特許第6647586号(P6647586)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6647586絶縁膜形成用前駆体溶液の製造方法およびゲート絶縁膜の製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6647586
(24)【登録日】2020年1月17日
(45)【発行日】2020年2月14日
(54)【発明の名称】絶縁膜形成用前駆体溶液の製造方法およびゲート絶縁膜の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/316 20060101AFI20200203BHJP
   H01L 29/786 20060101ALI20200203BHJP
【FI】
   H01L21/316 G
   H01L29/78 617T
【請求項の数】7
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2015-76104(P2015-76104)
(22)【出願日】2015年4月2日
(65)【公開番号】特開2016-197631(P2016-197631A)
(43)【公開日】2016年11月24日
【審査請求日】2018年3月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】304024430
【氏名又は名称】国立大学法人北陸先端科学技術大学院大学
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100126882
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 光永
(74)【代理人】
【識別番号】100146879
【弁理士】
【氏名又は名称】三國 修
(72)【発明者】
【氏名】諸 培新
(72)【発明者】
【氏名】下田 達也
(72)【発明者】
【氏名】李 金望
【審査官】 早川 朋一
(56)【参考文献】
【文献】 特表2001−504428(JP,A)
【文献】 特開2013−110177(JP,A)
【文献】 特開2015−017012(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/314−318
H01L 21/471−473
H01L 21/336
H01L 29/786
C01F 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Ln化合物(LnはLaあるいはTmを含む希土類元素のうち、1種または2種以上を示す。)とZr化合物とを溶媒に溶解し、オートクレーブ処理を経る絶縁膜形成用前駆体溶液の製造方法であり、
紫外線の吸収端波長が280nm以上であって、室温〜200℃領域での熱分析により計測される有機成分含有量が、前記オートクレーブ処理前50質量%を超え、前記オートクレーブ処理後50質量%以下であり、
前記Ln化合物と前記Zr化合物が前記溶媒中に溶解したLn錯体とZr錯体を有し、これら錯体が化学結合により繋がった分子集合体を含有させることを特徴とする絶縁膜形成用前駆体溶液の製造方法。
【請求項2】
熱分解に伴う1つの発熱ピークのみを200〜400℃の温度範囲内に有する前駆体溶液とすることを特徴とする請求項1に記載の絶縁膜形成用前駆体溶液の製造方法。
【請求項3】
LnとZrをモル比で3:7〜7:3の割合で溶解することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の絶縁膜形成用前駆体溶液の製造方法。
【請求項4】
前記オートクレーブ処理を150℃〜230℃において2〜50気圧で行うことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の絶縁膜形成用前駆体溶液の製造方法。
【請求項5】
前記溶媒中にHf錯体を添加することを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の絶縁膜形成用前駆体溶液の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載された製造方法により得られた絶縁膜形成用前駆体溶液を用いて塗膜を形成し、オゾン雰囲気において紫外線を照射しながら150〜300℃に熱処理する低温プロセスで加熱乾燥することを特徴とするゲート絶縁膜の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載された製造方法により得られた絶縁膜形成用前駆体溶液を用いて塗膜を形成し、300〜600℃の温度で高温加熱乾燥することを特徴とするゲート絶縁膜の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁膜を作成するための前駆体溶液の製造方法とゲート絶縁膜の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話やタブレットなどあらゆる現代情報機器は、技術の進展によって、よりコンパクトに、また新しい機能を集積して高機能化する方向に、大きく進歩してきた。
これら情報機器のデバイスには大量(数億)の薄膜トランジスタ(TFT)が搭載されて高速で作動している。このTFTの構成材料としてゲート絶縁膜は電流のスイッチに重要な役目を担っている。
【0003】
従来、酸化ケイ素や窒化ケイ素等の無機材料からなる薄膜がTFT用の絶縁膜として使用されているが、これらの無機絶縁膜は誘電率が低いため、デバイス性能の向上が限界となりつつあり、このため高誘電率な金属酸化物の絶縁膜が求められている。
また、ディスプレイなどの大面積化トレンドの中、TFTの従来作製法(真空スパッタリング、リソグラフィー)から脱真空プロセスを採用することにより製造コストを下げる狙いの一環として、液相プロセスによるTFT作製のための研究開発も盛んに行われている。このため、液相プロセスによる高誘電率酸化物薄膜の作製研究が重要な研究の一環となり、特に低温下(300℃以下)且つ簡易な装置を用いて電気性能に優れた高誘電率の酸化物絶縁膜を作製する方法の研究開発が注目されている。
【0004】
例えば、基板上にゲート電極とゲート絶縁膜と酸化物半導体膜とソース電極とドレイン電極を有する薄膜トランジスタの製造方法において、SiOxあるいはAlOxなどのアモルファス酸化物絶縁体からなる絶縁膜を設ける方法が知られている(特許文献1参照)。同様な薄膜トランジスタの製造方法において、SiOxもしくはSiONの単層膜からなるゲート絶縁膜を用いる製造方法が知られている(特許文献2参照)。
薄膜トランジスタの製造方法として、SiNxからなる下層絶縁薄膜と有機絶縁膜からなる上層絶縁薄膜の2層構造の絶縁膜を形成する製造方法が知られている(特許文献3参照)。
【0005】
