(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1記載のマグネタイト懸濁水の製造装置において、前記貯留槽に前記水を連続的に供給する給水部を、更に備え、前記取出部は、前記マグネタイト懸濁水を前記貯留槽から連続的に送り出すことを特徴とするマグネタイト懸濁水の製造装置。
請求項5記載の重金属類の除去装置において、前記貯留槽に前記処理対象水を連続的に供給する給水部を、更に備え、前記取出部は、前記重金属類が付着したマグネタイト粒子を前記貯留槽から連続的に送り出すことを特徴とする重金属類の除去装置。
請求項7記載の重金属類の除去方法において、前記貯留槽への前記処理対象水の供給、及び、前記重金属類が付着したマグネタイト粒子の取り出しを連続的に行うことを特徴とする重金属類の除去方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載のマグネタイト粒子の製造方法は、マグネタイトを得るまでの工程が煩雑であるという課題があった。
また、上述した従来の水の浄化方法は、効率的な浄化が行えず、例えば、一日あたり数百〜数万立方メートルの規模で大量に流れ出る水の砒素濃度を環境基準である0.010mg/Lより低い0.001mg/L以下のレベルまで低下させるのは実質的に不可能であるという共通した課題があった。
本発明は、かかる事情に鑑みてなされるもので、簡素にマグネタイト懸濁水を製造するマグネタイト懸濁水の製造装置及びその製造方法、並びに、処理対象水から重金属類を効率的に取り除く重金属類の除去装置及びその除去方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的に沿う第1の発明に係るマグネタイト懸濁水の製造装置は、複数の鉄粒状物及び水の混合層を蓄え、該鉄粒状物の表面にマグネタイト層を形成させる貯留槽と、前記貯留槽内で前記混合層を攪拌して前記鉄粒状物を相互に接触させ、前記マグネタイト層をマグネタイト粒子として前記鉄粒状物から剥離させると共に、該鉄粒状物の該マグネタイト層が剥離した部分を前記マグネタイト層の形成可能領域にする攪拌手段と、前記マグネタイト粒子が前記水中に浮遊したマグネタイト懸濁水を前記貯留槽から取り出す取出部とを備え
、前記鉄粒状物は、平均粒径が0.5mm以上である。
【0008】
第1の発明に係るマグネタイト懸濁水の製造装置において、前記貯留槽に前記水を連続的に供給する給水部を、更に備え、前記取出部は、前記マグネタイト懸濁水を前記貯留槽から連続的に送り出すのが好ましい。
【0009】
前記目的に沿う第2の発明に係るマグネタイト懸濁水の製造方法は、複数の鉄粒状物及び水の混合層を設け、該混合層において該鉄粒状物の表面にマグネタイト層を形成させる工程Aと、前記混合層を連続的、あるいは、間欠的に攪拌して前記鉄粒状物を相互に接触させ、前記マグネタイト層のマグネタイト粒子としての該鉄粒状物からの剥離と、該鉄粒状物の該マグネタイト層の剥離領域への新たな前記マグネタイト層の形成とを繰り返させて、前記マグネタイト粒子が前記水中に浮遊したマグネタイト懸濁水を生成する工程Bとを有
し、前記鉄粒状物は、平均粒径が0.5mm以上である。
【0010】
第2の発明に係るマグネタイト懸濁水の製造方法において、前記混合層への前記水の供給を連続的に行うのが好ましい。
【0011】
前記目的に沿う第3の発明に係る重金属類の除去装置は、重金属類を含む処理対象水から該重金属類を取り除く重金属類の除去装置において、複数の鉄粒状物及び前記処理対象水の混合層を蓄えて、前記重金属類が付着したマグネタイト層を該鉄粒状物の表面に形成させる貯留槽と、前記貯留槽内で前記混合層を攪拌して前記鉄粒状物を相互に接触させ、前記マグネタイト層を前記重金属類が付着したマグネタイト粒子として前記鉄粒状物から剥離させると共に、該鉄粒状物の該マグネタイト層が剥離した部分を前記マグネタイト層の形成可能領域にする攪拌手段と、前記重金属類が付着したマグネタイト粒子を前記貯留槽から取り出す取出部とを備える。
【0012】
第3の発明に係る重金属類の除去装置において、前記貯留槽に前記処理対象水を連続的に供給する給水部を、更に備え、前記取出部は、前記重金属類が付着したマグネタイト粒子を前記貯留槽から連続的に送り出すのが好ましい。
