特許第6646890号(P6646890)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6646890目地形成処理用剤、目地施工方法、及び、コンクリート組成物の切断方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6646890
(24)【登録日】2020年1月16日
(45)【発行日】2020年2月14日
(54)【発明の名称】目地形成処理用剤、目地施工方法、及び、コンクリート組成物の切断方法
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/62 20060101AFI20200203BHJP
   E01C 11/06 20060101ALI20200203BHJP
   E01C 23/09 20060101ALI20200203BHJP
【FI】
   E04B1/62 C
   E01C11/06
   E01C23/09 Z
   E04B1/62 Z
【請求項の数】9
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-10856(P2016-10856)
(22)【出願日】2016年1月22日
(65)【公開番号】特開2017-128984(P2017-128984A)
(43)【公開日】2017年7月27日
【審査請求日】2018年8月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183266
【氏名又は名称】住友大阪セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074332
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100114432
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 寛昭
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 徹
(72)【発明者】
【氏名】山田 ひとみ
【審査官】 須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】 特公昭49−011174(JP,B1)
【文献】 特開平07−091061(JP,A)
【文献】 米国特許第06646662(US,B1)
【文献】 高性能仕上補助・初期塗膜養生剤「キュアキーパー」,NETIS新技術情報提供システム,日本,2011年 9月14日,検索日:2019年5月31日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/62
E01C 1/00−17/00
E01C 21/00−23/24
E04F 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水、セメント及び骨材を有するコンクリート組成物の表面に、目地形成処理用剤を塗布して固化させ、
該目地形成処理用剤が固化した後、前記コンクリート組成物に対して目地形成処理を施し、
該目地形成処理を施した後、前記目地形成処理用剤を前記表面から剥離する、目地施工方法であって
前記目地形成処理用剤が、加熱されると溶融し、冷却されると固化する材料を含有しており、
加熱されて溶融された状態で前記コンクリート組成物の表面に塗布されて固化されることが可能に、該固化された状態で前記目地形成処理が施されることが可能に、且つ、前記目地形成処理が施された後、前記表面から剥離されることが可能に構成されている、
目地施工方法。
【請求項2】
前記材料は、パラフィン系材料である、請求項1に記載の目地施工方法
【請求項3】
前記目地形成処理では、前記固化した目地形成処理用剤と共に前記コンクリート組成物を切断することによって溝部を形成し、
前記形成された溝部に目地注入材を注入し、
前記剥離では、前記目地注入材を注入した後、残存している前記固化した目地形成処理用剤を剥離する、請求項1または2に記載の目地施工方法。
【請求項4】
さらに、前記剥離した目地形成処理用剤を加熱して溶融し、分取することによって、前記目地形成処理用剤を再利用する、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の目地施工方法。
【請求項5】
水、セメント及び骨材を有するコンクリート組成物を打設し、
該コンクリート組成物の表面に、目地形成処理用剤を塗布して固化させ、固化された前記目地形成処理用剤と共に前記コンクリート組成物を切断する、コンクリート組成物の切断方法であって、
