特許第6647569号(P6647569)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6647569
(24)【登録日】2020年1月17日
(45)【発行日】2020年2月14日
(54)【発明の名称】三次元造形装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/214 20170101AFI20200203BHJP
   B29C 64/209 20170101ALI20200203BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20200203BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20200203BHJP
【FI】
   B29C64/214
   B29C64/209
   B33Y10/00
   B33Y30/00
【請求項の数】5
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-511529(P2016-511529)
(86)(22)【出願日】2015年3月19日
(86)【国際出願番号】JP2015058244
(87)【国際公開番号】WO2015151832
(87)【国際公開日】20151008
【審査請求日】2018年1月12日
(31)【優先権主張番号】特願2014-73293(P2014-73293)
(32)【優先日】2014年3月31日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】391064429
【氏名又は名称】シーメット株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100165191
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 章
(74)【代理人】
【識別番号】100151459
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 健一
(72)【発明者】
【氏名】大場 好一
(72)【発明者】
【氏名】加藤 陽介
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 幸吉
(72)【発明者】
【氏名】大長 勇哉
(72)【発明者】
【氏名】宮野 英昭
(72)【発明者】
【氏名】岡根 利光
(72)【発明者】
【氏名】今村 聡
(72)【発明者】
【氏名】梶野 智史
【審査官】 田代 吉成
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−131094(JP,A)
【文献】 特開2009−101651(JP,A)
【文献】 特開2006−205456(JP,A)
【文献】 特開2001−150556(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/209
B29C 64/214
B33Y 10/00
B33Y 30/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リコータによって造形テーブル上に粉体材料を撒布して積層し、造形データに基づいて、撒布された粉体材料の上に結合剤をインクジェットヘッドから吐出・塗布し、前記粉体材料を結合させて三次元造形物を作る三次元造形装置において、
前記リコータを、前記造形テーブルの1つの辺の長さ分の粉体材料を撒布できる長さにして、前記1つの辺に対して直交する方向に移動可能に形成し、
前記インクジェットヘッドを、前記1つの辺に隣接する辺の長さ分の結合剤を吐出できるラインヘッドとして形成して、前記1つの辺に隣接する辺に対して直交する方向に移動可能に形成し、
前記リコータは、前記1つの辺に対する往復動作の両方において、前記造形テーブルの上に粉体材料を撒布可能に形成し、
前記インクジェットヘッドには、前記リコータの片道分の粉体材料撒布動作が終了した時点で、前記造形テーブルの上に撒布された粉体材料の上への結合剤の吐出・塗布を片道分行わせ、
以後は前記リコータによる粉体材料の撒布動作と、前記インクジェットヘッドによる結合剤の吐出・塗布動作を、片道分ずつ交互に行わせることを特徴とする三次元造形装置。
【請求項2】
前記造形テーブルが長辺と短辺を備える矩形状である場合に、前記リコータは、前記長辺の長さ分の粉体材料を撒ける長さに形成したことを特徴とする請求項1に記載の三次元造形装置。
【請求項3】
リコータによって造形テーブル上に粉体材料を撒布して積層し、撒布後の粉体材料の上に、造形データに基づいて、結合剤をインクジェットヘッドから吐出・塗布し、前記粉体材料を結合させて三次元造形物を作る三次元造形装置において、
前記リコータを、前記造形テーブルの1つの辺の長さ分の粉体材料を撒布できる長さにして、前記1つの辺に対して直交する方向に移動可能に形成し、
前記インクジェットヘッドを、前記造形テーブルの縦横方向に自在に移動して結合剤を吐出できるシリアルヘッドとして形成すると共に、前記リコータの移動軌跡の外にも移動可能に形成し、
前記リコータが前記1つの辺に対して直交する方向に移動して前記造形テーブルの上に粉体材料を撒布している動作中に、前記インクジェットヘッドに前記リコータを後追いさせて、前記リコータが撒布した粉体材料の上に結合剤を塗布し、
前記リコータは、前記1つの辺に対する往復動作の両方において、前記造形テーブルの上に粉体材料を撒布可能に形成し、
前記リコータの、前記造形テーブルに対する往復路の両端部分に、前記リコータと前記インクジェットヘッドとを上下方向に収容可能なすれ違い路を形成し、
