特許第6647260号(P6647260)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6647260半導体装置の製造方法、基板処理装置及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6647260
(24)【登録日】2020年1月16日
(45)【発行日】2020年2月14日
(54)【発明の名称】半導体装置の製造方法、基板処理装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   C23C 16/455 20060101AFI20200203BHJP
【FI】
   C23C16/455
【請求項の数】12
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2017-183602(P2017-183602)
(22)【出願日】2017年9月25日
(65)【公開番号】特開2019-59968(P2019-59968A)
(43)【公開日】2019年4月18日
【審査請求日】2018年9月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】318009126
【氏名又は名称】株式会社KOKUSAI ELECTRIC
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】吉田 怜亮
(72)【発明者】
【氏名】加我 友紀直
(72)【発明者】
【氏名】竹林 雄二
(72)【発明者】
【氏名】境 正憲
(72)【発明者】
【氏名】平野 敦士
【審査官】 山本 一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−147262(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 16/455
H01L 21/205
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の基板が積層して収容された処理室内に前記複数の基板の積層方向に沿って立設された第1のノズルから、前記複数の基板に対して原料ガスを供給する工程と、
前記処理室内に前記複数の基板の積層方向に沿って立設され、上流側から下流側へ向かって広くなる開口面積を有する開口部を備える第2のノズルから、前記複数の基板に対して反応ガスを供給し、前記反応ガスの分圧バランスを前記複数の基板の積層方向に沿って所望の値となるよう調整しつつ前記反応ガスを供給する工程と、
を有し、
前記反応ガスを供給する工程では、不活性ガスと同時に前記第2のノズルから前記反応ガスを供給し、前記第2のノズルから供給する前記不活性ガスの流量を所望の前記反応ガスの分圧バランスに応じて設定する半導体装置の製造方法。
【請求項2】
複数の基板が積層して収容された処理室内に前記複数の基板の積層方向に沿って立設された第1のノズルから、前記複数の基板に対して原料ガスを供給する工程と、
前記処理室内に前記複数の基板の積層方向に沿って立設され、上流側から下流側へ向かって広くなる開口面積を有する開口部を備える第2のノズルから、前記複数の基板に対して反応ガスを供給し、前記反応ガスの分圧バランスを前記複数の基板の積層方向に沿って所望の値となるよう調整しつつ前記反応ガスを供給する工程と、
を有し、
前記反応ガスを供給する工程では、前記反応ガスの流量を所望の前記反応ガスの分圧バランスに応じて設定する半導体装置の製造方法。
【請求項3】
複数の基板が積層して収容された処理室内に前記複数の基板の積層方向に沿って立設された第1のノズルから、前記複数の基板に対して原料ガスを供給する工程と、
前記処理室内に前記複数の基板の積層方向に沿って立設され、上流側から下流側へ向かって広くなる開口面積を有する開口部を備える第2のノズルから、前記複数の基板に対して反応ガスを供給し、前記反応ガスの分圧バランスを前記複数の基板の積層方向に沿って所望の値となるよう調整しつつ前記反応ガスを供給する工程と、
を有し、
前記原料ガスを供給する工程では、上流側から下流側へ向かって広くなる開口面積を有する開口部を備える前記第1のノズルから、前記複数の基板に対して前記原料ガスを供給し、
前記反応ガスを供給する工程では、前記第2のノズルから前記反応ガスを供給するとともに前記第1のノズルから不活性ガスを供給し、前記第1のノズルから供給する前記不活性ガスの流量を所望の前記反応ガスの分圧バランスに応じて設定する半導体装置の製造方法。
【請求項4】
複数の基板が積層して収容された処理室内に前記複数の基板の積層方向に沿って立設された第1のノズルから、前記複数の基板に対して原料ガスを供給する工程と、
前記処理室内に前記複数の基板の積層方向に沿って立設され、上流側から下流側へ向かって広くなる開口面積を有する開口部を備える第2のノズルから、前記複数の基板に対して反応ガスを供給し、前記反応ガスの分圧バランスを前記複数の基板の積層方向に沿って所望の値となるよう調整しつつ前記反応ガスを供給する工程と、
を有し、
前記原料ガスを供給する工程では、上流側から下流側へ向かって広くなる開口面積を有する開口部を備える前記第1のノズルから、前記複数の基板に対して前記原料ガスを供給し、
前記反応ガスを供給する工程では、前記第2のノズルから前記反応ガスを供給するとともに前記第1のノズルから不活性ガスを供給し、前記反応ガスの流量を所望の前記反応ガスの分圧バランスに応じて設定する半導体装置の製造方法。
【請求項5】
複数の基板を積層して収容する処理室と、
前記処理室内に原料ガスおよび反応ガスを供給するガス供給系であって、前記処理室内に前記複数の基板の積層方向に沿って立設され、前記複数の基板に対して前記原料ガスを供給する第1のノズルと、前記処理室内に前記複数の基板の積層方向に沿って立設され、上流側から下流側へ向かって広くなる開口面積を有する開口部を備え、前記複数の基板に対して前記反応ガスを供給する第2のノズルと、を有するガス供給系と、
前記ガス供給系を制御して、前記処理室内に収容された前記複数の基板に対して、前記第1のノズルから前記原料ガスを供給する処理と、前記第2のノズルから前記反応ガスを供給し、前記反応ガスの分圧バランスを前記複数の基板の積層方向に沿って所望の値となるよう調整しつつ前記反応ガスを供給する処理と、を行うよう構成される制御部と、
を有し、
前記反応ガスを供給する処理では、不活性ガスと同時に前記第2のノズルから前記反応ガスを供給し、前記第2のノズルから供給する前記不活性ガスの流量を所望の前記反応ガスの分圧バランスに応じて設定する基板処理装置。
【請求項6】
複数の基板を積層して収容する処理室と、
前記処理室内に原料ガスおよび反応ガスを供給するガス供給系であって、前記処理室内に前記複数の基板の積層方向に沿って立設され、前記複数の基板に対して前記原料ガスを供給する第1のノズルと、前記処理室内に前記複数の基板の積層方向に沿って立設され、上流側から下流側へ向かって広くなる開口面積を有する開口部を備え、前記複数の基板に対して前記反応ガスを供給する第2のノズルと、を有するガス供給系と、
前記ガス供給系を制御して、前記処理室内に収容された前記複数の基板に対して、前記第1のノズルから前記原料ガスを供給する処理と、前記第2のノズルから前記反応ガスを供給し、前記反応ガスの分圧バランスを前記複数の基板の積層方向に沿って所望の値となるよう調整しつつ前記反応ガスを供給する処理と、を行うよう構成される制御部と、
を有し、
前記反応ガスを供給する処理では、前記反応ガスの流量を所望の前記反応ガスの分圧バランスに応じて設定する基板処理装置。
【請求項7】
複数の基板を積層して収容する処理室と、
前記処理室内に原料ガスおよび反応ガスを供給するガス供給系であって、前記処理室内に前記複数の基板の積層方向に沿って立設され、前記複数の基板に対して前記原料ガスを供給する第1のノズルと、前記処理室内に前記複数の基板の積層方向に沿って立設され、上流側から下流側へ向かって広くなる開口面積を有する開口部を備え、前記複数の基板に対して前記反応ガスを供給する第2のノズルと、を有するガス供給系と、
前記ガス供給系を制御して、前記処理室内に収容された前記複数の基板に対して、前記第1のノズルから前記原料ガスを供給する処理と、前記第2のノズルから前記反応ガスを供給し、前記反応ガスの分圧バランスを前記複数の基板の積層方向に沿って所望の値となるよう調整しつつ前記反応ガスを供給する処理と、を行うよう構成される制御部と、
を有し、
前記原料ガスを供給する処理では、上流側から下流側へ向かって広くなる開口面積を有する開口部を備える前記第1のノズルから、前記複数の基板に対して前記原料ガスを供給し、
