(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、走行フィルムに金属層を直接蒸着すると、潜熱によってフィルムが熱損傷を受け易くなる。この潜熱は、フィルムに蒸着する金属層の厚さが厚くなるほど大きくなり、この厚さが厚くなるほど、フィルムはさらに熱損傷を受け易くなる。
【0006】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、フィルムの熱損傷を抑制しつつ金属層を成膜することができる巻取式成膜装置及び巻取式成膜方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る巻取式成膜装置は、真空容器と、フィルム走行機構と、リチウム源と、第1ローラとを具備する。
上記真空容器は、減圧状態を維持することができる。
上記フィルム走行機構は、上記真空容器内でフィルムを走行させることができる。
上記リチウム源は、上記真空容器内でリチウムを蒸発させることができる。
上記第1ローラは、上記フィルムの成膜面と上記リチウム源との間に配置されている。上記第1ローラは、上記リチウム源から蒸発した上記リチウムを受容する転写パターンを有する。上記第1ローラは、上記転写パターンに対応するリチウム層のパターンを上記成膜面に回転しながら転写する。
【0008】
このような巻取式成膜装置によれば、溶融した上記リチウムが上記転写パターンを有する上記第1ローラに受容され、上記リチウム層の上記パターンが上記第1ローラから上記フィルムの上記成膜面に間接的に転写される。つまり、上記第1ローラを介した真空蒸着および塗布によって上記フィルムの上記成膜面にリチウム層がパターニングされる。これにより、上記フィルムへの熱損傷が抑制される。
【0009】
上記の巻取式成膜装置は、上記第1ローラに上記フィルムを介して対向する第2ローラをさらに具備してもよい。
このような巻取式成膜装置によれば、上記第1ローラに上記フィルムを介して上記第2ローラが接する。これにより、上記第1ローラから上記フィルムの上記成膜面により鮮明にリチウム層のパターンが転写される。
【0010】
上記の巻取式成膜装置においては、上記リチウム源は、蒸着容器と、ドクターブレードと、を有してもよい。上記蒸着容器は、上記リチウムを収容し、上記リチウムが上記第1ローラに蒸着されるように配置される。上記ドクターブレードは、上記蒸着容器から上記第1ローラに供給された上記リチウムの厚さを制御する。
このような巻取式成膜装置によれば、上記蒸着容器から上記第1ローラに供給された上記リチウムの厚さが上記ドクターブレードによって確実に制御される。
【0011】
上記の巻取式成膜装置においては、上記リチウム源は、第3ローラと、蒸着容器と、ドクターブレードと、を有してもよい。上記第3ローラは、上記第1ローラに対向する。上記蒸着容器は、上記リチウムを収容し、上記リチウムが上記第3ローラに蒸着されるように配置される。上記リチウムの溶融面は、上記第3ローラに接している。上記ドクターブレードは、上記蒸着容器から上記第3ローラに供給された上記リチウムの厚さを制御する。
このような巻取式成膜装置によれば、上記蒸着容器から上記第1ローラに供給された上記リチウムの厚さが上記ドクターブレード及び上記第3ローラによってより確実に制御される。
【0012】
上記の巻取式成膜装置においては、上記リチウム源は、第3ローラと、第4ローラと、蒸着容器と、を有してもよい。上記第3ローラは、上記第1ローラに対向する。上記第4ローラは、上記第3ローラに対向する。上記蒸着容器は、上記リチウムを収容し、上記リチウムが上記第4ローラに蒸着されるように配置される。
このような巻取式成膜装置によれば、上記蒸着容器から上記第1ローラに供給された上記リチウムの厚さが上記第3ローラ及び上記第4ローラによってより確実に制御される。また、上記第4ローラを介在させることによって、上記フィルムへの熱損傷がさらに抑制される。
【0013】
上記の巻取式成膜装置は、上記第1ローラの上流に、上記フィルムの上記成膜面のクリーニングを行う前処理機構をさらに具備してもよい。
このような巻取式成膜装置によれば、上記リチウム層の上記パターンが上記第1ローラから上記フィルムの上記成膜面に転写される前に、上記フィルムの上記成膜面がクリーニングされる。これにより、上記リチウム層と上記フィルムとの密着力が増加する。
【0014】
上記の巻取式成膜装置は、上記第1ローラの下流に、上記リチウム層の表面に保護層を形成する保護層形成機構をさらに具備してもよい。
このような巻取式成膜装置によれば、上記リチウム層の上記パターンが上記第1ローラから上記フィルムの上記成膜面に転写された後に、上記リチウム層が上記保護層により保護される。
【0015】
上記の巻取式成膜装置は、上記真空容器内において、上記保護層形成機構が隔離される隔離板をさらに具備してもよい。
このような巻取式成膜装置によれば、上記保護層形成機構が上記隔離板によって隔離され、上記リチウム層内に保護層の成分が混入しにくくなる。
【0016】
