(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
発熱体と熱的に接続される受熱部を有する熱輸送部材と、該熱輸送部材の放熱部にて接続された管体と、該管体と熱的に接続された、複数の放熱フィンが配置された放熱フィン群と、を備えたヒートシンクであり、
前記熱輸送部材が、前記受熱部から前記管体との接続部まで連通し、且つ作動流体が封入された一体である内部空間を有し、前記熱輸送部材の内部空間が、前記管体の内部空間と連通し、
前記熱輸送部材の内部空間に、前記受熱部から前記放熱部へ延在したウィック構造体が収納され、
前記熱輸送部材が、前記受熱部と前記放熱部の間に位置する断熱部と前記放熱部との間に、前記熱輸送部材の熱輸送方向に対して平行方向ではない方向に段差が設けられた放熱側段差部を有し、前記放熱部が前記断熱部よりも前記ヒートシンクの設置面側に位置し、
前記管体の内面には、他のウィック構造体が設けられ、前記ウィック構造体と前記他のウィック構造体とが、接続部材を介して接続され、
前記接続部材が毛細管力を有するウィック部材であり、前記熱輸送部材に設けられた前記ウィック構造体の種類と、前記管体に設けられた前記他のウィック構造体の種類と、前記ウィック部材との種類とが異なるヒートシンク。
前記熱輸送部材が、前記受熱部と前記断熱部との間に、前記熱輸送部材の熱輸送方向に対して平行方向ではない方向に段差が設けられた受熱側段差部を、さらに有する請求項1または2に記載のヒートシンク。
前記第1の段差部における前記ウィック構造体が、前記断熱部及び前記放熱部の位置における前記ウィック構造体よりも、前記熱輸送部材の熱輸送方向に対して直交方向に拡幅されている請求項2に記載のヒートシンク。
【背景技術】
【0002】
電子機器の高機能化に伴い、電子機器内部には、電子部品等の発熱体を含め、多数の部品が電子回路基板等の基板上に高密度に搭載されている。また、電子機器の高機能化に伴い、電子部品等の発熱体の発熱量が増大している。電子部品等の発熱体を冷却する手段として、ヒートシンクが使用されることがある。ヒートシンクとして、一般的には、管形状のヒートパイプを備えたヒートパイプ式のヒートシンクが使用される。
【0003】
ヒートパイプ式ヒートシンクとしては、例えば、複数設けられた管形状のヒートパイプの外周面に突出して平板状の多数の放熱フィンが設けられたヒートパイプ式ヒートシンクがある(特許文献1)。特許文献1のヒートシンクは、複数の管形状のヒートパイプによって発熱体の熱を放熱フィンへ輸送し、該放熱フィンから放熱させるように構成されたヒートシンクである。
【0004】
一方で、近年、電子機器内部には、電子部品等の発熱体を含め、多数の部品がますます高密度に搭載されているので、基板上におけるヒートシンクの設置スペースが狭小空間に制限されることがある。また、電子部品等の高機能化により電子部品からの発熱量が増大していることから、ヒートシンクには、省スペース化と冷却性能のさらなる向上が要求されている。
【0005】
特許文献1のヒートシンク等、発熱体の熱を複数のヒートパイプによって放熱フィンへ輸送するヒートシンクでは、冷却性能を向上させるために、多数のヒートパイプを並列配置させたヒートパイプ群を形成し、該ヒートパイプ群を発熱体に熱的に接続することが必要となる。しかし、多数のヒートパイプからなるヒートパイプ群を発熱体に熱的に接続すると、発熱体からの距離によってヒートパイプの受熱量が異なるので、各ヒートパイプの受熱を均一化できず、十分な冷却性能が得られない場合があった。また、各ヒートパイプの外周面にはR部があり、R部外側に生じる空隙はヒートパイプ群の熱輸送に寄与しないので、ヒートパイプ群の受熱部の体積が十分に得られず、やはり、十分な冷却性能が得られない場合があった。
【0006】
また、基板上には、多数の部品が高密度に搭載されているので、ヒートシンクの設置スペースに、他の部品等が取り付けられた禁止領域が存在することがある。基板上の禁止領域を回避するためにヒートパイプ群の断熱部と放熱部を基板から離れた方向へ逃がすと、狭小空間の設置スペースでは、ヒートパイプ群が放熱フィンの中央部にて熱的に接続されることができず、放熱フィンの放熱性能が十分得られない場合があった。また、ヒートパイプ群の断熱部と放熱部を基板から離れた方向へ逃がすと、狭小空間の設置スペースでは、放熱フィンの設置枚数が制約されて、やはり、放熱フィンの放熱性能が十分得られない場合があった。
【0007】
一方で、放熱フィンの放熱性能を得るために、ヒートパイプ群の放熱部は基板から離れた方向へ逃がさずに、断熱部のみを基板から離れた方向へ逃がすと、ヒートパイプ群の放熱部が受熱部よりも重力方向下方となるトップヒートの姿勢になる。ヒートパイプ群がトップヒートの姿勢になると、放熱部にて気相から液相へ相変化した作動流体の受熱部への還流が阻害されて、受熱部にドライアウトが生じてしまうことがあった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記事情に鑑み、本発明は、ヒートシンクの設置スペースが制限される環境下、該設置スペースに禁止領域が存在していても、受熱部のドライアウトを防止しつつ放熱フィン群の放熱性能を向上させることができ、また、受熱部における入熱を均一化できるヒートシンクを提供することを目的とする。
【0010】
本発明のヒートシンクの構成の要旨は、以下の通りである。
[1]発熱体と熱的に接続される受熱部を有する熱輸送部材と、該熱輸送部材の放熱部にて接続された、複数の放熱フィンが配置された放熱フィン群と、を備えたヒートシンクであり、
前記熱輸送部材が、前記受熱部から前記放熱部まで連通し、且つ作動流体が封入された一体である内部空間を有し、
前記熱輸送部材の内部空間に、前記受熱部から前記放熱部へ延在したウィック構造体が収納され、