前記反応ガスを供給する処理では、前記第2のノズルから前記反応ガスを供給するとともに前記第1のノズルから不活性ガスを供給し、前記第1のノズルから供給する前記不活性ガスの流量を所望の前記反応ガスの分圧バランスに応じて設定する基板処理装置。
【請求項8】
複数の基板を積層して収容する処理室と、
前記処理室内に原料ガスおよび反応ガスを供給するガス供給系であって、前記処理室内に前記複数の基板の積層方向に沿って立設され、前記複数の基板に対して前記原料ガスを供給する第1のノズルと、前記処理室内に前記複数の基板の積層方向に沿って立設され、上流側から下流側へ向かって広くなる開口面積を有する開口部を備え、前記複数の基板に対して前記反応ガスを供給する第2のノズルと、を有するガス供給系と、
前記ガス供給系を制御して、前記処理室内に収容された前記複数の基板に対して、前記第1のノズルから前記原料ガスを供給する処理と、前記第2のノズルから前記反応ガスを供給し、前記反応ガスの分圧バランスを前記複数の基板の積層方向に沿って所望の値となるよう調整しつつ前記反応ガスを供給する処理と、を行うよう構成される制御部と、
を有し、
前記原料ガスを供給する処理では、上流側から下流側へ向かって広くなる開口面積を有する開口部を備える前記第1のノズルから、前記複数の基板に対して前記原料ガスを供給し、
前記反応ガスを供給する処理では、前記第2のノズルから前記反応ガスを供給するとともに前記第1のノズルから不活性ガスを供給し、前記反応ガスの流量を所望の前記反応ガスの分圧バランスに応じて設定する基板処理装置。
【請求項9】
複数の基板が積層して収容された基板処理装置の処理室内に前記複数の基板の積層方向に沿って立設された第1のノズルから、前記複数の基板に対して原料ガスを供給する手順と、
前記処理室内に前記複数の基板の積層方向に沿って立設され、上流側から下流側へ向かって広くなる開口面積を有する開口部を備える第2のノズルから、前記複数の基板に対して反応ガスを供給し、前記反応ガスの分圧バランスを前記複数の基板の積層方向に沿って所望の値となるよう調整しつつ前記反応ガスを供給する手順と、
前記反応ガスを供給する手順では、不活性ガスと同時に前記第2のノズルから前記反応ガスを供給し、前記第2のノズルから供給する前記不活性ガスの流量を所望の前記反応ガスの分圧バランスに応じて設定する手順と、
コンピュータにより前記基板処理装置に実行させるプログラム。
【請求項10】
複数の基板が積層して収容された基板処理装置の処理室内に前記複数の基板の積層方向に沿って立設された第1のノズルから、前記複数の基板に対して原料ガスを供給する手順と、
前記処理室内に前記複数の基板の積層方向に沿って立設され、上流側から下流側へ向かって広くなる開口面積を有する開口部を備える第2のノズルから、前記複数の基板に対して反応ガスを供給し、前記反応ガスの分圧バランスを前記複数の基板の積層方向に沿って所望の値となるよう調整しつつ前記反応ガスを供給する手順と、
前記反応ガスを供給する手順では、前記反応ガスの流量を所望の前記反応ガスの分圧バランスに応じて設定する手順と、
をコンピュータにより前記基板処理装置に実行させるプログラム。
【請求項11】
複数の基板が積層して収容された基板処理装置の処理室内に前記複数の基板の積層方向に沿って立設された第1のノズルから、前記複数の基板に対して原料ガスを供給する手順と、
前記処理室内に前記複数の基板の積層方向に沿って立設され、上流側から下流側へ向かって広くなる開口面積を有する開口部を備える第2のノズルから、前記複数の基板に対して反応ガスを供給し、前記反応ガスの分圧バランスを前記複数の基板の積層方向に沿って所望の値となるよう調整しつつ前記反応ガスを供給する手順と、
前記原料ガスを供給する手順では、上流側から下流側へ向かって広くなる開口面積を有する開口部を備える前記第1のノズルから、前記複数の基板に対して前記原料ガスを供給する手順と、
前記反応ガスを供給する手順では、前記第2のノズルから前記反応ガスを供給するとともに前記第1のノズルから不活性ガスを供給し、前記第1のノズルから供給する前記不活性ガスの流量を所望の前記反応ガスの分圧バランスに応じて設定する手順と、
をコンピュータにより前記基板処理装置に実行させるプログラム。
【請求項12】
複数の基板が積層して収容された基板処理装置の処理室内に前記複数の基板の積層方向に沿って立設された第1のノズルから、前記複数の基板に対して原料ガスを供給する手順と、
前記処理室内に前記複数の基板の積層方向に沿って立設され、上流側から下流側へ向かって広くなる開口面積を有する開口部を備える第2のノズルから、前記複数の基板に対して反応ガスを供給し、前記反応ガスの分圧バランスを前記複数の基板の積層方向に沿って所望の値となるよう調整しつつ前記反応ガスを供給する手順と、
前記原料ガスを供給する手順では、上流側から下流側へ向かって広くなる開口面積を有する開口部を備える前記第1のノズルから、前記複数の基板に対して前記原料ガスを供給する手順と、
前記反応ガスを供給する手順では、前記第2のノズルから前記反応ガスを供給するとともに前記第1のノズルから不活性ガスを供給し、前記反応ガスの流量を所望の前記反応ガスの分圧バランスに応じて設定する手順と、
をコンピュータにより前記基板処理装置に実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法、基板処理装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
縦型成膜装置で、多孔ノズルを用いてガス供給し成膜した場合、ボート上部側に装填された被処理基板上の膜厚と、ボート下部側に装填された被処理基板上膜厚に差が生じ、基板間均一性が悪化することがある(特許文献1等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017−54925号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、処理室内に積層された複数の基板において、各基板の面間の膜厚バランスを調整することが可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様によれば、
複数の基板が積層して収容された処理室内に前記複数の基板の積層方向に沿って立設された第1のノズルから、前記複数の基板に対して原料ガスを供給する工程と、
前記処理室内に前記複数の基板の積層方向に沿って立設され、上流側から下流側へ向かって広くなる開口面積を有する開口部を備える第2のノズルから、前記複数の基板に対して反応ガスを供給し、前記反応ガスの分圧バランスを前記複数の基板の積層方向に沿って所望の値となるよう調整しつつ前記反応ガスを供給する工程と、を有する技術が提供される。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、処理室内に積層された複数の基板において、各基板の面間の膜厚バランスを調整することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の第1の実施形態における基板処理装置の縦型処理炉の概略を示す縦断面図である。
図2】本発明の第1の実施形態におけるノズル420のガス供給孔420aの構成を概念的に示す図である。
図3図1におけるA−A線概略横断面図である。
図4】本発明の第1の実施形態における基板処理装置のコントローラの概略構成図であり、コントローラの制御系をブロック図で示す図である。
図5】本発明の第1の実施形態における基板処理装置の動作を示すフロー図である。
図6】NH3ガスの流量を比較的少量とした場合のガスの流れを模式的に示す図である。図6(a)は、ノズル420へのNH3ガスの流量を比較的少量とした場合の処理室201のガスの流れを概念的に示している。図6(b)は、図6(a)のA−A’に沿う横断面図におけるガスの流れを概念的に示している。図6(c)は、図6(a)のB−B’に沿う横断面図おけるガスの流れを概念的に示している。
図7】NH3ガスの流量を比較的多量とした場合ガスの流れを模式的に示す図である。図7(a)は、ノズル420へのNH3ガスの流量を比較的多量とした場合の処理室201のガスの流れを概念的に示している。図7(b)は、図7(a)のA−A’に沿う横断面図におけるガスの流れを概念的に示している。図7(c)は、図7(a)のB−B’に沿う横断面図おけるガスの流れを概念的に示している。
図8】TiN層の成膜結果を説明するための図である。
図9】TiN層の成膜結果を説明するための図である。
図10】N2ガスの流量を比較的少量とした場合のガスの流れを模式的に示す図である。図10(a)は、ノズル410へのN2ガスの流量を比較的少量とした場合の処理室201のガスの流れを概念的に示している。図10(b)は、図19(a)のA−A’に沿う横断面図におけるガスの流れを概念的に示している。図10(c)は、図10(a)のB−B’に沿う横断面図おけるガスの流れを概念的に示している。
