特許第6647814号(P6647814)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ キッコーマン株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6647814
(24)【登録日】2020年1月17日
(45)【発行日】2020年2月14日
(54)【発明の名称】バター風味調味液及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 23/00 20160101AFI20200203BHJP
【FI】
   A23L23/00
【請求項の数】4
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-150901(P2015-150901)
(22)【出願日】2015年7月30日
(65)【公開番号】特開2017-29031(P2017-29031A)
(43)【公開日】2017年2月9日
【審査請求日】2018年1月16日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成27年7月27日に、http://www.kikkoman.co.jp/corporate/news/15039.htmlにて公開した。
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成27年4月9日〜7月30日に、キッコーマン食品株式会社の商談担当者が、「キッコーマン ステーキしょうゆ 香味バター風味」の試供品を展示会にて配布又は開示した。
(73)【特許権者】
【識別番号】000004477
【氏名又は名称】キッコーマン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100086689
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100157772
【弁理士】
【氏名又は名称】宮尾 武孝
(72)【発明者】
【氏名】井ノ本 也寸志
(72)【発明者】
【氏名】武石 節子
【審査官】 千葉 直紀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−246885(JP,A)
【文献】 特開2010−046036(JP,A)
【文献】 特開2010−017171(JP,A)
【文献】 総合乳タンパク 日本新薬,2013年
【文献】 バターフレーバー『BF』シリーズ 森永乳業株式会社,2009年 4月20日
【文献】 Mintel[online],2005年10月,検索日2018.11.20,URL,https://www.gnpd.com/sinatra/recordpage/10237209/from_search/c1CvykqnqD/?page=1
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 23/00 −23/10
A23L 27/00 −27/60
A01J 1/00 −99/00
A23C 1/00 −23/00
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バター香料と、ホエイ蛋白質とを含有し、バター香料の含有量が0.05〜0.43質量%であり、ホエイ蛋白質の含有量が0.33〜3.51質量%であり、55℃以上で加熱処理されていて、ステーキ、ソテー又は焼肉用に用いられることを特徴とするバター風味調味液。
【請求項2】
pHが3.0〜7.0である請求項記載のバター風味調味液。
【請求項3】
バター香料と、ホエイ蛋白質とを含有し、バター香料の含有量が0.05〜0.43質量%であり、ホエイ蛋白質の含有量が0.33〜3.51質量%である調味液原料を混合し、55℃以上で加熱処理することを特徴とするステーキ、ソテー又は焼肉用に用いられるバター風味調味液の製造方法。
【請求項4】