【0013】
前記目的に沿う第4の発明に係る重金属類の除去方法は、重金属類を含む処理対象水から該重金属類を取り除く重金属類の除去方法において、複数の鉄粒状物及び前記処理対象水の混合層を蓄えた貯留槽内で、前記重金属類が付着したマグネタイト層を該鉄粒状物の表面に形成させる工程Pと、前記混合層を連続的、あるいは、間欠的に攪拌し、前記鉄粒状物を相互に接触させて、前記マグネタイト層を前記重金属類が付着したマグネタイト粒子として該鉄粒状物から剥離させること、及び、該鉄粒状物の該マグネタイト層の剥離領域に前記重金属類が付着した前記マグネタイト層を新たに形成させることを繰り返させる工程Qと、前記重金属類が付着したマグネタイト粒子を前記貯留槽から取り出す工程Rとを有する。
【0014】
第4の発明に係る重金属類の除去方法において、前記貯留槽への前記処理対象水の供給、及び、前記重金属類が付着したマグネタイト粒子の取り出しを連続的に行うのが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
第1の発明に係るマグネタイト懸濁水の製造装置及び第2の発明に係るマグネタイト懸濁水の製造方法は、混合層を攪拌して鉄粒状物を相互に接触させ、マグネタイト層をマグネタイト粒子として鉄粒状物から剥離させると共に、鉄粒状物のマグネタイト層が剥離した部分をマグネタイト層が形成可能な領域にするので、簡素にマグネタイト懸濁水を製造可能である。
また、第3の発明に係る重金属類の除去装置及び第4の発明に係る重金属類の除去方法は、貯留槽内で混合層を攪拌して鉄粒状物を相互に接触させ、マグネタイト層を重金属類が付着したマグネタイト粒子として鉄粒状物から剥離させると共に、鉄粒状物のマグネタイト層が剥離した部分をマグネタイト層が形成可能な領域にするので、連続的に処理対象水から重金属類を取り除くことができ、効率的な重金属類の除去が可能である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
図1、
図2(A)〜(D)に示すように、本発明の第1の実施の形態に係るマグネタイト懸濁水の製造装置10は、複数の鉄粒状物11及び水12の混合層13を蓄え、鉄粒状物11の表面にマグネタイト層14を形成させる貯留槽15と、貯留槽15内で混合層13を攪拌して鉄粒状物11を相互に接触させ、マグネタイト層14をマグネタイト粒子17として鉄粒状物11から剥離させる攪拌手段16と、マグネタイト粒子17が水12中に浮遊したマグネタイト懸濁水18を貯留槽15から取り出す送出部(取出部の一例)19とを備えている。以下、詳細に説明する。
【0018】
マグネタイト懸濁水の製造装置10は、
図1に示すように、混合層13を蓄える貯留槽15及び貯留槽15内に水12を供給する給水部21を備えている。
貯留槽15には、上下方向に配されて、貯留槽15内の上側を2分割する隔壁22が取り付けられている。
混合層13では、
図2(A)に示すように、水12と複数の鉄粒状物11が混ざり合っている。混合層13は、
図1に示すように、貯留槽15の底側半分に貯留されている。隔壁22は、下端が混合層13内に配置されている。本実施の形態において、鉄粒状物11は、70wt%以上のFeを主要成分(例えば、重量比で10%以上)としている。なお、
図2(A)〜(D)においては、鉄粒状物11を球体で描いているが、鉄粒状物11は、球体である必要はない。
【0019】
給水部21は、貯留槽15内の混合層13の上側の隔壁22で仕切られた一側に上方から水12を供給する。以下、貯留槽15内の混合層13の上側の隔壁22で仕切られた一側を、単に「貯留槽15内の一側」とも言い、貯留槽15内の混合層13の上側の隔壁22で仕切られた他側を、単に「貯留槽15内の他側」とも言う。本実施の形態では、貯留槽15内の一側の混合層13の上側に、給水部21から供給される水12が溜まった層が設けられている。
【0020】
貯留槽15内においては、
図2(A)に示すように、混合層13中で、水12及び鉄粒状物11が常時、接触した状態であるため、鉄粒状物11の表面に