また、ケイ素を含む絶縁膜を調製するための方法として、ブトキシシラン系などのケイ素含有前駆物質を用いて化学気相成長(CVD)法により成膜する方法が知られている(特許文献4参照)。
更に、スパッタリング、レーザーアブレーションなど25〜150℃で実施できる低温プロセスを用いたTaO、VO、TiO、BiTiO等の無機酸化物絶縁膜を形成する製造方法が知られている(特許文献5参照)。
更に、Sr、Zr、Ti、Bi、Taなどの金属イオンのアルコール溶液を用いて絶縁膜を作製する技術も開示されている(特許文献6参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2013−191859号公報
【特許文献2】特開2014−143281号公報
【特許文献3】特開2014−016585号公報
【特許文献4】特開2013−021360号公報
【特許文献5】特開2000−269515号公報
【特許文献6】特開平10−270712号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
これら従来の技術背景において、高誘電率酸化物薄膜を製造する方法として、スピン塗布法、化学気相成長(CVD)法、スパッタ法、有機金属気相成長(MOCVD)法などが広く知られている。また、ミスト化した強誘電体材料溶液を基板上に塗布して成膜する方法も知られている。
これらの方法により成膜した後、高誘電体薄膜を得るためには、通常、500℃以上の高い温度で熱処理を施し、薄膜を結晶化させる必要がある。
【0008】
例えば、ABO3と表記される3元系遷移金属酸化物が高誘電体の一種として知られている。この酸化物薄膜の成膜の際、金属Aイオンおよび金属Bイオンの両化合物を化学量論比で単純に混合させた溶液を使用することが従来から知られている方法である。
この溶液においては異なる金属イオン間の化学結合がなく、分子集合体あるいはクラスター構造の秩序性が低いため、成膜後に高温焼成しても緻密な酸化物の薄膜を実現するのは困難であり、特に低温度プロセス(400℃以下)によって良好な性能を有する酸化物薄膜の作製は極めて難しいという問題があった。
【0009】
本発明は、前記従来の問題点に鑑みなされたものであって、高誘電率の絶縁膜を提供可能であり、薄膜トランジスタに利用した場合にリーク電流を低減でき、誘電特性の周波数依存性を改善できる絶縁膜を形成するための前駆体溶液の製造方法の提供を目的とする。
本発明は、400℃ 以下、あるいは300℃ 以下の低温プロセスで成膜可能であって、UV照射による絶縁膜の低温作製が可能であり、低温成膜であっても高誘電率かつ高絶縁特性の絶縁膜を提供できる技術の提供を目的とする。
本発明は、300℃ 以下の低温プロセスで成膜可能であって、リーク電流が少なく、ゲート電流を低減でき、低温作製可能な絶縁膜を提供できる利点を生かして銅のゲート電極を備えた薄膜トランジスタを実現可能とする技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、前記課題を解決する手段として、以下の構成を有する。
本発明に係る絶縁膜形成用前駆体溶液の製造方法は、Ln化合物(LnはLaあるいはTmを含む希土類元素のうち、1種または2種以上を示す。)とZr化合物とを溶媒に溶解し、オートクレーブ処理を経る絶縁膜形成用前駆体溶液の製造方法であり、紫外線の吸収端波長が280nm以上であって、室温〜200℃領域での熱分析により計測される有機成分含有量が、前記オートクレーブ処理前50質量%を超え、前記オートクレーブ処理後50質量%以下であり、前記Ln化合物と前記Zr化合物が前記溶媒中に溶解したLn錯体とZr錯体を有し、これら錯体が化学結合により繋がった分子集合体を含有させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、塗布して熱処理を施すことにより高誘電率かつ薄膜リーク電流が少なく、誘電特性の周波数依存性に優れた絶縁膜を得ることができる絶縁膜形成用前駆体溶液を提供できる。
また、本発明に係る絶縁膜形成用前駆体溶液の製造方法によれば、従来よりも低温で高誘電率かつリーク電流の少ない絶縁膜を提供することができ、この絶縁膜を備えた薄膜トランジスタとすることにより、薄膜トランジスタの低温作製に貢献できる。

【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に係る絶縁膜を備えた薄膜トランジスタの構造例を示すもので、(A)はボトムゲート型薄膜トランジスタの一例を示す断面図、(B)はトップゲート型薄膜トランジスタの一例を示す断面図。
図2】LaとZrを3:7の比率で含む溶液をオートクレーブ処理した複数の絶縁膜形成用前駆体溶液の吸光スペクトル変化を対比して示すグラフ。
図3】LaとZrを5:5または7:3の比率で含む溶液をオートクレーブ処理した複数の絶縁膜形成用前駆体溶液の吸光スペクトル変化を示す図。
図4】LaとZrを3:7の比率で含む溶液の分子質量分布と該溶液を異なる条件でオートクレーブ処理した後の絶縁膜形成用前駆体溶液の分子質量分布を示すグラフ。
図5】LaとZrを5:5の比率で含む溶液の分子質量分布と該溶液をオートクレーブ処理した後の絶縁膜形成用前駆体溶液の分子質量分布を示すグラフ。
図6】LaとZrを7:3の比率で含む溶液の分子質量分布と該溶液をオートクレーブ処理した後の絶縁膜形成用前駆体溶液の分子質量分布を示すグラフ。
図7】(A)はLaとZrを3:7の比率で含む溶液の有機成分含有量と該溶液をオートクレーブ処理した後の絶縁膜形成用前駆体溶液の有機成分含有量を対比して示すグラフ、(B)は同溶液の熱分解に伴う発熱ピークを示すグラフ。
図8】(A)はLaとZrを5:5の比率で含む溶液の有機成分含有量と該溶液をオートクレーブ処理した後の絶縁膜形成用前駆体溶液の有機成分含有量を対比して示すグラフ、(B)は同溶液の熱分解に伴う発熱ピークを示すグラフ。
図9】LaとZrを3:7あるいは5:5の比率で含む各溶液と各溶液に対しオートクレーブ処理して得られた絶縁膜形成用前駆体溶液とLa化合物溶液及びZr化合物溶液について構造解析を行い、二体相関関数を求めた結果を示すグラフ。
図10】LaとZrを3:7あるいは5:5の比率で含む各溶液と各溶液にオートクレーブ処理して得られた絶縁膜形成用前駆体溶液について各溶液から得られた絶縁膜の構造解析を行い、二体相関関数を求めた結果を示すグラフ。
図11】LaとZrを3:7の比率で含む溶液あるいは該溶液をオートクレーブ処理して得られた絶縁膜形成用前駆体溶液について、それぞれ500℃に1時間加熱する条件で熱処理して得られた絶縁膜の構造因子を示すグラフ。
図12】LaとZrを5:5の比率で含む溶液あるいは該溶液をオートクレーブ処理して得られた絶縁膜形成用前駆体溶液について、それぞれ500℃に1時間加熱する条件で熱処理して得られた絶縁膜の構造因子を示すグラフ。
図13】LaとZrを3:7の比率で含む溶液あるいは該溶液をオートクレーブ処理して得られた絶縁膜形成用前駆体溶液を用いて形成した各絶縁膜のリーク電流を対比して示すグラフ。