前記調味液のpHが3.0〜7.0となるように、前記調味液原料を調製する請求項記載のバター風味調味液の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばステーキ、ソテー、焼肉等に好適なバター風味調味液及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばステーキ、ソテー、焼肉等の肉料理に利用される調味液(タレ、ソース)は、例えば、しょうゆ、糖類、香辛料、みりん、たまねぎ、にんにく、生姜、レモン果汁、酵母エキス等を混合して作られている。
【0003】
このような調味料として、下記特許文献1には、乾燥タマネギを含む調味液を80℃以上に加熱し、70℃以下に冷却した後、ニンニクを添加して再度70℃以上に加熱して得られる液体調味料が開示されている。
【0004】
また、特にステーキ、ソテーなどの調味液としては、バター風味を有するものも好まれている。バター風味を有する調味液は、バターや、バター香料を添加して、バター風味を付与している。
【0005】
一方、チーズ製造の副産物である乳清(ホエイ)から得られるホエイ蛋白質は、各種食品の原料として利用されている。例えば、下記特許文献2には、ホエイ蛋白質、ホエイ蛋白質濃縮物、ホエイ蛋白質分離物の少なくともひとつを飲食品に添加することにより、飲食品特有の香味の揮発防止や、飲食品の異味異臭のマスキングをすることが記載されている。
【0006】
また、下記特許文献3には、水中油型乳化油脂組成物全体中、バター由来の油溶性成分を10〜40重量%、ホエイ由来の水溶性成分を10〜40重量%、及び乳蛋白質としてのホエイ濃縮物と糖質としての水飴及び/又は還元澱粉糖化物とからなる複合体を含有する水中油型乳化油脂組成物が開示されている。そして、該水中油型乳化油脂組成物をベーカリー食品の生地に添加することにより、自然なバター風味が得られることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第5578547号公報
【特許文献2】特許第3272453号公報
【特許文献3】特許第5298706号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
タレ、ソース等の調味液にバター風味を付与する場合、バターを多量加えると、調味液中でバターの固形分や油分が分離しやすく、原料コストも増大するので、バターの添加量には限りがある。
【0009】
そこで、バター香料を添加することも行われているが、バター香料を添加した調味液においては、自然なバター風味やミルク感が不足するという問題があった。
【0010】
したがって、本発明の目的は、バター香料を用いても、良好なバター風味が得られるようにしたバター風味調味液及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明のバター風味調味液は、バター香料と、ホエイ蛋白質とを含有することを特徴とする。
【0012】
本発明のバター風味調味液によれば、調味液の原料として、バター香料と、ホエイ蛋白質とを含有させることにより、バター感やミルク感を強調して、良好なバター風味の調味液を提供することができる。
【0013】
本発明のバター風味調味液においては、バター香料の含有量が0.05〜0.43質量%であり、ホエイ蛋白質の含有量が0.33〜3.51質量%であることが好ましい。これによれば、バター風味調味液としての味のバランスを良好にすることができる。
【0014】
また、本発明のバター風味調味液においては、pHが3.0〜7.0であることが好ましい。これによれば、味のバランスがよく、良好なバター風味が得られる。
【0015】
更に、本発明のバター風味調味液は、ステーキ、ソテー又は焼肉用の調味液であることが好ましい。本発明のバター風味調味液は、ステーキ、ソテー、又は焼肉用に特に適した風味付けができる。
【0016】
本発明のバター風味調味液の製造方法は、バター香料と、ホエイ蛋白質とを含有する調味液原料を混合し、加熱処理することを特徴とする。
【0017】
本発明のバター風味調味液の製造方法によれば、バター香料と、ホエイ蛋白質とを含有させ、加熱処理することにより、バター感やミルク感を強調して、良好なバター風味の調味液を提供することができる。