前記目地形成処理用剤が、加熱されると溶融し、冷却されると固化する材料を含有しており、
加熱されて溶融された状態で前記コンクリート組成物の表面に塗布されて固化されることが可能に、該固化された状態で前記目地形成処理が施されることが可能に、且つ、前記目地形成処理が施された後、前記表面から剥離されることが可能に構成されている、
コンクリート組成物の切断方法。
【請求項6】
前記材料は、パラフィン系材料である、請求項5に記載のコンクリート組成物の切断方法
【請求項7】
前記打設されたコンクリート組成物の圧縮強度が18.0N/mmに達する前に、該コンクリート組成物の表面に前記目地形成処理用剤を塗布して固化させ、固化された前記目地形成処理用剤と共に前記コンクリート組成物を切断する、請求項5または6に記載のコンクリート組成物の切断方法。
【請求項8】
前記切断を実行した後、前記目地形成処理用剤を前記表面から剥離する、請求項5乃至7のいずれか1項に記載のコンクリート組成物の切断方法。
【請求項9】
さらに、前記剥離した目地形成処理用剤を加熱して溶融し、分取することによって、前記目地形成処理用剤を再利用する、請求項8に記載のコンクリート組成物の切断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、目地形成処理用剤、目地施工方法、及び、コンクリートの切断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばコンクリート舗装等において、コンクリート組成物に対する目地施工が行われている。
【0003】
この種の目地施工においては、例えば押え板でコンクリート硬化体の表面を押さえながら該硬化体を切断して溝部(目地部)を形成し、形成された溝部に瀝青材等の目地注入材を注入することによって目地形成処理が行われている(特許文献1参照)。
また、目地形成処理では、例えば、目地注入材を注入する際、該目地注入材がコンクリート組成物の表面を汚すおそれがあるため、マスキングテープを貼り付けることによって該表面を覆って保護(マスキング)し、この状態で目地注入材を注入することが行われている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−097228号公報
【特許文献2】特開2000−320113号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献1のように切断の際に押え板を用いる場合には、押え板を作業員が固定したり、接着剤等によって固定したり必要があるため、その分、作業性が低下することになる。
また、上記特許文献2のようにマスキングテープを貼り付けることによってコンクリート組成物の表面を保護する場合には、マスキングテープの貼り付けを慎重に行う必要があるため、その分、作業性が低下することになる。
【0006】
上記事情に鑑み、本発明は、目地形成処理の作業性を向上させ得る目地形成処理用剤、該目地形成処理用剤を用いた目地施工方法、及び、該目地形成処理用剤を用いたコンクリート組成物の切断方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決すべく本発明者らは、以下のように鋭意研究を行った。
すなわち、上記の通り、マスキングテープを貼り付ける場合には、マスキングテープの慎重な位置合わせが必要となるため、その分、作業性が低下する。
そこで、マスキングテープを用いた場合よりも作業性を向上させるべく鋭意研究を行ったところ、加熱されると溶融し、冷却されると固化される材料を用い、該材料をコンクリート組成物の表面に塗布することによって、該材料が冷却されると固化し、この固化物によってマスキングが可能となることを見出した。
そして、この材料を用いてマスキングを行うことによって、マスキングテープの場合のような慎重な位置合わせが不要となり、作業性を向上させ得ることを見出して、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明に係る目地形成処理用剤は、
水、セメント及び骨材を有するコンクリート組成物の表面に、目地形成処理のために塗布される目地形成処理用剤であって、
加熱されると溶融し、冷却されると固化する材料を含有しており、
加熱されて溶融された状態で前記コンクリート組成物の表面に塗布されて固化されることが可能に、該固化された状態で前記目地形成処理が施されることが可能に、且つ、前記目地形成処理が施された後、前記表面から剥離されることが可能に構成されている。
【0009】