図14】LaとZrを5:5の比率で含む溶液あるいは該溶液をオートクレーブ処理して得られた絶縁膜形成用前駆体溶液を用いて形成した各絶縁膜のリーク電流を対比して示すグラフ。
図15】LaとZrを3:7の比率で含む溶液からオートクレーブ処理して得られた絶縁膜形成用前駆体溶液により得られた絶縁膜を備えた薄膜トランジスタの特性を示すグラフ。
図16】LaとZrを5:5の比率で含む溶液からオートクレーブ処理して得られた絶縁膜形成用前駆体溶液により得られた絶縁膜を備えた薄膜トランジスタの特性を示すグラフ。
図17】LaとZrを3:7あるいは5:5の比率で含む溶液からオートクレーブ処理して得られた絶縁膜形成用前駆体溶液により得られた絶縁膜の比誘電率について周波数依存性を示すグラフ。
図18】LaとZrに加えてHfを添加した溶液に対しオートクレーブ処理した絶縁膜形成用前駆体溶液の吸光度波長依存性とオートクレーブ処理していない溶液の吸光度波長依存性を対比して示す図。
図19】LaとZrに加えてHfを添加した溶液に対しオートクレーブ処理した絶縁膜形成用前駆体溶液から得られた絶縁膜とオートクレーブ処理していない試料から得られた絶縁膜の電流密度と電界強度の関係を示すグラフ。
図20】LaとZrを5:5の比率で含む各種溶液に紫外線照射しながら低温熱処理して得た絶縁膜のI-V特性を示すグラフ。
図21】LaとZrを3:7の比率で含む溶液と該溶液をオートクレーブ処理した絶縁膜形成用前駆体溶液について紫外線照射と低温熱処理により得られた絶縁膜の表面状態を示すAFM像。
図22】LaとZrを3:7あるいは5:5の比率で含む各溶液についてオートクレーブ処理した試料とオートクレーブ処理していない試料について、熱処理温度と紫外線照射時間を変更して得られた各試料の密度を示すグラフであり、(A)はオートクレーブ処理していない溶液の密度測定結果を示し、(B)はオートクレーブ処理した溶液の密度測定結果を示すグラフ。
図23】LaとZrを3:7、5:5、あるいは、3:7の比率で含む各溶液とオートクレーブ処理した絶縁膜形成用前駆体溶液を用いて形成した絶縁膜について、紫外線照射条件と熱処理条件に応じて得られた膜厚を対比して示すグラフ。
図24】LaとZrを3:7の比率で含む各種溶液を用いて紫外光照射による光分解により作製した絶縁膜のI−V特性を示すグラフ。
図25】LaとZrを5:5の比率で含む各種溶液を用いて紫外光照射による光分解により作製した絶縁膜のI−V特性を示すグラフ。
図26】LaとZrを3:7、5:5、あるいは、7:3の比率で含む各溶液を用いて低温熱処理により作製した各絶縁膜のI−V特性を示すグラフ。
図27】LaとZrを3:7の比率で含む溶液を用いてオートクレーブ処理と紫外光照射とオゾン熱処理により作製した絶縁膜とPtの電極を備えた薄膜トランジスタの特性を示すグラフ。
図28】LaとZrを3:7の比率で含む溶液を用いてオートクレーブ処理と低温熱処理により作製した絶縁膜とCuのゲート電極を備えた薄膜トランジスタの特性を示すグラフ。
図29】Ln系元素であるTmとZrで構成した酸化物溶液の紫外線吸収変化を示すグラフ。
図30】LaとZrを3:7の比率で含む溶液に対しオゾン雰囲気において紫外線照射しながら250℃で熱処理して得た絶縁膜と500℃で焼成して得た絶縁膜のX線光電子分光スペクトルを示すグラフ
図31】LaとZrを3:7の比率で含む溶液に対し180℃で5時間オートクレーブ処理した前駆体溶液に対し、オゾン雰囲気において紫外線照射しながら250℃で熱処理して得た絶縁膜と500℃で焼成して得た絶縁膜のX線光電子分光スペクトルを示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0013】
「第一実施形態」
以下に、本発明の第一実施形態について、図面を適宜参照しながら説明する。
図1(A)は本発明に係る絶縁膜形成用前駆体溶液を用いて構成されたゲート絶縁膜を備えたボトムゲート型薄膜トランジスタ(トランジスタデバイス)の一例構造を示す断面図である。この例の薄膜トランジスタTは、基板1上にゲート電極2が形成され、基板1上にゲート電極2を覆うようにゲート絶縁膜3が形成され、ゲート絶縁膜3の上に半導体層4が積層され、半導体層4の上に前記ゲート電極2の上方両側に対峙するようにソース電極5とドレイン電極6が形成されてなる。
本実施形態の薄膜トランジスタTにおいて、ゲート電極2、ソース電極5、ドレイン電極6は一例としてPtなどの良導電性の金属材料からなり、半導体層4はInOなどの酸化物半導体からなる。また、本実施形態のゲート絶縁膜3はLaZrOで示される絶縁材料、LaZrHfOで示される絶縁材料、または、これらに数%程度のYを添加した絶縁材料からなる。ゲート絶縁膜3は、その他、ZrO,HfO,Ta,Y,TiO,Al,Ce,SrTiOなどからなる組成の絶縁材料により形成されていても良い。
【0014】
ゲート絶縁膜3は一例として酢酸ランタンなどのランタン化合物とブトキシジルコニウムなどのジルコニウム化合物をプロピオン酸などの溶媒に溶解して得たLaZrO酸化物溶液をオートクレーブ処理して絶縁膜形成用前駆体溶液を得、この絶縁膜形成用前駆体溶液をスピンコート法などの塗布法により必要厚さに塗布してから加熱乾燥させる熱処理を施すことで得ることができる。なお、溶液を塗布する方法に制限はなく、スピンコート法の他に、インクジェット法などの塗布法でも良い。
本実施形態において用いるLa化合物として、酢酸ランタン等カルボン酸ランタン類化合物(、2−エチルヘキサンランタン、クエン酸ランタンなど)の他に、硝酸ランタン、水酸化ランタン、ランタンアセチルアセトナート、トリイソプロポキシランタン、塩化ランタンなどのうち、1種または2種以上を用いることができ、Zr化合物として、ブトキシジルコニウム等アルコキシドジルコニウム類化合物の他に、カルボン酸ジルコニウム類化合物(2−エチルヘキサンジルコニウム、酢酸ジルコニウムなど)、アセチルアセトナートジルコニウム、硝酸ジルコニウム、塩化ジルコニウムなど)のうち、1種または2種以上を用いることもできる。
また、溶媒は、プロピオン酸等カルボン酸類の他に、アルコール、ケトン、グリコールエーテル、テトラヒドロフランなどよりなる群から選択される1種以上を含有するものを用いることができる。
また、溶液性状調整(安定性・粘度等)のために前記LaZrO酸化物溶液に重量比5%以下のキレート剤とするアミン化合物、増粘剤の多糖類あるいはセルロースなどの添加剤が含まれていても良い。
【0015】
溶媒に対しLa化合物とZr化合物を溶解する場合、LaとZrをモル比で1:9〜9:1の範囲で溶解することができる。本明細書では酢酸ランタンなどのLa化合物とブトキシジルコニウムなどのZr化合物をプロピオン酸などの溶媒に溶解する場合の比率において、:Zrをモル比で1:9とする場合の溶液はLZ19溶液と略記し、La:Zrをモル比で3:7とする場合の溶液はLZ37溶液と略記し、La:Zrをモル比で5:5とする場合はLZ55溶液と略記し、La:Zrをモル比で7:3とする場合はLZ73溶液と略記する。LaとZrのモル比については他のモル比の溶液の場合も以下に同様な表記として簡略記載する。