【0018】
本発明のバター風味調味液の製造方法においては、前記調味液原料中のバター香料の含有量を0.05〜0.43質量%とし、ホエイ蛋白質の含有量を0.33〜3.51質量%とすることが好ましい。これによれば、バター風味調味液としての味のバランスを良好にすることができる。
【0019】
本発明のバター風味調味液の製造方法においては、前記調味液のpHが3.0〜7.0となるように、前記調味液原料を調製することが好ましい。これによれば、味のバランスがよく、良好なバター風味が得られる。
【0020】
更に、本発明のバター風味調味液においては、55℃以上で加熱処理されていることが好ましい。これによれば、バター風味を増強することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明のバター風味調味液によれば、調味液の原料として、バター香料と、ホエイ蛋白質とを含有することにより、バター感やミルク感を強調して、良好なバター風味の調味液を提供することができる。
【0022】
本発明のバター風味調味液の製造方法によれば、調味液の原料として、バター香料と、ホエイ蛋白質とを含有させ、加熱処理することにより、バター感やミルク感を強調して、良好なバター風味の調味液を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明のバター風味調味液において、バター香料としては、ラクトン類やケトン類の含有量が多いことが好ましいと考えられている(特開2009−261339)。具体的には、無発酵バター(スイートクリームバター)由来の香り成分としては、ラクトン類が、δ−ヘキサラクトン、δ−デカラクトン、γ−ドデカラクトン、δ−ドデカラクトン及びδ−テトラデカラクトン等のラクトン類と2−ペンタノン、2−ヘプタノン、2,3−オクタンジオン等のケトン類により特徴づけられ、また発酵バター由来の香り成分としては、乳酸菌発酵により形成されるジアセチル(バター様)やプロピオンアルデヒド等のアルデヒド類等が知られている。一般的にバター香料は、δ-デカラクトン、γ-ドデカラクトン、δ-ドデカラクトン、δ-テトラデカラクトン、δ-ヘキサデカラクトン等のラクトン類と、ケトン類、アルデヒド類及びジアセチル等の特徴的なバターの香り成分の混合物に、安定剤として、あるいは利便性のために、植物油等を配合したバター香料製剤として提供されている(特開2005−15685)。
【0024】
なお、無発酵バターに特徴的なラクトン類は、バターオイルを加熱することあるいはリパーゼなどで処理することにより得られ(国際公開WO2013/105624)、ジアセチルは水性ペクチンスラリーを乳酸菌により醗酵させる(特開平6−7177)、あるいは、発酵バターより抽出分離すること等で製造することができる。
【0025】
本発明で用いられるバター香料としては、精製したラクトン類あるいはジアセチルをそのまま用いることもできるが、利便性等からこれらの香り成分を含む香料製剤を用いることが好ましい。例えば、バターフレーバーKM−2008(商品名、長谷川香料社製)、バターフレーバーFLW0268(商品名、稲畑香料社製)、ローストバターフレーバーS08955(商品名、曽田香料社製)等が使用できる。
【0026】
バター香料は、食品添加物であることからその使用にあたっては、使用基準を順守する必要があるが、本発明の調味液に添加するバター香料は、調味液全体に対して0.05〜0.43質量%が好ましく、0.1〜0.2質量%がより好ましい。バター香料の含有量が上記の範囲であれば、バターの香りやコクや、ミルク感をより良好に得ることができる。一方、香料成分としては、調味液全体に対してδ-デカラクトン及びドデカラクトン等のラクトン類であれば0.5ppm〜1.5ppmが好ましく、また、ジアセチルであれば、2〜35ppmが好ましい。これらの香料が下限値未満であるとバター風味が感じられなくなり、また上限値を超えるとバター風味とは異なる異質な風味となってしまう。
【0027】