前記リコータは、前記造形テーブルの上への片道分の粉体材料の撒布が終了した後に、前記すれ違い路で待避させ、
前記インクジェットヘッドは、結合剤の吐出・塗布動作が終了した後に、前記すれ違い路で待避させ、
前記リコータは、前記インクジェットヘッドが前記すれ違い路に入った事を確認後に前記造形テーブルの上への片道分の粉体材料の撒布を再開させることを特徴とする三次元造形装置。
【請求項4】
前記インクジェットヘッドは、前記リコータによる1ライン分の粉体材料の撒布に対して、1ライン分の粉体材料の上に結合剤を吐出して塗布するように形成したことを特徴とする請求項3に記載の三次元造形装置。
【請求項5】
前記インクジェットヘッドは、前記リコータによる複数ライン分の粉体材料の撒布が終了するまで待避させ、前記リコータによる複数ライン分の粉体材料の撒布が終了した後に、複数ライン分の粉体材料の上に結合剤を吐出・塗布するように形成したことを特徴とする請求項3に記載の三次元造形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉体材料と粉体材料の結合剤を使用して三次元造形物を造形する三次元造形装置に関し、特に、造形に必要な砂を撒布するリコータと、砂にバインダを塗布するインクジェットヘッドの配置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、三次元の設計データを入力することにより、印刷するように立体物(三次元造形物)を造形する三次元造形装置(3Dプリンタ)が実用化されている。低価格帯(100万円以下)の普及機では、製作台の上に溶かした樹脂をノズルから撒布して薄い層を形成し、この薄い層を重ねることによって立体物を造形しており、薄い層の1層当たりの高さは0.2mm程度である。普及機は玩具等を作るのに適している。
【0003】
一方、高い精度が必要な立体物を造形するためには、数百万円程度する中価格帯の中級機が必要である。中級機の中には、樹脂の粒を噴射して層を積み重ねて造形するものがあり、溶かした樹脂を重ねて造形する普及機に比べて表面の仕上がりが滑らかである。また、中級機の中には数種類の素材を組み合わせて造形物を作るものもあり、色の付いた立体物や、外側部分を透明にして内部構造を見通せるような立体物を造形することができる。このような中級機は部品の機能検証を目的とした試作品の製作や、プレゼンテーション用の模型の製作に適している。
【0004】
更に、数千万円から1億円を超す高価格帯の高級機は製造業向けであり、最終製品に近い造形品を作ることができる。このため、高級機は製品の最終確認やマーケティング、市場調査等で活用するのに適している。また、この高級機に属する三次元造形装置の中には、鋳造品の量産に使用する砂型を作成できるものがある。
【0005】
砂型製造用の三次元造形装置には、本体に砂を貯蔵し、先端部から砂をライン状に撒布できるリコータと、リコータが造形テーブルの上に薄く均一に撒いた砂の上に、バインダと呼ばれる結合剤を塗布するインクジェットヘッドとが備えられている。砂型製造用の三次元造形装置では、造形テーブルの上に薄く均一に撒いた砂の層の上に結合剤を吐出・塗布して固め、積層して造形物を作成した後に、焼成している。粉体から三次元物品を製造する装置については特許文献1に開示がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−248231号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、従来の砂型製造用の三次元造形装置では、造形テーブルに対してリコータとインクジェットヘッドとが同じ方向に移動するようになっているので、造形に時間がかかるという課題があった。即ち、従来は、リコータが造形テーブルの一端から他端に向かって砂を撒いて元の位置に戻った後に、インクジェットヘッドが砂の上に結合剤を吐出・塗布する動作を繰り返しているので、リコータが元の位置に戻るまでインクジェットヘッドに待ち時間があった。
【0008】
本発明は、従来の砂型製造用の三次元造形装置におけるリコータとインクジェットヘッドの動作を見直し、砂を積層する工程におけるインクジェットヘッドの待ち時間を少なくして、造形時間を短縮することができる三次元造形装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の形態によれば、リコータによって造形テーブル上に粉体材料を撒布して積層し、造形データに基づいて、撒布された粉体材料の上に結合剤をインクジェットヘッドから吐出・塗布し、粉体材料を結合させて三次元造形物を作る三次元造形装置であって、リコータを、造形テーブルの1つの辺の長さ分の粉体材料を撒布できる長さにして、1つの辺に対して直交する方向に移動可能に形成し、インクジェットヘッドを、1つの辺に隣接する辺の長さ分の結合剤を吐出・塗布できるラインヘッドとして形成して、1つの辺に隣接する辺に対して直交する方向に移動可能に形成し、リコータは、1つの辺に対する往復動作の両方において、造形テーブルの上に粉体材料を撒布可能に形成し、インクジェットヘッドには、リコータの片道分の粉体材料撒布動作が終了した時点で、造形テーブルの上に撒布された粉体材料の上への結合剤の吐出・塗布を片道分行わせ、以後はリコータによる粉体材料の撒布動作と、インクジェットヘッドによる結合剤の吐出・塗布動作を、片道分ずつ交互に行わせることを特徴とする三次元造形装置が提供される。
【0010】