なお、本実施形態において、Laについては他の希土類元素と置換することが可能である。この場合、LaZrO酸化物溶液は、LnZrO酸化物溶液と表記できる。
LnZrO系の溶液とは、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Luのいずれかから選択される希土類元素のうち、1種または2種以上とZrの酸化物溶液を意味し、希土類元素は置換可能性が高い元素であるので、本実施形態のLaZrO系の溶液に限らず、LnZrO系の溶液一般に適用できると考えられる。また、LnZrO系の溶液の中には不可避不純物を含んでいても良い。
なお、後に説明する実施例においては、LaとZrのモル比の溶液において、LZ37溶液、LZ55溶液、LZ73溶液を主体として試験がなされている。
【0016】
前記La化合物とZr化合物を溶媒に溶媒の沸点以下の温度で溶解したならば、高温高圧、例えば沸点以上の温度、150℃〜230℃において、2〜50気圧の圧力下に晒すオートクレーブ処理を施す。溶媒としてプロピオン酸を用いた場合、130℃以下、例えば110℃の温度で調製し、30分程度攪拌することが好ましい。
オートクレーブ処理は内部を高圧力にすることが可能な耐圧性の容器に溶液を収容し、沸点以上の高温に保持することができる装置による加圧加熱処理である。沸点以上の高温域、例えば、150〜230℃の範囲で加圧状態に必要時間(例えば、1〜数10時間程度)晒すオートクレーブ処理が望ましい。オートクレーブ処理する場合の温度範囲は150〜200℃が望ましく、160〜180℃の範囲がより好ましい。また、オートクレーブ処理を行う時間は製造効率の面から2〜20時間程度が望ましく、2〜12時間程度がより好ましい。
なお、オートクレーブ処理の温度上限は230℃に限らず、更に高温保持できる装置を用いる場合は更に高温度に保持しても良い。
【0017】
オートクレーブ処理により、LaZrO酸化物溶液中の金属錯体(La錯体とZr錯体)は質量の高い分子数が増加し、絶縁膜形成用前駆体溶液に変性する。
オートクレーブ処理後の絶縁膜形成用前駆体溶液は、異なる金属イオン、例としてLa錯体イオンとZr錯体イオンが化学結合で互いに繋がった状態となり、多種類金属イオンが構成した新たな分子構造体あるいは分子集合体(クラスター)が生成している。また、これらのクラスターは秩序性が大幅に向上した微細構造を有する点に特徴を有する。
クラスターの一例として、LaZr(R1)y1(R2)y2(R3)y3なる組成式で示されるクラスターを例示することができる。このクラスターにおいてa、b、x、y1、y2、y3はいずれも分布を有する。
これらのクラスターは溶質(金属錯体)や溶媒あるいは添加剤との間にリガンド交換が起こり、クラスターを生成したものであり、これらのクラスターの構造によって後述する熱処理後の絶縁膜の構造、密度、特性に影響を及ぼす。
【0018】
前述の絶縁膜形成用前駆体溶液を用いてゲート電極2を形成済みの基板1の表面にスピンコート法により塗膜を形成し、300℃〜600℃で高温加熱乾燥する熱処理を施すか、150〜300℃で低温加熱乾燥と紫外線/オゾン処理することによりゲート絶縁膜3を形成することができる。
ゲート絶縁膜3を形成後、半導体層4を形成し、ソース電極5とドレイン電極6を形成することで図1(A)に示す構造の薄膜トランジスタTを得ることができる。
【0019】
300〜600℃の高温で熱処理することで、従来のゲート絶縁膜に対し薄膜リーク電流を大幅に低減でき、誘電特性の周波数依存性を大きく改善することができ、移動度が高い優れたトランジスタ特性の薄膜トランジスタTを提供できる。
これは、前述した多種類金属イオンが構成した新たな分子構造体あるいは分子集合体(クラスター)が生成している絶縁膜形成用前駆体溶液に熱処理を施して得たゲート絶縁膜3であるので、膜としての密度が高く絶縁特性が向上することによっている。例えば、オートクレーブ未処理の溶液から得られる絶縁膜に対し1桁以上リーク電流を低減したゲート絶縁膜3を提供できる。前述の新たな分子構造体あるいは分子集合体(クラスター)が生成している絶縁膜形成用前駆体溶液は、クラスター実空間の秩序性が向上しているため、熱処理により絶縁膜となった状態において構造上の秩序性が向上する結果、膜としての密度が向上すると想定できる。
【0020】
前述の絶縁膜形成用前駆体溶液に対し、150〜300℃の温度で紫外光(UV光)照射とオゾン(O)酸化をしながら加熱乾燥させる熱処理を施すことでも特性の優れたゲート絶縁膜3を形成することができる。
例えば、オートクレーブ処理した絶縁膜形成用前駆体溶液は長波長紫外線の吸収特性が向上するため、300℃以下の低温プロセスにおいて、紫外線およびオゾンによる光分解プロセスにより優れた絶縁性を有するゲート絶縁膜3を得ることができる。
このため、このゲート絶縁膜3を用いて薄膜トランジスタを製造するならば、150〜300℃の低温加熱処理であってもOFF電流が低く、ゲートのリーク電流が少なく、トランジスタ特性に優れた薄膜トランジスタTを得ることができる。
また、低温プロセスで薄膜トランジスタTのゲート絶縁膜3を形成できるので、加熱に弱い樹脂を基板とするフレキシブル基板に半導体を形成する場合、有機薄膜半導体などにも有効に適用できる。
【0021】
前述のように絶縁膜形成用前駆体溶液を塗布して熱処理する工程は、従来のゲート絶縁膜形成のためのCVDや気相蒸着法などの真空プロセスを不要とするため、プロセスの簡略化を図ることができる。また、印刷法により薄膜トランジスタを形成する工程に対応することができ、半導体デバイスの印刷作製プロセスに寄与する。
【0022】
ところで、図1(A)に示す薄膜トランジスタTはボトムゲート型トランジスタと称される構造の一例であり、薄膜トランジスタとして図1(B)に示すトップゲート型の薄膜トランジスタ(トランジスタデバイス)T2も知られている。
この薄膜トランジスタT2は、基板11上にソース電極15とドレイン電極16が形成され、それらを覆うように半導体層14が形成され、半導体層14の上にゲート絶縁膜13を介しゲート電極12が形成されている。
この構造の薄膜トランジスタT2のゲート絶縁膜13についても先の実施形態のゲート絶縁膜3を構成した場合と同様に絶縁膜形成用前駆体溶液を用いてゲート絶縁膜13を形成することができる。
【0023】
本実施形態の絶縁膜形成用前駆体溶液による絶縁膜は、ボトムゲート型の薄膜トランジスタTとトップゲート型の薄膜トランジスタT2のいずれのトランジスタデバイスについても適用できるのは勿論である。
また、薄膜トランジスタは図1(A)、(B)に示した構造の他にも多数の種類があるが、いずれにおいてもゲート絶縁膜を介しソース電極及びドレイン電極とゲート電極が対峙した構造であるので、本実施形態の絶縁膜形成用前駆体溶液を用いていずれの構造の薄膜トランジスタにおいてもゲート絶縁膜を形成できるのは勿論である。