また、上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る巻取式成膜方法は、減圧状態が維持可能な真空容器内でフィルムを走行させることを含む。転写パターンが形成された第1ローラにリチウムが蒸着して供給される。上記第1ローラを回転させつつ、上記フィルムの成膜面に上記転写パターンに対応するリチウム層のパターンを接触させて、上記リチウム層のパターンが上記成膜面に転写される。
このような巻取式成膜方法によれば、蒸着した上記リチウムが上記転写パターンを有する上記第1ローラに供給され、上記リチウム層の上記パターンが上記第1ローラから上記フィルムの上記成膜面に間接的に転写される。つまり、真空蒸着および塗布によって上記フィルムの上記成膜面にリチウム層がパターニングされる。これにより、上記フィルムへの熱損傷が抑制される。
【発明の効果】
【0017】
以上述べたように、本発明によれば、フィルムの熱損傷を抑制しつつ金属層を成膜することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。各図面には、XYZ軸座標が導入される場合がある。
【0020】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態に係る巻取式成膜装置の概略構成図である。
【0021】
図1に示す巻取式成膜装置1は、フィルム60を走行させながら、フィルム60に金属層(例えば、リチウム層)を塗布することが可能な巻取式の成膜装置である。巻取式成膜装置1は、第1ローラ11Aと、リチウム源20と、フィルム走行機構30と、真空容器70とを具備する。さらに、巻取式成膜装置1は、第2ローラ12と、前処理機構40と、排気機構71と、ガス供給機構72とを具備する。
【0022】
第1ローラ11Aは、ステンレス鋼、鉄、アルミニウム等の金属を含む筒状部材である。第1ローラ11Aは、フィルム60とリチウム源20との間に配置されている。第1ローラ11Aは、フィルム60の成膜面60dに対向する。例えば、第1ローラ11Aのローラ面11rは、フィルム60の成膜面60dに接している。また、ローラ面11rには、転写パターンが形成されている。転写パターンは、例えば、土手状、山状等の凸状パターンである。これにより、第1ローラ11Aは、版胴としての凸版とも称される。
【0023】
第1ローラ11Aは、その中心軸を中心に回転することができる。例えば、巻取式成膜装置1の外部には、第1ローラ11Aを回転駆動させる回転駆動機構が設けられてもよい。あるいは、第1ローラ11A自体が回転駆動機構を有してもよい。
【0024】
例えば、フィルム60が矢印Aの方向に走行しているとき、フィルム60に対向する第1ローラ11Aは、時計回りに回転する。このとき、ローラ面11rが動く速度(接線速度)は、例えば、フィルム60の走行速度と同じ速度に設定される。これにより、ローラ面11rにリチウムのパターンが形成された場合、このリチウムのパターンは、位置ずれを起こすことなくフィルム60の成膜面60dに転写される。あるいは、このローラ面11rが動く速度は、フィルム60の走行速度と異なるように(より遅いまたは速い速度に)設定されてもよい。この速度差を利用してリチウム25の膜厚などを変更してもよい。
【0025】
また、本実施形態においては、第1ローラ11Aの内部に、温調媒体循環系等の温調機構が設けられている。この温調機構により、例えば、ローラ面11rの温度がリチウムの融点以上に設定できるように適宜調整される。
【0026】
第2ローラ(バックアップローラ)12は、ステンレス鋼、鉄、アルミニウム等の金属を含む筒状部材である。第2ローラ12は、フィルム60を介して第1ローラ11Aに対向している。第2ローラ12のローラ面12rは、フィルム60の裏面(成膜面60dとは反対側の面)に接している。ローラ面12rには、転写パターンが形成されていない。
【0027】
第2ローラ12は、その中心軸を中心に回転することができる。例えば、フィルム60に接する第2ローラ12は、フィルム60の走行によって反時計回りに回転する。または、巻取式成膜装置1の外部には、第2ローラ12を回転駆動させる回転駆動機構が設けられてもよい。あるいは、第2ローラ12自体が回転駆動機構を有してもよい。この場合、第2ローラ12は、回転駆動機構によって反時計回りに回転する。
【0028】
また、本実施形態においては、第2ローラ12の内部に、温調媒体循環系等の温調機構が設けられてもよい。この温調機構により、例えば、ローラ面12rの温度がリチウムの融点未満に設定できるように適宜調整される。
【0029】
リチウム源20は、蒸着容器21と、ドクターブレード22と、第3ローラ23とを有する。リチウム源20は、第1ローラ11Aに対向するように配置される。
【0030】
蒸着容器21には、例えば、バルク状、ワイヤ状あるいは粉体状のリチウム(Li)25が収容される。例えば、巻取式成膜装置1の動作時には、リチウム25が蒸着容器21内において抵抗加熱、誘導加熱、電子ビーム加熱等の手法によって加熱され、蒸発する。これらの手法によって蒸発量を制御し、リチウム25の膜厚が調整されてよい。