本発明の第2の形態によれば、リコータによって造形テーブル上に粉体材料を撒布して積層し、撒布後の粉体材料の上に、造形データに基づいて、結合剤をインクジェットヘッドから吐出・塗布し、粉体材料を結合させて三次元造形物を作る三次元造形装置であって、リコータを、造形テーブルの1つの辺の長さ分の粉体材料を撒布できる長さにして、1つの辺に対して直交する方向に移動可能に形成し、インクジェットヘッドを、造形テーブルの縦横方向に自在に移動して結合剤を吐出・塗布できるシリアルヘッドとして形成すると共に、リコータの移動軌跡の外にも移動可能に形成し、リコータが1つの辺に対して直交する方向に移動して造形テーブルの上に粉体材料を撒布している動作中に、インクジェットヘッドにリコータを後追いさせて、リコータが撒布した粉体材料の上に結合剤を塗布し、リコータは、1つの辺に対する往復動作の両方において、造形テーブルの上に粉体材料を撒布可能に形成し、リコータの、造形テーブルに対する往復路の両端部分に、リコータとインクジェットヘッドとを上下方向に収容可能なすれ違い路を形成し、リコータは、造形テーブルの上への片道分の粉体材料の撒布が終了した後に、すれ違い路で待避させ、インクジェットヘッドは、結合剤の吐出・塗布動作が終了した後に、すれ違い路で待避させ、リコータは、インクジェットヘッドがすれ違い路に入った事を確認後に造形テーブルの上への片道分の粉体材料の撒布を再開させることを特徴とする三次元造形装置が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明の三次元造形装置によれば、造形テーブルの上に砂を撒くリコータの戻り動作を待つことなく、造形テーブルの上に撒かれた砂の上にインクジェットヘッドから結合剤を吐出・塗布することができるので、造形時間を短縮することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】(a)は一般的な三次元造形装置を構成する部材を示す斜視図、(b)は(a)に示した三次元造形装置で形成される三次元造形物の鋳型によって鋳造された円柱を三次元造形物の例として示す斜視図、(c)は(b)に示した円柱を鋳造するために造形タンク内に形成された造形物の一例を示す斜視図である。
図2】(a)は図1に示した造形タンク内に格納された造形テーブルの上にリコータにより第1層目の砂層が形成される工程を示す斜視図、(b)は(a)の工程によって造形テーブルの上に作られた砂層に、インクジェットヘッドによりバインダが吐出・塗布される工程を示す斜視図、(c)は(b)に示した第1層目の砂層の上に、リコータによる第2層目の砂層が形成される工程を示す斜視図、(d)はリコータによる砂層の形成とインクジェットヘッドによるバインダの吐出・塗布が複数層に渡って行われた後に、砂層の上にインクジェットヘッドによりバインダを吐出・塗布する工程を示す斜視図である。
図3】(a)は図2(a)に示した状態を造形タンクと造形テーブルを昇降させる昇降装置と共に示す断面図、(b)は図2(b)に示した状態を造形タンクと造形テーブルを昇降させる昇降装置と共に示す断面図、(c)は図2(c)に示した状態を造形タンクと造形テーブルを昇降させる昇降装置と共に示す断面図、(d)は(c)の工程によって形成された2層目の砂層の上にインクジェットヘッドによりバインダを吐出・塗布する工程を示す断面図、(e)は造形タンク内の造形テーブルの上に砂層が複数層に渡って形成された状態を示す断面図、(f)は造形タンク内の造形テーブルの上に砂層が最後の層まで形成され、砂層の中にバインダによって中空造形物が形成された状態を示す断面図である。
図4】(a)は図3(f)のA−A線における断面図、(b)は(a)のB−B線における断面図、(c)は(a)のC−C線における断面図、(d)は(a)のD−D線における断面図、(e)は(a)のE−E線における断面図、(f)は(a)のF−F線における断面図、(g)は(a)のG−G線における断面図である。
図5】(a)は本発明の三次元造形装置の第1の実施例におけるインクジェットヘッドとリコータの移動機構の構造を示す斜視図、(b)は(a)に示すインクジェットヘッドとリコータの移動機構を、矢印A方向から見た矢視図、(c)は(a)に示すインクジェットヘッドとリコータの移動機構を、矢印B方向から見た矢視図である。
図6】(a)は図5(a)に示したインクジェットヘッドとリコータの移動機構を矢印C方向から見た斜視図、(b)は(a)に示した状態から、ヘッドが移動している状態を示す斜視図、(c)は(b)に示した状態からヘッドの移動が終わり、リコータが移動している状態を示す斜視図である。
図7】(a)は本発明の三次元造形装置の第1の実施例におけるインクジェットヘッドのバインダの噴口部分の構造の一例を示す斜視図、(b)は(本発明の三次元造形装置の第1の実施例におけるインクジェットヘッドのバインダの噴口部分の構造の他の例を示す斜視図である。
図8】本発明の三次元造形装置の第1の実施例におけるインクジェットヘッドとリコータの動作を説明するものであり、(a)はインクジェットヘッドとリコータが待避状態にある時の斜視図、(b)はリコータが造形テーブル上に砂を撒布している状態を示す斜視図、(c)はリコータによって撒かれた砂の上に、インクジェットヘッドによってバインダが吐出・塗布されている状態を示す斜視図である。
図9】(a)は本発明の三次元造形装置の第2の実施例におけるインクジェットヘッドとリコータの移動機構の構造を示す斜視図であり、インクジェットヘッドとリコータが待避位置にある状態を示す図、(b)は(a)に示した状態からリコータが移動して砂撒きをしている状態を示す斜視図、(c)は(b)に示した状態から、インクジェットヘッドがリコータを後追いして動作している状態を示す斜視図、(d)はリコータが砂撒き動作を終了して待避位置に入り、インクジェットヘッドが移動してバインダを吐出・塗布している状態を示す斜視図である。
図10】(a)はインクジェットヘッドとリコータが待避位置にある状態を示す図、(b)は(a)に示した状態からリコータが移動して砂撒きをしている状態を示す斜視図、(c)は(b)に示した状態から、インクジェットヘッドがリコータを後追いして動作している状態を示す斜視図、(d)はリコータが砂撒き動作を終了して待避位置に入り、インクジェットヘッドが移動してバインダを吐出・塗布している状態を示す斜視図である。