図2(B)に示すマグネタイト層14が形成される。本実施の形態では、マグネタイト層14が鉄粒状物11の一部であり、鉄粒状物11の表面が、水12と反応して、マグネタイト層14に変化する。
マグネタイト層14は、主としてFe
3O
4からなり、本実施の形態では、厚みが0.2〜2μmである。
【0021】
貯留槽15の底側には、
図1に示すように、水平に配された回転軸23に放射状に複数の棒材24が連結された攪拌部材25をモータ26に取り付けた攪拌手段16が装着されている。攪拌部材25は、全部もしくは一部(本実施の形態では全部)が混合層13内に配されており、モータ26の駆動による回転によって、混合層13をかき混ぜる。混合層13がかき混ぜられると、
図2(C)に示すように、混合層13中の複数の鉄粒状物11が相互に接触する(擦り合わさる)。
【0022】
マグネタイト層14は、鉄粒状物11のマグネタイト層14が形成されていない部分に比べてもろく、表面にマグネタイト層14が形成された鉄粒状物11が他の鉄粒状物11に接触すると、マグネタイト層14が鉄粒状物11の表面から剥離する。剥離するマグネタイト層14は、粒子状となって鉄粒状物11から離脱するため、マグネタイト層14はマグネタイト粒子17として鉄粒状物11から剥がれ、水12中に浮遊する。
【0023】
貯留槽15の側壁には、マグネタイト粒子17が水12中に浮遊した液体(即ち、マグネタイト懸濁水18)を、貯留槽15内の他側から、貯留槽15の外側に設けられた懸濁水収容槽28に送り出す送出部19が取り付けられている。懸濁水収容槽28には、マグネタイト懸濁水18を懸濁水収容槽28から送り出す出水部29が設けられている。
本実施の形態では、貯留槽15内の他側の混合層13の上側に、主としてマグネタイト粒子17が水12中に浮遊したマグネタイト懸濁水18の層があり、送出部19の貯留槽15への取り付け位置は、マグネタイト懸濁水18の層の上面(水面)より下側である。
【0024】
このため、貯留槽15内全体には、貯留槽15内の一側から他側に向かう水12の流れが発生しており、貯留槽15内の他側においては、貯留槽15の送出部19の取り付け位置に向かうマグネタイト懸濁水18の流れが生じている。
混合層13において発生したマグネタイト粒子17は、貯留槽15内の水12の流れに沿って、混合層13からマグネタイト懸濁水18に移動した後、送出部19を経由して、懸濁水収容槽28に送られる。
【0025】
そして、貯留槽15に供給された水12は、全て、隔壁22により進行方向が制限されて、貯留槽15内の一側から混合層13を通って他側に流れるため、給水部21から水12が供給されている間、混合層13に対して、新しい水12(即ち、鉄粒状物11と反応していない水12)が常時供給される。
本実施の形態では、給水部21が、貯留槽15に連続的に水12を供給することから、混合層13には常に新しい水12が供給され、送出部19は、マグネタイト懸濁水18を連続的に送り出す。
なお、新しい水12を混合層13に効率的に供給できる構造であれば、隔壁22を設ける必要はない。
【0026】
また、混合層13において、マグネタイト層14が剥離した鉄粒状物11は、マグネタイト層14の剥離部分が、混合層13内で水12と接触するため、マグネタイト層14の剥離部分に、
図2(D)に示すように、新たなマグネタイト層14が形成される(マグネタイト層14の剥離部分が、マグネタイト層14となる)。従って、攪拌手段16は、混合層13の攪拌によって、鉄粒状物11を相互に接触させ、マグネタイト層14をマグネタイト粒子17として鉄粒状物11から剥離させると共に、鉄粒状物11のマグネタイト層14が剥離した部分を新たなマグネタイト層14の形成可能領域にする。
【0027】
貯留槽15内では、混合層13における鉄粒状物11からのマグネタイト層14の剥離とマグネタイト層14の剥離部分への新たなマグネタイト層14の形成が、原則、鉄粒状物11が無くなるまで繰り返される。従って、貯留槽15内において、効率的にマグネタイト粒子17、ひいてはマグネタイト懸濁水18を生成することが可能である。
【0028】
ここで、種々の検証により、混合層における鉄粒状物の含有率及び混合層に含有される鉄粒状物の粒径について、以下のことが判明した。