本発明のバター風味調味液においては、バター香料と共に、バターを含有してもよいが、バターの含有量は、調味液全体に対して0.0045〜0.039質量%が好ましく、0.1〜0.02質量%がより好ましい。バターを上記範囲で含有することにより、バターの固形分や油分の分離を防いで、バター風味を増強することができる。
【0028】
本発明のバター風味調味液において、ホエイ蛋白質としては、乳清(ホエイ)から単離されるホエイ蛋白質に限らず、その加工物であってもよい。その加工物としては、例えば、ホエイ蛋白質濃縮物(WPC)や、ホエイ蛋白分離物(WPI)などが挙げられる。
【0029】
ホエイ蛋白質の含有量は、調味液全体に対して0.33〜3.51質量%が好ましく、0.65〜2.43質量%がより好ましい。ホエイ蛋白質の含有量が上記の範囲であれば、バターの香りやコクやミルク感を、バランスよく、良好に得ることができる。
【0030】
本発明のバター風味調味液は、上記以外の原料として、ステーキ、ソテー又は焼肉用の調味液として通常含まれるものを含有することができる。そのような原料としては、例えば、しょうゆや、食塩や、砂糖、異性化糖(ブドウ糖果糖液糖、果糖ブドウ糖液糖、高果糖液糖)、水あめ等の糖類や、たまねぎ、にんにく、しょうが、パプリカ、パセリ等の野菜類や、ごま、クルミ等の種子類や、レモン果汁等の果実類や、コショウ、唐辛子等の香辛料や、グルタミン酸ナトリウム、酵母エキスなどの旨味調味料や、植物性油脂などの油脂や、みりん、酒などのアルコール調味料や、鰹節エキス、宗田節抽出物、昆布エキス等の各種だし類や、チキンエキス、ポークエキス等の畜肉エキスや、化工澱粉、増粘多糖類等の増粘剤などが挙げられる。なお、野菜類や果実類は、細断したり、すり下ろしたり、搾汁したりして添加することが好ましい。また、化工澱粉としては、リン酸架橋澱粉、アセチル化アジピン酸架橋澱粉、湿熱処理澱粉等が好ましく使用でき、増粘多糖類としては、キサンタンガム、グアーガム、タマリンドガム等が好ましく使用できる。油脂としては、コーンサラダ油、胡麻油、オリーブオイル等が好ましく使用できる。なお、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、レシチン等の乳化剤を添加してもよい。
【0031】
本発明のバター風味調味液は、pHが3.0〜7.0であることが好ましく、pHが3.0〜5.0であることがより好ましい。pHの調整は、例えばレモン果汁、食酢などの酸性原料や、酢酸、クエン酸などの有機酸を添加することによって行うことができる。pHを上記範囲とすることにより、バターの香りやコクやミルク感を、バランスよく、良好に得ることができる。
【0032】
本発明のバター風味調味液の製造方法は、特に限定されないが、上記原料をバター香料を除く原料に関して所定の量を量り取り、水を混合・攪拌後、バター香料を添加してから、加熱処理すればよい。
【0033】
加熱処理温度は、特に限定されないが、55℃以上で行うことが好ましく、75〜100℃で行うことがより好ましい。加熱することにより、バター風味を増強することができる。100℃を超える温度で加熱すると、ホエイ蛋白の変質などが起こるため好ましくない。
【0034】
本発明の調味液は、バター風味がマッチする食品、例えば、ステーキ、ソテー、焼肉等に好適に使用される。調味液の使用方法は、特に限定されないが、例えば肉を調味液に漬けてから焼いたり、焼いた肉に調味液を付着させたりする方法が採用される。肉としては、牛肉、豚肉、鶏肉等の畜肉類、あるいは、海老、帆立、カジキマグロ等の魚介類など、いずれでもよい。
【0035】
本発明の調味液は、例えばガラス、プラスチック等の瓶、ボトル容器に充填したり、樹脂製の袋状容器に充填したりして、製品化することができる。
【実施例】
【0036】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0037】
<試験例1>
[比較対照としてのバター含有調味液の試作]
下記表1の配合にて、水、レモン濃縮果汁、食塩、キサンタンガム、バターを原料として、バターの配合量を変えたバター風味調味液を試作した。
【0038】