図11】(a)は本発明の三次元造形装置の第2の実施例において、リコータが移動して砂撒きを行い、インクジェットヘッドがリコータを後追いしてバインダを吐出・塗布している状態を示す部分拡大斜視図、(b)は(a)の平面図である。
図12】(a)は本発明の三次元造形装置の第3の実施例におけるインクジェットヘッドとリコータの移動機構の構造を簡略化して示す平面図であり、インクジェットヘッドとリコータが待避位置にある状態を示す図、(b)は(a)に示した状態からリコータが移動して砂撒き動作を行い、インクジェットヘッドがリコータを後追いして動作している状態を示す平面図、(c)は(b)に示した状態から、リコータが砂撒き動作を終了して待避位置に入り、インクジェットヘッドもバインダの吐出・塗布動作を終了して待避位置に入った状態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を用いて本発明の実施の形態を、具体的な実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明の実施の形態を説明する前に、図1から図4を用いてこれまでの一般的な粉体材料として砂を用いた三次元造形装置の構造及び動作を説明する。なお、砂は一例であり、三次元造形装置の造形タンクは、砂以外の他の粉体材料に対しても適用が可能である。また、本発明の三次元造形装置の構造は、後述するインクジェットヘッドとリコータの移動機構の部分を除いて、図1(a)に示す三次元造形装置10の構造と同一で良いので、本発明の実施例の説明においては、インクジェットヘッドとリコータの移動機構の部分を除く三次元造形装置の構造については説明を省略する。
【0014】
図1(a)は一般的な三次元造形装置10の外観とその内部に設けられる部材を取り出して示すものである。三次元造形装置10は3Dプリンタとも呼ばれる。三次元造形装置10には、インクジェットヘッド1、リコータ2、造形タンク3、昇降装置4、砂供給ホッパユニット5、クリーニングユニット6、造形タンク移送ユニット7及び薬品ユニット8等が内蔵されている。なお、以後、インクジェットヘッド1は単にヘッド1と記す。
【0015】
ヘッド1は、ヘッドX軸HAXとヘッドY軸HAYにより矢印で示す前後左右に移動することができる。また、ヘッド1は、ビットマップやNCのパスデータ等の3次元データが2次元の層の集まりに変換されたデータを元に、砂を結合させる結合剤であるバインダを吐出し、造形テーブルの上に塗布する。結合剤は以後、バインダと記載する。ヘッド1の近傍にはリコータ2が設けられている。リコータ2は、リコータ内ホッパと振動ブレード(共に図示せず)を備えている。リコータ内ホッパは、砂供給ホッパユニット5から供給される砂を貯蔵する。また、振動ブレードは、リコータ2がリコータ軸RAY1によって矢印で示す装置正面から見て前後方向に移動している時に動作し、移動中にリコータ2から砂を造形テーブルの上に密に且つ水平に同じ厚さで撒く。
【0016】
造形タンク3は後述する造形テーブルを格納するものであり、造形テーブルの上に造形したモデル(本発明では三次元造形物)が完成する。造形タンク3の中にモデルが完成すると、造形タンク3は造形タンク移送ユニット7の駆動ローラによって自動で三次元造形装置10の外に送り出される。造形タンク3を三次元造形装置10の中に挿入する時も造形タンク移送ユニット7の駆動ローラによって自動で造形タンク3が三次元造形装置10の中に挿入される。
【0017】
昇降装置4は造形タンク3に格納された造形テーブルを矢印で示すZ軸方向に移動させるものであり、汎用のものが使用できるので、ここではその構成についての説明は省略する。また、クリーニングユニット6は、ヘッド1に付着した余分なバインダや砂等を取り除くものであり、薬品ユニット8は、造形プロセスに使用する薬品(バインダ、クリーナ)を貯蔵するものである。バインダはヘッド1に供給され、クリーナはクリーニングユニット6に供給される。また、薬品ユニット8には廃液タンクがあり、クリーニングユニット6で発生した廃液がこのタンクに回収される。
【0018】
リコータやヘッドの各軸に沿った移動は、ボールねじを使用する、タイミングベルトを使用する、或いは空気圧を使用したエアスライドシリンダを使用する等の公知の手段によって行うことができる。同様に昇降装置による造形テーブルの昇降には、ボールねじを使用した機構、チェーンと歯車を使用した機構、空気圧を使用したエアスライドシリンダ、或いは油圧機構等の公知の機構を使用することができる。
【0019】
図1(a)に示した三次元造形装置10では、図1(b)に示すような鋳造品90を作るための、図1(c)に示すような砂型を三次元造形物20として造形することが可能である。図1(c)に示す三次元造形物20には、鋳造品90を鋳込むための内部空間21と内部空間21に鋳鉄を流入させるための連絡部である湯口22が設けられている。
【0020】
ここで、図1(a)に示した造形タンク3の中に、ヘッド1とリコータ2を使用して三次元造形物を作る工程の一般的な例について、図2から図4を用いて説明する。なお、この例では、造形タンク3の中に作る粉体材料が封入された三次元造形物として、図1(b)に示した鋳造品90と同形状の鋳造品を作る鋳型を、最小限の三次元造形物として作る場合について説明する。
【0021】
図2(a)、図3(a)は、図1(a)に示した造形タンク3内に格納された造形テーブル30の上に、リコータ2により砂Sを水平に撒いて第1層目の砂層S1を形成する工程を示すものである。図3(a)に示すように、この例では、造形開始時点において、造形テーブル30の上面30Sは造形タンク3の上端面3Tと同じ高さの面になっているものとする。リコータ2の中には図1(a)に示した砂供給ホッパユニット5から供給される砂Sが入っており、リコータ2はリコータ軸RAY1に沿って矢印の方向に移動して、この砂Sを造形テーブル30の上面30Sに撒いて第1層目の砂層S1を形成する。リコータ2は造形テーブル30の一端から他端まで連続的に移動し、造形テーブル30の上面30Sの全面に砂Sを薄く撒く。砂Sを撒き終えたリコータ2は造形テーブル30の外まで移動して待機する。