即ち、混合層における鉄粒状物の含有率が小さくなり過ぎると、鉄粒状物の相互の接触機会が少なくなって、鉄粒状物の表面に形成されたマグネタイト層を効率的に剥離することができず、結果として、マグネタイト粒子の生産効率が低下する。一方、混合層における鉄粒状物の含有率が大きくなり過ぎると、混合層の攪拌に必要な動力が大きくなって、混合層内に水を供給するための動力及び混合層からマグネタイト懸濁水を送り出すための動力が大きくなる。
【0029】
そして、混合層に含有される鉄粒状物の粒径が小さくなり過ぎると、マグネタイト懸濁水中に鉄粒状物が含有される割合が高くなり、マグネタイト懸濁水の純度が低下する。一方、鉄粒状物の粒径が大きくなり過ぎると、混合層の単位体積あたりの反応面積が小さくなって、マグネタイト粒子の生産効率が低下する。そのため、検証を重ね、本実施の形態においては、平均粒径が0.5〜30mm(好ましくは、1〜10mm)の鉄粒状物11を、容積比で30〜90%(好ましくは、50〜80%)含有した混合層13を採用するようにしている。
【0030】
また、マグネタイト懸濁水の製造装置10を利用したマグネタイト懸濁水の製造方法は、以下の工程を有することとなる。即ち、当該マグネタイト懸濁水の製造方法は、複数の鉄粒状物11及び水12が混合されてなる混合層13を設け、混合層13において鉄粒状物11の表面にマグネタイト層14を形成させる工程Aと、混合層13を連続的、あるいは、間欠的に攪拌して鉄粒状物11を相互に接触させ、マグネタイト層14のマグネタイト粒子17としての鉄粒状物11からの剥離と、鉄粒状物11のマグネタイト層14の剥離領域への新たなマグネタイト層14の形成とを繰り返させて、マグネタイト粒子17が水12中に浮遊したマグネタイト懸濁水18を生成する工程Bとを有する。
そして、混合層13で鉄粒状物11と水12を効率的に反応させるという点においては、混合層13への水12の供給を連続的に行うのが好ましいと言える。
【0031】
また、攪拌手段の回転軸は、水平配置されている必要がないのは言うまでもなく、鉛直方向に対して斜めに配されていてもよいし、
図3に示す攪拌手段31のように、回転軸32が鉛直方向に配されていてもよい。
攪拌手段31の回転軸32が鉛直方向に配された本発明の第2の実施の形態に係るマグネタイト懸濁水の製造装置30を、
図3を参照して、以下説明する。マグネタイト懸濁水の製造装置30において、マグネタイト懸濁水の製造装置10と同様の構成については、同一の符号を付して詳しい説明を省略する。
【0032】
マグネタイト懸濁水の製造装置30は、混合層13を蓄える貯留槽33及び混合層13を攪拌する攪拌手段31を備え、貯留槽33に水12を供給する給水部34が、貯留槽33の上部の一側(右側)に連結され、貯留槽33からマグネタイト懸濁水18を送り出す送出部(取出部の一例)35が、貯留槽33の下部の他側(左側)に連結されている。
貯留槽33内には、上部の一側から下部の他側に向かう水12の流れが生じており、給水部34から供給された水12は、混合層13を通過して、送出部35に送られる。
【0033】
攪拌手段31は、回転軸32を駆動回転させるモータ36及び回転軸32に放射状に連結された複数の棒材37を備え、回転することによって、混合層13を攪拌する。
混合層13の攪拌により、混合層13においてマグネタイト粒子17が次々に生成されて、マグネタイト懸濁水18が生成される仕組み(過程)は、マグネタイト懸濁水の製造槽10と同じである。なお、送出部35には、マグネタイト粒子17を通し、鉄粒状物11を通さないフィルタ38が取り付けられている。
【0034】
次に、処理対象水41から処理対象水41に溶けている重金属類42(
図5(A)〜(D)参照)を取り除く、
図4に示す本発明の第3の実施の形態に係る重金属類の除去装置40について説明する。
重金属類の除去装置40は、
図4、
図5(A)に示すように、マグネタイト懸濁水の製造装置10と原則同じ構造を有し、複数の鉄粒状物43及び処理対象水41の混合層44を蓄える貯留槽45と、貯留槽45内で混合層44を攪拌する攪拌手段46とを備えている。
