(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
[無機粒子分散液]
本実施形態の無機粒子分散液は、無機粒子が、加水分解性基を有する分散剤で、分散媒に分散されてなる分散液であって、塩基性物質を含み、水の含有量が1質量%以下である。
【0019】
本実施形態の無機粒子分散液の水の含有量は、1質量%以下であるが、0.7質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以下であることがより好ましく、0.4質量%以下であることがさらに好ましい。
無機粒子分散液が、水を、1質量%を超えた量を含有すると、シャープな粒度分布を有する分散液が得られないばかりでなく、長期保管の安定性が悪くなるため、無機粒子分散液の水の含有量は出来る限り少ないことが好ましい。
なお、本実施形態における水の含有量は、カールフィッシャー水分計(型番:AQL−22320、平沼産業社製)で滴定された値を意味する。
【0020】
本実施形態の無機粒子分散液において、粒度分布の累積体積百分率が90%のときの粒径(D90)を、粒度分布の累積体積百分率が50%のときの粒径(D50)で除した値が、1以上かつ4以下であることが好ましく、1以上かつ3以下であることがより好ましく、1以上かつ2以下であることがさらに好ましい。ここで、粒度分布とは、無機粒子分散液に含まれる無機粒子の粒度分布のことである。
粒度分布の累積体積百分率が90%のときの粒径(D90)を、粒度分布の累積体積百分率が50%のときの粒径(D50)で除した値を、上記の範囲内とすることにより、樹脂中に均一に無機粒子を分散させることが可能となり、膜内の屈折率分布を均一にすることができる。これにより、干渉縞といった色ムラを低減することが可能となる。また、粗大粒子が低減されるため、塗工時の異物発生を抑制できるといった効果もある。
【0021】
なお、本実施形態におけるD50とD90は、動的光散乱方式を測定原理とする粒度分布計(商品名:マイクロトラックUPA150、日機装社製)で測定した値を意味する。
【0022】
本実施形態の無機粒子分散液におけるD50は、無機粒子分散液の透明性向上の観点から、1nm以上かつ45nm以下であることが好ましく、1nm以上かつ20nm以下であることがより好ましい。
【0023】
本実施形態の無機粒子分散液の一実施形態として、無機粒子と、加水分解性基を有する分散剤と、塩基性物質と、分散媒と、を含有してなる、無機粒子分散液について説明する。
【0024】
「無機粒子」
本実施形態における無機粒子は、特に限定されず、所望の特性を有する無機粒子が適宜選択されて用いられる。
例えば、無機粒子分散液に高屈折率性能を付与する場合には、屈折率が1.9以上の無機粒子が用いられる。このような無機粒子としては、例えば、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化銅、酸化チタン、酸化錫、酸化セリウム、酸化タンタル、酸化ニオブ、酸化タングステン、酸化ユーロピウム、酸化ハフニウム、チタン酸カリウム、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、ニオブ酸カリウム、ニオブ酸リチウム、タングステン酸カルシウム、アンチモン含有酸化スズ(ATO)、スズ含有酸化インジウム(ITO)等の金属酸化物が好適に用いられる。これらの中でも、屈折率の高さ、着色による影響の少なさの点から、酸化ジルコニウム、酸化チタンが特に好ましい。
【0025】
また、無機粒子分散液に耐候性を付与する場合には、紫外線遮蔽性を有する無機粒子が適宜選択されて用いられる。このような無機粒子としては、例えば、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化鉄、酸化セリウム等が挙げられる。
また、無機粒子分散液に導電性を付与する場合には、導電性を有する金属酸化物が用いられる。このような金属酸化物としては、例えば、アンチモン含有酸化スズ(ATO)、スズ含有酸化インジウム(ITO)等が挙げられる。
【0026】
無機粒子の平均一次粒子径は、用途に応じて適宜選択すればよいが、透明性に優れた無機粒子分散液とするためには、1nm以上かつ30nm以下であることが好ましく、5nm以上かつ25nm以下であることがより好ましい。
【0027】
本実施形態において、「平均一次粒子径」とは、個々の粒子そのものの粒子径を意味する。平均一次粒子径の測定方法としては、走査型電子顕微鏡(SEM)や透過型電子顕微鏡(TEM)等を用いて、金属酸化物粒子それぞれの長径、例えば、100個以上の金属酸化物粒子、好ましくは500個の金属酸化物粒子それぞれの長径を測定し、その算術平均値を算出する方法が挙げられる。
