(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
一般に、光通信システムや無線通信システム等の受信装置には、受信した信号を増幅する増幅器が設けられている。例えば、光通信システムにおける光受信機には、伝送路(光ファイバ)から送られた光信号を光−電流変換するフォトダイオード(PD:Photodiode)に加えて、そのフォトダイオードから出力される電流信号を電圧信号へ変換するとともに、その電圧信号を後段の回路(例えば、アナログ・デジタル変換器およびデジタルシグナルプロセッサ等)が動作可能な電圧振幅まで線形増幅するトランスインピーダンスアンプ(TIA:Transimpedance Amplifier)が設けられている(非特許文献1,非特許文献2参照)。
【0003】
図9は、光受信機に搭載される従来のTIAを示す図である。
図9に示されるTIA900は、利得Aの反転増幅器91とソースフォロワ92とを縦続に接続し、ソースフォロア92の出力端子と反転増幅器91の入力端子との間に帰還抵抗R
FBを接続した、所謂帰還抵抗型TIAの一例である(非特許文献1のFig.7 (a)を参照)。
【0004】
TIA900において、反転増幅器91の入力インピーダンスが帰還抵抗R
FBに比べて十分に大きい場合、入力電流I
INの全てが帰還抵抗R
FBを流れ込むことにより電圧に変換され、且つ増幅されて出力される。
【0005】
ここで、TIA900の利得(以下、「トランスインピーダンス利得」と称する。)Z
Tは、式(1)で表される。
【0006】
【数1】
【0007】
また、反転増幅器91の利得を“A”とし、ソースフォロワ92の利得を“1”としたとき、TIA900の入力電圧V
INと出力電圧V
OUTとの間に“V
OUT=−AV
IN”の関係が成り立つとともに、出力電圧V
OUTと入力電流I
INとの間に“V
OUT=I
IN×R
FB”の関係が成り立つので、TIA900の入力インピーダンスZ
INは、式(2)で表される。
【0008】
【数2】
【0009】
光受信機用TIAとしてTIA900を用いる場合、TIA900の入力端子にはフォトダイオード(PD)が接続されるため、TIA900の入力端子にはPDのカソード−アノード間容量が寄生容量として付加される。更に、TIA900の入力端子には、電極パッドの容量やその他の入力端子に接続される配線の寄生容量等も付加される。そのため、TIA900の帯域は、TIA900の入力端子に付加される上記種々の容量から成る入力容量C
INと、TIA900の入力インピーダンスZ
INとによって形成されるローパスフィルタ(時定数≒C
IN×Z
IN)により制限される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
近年の光通信システムの高速化に伴い、光受信機用TIAの広帯域化が望まれている。上述したように、従来の帰還抵抗型のTIA900では、帯域は入力容量C
INと入力インピーダンスZ
INから成るローパスフィルタによって制限される。したがって、TIA900の帯域を広くするためには、入力容量C
INおよび入力インピーダンスZ
INの少なくとも一方を小さくする必要がある。
【0012】
しかしながら、TIA900の入力容量C
INは、主に、TIAの入力端子に接続されるPDの種類や当該PDとTIAとの間の接続形態によって決まるため、その容量値を大幅に低減することは容易ではない。また、TIA900の入力インピーダンスZ
INは、帰還抵抗R
FBを小さな値にすることにより低減することが可能であるが、帰還抵抗R
FBを小さくした場合、式(1)に示されるようにトランスインピーダンス利得Z
Tも低下してしまう。したがって、従来の帰還抵抗型のTIA900では、高利得かつ広帯域特性を両立することが困難であった。
【0013】
一方、非特許文献2には、帰還抵抗型のTIAの前段にゲート接地型のTIAを接続した2段構成のTIAが開示されている。これによれば、TIA全体のトランスインピーダンス利得を低下させることなく、入力インピーダンスを下げて帯域を確保することが可能となる。
【0014】
しかしながら、今後予想される光通信システムの更なる高速化の要求を考えると、更なる高利得化と広帯域化が可能な新たな構成のTIAが必要であると、本願発明者らは考えた。