前記熱輸送部材が、前記受熱部と前記放熱部の間に位置する断熱部と前記放熱部との間に、前記熱輸送部材の熱輸送方向に対して平行方向ではない方向に段差が設けられた放熱側段差部を有し、前記放熱部が前記断熱部よりも前記ヒートシンクの設置面側に位置するヒートシンク。
[2]前記発熱体と熱的に接続される前記受熱部を有する熱輸送部材と、該熱輸送部材の放熱部にて接続された管体と、該管体と熱的に接続された、前記複数の放熱フィンが配置された放熱フィン群と、を備えたヒートシンクであり、
前記熱輸送部材が、前記受熱部から前記管体との接続部まで連通し、且つ前記作動流体が封入された一体である内部空間を有し、前記熱輸送部材の内部空間が、前記管体の内部空間と連通し、
前記熱輸送部材の内部空間に、前記受熱部から前記放熱部へ延在した前記ウィック構造体が収納され、
前記熱輸送部材が、前記受熱部と前記放熱部の間に位置する前記断熱部と前記放熱部との間に、前記熱輸送部材の熱輸送方向に対して平行方向ではない方向に段差が設けられた前記放熱側段差部を有し、前記放熱部が前記断熱部よりも前記ヒートシンクの設置面側に位置する[1]に記載のヒートシンク。
[3]前記ウィック構造体が、前記放熱側段差部の段差に追従した第1の段差部を有する[1]または[2]に記載のヒートシンク。
[4]前記熱輸送部材が、前記受熱部と前記断熱部との間に、前記熱輸送部材の熱輸送方向に対して平行方向ではない方向に段差が設けられた受熱側段差部を、さらに有する[1]乃至[3]のいずれか1つに記載のヒートシンク。
[5]前記ウィック構造体が、前記受熱側段差部の段差に追従した第2の段差部を、さらに有する[4]に記載のヒートシンク。
[6]前記第1の段差部における前記ウィック構造体が、前記断熱部及び前記放熱部の位置における前記ウィック構造体よりも、前記熱輸送部材の熱輸送方向に対して直交方向に拡幅されている[3]乃至[5]のいずれか1つに記載のヒートシンク。
[7]前記管体が、前記放熱フィンの配置方向に沿って延在している[2]に記載のヒートシンク。
[8]前記管体の延在方向が、前記熱輸送部材の熱輸送方向と平行ではない[2]に記載のヒートシンク。
[9]前記管体が、複数設けられ、前記熱輸送部材から複数の方向に延在している[2]に記載のヒートシンク。
[10]前記熱輸送部材の少なくとも一面が、平面形状である[1]乃至[9]のいずれか1つに記載のヒートシンク。
【0011】
上記態様では、熱輸送部材のうち、冷却対象である発熱体と熱的に接続される部位が受熱部として機能し、管体と接続された部位が熱輸送部材の放熱部として機能する。熱輸送部材の受熱部では、作動流体が発熱体から受熱して液相から気相へ相変化し、熱輸送部材の放熱部では、気相の作動流体の一部が潜熱を放出して気相から液相へ相変化する。本発明のヒートシンクの態様では、発熱体の熱は、熱輸送部材によって熱輸送部材の受熱部から熱輸送部材の放熱部まで輸送され、さらには、熱輸送部材の放熱部から管体まで輸送される。また、熱輸送部材が発熱体から受熱することで気相に相変化した作動流体は、熱輸送部材から管体へ流通する。気相の作動流体が熱輸送部材から管体へ流通することで、管体は、熱輸送部材から熱を受け、さらに、熱輸送部材から受けた熱を放熱フィン群へ伝達する。管体が熱輸送部材から受けた熱を放熱フィン群へ伝達する際に、熱輸送部材から管体へ流通した気相の作動流体は液相へ相変化する。管体から放熱フィン群へ伝達された熱は、放熱フィン群からヒートシンクの外部環境へ放出される。また、上記態様では、熱輸送部材が、断熱部と放熱部との間に、熱輸送方向に対して平行方向ではない方向に段差が設けられた放熱側段差部を有し、放熱部が断熱部よりもヒートシンクの設置面側に位置するので、放熱部は断熱部と同一平面上には位置していない。
【発明の効果】
【0012】
本発明のヒートシンクの態様では、受熱部を有する熱輸送部材の内部空間は、複数のヒートパイプが並列配置されたヒートパイプ群の内部空間とは異なり、全体が連通して一体となっている。よって、内部空間が一体である熱輸送部材が発熱体の熱を受熱部から放熱フィンと熱的に接続された管体との接続部まで輸送する本発明のヒートシンクの態様によれば、液相の作動流体の還流特性に優れ、また、発熱体からの発熱量が増大しても、受熱部における入熱を均一化でき、受熱部における熱抵抗を低減できる。また、本発明のヒートシンクの態様によれば、熱輸送部材の内部空間には受熱部から放熱部へ延在したウィック構造体が収納されており、また、熱輸送部材の断熱部と放熱部との間に、熱輸送方向に対して平行方向ではない方向に段差が設けられた放熱側段差部を備えることで、放熱部が断熱部よりもヒートシンクの設置面側に位置している。従って、ヒートシンクの設置スペースが制限される環境下、該設置スペースに禁止領域が存在していても、受熱部のドライアウトを防止しつつ、熱輸送部材の放熱部と熱的に接続される放熱フィン群の放熱性能を向上させることができる。また、本発明のヒートシンクの態様によれば、熱輸送部材の内部空間は全体が連通して一体となっているので、発熱体に発熱ムラが生じていても、発熱体全体を均一に冷却できる。
【0013】
本発明のヒートシンクの態様によれば、ウィック構造体が放熱側段差部の段差に追従した第1の段差部を有することにより、放熱部から受熱部への液相の作動流体の還流がさらに円滑化されて、受熱部のドライアウトをより確実に防止できる。
【0014】
本発明のヒートシンクの態様によれば、熱輸送部材が、受熱部と断熱部との間に熱熱輸送部材の熱輸送方向に対して平行方向ではない方向に段差が設けられた受熱側段差部をさらに有することにより、設置スペースの禁止領域をより確実に回避できる。
【0015】
本発明のヒートシンクの態様によれば、ウィック構造体が受熱側段差部の段差に追従した第2の段差部をさらに有することにより、設置スペースの禁止領域をより確実に回避しつつ、放熱部から受熱部への液相の作動流体の還流がさらに円滑化される。
【0016】