かかる構成によれば、加熱されて溶融された状態の目地形成処理用剤をコンクリート組成物の表面に塗布することによってマスキングを施すことが可能となる。
よって、マスキングテープを貼り付ける場合のような慎重な位置合わせが、不要となる。
従って、目地処理の作業性を向上させ得る。
【0010】
上記構成の目地形成処理用剤においては、
前記材料は、パラフィン系材料であることが好ましい。
【0011】
かかる構成によれば、上記材料がパラフィン系材料であることによって、比較的低温で溶融させ得るため、より作業性を向上させ得る。
【0012】
本発明の目地施工方法は、
水、セメント及び骨材を有するコンクリート組成物の表面に、前記目地形成処理用剤を塗布して固化させ、
該目地形成処理用剤が固化した後、前記コンクリート組成物に対して目地形成処理を施し、
該目地形成処理を施した後、前記目地形成処理用剤を前記表面から剥離する。
【0013】
かかる構成によれば、上記目地形成処理用剤によってマスキングを施しつつ、目地形成処理を施すことが可能となるため、上記の通り、マスキングテープでマスキングを施す場合と比較して、作業性に優れる。また、目地形成処理用剤は固化しているため、剥離し易くなる。
従って、作業性に優れる。
【0014】
上記構成の目地施工方法においては、
前記目地形成処理では、前記固化した目地形成処理用剤と共に前記コンクリート組成物を切断することによって溝部を形成し、
前記形成された溝部に目地注入材を注入し、
前記剥離では、前記目地注入材を注入した後、残存している前記固化した目地形成処理用剤を剥離することが好ましい。
【0015】
かかる構成によれば、目地形成処理用剤は固化による自己接着性を有するため、固化した目地形成処理用剤と共にコンクトート組成物を切断することによって、押え板といった別部材を作業員が固定したり接着剤等で固定したりしながら切断しなくてもコンクリート組成物の切断が可能となる。よって、上記押え板を固定するのに必要な手間が省けるため、その分、作業性に優れる。
さらに、切断後においては、目地形成処理用剤がそのままマスキング部としての機能を発揮し得るため、別途マスキングテープを貼り付けるような手間も省ける。よって、その分、作業性に優れる。
従って、より作業性に優れる。
【0016】
上記構成の目地施工方法においては、
さらに、前記剥離した目地形成処理用剤を加熱して溶融し、分取することによって、前記目地形成処理用剤を再利用することが好ましい。
【0017】
かかる構成によれば、剥離した目地形成処理用剤を加熱し、分取するだけで再利用可能となるため、一層作業性に優れる。
【0018】
本発明のコンクリート組成物の切断方法は、
水、セメント及び骨材を有するコンクリート組成物を打設し、
該コンクリート組成物の表面に、前記目地形成処理用剤を塗布して固化させ、固化された前記目地形成処理用剤と共に前記コンクリート組成物を切断する。
【0019】
かかる構成によれば、固化された目地形成処理用剤と共にコンクリートを切断することによって、上記の通り、押え板が不要となるため、その分、作業性に優れる。
従って、より作業性に優れる。
【0020】
上記構成のコンクリート組成物の切断方法においては、
前記打設されたコンクリート組成物の圧縮強度が18.0N/mmに達する前に、該コンクリート組成物の表面に前記目地形成処理用剤を塗布して固化させ、固化された前記目地形成処理用剤と共に前記コンクリート組成物を切断することが好ましい。
【0021】
ここで、上記圧縮強度は、低強度シュミットハンマーで測定した圧縮強度の値である。
【0022】
ここで、打設されたコンクリート組成物が、その圧縮強度が18.0N/mm未満といった十分に硬化していない状態で、その表面に何ら処理を施さずにコンクリート組成物を切断すると、切断面の先端部(外側の端部)が欠けてしまう角欠けが発生するおそれがある。
また、このように十分に硬化していない状態では、マスキングテープを貼り付け、該マスキングテープと共にコンクリート組成物を切断しても、角欠けが発生するおそれがある。
しかし、上記構成によれば、打設されたコンクリート組成物が、その圧縮強度が18.0N/mm未満といった十分に硬化していない状態であっても、目地形成処理用剤と共に切断することによって、角欠けの発生を抑制することが可能となる。
従って、コンクリート組成物の打設後、比較的早期に良好な切断を、上記のように優れた作業性で行うことが可能となる。
【0023】
上記構成のコンクリート組成物の切断方法においては、
前記切断を実行した後、前記目地形成処理用剤を前記表面から剥離することが好ましい。
【0024】
かかる構成によれば、上記の通り、目地形成処理用剤は固化しているため、剥離し易くなる。よって、より作業性に優れる。