【0015】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、高利得かつ広帯域特性を両立したTIAを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明に係るトランスインピーダンスアンプ(100〜103)は、第1端子(PIN)および第2端子(POUT)と、第1端子から信号を入力する反転増幅器(1,1X)と、反転増幅器から出力された信号を入力するボルテージフォロア(2)と、ボルテージフォロアに流れる電流に応じた電流を生成して第2端子に出力する電流生成回路(3)と、第2端子に接続された第1負荷(I
C2)と、第1端子とボルテージフォロアの出力端子との間に接続された第1帰還抵抗(R
FB1)と、ボルテージフォロアの出力端子と第2端子との間に接続された第2帰還抵抗(R
FB2)とを備えることを特徴とする。
【0017】
上記トランスインピーダンスアンプにおいて、ボルテージフォロアは、一端が固定電位ノード(VSS)に接続され、他端が第1帰還抵抗と第2帰還抵抗とが接続される中間ノード(X)に接続される第2負荷(I
C1)と、制御電極が反転増幅器の出力端子に接続され、第1主電極が中間ノードに接続され、第2主電極が電流生成回路の入力端子に接続される第1トランジスタ(M1)とを含み、電流生成回路は、第1トランジスタの第2主電極から供給された電流をN(Nは1以上の整数)倍して第2端子に出力するカレントミラー回路であってもよい。
【0018】
上記トランスインピーダンスアンプ(101)において、第1端子と反転増幅器の入力端子との間に接続された入力段増幅器(4)を更に有し、入力段増幅器は、制御電極が交流的に接地され、第1主電極に入力された第1端子の信号を増幅して第2主電極から反転増幅器の入力端子に出力する第2トランジスタ(M7)を含んでもよい。
【0019】
上記トランスインピーダンスアンプにおいて、入力段増幅器は、ゲート接地型の増幅回路であってもよい。
【0020】
上記トランスインピーダンスアンプにおいて、入力段増幅器は、レギュレーテッドカスコード型の増幅回路であってもよい。
【0021】
上記トランスインピーダンスアンプにおいて、反転増幅器は、ソース接地増幅回路(1A)であってもよい。
【0022】
上記トランスインピーダンスアンプにおいて、反転増幅器は、CMOSインバータ回路(1B)であってもよい。
【0023】
上記トランスインピーダンスアンプ(102,103)において、ボルテージフォロアと、電流生成回路と、第1負荷と、第1帰還抵抗と、第2帰還抵抗とを一組とする回路ブロックを2組有し、反転増幅器(1X)は、一対の差動信号を反転増幅して出力する差動増幅回路であって、差動増幅回路の反転出力端子(−)から出力された信号は、一方の上記回路ブロックに入力され、差動増幅回路の非反転出力端子(+)から出力された信号は、他方の回路ブロックに入力されていてもよい。
【0024】
なお、上記説明では、一例として、発明の構成要素に対応する図面上の構成要素を、括弧を付した参照符号によって表している。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、高利得かつ広帯域特性を両立したTIAを提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態について図を参照して説明する。なお、以下の説明において、各実施の形態において共通する構成要素には同一の参照符号を付し、繰り返しの説明を省略する。
【0028】
≪実施の形態1≫
図1は、本発明の一実施の形態に係るTIAの構成を示す図である。
同図に示されるTIA100は、例えば光通信システムにおける光受信機に搭載される、帰還抵抗型TIAである。光通信システムの光受信機おいて、伝送路(光ファイバ)から送られた光信号はPDによって光−電流変換され、光−電流変換された電流信号は電圧信号に変換される。TIA100は、上記PDによって変換された電流信号I
INを入力して電圧信号に変換するとともに、後段の回路(例えば、アナログ・デジタル変換器およびデジタルシグナルプロセッサ等)が動作可能な電圧振幅まで増幅して出力する。
【0029】
図1に示されるように、TIA100は、反転増幅器1、ボルテージフォロア2、カレントミラー回路3、負荷としての電流源I
C2、帰還抵抗R
FB1,R
FB2、および端子PIN,POUTを備える。