【0031】
リチウム25の加熱温度は特に限定されず、典型的には、リチウムの融点以上の温度(例えば、180℃〜800℃)に設定される。リチウムの表面に自然被膜(Li
2O等)が形成される場合は、リチウム25のみを蒸発させる(あるいは蒸留する)ことができるように、目標加熱温度が設定される。
【0032】
第3ローラ23は、筒状部材であり、いわゆるアニロックスローラである。第3ローラ23と第2ローラ12との間には、第1ローラ11Aが位置している。例えば、巻取式成膜装置1の下から上に向かって、第3ローラ23、第1ローラ11A及び第2ローラ12の順に並んでいる。第3ローラ23は、第1ローラ11Aに対向する。第3ローラ23のローラ面23rは、例えば、複数の孔を有する層(例えば、クロム(Cr)層、セラミック層等)で構成されている。
【0033】
第3ローラ23のローラ面23rは、第1ローラ11Aのローラ面11rに接している。さらに、
図1の例では、蒸着容器21は第3ローラ23の下方に配置され、蒸着物質の蒸気を、対向する第3ローラ23に付着させる。すなわち、蒸発したリチウム25がローラ面23rの一部に付着するように、蒸着容器21は配置されている。
【0034】
第3ローラ23は、その中心軸を中心に回転することができる。例えば、第1ローラ11Aに接する第3ローラ23は、第1ローラ11Aの回転によって反時計回りに回転する。または、巻取式成膜装置1の外部には、第3ローラ23を回転駆動させる回転駆動機構が設けられてもよい。あるいは、第3ローラ23自体が回転駆動機構を有してもよい。この場合、第3ローラ23は、回転駆動機構によって反時計回りに回転する。
【0035】
また、本実施形態においては、巻取式成膜装置1の外部に、第3ローラ23と蒸着容器21との相対距離を変える距離調整機構が設けられてもよい。この距離調整機構により、ローラ面23rに蒸着するリチウム25の量を変えることができる。
【0036】
第3ローラ23にリチウム25が蒸着された状態で、第3ローラ23が回転することにより、蒸着容器21内のリチウム25がローラ面23rを介して持ち上げられる。これにより、蒸着容器21から蒸着したリチウム25が第3ローラ23のローラ面23rの全域に供給される。また、巻取式成膜装置1においては、ドクターブレード22が第3ローラ23のローラ面23r近傍に配置されている。
【0037】
このドクターブレード22の配置により、ローラ面23r上のリチウム25の厚さが精度よく調整される。例えば、ローラ面23r上のリチウム25の厚さは、実質的に同じになるように調整される。これにより、第3ローラ23からリチウム25が供給される第1ローラ11Aにおいては、リチウム25の供給量が同じになる。
【0038】
そして、ローラ面23r上のリチウム25は、ローラ面23r上のリチウム25に接する第1ローラ11Aのローラ面11rに行き渡る。このように、蒸着容器21から、均一な量のリチウム25が第3ローラ23を介して第1ローラ11Aのローラ面11rに供給される。
【0039】
この場合、ドクターブレード22によってローラ面23rに供給されたリチウム25の供給量が同じになるので、第1ローラ11Aのローラ面11rに供給されるリチウム25の供給量も同じになる。これにより、ローラ面11r上のリチウム25の厚さは全周にわたって同じになる。
【0040】
また、本実施形態においては、第3ローラ23の内部に、温調媒体循環系等の温調機構が設けられている。この温調機構により、例えば、ローラ面23rの温度がリチウムの融点以上に設定できるように適宜調整される。
これにより、蒸着容器21から蒸発したリチウム25のローラ面23rへの付着、および、第3ローラ23において溶融したリチウム25の第1ローラ11Aへの供給が実現される。
【0041】
フィルム走行機構30は、巻出しローラ31、巻取りローラ32及びガイドローラ33a、33b、33c、33d、33e、33f、33gを有する。巻取式成膜装置1の外部には、巻出しローラ31及び巻取りローラ32を回転駆動させる回転駆動機構が設けられている。または、巻出しローラ31及び巻取りローラ32のそれぞれが回転駆動機構を有してもよい。
【0042】
また、本実施形態においては、ガイドローラ33a、33b、33c、33d、33e、33f、33gの内部に、温調媒体循環系等の温調機構が設けられてもよい。
【0043】
フィルム60は、第1ローラ11Aと第2ローラ12との間に挟まれるように巻取式成膜装置1内に設置される。フィルム60の成膜面60dは、第1ローラ11Aに対向する。フィルム60は、予め巻出しローラ31に巻かれ、巻出しローラ31から繰り出される。
【0044】
巻出しローラ31から繰り出されたフィルム60は、走行中にガイドローラ33a、33b、33cに支持され、ガイドローラ33a、33b、33cのそれぞれで走行方向を変えながら、第1ローラ11Aと第2ローラ12との間を移動する。
【0045】