【0025】
上記構成のコンクリート組成物の切断方法においては、
さらに、前記剥離した目地形成処理用剤を加熱して溶融し、分取することによって、前記目地形成処理用剤を再利用することが好ましい。
【0026】
かかる構成によれば、剥離した目地形成処理用剤を加熱し、分取するだけで再利用可能となるため、一層作業性に優れる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、目地処理の作業性を向上させ得る目地形成処理用剤、該目地形成処理用剤を用いた目地施工方法、及び、該目地形成処理用剤を用いたコンクリート組成物の切断方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】実験例1の切断状態を示す写真
図2】実験例2の切断状態を示す写真
図3】実験例3の切断状態を示す写真
図4】実験例4の切断状態を示す写真
図5】実験例2の切断、目地注入材の注入、剥離後の各状態を示す写真
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明に係る目地形成処理用剤、目地施工方法、及び、コンクリートの切断方法の実施形態について説明する。
【0030】
まず、本実施形態の目地処理形成用剤について説明する。
【0031】
本実施形態の目地形成処理用剤は、
水、セメント及び骨材を有するコンクリート組成物の表面に、目地形成処理のために塗布される目地形成処理用剤であって、
加熱されると溶融し、冷却されると固化する材料を含有しており、
加熱されて溶融された状態で前記コンクリート組成物の表面に塗布されて固化されることが可能に、該固化された状態で前記目地形成処理が施されることが可能に、且つ、前記目地形成処理が施された後、前記表面から剥離されることが可能に構成されている。
【0032】
前記コンクリート組成物は、水、セメント及び骨材を有する。
【0033】
前記セメントとしては、従来公知のセメントが挙げられる。かかるセメントとしては、例えば、JIS R 5210に記載のポルトランドセメントが挙げられる。また、セメントの種類は、適宜選択すればよく、特に限定されるものではない。例えば早期の強度を確保する点を考慮すれば、前記セメントは、早強ポルトランドセメントが好ましい。
【0034】
前記骨材としては、従来公知のコンクリート材料と共に使用される粗骨材、細骨材が挙げられる。これらは、いずれか使用されても、併用されてもよい。
【0035】
前記細骨材は、JIS A 0203:2014に規定の、10mm網ふるいを全部通過し、5mm網ふるいを質量で85質量%以上通過する骨材である。
【0036】
前記粗骨材としては、従来公知の、コンクリートに使用される粗骨材が挙げられる。かかる粗骨材としては、例えば、道路用砕石の7号〜3号砕石が挙げられ、その粒径は、5mm〜40mmであることが好ましい。
【0037】
前記細骨材としては、従来公知の、コンクリートに使用される細骨材が挙げられる。かかる細骨材としては、例えば、JIS A5005(2009)コンクリート用砕石及び砕砂、JISA5308(2009)の附属書Aレディーミクストコンクリート用骨材に記載される細骨材が挙げられ、その粗粒率は、1.70〜2.80であることが好ましく、より好ましくは1.70〜2.00である。
【0038】
前記コンクリート組成物は、上記水、セメント、及び骨材の他に、従来公知の、コンクリートに使用される添加剤を有していてもよい。
【0039】
前記コンクリート組成物は、上記水と、セメントと、骨材と、必要に応じて添加した添加剤とを混合し、得られた混合物を打設することによって、作製され得る。
【0040】
前記目地形成処理用剤は、前記コンクリート組成物の表面に、目地形成処理のために塗布されるものである。
【0041】
前記目地形成処理用剤は、加熱されると溶融し、冷却されると固化する材料(以下、加熱溶融冷却固化材料という場合がある。)を含有しており、加熱されて溶融された状態で前記コンクリート組成物の表面に塗布されて固化されることが可能に、該固化された状態で前記目地形成処理が施されることが可能に、且つ、前記目地形成処理が施された後、前記表面から剥離されることが可能に構成されている。
【0042】
かかる加熱溶融冷却固化材料としては、例えば、パラフィン系材料等が挙げられる。
これらのうち、パラフィンを主成分として含有する(パラフィンを最も多く含有する)パラフィン系材料が好ましい。かかるパラフィン系材料の融点は、概ね17〜143℃である。
上記加熱溶融冷却固化材料がパラフィン系材料であることによって、比較的低温で溶融させ得るものとなるため、目地形成処理用剤が、より作業性に優れるものとなる。