【実施例】
【0024】
以下に本発明の実施例について説明し、本発明の効果を検証する。
LZ37溶液(LaZrO:La/Zr=3/7)の調製:
0.0006molの酢酸ランタン(関東化学(株)製)と0.0014molのブトキシジルコニウム(ゲレスト(Gelest)社製)をプロピオン酸液に加えて10gのLZ37溶液を調製し、110℃のホットプレート上に30分攪拌後、静置した。
LZ37溶液のオートクレーブ処理:
上記10gのLZ37溶液をポリ4フッ化エチレン製の容器中に入れ、180℃・2時間の条件でオートクレーブ処理を行った。室温まで冷却後、0.2μmのフィルターを用いて溶液を濾過した。
オートクレーブ処理後、沈殿物が観察されず、薄黄色状態の絶縁膜形成用前駆体溶液となった。
【0025】
前述の絶縁膜形成用前駆体溶液について吸光度の波長依存性を測定した結果を図2に示す。図2に示す紫外線・可視光吸収スペクトルの測定結果によると溶液の紫外線吸収では処理前溶液の252nmから347nmへ大きなシフトが検出された。
また、オートクレーブ処理において、160℃・2時間、180℃・5時間、180℃・12時間の各条件にて処理した場合に得られた個々の絶縁膜形成用前駆体溶液について吸光度の波長依存性を測定した結果を図2に併せて示す。
【0026】
図2に示すようにいずれの条件においても溶液の紫外線吸収では処理前溶液から処理後の溶液へ大きなシフトが検出された。
このことから、オートクレーブ処理前の溶液が短波長領域の紫外線しか吸収しないのに対し、オートクレーブ処理後の絶縁膜形成用前駆体溶液は、長波長領域の紫外線を吸収するようになることがわかる。
【0027】
図3は、LZ55溶液(LaZrO:La/Zr=5/5)とLZ73(LaZrO:La/Zr=7/3)溶液について、前記と同様の手順で調製し、それぞれの溶液について180℃・5時間の条件でオートクレーブ処理を施して絶縁膜形成用前駆体溶液を得、各溶液について吸光度の波長依存性を測定した結果を示す。
いずれの濃度の絶縁膜形成用前駆体溶液であっても、溶液の紫外線吸収では処理前溶液から処理後の溶液へ大きなシフトが検出された。
図2図3に示す各溶液においてオートクレーブ処理後の紫外線吸収の長波長シフト幅は異なっているが、LZ73溶液が最小値であり、280nmより長波長の紫外線吸収が現れている。このことは、オートクレーブ処理後の前駆体溶液の紫外線吸収端波長が280nm以上であり、組成に応じて、280〜380nmの範囲であることを示している。
【0028】
図4はLZ37溶液について、オートクレーブ処理前後の質量分析結果(フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴質量分析計「FT-ICR MR」による分析結果)を示す。オートクレーブ処理については、180℃・2時間処理と、180℃・5時間処理の結果について併記した。
図5はLZ55溶液に対するオートクレーブ処理前後の質量分析結果を示し、図6はLZ73溶液に対するオートクレーブ処理前後の質量分析結果を示す。
【0029】
図4図6に示す質量分析の結果、オートクレーブ処理後の溶液においてオートクレーブ処理前の溶液に対し分子質量が明らかに上昇したことがわかる。
一例として、平均分子量ピーク507.07、791.03、865.07、1149.02の値が上昇し、横軸に示す平均分子量の多い領域にオートクレーブ処理後により多くのピークが出現している。これは、溶液中の金属錯体分子同士が反応することで平均分子量の多いクラスター構造体の形成が促進されたものと推定できる。
【0030】
質量分析の結果において、Ac:CHCOO−、PrA:CHCHCOO−、Buto:CH(CHO−、PrA/Buto:PrAあるいはButoと表記すると各ピークは以下の組成であると推定できる。
質量分析結果のピーク507.07は、La0〜1Zr2〜1(Ac)0〜2(PrA/Buto)4〜12〜0(OH)0〜4(HO)0〜3 が可能な組成となる。
質量分析結果のピーク791.03は、La2〜3Zr(Ac)1〜6(PrA/Buto)3〜00〜4(OH)0〜4(HO)0〜2 が可能な組成となる。
質量分析結果のピーク865.07は、La1〜3Zr2〜1(Ac)0〜6(PrA/Buto)7〜10〜4(OH)0〜4(HO)3〜0 が可能な組成となる。
質量分析結果のピーク1149.02は、La0〜3Zr3〜1(Ac)2〜6(PrA/Buto)8〜30〜2(OH)0〜4(HO)3〜0 が可能な組成となる。
【0031】
図7(A)はLZ37溶液について、オートクレーブ処理前後におけるTG−DTAの測定による熱分析結果を示し、図8(A)はLZ55溶液について、オートクレーブ処理前後での熱分析結果を示す。
いずれの溶液についても、オートクレーブ処理後では前駆体構造の単一化及び熱分解の高温化を示した。溶液の質量分析によると処理後溶液の分子質量が明らかに上昇した。
また、図7(A)、図8(A)に示す結果から明らかなように、オートクレーブ処理を施すことで室温〜300℃までの温度域において計測される有機成分の含有量が減少していることが分かる。このことから、La錯体とZr錯体を含む溶液にオートクレーブ処理を施すことで、室温〜300℃領域で熱分析により計測される有機成分含有量が50%を超えていた状態から50%以下に遷移していることがわかる。
【0032】
図7(B)はLZ37溶液について、オートクレーブ処理していない溶液とオートクレーブ処理後の溶液の熱分解挙動の変化を対比して示すグラフである。オートクレーブ処理は160℃で2時間処理した溶液と、180℃で2時間処理した溶液と180℃で5時間処理した溶液についてそれぞれ図7(B)に示す。
図7(B)に示す結果から明らかなように、オートクレーブ処理していない溶液は3つのピークを示すので、熱分解温度の異なる複数の分子構造体が溶液中に存在すると想定できるのに対し、オートクレーブ処理後の溶液はいずれも1つのピークのみ現れている。このことから、オートクレーブ処理後の溶液は分子構造体の単一化と構造の安定化が推進されていると想定できる。
図8(B)はLZ55溶液について、オートクレーブ処理していない溶液とオートクレーブ処理後の溶液の熱分解挙動の変化を対比して示すグラフである。オートクレーブ処理は180℃で5時間処理した溶液について図8(B)に示す。
図8(B)に示す結果からも分るように、オートクレーブ処理していないLZ55溶液には4つのピークが現れ、熱分解温度が異なった複数の分子構造体が溶液中に存在することが示唆された。一方、オートクレーブ処理後の溶液には、高温側へ大幅にシフトした1つの強い熱分解ピークと極弱いショルダーピークが現れている。このことからもオートクレーブ処理後のLZ55溶液は分子構造体の単一化と構造の安定化が推進されていると推測できる。
【0033】