さらに、フィルム60は、走行中にガイドローラ33d、33e、33f、33gに支持され、ガイドローラ33d、33e、33f、33gのそれぞれで走行方向を変えながら、巻取りローラ32に連続的に巻き取られる。
【0046】
フィルム60は、所定幅に裁断された長尺のフィルムである。フィルム60は、銅、アルミニウム、ニッケル、ステンレス、樹脂の少なくともいずれかを含む。樹脂は、例えば、OPP(延伸ポリプロピレン)フィルム、PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム、PPS(ポリフェニレンサルファイト)フィルム等が用いられる。
【0047】
前処理機構40は、第1ローラ11Aの上流に設けられている。前処理機構40は、フィルム60の成膜面60dのクリーニングを行う。例えば、前処理機構40は、不活性ガス(Ar、He等)、窒素(N
2)、酸素(O
2)等のプラズマを発生することができる。このプラズマがフィルム60の成膜面60dに晒されることにより、成膜面60dに付着した油膜、自然酸化膜等が除去される。これにより、成膜面60dに形成されるリチウム層の密着力が向上する。
【0048】
上記の第1ローラ11A、第2ローラ12、リチウム源20、フィルム走行機構30、前処理機構40及びフィルム60は、真空容器70内に収容されている。真空容器70は、減圧状態を維持することができる。例えば、真空容器70は、真空ポンプ等の真空排気系(不図示)に接続された排気機構71によって、その内部がリチウムの蒸着が可能な所定の真空度に維持される。これにより、リチウムの露点が−30℃未満(より好ましいのは−50℃未満)となる環境が簡便に形成され、リチウムの溶融状態を真空容器70内で安定して維持できる。さらに高い反応性を有するリチウムの反応が抑制される。
【0049】
真空容器70内を真空排気するに際しては、ガス供給機構72によって乾燥空気、不活性ガス(Ar、He等)、二酸化炭素(CO
2)、窒素等の少なくともいずれかのガスを置換用ガスとして供給してから排気を行ってもよい。これらのガスを真空容器70内に導入することにより、高い反応性を有するリチウムの反応が抑制される。
【0050】
また、本実施形態においては、リチウム以外に、インジウム(In)、亜鉛(Zn)、錫(Sn)、ガリウム(Ga)、ビスマス(Bi)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)及び融点が400°以下の合金の少なくともいずれかが蒸着容器21内に収容されてもよい。
蒸着容器21は例えば、オーステナイト系ステンレス鋼から成る。
【0051】
[巻取式成膜装置の動作]
図2は、第1実施形態に係る巻取式成膜方法を示す概略フロー図である。
第1実施形態に係る巻取式成膜方法では、例えば、減圧状態が維持可能な真空容器70内で、フィルム走行機構30によってフィルム60を走行させる(ステップS10)。
次に、第3ローラ23に、リチウム源20(蒸着容器21)から蒸発したリチウム25が付着する(ステップS20)。第3ローラ23の温調機構により、第3ローラ23に付着したリチウム25は溶融状態に維持される。
【0052】
次に、第3ローラ23上の溶融状態のリチウム25が、転写パターンが形成された第1ローラ11Aに供給される(ステップS30)。
その次に、第1ローラ11Aを回転させつつ、フィルム60の成膜面60dに転写パターンに対応するリチウム層のパターンを接触させて、転写パターンに対応するリチウム層のパターンが成膜面60dに転写される(ステップS40)。
【0053】
このような巻取式成膜方法によれば、蒸発したリチウム25が転写パターンを有する第1ローラ11Aに第3ローラ23を介して供給され、リチウム層のパターンが第1ローラ11Aからフィルム60の成膜面60dに転写される。
【0054】
つまり、リチウム25(溶融金属)は、蒸着容器21(浴槽)から第1ローラ11Aに直接蒸着せずに、一旦第3ローラ23に蒸着し、第3ローラ23の温調機構により融解状態を維持したまま被成膜面60dに塗布される。
真空蒸着および塗布によってフィルム60の成膜面60dにリチウム層がパターニングされる。これにより、フィルム60への熱損傷が抑制される。
【0055】
巻取式成膜装置1の具体的な動作について説明する。
図3は、第1実施形態に係る巻取式成膜装置の動作を示す概略構成図である。
【0056】
図3に示すように、フィルム60は、第1ローラ11Aと第2ローラ12との間において矢印Aの方向に走行する。ここで、第1ローラ11Aのローラ面11rには、凸状の転写パターン11pが形成されている。転写パターン11pの材料は、例えば、ゴム等の弾性体、有機または無機樹脂等を含む。真空容器70内は、減圧状態が維持される。真空容器70内は、排気機構71の真空排気系(真空ポンプ)の到達真空度として、例えば、1×10
−3Pa以下に設定される。真空容器70内には、乾燥空気、不活性ガス(Ar、He等)、二酸化炭素(CO