本発明のヒートシンクの態様によれば、ウィック構造体が第1の段差部にて熱輸送部材の熱輸送方向に対して直交方向に拡幅されていることにより、液相の作動流体が放熱部から断熱部へより円滑に還流できる。
【0017】
本発明のヒートシンクの態様によれば、熱輸送部材の内部空間と連通した管体が放熱フィンの配置方向に沿って延在していることにより、気相の作動流体が、管体内部を放熱フィンの配置方向に沿って流通する。従って、放熱フィン群の放熱効率が向上して、ヒートシンクの冷却性能が確実に向上する。
【0018】
本発明のヒートシンクの態様によれば、管体の延在方向が熱輸送部材の熱輸送方向と平行ではないことにより、熱輸送部材から輸送された熱は熱輸送部材の延在方向(熱輸送方向)とは異なる方向へ輸送される。従って、熱輸送部材の延在方向(熱輸送方向)について、ヒートシンクの寸法の増大を防止することができ、結果、省スペース化を図ることができる。
【0019】
本発明のヒートシンクの態様によれば、複数の管体が熱輸送部材から複数の方向に延在していることにより、熱輸送部材から管体へ輸送された熱は熱輸送部材の延在方向(熱輸送方向)とは異なる複数の方向へ輸送される。従って、熱輸送部材の延在方向(熱輸送方向)について、ヒートシンクの寸法の増大をより確実に防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明の実施形態例に係るヒートシンクについて、図面を用いながら説明する。まず、本発明の第1実施形態例に係るヒートシンクについて説明する。なお、
図1は本発明の第1実施形態例に係るヒートシンクの概要を説明する斜視図である。
図2は、本発明の第1実施形態例に係るヒートシンクの概要を説明する側面図である。
図3は、本発明の第1実施形態例に係るヒートシンク内部の概要を説明する斜視図である。
図4は、本発明の第1実施形態例に係るヒートシンクの熱輸送部材と管体の接続部の概要を示す説明図である。
図5は、本発明の第1実施形態例に係るヒートシンク内部の概要を説明する側面図である。
【0022】
図1、2に示すように、本発明の第1実施形態例に係るヒートシンク1は、発熱体100と熱的に接続される受熱部41を有する熱輸送部材10と、熱輸送部材10と熱的に接続された放熱フィン群20と、放熱フィン群20と熱的に接続された管体31と、を備えている。放熱フィン群20は、管体31に取り付けられた複数の第1の放熱フィン21、21・・・と、熱輸送部材10に取り付けられた複数の第2の放熱フィン22、22・・・を備えている。管体31は、熱輸送部材10とは、熱輸送部材10の放熱部42にて接続されている。また、熱輸送部材10の内部空間が、管体31の内部空間と連通している。すなわち、ヒートシンク1では、熱輸送部材10は、受熱部41から管体31との接続部まで連通し且つ作動流体が封入された一体である内部空間を有している。
【0023】
図1、2に示すように、熱輸送部材10は、中空の空洞部13を有するコンテナ19と、空洞部13を流通する作動流体(図示せず)とを有している。また、空洞部13内には、毛細管力を有するウィック構造体14が収納されている。コンテナ19は、ヒートシンク1の設置面側に位置する一方の板状体11と一方の板状体11と対向する他方の板状体12とを重ね合わせることにより形成されている。
【0024】
一方の板状体11は平面部の縁部に平面部から立設した側壁を有する板状である。他方の板状体12も、平面部の縁部に平面部から立設した側壁を有する板状である。従って、一方の板状体11と他方の板状体12は、凹形状となっている。一方の板状体11と他方の板状体12とを凹形状を対向させた状態で重ね合わせることにより、コンテナ19の空洞部13が形成される。従って、コンテナ19の形状は平面型である。コンテナ19の空洞部13は、外部環境に対して密閉された内部空間であり、脱気処理により減圧されている。
【0025】
コンテナ19外面のうち、冷却対象である発熱体100が熱的に接続される部位が受熱部41として機能する。発熱体100がコンテナ19に熱的に接続されることで、発熱体100が冷却される。熱輸送部材10では、一方端に発熱体100が熱的に接続されているので、一方端に受熱部41が形成されている。また、コンテナ19内面のうち、受熱部41には、受熱部内面表面積増大部44が設けられている。受熱部内面表面積増大部44は、凹凸が繰り返し形成された部位であり、ヒートシンク1では、複数の板状フィン45、45・・・が、一方の板状体11の内面上に立設されている。受熱部41に受熱部内面表面積増大部44が設けられていることにより、受熱部41から液相の作動流体への熱伝達が円滑化される。
【0026】
熱輸送部材10は、発熱体100の位置から所定方向へ延在しており、一方端に対向する他方端に放熱フィン群20を形成する第2の放熱フィン22が熱的に接続されている。放熱フィン群20が熱的に接続されている熱輸送部材10の他方端が、熱輸送部材10の放熱部42として機能する。
【0027】
熱輸送部材10は、コンテナ19の一方端に位置する受熱部41とコンテナ19の他方端に位置する放熱部42との間に位置する中間部が、断熱部43として機能する。断熱部43は、放熱フィン群20も発熱体100も熱的に接続されていない部位である。発熱体100から受熱部41へ伝達された熱が、断熱部43の延在方向に沿って、受熱部41から放熱部42へ輸送される。
【0028】
熱輸送部材10の断熱部43と放熱部42との間には、放熱側段差部50が設けられている。放熱側段差部50は、熱輸送部材10の熱輸送方向に対して平行方向ではない方向に段差が設けられている部位である。ヒートシンク1では、放熱側段差部50は、熱輸送部材10の熱輸送方向に対して略直交方向の段差となっている。また、放熱側段差部50は、ヒートシンク1の設置面に対して略鉛直方向の段差となっている。さらに、放熱側段差部50は、断熱部43から放熱部42へ向かってヒートシンク1の設置面方向への段差となっている。熱輸送部材10の断熱部43と放熱部42との間に放熱側段差部50が設けられていることにより、ヒートシンク1の設置スペースが制限される環境下、該設置スペースに禁止領域101が存在していても、禁止領域101を回避してヒートシンク1を設置することができる。