図11】N2ガスの流量を比較的多量とした場合ガスの流れを模式的に示す図である。図11(a)は、ノズル410へのN2ガスの流量を比較的多量とした場合の処理室201のガスの流れを概念的に示している。図11(b)は、図11(a)のA−A’に沿う横断面図におけるガスの流れを概念的に示している。図11(c)は、図11(a)のB−B’に沿う横断面図おけるガスの流れを概念的に示している。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<第1の実施形態>
以下、本発明の第1の実施形態について、図1図5を参照しながら説明する。基板処理装置10は半導体装置の製造工程において使用される装置の一例として構成されている。
【0009】
(1)基板処理装置の構成
基板処理装置10は、加熱手段(加熱機構、加熱系)としてのヒータ207が設けられた処理炉202を備える。ヒータ207は円筒形状であり、保持板としてのヒータベース(図示せず)に支持されることにより垂直に据え付けられている。
【0010】
ヒータ207の内側には、ヒータ207と同心円状に反応容器(処理容器)を構成するアウタチューブ203が配設されている。アウタチューブ203は、例えば石英(SiO2)、炭化シリコン(SiC)などの耐熱性材料からなり、上端が閉塞し下端が開口した円筒形状に形成されている。アウタチューブ203の下方には、アウタチューブ203と同心円状に、マニホールド(インレットフランジ)209が配設されている。マニホールド209は、例えばステンレス(SUS)などの金属からなり、上端及び下端が開口した円筒形状に形成されている。マニホールド209の上端部と、アウタチューブ203との間には、シール部材としてのOリング220aが設けられている。マニホールド209がヒータベースに支持されることにより、アウタチューブ203は垂直に据え付けられた状態となる。
【0011】
アウタチューブ203の内側には、反応容器を構成するインナチューブ204が配設されている。インナチューブ204は、例えば石英(SiO2)、炭化シリコン(SiC)などの耐熱性材料からなり、上端が閉塞し下端が開口した円筒形状に形成されている。主に、アウタチューブ203と、インナチューブ204と、マニホールド209とにより処理容器(反応容器)が構成されている。処理容器の筒中空部(インナチューブ204の内側)には処理室201が形成されている。
【0012】
処理室201は、基板としてのウエハ200を後述するボート217によって水平姿勢で鉛直方向に多段に配列した状態で収容可能に構成されている。処理室201内には、ノズル410(第1のノズル),420(第2のノズル)がマニホールド209の側壁及びインナチューブ204を貫通するように設けられている。ノズル410,420には、ガス供給ラインとしてのガス供給管310,320が、それぞれ接続されている。このように、基板処理装置10には3本のノズル410,420と、2本のガス供給管310,320とが設けられており、処理室201内へ複数種類のガスを供給することができるように構成されている。ただし、本実施形態の処理炉202は上述の形態に限定されない。
【0013】
ガス供給管310,320には上流側から順に流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ(MFC)312,322がそれぞれ設けられている。また、ガス供給管310,320には、開閉弁であるバルブ314,324がそれぞれ設けられている。ガス供給管310,320のバルブ314,324の下流側には、不活性ガスを供給するガス供給管510,520がそれぞれ接続されている。ガス供給管510,520には、上流側から順に、流量制御器(流量制御部)であるMFC512,522及び開閉弁であるバルブ514,524がそれぞれ設けられている。
【0014】
ガス供給管310,320の先端部にはノズル410,420がそれぞれ連結接続されている。ノズル410,420は、L字型のノズルとして構成されており、その水平部はマニホールド209の側壁及びインナチューブ204を貫通するように設けられている。ノズル410,420の垂直部は、インナチューブ204の径方向外向きに突出し、かつ鉛直方向に延在するように形成されているチャンネル形状(溝形状)の予備室201aの内部に設けられており、予備室201a内にてインナチューブ204の内壁に沿って上方(ウエハ200の配列方向上方)に向かって設けられている。
【0015】
ノズル410,420は、処理室201の下部領域から処理室201の上部領域まで延在するように設けられており、ウエハ200と対向する位置にそれぞれ複数のガス供給孔410a,420aが設けられている。これにより、ノズル410,420のガス供給孔(開口部)410a,420aからそれぞれウエハ200に処理ガスを供給する。このガス供給孔410aは、インナチューブ204の下部から上部にわたって複数設けられ、それぞれ同一の開口面積を有し、さらに同一の開口ピッチで設けられている。ただし、ガス供給孔410aは上述の形態に限定されない。例えば、インナチューブ204の下部から上部に向かって開口面積を徐々に大きくしてもよい。これにより、ガス供給孔410aから供給されるガスの流量をより均一化することが可能となる。ノズル420のガス供給孔420aの構成については、図2を用いて、以下に、詳細に説明する。
【0016】
ノズル420に設けられる複数のガス供給孔420aは、ウエハ200と対向する位置に、ノズル420の下部(上流側)からノズル420の上部(下流側)にわたって複数設けられる。ノズル420に設けられる複数のガス供給孔420aの孔径φ(開口面積)は、下部(上流側)の孔径が小さく、上部(下流側)の孔径が大きくされている。すなわち、ノズル420に設けられる複数のガス供給孔420aの孔径は、ノズル420の上流側から下流側へ向かって、広くなる開口面積を備えている。
【0017】
ノズル420の下部(上流側)とは、処理室201内にウエハ200の積層方向に沿って立設されたノズル420の下部側、ノズル420への反応ガスの供給元とされる側、または、ノズル420内における反応ガスの流れの上流側を意味する。ノズル420の上部(下流側)とは、処理室201内にウエハ200の積層方向に沿って立設されたノズル420の上部側、または、ノズル420内における反応ガスの流れの下流側を意味する。
【0018】
ノズル420の複数のガス供給孔420aが設けられている領域を、Yとした場合、領域Yは、下部(上流側)から上部(下流側)に向かって、領域Y(1)、領域Y(2)、領域Y(3)、・・・、領域Y(n−1)、および、領域Y(n)を有する。領域Y(1)には、孔径φがA(1)mm、ピッチがXmm、個数Y(1)のガス供給孔420aが設けられる。領域Y(2)には、孔径φがA(2)mm、ピッチがXmm、個数Y(2)のガス供給孔420aが設けられる。領域Y(3)には、孔径φがA(3)mm、ピッチがXmm、個数Y(3)のガス供給孔420aが設けられる。同様に、領域Y(n−1)には、孔径φがA(n−1)mm、ピッチがXmm、個数Y(n−1)のガス供給孔420aが設けられる。領域Y(n)には、孔径φがA(n)mm、ピッチがXmm、個数Y(n)のガス供給孔420aが設けられる。
【0019】
各領域(Y1)、・・・、Y(n)に設けられるガス供給孔420aの孔径φの関係は、以下で表される。
φ:A(n)>A(1)、A(2)、A(3)、・・・、A(n-1)
例えば、孔径φの絶対値が、0.5mmから3.0mmの範囲において、A(n)とA(1)との相対的な比率は、1:1.01−1:6の範囲とするのが良い。
【0020】
以上の構成とすることにより、ノズル420の各ガス供給孔420aから処理室201内に供給される処理ガスの流量を調整することで、処理室201内における処理ガスの分圧バランスが所望の分圧バランスの値となる様に調整可能になる。
【0021】
ノズル410,420のガス供給孔410a,420aは、後述するボート217の下部から上部までの高さの位置に複数設けられている。そのため、ノズル410,420のガス供給孔410a,420aから処理室201内に供給された処理ガスは、ボート217の下部から上部までに収容されたウエハ200、すなわちボート217に収容されたウエハ200の全域に供給される。ノズル410,420は、処理室201の下部領域から上部領域まで延在するように設けられていればよいが、ボート217の天井付近まで延在するように設けられていることが好ましい。
【0022】