2)、窒素等の少なくともいずれかのガスが供給されてもよい。また、フィルム60の成膜面60dには、前処理機構40によって前処理(クリーニング)が施されている。
【0057】
次に、第1ローラ11Aの転写パターン11p上に、蒸着容器21から第3ローラ23に蒸着した液状のリチウム25が供給される。
【0058】
例えば、第3ローラ23のローラ面23rの一部に、蒸着容器21から蒸発したリチウム25が付着するように、蒸着容器21は第3ローラ23の下方に配置される。さらに、第3ローラ23のローラ面23rの温度は、温調機構によってリチウム融点(180℃)以上に調整されている。これにより、第3ローラ23に蒸着したリチウム25は、ローラ面23rにおいて溶融した状態で(第3ローラ23が反時計周りに回転して)、第1ローラ11Aに供給される。また、ローラ面23r上のリチウム25の厚さは、ドクターブレード22によって精度よく均一に調整される。
【0059】
次に、第1ローラ11Aは、第3ローラ23の回転とともに時計回りに回転する。さらに、第1ローラ11Aは、第3ローラ23に接している。これにより、第1ローラ11Aの転写パターン11pが溶融したリチウム25で濡れ、ローラ面11rがローラ面23rから溶融したリチウム25を受容する。つまり、転写パターン11p上に、溶融したリチウム25が形成され、転写パターン11pに対応したリチウム25のパターン25pがローラ面11rに形成される。
【0060】
ここで、第1ローラ11Aのローラ面11rの温度は、温調機構によってリチウム融点(180℃)以上に調整されている。これにより、第1ローラ11Aが回転して、ローラ面11rが第3ローラ23から離れても、リチウム25は、転写パターン11p上において溶融した状態で濡れ続ける。
【0061】
フィルム60は、第1ローラ11Aと第2ローラ12との間において第1ローラ11A及び第2ローラ12の回転とともに走行している。ここで、第1ローラ11Aは、フィルム60の成膜面60dに接している。これにより、パターン25pもフィルム60の成膜面60dに接し、パターン25pが転写パターン11pからフィルム60の成膜面60dに転写される。
【0062】
この後、成膜面60d上のリチウム25のパターン25pは、ガイドローラ33a、33b、33c、33d、33e、33f、33gの温調機構や自然冷却などによって、フィルム60の成膜面60dにリチウム層のパターン25pが形成される。成膜面60dに形成されたリチウム層の厚さは、例えば、0.5μm以上50μm以下である。なお、リチウム層のパターン25pは、フィルム60の両面に形成されてもよい。
【0063】
このように、本実施形態では、蒸着容器21から蒸発したリチウム25が、溶融状態を保持する温調機構を有する第3ローラ23のローラ面23rに付着する。その後、溶融したリチウム25が転写パターン11pを有する第1ローラ11Aに受容される。
この後、リチウム層のパターン25pが第1ローラ11Aからフィルム60の成膜面60dに転写される。
【0064】
上記のように本実施形態では、リチウム25は、第1および第3ローラ11A、23を介して、蒸着容器21から成膜面60dへ間接的に転写される。
【0065】
本実施形態では、フィルム60の成膜面60dに、リチウム25(パターン25p)が気相状態から固相状態に変化して直接的に供給されるのではなく、液相状態を経由して(気相→液相→固相状態に変化して)間接的に供給される。これにより、フィルム60がリチウムから受ける潜熱がより小さくなり、フィルム60への熱損傷が大きく抑制される。例えば、フィルム60の成膜面60dに、厚さが0.5μm以上50μm以下という比較的厚いリチウム層のパターンが形成されても、フィルム60は熱損傷を受け難くなる。
【0066】
また、本実施形態では、第1ローラ11Aに転写パターン11pが設けられ、第1ローラ11Aから直にフィルム60にリチウムのパターン25pが形成される。これにより、フィルム60にリチウムパターンを形成する専用のマスクを要しない。これにより、リチウムが付着したマスクを定期的に交換するメンテナンス作業が不要になる。さらに、フィルム60とともにマスクを巻き出したり、巻き取ったりする複雑な機構及びマスクの位置あわせを行う複雑な機構を要しない。
【0067】
また、本実施形態では、フィルム60へのリチウム層のパターニングが減圧雰囲気で行われる。これにより、リチウムの溶融状態を蒸着容器21内で安定して維持でき、さらに高い反応性を有するリチウムの反応が抑制される環境が簡便に形成される。また、フィルム60へのリチウム層のパターニングが不活性ガス雰囲気で行われた場合にも、高い反応性を有するリチウムの反応が抑制される。
【0068】
また、本実施形態では、第1ローラ11と第2ローラ12とによって、上下の方向からフィルム60が挟まれ、フィルム60が水平方向に移動しながら、転写パターン11pがフィルム60に転写される。これにより、フィルム60に転写された直後のパターン25pがフィルム60の面内方向に沿って寄りにくくなる。
【0069】
[第2実施形態]
図4は、第2実施形態に係る巻取式成膜装置の概略構成図である。