【0029】
放熱側段差部50は、一方の板状体11に設けられた熱輸送部材10の熱輸送方向に対して略直交方向の段差である段差部51と、他方の板状体12に設けられた熱輸送部材10の熱輸送方向に対して略直交方向の段差である段差部52とから形成されている。従って、一方の板状体11においては、断熱部43と放熱部42は同一平面上に位置していない。また、他方の板状体12においても、断熱部43と放熱部42は同一平面上に位置していない。上記から、放熱部42が断熱部43よりもヒートシンク1の設置面側に位置している。
【0030】
また、
図1、2に示すように、ヒートシンク1では、熱輸送部材10の断熱部43と受熱部41との間には、受熱側段差部60が設けられている。受熱側段差部60は、熱輸送部材10の熱輸送方向に対して平行方向ではない方向に段差が設けられている部位である。ヒートシンク1では、受熱側段差部60は、熱輸送部材10の熱輸送方向に対して略直交方向の段差となっている。また、受熱側段差部60は、ヒートシンク1の設置面に対して略鉛直方向の段差となっている。さらに、受熱側段差部60は、断熱部43から受熱部41へ向かってヒートシンク1の設置面方向への段差となっている。
【0031】
受熱側段差部60は、一方の板状体11に設けられた熱輸送部材10の熱輸送方向に対して略直交方向の段差である段差部61から形成されている。他方の板状体12には、受熱側段差部60を形成する段差は設けられていない。従って、一方の板状体11においては、断熱部43と受熱部41は同一平面上に位置していない。一方で、他方の板状体12においては、断熱部43と受熱部41は同一平面上に位置している。
【0032】
熱輸送部材10の幅方向の寸法は、特に限定されず、ヒートシンク1では、受熱部41、断熱部43及び放熱部42は、略同じ寸法となっている。また、受熱部41における熱輸送部材10の幅方向の寸法は、発熱体100の幅方向の寸法等に応じて適宜選択可能である。
【0033】
図1、3に示すように、ウィック構造体14は、熱輸送部材10の幅方向中央部にてコンテナ19の受熱部41から放熱部42まで延在している。また、ウィック構造体14は、放熱側段差部50の段差に追従した第1の段差部70を有する。すなわち、ウィック構造体14のうち、熱輸送部材10の断熱部43と放熱部42との間に位置する部位に、第1の段差部70が設けられている。第1の段差部70の段差は、熱輸送部材10の熱輸送方向に対して平行方向ではない方向に設けられている。ヒートシンク1では、放熱側段差部50が熱輸送部材10の熱輸送方向に対して略直交方向の段差となっていることに対応して、第1の段差部70は熱輸送部材10の熱輸送方向に対して略直交方向の段差となっている。また、放熱側段差部50がヒートシンク1の設置面に対して略鉛直方向の段差となっていることに対応して、第1の段差部70はヒートシンク1の設置面に対して略鉛直方向の段差となっている。さらに、放熱側段差部50は、断熱部43から放熱部42へ向かってヒートシンク1の設置面方向への段差となっていることに対応して、第1の段差部70は断熱部43から放熱部42へ向かってヒートシンク1の設置面方向への段差となっている。
【0034】
第1の段差部70は、断熱部43側に設けられた、熱輸送部材10の熱輸送方向に対して略直交方向の段差である段差部71と、放熱部42側に設けられた、熱輸送部材10の熱輸送方向に対して略直交方向の段差である段差部72とから形成されている。従って、ウィック構造体14は、一方の板状体11側においては、断熱部43に位置する部位と放熱部42に位置する部位は同一平面上に位置していない。また、ウィック構造体14は、他方の板状体12側においても、断熱部43に位置する部位と放熱部42に位置する部位は同一平面上に位置していない。上記から、ウィック構造体14は、放熱部42に位置する部位が断熱部43に位置する部位よりもヒートシンク1の設置面側に位置している。
【0035】
また、
図1、3に示すように、ウィック構造体14は、受熱側段差部60の段差に追従した第2の段差部80を有する。すなわち、熱輸送部材10の断熱部43と受熱部41との間に位置する部位に、第2の段差部80が設けられている。第2の段差部80の段差は、熱輸送部材10の熱輸送方向に対して平行方向ではない方向に設けられている。ヒートシンク1では、受熱側段差部60が熱輸送部材10の熱輸送方向に対して略直交方向の段差となっていることに対応して、第2の段差部80は熱輸送部材10の熱輸送方向に対して略直交方向の段差となっている。また、受熱側段差部60がヒートシンク1の設置面に対して略鉛直方向の段差となっていることに対応して、第2の段差部80はヒートシンク1の設置面に対して略鉛直方向の段差となっている。さらに、受熱側段差部60が断熱部43から受熱部41へ向かってヒートシンク1の設置面方向への段差となっていることに対応して、第2の段差部80は断熱部43から受熱部41へ向かってヒートシンク1の設置面方向への段差となっている。
【0036】
第2の段差部80は、断熱部43側に設けられた、熱輸送部材10の熱輸送方向に対して略直交方向の段差である段差部81と、受熱部41側に設けられた、熱輸送部材10の熱輸送方向に対して略直交方向の段差である段差部82とから形成されている。従って、ウィック構造体14は、一方の板状体11側においては、断熱部43に位置する部位と受熱部41に位置する部位は同一平面上に位置していない。また、ウィック構造体14は、他方の板状体12側においても、断熱部43に位置する部位と受熱部41に位置する部位は同一平面上に位置していない。上記から、ウィック構造体14は、受熱部41に位置する部位が断熱部43に位置する部位よりもヒートシンク1の設置面側に位置している。
