特許第6647004号(P6647004)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6647004
(24)【登録日】2020年1月16日
(45)【発行日】2020年2月14日
(54)【発明の名称】半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/336 20060101AFI20200203BHJP
   H01L 29/78 20060101ALI20200203BHJP
   H01L 21/761 20060101ALI20200203BHJP
【FI】
   H01L29/78 301D
   H01L21/76 J
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-206406(P2015-206406)
(22)【出願日】2015年10月20日
(65)【公開番号】特開2017-79256(P2017-79256A)
(43)【公開日】2017年4月27日
【審査請求日】2018年10月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】303046277
【氏名又は名称】旭化成エレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(72)【発明者】
【氏名】望月 秀則
(72)【発明者】
【氏名】郡司 智博
【審査官】 辻 勇貴
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2010/0032769(US,A1)
【文献】 特開昭51−043086(JP,A)
【文献】 特開昭60−133738(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/336
H01L 21/761
H01L 29/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板の表面に、第1導電型の第1不純物を導入して第1領域を形成する第1領域形成工程と、
前記第1領域の一部又は前記第1領域と接触する箇所に、前記第1導電型であり且つ前記第1不純物より拡散係数の大きい第2不純物を導入して第2領域を形成する第2領域形成工程と、
前記第1領域及び前記第2領域を備える前記半導体基板を1200℃で熱処理する第1の熱処理工程と、
前記第1の熱処理工程後の前記半導体基板上に前記第1導電型とは逆の第2導電型の不純物を含む第2導電型層を形成する第2導電型層形成工程と、
前記第2導電型層の表面のうち前記第2領域の上方に相当する部分に、前記第1導電型の第3不純物を導入して第3領域を形成する第3領域形成工程と、
前記第1領域、前記第2領域及び前記第3領域を備える前記半導体基板を前記第1の熱処理工程後に熱処理する第2の熱処理工程と、
を含む半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記第2の熱処理工程は、前記第3領域を熱処理して前記第3領域と前記2領域とを接続させる工程を含む請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記第3不純物は、前記第1不純物より拡散係数が大きい不純物である請求項1又は請求項2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記第2領域形成工程は、断面視で前記第1領域の両端の上に前記第2領域を形成する工程を含む請求項1から請求項3の何れか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記第2導電型層形成工程は、エピタキシャル成長により前記第2導電型層を形成する工程を含む請求項1から請求項4の何れか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記第1不純物はアンチモンを含み、前記第2不純物及び前記第3不純物はリン又はヒ素を含む請求項1から請求項5の何れか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記第1不純物はヒ素を含み、前記第2不純物及び第3不純物はリンを含む請求項1から請求項5の何れか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶ドライバー等の各種ドライバーICや電源回路ICが一般的になり、それらを構成するために高耐圧なトランジスタが求められている。