図9はLZ37溶液とLZ55溶液に対しオートクレーブ処理して得られた絶縁膜形成用前駆体溶液と、La化合物溶液及びZr化合物溶液について高エネルギーX線回折測定(HEXRD)による構造解析を行い、二体相関関数を求めた結果を示すグラフである。
図9の各グラフにおける縦軸T(r)は構造体実空間の全相関関数を示し、横軸r(Å)は周期の長さを示す。
図9においてLa-Oの構造秩序性とZr-Oの構造秩序性とZr-Zrの構造秩序性がわかるが、La-Oの構造秩序性とZr-Oの構造秩序性が明らかに向上していると推定できる。
【0034】
図10はLZ37溶液とLZ55溶液にオートクレーブ処理して得られた絶縁膜形成用前駆体溶液について各溶液から得られた絶縁膜の構造解析を(高エネルギーX線回折測定(HEXRD))を用いて行い、二体相関関数を求めた結果を示すグラフである。
図10の矢印部分に示すように絶縁膜の構造は明らかに変わっており、オートクレーブ処理後の溶液を熱処理して絶縁膜を形成することで、絶縁膜の構造も変化していることがわかる。
【0035】
図11は、LZ37溶液と該溶液をオートクレーブ処理(180℃・5時間)した後の絶縁膜形成用前駆体溶液に対しそれぞれ500℃に1時間加熱する条件で熱処理して得られた絶縁膜について高エネルギーX線回折測定結果の解析による構造因子を示すグラフである。図11において縦軸のS(Q)は全構造因子を示し、横軸のQ(Å-1)はX線散乱スペクトルを示す。
図11においてピークが大きいほど結晶度が高いことを示しており、オートクレーブ処理後溶液中のクラスターはLa−OとZr−Oに関わる微細構造の秩序性が著しく向上したことが示唆されている。LZ37溶液は、Laの含有量が少ないため、オートクレーブ処理後に全てのLaイオンがZrO結晶格子に入ることで安定なZrO立方晶ドメインが生じ、余計な構造がほぼ完全に消失していると推定できる。
図11に示すデータを解析すると以下の表1のように対比することができる。
【0036】
【表1】
【0037】
表1に示すように、LZ37−500の絶縁膜試料において、6.966、5.905、2.208、2.052、1.694のピークはLZ37−AC180−5h−500の絶縁膜試料では消失している。XRDの各ピークの位置において消失したピークを除いてZr0.80.21.9立方晶の参照データと対比するとほぼ一致している。
以上のことからオートクレーブ処理した溶液から得た絶縁膜(高温焼成体)はZr0.80.21.9立方晶に類似する構造を有することが示唆される。
【0038】
図12はLZ55溶液と該溶液をオートクレーブ処理(180℃・5時間)した後の絶縁膜形成用前駆体溶液に対しそれぞれ500℃に1時間加熱する条件で熱処理して得られた絶縁膜について高エネルギーX線回折測定結果の解析による構造因子を示すグラフである。
図12から、LZ55溶液では過剰な量のLaが存在していたため、オートクレーブ処理後にZrO立方晶の形成が促進されることに伴い、余計な構造が若干残留したと推定できる。
【0039】
次に、オートクレーブ処理後のLZ37溶液を白金膜付きシリコンウェーハー上にスピンコート(2000rpm)で5層製膜し、400℃・酸素雰囲気中にて10分間焼成して絶縁膜を得た。また、オートクレーブ処理後のLZ55溶液を白金膜付きシリコンウェーハー上にスピンコート(2000rpm)で5層製膜し、600℃・酸素雰囲気中にて10分間焼成して絶縁膜を得た。
また、比較のために、オートクレーブ処理なしのLZ37溶液とLZ55溶液を白金膜付きシリコンウェーハー上にスピンコート(2000rpm)で5層製膜し、400℃・酸素雰囲気中にて10分間焼成して絶縁膜を得た。また、オートクレーブ処理なしのLZ55溶液を白金膜付きシリコンウェーハー上にスピンコート(2000rpm)で5層製膜し、600℃・酸素雰囲気中にて10分間焼成して絶縁膜を得た。
【0040】
図13にオートクレーブ処理済み(160℃・2時間あるいは180℃・2時間)のLZ37溶液を用いた絶縁膜の薄膜リーク電流を測定した結果を示し、図14にオートクレーブ処理済み(180℃・5時間)のLZ55溶液を用いた絶縁膜の薄膜リーク電流を測定した結果を示す。また、図13図14にオートクレーブ処理なしのLZ37溶液あるいはLZ55溶液から得られた従来法による絶縁膜の薄膜リーク電流測定結果も併せて示す。用いたゲート電極は、Ptからなる直径0.3mm、膜厚120nmの電極を使用した。
【0041】
図13図14に示す結果から、LZ37とLZ55のいずれの溶液であってもオートクレーブ処理済みの絶縁膜形成用前駆体溶液から得られた絶縁膜の方が従来法による絶縁膜よりも3桁程度リーク電流を低減することができた。
即ち、LaZrO酸化物溶液をオートクレーブ処理して得た絶縁膜形成用前駆体溶液を熱処理して得た絶縁膜であるならば、LaZrO酸化物溶液を単に熱処理して得た従来の絶縁膜に対しリーク電流を大幅に低減することができた。
【0042】
図15はLZ37溶液にオートクレーブ処理(180℃・5時間)を施した絶縁膜形成用前駆体溶液から作製した膜厚125nmのゲート絶縁膜とInO(燃焼法による成膜温度250℃)からなる膜厚20nmの半導体層を備えた、図1(A)に示すボトムゲート構造の薄膜トランジスタをSi基板上に作製し、トランジスタ特性を測定した結果を示す。
図15に示す特性の薄膜トランジスタは、移動度:86cm/Vs、On/off電流比(ドレイン比):5.7E-6、Vth:1.77V、SS-factor:0.38V/dec、Off電流1.64E-10、Ig(リーク電流):3.2×10-10A(Vg=10V)の優秀な値を示した。
これらに対し従来法による絶縁膜のリーク電流はVg=10Vの場合に10-7レベルであり、本実施例の試料の方が2〜3桁良好となる。また、移動度:86cm/Vsも良好な値であり、実施例の薄膜トランジスタは優れた特性を有する。
【0043】
図16はオートクレーブ処理済み(180℃・5時間)のLZ55溶液を用いて600℃で高温焼成し、半導体層としてInZnO層を形成し、半導体層形成後処理として400℃熱処理した薄膜トランジスタ試料について、IV特性を測定した結果を示す。
この薄膜トランジスタのVd=4V、εr=25、W/L=60/20μmであり、移動度588.5cm/Vs、Ig(リーク電流)=8.2×10-10(4V)を示し、優れた薄膜トランジスタであることを確認できた。
【0044】
図17は、LZ37溶液あるいはLZ55溶液を用い、オートクレーブ処理後の絶縁膜形成用前駆体溶液を用いてなる絶縁膜とオートクレーブ処理していないLZ37溶液あるいはLZ55溶液を用いてなる絶縁膜(いずれも膜厚約140nm)について、比誘電率の周波数依存性を測定した結果を示す。絶縁膜形成用前駆体溶液の焼成温度は400℃に設定し、従来法による絶縁膜の熱処理温度は600℃に設定している。
図17に示す結果から、オートクレーブ処理した後の絶縁膜形成用前駆体溶液を用いて製造した絶縁膜の方が、広い周波数領域で安定した比誘電率を示している。これに対し、従来法による絶縁膜においては、低周波数帯域において比誘電率が大きく変動している。