【0028】
無機粒子分散液中における無機粒子の含有量は、用途に応じて適宜調整すればよいが、5質量%以上かつ50質量%以下が好ましく、10質量%以上かつ40質量%以下がより好ましい。
無機粒子分散液中における無機粒子の含有量を、上記の範囲とすることにより、無機粒子分散液中における無機粒子の良好な分散安定性を得ることができる。
【0029】
「加水分解性基を有する分散剤」
本実施形態における加水分解性基を有する分散剤としては、加水分解性基を有し、無機粒子の表面に表面修飾されて粒子表面を疎水化し、無機粒子の溶媒や樹脂への分散性を向上させるものであれば特に限定されず、例えば、アルコキシ基を有する分散剤が好適に用いられる。
このようなアルコキシ基を有する分散剤としては、例えば、金属アルコキシド、シランカップリング剤、シリコーン化合物等が挙げられる。
アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基が好ましい。
【0030】
金属アルコキシドとしては、特に限定されないが、アルコキシシランが好ましい。
アルコキシシランとしては、テトラアルコキシシランが好ましい。
テトラアルコキシシランとしては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラn−プロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラn−ブトキシシラン、テトライソブトキシシラン、テトラsec−ブトキシシラン、テトラt−ブトキシシラン、テトラフェノキシシラン、モノエトキシトリメトキシシラン、モノブトキシトリメトキシシラン、モノペントキシトリメトキシシラン、モノヘトキシトリメトキシシラン、ジメトキシジエトキシシラン、ジメトキシジブトキシシラン等が挙げられる。
これらの中でも、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシランは、ケイ素(Si)の含有量が多く、溶媒に分散した場合に濃度を調整し易いこと、加水分解・縮合反応性が高いことから、好適に用いることができる。
これらのテトラアルコキシシランは、1種単独で用いてもよく、2種以上を同時に用いてもよい。
【0031】
シランカップリング剤としては、アルコキシ基を有していれば特に限定されず、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、p−スチリルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0032】
また、シランカップリング剤としては、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、ビニルエチルジメトキシシラン、ビニルエチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルエチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエチルジエトキシシラン、p−スチリルエチルジメトキシシラン、p−スチリルエチルジエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルエチルジメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルエチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルエチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルエチルジエトキシシラン、アリルエチルジメトキシシラン、アリルエチルジエトキシシラン等が挙げられる。
【0033】
さらに、シランカップリング剤としては、ビニルジエチルメトキシシラン、ビニルジエチルエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルジエチルメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルジエチルエトキシシラン、p−スチリルジエチルメトキシシラン、p−スチリルジエチルエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルジエチルメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルジエチルエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルジエチルメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルジエチルエトキシシラン、アリルジエチルメトキシシラン、アリルジエチルエトキシシラン等が挙げられる。