例えば、図3に示すような縦型NPNバイポーラトランジスタは、P型シリコン基板301にN型埋め込み層306が形成され、断面視で、N型埋め込み層306の両端上にN型シンカー層307が形成されている。そして、P型エピタキシャル層302の、N型埋め込み層306とN型シンカー層307とに囲まれた領域に、N型エミッタ領域305と、N型エミッタ領域305の周囲に形成されたP型ベース領域304と、N型コレクタ領域303とが形成されている。
このような縦型NPNバイポーラトランジスタは、P型ベース領域304とN型コレクタ領域303との間に十分な耐圧を持たせるために、N型コレクタ領域303の膜厚を厚くして空乏層をコレクタ側に大きく広げることが望ましい。この目的により、断面視でN型埋め込み層306の上に形成するP型エピタキシャル層302の膜厚はできるだけ厚いことが求められる。
【0003】
また、例えば、図4に示すような、ドレイン近傍の不純物が横方向に拡散した構造のN型LDMOS(Lateral Double−diffused MOS、以後、nLDMOSという。)トランジスタは、P型シリコン基板401に、N型ドリフト層402と、P型ボディ層403とが形成されている。P型ボディ層403には、N型ソース領域406及びP型ピックアップ層409が形成されている。N型ドリフト層402には、フィールド酸化膜404で区切られてN型ドレイン領域405が形成されると共に、P型ボディ層403とN型ドリフト層402とにまたがってゲート酸化膜407が形成され、ゲート酸化膜407の上に、ゲート電極408が形成されている。
このnLDMOSトランジスタは、高耐圧と低オン抵抗とを両立する構造であり、消費電力を抑えた電源回路ICを実現するために注目されている。
【0004】
一方、例えばモーターコントロールのために用いられる回路、例えばH−Bridge回路等では、LDMOSをハイサイドスイッチとして用いることが多い。しかしながら、nLDMOSは、N型ソース領域406がP型シリコン基板401と分離されていないためにハイサイドスイッチとして用いることができないという問題がある。ハイサイドスイッチ用の素子としてP型LDMOS(以後、pLDMOSという。)を使えばこのような問題は生じないが、pLDMOSはnLDMOSに比べて性能に劣り、トランジスタ面積が大きくなるという欠点がある。
【0005】
そこで、図5に示すように、N型埋め込み層510とそれを表面に引き出すためのN型シンカー層512とによりnLDMOSを包み込み、P型シリコン基板501からnLDMOSを分離させるということが一般に行われている。N型埋め込み層510上にP型エピタキシャル層511を形成することでこれを実現することが可能となるが、この際、より高い耐圧を実現するためには、バイポーラトランジスタの場合と同様にP型エピタキシャル層511の膜厚を十分に確保する必要がある。
N型シンカー層512は、一般的には、P型エピタキシャル層511上の所定の領域にイオン注入等で不純物を導入し、それを熱拡散させることで形成する。ところが、P型エピタキシャル層511の膜厚が厚くなると、N型シンカー層512をより深く拡散させる必要があり、過剰な熱処理が求められる。これは同時にN型シンカー層512の横方向への広がりを大きくすることになって素子面積の増大を招き、集積度を下げる要因となる。なお、図5中の、符号501〜509が指し示す部分は、図4中の401〜409が指し示す部分に対応している。また、図5中、513はN型コンタクト層である。
【0006】
シンカー層を形成する方法として、例えば、特許文献1には、図6に示すように、P型埋め込み層101及びN型埋め込み層102が形成されたP型シリコン基板100上にシリコンをエピタキシャル成長する工程と、この工程により生成したエピタキシャル層(例えば105、106)に不純物を注入してドープ領域(例えば103及び104、107及び108)を形成する工程からなり、エピタキシャル成長と不純物導入とを少なくとも2回以上繰り返すことによって深いシンカー層を形成する半導体装置の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平2−288353号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前述のシンカー層を形成する方法によると、任意のエピタキシャル層の厚さに対して、埋め込み層を表面に引き出すシンカー層を形成することが可能である。
しかしながら、不純物を導入した領域には結晶欠陥が残り、その上に形成したエピタキシャル層にも多くの結晶欠陥が存在する。これは接合リークの原因となり得るために、好ましくない。不純物導入の後に熱処理を加えて欠陥の回復を図った後でエピタキシャル成長させればこの限りではないが、それを複数回繰り返すことは、その熱処理によって不純物が横方向に拡散してしまうこととなり、当初の問題に立ち返ることになる。