まず、食塩及びキサンタンガムをビーカーに量り取り、水を加えてから85℃に加温、攪拌して溶解した。ついで、レモン濃縮果汁を用いてpH3.0に調整した後、バターを添加し、80℃で加温、5分間攪拌することで、バターの配合量が異なる各試料を製造した。
【0039】
これらのバター風味調味液について、10名のパネラーにより、調味液をスプーン小に数滴とって、口に含み、バターの香りの好ましさ、調味液で感じるバター様のコクの強さ、調味液で感じるバター様のミルク感の強さ、バター風味の味のバランス(塩味、酸味及びバター香料の香りの強さによる味や香りのまとまり)について評価した。
【0040】
評価は、×…悪い、△…やや悪い、○…良い、◎…非常によい、の基準で行い、全パネラーの平均で表示した。また、それらの結果をまとめて、総合評価を行った。総合評価は、1つでも×がある場合は×、×はないが1つでも△がある場合は△、×も△もないが1つでも○がある場合は○、全部が◎の場合は◎とし、△以上を実用上の許容可能な合格ラインとした。この結果を表1に示す。
【0041】
【表1】
【0042】
表1に示されるように、試料5のバターの含有量が49.8%のとき、香り、コク、ミルク感、味のバランス、総合評価が最も高くなった。よって、試料5を風味が非常によいという評価の基準として、以下の試験を行った。なお、試料5は、風味は良好であったが、製品としては、バターの油脂分が分離し、製品としての安定性が悪いという難点があった。
【0043】
<試験例2>
[バター風味調味液におけるバター風味に対するホエイ蛋白質の影響]
下記表2の配合にて、水、レモン濃縮果汁、食塩、キサンタンガム、バター香料、乳糖、ホエイ蛋白質を原料として、ホエイ蛋白質の配合量を変えたバター風味調味液を試作した。表中のホエイ蛋白質含有量は、調味液全体に対する含有量(質量%)である。
【0044】
まず、食塩、キサンタンガム及び乳糖をビーカーに量り取り、水を加えてから85℃に加熱、攪拌して溶解した。ついで、レモン濃縮果汁を用いてpH3.0に調整後、バター香料を添加し、さらに、ホエイ蛋白質の配合量を変えて添加し、85℃で5分間攪拌することでバター風味調味液を試作した。なお、バター香料としては、ローストバターフレーバー S−08955(曽田香料社製)を用いた。これらのバター風味調味液について、試験例1と同様にして、バターの香りの好ましさ、調味液で感じるバター様のコクの強さ、調味液で感じるバター様のミルク感の強さ、バター風味の味のバランス(塩味、酸味及びバター香料の香りの強さによる味や香りのまとまり)について評価し、それらの結果をまとめて、総合評価を行った。この結果を表2に示す。
【0045】
【表2】
【0046】
表2に示されるように、ホエイ蛋白質含有量が3.51〜0.33の実施例1〜5は、ホエイ蛋白質を含有しない比較例1に比べて、バターの香り、コク、ミルク感、味のバランス及び総合評価が高かった。特に、ホエイ蛋白質含有量が2.43〜0.65の実施例2〜4は、バターの香り、コク、ミルク感、味のバランス及び総合評価が良好であった。なお、ホエイ蛋白質含有量が3.51の実施例1は、ミルク感が強い傾向があり、ホエイ蛋白質含有量が0.33の実施例5は、バター様のコクやミルク感が弱い傾向があった。
【0047】
<試験例3>
[バター風味調味液におけるバター風味に対するバター香料の影響]
下記表3の配合にて、水、レモン濃縮果汁、食塩、キサンタンガム、バター香料、乳糖、ホエイ蛋白質を原料として、バター香料の配合量を変えたバター風味調味液を試作した。表中のバター香料含有量は、調味液全体に対する含有量(質量%)である。
【0048】
まず、食塩、キサンタンガム及び乳糖をビーカーに量り取り、水を加えてから85℃に加熱、攪拌して溶解した。ついで、レモン濃縮果汁を用いてpH3.0に調整後、バター香料の配合量を変えて添加し、さらに、ホエイ蛋白質を添加した後、85℃で5分間攪拌してバター風味調味液を試作した。なお、バター香料としては、ローストバターフレーバー S−08955(曽田香料社製)を用いた。これらのバター風味調味液について、試験例1と同様にして、バターの香りの好ましさ、調味液で感じるバター様のコクの強さ、調味液で感じるバター様のミルク感の強さ、バター風味の味のバランス(塩味、酸味及びバター香料の香りの強さによる味や香りのまとまり)について評価し、それらの結果をまとめて、総合評価を行った。この結果を表3に示す。