【0037】
ウィック構造体14としては、特に限定されないが、例えば、銅粉等の金属粉の焼結体、金属線からなる金属メッシュ、グルーブ(複数の細溝)、不織布、金属繊維等を挙げることができる。熱輸送部材10では、ウィック構造体14として、金属粉の焼結体が用いられている。空洞部13のうち、ウィック構造体14の設けられていない部位が、気相の作動流体の流通する蒸気流路15として機能する。蒸気流路15は、ウィック構造体14がコンテナ19の受熱部から放熱部まで延在していることに対応して、コンテナ19の受熱部から放熱部まで延在している。熱輸送部材10は、作動流体の動作による熱輸送特性によって、受熱部41にて受けた発熱体100の熱を受熱部41から放熱部42へ輸送する。
【0038】
図1〜3に示すように、熱輸送部材10の他方端には、コンテナ19の空洞部13と内部空間の連通した管体31が設けられている。従って、空洞部13を流通する作動流体は、空洞部13から管体31内部までの空間に封入されている。管体31の形状は、特に限定されず、ヒートシンク1では、長手方向の形状は直線状であり、長手方向に対して直交方向(径方向)の形状は円形状となっている。また、いずれの管体31も、形状、寸法は同じとなっている。
【0039】
管体31は、熱輸送部材10の放熱部42の平面方向に沿って、熱輸送部材10の熱輸送方向に対して略直交方向に延在している。従って、管体31は、断熱部43よりもヒートシンク1の設置面側に位置している。ヒートシンク1では、管体31の延在方向が熱輸送部材10の熱輸送方向と平行ではないので、熱輸送部材10から輸送された熱は、管体31によって、熱輸送部材10の延在方向とは異なる方向へ輸送される。従って、熱輸送部材10の延在方向(熱輸送方向)におけるヒートシンク1の寸法の増大を防止することができるので、ヒートシンク1の省スペース化を図ることができる。
【0040】
また、管体31は、複数設けられており、熱輸送部材10の放熱部42から複数の方向に延在している。ヒートシンク1では、管体31は、熱輸送部材10を中心にして左右両方向、すなわち、2方向へ延在している。また、管体31は、熱輸送部材10を中心にして左右両方向に同じ本数ずつ設けられている。複数の管体31が熱輸送部材10から複数の方向(ヒートシンク1では2方向)に延在しているので、熱輸送部材10から輸送された熱は、熱輸送部材10の延在方向とは異なる複数の方向(ヒートシンク1では2方向)へ分岐して輸送される。従って、熱輸送部材10の延在方向におけるヒートシンク1の寸法の増大をより確実に防止することができる。
【0041】
管体31の空洞部13側端部(以下、「基部」ということがある。)32は開口しており、空洞部13とは反対の端部(以下、「先端部」ということがある。)33は閉塞している。また、コンテナ19の空洞部13と管体31の内部空間は連通しており、管体31の内部空間は、空洞部13と同様に、脱気処理により減圧されている。従って、作動流体は、コンテナ19の空洞部13と管体31の内部空間との間で流通可能となっている。
【0042】
また、コンテナ19の側面部には、管体31をコンテナ19に取り付けるための貫通孔(図示せず)が形成されている。貫通孔の形状と寸法は、管体31の形状と寸法に対応しており、管体31の基部32が、コンテナ19の貫通孔に嵌挿されることで、管体31がコンテナ19に接続されている。従って、管体31とコンテナ19は、別の部材からなっている。コンテナ19に取り付けた管体31を固定する方法としては、特に限定されないが、例えば、溶接、はんだ付け、ろう付け等を挙げることができる。
【0043】
ヒートシンク1では、管体31と熱輸送部材10とは別の部材からなっているので、管体31の配置や形状、寸法等を自由に選択でき、ヒートシンク1の設計の自由度が向上する。また、ヒートシンク1では、コンテナ19の貫通孔に管体31を嵌挿することで、管体31をコンテナ19に取り付けることができるので、組み立てが容易である。
【0044】
図3に示すように、管体31の内面には、コンテナ19に収納されたウィック構造体14とは異なる、毛細管力を生じる他のウィック構造体34が設けられている。他のウィック構造体34としては、特に限定されないが、例えば、銅粉等の金属粉の焼結体、金属線からなる金属メッシュ、グルーブ、不織布、金属繊維等を挙げることができる。管体31では、他のウィック構造体34として、管体31の内面全体を覆うように、複数の細溝が形成されている。細溝は、管体31の長手方向に沿って延在している。
【0045】
図4に示すように、熱輸送部材10に設けられたウィック構造体14と管体31に設けられた他のウィック構造体34とが、接続部材35を介して接続されていてもよい。管体31内部で気相から液相へ相変化した作動流体は、管体31内の他のウィック構造体34の毛細管力によって、他のウィック構造体34内を管体31の先端部33から基部32の方向へ還流し、管体31の基部32まで還流した液相の作動流体は、他のウィック構造体34から接続部材35の一端へ流通する。他のウィック構造体34から接続部材35の一端へ流通した液相の作動流体は、接続部材35を一端から他端へ流通し、接続部材35の他端から熱輸送部材10のウィック構造体14へ還流することができる。
【0046】
従って、接続部材35を設けることで、液相の作動流体は、他のウィック構造体34から熱輸送部材10の受熱部41へ円滑に還流することができる。上記から、接続部材35により、管体31と熱輸送部材10間における液相の作動流体の流通性能が向上するので、ヒートシンク1の冷却性能が向上する。接続部材35としては、例えば、毛細管力を有するウィック部材を挙げることができ、具体的には、金属メッシュ、金属線の編組体、金属繊維等を挙げることができる。
【0047】