ガス供給管310からは、処理ガスとして、第1の金属元素を含む原料ガス(第1の金属含有ガス、第1の原料ガス)が、MFC312、バルブ314、ノズル410を介して処理室201内に供給される。原料としては、例えば第1の金属元素としてのチタン(Ti)を含み、ハロゲン系原料(ハロゲン化物、ハロゲン系チタン原料とも称する)としての四塩化チタン(TiCl4)が用いられる。
【0023】
ガス供給管320からは、処理ガスとして、反応ガスが、MFC322、バルブ324、ノズル420を介して処理室201内に供給される。反応ガスとしては、例えば窒素(N)を含むN含有ガスとしての例えばアンモニア(NH3)ガスを用いることができる。NH3は窒化・還元剤(窒化・還元ガス)として作用する。
【0024】
ガス供給管510,520からは、不活性ガスとして、例えば窒素(N2)ガスが、それぞれMFC512,522、バルブ514,524、ノズル410,420を介して処理室201内に供給される。なお、以下、不活性ガスとしてN2ガスを用いる例について説明するが、不活性ガスとしては、N2ガス以外に、例えば、アルゴン(Ar)ガス、ヘリウム(He)ガス、ネオン(Ne)ガス、キセノン(Xe)ガス等の希ガスを用いてもよい。
【0025】
主に、ガス供給管310,320、MFC312,322、バルブ314,324、ノズル410,420により処理ガス供給系が構成されるが、ノズル410,420のみを処理ガス供給系と考えてもよい。処理ガス供給系を、単に、ガス供給系と称することもできる。ガス供給管310から原料ガスを流す場合、主に、ガス供給管310、MFC312、バルブ314により原料ガス供給系が構成されるが、ノズル410を原料ガス供給系に含めて考えてもよい。また、原料ガス供給系を原料供給系と称することもできる。原料ガスとして金属含有原料ガスを用いる場合、原料ガス供給系を金属含有原料ガス供給系と称することもできる。ガス供給管320から反応ガスを流す場合、主に、ガス供給管320、MFC322、バルブ324により反応ガス供給系が構成されるが、ノズル420を反応ガス供給系に含めて考えてもよい。ガス供給管320から反応ガスとして窒素含有ガスを供給する場合、反応ガス供給系を窒素含有ガス供給系と称することもできる。また、主に、ガス供給管510,520、MFC512,522,バルブ514,524により不活性ガス供給系が構成される。不活性ガス供給系を、パージガス供給系、希釈ガス供給系、或いは、キャリアガス供給系と称することもできる。
【0026】
本実施形態におけるガス供給の方法は、インナチューブ204の内壁と、複数枚のウエハ200の端部とで定義される円環状の縦長の空間内、すなわち、円筒状の空間内の予備室201a内に配置したノズル410,420を経由してガスを搬送している。そして、ノズル410,420のウエハと対向する位置に設けられた複数のガス供給孔410a,420aからインナチューブ204内にガスを噴出させている。より詳細には、ノズル410のガス供給孔410a、ノズル420のガス供給孔420aにより、ウエハ200の表面と平行方向、すなわち水平方向に向かって原料ガス等を噴出させている。
【0027】
排気孔(排気口)204aは、インナチューブ204の側壁であってノズル410,420に対向した位置、すなわち予備室201aとは180度反対側の位置に形成された貫通孔であり、例えば、鉛直方向に細長く開設されたスリット状の貫通孔である。そのため、ノズル410,420のガス供給孔410a,420aから処理室201内に供給され、ウエハ200の表面上を流れたガス、すなわち、残留するガス(残ガス)は、排気孔204aを介してインナチューブ204とアウタチューブ203との間に形成された隙間からなる排気路206内に流れる。そして、排気路206内へと流れたガスは、排気管231内に流れ、処理炉202外へと排出される。
【0028】
排気孔204aは、複数のウエハ200と対向する位置(好ましくはボート217の上部から下部と対向する位置)に設けられており、ガス供給孔410a、420aから処理室201内のウエハ200の近傍に供給されたガスは、水平方向、すなわちウエハ200の表面と平行方向に向かって流れた後、排気孔204aを介して排気路206内へと流れる。すなわち、処理室201に残留するガスは、排気孔204aを介してウエハ200の主面に対して平行に排気される。なお、排気孔204aはスリット状の貫通孔として構成される場合に限らず、複数個の孔により構成されていてもよい。
【0029】
マニホールド209には、処理室201内の雰囲気を排気する排気管231が設けられている。排気管231には、上流側から順に、処理室201内の圧力を検出する圧力検出器(圧力検出部)としての圧力センサ245,APC(Auto Pressure Controller)バルブ243,真空排気装置としての真空ポンプ246が接続されている。APCバルブ243は、真空ポンプ246を作動させた状態で弁を開閉することで、処理室201内の真空排気及び真空排気停止を行うことができ、更に、真空ポンプ246を作動させた状態で弁開度を調節することで、処理室201内の圧力を調整することができる。主に、排気孔204a,排気路206,排気管231,APCバルブ243及び圧力センサ245により、排気系すなわち排気ラインが構成される。なお、真空ポンプ246を排気系に含めて考えてもよい。
【0030】
マニホールド209の下方には、マニホールド209の下端開口を気密に閉塞可能な炉口蓋体としてのシールキャップ219が設けられている。シールキャップ219は、マニホールド209の下端に鉛直方向下側から当接されるように構成されている。シールキャップ219は、例えばSUS等の金属からなり、円盤状に形成されている。シールキャップ219の上面には、マニホールド209の下端と当接するシール部材としてのOリング220bが設けられている。シールキャップ219における処理室201の反対側には、ウエハ200を収容するボート217を回転させる回転機構267が設置されている。回転機構267の回転軸255は、シールキャップ219を貫通してボート217に接続されている。回転機構267は、ボート217を回転させることでウエハ200を回転させるように構成されている。シールキャップ219は、アウタチューブ203の外部に垂直に設置された昇降機構としてのボートエレベータ115によって鉛直方向に昇降されるように構成されている。ボートエレベータ115は、シールキャップ219を昇降させることで、ボート217を処理室201内外に搬入及び搬出することが可能なように構成されている。ボートエレベータ115は、ボート217及びボート217に収容されたウエハ200を、処理室201内外に搬送する搬送装置(搬送機構)として構成されている。
【0031】
基板支持具としてのボート217は、複数枚、例えば25〜200枚のウエハ200を、水平姿勢で、かつ、互いに中心を揃えた状態で鉛直方向に整列させて多段に支持するように、すなわち、間隔を空けて配列させるように構成されている。ボート217は、例えば石英やSiC等の耐熱性材料からなる。ボート217の下部には、例えば石英やSiC等の耐熱性材料からなる断熱板218が水平姿勢で多段(図示せず)に支持されている。この構成により、ヒータ207からの熱がシールキャップ219側に伝わりにくくなっている。ただし、本実施形態は上述の形態に限定されない。例えば、ボート217の下部に断熱板218を設けずに、石英やSiC等の耐熱性材料からなる筒状の部材として構成された断熱筒を設けてもよい。
【0032】
図3に示すように、インナチューブ204内には温度検出器としての温度センサ263が設置されており、温度センサ263により検出された温度情報に基づきヒータ207への通電量を調整することで、処理室201内の温度が所望の温度分布となるように構成されている。温度センサ263は、ノズル410および420と同様にL字型に構成されており、インナチューブ204の内壁に沿って設けられている。
【0033】
図4に示すように、制御部(制御手段)であるコントローラ121は、CPU(Central Processing Unit)121a,RAM(Random Access Memory)121b,記憶装置121c,I/Oポート121dを備えたコンピュータとして構成されている。RAM121b,記憶装置121c,I/Oポート121dは、内部バスを介して、CPU121aとデータ交換可能なように構成されている。コントローラ121には、例えばタッチパネル等として構成された入出力装置122が接続されている。
【0034】