【0049】
【表3】
【0050】
表3に示されるように、バター香料含有量が0.05〜0.43の実施例6〜10は、バター香料を含有しない比較例2に比べて、バターの香り、コク、ミルク感、味のバランス及び総合評価が高かった。特に、バター香料含有量が0.11〜0.21の実施例7〜9は、バターの香り、コク、ミルク感、味のバランス及び総合評価が良好であった。なお、バター香料含有量が0.43の実施例10は、バターの香がやや過剰な傾向があった。
【0051】
<試験例4>
[バター風味調味液におけるバター風味に対するレモン濃縮果汁でpHを変えた場合の影響]
下記表4の配合にて、水、レモン濃縮果汁、食塩、キサンタンガム、バター香料、乳糖、ホエイ蛋白質を原料として、レモン濃縮果汁でpHを変えたバター風味調味液を試作した。
【0052】
まず、ビーカーに1Lの水を量り取り、レモン濃縮果汁を加えることで、実施例に示すpHの水を製造した。ついで、pHを調整した水に、食塩、キサンタンガム及び乳糖をビーカーに量り取り、水を加えてから85℃に加熱、攪拌して溶解した。さらに、ホエイ蛋白質とバター香料を順に添加した後、85℃で5分間攪拌してpHが異なるバター風味調味液を試作した。なお、バター香料としては、ローストバターフレーバー S−08955(曽田香料社製)を用いた。これらのバター風味調味液について、試験例1と同様にして、バターの香りの好ましさ、調味液で感じるバター様のコクの強さ、調味液で感じるバター様のミルク感の強さ、バター風味の味のバランス(塩味、酸味及びバター香料の香りの強さによる味や香りのまとまり)について評価し、それらの結果をまとめて、総合評価を行った。この結果を表4に示す。
【0053】
【表4】
【0054】
表4に示されるように、pH3.0〜7.0である実施例11〜15は、いずれも、バターの香り、コク、ミルク感、味のバランス及び総合評価が高かった。特に、pH3.0〜5.0である実施例11〜13は、バターの香り、コク、ミルク感、味のバランス及び総合評価が良好であった。
【0055】
<試験例5>
[バター風味調味液におけるバター風味に対する酢酸でpHを変えた場合の影響]
下記表5の配合にて、水、酢酸、食塩、キサンタンガム、バター香料、乳糖、ホエイ蛋白質を原料として、酢酸でpHを変えたバター風味調味液を試作した。
【0056】
まず、ビーカーに1Lの水を量り取り、レモン濃縮果汁に変えて酢酸を加えることで、実施例に示すpHの水を製造した以外は、実施例4と同じ操作を行い実施例に示すバター風味調味液を試作した。なお、バター香料としては、ローストバターフレーバー S−08955(曽田香料社製)を用いた。これらのバター風味調味液について、試験例1と同様にして、バターの香りの好ましさ、調味液で感じるバター様のコクの強さ、調味液で感じるバター様のミルク感の強さ、バター風味の味のバランス(塩味、酸味及びバター香料の香りの強さによる味や香りのまとまり)について評価し、それらの結果をまとめて、総合評価を行った。この結果を表5に示す。
【0057】
【表5】
【0058】
表5に示されるように、pH3.0〜7.0である実施例16〜20は、いずれも、バターの香り、コク、ミルク感、味のバランス及び総合評価が高かった。特に、pH3.0〜5.0である実施例16〜18は、バターの香り、コク、ミルク感、味のバランス及び総合評価が良好であった。
【0059】
<試験例6>
[バター風味調味液におけるバター風味に対するホエイ蛋白質に含まれる乳糖の影響]
下記表6の配合にて、水、レモン濃縮果汁、食塩、キサンタンガム、バター香料、乳糖を原料として、乳糖の含有量を変えたバター風味調味液を試作した。
【0060】
まず、食塩、キサンタンガム及び配合量を変えて乳糖をビーカーに量り取り、水を加えてから85℃に加熱、攪拌して溶解した。ついで、レモン濃縮果汁を用いてpH3.0に調整後、バター香料を添加した後、85℃で5分間攪拌して比較例のバター風味調味液を試作した。なお、バター香料としては、ローストバターフレーバー S−08955(曽田香料社製)を用いた。