コンテナ19及び管体31の材料としては、例えば、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ニッケル合金、ステンレス、チタン、チタン合金等を挙げることができる。コンテナ19の空洞部13及び管体31の内部空間に封入する作動流体としては、コンテナ19及び管体31の材料との適合性に応じて、適宜選択可能であり、例えば、水、フルオロカーボン類、ハイドロフルオロエーテル(HFE)、シクロペンタン、エチレングリコール、これらの混合物等を挙げることができる。
【0048】
コンテナ19の厚さとしては、機械的強度、重量等から適宜選択可能であり、例えば、0.5〜3mmを挙げることができ、熱輸送部材10の幅は、例えば、4〜20mmを挙げることができる。また、管体31の直径としては、機械的強度、重量等から適宜選択可能であり、例えば、5〜10mmを挙げることができる。
【0049】
図1に示すように、放熱フィン群20は、複数の第1の放熱フィン21、21・・・、複数の第2の放熱フィン22、22・・・が、それぞれ、並列配置されて形成されている。第1の放熱フィン21、第2の放熱フィン22ともに、薄い平板状の部材である。このうち、放熱フィン群20のうち、両側部に位置する第1の放熱フィン21は、管体31の長手方向に対して略平行方向に所定間隔にて並列配置されている。従って、管体31は、第1の放熱フィン21の配置方向に沿って延在している。また、第1の放熱フィン21は、管体31の位置に取り付け、固定されて、管体31と熱的に接続されている。第1の放熱フィン21は、いずれも、同じ形状、寸法となっている。放熱フィン群20の中央部に位置する第2の放熱フィン22は、熱輸送部材10の位置に取り付け、固定されて、熱輸送部材10と熱的に接続されている。第2の放熱フィン22が取り付けられた熱輸送部材10の部位が、放熱部42として機能する。第2の放熱フィン22は、熱輸送部材10に立設されるように取り付けられている。
【0050】
第1の放熱フィン21の主表面が、主に第1の放熱フィン21の放熱機能を発揮する面である。第2の放熱フィン22の主表面が、主に第2の放熱フィン22の放熱機能を発揮する面である。第1の放熱フィン21の主表面、第2の放熱フィン22の主表面は、管体31の延在方向、すなわち長手方向に対して、略直交方向となるように配置されている。第1の放熱フィン21の管体31への熱的接続方法は、特に限定されず、公知の方法をいずれも使用可能であり、例えば、第1の放熱フィン21に貫通孔(図示せず)を形成し、この貫通孔に管体31を嵌挿する方法が挙げられる。
【0051】
図1、2に示すように、管体31が断熱部43よりもヒートシンク1の設置面側に位置していることに対応して、第1の放熱フィン21の高さ方向略中央部に管体31を嵌挿することができる。すなわち、第1の放熱フィン21の高さ方向略中央部にて、管体31が熱的に接続される。従って、第1の放熱フィン21の高さ方向上部に管体31を嵌挿する場合と比較して、第1の放熱フィン21の放熱性能を向上させることができる。
【0052】
第2の放熱フィン22の熱輸送部材10への熱的接続方法は、特に限定されず、公知の方法をいずれも使用可能であり、例えば、第2の放熱フィン22の端部に、放熱フィン22の主表面に対して鉛直方向に伸延した固定用片部を設け、該固定用片部を熱輸送部材10の平面に接続して熱輸送部材10に放熱フィン22を立設させる方法が挙げられる。
【0053】
ヒートシンク1は、例えば、送風ファン(図示せず)により強制空冷される。送風ファン由来の冷却風Fは、熱輸送部材10の熱輸送方向に対して略平行方向から供給される。冷却風Fが、第1の放熱フィン21の主表面及び第2の放熱フィン22の主表面に沿って供給されて、放熱フィン群20が冷却される。
【0054】
第1の放熱フィン21及び第2の放熱フィン22の材質は、特に限定されず、例えば、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金等の金属、黒鉛等の炭素材料、炭素材料を用いた複合部材などを挙げることができる。
【0055】
次に、
図1、3、5を用いて、ヒートシンク1の冷却機能のメカニズムについて説明する。まず、熱輸送部材10のコンテナ19の一方端に被冷却体である発熱体100を熱的に接続して、一方端を受熱部41として機能させる。コンテナ19の一方端が発熱体100から受熱すると、コンテナ19の一方端において、空洞部13の液相の作動流体へ熱が伝達されて、コンテナ19の一方端の空洞部13にて、液相の作動流体が気相の作動流体へと相変化する。気相の作動流体は、蒸気流路15をコンテナ19の一方端から放熱部42である他方端へ流通する。気相の作動流体が、コンテナ19の一方端から他方端へ流通することで、熱輸送部材10が、その一方端から他方端へ熱を輸送する。コンテナ19の他方端へ流通した気相の作動流体の一部が、潜熱を放出して液相の作動流体Lへ相変化し、放出された潜熱は、熱輸送部材10と熱的に接続されている第2の放熱フィン22へ伝達される。第2の放熱フィン22へ伝達された熱は、第2の放熱フィン22を介してヒートシンク1の外部環境へ放出される。ウィック構造体14は、放熱側段差部50の段差に追従した第1の段差部70と受熱側段差部60の段差に追従した第2の段差部80を有するので、コンテナ19の他方端にて液相に相変化した作動流体Lは、ウィック構造体14の毛細管力により、コンテナ19の他方端から放熱側段差部50と受熱側段差部60を流通してコンテナ19の一方端へ還流する。
【0056】