【0022】
図4(b)が造形テーブル30の上に形成された第1層目の砂層S1を示している。第1層目の砂層S1の厚さを含め、第1層目の砂層S1の上に以後積層される砂層の厚さは常に一定である。図2(b)、図3(b)は、図4(a)に示した第1層目の砂層S1に、ヘッド1によりバインダが吐出・塗布される工程を示すものである。ヘッド1は、図1(a)に示したヘッドX軸HAXとヘッドY軸HAYにより矢印で示す前後左右に移動することができる。具体的には、ヘッド1は、造形データに従って、まずX方向に移動してバインダを吐出・塗布し、次いでY方向に1ライン分移動してからX方向にバインダを吐出・塗布する動作を繰り返す。造形物が無い部分、即ち、造形データが無い部分ではバインダを吐出しない。
【0023】
造形テーブル30の下には昇降装置4が設置されているが、リコータ2の動作が終了した直後にヘッド1が動作する時には、昇降装置4は動作しない。ヘッド1から第1層目の砂層S1へのバインダの吐出・塗布が終了した状態が図4(c)に示される。第1層目の砂層S1の上へのバインダの吐出・塗布が終了すると、第1層目の砂層S1のバインダ塗布部分B1が固化する。第1層目の砂層S1の上へのバインダの塗布が終了すると、昇降装置4により、造形テーブル30が第1層目の砂層S1の厚さ分だけ下降する。この結果、第1層目の砂層S1の上面が造形タンク3の上端面3Tと同じ面になる。
【0024】
この状態で、ヘッド1とリコータ2とが元の位置に戻り、続いて、図2(c)、図3(c)に示すように、バインダが塗布された第1層目の砂層S1の上に、矢印で示す方向に移動するリコータ2から砂Sが撒布されて、第2層目の砂層S2を形成する工程が行われる。リコータ2による第2層目の砂層S2の形成により、第1層目の砂層S1に塗布されたバインダ塗布部分B1は砂Sで完全に隠れる。
【0025】
次いで、図3(d)に示すように、第2層目の砂層S2に、ヘッド1によりバインダが吐出・塗布され、第2層目の砂層S2のバインダ塗布部分B2が固化し、第1層目の砂層S1のバインダ塗布部分B1と繋がる。このようなリコータ2による砂層の撒布と、ヘッド1によるバインダの吐出・塗布は、昇降装置4によって造形テーブル30を砂層の厚さ分だけ降下させながら繰り返し行われる。ヘッド1により砂層上に形成されるバインダの塗布部分の形状は、作る造形物の形状によって異なる。本例のように、図1(c)に示した砂型と同形状のものを中空の三次元造形物として作る場合、砂層の上のバインダ塗布部分の形状は図4(c)〜図4(g)のように変化する。
【0026】
図2(d)に示す状態が、造形タンク3の中に中空造形物が半分程度作られた状態を示している。そして、図4(e)に示す状態の、n(nは自然数)層目の砂層Snを形成する工程が図3(e)に示され、砂層Snの上にバインダを吐出・塗布してバインダ塗布部分Bnを形成する工程が図2(d)に示される。この時、造形テーブル30は昇降装置4によって造形タンク3の深さの半分程度の位置まで降下している。
【0027】
造形テーブル30の上に砂の最終層Szが形成され、砂の最終層Szの上にバインダ塗布部分Bzが形成された状態が図3(f)及び図4(g)に示される。この状態では、造形テーブル30の下面30Bは、昇降装置4によって造形タンク3の下端面3Bの位置まで降下している。また、図3(f)のA−A線における断面が図4(a)に示される。そして、図4(a)に示す断面から図4(b)〜図4(g)に示されるバインダ塗布部分の形状は、それぞれ図4(a)におけるB−B線、C−C線、D−D線、E−E線、F−F線及びG−G線における形状であることが分る。なお、造形テーブル30の上に形成される三次元造形物の高さが、造形タンク3の深さよりも低い場合には、三次元造形装置の造形終了時に、造形テーブル30が造形タンク3の下端部まで達しないこともある。
【0028】
以上説明した工程が終了すると、造形タンク3の内部には、図3(f)に示すような三次元造形物20が形成されている。三次元造形物20の上端面には、内部と外部との連絡部である湯口22が形成されている。この状態から昇降装置4を動作させて造形テーブル30とその上の砂層を含む三次元造形物20とを内蔵する造形タンク3を、図5(a)に示すように造形タンク移送ユニット7の上に置き、ローラ70の上を転がして三次元造形装置から抜き出す。そして、図5(b)に示すように、三次元造形装置の外部で造形テーブル30とその上に積層された砂層と三次元造形物20とを残して造形タンク3を引き上げ、砂層を除去すると図1(c)に示すような三次元造形物20が出来上がる。
【0029】
以上説明した一般的な三次元造形装置10におけるヘッド1とリコータ2の構造及び動作に対して、本発明の第1の実施例の三次元造形装置におけるヘッド1とリコータ2の構造及び動作を以下に説明する。本発明の三次元造形装置においても、図1から図4を用いて説明した一般的な三次元造形装置10と同じ構成部品については、同じ符号を付して説明する。
【0030】
図5(a)は本発明の三次元造形装置の第1の実施例におけるヘッド(インクジェットヘッド)1Lとリコータ2の移動機構の構造及び造形テーブル30との関係を示すものである。造形テーブル30は前述のように、造形タンク3内を昇降する1枚の板であるが、本実施例では、造形テーブル30のヘッド1Lとリコータ2に対する位置を明確にするために、高さ方向の厚さを誇張して描いてある。リコータ2には砂Sが充填されている。また、図5(b)は図5(a)に示すヘッド1Lとリコータ2の移動機構を矢印A方向から見たものであり、図5(c)は図5(a)に示すヘッド1Lとリコータ2の移動機構を矢印B方向から見たものである。本発明の三次元造形装置のその他の部分の構成は、図1(a)で説明した一般的な三次元造形装置10の構成と同じで良いので、図示及び説明を省略する。