記憶装置121cは、例えばフラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)等で構成されている。記憶装置121c内には、基板処理装置の動作を制御する制御プログラム、後述する半導体装置の製造方法の手順や条件などが記載されたプロセスレシピなどが、読み出し可能に格納されている。プロセスレシピは、後述する半導体装置の製造方法における各工程(各ステップ)をコントローラ121に実行させ、所定の結果を得ることができるように組み合わされたものであり、プログラムとして機能する。以下、このプロセスレシピ、制御プログラム等を総称して、単に、プログラムともいう。本明細書においてプログラムという言葉を用いた場合は、プロセスレシピ単体のみを含む場合、制御プログラム単体のみを含む場合、または、プロセスレシピ及び制御プログラムの組み合わせを含む場合がある。RAM121bは、CPU121aによって読み出されたプログラムやデータ等が一時的に保持されるメモリ領域(ワークエリア)として構成されている。
【0035】
I/Oポート121dは、上述のMFC312,322,512,522,バルブ314,324,514,524、圧力センサ245、APCバルブ243、真空ポンプ246、ヒータ207、温度センサ263、回転機構267、ボートエレベータ115等に接続されている。
【0036】
CPU121aは、記憶装置121cから制御プログラムを読み出して実行すると共に、入出力装置122からの操作コマンドの入力等に応じて記憶装置121cからレシピ等を読み出すように構成されている。CPU121aは、読み出したレシピの内容に沿うように、MFC312,322,512,522による各種ガスの流量調整動作、バルブ314,324,514,524の開閉動作、APCバルブ243の開閉動作及びAPCバルブ243による圧力センサ245に基づく圧力調整動作、温度センサ263に基づくヒータ207の温度調整動作、真空ポンプ246の起動及び停止、回転機構267によるボート217の回転及び回転速度調節動作、ボートエレベータ115によるボート217の昇降動作、ボート217へのウエハ200の収容動作等を制御するように構成されている。
【0037】
コントローラ121は、外部記憶装置(例えば、磁気テープ、フレキシブルディスクやハードディスク等の磁気ディスク、CDやDVD等の光ディスク、MO等の光磁気ディスク、USBメモリやメモリカード等の半導体メモリ)123に格納された上述のプログラムを、コンピュータにインストールすることにより構成することができる。記憶装置121cや外部記憶装置123は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体として構成されている。以下、これらを総称して、単に、記録媒体ともいう。本明細書において記録媒体は、記憶装置121c単体のみを含む場合、外部記憶装置123単体のみを含む場合、または、その両方を含む場合がある。なお、コンピュータへのプログラムの提供は、外部記憶装置123を用いず、インターネットや専用回線等の通信手段を用いて行ってもよい。
【0038】
(2)基板処理工程(成膜工程)
半導体装置(デバイス)の製造工程の一工程として、ウエハ200上に、金属膜を形成する工程の一例について、図5を用いて説明する。金属膜を形成する工程は、上述した基板処理装置10の処理炉202を用いて実行される。以下の説明において、基板処理装置10を構成する各部の動作はコントローラ121により制御される。
【0039】
本実施形態による基板処理工程(半導体装置の製造工程)では、
(a)処理室201内に収容されたウエハ200に対して、TiCl4ガスを供給する工程と、
(b)処理室201内の残留ガスを除去する工程と、
(c)処理室201内に収容されたウエハ200に対して、NH3を供給する工程と、
(d)処理室201内の残留ガスを除去する工程と、
を有し、
前記(a)〜(d)を複数回繰り返して、TiN層を形成する工程と、
を有し、TiN層をウエハ200上に形成する。
【0040】
なお、本明細書において「ウエハ」という言葉を用いた場合は、「ウエハそのもの」を意味する場合や、「ウエハとその表面に形成された所定の層や膜等との積層体(集合体)」を意味する場合(すなわち、表面に形成された所定の層や膜等を含めてウエハと称する場合)がある。また、本明細書において「ウエハの表面」という言葉を用いた場合は、「ウエハそのものの表面(露出面)」を意味する場合や、「ウエハ上に形成された所定の層や膜等の表面、すなわち、積層体としてのウエハの最表面」を意味する場合がある。なお、本明細書において「基板」という言葉を用いた場合も、「ウエハ」という言葉を用いた場合と同義である。
【0041】
(ウエハ搬入)
複数枚のウエハ200がボート217に装填(ウエハチャージ)されると、図1に示されているように、複数枚のウエハ200を支持したボート217は、ボートエレベータ115によって持ち上げられて処理室201内に搬入(ボートロード)される。この状態で、シールキャップ219はOリング220を介して反応管203の下端開口を閉塞した状態となる。
【0042】
(圧力調整および温度調整)
処理室201内が所望の圧力(真空度)となるように真空ポンプ246によって真空排気される。この際、処理室201内の圧力は、圧力センサ245で測定され、この測定された圧力情報に基づき、APCバルブ243がフィードバック制御される(圧力調整)。真空ポンプ246は、少なくともウエハ200に対する処理が完了するまでの間は常時作動させた状態を維持する。また、処理室201内が所望の温度となるようにヒータ207によって加熱される。この際、処理室201内が所望の温度分布となるように、温度センサ263が検出した温度情報に基づきヒータ207への通電量がフィードバック制御される(温度調整)。ヒータ207による処理室201内の加熱は、少なくともウエハ200に対する処理が完了するまでの間は継続して行われる。
【0043】
[TiN層形成工程]
続いて、第1の金属層として例えば金属窒化層であるTiN層を形成するステップを実行する。
【0044】
(TiCl4ガス供給(ステップS10))
バルブ314を開き、ガス供給管310内に原料ガスであるTiCl4ガスを流す。TiCl4ガスは、MFC312により流量調整され、ノズル410のガス供給孔410aから処理室201内に供給され、排気管231から排気される。このとき、ウエハ200に対してTiCl4ガスが供給されることとなる。このとき同時にバルブ514を開き、ガス供給管510内にN2ガス等の不活性ガスを流す。ガス供給管510内を流れたN2ガスは、MFC512により流量調整され、TiCl4ガスと一緒に処理室201内に供給され、排気管231から排気される。なお、このとき、ノズル420内へのTiCl4ガスの侵入を防止するために、バルブ524を開き、ガス供給管520内にN2ガスを流す。N2ガスは、ガス供給管320、ノズル420を介して処理室201内に供給され、排気管231から排気される。
【0045】
このときAPCバルブ243を調整して、処理室201内の圧力を、例えば0.1〜6650Paの範囲内の圧力とする。MFC312で制御するTiCl4ガスの供給流量は、例えば0.1〜2slmの範囲内の流量とする。MFC512,522で制御するN2ガスの供給流量は、それぞれ例えば0.1〜30slmの範囲内の流量とする。TiCl4ガスをウエハ200に対して供給する時間は、例えば0.01〜20秒の範囲内の時間とする。このときヒータ207の温度は、ウエハ200の温度が、例えば250〜550℃の範囲内の温度となるような温度に設定する。
【0046】
処理室201内に流しているガスはTiCl4ガスとN2ガスのみであり、TiCl4ガスの供給により、ウエハ200(表面の下地膜)上に、例えば1原子層未満から数原子層程度の厚さのTi含有層が形成される。
【0047】
(残留ガス除去(ステップS11))
Ti含有層が形成された後、バルブ314を閉じ、TiCl4ガスの供給を停止する。このとき、排気管231のAPCバルブ243は開いたままとして、真空ポンプ246により処理室201内を真空排気し、処理室201内に残留する未反応もしくはTi含有層形成に寄与した後のTiCl4ガスを処理室201内から排除する。このときバルブ514,524は開いたままとして、N2ガスの処理室201内への供給を維持する。N2ガスはパージガスとして作用し、処理室201内に残留する未反応もしくはTi含有層形成に寄与した後のTiCl4ガスを処理室201内から排除する効果を高めることができる。
【0048】
(NH3ガス供給(ステップS12))