これらのシランカップリング剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を同時に用いてもよい。
【0034】
シリコーン化合物としては、アルコキシ基を有していれば特に限定されず、メトキシ基やエトキシ基を有するシリコーンレジン等が用いられる。
【0035】
アルコキシ基を有する分散剤の添加量は、良好な分散性が得られる程度に適宜調整される。アルコキシ基を有する分散剤の添加量は、例えば、無機粒子の全質量に対して、5質量%以上かつ120質量%以下であることが好ましく、10質量%以上かつ110質量%以下であることがより好ましく、15質量%以上かつ100質量%以下であることがさらに好ましい。
【0036】
「塩基性物質」
本実施形態における塩基性物質としては、水と混合した場合に水素イオン指数(pH)が7より大となる物質であり、かつ、無機粒子分散液の水の含有量が1質量%以下であっても、均一に混合できる物質であれば、特に限定されない。
このような塩基性物質としては、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物、アミン類等が挙げられ、取り扱いが容易な点で、アミン類が好ましい。
【0037】
アルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物としては、例えば、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化マンガン、水酸化アルミニウム、水酸化鉄、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等の無機塩基性物質等が挙げられる。
【0038】
アミン類としては、例えば、アミン、アミド、アミン系分散剤、アミン系界面活性剤、アミド型モノマー、アミン系溶媒、アミド系溶媒等が挙げられる。
アミンとしては、一級アミン、二級アミン、三級アミンのいずれを用いてもよく、これらを混合して用いてもよいが、三級アミンを用いることがより好ましい。
アミド型モノマーとしては、例えば、アクリルアミド型モノマーやメタクリルアミド型モノマーが好適に用いられる。このようなアミド型モノマーとしては、例えば、ヒドロキシエチルアクリルアミド、ヒドロキシエチルメタクリルアミド、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、N−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]アクリルアミド、N−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]メタクリルアミド等が挙げられる。
【0039】
塩基性物質の添加量は、粒度分布の累積体積百分率が90%のときの粒径(D90)を、粒度分布の累積体積百分率が50%のときの粒径(D50)で除した値が、1以上かつ4以下となるように、適宜調整されればよいが、無機粒子分散液中に塩基性物質が0.01質量%以上かつ1質量%以下含有されることが好ましい。
無機粒子分散液が塩基性物質を含有することにより、水の含有量が1質量%以下と少量であっても、シランカップリング剤等のアルコキシ基を有する分散剤の加水分解が促進され、粒径が揃った状態で無機粒子を分散媒に分散させることができる。
【0040】
「分散媒」
分散媒は、無機粒子が分散されやすく、かつ、水以外であれば特に限定されない。分散媒としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類、塩化メチレン、塩化エチレン等のハロゲン化炭化水素類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、2−ペンタノン、イソホロン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、エチルセロソルブ等のセロソルブ類、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等のエーテル類、アミド系溶媒、エーテルエステル系溶媒、樹脂モノマー、樹脂オリゴマー等が挙げられる。
【0041】