【0009】
さらに、工程単価の高いエピタキシャル成長の工程を複数回実施することは、ウェハコストの増大につながることは言うまでもない。
本発明は、以上のような事情に鑑みてなされたものであって、コストの増加を防ぎながら、厚いエピタキシャル層においても埋め込み層と接続されたシンカー層を有する半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様による半導体装置の製造方法は、半導体基板の表面に、第1導電型の第1不純物を導入して第1領域を形成する第1領域形成工程と、前記第1領域の一部又は前記第1領域と接触する箇所に、前記第1導電型であり且つ前記第1不純物より拡散係数の大きい第2不純物を導入して第2領域を形成する第2領域形成工程と、前記第1領域及び前記第2領域を備える前記半導体基板を1200℃で熱処理する第1の熱処理工程と、前記第1の熱処理工程後の前記半導体基板上に前記第1導電型とは逆の第2導電型の不純物を含む第2導電型層を形成する第2導電型層形成工程と、前記第2導電型層の表面のうち前記第2領域の上方に相当する部分に、前記第1導電型の第3不純物を導入して第3領域を形成する第3領域形成工程と、前記第1領域、前記第2領域及び前記第3領域を備える
前記半導体基板を前記第1の熱処理工程後に熱処理する第2の熱処理工程と、を含むことを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一態様によれば、ウェハコストの削減を図りつつ、空乏層の十分な広がりを確保することができると共に、接合リークを抑制することの可能な、厚いエピタキシャル層において埋め込み層と接続されたシンカー層を有する半導体装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態に係る半導体装置の製造方法の製造工程の一例を示す断面図である。
図2図1の製造工程の続きである。
図3】縦型NPNバイポーラトランジスタの一例を示す断面図である。
図4】N型LDMOSトランジスタの一例を示す断面図である。
図5】ハイサイドスイッチ用nLDMOSの一例を示す断面図である。
図6】従来の、深いシンカー層を有する半導体装置の製造方法の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明を実施するための形態(以下、本実施形態という)について説明する。
なお、以下の詳細な説明では、本発明の実施形態の完全な理解を提供するように多くの特定の具体的な構成について記載されている。しかしながら、このような特定の具体的な構成に限定されることなく他の実施態様が実施できることは明らかであろう。また、以下の実施形態は、特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0014】
以下に、本発明に係る半導体装置の製造方法の一実施形態として、ハイサイドスイッチ用nLDMOSの形成方法を図1(a)〜(d)及び図2(a)〜(c)を参照しながら説明する。図1(a)〜(d)及び図2(a)〜(c)は、本発明の半導体装置の製造方法の一実施形態を工程順に示す断面図である。
まず、図1(a)に示すように、P型シリコン基板1上に、例えば厚さ150Åのシリコン酸化膜2を形成する。シリコン酸化膜2の上にフォトレジスト膜を成膜し、図1(a)に示すように断面視でシリコン酸化膜2の両端の上方に対応する部分のみにフォトレジストが残るように、フォトレジストをパターニングし、フォトレジストパターン3を形成する。その後、フォトレジストパターン3をマスクとしてイオン注入にて第1のN型埋め込み層4を形成する。イオン注入により導入する不純物は例えばアンチモンであり、その注入条件は、例えば150keV、5E15/cm等である。
【0015】
次に、図1(b)に示すように、フォトレジストパターン3を除去した後、シリコン酸化膜2の上にフォトレジスト膜を成膜し、断面視で第1のN型埋め込み層4の両端の上方に対応する部分のみが開口したフォトレジストパターン5を形成する。そして、フォトレジストパターン5をマスクとして、第1のN型埋め込み層4に導入した第1のN型不純物、この場合アンチモンよりも拡散係数の大きい第2のN型不純物をイオン注入にて導入して第2のN型埋め込み層6を形成する。例えば、アンチモンより拡散係数の大きいN型不純物はリンであり、注入条件は60keV、1E15/cm等である。これにより、断面視で第1のN型埋め込み層4の両端に第2のN型埋め込み層6が形成された状態となる。
【0016】
次に、フォトレジストパターン5を除去した後、この第2のN型埋め込み層6が形成されたP型シリコン基板1を、例えば1200℃、60分等の条件下で熱処理を行うことで第1及び第2のN型埋め込み層4及び6を活性化し、その後、シリコン酸化膜2をフッ化水素酸(HF)等により除去する。この状態が図1(c)である。