【0031】
第1の実施例では、上面30Sに三次元造形物を形成する造形テーブル30の一辺の方向(これをX方向とする)に平行に、2本のヘッドX軸HAX1が設けられており、2本のヘッドX軸HAX1の上には、門型フレーム15がヘッドX軸HAX1に沿って移動可能に取り付けられている。門型フレーム15には、造形テーブル30の一辺に隣接する辺の長さを備えたヘッド1Lが取り付けられている。ヘッド1Lはラインヘッドであり、ヘッド1Lの構造については後述する。従って、門型フレーム15がヘッドX軸HAX1に沿って移動することにより、造形テーブル30の上面30Sに、造形データに応じた形状にバインダを塗布することができる。
【0032】
造形テーブル30の前述の一辺に隣接する辺の方向(これをY方向とする)には、2本のヘッドX軸HAX1の外側の位置に、2本のリコータY軸RAY1が設けられている。2本のリコータY軸RAY1の上には、門型フレーム25がリコータY軸RAY1に沿って移動可能に取り付けられている。門型フレーム25には、造形テーブル30の一辺の長さを備えたリコータ2が取り付けられている。リコータ2には、図1(a)で説明した一般的な三次元造形装置10におけるリコータ2と同じものを使用することができる。門型フレーム25がリコータY軸RAY1に沿って移動することにより、造形テーブル30の上面30Sの全面に、砂を均一な厚さで撒くことができる。
【0033】
図6(a)は、図5(a)に示したヘッド1Lとリコータ2の移動機構を矢印C方向から見たものであり、ヘッド1Lとリコータ2が共に、造形テーブル30の上面30Sから外れた待避位置にある状態を示している。また、図6(b)は、図6(a)に示した状態からヘッド1Lが移動して、造形テーブル30の上面30Sにバインダを吐出・塗布している状態を示すものである。更に、図6(c)は、図6(b)に示した状態からヘッド1Lの移動が終わって反対側の待避位置に至った状態で、リコータ2が移動して、造形テーブル30の上面30Sに砂Sを撒いている状態を示すものである。第1の実施例では、このようにヘッド1Lとリコータ2は片方ずつ動作、一方の動作中は他方は待避位置にあり、往復動作の両方において、造形テーブル30の上面30Sに砂を撒き、バインダを塗布することができる。
【0034】
図7(a)は、第1の実施例におけるヘッド1Lの構造の一例を示すものである。バインダを吐出する面であるヘッド1Lの吐出面1Fには、バインダ吐出用の細長いノズル1Nが複数個、斜めに並んで設けられている。ノズル1Nの間隔は1mm〜0.05mm程度であり、製作する造形物に求められる細密さによって異なる。また、図7(b)は、第1の実施例におけるヘッド1Lの構造の他の例を示すものである。この例では、ヘッド1Lのバインダの吐出面1Fに、バインダ吐出用のノズル複数個(数十〜数百個単位)並んだノズル群1Mが、所定間隔を隔てて2列に並んで設けられている。2列のノズル群1Mは、一方の隙間部分1Sに他方のノズル群1Mの中央部が重なるように、ノズル群1Mが互い違いに配置されている。このように、ヘッド1Lに複数のノズル群1Mを配置することにより、市販のインクジェットヘッドを組み合わせ、ソフトウエアによって各ヘッドを制御することにより、簡便にラインインクジェットヘッドを実現できる。
【0035】
図8(a)から(c)は、第1の実施例におけるヘッド1Lとリコータ2の動作を説明するものである。図8(a)は、ヘッド1Lとリコータ2が待避状態にある時の、造形テーブル30に対するヘッド1Lとリコータ2の位置を示すものである。造形テーブル30の上に三次元造形物を形成する場合は、まず、図8(b)に示すように、リコータ2が造形テーブル30の上に砂Sを水平に撒いて第1層目の砂層S1を形成する。リコータ2が造形テーブル30の上に砂Sを撒き終えて、第1層目の砂層S1が形成されると、リコータ2は図8(c)に示すように、図8(a)に示した待避位置と反対側の待避位置に入る。この待避位置は、ヘッド1Lの動作に干渉しない位置である。
【0036】
図8(c)に示すように、リコータ2が造形テーブル30の上に第1層目の砂層S1を形成し終えて待避位置に入ると、ヘッド1Lが動作し、リコータ2によって撒かれた第1層目の砂層S1の上に、ヘッド1Lによってバインダが吐出・塗布される。図8(c)にはバインダの塗布部分が符号B1で示されており、第1層目の砂層S1のバインダ塗布部分B1は固化する。ヘッド1Lによるバインダの吐出・塗布が終了すると、ヘッド1Lは図8(a)に示した待避位置と反対側の待避位置に入る。この待避位置は、リコータ2の動作に干渉しない位置である。
【0037】
この動作の後に、図示しない昇降装置により、造形テーブル30が第1層目の砂層S1の厚さ分だけ下降し、第1層目の砂層S1の上面が、砂Sを撒く前の造形テーブル30の上面30Sの位置と同じ位置になる。この後、リコータ2は図8(a)に示した待避位置に向かって移動し、造形テーブル30の上に砂Sを撒いて第2層目の砂層を形成する。リコータ2の砂撒き動作が終了すると、ヘッド1Lが図8(a)に示した待避位置に向かって移動して、撒かれた砂の上にバインダを吐出・塗布する。
【0038】
以後、リコータ2による砂撒き動作とヘッド1Lによるバインダの吐出・塗布動作及び昇降装置による位置調整が繰り返し行われて、造形テーブル30の上に、図1(a)に示した一般の三次元造形装置10と同様に、三次元造形物が形成される。第1の実施例では、ヘッド1Lがラインヘッドであり、リコータ2とヘッド1Lが直交する方向に移動することにより、造形テーブル30の上に短時間で三次元造形物を形成することができる。
【0039】
