験条件から外れてしまうことを防ぐことができる。
【0036】
さらに、希釈ガス流量計FV1及び希釈排ガス流量計FV2にベンチュリ流量計を用いているので、希釈ガス及び希釈排ガスの流量を精度良く計測することができ、希釈比をより精度良く制御することができる。
一方、各ベンチュリ流量計が50%程度のレンジであったとしても、上述したように、各ベンチュリ流量計に流れる流量を変えることなく、フィルタFに流れる希釈排ガスの流量のみに重み付けをすることができるので、重み付け値によらず希釈比精度を担保することができる。
【0037】
そのうえ、本実施形態の排ガス計測装置100は、路上を走行する車両に搭載可能であるので、路上実走行の試験において、フィルタFを交換することなく、一度の走行で法規に沿った試験を行うことができる。
【0038】
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
【0039】
例えば、前記実施形態では、各走行モードそれぞれに対応する流量条件が、レギュレーションにより定められている重み付け値であったが、例えばオペレータが任意に定めた流量や流量比であっても良い。
【0040】
また、前記実施形態では、希釈排ガス流路に1枚のフィルタを設けていたが、図4に示すように、希釈排ガス流路L4に複数のフィルタF1、F2を並列に設けても良い。
この構成では、各フィルタF1、F2に対応して設けた開閉弁V1、V2を切り替えることにより、例えば、一方のフィルタF1、F2を交換する場合に、他方のフィルタF2、F1に希釈排ガスを流しておくことができる。
なお、希釈排ガス流路には必ずしもフィルタが設けられている必要はなく、例えば、連続PM計や、その他の種々の排ガス分析装置を設けて希釈排ガス中のPMを計測するようにしても良い。
【0041】
さらに、流量制御機構は、希釈ガス流路及び希釈排ガス流路それぞれに設けられたマスフローコントローラを有するものであっても良い。
なお、マスフローコントローラの測定精度は排ガスによる影響を受けやすいものであることから、希釈ガス及び希釈排ガスの流量を精度良く制御するためには、前記実施形態の流量制御機構のように、ベンチュリ流量計を有しているものが好ましい。
【0042】
前記実施形態の試験条件格納部は、複数の試験条件データを格納しているものであったが、1つの試験条件データのみを格納しているものであっても良い。
【0043】
そのうえ、前記実施形態では、制御装置と制御部本体とが別体であったが、これらを物理的に一体のものとして、制御装置に制御部本体の機能を備えさせても良いし、制御部本体に制御装置の機能を備えさせても良い。
【0044】
加えて、前記実施形態の排ガス計測装置は、1つの希釈トンネルを有するものであったが、複数の希釈トンネルを有し、内燃機関から排出された排ガスを多段希釈するように構成されたものであっても良い。
【0045】
また、分流流量制御部は、必ずしも制御部本体を有している必要はなく、例えばバイパス流路に設けられた流量制御弁のみで構成されていても良い。
この構成では、各走行モードにおいてフィルタに流れる希釈排ガスの流量に重み付けをすべく、例えば、バイパス流路の流量センサ等を設けておき、オペレータがこの流量センサ等の値を確認しながら前記流量制御弁の弁開度を調整すれば良い。
このとき、車両の走行を停止させた状態で弁開度を調整するためには、例えば、希釈ガスのみ流しながら、フィルタに流れる希釈ガスの流量とバイパス流路に流れる分流流量とを比較すれば良い。
【0046】
さらに、マスフローコントローラ31による流量制御をより精度良く行なうためには、制御部本体が、ガス種の変更に応じてそのガス種に対応した流量値を算出するためのコンバージョンファクタ(ガス種補正係数)を取得するとともに、このコンバージョンファクタを用いてマスフローコントローラ31を補正するように構成されていても良い。
【0047】
そのうえ、分流流量制御部30は、図5に示すように、希釈排ガスの一部をフィルタFを迂回させる複数のバイパス流路L4と、各バイパス流路L4にそれぞれ設けられた開閉弁33(例えば電磁弁)及び定流量器34(例えばオリフィスなど)と、各開閉弁33にオン・オフ信号を出力する制御部本体32とを有するものであっても良い。
上述した構成により、例えば定流量器34たる各オリフィスを互いに異なる開口径のものを用いることにより、各開閉弁33のオン・オフを制御することにより、フィルタFに流れる流量と各バイパス流路L4に流れる流量とを所定の流量比に制御することができ、フィルタFに流れる希釈排ガスの流量に重み付けをすることができる。
【0048】
その他、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0049】
100・・・排ガス計測装置
F ・・・フィルタ
10 ・・・希釈トンネル
L3 ・・・希釈排ガス流路
L4 ・・・バイパス流路
30 ・・・分流流量制御部
31 ・・・マスフローコントローラ
32 ・・・制御部本体

図1
図2
図3
図4
図5