続いて、シリコン酸化膜2を除去したP型シリコン基板1の上に、例えば厚さ8μmのP型エピタキシャル層7を成長させる。エピタキシャル成長中において、その熱によって第1及び第2のN型埋め込み層4及び6からは、それぞれに導入されたN型不純物が外方拡散し、P型エピタキシャル層7に取り込まれる。その結果、第1及び第2のN型埋め込み層4及び6は、P型エピタキシャル層7の中にせり上がった構造となる。
【0017】
ここで、第1のN型埋め込み層4に導入された第1不純物としてのアンチモンの拡散係数に比べて、第2の埋め込み層6に導入された第2不純物としてのリンの拡散係数の方が大きいため、リンの方がより表面側まで分布することになる。この様子を図1(d)に示す。
また、第1及び第2のN型埋め込み層4及び6は、1200℃、60分の熱処理によって不純物の活性化と共に結晶欠陥の回復がなされているため、P型エピタキシャル層7には結晶欠陥は生じない。
【0018】
次に、図2(a)に示すように、P型エピタキシャル層7の表面に厚さ180Å程度のシリコン酸化膜8を形成する。続いて、シリコン酸化膜8の上に、フォトレジスト膜を成膜し、フォトレジストパターン5を形成したときと同じパターンのマスクを用いて、断面視で、第1のN型埋め込み層4の両端に形成された第2の埋め込み層6の上方に相当する部分のみが開口されたフォトレジストパターン9を形成する。次に、N型でありながら、第1のN型埋め込み層4に導入した第1のN型不純物、この場合アンチモンより拡散係数の大きい第3のN型不純物をイオン注入にて導入してN型シンカー層10を形成する。ここで、第3のN型不純物は例えばリンであり、注入条件は例えば60keV、1E15/cm等である。これにより、断面視で、第2の埋め込み層6それぞれの上方に相当する部分にN型シンカー層10が形成される。
【0019】
次に、フォトレジストパターン9を除去した後、このN型シンカー層10が形成されたP型シリコン基板1を、例えば1200℃、60分等の条件下で熱処理を行う。その結果、図2(b)に示すように、各N型シンカー層10は深さ方向に拡散し、第2の埋め込み層6まで到達することで、第1のN型埋め込み層4、第2のN型埋め込み層6及びN型シンカー層10により、N型埋め込み層4からP型エピタキシャル層7の表面に至る低抵抗領域が形成されることとなる。
その後、図2(c)に示すように、第1のN型埋め込み層4、第2のN型埋め込み層6及びN型シンカー層10によって囲まれたP型エピタキシャル層7にnLDMOSを形成する。例えば、簡単には次のような製造方法による。
まず、第1のN型埋め込み層4、第2のN型埋め込み層6及びN型シンカー層10によって囲まれたP型エピタキシャル層7に、フォトリソグラフィ技術及びイオン注入技術によって、N型ドリフト層11を形成する。次に、LOCOS(Local Oxidation of Silicon)法により、N型ドリフト層11にフィールド酸化膜13を形成する。このフィールド酸化膜13の形成過程において、N型ドリフト層11や図示しないウェル拡散層を所定の深さまで熱拡散させる。
【0020】
次に、再びフォトリソグラフィ技術及びイオン注入技術によって、第1のN型埋め込み層4、第2のN型埋め込み層6及びN型シンカー層10によって囲まれたP型エピタキシャル層7に、P型ボディ層12を形成する。次に、P型エピタキシャル層7を熱酸化してゲート酸化膜16を形成し、続いて、例えばLPCVD法(Low Pressure Chemical Vapor Deposition)を用いてゲート酸化膜16上にポリシリコン膜を形成し、フォトリソグラフィ技術及びドライエッチング技術によってポリシリコン膜をパターニングする。これにより、ゲート酸化膜16上にポリシリコンからなるゲート電極17を形成する。
【0021】
次に、フォトリソグラフィ技術及びイオン注入技術を用いて、P型エピタキシャル層7上のソース、ドレイン及びコンタクトの各領域に、リン又はヒ素等のN型不純物を導入する。これに熱処理を施すことで、N型のソース15、ドレイン14及びN型コンタクト層19を形成する。
さらに、フォトリソグラフィ技術及びイオン注入技術を用いて、ボロン等のP型不純物を導入し、熱処理を加えることでP型ピックアップ層18を形成する。最後に、図示はしないが、一般的に知られる方法にて、層間絶縁膜とコンタクト、配線層、保護膜を形成することで半導体装置が完成する。
【0022】