処理室201内の残留ガスを除去した後、バルブ324を開き、ガス供給管320内に、反応ガスとしてN含有ガスであるNH3ガスを流す。NH3ガスは、MFC322により流量調整され、ノズル420のガス供給孔420aから処理室201内に供給され、排気管231から排気される。このときウエハ200に対して、NH3ガスが供給されることとなる。このとき、バルブ524は閉じた状態として、N2ガスがNH3ガスと一緒に処理室201内に供給されないようにする。すなわち、NH3ガスはN2ガスで希釈されることなく、処理室201内に供給され、排気管231から排気される。このとき、ノズル410内へのNH3ガスの侵入を防止するために、バルブ514を開き、ガス供給管510内にN2ガスを流す。N2ガスは、ガス供給管310、ノズル410を介して処理室201内に供給され、排気管231から排気される。この場合、反応ガス(NH3ガス)を、N2ガスで希釈することなく、処理室201内へ供給するので、TiN層の成膜レートを向上させることが可能である。なお、ウエハ200近傍におけるN2ガスの雰囲気濃度も調整可能である。
【0049】
NH3ガスを流すときは、APCバルブ243を調整して、処理室201内の圧力を、例えば0.1〜6650Paの範囲内の圧力とする。MFC322で制御するNH3ガスの供給流量は、例えば0.1〜20slmの範囲内の流量とする。MFC512で制御するN2ガスの供給流量は、それぞれ例えば0.1〜30slmの範囲内の流量とする。NH3ガスをウエハ200に対して供給する時間は、例えば0.01〜30秒の範囲内の時間とする。このときのヒータ207の温度は、TiCl4ガス供給ステップと同様の温度に設定する。
【0050】
このとき処理室201内に流しているガスは、NH3ガスとN2ガスのみである。NH3ガスは、TiCl4ガス供給ステップでウエハ200上に形成されたTi含有層の少なくとも一部と置換反応する。置換反応の際には、Ti含有層に含まれるTiとNH3ガスに含まれるNとが結合して、ウエハ200上にTiとNとを含むTiN層が形成される。
【0051】
(残留ガス除去(ステップS13))
TiN層を形成した後、バルブ324を閉じて、NH3ガスの供給を停止する。そして、ステップS11と同様の処理手順により、処理室201内に残留する未反応もしくはTiN層の形成に寄与した後のNH3ガスや反応副生成物を処理室201内から排除する。
【0052】
(所定回数実施)
上記したステップS10〜ステップS13を順に行うサイクルを1回以上(所定回数(n回))行うことにより、ウエハ200上に、所定の厚さ(例えば0.1〜2nm)のTiN層を形成する。上述のサイクルは、複数回繰り返すのが好ましく、例えば10〜80回ほど行うことが好ましく、より好ましくは10〜15回ほど行う。
【0053】
(アフターパージおよび大気圧復帰)
ガス供給管510,520のそれぞれからN2ガスを処理室201内へ供給し、排気管231から排気する。N2ガスはパージガスとして作用し、これにより処理室201内が不活性ガスでパージされ、処理室201内に残留するガスや副生成物が処理室201内から除去される(アフターパージ)。その後、処理室201内の雰囲気が不活性ガスに置換され(不活性ガス置換)、処理室201内の圧力が常圧に復帰される(大気圧復帰)。
【0054】
(ウエハ搬出)
その後、ボートエレベータ115によりシールキャップ219が下降されて、反応管203の下端が開口される。そして、処理済ウエハ200がボート217に支持された状態で反応管203の下端から反応管203の外部に搬出(ボートアンロード)される。その後、処理済のウエハ200は、ボート217より取り出される(ウエハディスチャージ)。
【0055】
次に、上述したステップS12において、ノズル420に供給されるNH3ガスの流量の調整とその効果とを、図6及び図7を用いて説明する。
【0056】
図6及び図7において、ノズル420からNH3ガスが処理室201内に供給され、ノズル410からN2ガスが処理室201内に供給されている場合である。ノズル420のガス供給孔420aは、図2で説明されたノズル420のガス供給孔420aの構成を利用する。また、図6及び図7において、矢印の方向はガスの流れる方向を示し、矢印の長さはガスの分圧を示し、矢印の太さはガスの流量を示すものとする。他の構成は、図1と同じであり、説明を省略する。
【0057】
図6(a)は、ノズル420へのNH3ガスの流量を比較的少量とした場合の処理室201のガスの流れを概念的に示している。図6(b)は、図6(a)のA−A’に沿う横断面図におけるガスの流れを概念的に示している。図6(c)は、図6(a)のB−B’に沿う横断面図おけるガスの流れを概念的に示している。
【0058】
この例では、ノズル420の下部領域のNH3ガスの流量および分圧が、ノズル420の上部領域のNH3ガスの流量および分圧と比較して、大きくなる。つまり、下部領域のNH3ガスの供給量が上部領域のそれより多くなり、それに伴い下部領域のNH3ガスの分圧が上部領域より高くなる分圧バランスを作り込むことができる。したがって、上部領域に位置するウエハ200に形成されるTiN層の膜厚を薄く、下部領域に位置するウエハ200に形成されるTiN層の膜厚を厚く形成させることができる。
【0059】
図6の場合の(ステップ12)の条件例)
処理室内温度:370〜390℃。
処理室内圧力:50〜100Pa。
NH3ガス供給流量:5000〜7500sccm。
NH3ガス照射時間:3〜30秒。
【0060】
図7(a)は、ノズル420へのNH3ガスの流量を比較的多量とした場合の処理室201のガスの流れを概念的に示している。図7(b)は、図7(a)のA−A’に沿う横断面図におけるガスの流れを概念的に示している。図7(c)は、図7(a)のB−B’に沿う横断面図おけるガスの流れを概念的に示している。
【0061】
この例では、ノズル420の下部領域のNH3ガスの流量および分圧が、ノズル420の上部領域のNH3ガスの流量および分圧と比較して、少なくなる。つまり、上部領域のNH3ガス供給量が下部領域のそれより多くなり、それに伴い上部領域のNH3ガスの分圧が下部領域より高くなる分圧バランスを作り込むことができる。したがって、下部領域に位置するウエハ200に形成されるTiN層の膜厚を薄く、上部領域に位置するウエハ200に形成されるTiN層の膜厚を厚く形成させることができる。
【0062】
図7の場合の(ステップ12)の条件例)
処理室内温度:370〜390℃。
処理室内圧力:50〜100Pa。
NH3ガス供給流量:7500〜10000sccm。
NH3ガス照射時間:3〜30秒。
【0063】
図6および図7から理解されるように、図2のノズル420を用い、ノズル420へ供給される処理ガス(NH3ガス)の流量を調整することで、ノズル420の各ガス供給孔420aから処理室201内に供給される処理ガスの分圧バランスが所望の分圧バランスの値となる様に調整することが可能であることを意味する。これにより、処理室201内に積層されたウエハ200間のTiN層の膜厚の均一性を向上させることが可能となる。
【0064】
以下に実験例1を説明するが、本発明はこれらの実験例により限定されるものではない。
【0065】
<実験例1>
図8は、図2のノズル420を反応室201内に設置した状態で、反応ガスであるNH3ガスの流量を変化させて得られた成膜結果である。ノズル420に供給するNH3ガスの流量は、4条件(ケース1:5.0slm、ケース2:6.5slm、ケース3:8.5slm、ケース4:10slm)としている。また、ノズル420には、N2ガスを供給していない(N2ガスの流量:0slm)。
【0066】
図8の成膜結果は、反応室201内の3つの領域に、TiN層の膜厚を確認するモニターを挿入し、膜厚をモニターしたものである。反応室201内の3つの領域は、図6(a)及び図7(a)に示されるように、反応室201の上側から、TOP(T)、CTR(C)、BTM(B)としたものである。
【0067】
図8に示されるグラフにおいて、横軸は、反応室201内の3つの領域(T、C、B)を示し、縦軸は、BTM(B)に対応するウエハ200に形成されたTiN層の膜厚を基準として、TOP(T)及びCTR(C)に対応するウエハ200に形成されたTiN層の膜厚の比を示している。
【0068】
図8から理解されるように、ケース2(NH3ガスの流量:6.5slm)の流量の付近において、各領域(T、C、B)の膜厚がほぼ均一となることがわかる。ケース2より流量の少ないケース1では、TOP(T)領域の膜厚がBTM(B)領域の膜厚よりも薄くなる。ケース2より流量の多いケース3,4では、TOP(T)領域の膜厚がBTM(B)領域の膜厚よりも厚くなる。すなわち、NH3ガスの流量を変化させることで、処理室201内に積層されたウエハ200間のTiN層の膜厚のバランス(面間膜厚バランス)を変化ないし調整できることがわかる。TOP(T)領域の膜厚をBTM(B)領域の膜厚よりも薄く形成することも可能であり、逆に、TOP側の膜厚をBTM側の膜厚よりも厚く形成することも可能である。
【0069】
本実験例のNH3ガスの供給流量以外の条件は、以下である。
【0070】
(実験例の条件)
(ステップ10)
処理室内温度:370〜390℃
処理室内圧力:30〜50Pa
TiCl4ガス供給流量:100〜200sccm