また、コンテナ19の空洞部13と管体31の内部空間とは連通しているので、液相の作動流体から相変化した気相の作動流体のうち、コンテナ19の他方端にて液相に相変化しなかった作動流体は、空洞部13から管体31の内部空間へ流入する。管体31の内部空間へ流入した気相の作動流体は、管体31内部にて潜熱を放出して、液相の作動流体Lへ相変化する。管体31内部にて放出された潜熱は、管体31と熱的に接続されている第1の放熱フィン21へ伝達される。第1の放熱フィン21へ伝達された熱は、第1の放熱フィン21を介してヒートシンク1の外部環境へ放出される。管体31内部にて気相から液相に相変化した作動流体Lは、管体31内面の他のウィック構造体34の毛細管力によって、管体31の中央部及び先端部33から、管体31の基部32へ還流する。管体31の基部32へ還流した液相の作動流体Lは、コンテナ19の他方端にて、第1の段差部70と第2の段差部80を有するウィック構造体14へ還流する。ウィック構造体14へ還流した液相の作動流体Lは、ウィック構造体14の毛細管力により、コンテナ19の他方端から放熱側段差部50と受熱側段差部60を流通してコンテナ19の一方端へ還流する。
【0057】
ヒートシンク1では、熱輸送部材10の空洞部13は、複数のヒートパイプが並列配置されたヒートパイプ群の内部空間とは異なり、全体が連通して一体となっている。よって、ヒートシンク1では、空洞部13が一体である熱輸送部材10が発熱体100の熱を受熱部41から放熱フィン群20と熱的に接続された管体31との接続部まで輸送するので、液相の作動流体の還流特性に優れ、また、発熱体100からの発熱量が増大しても、受熱部41における入熱を均一化でき、受熱部41における熱抵抗を低減できる。また、ヒートシンク1では、熱輸送部材10の断熱部43と放熱部42との間に放熱側段差部50を備えることで、放熱部42が断熱部43よりもヒートシンク1の設置面側に位置し、また、受熱部41から放熱部42へ延在し、放熱側段差部50の段差に追従した第1の段差部70を有するウィック構造体14が熱輸送部材10に収納されている。従って、ヒートシンク1の設置スペース、特にヒートシンク1の高さ方向の設置スペースが制限される環境下、設置スペースに禁止領域101が存在していても、禁止領域101を回避しつつ、受熱部41のドライアウトを確実に防止し、且つ熱輸送部材10の放熱部42と熱的に接続される放熱フィン群20の放熱性能を向上させることができる。また、ヒートシンク1では、熱輸送部材10の内部空間は全体が連通して一体となっているので、発熱体100に発熱ムラが生じていても、発熱体100全体を均一に冷却できる。
【0058】
また、ヒートシンク1では、熱輸送部材10が、受熱側段差部60を有することにより、設置スペースの禁止領域100をより確実に回避できる。また、ウィック構造体14が受熱側段差部60の段差に追従した第2の段差部80を有することにより、放熱部42から受熱部41への液相の作動流体の還流がさらに円滑化される。
【0059】
次に、本発明の第2実施形態例に係るヒートシンクについて、図面を用いながら説明する。なお、第2実施形態例に係るヒートシンクは、第1実施形態例に係るヒートシンクと主要部は共通しているので、同じ構成要素については、同じ符号を用いて説明する。なお、
図6は、本発明の第2実施形態例に係るヒートシンクの概要を説明する平面図である。
図7は、本発明の第2実施形態例に係るヒートシンクの概要を説明する側面図である。
【0060】
第1実施形態例に係るヒートシンクでは、管体は、平面型の熱輸送部材の平面方向に沿って、平面型の熱輸送部材の熱輸送方向に対して略直交方向に延在していたが、これに代えて、
図6、7に示すように、第2実施形態例に係るヒートシンク2では、管体31は、平面型の熱輸送部材10の平面方向に対して略直交方向、且つ平面型の熱輸送部材10の熱輸送方向に対して略直交方向に延在している。
【0061】
ヒートシンク2では、放熱フィン群20は、管体31に取り付けられた複数の第1の放熱フィン21、21・・・から形成されている。第1の放熱フィン21は、管体31の長手方向に対して略平行方向に所定間隔にて並列配置されている。従って、管体31は、第1の放熱フィン21の配置方向に沿って延在している。また、放熱側段差部50は、断熱部43から放熱部42へ向かってヒートシンク2の設置面方向への段差となっている。従って、第1の放熱フィン21の設置枚数を増やすことができるので、放熱フィン群20の放熱性能が向上する。
【0062】
ヒートシンク2では、特に、ヒートシンク2の高さ方向において設置スペースを有するもののヒートシンク2の幅方向において設置スペースが制限される環境下、設置スペースに禁止領域101が存在していても、禁止領域101を回避しつつ、受熱部41のドライアウトを確実に防止し、且つ熱輸送部材10の放熱部42と熱的に接続される放熱フィン群20の放熱性能を向上させることができる。
【0063】
次に、本発明の第3実施形態例に係るヒートシンクについて、図面を用いながら説明する。なお、第3実施形態例に係るヒートシンクは、第1、第2実施形態例に係るヒートシンクと主要部は共通しているので、同じ構成要素については、同じ符号を用いて説明する。なお、
図8は、本発明の第3実施形態例に係るヒートシンク内部の概要を説明する斜視図である。
【0064】
図3に示すように、第3実施形態例に係るヒートシンク3では、熱輸送部材10の幅方向中央部にてコンテナ19の受熱部41から放熱部42まで延在しているウィック構造体14は、受熱部41と放熱部42の間で分岐している。ヒートシンク3では、ウィック構造体14は、第2の段差部80の放熱部42側近傍の部位に分岐部を有し、熱輸送部材10のコンテナ19の幅方向両側に、ウィック構造体14の長手方向に沿って、2つの分岐ウィック部14−1、14−2が延在している。ウィック構造体14は、受熱部41から放熱部42まで延在し、分岐ウィック部14−1、14−2は、それぞれ、ウィック構造体14に対して所定間隔をおいて略平行に、第2の段差部80の放熱部42側近傍の部位から放熱部42まで延在している。従って、分岐ウィック部14−1、14−2は、それぞれ、ウィック構造体14と同じく、放熱側段差部50の段差に対応した段差部を有している。
【0065】