【0043】
本実施形態の目地形成処理用剤が適用される目地形成処理としては、コンクリート組成物を切断して溝部(目地)を形成する処理、及び、形成された溝部に目地注入材を注入する処理の少なくとも一方を含む処理が挙げられる。
【0044】
本実施形態の目地形成処理用剤によれば、加熱されて溶融された状態の目地形成処理用剤をコンクリート組成物の表面に塗布することによってマスキングを施すことが可能となる。
よって、マスキングテープを貼り付ける場合のような慎重な位置合わせが、不要となる。
例えば、予め溝部が形成されているコンクリート組成物の表面に目地形成処理用剤が適用される場合には、溝部に沿って目地形成処理用剤を塗布するだけで、マスキングを施すことが可能になる。
一方、溝部が形成されていないコンクリート組成物の表面に目地形成処理用剤が適用される場合には、コンクリート組成物の表面に目地形成処理用剤を塗布し、該目地処理形成用剤と共にコンクリート組成物を切断して溝部を形成するだけで、溝部に沿ってマスキングを施すことが可能になる。また、この場合において、後述するように、十分に硬化する前のコンクリート組成物の表面に塗布しても、切断による角欠けの発生を抑制し得る。
このように、目地処理の作業性を向上させ得る。
【0045】
次に、本実施形態の目地形成処理用剤を用いた目地施工方法について、説明する。
【0046】
本実施形態の目地施工方法は、
上記した水、セメント及び骨材を有するコンクリート組成物の表面に、前記目地形成処理用剤を塗布して固化させる工程(塗布工程)と、
該目地形成処理用剤が固化した後、前記コンクリート組成物に対して目地形成処理を施す工程(目地形成処理工程)と、
該目地形成処理を施した後、前記目地形成処理用剤を前記表面から剥離する工程(剥離工程)とを備えている。
【0047】
本実施形態の目地施工方法によれば、目地形成処理用剤によってマスキングを施しつつ、目地形成処理を施すことが可能となるため、上記の通り、マスキングテープでマスキングを施す場合と比較して、作業性に優れる。また、目地形成処理用剤は固化しているため、剥離し易くなる。
従って、作業性に優れる。
【0048】
本実施形態の目地施工方法においては、予め溝部が形成されたコンクリート組成物に塗布工程及び目地形成処理工程を実施する第1の態様を採用しても、溝部が形成されていないコンクート組成物に塗布工程及び目地形成処理工程を実施する第2の態様を採用してもよい。
【0049】
以下、第1及び第2の態様の塗布工程及び目地処理工程について説明する。
【0050】
第1の態様では、溝部が形成されたコンクリート組成物に塗布工程と目地形成処理工程とを施す。
【0051】
本態様の塗布工程では、上記した水、セメント及び骨材を有するコンクリート組成物の表面に、目地形成処理用剤を塗布して固化させる。この際、溝部に沿ってコンクリート組成物の表面に目地形成処理用剤を塗布して固化させる。
具体的には、上記目地形成処理用剤を、上記加熱溶融冷却固化材料の融点以上の温度に加熱することによって、上記加熱溶融冷却固化材料を溶融し、溶融した上記加熱溶融冷却固化材料を、溝部に沿ってコンクリート組成物の表面に塗布する。次いで、コンクリート組成物の表面に塗布された上記加熱溶融冷却固化材料を、放冷により、または、従来公知の冷却装置によって冷却させることにより、固化させる。
このようにして、溝部に沿ってマスキングを施す。
【0052】
目地形成処理工程では、上記塗布工程において、上記目地形成処理用剤が固化した後、上記コンクリート組成物に対して目地形成処理を施す。
本態様の目地形成処理工程では、溝部に目地注入材を注入する工程(注入工程)を実施する。
【0053】
本態様の注入工程では、上記溝部に沿って固化した目地形成処理剤がコンクリート組成物の表面に配されている(マスキングが施されている)状態で、該溝部に目地注入材を注入する。
【0054】
目地注入材としては、従来公知の目地注入材が挙げられ、例えば、アスファルト系加熱注入材、ポリサルファイド系注入材、ウレタン系注入材等が挙げられる。
【0055】
なお、本態様においては、既設の溝部を有するコンクリート組成物に対して塗布工程及び目地形成処理工程を実施してもよい。
また、本態様は、既設のコンクリート組成物を切断して溝部を形成する工程(切断工程)をさらに備え、このように溝部が形成されたコンクリート組成物に対して塗布工程及び目地形成処理工程を実施してもよい。
さらに、本態様は、コンクリート組成物を打設する工程(打設工程)と、打設されたコンクリート組成物を切断して溝部を形成する工程(切断工程)とをさらに備え、このように溝部が形成されたコンクリート組成物に対して塗布工程及び目地形成処理工程を実施してもよい。