図9(a)は、本発明の三次元造形装置の第2の実施例におけるヘッド1とリコータ2の移動機構の構造を示すものであり、ヘッド1とリコータ2が待避位置にある状態を示している。第2の実施例においても、ヘッド1とリコータ2の移動機構以外のその他の部分の構成は、図1(a)で説明した一般的な三次元造形装置10の構成と同じで良いので、図示及び説明を省略する。
【0040】
第2の実施例では、三次元造形物を形成する造形テーブル30の一辺の方向をX方向とし、隣接する辺の方向をY方向とする。第2の実施例では、Y方向に平行に、2本のリコータY軸RAY1が設けられている。2本のリコータY軸RAY1は造形テーブル30の両側に延長され、延長部分が斜め下側に曲げられた後に、リコータY軸RAY1に平行な状態に戻されて、擦れ違いレールRAY2が形成されている。2本のリコータY軸RAY1の間には、リコータY軸RAY1に沿ってY方向に移動できる取付バー16が掛け渡され、取付バー16に造形テーブル30の一辺の長さを備えたリコータ2が取り付けられている。リコータ2には、図1(a)で説明した一般的な三次元造形装置10におけるリコータ2と同じものを使用することができる。取付バー16がリコータY軸RAY1に沿って移動することにより、造形テーブル30の上面30Sの全面に、砂を均一な厚さで撒くことができる。
【0041】
2本のリコータY軸RAY1の上側には、2本のヘッドY軸HAY1が平行に設けられている。2本のリコータY軸RAY1と2本のヘッドY軸HAY1の間隔は同じである。2本のヘッドY軸HAY1は造形テーブル30の両側に延長され、延長部分が斜め上側に曲げられた後に、ヘッドY軸HAY1に平行な状態に戻されて、擦れ違いレールHAY2Aが形成されている。2本のヘッドY軸HAY1の間には、ヘッドY軸HAY1に沿ってY方向に移動できるヘッドX軸HAX1が掛け渡され、ヘッドX軸HAX1にヘッド1がX方向に移動可能に取り付けられている。ヘッド1には、図1(a)で説明した一般的な三次元造形装置10におけるヘッド1と同じものを使用することができる。
【0042】
ヘッドX軸HAX1がヘッドY軸HAY1に沿ってY方向に移動でき、ヘッド1がヘッドX軸HAX1に沿ってX方向に移動できることにより、ヘッド1は、造形テーブル30の上面30Sの全面に対して自在に移動してバインダを吐出・塗布することができる。また、擦れ違いレールRAY2により、リコータY軸RAY1に沿って移動してきたリコータ2は、造形テーブル30の外側で造形テーブル30の下方に移動することができる。逆に、擦れ違いレールHAY2により、ヘッドY軸HAY1に沿って移動してきたヘッド1は、造形テーブル30の外側で造形テーブル30の上方に移動することができる。
【0043】
そして、図9(a)に示すように、擦れ違いレールHAY2に位置して待避状態にあるヘッド1と、擦れ違いレールRAY2に位置して待避状態にあるリコータ2は干渉せず、上下方向に位置することができる。これに対して、平行なヘッドY軸HAY1とリコータY軸RAY1の区間では、ヘッド1とリコータ2は干渉し、上下方向に位置することはできない。
【0044】
造形テーブル30の上面30Sの上に三次元造形物を形成する場合は、図9(b)に示すように、図9(a)に示した待避位置にあるリコータ2がまず往路を移動して、造形テーブル30の上に砂撒き行う。第2の実施例では、リコータ2が造形テーブル30の上にある程度砂撒きをしたら、図9(c)に示すように、リコータ2による砂撒きが終了する前に、ヘッド1がリコータ2を後追いして移動し、リコータ2が撒いた砂の上にバインダを吐出・塗布する動作を開始する。
【0045】
図11(a)は、第2の実施例において、リコータ2が移動して砂撒きを行っている最中に、ヘッド1がリコータ2を後追いして砂の上にバインダを吐出・塗布している状態を示している。また、図11(b)は図11(a)に示したヘッド1がリコータ2を後追いして砂の上にバインダを吐出・塗布している状態を平面視したものである。リコータ2が造形テーブル30のY方向に移動して撒いた砂の上に、ヘッド1はバインダを吐出・塗布する。ヘッド1は造形テーブル30の上をまずX方向に移動してバインダを吐出し、バインダをX方向に塗布した後に、Y方向に移動してX方向に逆方向に移動してバインダを吐出・塗布する動作を繰り返す。ヘッド1にバインダの噴射口(ノズル)が1つしかない場合は、ヘッド1は1ラインずつY方向に移動するが、ヘッド1にバインダの噴射口がY方向に複数個並んで設けられている場合は、ヘッド1は複数ラインずつY方向に移動すれば良い。
【0046】
図9(d)は、リコータ2が砂撒き動作を終了して待避位置に入り、ヘッド1が移動してバインダを砂の上に吐出・塗布している状態を示す斜視図である。そして、ヘッド1によるバインダの吐出・塗布が終了すると、ヘッド1も待避位置に入る。以上が造形テーブル30の上にリコータ2が第1層目の砂を撒き、第1層目の砂の上にヘッド1がバインダを吐出・塗布する往路における動作である。リコータ2は往復動作において造形テーブル30の上に砂を撒くことができ、同様にヘッド1も往復動作において砂の上にバインダを吐出・塗布することができる。図10(a)から(d)はヘッド1とリコータ2の復路における動作を示すものである。
【0047】
図10(a)はヘッド1とリコータ2が待避位置にある状態を示している。また、図10(b)は、図10(a)に示した状態からリコータ2が移動して造形テーブル30の上に砂撒きをしている状態を示している。ヘッド1は待避位置にある。図10(c)は図10(b)に示した状態から、ヘッド1がリコータ2を後追いして動作している状態を示しており、図9(c)で説明した状態と同じである。図10(d)はリコータ2が砂撒き動作を終了して待避位置に入り、ヘッド1が移動してバインダを吐出・塗布している状態を示すものである。この後、ヘッド1とリコータ2は図9(a)に示した状態に戻る。以後は、図9(a)から図10(d)に示した動作が繰り返される。