このことから、オートクレーブ処理した絶縁膜形成用前駆体溶液から得られた絶縁膜の比誘電率について、従来の絶縁膜に対し周波数依存性を改善できることがわかる。
【0045】
図18はLaZrO酸化物溶液に代えて、LaZrHfOの組成式で示されるLaZrHfO酸化物溶液を用いてオートクレーブ処理(180℃・5時間)を施し、絶縁膜形成用前駆体溶液を作製した場合、得られた絶縁膜形成用前駆体溶液の紫外線吸収スペクトルを測定した結果を示す。
図18に示すように、LaZrHfO酸化物溶液においてLaZrO酸化物溶液の場合と同様な波長シフトが認められた。
このことから、LaとZrとHfの錯体を含む溶液において、オートクレーブ処理前の溶液が短波長領域の紫外線しか吸収しないのに対し、オートクレーブ処理後の絶縁膜形成用前駆体溶液は、長波長領域の紫外線を吸収するようになることがわかる。
このことから、LaとZrとHfの錯体を含む溶液においてLaとZrの錯体を含む溶液と同等の紫外光照射による低温作製の効果を得ることができると想定できる。
【0046】
図19はオートクレーブ処理済み(180℃・5時間)のLaZrHfO酸化物溶液を用いた絶縁膜の薄膜リーク電流を測定した結果を示す。薄膜リーク電流の測定方法は図13図14に示す実施例の場合と同等である。
図19に示す結果から、LaZrHfO酸化物溶液であってもオートクレーブ処理済みの絶縁膜形成用前駆体溶液から得られた絶縁膜の方が従来法による絶縁膜よりも2〜3桁程度リーク電流を低減することができた。
【0047】
以下の表2に、これまで用いたLZ37溶液とLZ55溶液とLZ73溶液について、オートクレーブ処理の条件と熱処理の温度条件における密度の変化を示す。密度(g/cm)はX線反射率法(XRR)によって測定した結果である。
【0048】
【表2】
【0049】
表2に示す結果からLZ37溶液、LZ55溶液、LZ73溶液をそれぞれ原液のまま塗布してから400〜600℃に加熱して得られた絶縁膜の密度よりも、180℃で2時間あるいは5時間、オートクレーブ処理した後の溶液から得られた絶縁膜の密度が明らかに向上していることがわかる。このことから、得られる絶縁膜の密度をオートクレーブ処理により向上できることがわかる。
【0050】
図20はLZ55溶液にオートクレーブ処理を施した絶縁膜形成用前駆体溶液について、熱処理する場合にオゾン雰囲気において紫外線照射を行い、熱処理温度を低く設定して絶縁膜を得るとともに、その絶縁膜を備えた薄膜トランジスタを作製し、該薄膜トランジスタのI-V特性を測定した結果を示す。
熱処理温度は250℃に設定し、中心波長253.7nmの紫外光を用いてオゾン(濃度50.0PPM)雰囲気において基板加熱することにより熱処理を施した。
図20に示す結果から、250℃という低温で熱処理することにより、良好な絶縁特性を示し、薄膜トランジスタに適用可能な絶縁層を得ることができ、この絶縁膜を用いて良好なI-V特性を示す薄膜トランジスタを250℃という低温で形成できることがわかる。
【0051】
前記の各例において、LZ37溶液をオートクレーブ処理(180℃、5時間)後に400℃で焼成した絶縁膜の組成は、La0.40Zr3.260.240.6であり、LZ37溶液をオートクレーブ処理することなく400℃で焼成して得られた絶縁膜の組成は、La0.39Zr2.710.290.51であった。
LZ55溶液をオートクレーブ処理(180℃、5時間)後に600℃で焼成した絶縁膜の組成は、La0.87Zr4.050.160.23であった。
LZ37溶液をオートクレーブ処理(180℃、5時間)後に200℃でUV光を焼成した絶縁膜の組成は、La0.38Zr4.180.580.6であった。
【0052】
図21はLZ37溶液とこの溶液をオートクレーブ処理した絶縁膜形成用前駆体溶液を用いて形成した絶縁膜の表面形態をAFM観察した結果を示す。
LZ37−AC180−5hは、LZ37溶液を180℃で5時間、オートクレーブ処理した溶液を用いて製造した絶縁膜を示す。UV150はオゾン雰囲気において150℃でUV照射した絶縁膜を示し、UV200はオゾン雰囲気において200℃でUV照射した絶縁膜を示す。
図21に示すAFMの表面観察像によると、絶縁膜の表面にナノサイズの高密度粒子が均一に分布している状態を確認できた。このことから、低温でUV照射して得た絶縁膜であっても、緻密で密度の高い絶縁膜が得られていると推定できる。
【0053】
図22(A)はLZ37溶液あるいはLZ55溶液を用い、オゾン雰囲気でUV照射とともに低温加熱あるいは高温加熱により作製した絶縁膜の密度と高温加熱のみによって熱処理した絶縁膜の密度を対比して示す。
図22(B)は、Z37溶液あるいはLZ55溶液を用い、オートクレーブ処理後、オゾン雰囲気でUV照射とともに低温加熱あるいは高温加熱により作製した絶縁膜の密度と高温加熱のみによって熱処理した絶縁膜の密度を対比して示す。各図において、UV200は、200℃に基板加熱しながら紫外線照射をオゾン雰囲気中で行った絶縁膜試料であり、UV250−500は、250℃で基板加熱しながら紫外線照射処理を行い、大気中500℃で焼成して得られた絶縁膜試料の結果である。
図22(A)、(B)に示す密度の対比から明らかなように、LZ37溶液あるいはLZ55溶液にオートクレーブ処理を行うことにより、いずれの場合であっても密度を向上できることがわかる。また、低温でUV照射することにより、密度が向上しているので、リーク電流を低減できる緻密な絶縁膜を低温で作製できることがわかる。
【0054】
図23はLZ37溶液、LZ55溶液、あるいは、LZ73溶液を用い、オートクレーブ処理して得た絶縁膜形成用前駆体溶液から作製した絶縁膜について、膜厚を測定した結果を示す。
図23に示す膜厚の対比から、UV照射を行うことなく低温(250℃)で熱処理すると高温(500℃)で熱処理した絶縁膜に対し膜厚変動が大きいが、UV照射とともに低温(150℃、200℃)で熱処理した絶縁膜は高温(500℃)で熱処理した絶縁膜と殆ど膜厚が変わらないことがわかる。
【0055】
図24はLZ37溶液と該LZ37溶液にオートクレーブ処理(180℃・5時間)を施した絶縁膜形成用前駆体溶液について、250℃オゾン雰囲気において紫外線照射を行って得た絶縁膜と、大気中において250℃で熱処理して得た絶縁膜のそれぞれについて各絶縁膜を備えた薄膜トランジスタを作製し、該薄膜トランジスタのI-V特性を測定した結果を示す。ゲート電極に見立てたPt電極の直径は0.3mm、膜厚は約50nmとした。
図24に示す結果から、LZ37溶液をオートクレーブ処理して250℃という低温で熱処理することにより、良好な絶縁特性を示し、薄膜トランジスタに適用可能な絶縁層を得ることができ、この絶縁膜を用いて良好なI-V特性を示す薄膜トランジスタを形成できることがわかる。
【0056】