【0056】
第2の態様では、溝部が形成されていないコンクート組成物に対して塗布工程と目地処理工程とを実施する。
【0057】
本態様の塗布工程では、上記した水、セメント及び骨材を有するコンクリート組成物の表面に、前記目地形成処理用剤を塗布して固化させる。この際、コンクリート組成物における切断によって溝部が形成される部分及びその両側の部分に目地形成処理を塗布して固化させる。また、溝部の両側においてコンクリート組成物の表面に塗布される目地形成処理用剤の範囲は、溝部が形成された後、残存している目地形成処理用剤がマスキング部としての機能を発揮し得るような範囲であればよく、特に限定されるものではない。
具体的には、本態様の塗布工程では、上記目地形成処理用剤を、上記加熱溶融冷却固化材料の融点以上の温度に加熱することによって溶融し、溶融した目地形成処理用剤を、コンクリート組成物の表面に溝部とマスキング部とが含まれるように塗布する。次いで、塗布された目地形成処理用剤を、放冷により、または、従来公知の冷却装置によって冷却させることにより、固化させる。
【0058】
本態様の目地形成処理工程では、上記塗布工程で上記目地形成処理用剤が塗布されたコンクリート組成物に対して目地形成処理を実施する。
具体的には、本態様の目地形成処理工程では、目地形成処理用剤が塗布されたコンクリート組成物を、目地形成処理用剤と共に切断して溝部を形成する工程(切断工程)と、溝部に沿って固化した目地形成処理剤がコンクリート組成物の表面に配されている(マスキングが施されている)状態で、該溝部に目地注入材を注入する工程(注入工程)とを実施する。
【0059】
上記の通り、目地形成処理用剤は固化による自己接着性を有するため、本態様の目地形成処理工程にて、固化した目地形成処理用剤と共にコンクトート組成物を切断することによって、押え板といった別部材を作業員が固定したり接着剤等で固定したりしながら切断しなくてもコンクリート組成物の切断が可能となる。よって、上記押え板を固定するのに必要な手間が省けるため、その分、作業性に優れる。
さらに、切断後においては、目地形成処理用剤がそのままマスキング部としての機能を発揮し得るため、別途マスキングテープを貼り付けるような手間も省ける。よって、その分、作業性に優れる。
従って、より作業性に優れる。
【0060】
本態様の切断工程では、塗布工程にて目地形成処理用剤が塗布されたコンクリート組成物を、目地形成処理用剤と共に切断して溝部を形成する。
また、溝部を形成することによって、コンクリート組成物の表面に溝部に沿って目地形成処理用剤が残存し、残存した目地形成処理用剤がマスキング部としての機能を発揮し得る。
【0061】
上記切断は、例えば、ハンドカッターといった回転刃を有する切断装置等の従来公知の切断装置を用いて行い得る。
【0062】
本態様では、既設のコンクリート組成物に対して塗布工程及び目地形成処理を実施してもよい。
【0063】
一方、本態様では、コンクリート組成物を打設する工程(打設工程)と、打設されたコンクリート組成物を切断して溝部を形成する工程(切断工程)とをさらに備え、このように溝部が形成されたコンクリート組成物に対して塗布工程及び目地形成処理工程を実施してもよい。
【0064】
このように、コンクリート組成物を打設する工程(打設工程)と、打設されたコンクリート組成物を切断して溝部を形成する工程(切断工程)とをさらに備える場合においては、切断工程において、前記打設されたコンクリート組成物の圧縮強度が18.0N/mmに達する前に、該コンクリート組成物の表面に前記目地形成処理用剤を塗布して固化させ、固化された前記目地形成処理用剤と共に前記コンクリート組成物を切断することが好ましい。
【0065】
ここで、打設されたコンクリート組成物が、その圧縮強度が18.0N/mm未満といった十分に硬化していない状態で、その表面に何ら処理を施さずにコンクリート組成物を切断すると、切断面の先端部(外側の端部)が欠けてしまう角欠けが発生するおそれがある。
また、このように十分に硬化していない状態では、マスキングテープを貼り付け、該マスキングテープと共にコンクリート組成物を切断しても、角欠けが発生するおそれがある。
しかし、上記のように打設工程と切断工程とを行うことによって、打設されたコンクリート組成物が、その圧縮強度が18.0N/mm未満といった十分に硬化していない状態であっても、目地形成処理用剤と共に切断することによって、角欠けの発生を抑制することが可能となる。
従って、コンクリート組成物の打設後、比較的早期に良好な切断を、上記のように優れた作業性で行うことが可能となる。
【0066】