本実施形態の無機粒子分散液の製造方法としては、無機粒子分散液の構成要素として上述した各材料を、機械的に混合し、無機粒子を溶媒中に分散させる方法が挙げられる。
分散装置としては、例えば、撹拌機、自公転式ミキサー、ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー等が挙げられる。
【0042】
本実施形態の無機粒子分散液によれば、無機粒子が、加水分解性基を有する分散剤で、分散媒に分散されてなり、塩基性物質を含み、水の含有量が1質量%以下であるため、シャープな粒度分布を有するため、無機粒子の分散安定性に優れ、分散液の長期保管の安定性に優れている。
【0043】
本実施形態の無機粒子分散液において、粒度分布の累積体積百分率が90%のときの粒径(D90)を、粒度分布の累積体積百分率が50%のときの粒径(D50)で除した値が、1以上かつ4以下であれば、より無機粒子の分散安定性に優れ、分散液の長期保管の安定性に優れる。
【0044】
また、D50が1nm以上かつ45nm以下である場合には、透明性に優れた無機粒子分散液が得られる。
また、無機粒子が、屈折率が1.9以上の粒子である場合には、屈折率が高い無機粒子分散液が得られる。
さらに、無機粒子が紫外線遮蔽性を有する粒子である場合には、耐候性に優れた無機粒子分散液が得られる。
【0045】
[無機粒子含有組成物]
本実施形態の無機粒子含有組成物は、本実施形態の無機粒子分散液と、バインダー成分とを含有してなる。
【0046】
「バインダー成分」
バインダー成分は、特に限定されないが、例えば、樹脂モノマー、樹脂オリゴマー、樹脂ポリマー、有機ケイ素化合物またはその重合体等を好適に用いることができる。
【0047】
表示装置等の用途でのバインダー成分としては、一般的なハードコート膜に使用される硬化性樹脂のモノマーやオリゴマーであれば、特に限定されず、光硬化性樹脂のモノマーやオリゴマーを用いてもよく、熱硬化性樹脂のモノマーやオリゴマーを用いてもよい。
透明性が高く、ハードコート性が強い膜が得られやすい点で、光硬化性樹脂のモノマーを用いることが好ましく、光硬化性樹脂のモノマーの中でもさらに、分子中に1個以上のアクリロイル基およびメタクリロイル基のいずれか一方または両方を有する架橋性化合物を用いることが好ましい。
【0048】
分子中に1個以上のアクリロイル基およびメタクリロイル基のいずれか一方または両方を有する架橋性化合物としては、特に限定されないが、反応性、透明性、耐候性、硬度に優れた多官能アクリレートが好ましい。ここで多官能とは、3個以上の官能基を有することを意味する。3個以上の官能基は、全て同種の官能基であってもよいし、異種の官能基であってもよい。
上記の架橋性化合物が有するアクリロイル基、メタクリロイル基以外の官能基としては、例えば、ビニル基、アリル基、アリルエーテル基、スチリル基、水酸基等が挙げられる。
【0049】
多官能アクリレートの具体例としては、例えば、(メタ)トリメチロールプロパントリアクリレート、(メタ)ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、(メタ)ペンタエリスリトールトリアクリレート、(メタ)ペンタエリスリトールテトラアクリレート、(メタ)ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等のポリオールポリアクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタンアクリレート、ポリシロキサンアクリレート等が挙げられる。これらの多官能アクリレートは、1種単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0050】
本実施形態の無機粒子含有組成物中には、発明の効果を阻害しない範囲内で、官能基が1個または2個であり、上述のモノマーには含まれないモノマーやオリゴマー、分散剤、重合開始剤、帯電防止剤、屈折率調節剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、レベリング剤、消泡剤、無機充填剤、カップリング剤、防腐剤、可塑剤、流動調整剤、増粘剤、pH調整剤、重合開始剤等の一般的な各種添加剤が適宜含有されていてもよい。
【0051】
分散剤としては、例えば、硫酸エステル系、カルボン酸系、ポリカルボン酸系等のアニオン型界面活性剤、高級脂肪族アミンの4級塩等のカチオン型界面活性剤、高級脂肪酸ポリエチレングリコールエステル系等のノニオン型界面活性剤、シリコン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、アマイドエステル結合を有する高分子系界面活性剤等が挙げられる。