【0070】
図4に示す巻取式成膜装置2においては、リチウム源20が蒸着容器21と、第3ローラ23と、第3ローラ23に対向する第4ローラ24とを有する。
図4には、リチウム源20として、ドクターブレード22が例示されているが、ドクターブレード22は、必要に応じて略すことができる。この場合は、第3ローラ23と第4ローラ24との間の距離(押圧力)および回転速度差を利用してリチウム25の膜厚制御を行ってもよい。
【0071】
第4ローラ24は、筒状部材であり、いわゆるファウンテンローラである。第4ローラ24と第1ローラ11Aとの間には、第3ローラ23が位置している。第4ローラ24のローラ面24rは耐熱性のある公知の材料が採用され、例えば、金属で構成されている。第4ローラ24のローラ面24rは、第3ローラ23のローラ面23rに接している。
【0072】
さらに、
図4の例では、第1実施形態に係る巻取式成膜装置の第3ローラと同様に、第4ローラ24のローラ面24rの一部に、蒸着容器21から蒸発したリチウム25が付着するように、蒸着容器21は第4ローラ24の下方に配置される。
【0073】
第4ローラ24は、その中心軸を中心に回転することができる。例えば、第3ローラ23に接する第4ローラ24は、第3ローラ23の回転により時計回りに回転する。または、巻取式成膜装置2の外部には、第4ローラ24を回転駆動させる回転駆動機構が設けられてもよい。あるいは、第4ローラ24自体が回転駆動機構を有してもよい。この場合、第4ローラ24は、回転駆動機構によって時計回りに回転する。
【0074】
また、本実施形態においては、巻取式成膜装置2の外部に、第4ローラ24と蒸着容器21との相対距離を変える距離調整機構が設けられてもよい。この距離調整機構により、第4ローラ24のローラ面24rに付着するリチウム25の量を変えることができる。
【0075】
第4ローラ24にリチウム25が蒸着された状態で、第4ローラ24が回転することにより、蒸着容器21内のリチウム25がローラ面24rを介して持ち上げられる。これにより、蒸着容器21から蒸着したリチウム25が第4ローラ24のローラ面24rの全域に供給される。さらに、ローラ面24r上のリチウム25は、ローラ面24r上のリチウム25に接する第3ローラ23のローラ面23rに行き渡る。
【0076】
さらに、ローラ面23r上のリチウム25は、ローラ面23r上のリチウム25に接する第1ローラ11Aのローラ面11rに行き渡る。すなわち、蒸着容器21から蒸発したリチウム25が、第4ローラ24及び第3ローラ23を介して第1ローラ11Aのローラ面11rに供給される。
【0077】
ここで、ローラ面24rが動く速度は、第3ローラ23のローラ面23rが動く速度と異なる速度に設定されてもよく、同じ速度に設定されてもよい。このような速度制御により、ローラ面23r上のリチウム25の厚さが精度よく調整される、例えば、ローラ面23r上のリチウム25の厚さが、実質的に同じ(均一)になるように調整される。なお、第4ローラ24の回転方向は、時計周りに限らず、反時計回りであってもよい。
【0078】
また、本実施形態においては、第4ローラ24の内部に、温調媒体循環系等の温調機構が設けられている。この温調機構により、例えば、ローラ面24rの温度がリチウムの融点以上に設定できるように適宜調整される。また、ドクターブレード22が第3ローラ23のローラ面23r近傍に配置された場合、ドクターブレード22の配置によってローラ面23r上のリチウム25の厚さがさらに精度よく調整される。
【0079】
巻取式成膜装置2においても、巻取式成膜装置1と同じ作用効果を奏する。特に本実施形態によれば、リチウム25が経由するローラ(第4ローラ24)が1つ追加されているため、熱損傷をより確実に防止することができる。
【0080】
[第3実施形態]
図5は、第3実施形態に係る巻取式成膜装置の概略構成図である。
【0081】
図5に示す巻取式成膜装置3は、第1ローラ11Bと、リチウム源20と、フィルム走行機構30と、真空容器70とを具備する。さらに、巻取式成膜装置3は、第2ローラ12と、前処理機構40と、保護層形成機構50と、排気機構71と、ガス供給機構72とを具備する。
【0082】
第1ローラ11Bは、ステンレス鋼、鉄、アルミニウム等の金属を含む筒状部材である。第1ローラ11Bは、フィルム60とリチウム源20との間に配置されている。第1ローラ11Bのローラ面11rは、フィルム60の成膜面60dに対向している。例えば、ローラ面11rは、フィルム60の成膜面60dに接している。
【0083】
さらに、
図5の例では、蒸着容器21は第1ローラ11Bの下方に配置され、蒸着物質の蒸気を、対向する第1ローラ11Bに付着させる。すなわち、蒸発したリチウム25が第1ローラ11Bのローラ面11rの一部に付着するように、蒸着容器21は配置されている。
【0084】
ローラ面11rには、転写パターンが形成されている。転写パターンは、例えば、溝状、孔状等の凹状パターンである。これにより、第1ローラ11Bは、版胴としての凹版とも称される。