このように、本発明の一実施形態における半導体装置の製造方法によれば、第2のN型埋め込み層6からの第2不純物がせり上がると共に、N型シンカー層10となる、第3のN型不純物がイオン注入にて導入された拡散層から拡散し、第2不純物のせり上がりと第3不純物の拡散とがつながることにより、第2のN型埋め込み層6から表面をつなぐN型シンカー層10を形成することができるため、エピタキシャル層形成を複数回行う必要はない。その結果として、ウェハコストを削減することが可能となる。
また、第1のN型埋め込み層4の第1不純物は第2不純物に比べて拡散係数が小さいため、第1の埋め込み層4のP型エピタキシャル層7へのせり上がりは比較的小さい。そのため、空乏層の十分な広がりを確保することができる。
【0023】
また、第1及び第2のN型埋め込み層4及び6の不純物導入後に熱処理を加えているため、第1及び第2のN型埋め込み層4及び6には結晶欠陥が少ない。そのため、第1及び第2のN型埋め込み層4及び6の上に形成したP型エピタキシャル層7にも結晶欠陥が生じにくくなり、接合リーク等の発生を防止することができる。さらに、N型シンカー層10を形成した後、一度の熱処理工程によって、N型シンカー層10と第2のN型埋め込み層6とを接続している。そのため、N型シンカー層10の拡散をより抑えることができ、すなわちN型シンカー層10の横方向への広がりを抑制することができる。このことにより、素子面積が増大することを防いでいる。
【0024】
なお、上記実施形態においては、第1不純物としてアンチモンを用い、第2不純物及び第3不純物としてリンを用いた場合について説明したがこれに限るものではない。
第2不純物及び第3不純物の拡散係数が、第1不純物の拡散係数が大きければよく、例えば、第1不純物としてアンチモンを含み、第2不純物及び第3不純物としてヒ素を含んでいてもよく、また第2不純物及び第3不純物の一方がリンを含み他方がヒ素を含んでいてもよい。
また、第1不純物としてヒ素を含み、第2不純物及び第3不純物としてリンを含んでいてもよい。
【0025】
また、上記実施形態においては、P型エピタキシャル層7を、第1のN型埋め込み層4、第2のN型埋め込み層6及びN型シンカー層10によって囲むこと、つまり、P型領域を、N型領域で囲むことによって、ハイサイドスイッチ用nLDMOSを形成する場合について説明したが、これに限るものではない。つまり、N型領域をP型領域で囲むことによって、ハイサイドスイッチ用のP型LDMOS(以後、pLDMOSという。)を形成することも可能である。
この場合には、第1のP型埋め込み層(第1のN型埋め込み層4に対応)に、拡散係数の小さい第1のP型不純物を導入し、第2のP型埋め込み層(第2のN型埋め込み層6に対応)及びP型シンカー層(N型シンカー層10)には第1のP型不純物よりも拡散係数の大きい第2及び第3のP型不純物を導入すれば、同様の効果を得ることができる。
【0026】
P型不純物としては、例えばIII族元素のドーパントであれば適用することができる。
具体的には例えば、第1のP型の埋め込み層に導入される第1のP型不純物としてガリウム、第2のP型の埋め込み層に導入される第2のP型不純物及びP型のシンカー層に導入される第3のP型不純物として、第1のP型不純物としてのガリウムよりも拡散係数の大きいボロンを適用することができる。また、別の組み合わせとしては、例えば、第1のP型不純物としてインジウム、第2のP型不純物及び第3のP型不純物として、第1のP型不純物としてのインジウムよりも拡散係数の大きいボロン又はガリウムを適用することができる。
【0027】
以上、特定の実施形態を参照して本発明を説明したが、これら説明によって発明を限定するものではない。本発明の説明を参照することにより、当業者には、開示された実施形態の種々の変形例とともに本発明の別の実施形態も明らかである。従って、特許請求の範囲は、本発明の範囲及び要旨に含まれるこれらの変形例又は実施形態も網羅すると解すべきである。
【符号の説明】
【0028】
1 P型シリコン基板
2、8 シリコン酸化膜
3、5、9 フォトレジストパターン
4 第1のN型埋め込み層
6 第2のN型埋め込み層
7 P型エピタキシャル層
10 N型シンカー層
11 N型ドリフト層
12 P型ボディ層
13 フィールド酸化膜
14 ドレイン
15 ソース
16 ゲート酸化膜
17 ゲート電極
18 P型ピックアップ層
19 N型コンタクト層
301 P型シリコン基板
302 P型エピタキシャル層
303 N型コレクタ領域
304 P型ベース領域
305 N型エミッタ領域
306 N型埋め込み層
307 N型シンカー層
401 P型シリコン基板
402 N型ドリフト層
403 P型ボディ層
404 フィールド酸化膜
405 N型ドレイン領域
406 N型ソース領域
407 ゲート酸化膜
408 ゲート電極
409 P型ピックアップ層
510 N型埋め込み層
511 P型エピタキシャル層
512 N型シンカー層
513 N型コンタクト層
図1
図2
図3
図4
図5
図6