【0030】
特に制限されないが、TIA100は、例えば公知のCMOS(complementary metal oxide semiconductor)製造プロセスによって半導体基板に形成された半導体集積回路によって実現することができる。なお、TIA100は、1チップの半導体装置として実現されても良いし、マルチチップ構成の半導体装置として実現されても良く、特に制限されない。
【0031】
反転増幅器1は、端子PINに入力された信号を増幅して出力する回路である。TIA100の広帯域化を図るためには、反転増幅器1は、広帯域且つ高利得であることが望ましい。広帯域且つ高利得な反転増幅器1としては、
図2Aに示されるソース接地増幅回路1Aや
図2Bに示されるCMOSインバータ回路1Bを例示することができる。
【0032】
ボルテージフォロア2は、反転増幅器1から出力された信号を増幅して出力する増幅回路である。ボルテージフォロア2としては、
図1に示されるように、1つのMOSトランジスタM1(以下、「トランジスタM1」と称する。)と負荷としての電流源I
C1とから構成されたソースフォロアを例示することができる。
【0033】
具体的に、電流源I
C1は、一端が固定電位ノードとしての電源ラインVSSに接続され、他端が帰還抵抗R
FB1と帰還抵抗R
FB2とが接続される中間ノードXに接続される。トランジスタM1は、例えばNチャネル型のMOSトランジスタであって、制御電極としてのゲート電極が反転増幅器1の出力端子Sに接続され、第1主電極としてのソース電極が中間ノードXに接続され、第2主電極としてのドレイン電極がカレントミラー回路3の入力端子に接続される。
【0034】
カレントミラー回路3は、ボルテージフォロア2に流れる電流に応じた電流を生成して端子POUTに出力する電流生成回路である。具体的に、カレントミラー回路3は、トランジスタM1のドレイン電極から供給された電流をN(例えば、Nは1以上の整数)倍して端子POUTに出力する。
【0035】
カレントミラー回路3は、
図1に示されるように、ゲート電極およびドレイン電極がトランジスタM1のドレイン電極に共通に接続され、ソース電極が固定電位ノードとしての電源ラインVDD(>VSS)に接続されたPチャネル型のMOSトランジスタM2(以下、「トランジスタM2」と称する。)と、ゲート電極がトランジスタM2のゲート電極と接続され、ソース電極が電源ラインVDDに接続され、ドレイン電極が端子POUTに接続されたPチャネル型のMOSトランジスタM3(以下、「トランジスタM3」と称する。)とを含む。
【0036】
電流源I
C2は、一端が端子POUTに接続され、他端が電源ラインVSSに接続される。
【0037】
帰還抵抗R
FB1は、端子PINとボルテージフォロア2の出力端子(中間ノードX)との間に接続される。帰還抵抗R
FB2は、ボルテージフォロア2の出力端子(中間ノードX)と端子POUTとの間に接続される。
【0038】
次に、実施の形態1に係るTIA100の動作原理について説明する。
TIA100において、反転増幅器1の入力インピーダンスが十分大きいため、端子PINに入力された入力電流I
INは、ほぼ全て帰還抵抗R
FB1に流れ込む。
【0039】
帰還抵抗R
FB1に流れ込んだ入力電流I
INの一部は、電流I
1としてボルテージフォロア2の出力端子を介してカレントミラー回路3の入力端子(トランジスタM2のドレイン電極)に流れ込み、入力電流I
INの残りは、帰還抵抗R
FB2を通って端子POUTからカレントミラー回路3の出力端子(トランジスタM3のドレイン電極)に流れ込むことから、入力電流I
INと電流I
1、I
2との間には、“I
IN=I
1+I
2”および“I
2=N×I
1”の関係が成り立つ。したがって、TIA100のトランスインピーダンス利得Z
T100は、下記式(3)で表される。
【0040】
なお、TIA100において電流源I
C1と電流源I
C2の夫々の電流値は特に制限されず、I
C1:I
C2≠1:Nであってもよい。この場合でも、カレントミラー回路3におけるトランジスタM2とトランジスタM3の電流比が1:Nになるように帰還抵抗R
FB2に直流の電流が流れる。
【0041】
式(3)において、Nが充分大きい場合、“Z
T100≒R
FB1+R
FB2”となり、TIA100のトランスインピーダンス利得Z
T100は、帰還抵抗R