TiCl4ガス照射時間:3〜30秒
(ステップ12)
処理室内温度:370〜390℃。
処理室内圧力:50〜100Pa。
NH3ガス照射時間:3〜30秒。
【0071】
以上で説明した第1の実施形態によれば、以下の1つまたは複数の効果を得ることができる。
【0072】
1)図2に示される様な、複数のガス供給孔420aの孔径が上流側から下流側へ向かって、広くなる開口面積を備えるノズル420を用い、ノズル420へ供給する反応ガス(NH3ガス)の流量を調整することにより、処理室201内の反応ガス(NH3ガス)の分圧バランスを調整することが可能になる。
【0073】
2)上記1)により、処理室内に積層された複数の基板において、各基板の面間の膜厚バランスを調整することが可能になる。
【0074】
3)上記1)を、TiN層の形成工程に用いた場合、反応ガス(NH3ガス)を、N2ガスで希釈することなく、処理室201内へ供給するので、TiN層の成膜レートを向上させることが可能である。
【0075】
<第1の実施形態の変形例1>
上述の第1の実施形態では、ステップS12において、ノズル420から、NH3ガスをN2ガスで希釈せずに反応室201へ流し、ノズル420へ供給するNH3ガスの流量を調整した例を示した。第1の実施形態の変形例1では、ノズル420から、NH3ガスをN2ガスで希釈して、同時に、反応室201へ供給する例を示す。その際、ノズル420へ供給するNH3ガスの流量は固定し、ノズル420へ供給するN2ガスの流量のみを変化させる。
【0076】
(第1の実施形態の変形例1:NH3ガス供給(ステップS12))
処理室201内の残留ガスを除去した後、バルブ324を開き、ガス供給管320内に、反応ガスとしてN含有ガスであるNH3ガスを流す。NH3ガスは、MFC322により流量調整され、ノズル420のガス供給孔420aから処理室201内に供給され、排気管231から排気される。このときウエハ200に対して、NH3ガスが供給されることとなる。このとき同時にバルブ524を開き、ガス供給管520内にN2ガスを流す。ガス供給管520内を流れたN2ガスは、MFC522により流量調整される。N2ガスはNH3ガスと一緒に処理室201内に供給され、排気管231から排気される。このとき、ノズル410内へのNH3ガスの侵入を防止するために、バルブ514を開き、ガス供給管510内にN2ガスを流す。N2ガスは、ガス供給管310、ノズル410を介して処理室201内に供給され、排気管231から排気される。
【0077】
NH3ガスを流すときは、APCバルブ243を調整して、処理室201内の圧力を、例えば0.1〜6650Paの範囲内の圧力とする。MFC322で制御するNH3ガスの供給流量は、例えば0.1〜20slmの範囲内の流量とする。MFC512,522で制御するN2ガスの供給流量は、それぞれ例えば0.1〜30slmの範囲内の流量とする。NH3ガスをウエハ200に対して供給する時間は、例えば0.01〜30秒の範囲内の時間とする。このときのヒータ207の温度は、TiCl4ガス供給ステップと同様の温度に設定する。
【0078】
(第1の実施形態の変形例1:(ステップ12)の条件例)
処理室内温度:370〜390℃。
処理室内圧力:50〜100Pa。
NH3ガス供給流量:7000〜8000sccm。
NH3ガス照射時間:3〜30秒。
N2ガス供給流量:30〜30000sccm。
【0079】
以下に実験例2を説明するが、本発明はこれらの実験例により限定されるものではない。
【0080】
<実験例2>
図9では、図2のノズル420を反応室201内に設置した状態で、ノズル420へ供給する反応ガス(NH3ガス)の流量を固定し、ノズル420へ供給するN2ガスの流量を変化させて得られた成膜結果である。
【0081】
ノズル420へ供給するNH3ガスの流量は、7.5slmとし、ノズル420へ供給するN2ガスの流量は、4条件(ケース1:0slm、ケース2:2.5slm、ケース3:10slm、ケース4:20slm)としている。
【0082】
図9の成膜結果は、図8と同様に、反応室201内の3つの領域に、TiN層の膜厚を確認するモニターを挿入し、膜厚をモニターしたものである。反応室201内の3つの領域は、図6(a)及び図7(a)に示されるように、反応室201の上側から、TOP(T)、CTR(C)、BTM(B)としたものである。
【0083】
図9に示されるグラフにおいて、横軸は、反応室201内の3つの領域(T、C、B)を示し、縦軸は、BTM(B)に対応するウエハ200に形成されたTiN層の膜厚を基準として、TOP(T)及びCTR(C)に対応するウエハ200に形成されたTiN層の膜厚の比を示している。
【0084】
図9から理解されるように、ケース2(N2ガスの流量:2.5slm)の流量の付近において、各領域(T、C、B)の膜厚がほぼ均一となることがわかる。ケース2より流量の少ないケース1では、TOP(T)領域の膜厚がBTM(B)領域の膜厚よりも薄くなる。ケース2より流量の多いケース3,4では、TOP(T)領域の膜厚がBTM(B)領域の膜厚よりも厚くなる。すなわち、N2ガスの流量を変化させることで、処理室201内に積層されたウエハ200間のTiN層の膜厚のバランス(面間膜厚バランス)を変化ないし調整できることわかる。TOP(T)領域の膜厚をBTM(B)領域の膜厚よりも薄く形成することも可能であり、逆に、TOP側の膜厚をBTM側の膜厚よりも厚く形成することも可能である。
【0085】
第1の実施形態の変形例1のステップS12において、ノズル420へのNH3ガスの流量は固定ないしほぼ一定とし、ノズル420へのN2ガスの流量のみを変化させる。
【0086】
この様にしても、第1の実施形態と同様な効果を得ることが可能である。また、N2ガスの流量を多くすると、TiN層の成膜レートを向上させることが可能である。さらに、N2ガスはその価格が安いため、TiN層の製造コスト、または、TiN層を有する半導体装置(半導体チップ)の価格も、低減することが可能である。
【0087】
<第1の実施形態の変形例2>
第1の実施形態の変形例1では、ノズル420から、NH3ガスをN2ガスで希釈して、NH3ガスとN2ガスとを同時に反応室201へ供給する際に、ノズル420へ供給するNH3ガスの流量は固定し、ノズル420へ供給するN2ガスの流量のみを変化させる例を示した。第1の実施形態の変形例2は、ノズル420から、NH3ガスをN2ガスで希釈して、NH3ガスとN2ガスとを同時に反応室201へ供給する際に、ノズル420へ供給するNH3ガスの流量およびN2ガスの流量の両方を調整ないし変化させる。
【0088】
NH3ガスの流量およびN2ガスの流量の両方を変化させることにより、処理室201内の反応ガス(NH3ガス)の分圧バランスを微調整することが可能である。
【0089】
<第2の実施形態>
第2の実施形態は、ノズル420へ供給するNH3ガスの流量を固定とし、ノズル410から反応室201へ供給する逆流防止用のN2ガスの流量を調整ないし変化させるものである。この場合、第1の実施形態の様に、ノズル420から、NH3ガスをN2ガスで希釈せずに、反応室201へ供給する場合、ノズル420へ供給するNH3ガスの流量のみを固定する。また、第1の実施形態の変形例1の様に、ノズル420から、NH3ガスをN2ガスで希釈して、同時に、反応室201へ供給する場合、ノズル420へ供給するNH3ガスの流量と希釈用のN2ガスの流量の両方を固定する。この場合、ノズル410のガス供給孔410aの構成は、図2で説明されたノズル420のガス供給孔420aの構成と同様な構成を有するものとする。
【0090】
(第2の実施形態:NH3ガス供給(ステップS12))
処理室201内の残留ガスを除去した後、バルブ324を開き、ガス供給管320内に、反応ガスとしてN含有ガスであるNH3ガスを流す。NH3ガスは、MFC322により流量調整され、ノズル420のガス供給孔420aから処理室201内に供給され、排気管231から排気される。このときウエハ200に対して、NH3ガスが供給されることとなる。
【0091】
このとき同時にバルブ524を開き、ガス供給管520内にN2ガスを流す。ガス供給管520内を流れたN2ガスは、MFC522により流量調整される。N2ガスはNH3ガスと一緒に処理室201内に供給され、排気管231から排気される。あるいは、バルブ524を閉じた状態として、NH3ガスのみ処理室201内に供給する。
【0092】
また、このとき、ノズル410内へのNH3ガスの侵入を防止するために、バルブ514を開き、ガス供給管510内にN2ガスを流す。N2ガスは、ガス供給管310、ノズル410を介して処理室201内に供給され、排気管231から排気される。
【0093】