【0052】
重合開始剤は、用いるモノマーの種類に応じて、適宜選択される。光硬化性樹脂のモノマーを用いる場合には、光重合開始剤が用いられる。光重合開始剤の種類や量は、使用する光硬化性樹脂のモノマーに応じて適宜選択される。光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン系、ジケトン系、アセトフェノン系、ベンゾイン系、チオキサントン系、キノン系、ベンジルジメチルケタール系、アルキルフェノン系、アシルフォスフィンオキサイド系、フェニルフォスフィンオキサイド系等の公知の光重合開始剤が挙げられる。
【0053】
本実施形態の無機粒子含有組成物は、基材に塗布して塗膜を形成するものであることから、塗工を容易にするために、粘度が0.2mPa・s以上かつ500mPa・s以下であることが好ましく、0.5mPa・s以上かつ200mPa・s以下であることがより好ましい。
無機粒子含有組成物の粘度が0.2mPa・s以上であれば、塗膜にした時の膜厚が薄くなりすぎず、膜厚の制御が容易であるため好ましい。一方、無機粒子含有組成物の粘度が500mPa・s以下であれば、粘度が高すぎず塗工時における無機粒子含有組成物の取扱いが容易となるため好ましい。
【0054】
無機粒子含有組成物の粘度は、無機粒子含有組成物に適宜、有機溶媒を添加して、上記範囲に調整することが好ましい。
有機溶媒としては、上記無機粒子含有組成物と相溶性がよいものであれば特に限定されず、例えば、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類、塩化メチレン、塩化エチレン等のハロゲン化炭化水素類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、2−ペンタノン、イソホロン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、エチルセロソルブ等のセロソルブ類、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等のエーテル類、アミド系溶媒、エーテルエステル系溶媒が挙げられる。これらの溶媒は、1種単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0055】
本実施形態の無機粒子含有組成物によれば、本実施形態の無機粒子がシャープな粒度分布を有する無機粒子分散液を含有するため、無機粒子の分散安定性に優れ、組成物の長期保管の安定性にも優れる。
【0056】
[無機粒子含有組成物の製造方法]
本実施形態の無機粒子含有組成物の製造方法としては、無機粒子含有組成物の構成要素として上述した各材料を、機械的に混合する方法が挙げられる。
混合装置としては、例えば、撹拌機、自公転式ミキサー、ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー等が挙げられる。
【0057】
[塗膜]
本実施形態の塗膜は、本実施形態の無機粒子含有組成物を用いて形成されてなる。
この塗膜の膜厚は、用途に応じて適宜調整されるが、通常0.01μm以上かつ20μm以下であることが好ましく、1μm以上かつ10μm以下であることがより好ましい。
【0058】
本実施形態の塗膜の製造方法は、上記の無機粒子含有組成物を被塗布物上に塗工することで塗膜を形成する工程と、この塗膜を硬化させる工程とを有する。
塗膜を形成する塗工方法としては、例えば、バーコート法、フローコート法、ディップコート法、スピンコート法、ロールコート法、スプレーコート法、メニスカスコート法、グラビアコート法、吸上げ塗工法、はけ塗り法等、通常のウェットコート法が用いられる。
【0059】
塗膜を硬化させる硬化方法としては、バインダー成分の種類に応じて適宜選択され、熱硬化させるか光硬化させる方法が用いられる。
光硬化に用いるエネルギー線としては、塗膜が硬化すれば、特に限定されないが、例えば、紫外線、遠赤外線、近紫外線、赤外線、X線、γ線、電子線、プロトン線、中性子線等のエネルギー線が用いられる。これらのエネルギー線の中でも、硬化速度が速く、装置の入手および取り扱いが容易である点から、紫外線を用いることが好ましい。
【0060】
紫外線照射による硬化の場合、200nm〜500nmの波長帯域の紫外線を発生する高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ、ケミカルランプ等を用いて、100〜3,000mJ/cm