FB1と帰還抵抗R
FB2との和で決まる。
【0043】
また、反転増幅器1の利得が“A”、ボルテージフォロワ2の利得が“1”であるとすると、TIA100の入力インピーダンスZ
IN100は下記式(4)で表される。
【0045】
例えば、本実施の形態に係るTIA100のトランスインピーダンス利得Z
T100を前述した従来のTIA900のトランスインピーダンス利得Z
T(=R
FB)と同じ値に設定する場合、上記式(3)から“R
FB1<R
FB”となる。このとき、式(2)と式(4)から、TIA100の入力インピーダンスZ
IN100は、従来のTIA900の入力インピーダンスZINよりも小さくなる。上述したように、帰還抵抗型TIAでは入力インピーダンスが帯域を制限する要素の一つであるので、本実施の形態TIA100によれば、従来の帰還抵抗型TIAと同等のトランスインピーダンス利得を維持しながら、広帯域化を図ることが可能となる。
【0046】
一方、本実施の形態に係るTIA100の入力インピーダンスZ
IN100を従来のTIA900の入力インピーダンスZ
INと同じ値に設定する場合、式(1)と式(4)から、“R
FB1=R
FB”となる。このとき、式(2)と式(3)から、TIA100のトランスインピーダンス利得Z
T100は、従来のTIA900のトランスインピーダンス利得Z
Tよりも大きくなる。すなわち、本実施の形態TIA100によれば、従来の帰還抵抗型TIAと同等の帯域(入力インピーダンス)を維持しながら、高利得化を図ることが可能となる。
【0047】
図3は、実施の形態1に係るTIA100の利得の周波数特性を示す図である。
同図には、本実施の形態に係る帰還抵抗型のTIA100利得の周波数特性のシミュレーション結果が参照符号300で示され、従来の帰還抵抗型のTIA900の利得の周波数特性のシミュレーション結果が参照符号301で示されている。同図において、横軸は周波数(Frequency)〔Hz〕であり、縦軸は利得(Gain)〔dBΩ〕である。
【0048】
図3に示されるシミュレーション結果のシミュレーション条件は、従来のTIA回路900(
図9)においてR
FB=6kΩとし、本実施の形態に係るTIA100においてR
FB1=3.5kΩ、R
FB2=2.5kΩ、N=6としている。また、TIA回路100,900ともに65nm世代のCMOSパラメータを用いており、TIA回路100,900の入力端子としての端子PINには、夫々、PDのカソード−アノード間容量と電極パッドの寄生容量等を想定した計140fFの入力容量C
INを接続した。また、TIA100,900の反転増幅器1,91として、ソース接地増幅回路(
図2A参照)を用いた。
【0049】
図3に示されるように、本実施の形態に係るTIA100と従来のTIA900とを同一の利得条件とした場合、TIA100は、従来のTIA900に比べて、DC利得(約74dB)から−3dB低下したときの周波数が約2.1倍大きくなっており、より広帯域なTIAが実現できていることが理解される。
【0050】
以上、実施の形態1に係るTIA100によれば、端子PINに入力された信号を増幅する反転増幅器1にボルテージフォロア2をシリーズに接続するとともに、ボルテージフォロア2に流れる電流をカレントミラー回路3によってコピーして端子POUTに出力するとともに、端子PINとボルテージフォロア2の出力端子との間に帰還抵抗R
FB1を接続し、ボルテージフォロア2の出力端子と端子POUTとの間に帰還抵抗R
FB2を接続した構成を有しているので、従来の帰還抵抗型TIAと同等のトランスインピーダンス利得を維持しながら、広帯域化を図ることが可能となるとともに、従来の帰還抵抗型TIAと同等の帯域(入力インピーダンス)を維持しながら、高利得化を図ることが可能となる。すなわち、実施の形態1に係るTIA100によれば、高利得かつ広帯域特性を両立したTIAを実現することが可能となる。
【0051】
≪実施の形態2≫
図4は、実施の形態2に係るTIAの構成を示す図である。
実施の形態2に係るTIA101は、端子PINと反転増幅器1との間に帰還抵抗型TIAよりも入力インピーダンスの低い別の入力段増幅器が接続されている点において、実施の形態1に係るTIA100と相違し、その他の点においては、実施の形態1に係るTIA100と同様である。
【0052】
具体的に、