【0061】
これらのバター風味調味液について、試験例1と同様にして、バターの香りの好ましさ、調味液で感じるバター様のコクの強さ、調味液で感じるバター様のミルク感の強さ、バター風味の味のバランス(塩味、酸味及びバター香料の香りの強さによる味や香りのまとまり)について評価し、それらの結果をまとめて、総合評価を行った。この結果を表6に示す。
【0062】
【表6】
【0063】
表6に示されるように、ホエイ蛋白質を含有せず、乳糖の添加量を変えた比較例3〜6は、いずれも、バターの香り、コク、ミルク感、味のバランス及び総合評価が悪かった。このことから、特に、バターの香り、コク、ミルク感、味のバランスに対して、乳糖は効果をもたらさないことがわかる。言い換えると、試験例2〜5において、バターの香り、コク、ミルク感、味のバランスが良好になった理由は、バター香料に加えて、ホエイ蛋白質を添加したことに起因することがわかった。
【0064】
<試験例7>
[バター風味調味液におけるバター風味に対するバター香料とホエイ蛋白質を添加後の加熱温度の影響]
下記表7の配合にて、水、レモン濃縮果汁、食塩、キサンタンガム、バター香料、乳糖、ホエイ蛋白質を原料として、加熱温度を変えてバター風味調味液を試作した。
【0065】
まず、食塩、キサンタンガム及び乳糖をビーカーに量り取り水を加えて、85℃に加熱、攪拌して溶解した。ついで、レモン濃縮果汁を用いてpH3.0に調整後、バター香料、続いてホエイ蛋白質を添加し、水浴を用いて30℃まで冷却した。さらに、冷却したバター風味調味液を、表7に示す加熱温度で、5分間攪拌することでバター風味調味液を試作した。なお、バター香料としては、ローストバターフレーバー S−08955(曽田香料社製)を用いた。これらのバター風味調味液について、試験例1と同様にして、バターの香りの好ましさ、調味液で感じるバター様のコクの強さ、調味液で感じるバター様のミルク感の強さ、バター風味の味のバランス(塩味、酸味及びバター香料の香りの強さによる味や香りのまとまり)について評価し、それらの結果をまとめて、総合評価を行った。この結果を表7に示す。
【0066】
【表7】
【0067】
表7に示されるように、加熱をしない比較例7に比べて、温度55℃以上で加熱を行った実施例21〜26は、いずれも、バターの香り、コク、ミルク感、味のバランス及び総合評価が高かった。特に、温度75℃以上で加熱を行った実施例23〜26は、バターの香り、コク、ミルク感、味のバランス及び総合評価が良好であった。
【0068】
<試験例8>
[バター風味調味液におけるバター風味に対するバター香料の種類の影響]
下記表8の配合にて、水、レモン濃縮果汁、食塩、キサンタンガム、バター香料、乳糖、ホエイ蛋白質を原料として、バター香料の種類を変えてバター風味調味液を試作した。バター香料としては、実施例1〜7で用いたローストバターフレーバーS08955(曽田香料社製)に加えて、バターフレーバー KM−2008(長谷川香料社製)及びバターフレーバー FLW0268(稲畑香料社製)を用いた。
【0069】
まず、食塩、キサンタンガム及び乳糖をビーカーに量り取り水を加えて、85℃に加熱、攪拌して溶解した。ついで、レモン濃縮果汁を用いてpH3.0に調整後、各バター香料、続いてホエイ蛋白質を添加し、85℃で5分間攪拌することでバター風味調味液を試作した。これらのバター風味調味液について、試験例1と同様にして、バターの香りの好ましさ、調味液で感じるバター様のコクの強さ、調味液で感じるバター様のミルク感の強さ、バター風味の味のバランス(塩味、酸味及びバター香料の香りの強さによる味や香りのまとまり)について評価し、それらの結果をまとめて、総合評価を行った。この結果を表8に示す。
【0070】
【表8】
【0071】
表8に示されるように、バター香料を含まない比較例2に比べて、バターフレーバーKM−2008(長谷川香料社製)及びバターフレーバーFLW0268(稲畑香料社製)を用いた場合でも、実施例1〜7で用いたバター香料と同等のバターの香り、コク、ミルク感、味のバランス及び総合評価が高かった。