また、より角欠けの発生を抑制し得るという観点から、前記打設されたコンクリート組成物の圧縮強度がより好ましくは10.0N/mmに達する前(10.0N/mm未満)に、さらに好ましくは5.0N/mmに達する前(5.0N/mm未満)に、該コンクリート組成物の表面に前記目地形成処理用剤を塗布して固化させ、固化された前記目地形成処理用剤と共に前記コンクリート組成物を切断することが望ましい。
【0067】
本態様の注入工程では、上記溝部に沿って固化した目地形成処理剤がコンクリート組成物の表面に配されている状態で、該溝部に目地注入材を注入する。
【0068】
目地注入材としては、上記と同様、従来公知の目地注入材が挙げられ、例えば、アスファルト系加熱注入材、ポリサルファイド系注入材、ウレタン系注入材等が挙げられる。
【0069】
次いで、本実施形態の目地施工方法の剥離工程について説明する。
【0070】
本実施形態の目地施工方法における剥離工程では、目地形成処理工程を行った後、具体的には目地注入材を注入した後、上記固化した目地形成処理用剤を剥離する。
上記目地形成処理用剤を剥離することは、例えば、ヘラ、スコップ等を用いて行うことができる。
このように剥離することによって、溝部から、固化した目地形成処理用剤にはみ出した目地注入材を、該目地形成処理用剤と共に除去することが可能となる。
【0071】
本実施形態の目地施工方法においては、
さらに、前記剥離した目地形成処理用剤を加熱して溶融し、分取することによって、前記目地形成処理用剤を再利用することが好ましい。
【0072】
これにより、剥離した目地形成処理用剤を加熱し、分取するだけで再利用可能となるため、目地施工方法が、一層作業性に優れたものとなる。
【0073】
上記分取は、加熱した目地形成処理用剤を、該目地形成処理用剤の剥離の際に混入した骨材等の目地形成処理用剤以外のものから分離して取得する方法である。この分取は、特に限定されない。
例えば、分取として、ろ過を採用することができる。ろ過は、加熱した目地形成処理用剤を、例えば2.5〜5mmの篩等の従来公知のろ過部材を用いてろ過することによって行い得る。
また、例えば、沈殿による上澄液の取得を採用することもできる。この方法では、剥離した目地形成処理用剤を加熱し、上記目地形成処理用剤以外のものを沈殿させ、その上澄液である目地形成処理用剤を掬う等して取得する方法である。
そして、溶融状態で分取して得られた分取済みの目地形成処理用剤を、溶融状態のまま、または、一旦冷却させた後、再び利用し得る。
【0074】
次に、本実施形態の目地形成処理用剤を用いたコンクリート組成物の切断方法について説明する。
【0075】
本実施形態のコンクリート組成物の切断方法は、
上記した水、セメント及び骨材を有するコンクリート組成物を打設し、
該コンクリート組成物の表面に、前記目地形成処理用剤を塗布して固化させ、固化された前記目地形成処理用剤と共に前記コンクリート組成物を切断する。
すなわち、本実施形態のコンクリート組成物の切断方法は、上記目地施工方法の目地形成処理工程の第2の態様において打設工程及び切断工程として採用した方法に相当する。
【0076】
かかる構成によれば、固化された目地形成処理用剤と共にコンクリートを切断することによって、上記の通り、押え板が不要となるため、その分、作業性に優れる。
従って、作業性に優れる。
【0077】
本実施形態のコンクリート組成物の切断方法においては、前述と同様、
前記打設されたコンクリート組成物の圧縮強度が18.0N/mmに達する前に、該コンクリート組成物の表面に前記目地形成処理用剤を塗布して固化させ、固化された前記目地形成処理用剤と共に前記コンクリート組成物を切断することが好ましい。
これにより、前述と同様、角欠けの発生を抑制することが可能となるため、コンクリート組成物の打設後、比較的早期、且つ、良好に切断を行うことが可能となる。
【0078】
本実施形態のコンクリート組成物の切断方法においては、前述と同様、
前記切断を実行した後、前記目地形成処理用剤を前記表面から剥離することが好ましい。
これにより、前述と同様、目地形成処理用剤は固化しているため、剥離し易くなる。よって、より作業性に優れる。
【0079】
本実施形態のコンクリート組成物の切断方法においては、
さらに、前記剥離した目地形成処理用剤を加熱して溶融し、前述と同様にして分取することによって、前記目地形成処理用剤を再利用することが好ましい。
これにより、前述と同様、剥離した目地形成処理用剤を加熱し、分取するだけで再利用可能となるため、一層作業性に優れる。
【実施例】
【0080】
次に実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0081】