2のエネルギーにて、紫外線を照射する方法等が挙げられる。
【0061】
本実施形態の塗膜では、本実施形態におけるシャープな粒度分布を有する無機粒子、換言すれば、無機粒子含有組成物中において、無機粒子の大きさがほぼ均一であるため、塗膜中に無機粒子が隙間なく均一に充填されやすい。そのため、塗膜の成膜性に優れ、膜面内のすべての箇所での性能が均一となる。従って、例えば、膜面内における屈折率がほぼ均一になるため、塗膜の色ムラの発生が抑制され、表示装置などに適用された場合には、視認性を向上させることができる。
【0062】
本実施形態の塗膜では、シャープな粒度分布を有する無機粒子が用いられているため、膜内に均一に無機粒子が充填され、膜内の空隙が少ない。そのため、例えば、屈折率が1.9以上の無機粒子を用いて屈折率を向上させたい場合に、従来よりも屈折率を向上させるのに必要な無機粒子の量を減らすことができる。従って、10nm〜200nmのような薄膜であっても、塗膜全体に均質に無機粒子が充填されて、均質に膜内の空隙を減らすことができるため、塗膜の屈折率を向上させることができる。
また、本実施形態の塗膜では、膜面内の全ての箇所での性能が均一となるため、膜厚が1μm以上の厚膜にしても、光学ムラの発生を抑制することができる。
すなわち、本実施形態の塗膜は、屈折率を調整するための薄膜であってもよく、屈折率を調整でき、かつ、ハードコート性も有する厚膜であっても、用途に応じて適宜選択して用いることができる。
【0063】
本実施形態の塗膜によれば、本実施形態の無機粒子含有組成物を用いて形成されているため、成膜性に優れた塗膜を得ることができる。
【0064】
[塗膜付きプラスチック基材]
本実施形態の塗膜付きプラスチック基材は、樹脂材料を用いて形成された基体本体(プラスチック基材)と、基体本体の少なくとも一面に設けられた本実施形態の塗膜と、を有する。
【0065】
塗膜付きプラスチック基材は、本実施形態の無機粒子含有組成物を、公知の塗工法を用いて基体本体上に塗工することで塗膜を形成し、その塗膜を硬化させることにより得られる。
【0066】
基材本体は、プラスチック基材であれば特に限定されず、例えば、ポリエチレンテレフタレート、トリアセチルセルロース、アクリル、アクリル−スチリル共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、塩化ビニル等のプラスチックから形成されたものが用いられる。
表示装置用途で用いる場合には、基材本体としては、光透過性を有するプラスチック基材を用いることが好ましい。
【0067】
基材本体は、シート状であってもよく、フィルム状であってもよいが、フィルム状であることが好ましい。
【0068】
本実施形態の塗膜付きプラスチック基材は、空気を基準として測定した場合に、ヘーズ値が1.4%以下であることが好ましく、1.0%以下であることがより好ましい。
【0069】
ここで、「ヘーズ値」とは、全光線透過光に対する拡散透過光の割合(%)のことであり、空気を基準として、ヘイズメーターNDH−2000(日本電色社製)を用い、日本工業規格JIS−K−7136に基づいて測定した値を意味する。
【0070】
本実施形態の塗膜付きプラスチック基材は、500nm以上かつ750nm以下の範囲内における反射率の最大値と最小値の差が1%以下であることが好ましく、0.8%以下であることがより好ましく、0.7%以下であることがさらに好ましい。
500nm以上かつ750nm以下の範囲内における、塗膜付きプラスチック基材の反射率の最大値と最小値の差が1%以下であることにより、本実施形態の塗膜付きプラスチック基材は、光干渉によるリップルの発生が抑制され、色ムラが抑制された塗膜が得られるため好ましい。
【0071】
本実施形態の塗膜付きプラスチック基材は、プラスチック基材と塗膜の間にハードコート膜を設けてもよく、塗膜とは屈折率等の性能が異なる膜を積層させてもよい。
【0072】
本発明の塗膜付きプラスチック基材によれば、本実施形態の塗膜が形成されているため、成膜性に優れた塗膜付きプラスチック基材を得ることができる。
【0073】
[表示装置]
本実施形態の表示装置は、本実施形態の塗膜および本実施形態の塗膜付きプラスチック基材の少なくともいずれか一方、すなわち、本実施形態の塗膜および本実施形態の塗膜付きプラスチック基材のいずれか一方または両方を備えてなる。
表示装置は、特に限定されないが、本実施形態ではタッチパネル用の液晶表示装置について説明する。
【0074】
[タッチパネル]
タッチパネルはITO電極と透明基材(ポリエチレンテレフタレート等のプラスチック基材)との屈折率差が大きい場合には、ITO電極部分が見え易くなる、いわゆる骨見え現象が起こる。