管体31に設けられた他のウィック構造体34は、接続部材35を介して、ウィック構造体14と分岐ウィック部14−1または分岐ウィック部14−2と接続されている。従って、管体31内部の液相の作動流体は、他のウィック構造体34から、接続部材35を介して、ウィック構造体14と分岐ウィック部14−1、14−2へ還流する。
【0066】
ヒートシンク3では、ウィック構造体14が放熱側段差部50の段差に対応した第1の段差部70を有するだけではなく、分岐ウィック部14−1、14−2も、それぞれ、放熱側段差部50の段差に対応した段差部を有していることにより、液相の作動流体がより円滑に管体31及び放熱部42から受熱部41へ還流できる。従って、ヒートシンク3では、受熱部41が放熱部42よりも重力方向上方に位置する、トップヒートの姿勢に設置されても、液相の作動流体がより確実に管体31及び放熱部42から受熱部41へ還流でき、受熱部41のドライアウトをより確実に防止できる。
【0067】
次に、本発明の第4実施形態例に係るヒートシンクについて、図面を用いながら説明する。なお、第4実施形態例に係るヒートシンクは、第1〜第3実施形態例に係るヒートシンクと主要部は共通しているので、同じ構成要素については、同じ符号を用いて説明する。なお、
図9は、本発明の第4実施形態例に係るヒートシンクの概要を説明する斜視図である。
【0068】
第1実施形態例に係るヒートシンクでは、放熱側段差部は、一方の板状体に設けられた熱輸送部材の熱輸送方向に対して略直交方向の段差である段差部と、他方の板状体に設けられた熱輸送部材の熱輸送方向に対して略直交方向の段差である段差部とから形成されていた。これに代えて、
図9に示すように、第4実施形態例に係るヒートシンク4では、放熱側段差部50は、一方の板状体11に設けられた熱輸送部材10の熱輸送方向に対して略直交方向の段差である段差部51は設けられているが、他方の板状体12には熱輸送部材10の熱輸送方向に対して略直交方向の段差部は設けられていない。従って、一方の板状体11においては、断熱部43と放熱部42は同一平面上に位置していない。一方で、他方の板状体12においては、断熱部43と放熱部42は同一平面上に位置している。上記から、放熱部42におけるコンテナ19の厚さが、断熱部43におけるコンテナ19の厚さよりも、放熱側段差部50の寸法分、厚くなっている。従って、第4実施形態例に係るヒートシンク4の放熱部42の厚さは、上記した第1実施形態例に係るヒートシンクの放熱部の厚さよりも厚くなっている。また、第4実施形態例に係るヒートシンク4の放熱側段差部50におけるコンテナ19の内部空間は、上記した第1実施形態例に係るヒートシンクの放熱側段差部におけるコンテナの内部空間よりも広くなっている。
【0069】
ヒートシンク4でも、ウィック構造体14は、熱輸送部材10の受熱部41から放熱部42まで延在している。また、ウィック構造体14は、放熱側段差部50の段差に追従した第1の段差部70と受熱側段差部60の段差に追従した第2の段差部80を有する。
【0070】
ヒートシンク4では、放熱側段差部50におけるコンテナ19の内部空間が広くなっているので、熱輸送部材10の断熱部43と放熱部42との間に放熱側段差部50が設けられていても、液相の作動流体は第1の段差部70を放熱部42から受熱部41方向へ円滑に還流できる。
【0071】
次に、本発明のヒートシンクの他の実施形態例について、以下に説明する。上記各実施形態例のヒートシンクでは、熱輸送部材10には、コンテナ19の空洞部13と内部空間の連通した管体31が接続され、該管体31に放熱フィン群20の第1の放熱フィン21が熱的に接続されていたが、熱輸送部材10には管体31が接続されていなくてもよく、従って、放熱フィン群20には第1の放熱フィン21が設けられていなくてもよい。また、ウィック構造体14の第1の段差部70は、必要に応じて、断熱部43及び放熱部42の位置におけるウィック構造体14よりも、熱輸送部材10の熱輸送方向に対して直交方向(熱輸送部材10の幅方向)に拡幅されていている拡幅部73を有していてもよい(
図1、3参照)。すなわち、第1の段差部70の幅が、断熱部43及び放熱部42に位置するウィック構造体14の幅よりも幅広としてもよい。第1の段差部70の幅が拡幅されていることにより、液相の作動流体が放熱部42から断熱部43へより円滑に還流できる。また、ウィック構造体14の第2の段差部80は、必要に応じて、断熱部43及び受熱部41の位置におけるウィック構造体14よりも、熱輸送部材10の幅方向に拡幅されている拡幅部83を有していてもよい(
図1、3参照)。第2の段差部80の幅が拡幅されていることにより、液相の作動流体が断熱部43から受熱部41へより円滑に還流できる。
【0072】
上記実施形態例に係るヒートシンクでは、熱輸送部材10に受熱側段差部60が形成されていたが、ヒートシンクの使用状況や設置状況に応じて、受熱側段差部60は設けなくてもよい。
【課題】本発明は、ヒートシンクの設置スペースが制限される環境下、該設置スペースに禁止領域が存在していても、受熱部のドライアウトを防止しつつ放熱フィンの放熱性能を向上させることができ、また、受熱部における入熱を均一化できるヒートシンクを提供する。
【解決手段】発熱体と熱的に接続される受熱部を有する熱輸送部材と、該熱輸送部材の放熱部にて接続された、複数の放熱フィンが配置された放熱フィン群と、を備えたヒートシンクであり、前記熱輸送部材が、前記受熱部から前記放熱部まで連通し、且つ作動流体が封入された一体である内部空間を有し、前記熱輸送部材の内部空間に、前記受熱部から前記放熱部へ延在したウィック構造体が収納され、前記熱輸送部材が、前記受熱部と前記放熱部の間に位置する断熱部と前記放熱部との間に、前記熱輸送部材の熱輸送方向に対して平行方向ではない方向に段差が設けられた放熱側段差部を有し、前記放熱部が前記断熱部よりも前記ヒートシンクの設置面側に位置するヒートシンク。