【0035】
処理対象水41においては、
図5(A)に示すように、重金属類42が水41a中に溶解している。重金属類42は、マグネタイトに取り込まれるイオンであり、例えば、砒素、鉄、フッ素、ホウ素、亜鉛、水銀であるが、これに限定されない。
貯留槽45内の混合層44においては、
図5(A)に示すように、水41aが鉄粒状物43に接触して反応し、鉄粒状物43の表面にマグネタイト層47が形成される。マグネタイト層47が形成される際、処理対象水41中の重金属類42が、
図5(B)に示すように、マグネタイト層47に付着(マグネタイト層47が重金属類42を吸着や吸収)する。
【0036】
よって、貯留槽45は、重金属類42が付着したマグネタイト層47を鉄粒状物43の表面に形成させる(鉄粒状物43の表面を重金属類42が付着したマグネタイト層47に変化させる)。
重金属類42のマグネタイト層47への付着は、特開2013−75252号公報に記載されているグリーンラスト/フェライト循環法と同様に、マグネタイト層47の生成の際、重金属類42が、マグネタイト層47の結晶間に層間アニオンとして閉じ込められるために行われると考えられる。
【0037】
攪拌手段46は、複数の棒材48が水平配置された回転軸49に連結された攪拌部材50及び回転軸49を中心に攪拌部材50を回転するモータ51を具備し、攪拌部材50を回転することによって混合層44を攪拌する。攪拌手段46は、混合層44の攪拌によって、混合層44内で、鉄粒状物43を相互に接触させ、重金属類42が付着したマグネタイト層47を、重金属類42が付着したマグネタイト粒子52として鉄粒状物43から剥離させると共に、鉄粒状物43のマグネタイト層47が剥離した部分をマグネタイト層47の形成可能領域にする。
なお、攪拌手段46の代わり、回転軸が鉛直方向に配された攪拌手段や回転軸が水平方向に対し斜めに配された攪拌手段を採用してもよい。
【0038】
貯留槽45には、下端が混合層44内に配され、貯留槽45内を2分割する隔壁53が取り付けられている。貯留槽45の近傍には、貯留槽45内の混合層44の上側の隔壁53で仕切られた一側(以下、単に「貯留槽45内の一側」とも言う)に上方から処理対処水41を供給する給水部54が設けられている。
貯留槽45には、貯留槽45内の混合層44の上側の隔壁53で仕切られた他側(以下、単に「貯留槽45内の他側」とも言う)に、重金属類42が付着したマグネタイト粒子52が水41a中に浮遊したマグネタイト懸濁水56を貯留槽45から送り出す(即ち、マグネタイト粒子52を送り出す)送出部(取出部の一例)55が連結されている。
【0039】
そして、貯留槽45の外側には、送出部55から送り出されたマグネタイト懸濁水56を蓄える収容槽57が設けられている。収容槽57は、重金属類42が付着したマグネタイト粒子52を主成分とする沈殿物を収容槽57から排出する排出部58、及び、マグネタイト懸濁水56からマグネタイト粒子52を分離して、残った水41aを送り出す出水部59を備えている。
【0040】
給水部54から供給された処理対象水41は、隔壁53によって進行方向が制限されて、混合層44内に達し、混合層44内で鉄粒状物43と反応して、鉄粒状物43の表面にマグネタイト層47を形成し、マグネタイト層47から剥離したマグネタイト粒子52を水41aに浮遊させたマグネタイト懸濁水56となって、送出部55に向かう。
本実施の形態では、給水部54から連続的に処理対処水41が混合層44に供給され、送出部55は、マグネタイト懸濁水56(即ち、水41aに浮遊した、重金属類42が付着したマグネタイト粒子52)を連続的に貯留槽45から収容槽57に送り出す。
【0041】
以下、重金属類の除去装置40を利用した処理対象水41から重金属類42を取り除く重金属類の除去方法についてまとめると、当該重金属類の除去方法は、複数の鉄粒状物43及び処理対象水41の混合層44を蓄えた貯留槽45内で、重金属類42が付着したマグネタイト層47を鉄粒状物43の表面に形成させる工程Pと、混合層44を連続的、あるいは、間欠的に攪拌し、鉄粒状物43を相互に接触させて、マグネタイト層47を重金属類42が付着したマグネタイト粒子52として鉄粒状物43から剥離させること、及び、鉄粒状物43のマグネタイト層47の剥離領域に重金属類42が付着したマグネタイト層47を新たに形成させることを繰り返させる工程Qと、重金属類42が付着したマグネタイト粒子52を貯留槽45から取り出す工程Rとを有することとなる。