そのため、屈折率が1.9以上の無機粒子を選択した本実施形態の塗膜を、透明基材とITO電極の間の層として設けることにより、透明基材とITO電極の屈折率差を緩和して、骨見え現象を抑制することができる。
本実施形態の塗膜および本実施形態の塗膜付きプラスチック基材のいずれか一方または両方をタッチパネルに設ける方法は、特に限定されず、公知の方法により実装すればよい。例えば、本実施形態の塗膜付きプラスチック基材の塗膜面に、ITO電極をパターニングし、配向膜、液晶層を積層した構造等が挙げられる。
【0075】
本実施形態の表示装置によれば、成膜性に優れる、本実施形態の塗膜および本実施形態の塗膜付きプラスチック基材の少なくともいずれか一方を備えているので、塗膜面内における光学特性のばらつきがほとんどないため、視認性に優れた表示装置を得ることができる。
【実施例】
【0076】
以下、実施例および比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0077】
[実施例1]
「無機粒子分散液」
酸化ジルコニウム(平均一次粒子径12nm、住友大阪セメント社製)を30質量%、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランを6.0質量%、アルキルジメチルアミンを0.4質量%、プロピレングリコールモノメチルエーテルを63.6質量%混合した後、ビーズミルを用いて、分散処理を行って、実施例1の無機粒子分散液を得た。
【0078】
「無機粒子分散液の評価」
得られた無機粒子分散液の水分率を、カールフィッシャー水分計(型番:AQL−22320、平沼産業社製)で測定した結果、水の含有量は0.3質量%であった。
また、得られた無機粒子分散液の粒度分布を、粒度分布計(商品名:マイクロトラックUPA150、日機装社製)で測定した結果、D50は25nm、D90は35nmで、D90/D50は1.4であった。
この無機粒子分散液は、6か月経過時の粒度分布特性が同等であり、長期保管の安定性に優れていることが確認された。評価結果を表1に示す。
【0079】
「無機粒子含有組成物」
得られた無機粒子分散液を5.4質量%、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートを0.19質量%、2−ヒロドキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オンを0.02質量%、プロピレングリコールモノメチルエーテルを94.39質量%混合し、実施例1の無機粒子含有組成物を得た。
【0080】
「塗膜付きプラスチック基材」
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートを40質量%、2−ヒロドキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オンを2質量%、メチルイソブチルケトンを58質量%混合し、ハードコート膜形成用組成物を得た。
【0081】
このハードコート膜形成用組成物を、100μm厚のポリエチレンテレフタレートフィルムに、乾燥膜厚が1μmとなるようにバーコーティング法で塗布し、90℃で加熱して乾燥させ、塗膜を形成した。
次いで、高圧水銀灯(120W/cm)を用い、塗膜に紫外線を250mJ/cm
2のエネルギーとなるように露光して、塗膜を硬化させて、ハードコート膜付き基材を得た。
次いで、このハードコート膜付き基材のハードコート膜上に、実施例1の無機粒子含有組成物を、乾燥膜厚が100nmとなるようにバーコーティング法で塗布し、90℃で加熱して乾燥させ、塗膜を形成した。
次いで、高圧水銀灯(120W/cm)を用い、塗膜に紫外線を250mJ/cm
2のエネルギーとなるように露光し、塗膜を硬化させて、実施例1の塗膜付きプラスチック基材を得た。
【0082】
「塗膜付きプラスチック基材の評価」
「塗膜付きプラスチック基材の全光線透過率、ヘーズ値」
塗膜付きプラスチック基材の全光線透過率とヘーズ値を、空気を基準として、ヘイズメーターNDH−2000(日本電色社製)を用い、日本工業規格JIS−K−7136に基づいて測定した。
全光線透過率とヘーズ値の測定には、作製した塗膜付きプラスチック基材から100mm×100mmの試験片を作製し、その試験片を用いた。
評価結果を表1に示す。
【0083】
「塗膜の屈折率」
プリズムカプラ モデル2010(メリコン社製)を用い、塗膜の屈折率を測定した。
【0084】
「塗膜付きプラスチック基材の色ムラ」