図4に示されるTIA101は、端子PINと反転増幅器1の入力端子Yとの間に接続された入力段増幅器4と、入力段増幅器4の負荷としての抵抗R
OUTとを更に備える。
【0053】
入力段増幅器4は、帰還抵抗型TIAよりも入力インピーダンスの低い増幅回路である。具体的に、入力段増幅器4は、制御電極としてのゲート電極が交流的に接地され、第1主電極としてのソース電極に入力された端子PINからの信号(入力電流I
IN)を増幅して、第2主電極としてのドレイン電極から反転増幅器1の入力端子Yに出力するトランジスタを含む増幅回路である。このような増幅回路としては、
図5に示すようなゲート接地型TIAやレギュレーテッドカスコード型(RGC型)TIAを例示することができる。
【0054】
図4に示されるように、TIA101は、端子PINに入力された電流I
INが抵抗R
OUTに流れる電流I
ROUTと電流I
INXに夫々分岐し、電流I
INXが後段の帰還抵抗型TIAに流れ込むことにより、入力電流I
INを電圧に変換して増幅するTIAを2段構成とした回路である。
図4に示す、TIAを2段構成とした回路構成は、上述した非特許文献2に開示された従来のTIAと同様である。
【0055】
TIA101では、後段の帰還抵抗型TIAとして実施の形態1に係るTIA100を用いている点において、非特許文献2に開示された従来のTIAと相違する。
TIA101において、後段のTIA100のトランスインピーダンス利得を非特許文献2のTIAの後段の帰還抵抗型TIAの利得と同じ値に設定した場合、ノードYから見た後段のインピーダンス(TIA100の入力インピーダンス)は、非特許文献2のTIAの後段の帰還抵抗型TIAの入力インピーダンスよりも低くなる。そのため、抵抗R
OUTに流れる電流I
ROUTに対するTIA100に入力される電流I
INXとの比率は、非特許文献2のTIAのそれよりも大きくなる。すなわち、後段の帰還抵抗型TIAに入力される電流は、非特許文献2のTIAよりも実施の形態2に係るTIA101の方が大きくなる。これにより、実施の形態2に係るTIA101は、従来の非特許文献2のTIAよりも大きな電圧信号を端子POUTから出力することが可能となる。
【0056】
また、TIA101において、入力側の端子PINから見た入力インピーダンスは、ゲート接地TIA(またはレギュレーテッドカスコード型TIA)から成る入力段増幅器4によって決まるため、帰還抵抗型TIAのみから構成された回路に比べて帯域劣化は生じない。
【0057】
以上、実施の形態2に係るTIA101によれば、帰還抵抗型TIAよりも入力インピーダンスの低いゲート接地TIAやレギュレーテッドカスコード型TIA等と帰還抵抗型TIAとを組み合わせた2段構成のTIAにおいて、後段の帰還抵抗型TIAとして上述した実施の形態1に係るTIA100を適用しているので、帯域を劣化させることなく、従来の2段構成のTIAに比べてより高利得なTIAを実現することが可能となる。
【0058】
≪実施の形態3≫
図6は、実施の形態3に係るTIAの構成を示す図である。
同図に示されるTIA102は、実施の形態1に係るTIA100を差動構成としたものである。すなわち、TIA102は、端子PINpと端子PINnに夫々入力された一対の電流信号を一対の電圧信号に変換して端子POUTpと端子POUTnとから夫々出力する差動構成のTIAである。
【0059】
具体的に、TIA102は、端子PINpと端子PINnに夫々入力された一対の信号の差分を反転増幅して、差動信号として出力する差動増幅器1Xを有している。また、TIA102は、ボルテージフォロア2と、カレントミラー回路3と、負荷としての電流源I
C2と、帰還抵抗R
FB1と、帰還抵抗R
FB2と一組とする回路ブロックを2組有している。
【0060】
差動増幅回路1Xの反転出力端子(−)から出力された信号は、トランジスタM1A,M2A,M3A、電流源I
C1_A,I
C2_A、および帰還抵抗R
FB1_A,R
FB2_Aから構成される一方の回路ブロックに入力され、差動増幅回路1Xの非反転出力端子(+)から出力された信号は、トランジスタM1B,M2B,M3B、電流源I
C1_B,I
C2_B、および帰還抵抗R
FB1_B,R
FB2_Bから構成される他方の回路ブロックに入力される。
【0061】
実施の形態3に係る差動構成のTIA102によれば、実施の形態1に係るTIA100と同様に、高利得かつ広帯域特性を両立することが可能となる。