【0085】
第1ローラ11Bは、その中心軸を中心に回転することができる。例えば、巻取式成膜装置3の外部には、第1ローラ11Bを回転駆動させる回転駆動機構が設けられている。または、第1ローラ11B自体が回転駆動機構を有してもよい。例えば、フィルム60が矢印Aの方向に走行しているとき、フィルム60に対向する第1ローラ11Bは、時計回りに回転する。このとき、ローラ面11rが動く速度は、例えば、フィルム60の走行速度と同じ速度に設定される。これにより、ローラ面11rにリチウムのパターンが形成された場合、このリチウムのパターンは、位置ずれを起こすことなくフィルム60の成膜面60dに転写される。
【0086】
また、本実施形態においては、巻取式成膜装置3の外部に、第1ローラ11Bと蒸着容器21との相対距離を変える距離調整機構が設けられてもよい。また、本実施形態においては、第1ローラ11Bの内部に、温調媒体循環系等の温調機構が設けられている。この温調機構により、ローラ面11rの温度が適宜調整される。
【0087】
第1ローラ11Bにリチウム25が蒸着された状態で、第1ローラ11Bが回転することにより、蒸着容器21内のリチウム25がローラ面11rを介して持ち上げられる。これにより、蒸着容器21から蒸発したリチウム25が第1ローラ11Bのローラ面11rの全域に供給される。
【0088】
また、巻取式成膜装置3においては、ドクターブレード22が第1ローラ11Bのローラ面11r近傍に配置されている。このドクターブレード22の配置により、転写パターン内のリチウム25の厚さが精度よく調整される。例えば、転写パターン内のリチウム25の厚さは、実質的に同じ(均一)になるように調整される。
【0089】
図6は、第3実施形態に係る巻取式成膜装置の動作を示す概略構成図である。
【0090】
図6に示すように、第1ローラ11Bのローラ面11rには、凹状の転写パターン11pが形成されている。また、フィルム60の成膜面60dには、前処理機構40によって前処理が施されている。
【0091】
次に、第1ローラ11Bの転写パターン11pに、リチウム源20から蒸発したリチウム25が供給される。例えば、第1ローラ11Bのローラ面11rの一部に、蒸着容器21から蒸発したリチウム25が付着するように、蒸着容器21は第1ローラ11Bの下方に配置される。さらに、第1ローラ11Bのローラ面11rの温度は、温調機構によってリチウム融点以上に調整されている。
【0092】
これにより、第1ローラ11Bに蒸着したリチウム25は、ローラ面11rにおいて溶融した状態で濡れ続ける。また、ローラ面11r上のリチウム25の厚さは、ドクターブレード22によって精度よく調整される。
【0093】
フィルム60は、第1ローラ11Bと第2ローラ12との間において第1ローラ11B及び第2ローラ12の回転とともに走行している。ここで、第1ローラ11Bは、フィルム60の成膜面60dに接している。これにより、パターン25pもフィルム60の成膜面60dに接し、パターン25pが転写パターン11pからフィルム60の成膜面60dに転写される。
【0094】
この後、成膜面60d上のリチウム25のパターン25pは、自然冷却して、フィルム60の成膜面60dにリチウム層のパターン25pが形成される。さらにこの後、成膜面60dには、リチウム層のパターン25pを覆う保護層が保護層形成機構50によって形成される。
【0095】
巻取式成膜装置3においても、巻取式成膜装置1と同じ作用効果を奏する。さらに、巻取式成膜装置3においては、第1ローラ11Bに形成された転写パターン11pが凹状パターンであるため、溶融したリチウム25が凹状パターン内に効率よく収まる。これにより、フィルム60の成膜面60dに形成されるリチウム層のパターン25pがより鮮明になる。
【0096】
[第4実施形態]
図7は、第4実施形態に係る巻取式成膜装置の一部の概略構成図である。
図7には、巻取りローラ32の周辺が示されている。
【0097】
図7に示す巻取式成膜装置4は、リチウム層のパターン25pが形成されたフィルム60の成膜面60dに保護層または保護フィルムを形成する保護層形成機構50をさらに具備する。保護層形成機構50は、上述した巻取式成膜装置1〜3のいずれにも、複合させることができる。保護層は、例えば、シリコン酸化物(SiO
x)、シリコン窒化物(SiN
x)、アルミナ酸化物(AlO
x)等の少なくともいずれかを含む。
【0098】
保護層形成機構50は、第1ローラ11Aの下流に設けられている。保護層形成機構50は、第1ローラ11Aによってフィルム60にリチウム層が形成された後、リチウム層の表面に保護層または保護フィルムを形成することができる。
【0099】
保護層形成機構50は、保護層形成部51Aと、保護層形成部51Bと、保護フィルム形成部52と、ガス供給機構57と、隔離板58とを有する。保護フィルム形成部52は、巻出しローラ53と、保護フィルム54と、ガイドローラ55、56とを有する。保護層形成部51A、保護層形成部51B及び保護フィルム形成部52のそれぞれは、独立して駆動させることができ、保護層形成部51A、保護層形成部51B及び保護フィルム形成部52の少なくとも1つを駆動させることができる。