そして、本実施の形態では、混合層44(貯留槽45)への処理対象水41の供給、及び、重金属類42が付着したマグネタイト粒子52の取り出しを連続的に行っている。
【実施例】
【0042】
次に、本発明の作用効果を確認するために行った第1、第2、第3の実験について説明する。
第1の実験では、マグネタイト懸濁水の製造装置を用いて生成した懸濁水にマグネタイト粒子が含有されていることを確認した。実験の結果、懸濁水には、黒色の懸濁物が含有されているのが視認され、その懸濁物は磁石に引き寄せられることを確認した。
また、濾過によって懸濁水から分離した懸濁物をX線回折で同定すると、
図6に示す結果が得られた。
図6の縦軸は、X線強度を示し、横軸は、入射X線方向と回折X線方向のなす角度を示す。
【0043】
図6に示す結果から、懸濁物のX線強度は、マグネタイト特有のピークを有していることが確認され、マグネタイト懸濁水の製造装置によって生成された懸濁水には、マグネタイト粒子が懸濁物として含有されているとの結果を得た。第1の実験で用いた混合層は、含有される鉄粒状物(以下に記載する第3の実験で用いた鉄粒状物についても同じ)が、目開き1.19mmの篩を通過せず、目開き9.52mmの篩を全てが通過するものであった。
【0044】
第2の実験では、砒素を含む1000mLの処理対象水に対し、本実施の形態に係る重金属類の除去方法を適応した場合(以下、「ケース1」とも言う)、及び、処理対象水に複数の鉄片を浸漬した比較例に係る重金属類の除去方法を適応した場合(以下、「ケース2」とも言う)で、処理対象水の砒素濃度をそれぞれ計測し、
図7に示す実験結果を得た。なお、第2の実験において、ケース1で用いた混合層は、含有される鉄粒状物が、目開き0.59mmの篩を通過せず、目開き2.38mmの篩を全てが通過するものであた。そして、ケース2の処理対象水には、直径が約3mm、長さが約60mmの40本の棒状の鉄片を浸漬した。
【0045】
図7の縦軸は砒素濃度を示し、横軸は時間経過を示している。
図7において、折れ線はケース2の処理対象水の砒素濃度の時間経過による推移を表し、グラフの一部を拡大した部分に記載された複数の点は、ケース1による測定を複数回行った結果を示す。
図7に示す結果から、ケース1は、ケース2に比べて、効率的に砒素を除去できるとの結果を得た。
【0046】
また、第3の実験では、所定の流水量で流れる砒素濃度0.2mg/Lの処理対象水に対し、本実施の形態に係る重金属類の除去方法を適用して、処理対象水からの重金属類の除去の処理を行った。
まず、50L/分の流水量で流れる処理対象水に対して、重金属類の除去処理を連続的に7時間行い、処理後の処理対象水の砒素濃度を1時間ごとに計測したところ、全ての計測において、砒素濃度は0.001mg/L以下であった。
次に、80L/分の流水量で流れる処理対象水に対して、重金属類の除去処理を行い、処理後の処理対象水の砒素濃度を1回計測したところ、砒素濃度は0.001mg/L以下であった。
【0047】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明は、上記した形態に限定されるものでなく、要旨を逸脱しない条件の変更等は全て本発明の適用範囲である。
例えば、マグネタイト懸濁水の製造装置及び重金属類の除去装置における取出部は、マグネタイト懸濁水を貯留槽から送り出す送出部に限定されず、例えば、マグネタイト懸濁水をすくい取るものであってもよい。そして、重金属類の除去装置における取出部は、磁力等を利用して、マグネタイト懸濁水から重金属類が付着したマグネタイト粒子を分離して貯留槽から重金属類が付着したマグネタイト粒子を取り出すものであってもよい。
また、マグネタイト懸濁水の製造装置及び重金属類の除去装置で採用可能な攪拌手段は、上述した構造のものに限定されず、例えば、スクリューを回転させて混合層を攪拌するものであってもよい。