図25はLZ55溶液と該LZ55溶液にオートクレーブ処理(180℃・5時間)を施した絶縁膜形成用前駆体溶液について、250℃オゾン雰囲気において紫外線照射を行って得た絶縁膜と、大気中において250℃で熱処理して得た絶縁膜のそれぞれについて各絶縁膜のI-V特性を測定した結果を示す。ゲート電極に見立てたPt電極の直径は0.3mm、膜厚は約50nmとした。
図25に示す結果から、LZ55溶液をオートクレーブ処理して250℃という低温で熱処理することにより、良好な絶縁特性を示し、薄膜トランジスタに適用可能な絶縁層を得ることができ、この絶縁膜を用いて良好なI-V特性を示す薄膜トランジスタを形成できることがわかる。
【0057】
図26はオートクレーブ処理済み(180℃・5時間)のLZ37溶液、LZ55溶液、LZ73溶液を用いてオゾン雰囲気においてUV光を照射しながら200℃で熱処理して得た絶縁膜のI-V特性を示す。ゲート電極に見立てたPt電極は、直径0.5mm、膜厚約150nmである。
図26に示す結果から、LZ37とLZ55とLZ73のいずれの溶液であってもオートクレーブ処理済みの絶縁膜形成用前駆体溶液から200℃の低温で良好な絶縁膜を得ることができ、この絶縁膜を用いて良好なI-V特性を示す薄膜トランジスタを形成できると推定できる。
【0058】
図27はLZ37溶液を用い、オートクレーブ処理(180℃・5時間)した後、Ptのゲート電極を形成した基板上にスピンコート法により塗膜を形成し、この塗膜に紫外線を照射しつつ250℃で熱処理することで絶縁膜を形成し、その後、InOからなる半導体層(半導体層形成後の熱処理は350℃)とPtからなるソース電極及びドレイン電極を形成してなる薄膜トランジスタのI-V特性を測定した結果を示す。
図27に示すように絶縁膜形成用前駆体溶液を熱処理して得た絶縁膜を備えた優れた特性の薄膜トランジスタを製造できることがわかった。
【0059】
図28はLZ37溶液を用い、オートクレーブ処理(180℃・5時間)した後、Cuのゲート電極を形成した基板上にスピンコート法により塗膜を形成し、この塗膜に紫外線を照射しつつ250℃で熱処理することで絶縁膜を形成し、その後、InOからなる半導体層(半導体層形成後の熱処理は350℃)とPtからなるソース電極及びドレイン電極を形成してなる薄膜トランジスタのI-V特性を測定した結果を示す。
図28に示すように優れた特性の薄膜トランジスタを製造できることがわかった。この結果から、Cuのゲート電極を備えた薄膜トランジスタを製造できることがわかった。
【0060】
図29はLn系元素であるTmとZrで構成した酸化物溶液の紫外線吸収変化を示すグラフである。
図29に示すようにTmZrOで示す溶液に対し、TmZrOで示す溶液に180℃、5時間のオートクレーブ処理を施して得た前駆体溶液の方が、紫外線の吸収率が向上している。このことから、Ln系元素であるTmとZrで構成した酸化物溶液においても、先のLZ溶液と同様な紫外線吸収変化が得られることがわかった。
このため、本願のオートクレーブ処理は、LaZrO系の溶液に限らず、LnZrO系の溶液一般に適用できると思われる。
LnZrO系の溶液とは、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Luのいずれかから選択される希土類元素とZrの酸化物溶液を意味し、希土類元素は置換可能性が高い元素であるので、本発明をLaZrO系の溶液に限らず、LnZrO系の溶液一般に適用できると考えられる。
【0061】
図30はLZ37溶液について、オートクレーブ処理を行わずに高温焼成して得た膜(500℃、1時間加熱)とオゾン雰囲気において紫外線を照射して250℃熱処理により作製して得た膜のX線光電子分光スペクトル(XPS)を示す。
図31は、LZ37溶液について、オートクレーブ処理(180℃、5時間)を行った後に高温焼成して得た膜(500℃、1時間加熱)とオゾン雰囲気において紫外線を照射して250℃熱処理により作製して得た膜のX線光電子分光スペクトル(XPS)を示す。
【0062】
図30図31の比較から、オートクレーブ処理前後の溶液を用いることで成膜後、高温焼成する場合には薄膜構造上に大きな差が示されてないが、低温焼成(UV/O処理)の場合には、薄膜の構造を反映するXPS(X線光電子分光スペクトル)のZr3dとO1sからみると、オートクレーブ処理前後の溶液を用いた薄膜中にZrとOの結合状態が異なることが分った。
オートクレーブ処理後の溶液は、膜中のZrとOがより低エネルギー方向にシフトしたことが分った。これは、前駆体溶液中に有機組成の光分解が促進されたことでZr−Oの結合が十分に進んだことによるものであると考えられる。
【0063】
以上説明した各実施例の結果から以下のことがわかった。
LZ37〜LZ73溶液をオートクレーブ処理することで絶縁膜形成用前駆体溶液を得ることができ、その絶縁膜形成用前駆体溶液の紫外線吸収スペクトルは長波長側へシフトすることを確認できた。
LZ37〜LZ73溶液をオートクレーブ処理することで絶縁膜形成用前駆体溶液を得ることができ、その絶縁膜形成用前駆体溶液を熱処理して得た絶縁膜の密度を高くすることができた。
LZ37〜LZ73溶液をオートクレーブ処理することで絶縁膜形成用前駆体溶液を得ることができ、該絶縁膜形成用前駆体溶液を熱処理して得た絶縁膜について、誘電率の周波数依存性を著しく改善できた。
LZ37〜LZ73溶液をオートクレーブ処理することで絶縁膜形成用前駆体溶液を得ることができ、該絶縁膜形成用前駆体溶液を高温熱処理して得た絶縁膜について、有機成分残留量を低減することができた。
【0064】
高エネルギーX線回折測定結果の解析によりLZ37〜LZ73溶液のオートクレーブ処理後の溶液にクラスター構造秩序性の向上が見られ、500℃で焼成した絶縁膜に顕著な秩序性の変化を生じたことがわかった。
LZ37〜LZ73溶液をオートクレーブ処理することで絶縁膜形成用前駆体溶液を得ることができ、この絶縁膜形成用前駆体溶液を用いて作製した絶縁膜を用いて薄膜トランジスタを製造することによりリーク電流を2桁以上低減することができた。
【0065】
LZ37〜LZ73溶液をオートクレーブ処理することで絶縁膜形成用前駆体溶液を得ることができ、この絶縁膜形成用前駆体溶液を用いて作製した絶縁膜を用いて薄膜トランジスタを製造することによりゲート電流を1桁以上低減できた。
LZ37〜LZ73溶液をオートクレーブ処理することで絶縁膜形成用前駆体溶液を得ることができ、この絶縁膜形成用前駆体溶液を熱処理して絶縁膜を作製する場合、溶液の紫外線吸光特性を利用することで薄膜トランジスタの低温作製に成功し、Cu膜をゲート電極の構成材料とした薄膜トランジスタを実現できた。
【符号の説明】
【0066】
T…薄膜トランジスタ(トランジスタデバイス)、1…基板、2…ゲート電極、3…ゲート絶縁膜、4…半導体層、5…ソース電極、6…ドレイン電極。
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