【0100】
また、隔離板58は、保護層形成機構50を真空容器70内で隔離する。
図7の例では、隔離板58は、保護層形成部51Aと、保護層形成部51Bと、保護フィルム形成部52と、ガス供給機構57とを隔離する。これにより、保護層形成機構50が隔離板58によって隔離され、リチウム層内に保護層の成分が混入しにくくなる。
【0101】
保護層形成部51Aは、例えば、スパッタリング法、CVD(Chemical Vapor Deposition)法、蒸着法等の成膜方法によって、フィルム60の成膜面60dに保護層を形成することができる。また、保護層形成部51Aに設けられた成膜源からフィルム60の成膜面60dにシリコン、アルミニウム等の元素を入射させつつ、隔離板58で隔離された空間70sにガス供給機構57から酸素、窒素、水、一酸化炭素、二酸化炭素等のガスを導入して、反応生成物(保護層)を成膜面60dに形成してもよい。
【0102】
保護層形成部51Bは、例えば、プラズマ処理または加熱処理によってフィルム60の成膜面60dに保護層を形成することができる。例えば、隔離板58で隔離された空間70sにガス供給機構57から酸素、窒素、水、一酸化炭素、二酸化炭素等のガスを導入して、これらのガスの少なくとも1つをリチウム層の表面と反応させて、リチウム層の表面に保護層が形成されてもよい。また、これらのガスの反応性を高めるために、これらのガスは、巻取成膜装置4に付設されたプラズマ発生手段(不図示)によってプラズマガスとしてもよい。保護層形成部51Bによれば、リチウム層の表面に、例えば、酸化リチウム(Li
2O)、窒化リチウム(Li
3N)、炭酸リチウム(LiCO
x)等が形成される。
【0103】
なお、巻取成膜装置4は、空間70s内のガスが空間70s外に漏れないように、空間70sを排気する排気機構を備えてもよい。この場合、空間70s内の圧力は、空間70s外の圧力よりも低くなるように調整される。これにより、例えば、蒸着容器21に収容された溶融リチウムの酸化等が抑制される。
【0104】
また、保護フィルム形成部52は、フィルム60の成膜面60dに保護フィルム54を貼り合わせることができる。例えば、保護フィルム54は、フィルム60の成膜面60dに対向するように配置されている。さらに、保護フィルム54は、ガイドローラ33gとガイドローラ56との間に挟まれるように設置される。
【0105】
保護フィルム54は、巻出しローラ53に予め巻かれ、巻出しローラ53から繰り出される。巻出しローラ53から繰り出された保護フィルム54は、ガイドローラ55に支持されながら、ガイドローラ33gとガイドローラ56との間に移動する。そして、保護フィルム54がフィルム60の成膜面60dを被覆した後、保護フィルム54は、フィルム60とともに、巻取りローラ32に連続的に巻き取られる。
【0106】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、リチウム源20は、巻取式成膜装置1〜3において、蒸着容器21から蒸発したリチウム25がノズル、シャワー等を介して第1ローラ11B、第3ローラ23または第4ローラ24に供給される機構でもよい。
【0107】
フィルム60と蒸着容器21との間に介在させるローラの個数はこれら(1〜3)に限定されず、用途に応じて4個以上介在させてもよい。また、前処理機構40および保護層形成機構50は、どちらか一方または両方が選択されてもよい。
【0108】
また、リチウム25の加熱温度によって蒸着レート(蒸気量)を制御することができるため、ドクターブレード22は省略されてもよい。
【0109】
さらに、例えば第1の実施形態において、第3ローラ23に蒸着したリチウム25を、そのローラ面23rにおいて溶融した状態で、第1ローラ11Aに供給されるように構成されたが、これに代えて、第3ローラの表面に固相のリチウム膜を形成した後、当該リチウム膜を第1ローラの表面を介してフィルムの成膜面に転写するようにしてもよい。この場合、第3ローラの表面は第1ローラの表面よりもリチウム膜との密着性を低くし、第1ローラの表面はフィルム成膜面よりもリチウム膜との密着性を低くする等の手法が採用可能である。この場合、第1ローラ及び第3ローラの表面温度は、温調機構により、リチウムの融点よりも低い温度に設定される。
巻取式成膜装置は、真空容器と、フィルム走行機構と、リチウム源と、第1ローラとを具備する。上記真空容器は、減圧状態を維持することができる。上記フィルム走行機構は、上記真空容器内でフィルムを走行させることができる。上記リチウム源は、上記真空容器内でリチウムを蒸発させることができる。上記第1ローラは、上記フィルムの成膜面と上記リチウム源との間に配置されている。上記第1ローラは、上記リチウム源から蒸発した上記リチウムを受容する転写パターンを有する。上記第1ローラは、上記転写パターンに対応するリチウム層のパターンを上記成膜面に回転しながら転写する。