NH3ガスを流すときは、APCバルブ243を調整して、処理室201内の圧力を、例えば0.1〜6650Paの範囲内の圧力とする。MFC322で制御するNH3ガスの供給流量は、例えば0.1〜20slmの範囲内の流量とする。MFC512,522で制御するN2ガスの供給流量は、それぞれ例えば0.1〜30slmの範囲内の流量とする。NH3ガスをウエハ200に対して供給する時間は、例えば0.01〜30秒の範囲内の時間とする。このときのヒータ207の温度は、TiCl4ガス供給ステップと同様の温度に設定する。
【0094】
ここで、ノズル420へ供給するNH3ガスの流量を固定し、ノズル410から反応室201へ供給する逆流防止用のN2ガスの流量を調整する。ノズル420から、NH3ガスをN2ガスで希釈して、同時に、反応室201へ供給する場合、ノズル420へ供給するNH3ガスの流量と希釈用のN2ガスの流量の両方を固定する。
【0095】
次に、上述した第2の実施形態のステップS12において、ノズル410に供給されるN2ガスの流量の調整とその効果を、図10及び図11を用いて説明する。
【0096】
図10及び図11において、ノズル420からNH3ガスが処理室201内に供給され、ノズル410からN2ガスが処理室201内に供給されている場合である。ノズル410のガス供給孔410aの構成は、図2で説明されたノズル420のガス供給孔420aの構成と同様な構成を有するものとする。また、図10及び図11において、矢印の方向はガスの流れる方向を示し、矢印の長さはガスの分圧を示し、矢印の太さはガスの流量を示すものとする。他の構成は、図1と同じであり、説明を省略する。
【0097】
図10(a)は、ノズル410へのN2ガスの流量を比較的少量とした場合の処理室201のガスの流れを概念的に示している。図10(b)は、図19(a)のA−A’に沿う横断面図におけるガスの流れを概念的に示している。図10(c)は、図10(a)のB−B’に沿う横断面図おけるガスの流れを概念的に示している。
【0098】
この例では、ノズル410の下部領域のN2ガスの流量および分圧が、ノズル410の上部領域のN2ガスの流量および分圧と比較して、大きくなる。つまり、上部領域のNH3ガス供給量が下部領域のそれより多くなり、それに伴い上部領域のNH3ガスの分圧が下部領域より高くなる分圧バランスを作り込むことができる。したがって、下部領域に位置するウエハ200に形成されるTiN層の膜厚を薄く、上部領域に位置するウエハ200に形成されるTiN層の膜厚を厚く形成させることができる。
【0099】
図11(a)は、ノズル410へのN2ガスの流量を比較的多量とした場合の処理室201のガスの流れを概念的に示している。図11(b)は、図11(a)のA−A’に沿う横断面図におけるガスの流れを概念的に示している。図11(c)は、図11(a)のB−B’に沿う横断面図おけるガスの流れを概念的に示している。
【0100】
この例では、ノズル410の下部領域のN2ガスの流量および分圧が、ノズル410の上部領域のN2ガスの流量および分圧と比較して、小さくなる。つまり、下部領域のNH3ガスの供給量が上部領域のそれより多くなり、それに伴い下部領域のNH3ガスの分圧が上部領域より高くなる分圧バランスを作り込むことができる。したがって、上部領域に位置するウエハ200に形成されるTiN層の膜厚を薄く、下部領域に位置するウエハ200に形成されるTiN層の膜厚を厚く形成させることができる。
【0101】
図10および図11から理解されるように、図2のノズル420のガス供給孔420aの構成と同じ構成のノズル410のガス供給孔410aを利用し、ノズル420に供給される処理ガス(NH3ガス)の流量を固定ないし一定とし、ノズル410へ供給するN2ガスの流量を調整することで、処理室201内における処理ガスの分圧バランスが所望の分圧バランスの値となる様に調整することが可能であることを意味する。これにより、処理室201内に積層されたウエハ200間のTiN層の膜厚の均一性を向上させることが可能となる。なお、ウエハ200近傍におけるN2ガスの雰囲気濃度も調整可能である。
【0102】
第2の実施形態によれば、以下の効果を得ることが出来る。
【0103】
1)処理室201内における処理ガス(NH3ガス)の分圧バランスにおいて、下部領域のNH3ガスの分圧が上部領域より高くなる分圧バランスを容易に作り込むことが可能である。
【0104】
2)N2ガスはその価格が安いため、TiN層の製造コスト、または、TiN層を有する半導体装置(半導体チップ)の価格も、低減することが可能である。
【0105】
3)ノズル420へ供給するNH3ガスの流量を変化させると、処理室201内におけるNH3の濃度に影響するが、ノズル410から流す逆流防止用のN2ガスの流量を調整ないし変化させる場合は、処理室201内におけるNH3の濃度の影響が低いため、プロセスレシピが組みやすい。
【0106】
<第3の実施形態>
第3の実施形態は、第1の実施形態と第2の実施形態とを組み合わせたものである。
【0107】
すなわち、第3の実施形態では、ステップS12において、ノズル420からNH3ガスを反応室201へ供給する際に、同時に、ノズル410から逆流防止用のN2ガスを反応室201へ供給するが、この時、ノズル420へ供給するNH3ガスの流量およびノズル410へ供給する逆流防止用のN2ガスの流量の両方を調整ないし変化させるものである。ノズル410のガス供給孔410aの構成は、図2で説明されたノズル420のガス供給孔420aの構成と同様な構成を有するものとする。
【0108】
このように、ノズル420へ供給するNH3ガスの流量およびノズル410へ供給する逆流防止用のN2ガスの流量の両方を調整することで、反応室201におけるNH3ガスの分圧バランスをより微細に調整することが可能である。なお、ウエハ200近傍におけるN2ガスの雰囲気濃度も調整可能である。
【0109】
<第3の実施形態の変形例1>
第3の実施形態の変形例1では、第1の実施形態の変形例1の様に、ノズル420から、NH3ガスをN2ガスで希釈して反応室201へ供給する際に、同時に、ノズル410から逆流防止用のN2ガスを反応室201へ供給するが、この時、ノズル420へ供給するNH3ガスの流量は固定し、ノズル420へ供給する希釈用のN2ガスの流量とノズル410へ供給する逆流防止用のN2ガスの流量の両方を調整ないし変化させるものである。ノズル410のガス供給孔410aの構成は、図2で説明されたノズル420のガス供給孔420aの構成と同様な構成を有するものとする。
【0110】
このように、ノズル420へ供給する希釈用のN2ガスの流量およびノズル410へ供給する逆流防止用のN2ガスの流量の両方を調整することで、反応室201におけるNH3ガスの分圧バランスをより微細に調整することが可能である。
【0111】
<第3の実施形態の変形例2>
第3の実施形態の変形例2では、第3の実施形態の変形例1において固定としたノズル420へ供給するNH3ガスの流量をも、調整ないし変化させるものである。すなわち、ノズル420から、NH3ガスをN2ガスで希釈して反応室201へ供給する際に、同時に、ノズル410から逆流防止用のN2ガスを反応室201へ供給するが、この時、ノズル420へ供給するNH3ガスの流量、ノズル420へ供給する希釈用のN2ガスの流量、および、ノズル410へ供給する逆流防止用のN2ガスの流量をすべて調整ないし変化させるものである。ノズル410のガス供給孔410aの構成は、図2で説明されたノズル420のガス供給孔420aの構成と同様な構成を有するものとする。
【0112】
このように、ノズル420へ供給するNH3ガスの流量、ノズル420へ供給する希釈用のN2ガスの流量、および、ノズル410へ供給する逆流防止用のN2ガスの流量をすべて調整することで、反応室201におけるNH3ガスの分圧バランスをより微細に調整することが可能である。
【0113】
本発明の実施形態および変形例では、(NH3ガス供給(ステップS12))におけるNH3ガス、希釈用のN2ガス、逆流防止用のN2ガスの流量の調整に関し説明されたが、(TiCl4ガス供給(ステップS10))におけるTiCl4ガス、希釈用のN2ガス、逆流防止用のN2ガスの流量の調整にも適用可能である。
【0114】
本発明の実施形態および変形例を説明してきたが、本発明は縦型成膜装置で形成ないし使用されるすべての膜種、ガス種に適用可能である。
【0115】
以上、本発明の種々の典型的な実施形態及び実施例を説明してきたが、本発明はそれらの実施形態及び実施例に限定されず、適宜組み合わせて用いることもできる。
【符号の説明】
【0116】
10:基板処理装置
121:コントローラ
200:ウエハ(基板)
201:処理室
410:ノズル(第1のノズル)
420:ノズル(第2のノズル)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11