(1)コンクリート組成物の打設
セメントとして、早強ポルトランドセメント(住友大阪セメント社製)を用いた。
骨材として、粗骨材(西島産砕石2005)、及び、細骨材(揖斐川産川砂)を用いた。
混和剤として、高性能AE減水剤(チューポールHP11、竹本油脂社製)、空気量調整剤(ヴィンソル、山宗化学社製)を用いた。
【0082】
下記表1に示す配合で、上記セメント、骨材、混和剤、及び、水を混合して混合物としてのコンクリート組成物を得、得られたコンクリート組成物を、30×30×15cmの型枠に打設した。
【0083】
【表1】
【0084】
(2)コンクリート組成物の切断
・実験例1
打設してから7時間経過後、コンクリート組成物の表面に何ら処理を施すことなく、ハンドカッター(100mm電子ディスクグラインダ、日立工機社製)を用いて、該コンクリート組成物の表面を切断した。
打設してから7時間後のコンクリート組成物を低強度ハンマーシュミット(コンクリートテストハンマーPT形、プロセク社製)で測定したところ、1.0N/mmであった。
【0085】
・実験例2
打設してから7時間経過後、コンクリート組成物の表面に、予め加熱して溶融させたパラフィン(製品名:1級、融点42〜44℃、キシダ化学社製)を塗布し、放冷することによって冷却して固化させ、固化後、形成された固化物と共にコンクリート組成物を切断したこと以外は実験例1と同様にして、コンクリート組成物の表面を切断した。
【0086】
・実験例3
打設してから7時間経過後、コンクリート組成物の表面に、マスキングテープ(VMビニルマスチックテープ、スコッチ社製)を貼り付け、貼り付け後、該マスキングテープと共にコンクリート組成物を切断したこと以外は実験例1と同様にして、コンクリート組成物の表面を切断した。
【0087】
・実験例4
打設してから7時間経過後、コンクリート組成物の表面に、エポキシ樹脂(クイックメンダー、コニシ社製)を塗布して硬化させ、硬化後、該硬化物と共にコンクリート組成物を切断したこと以外は実験例1と同様にして、コンクリート組成物の表面を切断した。
【0088】
・実験例5
打設してから7時間経過後、コンクリート組成物の表面に、ガムテープ(布粘着テープNo.382M、リンレイテープ社製)を貼り付け、貼り付け後、該ガムテープと共にコンクリート組成物を切断したこと以外は実験例1と同様にして、コンクリート組成物の表面を切断した。
【0089】
・実験例6
打設してから7時間経過後、コンクリート組成物の表面に、ビニルテープ(ビニルテープNo.21、ニトムズ社製)を貼り付け、貼り付け後、該ビニルテープと共にコンクリート組成物を切断したこと以外は実験例1と同様にして、コンクリート組成物の表面を切断した。
【0090】
(3)評価
各試料につき、切断後の角欠け状態を目視にて確認した。結果を表2に示す。
また、実験例1、2、3、4について、切断状態の写真をそれぞれ図1図4に示す。
【0091】
【表2】
【0092】
表2に示すように、実験例1、3では、角欠けが発生した。
実験例4では、反り上がりが発生した。
実験例5、6では、コンクリート組成物の表面に各テープを接着できなかった。
これに対し、実験例2では、角欠けが発生しないだけでなく、反り上がりも発生せず、切断を良好に行い得ることがわかった。また、打設後、コンクリート組成物の圧縮強度が1.0N/mmで角欠け、反り上がりが抑制されたことから、これよりも圧縮強度が大きい場合であって、十分硬化していない場合には、角欠け、反り上がりが抑制されると考えられる。
【0093】
また、実験例2で切断して形成した目地部に目地注入材(ボンドシールS-164、アオイ化学工業社製)を注入し、注入後、剥離した。
この各状態を図5に示す。
図5に示すように、十分にマスキングが施されていることがわかった。
【0094】
また、マスキングテープを用いてマスキングを施そうとすると、剥離する際に、接着剤の接着力に抗してマスキングテープを剥離する必要がある。しかし、実験例2のパラフィンを用いた場合には、固化による自己接着によってコンクリート組成物に接着しているため、マスキングテープよりも剥離し易いことがわかった。
【0095】
以上のように本発明の実施の形態及び実施例について説明を行なったが、各実施の形態及び実施例の特徴を適宜組み合わせることも当初から予定している。また、今回開示された実施の形態及び実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した実施の形態及び実施例ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
図1
図2
図3
図4
図5