【0048】
このように、第2の実施例における三次元造形装置のヘッド1とリコータ2の移動構造では、リコータ2の砂撒き動作の途中で、ヘッド1を動作させて撒かれた砂の上にバインダを塗布することができるので、造形テーブル30の上に短時間で三次元造形物を形成することができる。なお、一般にヘッド1の移動速度はリコータ2の移動速度よりも速いが、ヘッド1はX方向の動作が終了してから一定間隔でY方向の動作を行うのに対して、リコータ2はY方向のみの動作を行えば良いので、ヘッド1の動作開始をリコータ2がどの位置まで移動した時に行うかは、それぞれの移動速度に応じて決めれば良い。
【0049】
図12(a)は、本発明の三次元造形装置の第3の実施例におけるヘッド1とリコータ2の移動機構の構造を簡略化して示すものであり、ヘッド1とリコータ2が待避位置にある状態を示している。第3の実施例においても、ヘッド1とリコータ2の移動機構以外のその他の部分の構成は、図1(a)で説明した一般的な三次元造形装置10の構成と同じで良いので、図示及び説明を省略する。
【0050】
第3の実施例では、三次元造形物を形成する造形テーブル30の一辺の方向をX方向とし、隣接する辺の方向をY方向とする。第3の実施例では、Y方向に平行に、2本のリコータY軸RAYが設けられている。2本のリコータY軸RAYは造形テーブル30の両側に延長され、リコータ2の待避部分が設けられている。2本のリコータY軸RAYの間には、造形テーブル30の一辺の長さを備えたリコータ2が取り付けられている。リコータY軸RAYは簡素化して直線で示してあり、リコータ2を取り付ける取付バーの図示は省略してある。リコータ2には、図1(a)で説明した一般的な三次元造形装置10におけるリコータ2と同じものを使用することができることも同様である。
【0051】
2本のリコータY軸RAYの外側には、2本のヘッドY軸HAYが平行に設けられている。2本のヘッドY軸HAYの間隔は広く、2本のリコータY軸RAYを移動するリコータ2に干渉しないようになっている。2本のヘッドY軸HAYの間には、ヘッドY軸HAYに沿ってY方向に移動できるヘッドX軸HAXが掛け渡され、ヘッドX軸HAXにヘッド1がX方向に移動可能に取り付けられている。ヘッド1には、図1(a)で説明した一般的な三次元造形装置10におけるヘッド1と同じものを使用することができる。
【0052】
ヘッドX軸HAXがヘッドY軸HAYに沿ってY方向に移動でき、ヘッド1がヘッドX軸HAXに沿ってX方向に移動できることにより、ヘッド1は、造形テーブル30の上面30Sの全面に対して自在に移動してバインダを吐出・塗布することができる。前述のように、待避状態にあるヘッド1と、待避状態にあるリコータ2は干渉しない。
【0053】
造形テーブル30の上面30Sの上に三次元造形物を形成する場合は、図12(a)に示した待避位置にあるリコータ2がまず移動して、造形テーブル30の上に砂撒き行う。第3の実施例でも、リコータ2が造形テーブル30の上にある程度砂撒きをしたら、リコータ2による砂撒きが終了する前に、ヘッド1がリコータ2を後追いして移動し、リコータ2が撒いた砂の上にバインダを吐出・塗布する動作を開始する。
【0054】
図12(b)は、第3の実施例において、リコータ2が移動して砂撒きを行っている最中に、ヘッド1がリコータ2を後追いして砂の上にバインダを吐出・塗布している状態を示している。リコータ2が造形テーブル30のY方向に移動して撒いた砂の上に、ヘッド1はバインダを吐出・塗布する。ヘッド1は造形テーブル30の上をまずX方向に移動してバインダを吐出し、バインダをX方向に塗布した後に、Y方向に移動して再びX方向に移動してバインダを吐出・塗布する動作を繰り返す。ヘッド1にバインダの噴射口が1つしかない場合は、ヘッド1は1ラインずつY方向に移動するが、ヘッド1にバインダの噴射口がY方向に複数個並んで設けられている場合は、ヘッド1は複数ラインずつY方向に移動すれば良い。
【0055】
図12(c)は、リコータ2が砂撒き動作を終了して待避位置に入り、ヘッド1もバインダを砂の上に吐出・塗布する動作を終了して待避位置に入った状態を示している。以上が造形テーブル30の上にリコータ2が第1層目の砂を撒き、第1層目の砂の上にヘッド1がバインダを吐出・塗布する動作である。リコータ2は往復動作において造形テーブル30の上に砂を撒くことができ、同様にヘッド1も往復動作において砂の上にバインダを吐出・塗布することができる。このため、図示は省略するが、図12(c)に示す位置から再びリコータ2がY方向に移動して造形テーブル30の上に砂撒きを行い、続いてヘッド1がリコータ2を後追いしてリコータ2が撒いた砂の上にバインダを吐出・塗布する動作を行うことができる。
【0056】
このように、第3の実施例における三次元造形装置のヘッド1とリコータ2の移動構造でも、リコータ2の砂撒き動作の途中で、ヘッド1を動作させて撒かれた砂の上にバインダを塗布することができるので、造形テーブル30の上に短時間で三次元造形物を形成することができる。前述のように、一般にヘッド1の移動速度はリコータ2の移動速度よりも速いが、ヘッド1はX方向の動作が終了してから一定間隔でY方向の動作を行うのに対して、リコータ2はY方向のみの動作を行えば良いので、ヘッド1の動作開始をリコータ2がどの位置まで移動した時に行うかは、それぞれの移動速度に応じて決めれば良い。
【符号の説明】
【0057】
1、1L インクジェットヘッド(ヘッド)
2 リコータ
3 造形タンク
4 昇降装置
10 三次元造形装置
30 造形テーブル
HAX、HAX1 ヘッドX軸
HAY、HAY1 ヘッドY軸
RAY、RAY1 リコータ軸
HAY2,RAY2 擦れ違いレール
S 砂
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12