【0062】
また、差動構成のTIA102によれば、同相ノイズの除去が可能となるので、高周波帯での電源端子やグラウンド端子の設計が容易となる。
【0063】
≪実施の形態4≫
図7は、実施の形態4に係るTIAの構成を示す図である。
同図に示されるTIA103は、実施の形態2に係るTIA101を差動構成としたものである。
【0064】
具体的に、TIA103は、実施の形態3に係るTIA102の回路構成に加えて、差動型入力段増幅器4Xと、差動型入力段増幅器4Xの負荷としての2つの抵抗R
OUT_A,R
OUT_Bとを備える。差動型入力段増幅器4Xは、端子PINp、PINn毎に設けられた、帰還抵抗型TIAよりも入力インピーダンスが低いTIAから構成されている。
【0065】
図8は、差動型入力段増幅器4Xの一例を示す図である。
図8に示されるように、差動型入力段増幅器4Xは、端子PINpから信号を入力し、抵抗R
OUT_Aを負荷とする、トランジスタM7Aおよび電流源I
C3_Aから構成されたゲート接地型TIAと、端子PINnから信号を入力し、抵抗R
OUT_Bを負荷とする、トランジスタM7Bおよび電流源I
C3_Bから構成されたゲート接地型TIAとを含む。一方のゲート接地型TIAを構成するトランジスタM7Aのドレイン電極は、差動増幅回路1Xの反転入力端子(−)に接続され、他方のゲート接地型TIAを構成するトランジスタM7Bのドレイン電極は、差動増幅回路1Xの反転入力端子(+)に接続される。
【0066】
実施の形態4に係る差動構成のTIA103によれば、実施の形態2に係るTIA101と同様に、帯域を劣化させることなく、高利得なTIAを実現することが可能となる。
また、差動構成のTIA103によれば、同相ノイズの除去が可能となるので、高周波帯での電源端子やグラウンド端子の設計が容易となる。
【0067】
以上、本発明者らによってなされた発明を実施の形態に基づいて具体的に説明したが、本発明はそれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能であることは言うまでもない。
【0068】
例えば、上記実施の形態において、TIA100〜103がCMOSプロセスで実現される場合を例示したが、バイポーラプロセスやBiCMOS(Bipolar Complementary Metal Oxide Semiconductor)プロセス等の他の半導体プロセスによって実現してもよい。例えば、ボルテージフォロア2をソースフォロアではなく、エミッタフォロアにて実現してもよい。
【0069】
また、上記実施の形態において、カレントミラー回路3を2つのPチャネル型のMOSトランジスタM2,M3によって構成する場合を例示したが、ボルテージフォロア2の電流に応じた電流を生成することができれば、カレントミラー回路3の回路構成やカレントミラー回路3を構成するトランジスタの種類等は上記の例に限定されるものではない。
【0070】
また、上記実施の形態では、簡単のために、利得“−A”の反転増幅器1,1Xの入力インピーダンスが十分に高く、反転増幅器1,1Xの入力端子に電流が流れ込まないものとして説明したが、入力電流I
INのRF成分の大部分が帰還抵抗R
FB1に流れ込む構成であればよい。例えば、反転増幅器1の入力段回路を、ベース電極が端子PINに接続され、エミッタ電極が接地されたバイポーラトランジスタを用いた回路構成とし、そのベース電極(反転増幅器の入力端子)に僅かにベース電流が流れ込むような場合や、反転増幅器1の入力段に、入力電流I
INの直流成分を流すバイパス回路を別途設けた場合であっても、上記実施の形態と同様の効果が期待できる。
【0071】
また、実施の形態2,4において、入力段増幅器4,4Xとしてゲート接地型TIAおよびレギュレーテッドカスコード型TIAを用いる場合を例示したが、ゲート電極(ベース電極)が交流的に接地され、ソース電極(エミッタ電極)から入力した信号を増幅してドレイン電極(コレクタ電極)から出力するトランジスタを含む増幅回路であれば、上述した回路例に限定されるものではない。
【0072】
また、上記実施の形態において、TIA100〜103が光通信システムの光受信機に搭載される場合を例示したが、これに限られず、無線通信システム等の受信装置のように、電流信号を電圧信号に変換して増幅する必要がある装置であれば同様に適用することができる。