塗膜付きプラスチック基材の色ムラを、基材と目の間隔を30cmとし、目視により観察し、色ムラがない、または、ほとんど目立たなければ○、色ムラがあれば×として評価した。
評価結果を表1に示す。
【0085】
「塗膜付きプラスチック基材の反射スペクトルの測定」
実施例1の塗膜付きプラスチック基材について、分光光度計(商品名:V−570、日本分光社製)を用いて、500nm〜750nmの範囲内における反射スペクトルを測定した。
その結果、500nm〜750nmの範囲内における、塗膜付きプラスチック基材の反射率の最大値と最小値の差は1%以下であった。
【0086】
[実施例2]
「無機粒子分散液」
酸化ジルコニウム(平均一次粒子径12nm、住友大阪セメント社製)を30質量%、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランを4.5質量%、アミン系分散剤を0.4質量%、メチルイソブチルケトンを65.1質量%混合した後、ビーズミルを用いて、分散処理を行って、実施例2の無機粒子分散液を得た。
【0087】
「無機粒子分散液の評価」
実施例1と同様に評価した結果、水の含有量は0.3質量%であった。
また、D50は18nm、D90は25nmで、D90/D50は1.4であった。
この無機粒子分散液は、6か月経過時の粒度分布特性が同等であり、長期保管の安定性に優れていることが確認された。評価結果を表1に示す。
【0088】
「無機粒子含有組成物、塗膜付きプラスチック基材」
実施例2の無機粒子分散液を用いた以外は実施例1と全く同様にして、実施例2の無機粒子含有組成物、実施例2の塗膜付きプラスチック基材を得た。
【0089】
「塗膜付きプラスチック基材の評価」
実施例2の塗膜付きプラスチック基材について、全光線透過率、ヘーズ値、塗膜の屈折率、塗膜付きプラスチック基材の色ムラを、実施例1と同様に評価した。
評価結果を表1に示す。
また、実施例1と同様にして、500nm〜750nmの範囲内における、塗膜付きプラスチック基材の反射スペクトルを測定したところ、塗膜付きプラスチック基材の反射率の最大値と最小値の差は1%以下であった。
【0090】
[実施例3]
酸化亜鉛(商品名:ZnO650、平均一次粒子径25nm、住友大阪セメント社製)を10質量%、テトラメトキシシランを10質量%、ジメチルアミノプロピルアクリルアミドを0.4質量%、イソプロピルアルコールを77.6質量%混合した後、ビーズミルを用いて、分散処理を行って、実施例3の無機粒子分散液を得た。
【0091】
「無機粒子分散液の評価」
実施例1と同様に評価した結果、水の含有量は0.3質量%であった。
また、D50は30nm、D90は90nmで、D90/D50は3.0であった。
この無機粒子分散液は、6か月経過時の粒度分布特性が同等であり、長期保管の安定性に優れていることが確認された。評価結果を表1に示す。
【0092】
[実施例4]
「無機粒子含有組成物」
実施例2の無機粒子分散液を58質量%、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートを11質量%、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オンを0.5質量%、プロピレングリコールモノメチルエーテルを30.5質量%混合し、実施例4の無機粒子含有組成物を得た。
【0093】
「塗膜付きプラスチック基材」
この実施例4の無機粒子含有組成物を、100μm厚のポリエチレンテレフタレートフィルムに、乾燥膜厚が1.5μmとなるようにバーコーティング法で塗布し、90℃で加熱して乾燥させ、塗膜を形成した。
次いで、高圧水銀灯(120W/cm)を用い、塗膜に紫外線を250mJ/cm
2のエネルギーとなるように露光して、塗膜を硬化させて、実施例4の塗膜付きプラスチック基材を得た。
【0094】
実施例4の塗膜付きプラスチック基材について、全光線透過率、ヘーズ値、塗膜付きプラスチック基材の色ムラを実施例1と同様に評価した。塗膜の屈折率は、アッベ式屈折率計(型番:DR−M2、アタゴ社製)を用いて測定した。
評価結果を表1に示す。
【0095】
「塗膜内における無機粒子の充填状態の観察」
塗膜内における無機粒子の充填状態を確認するために、集束イオンビーム加工観察装置を用いて、膜断面を観察した。塗膜断面の上部側の走査イオン顕微鏡像を
図1に、塗膜断面の下部側の走査イオン顕微鏡像を
図2に示す。
図1および
図2に示す走査イオン顕微鏡像から、塗膜内に無機粒子が隙間なく充填されていることが確認された。
【0096】
「塗膜付きプラスチック基材の反射スペクトルの測定」
実施例4の塗膜付きプラスチック基材について、分光光度計(商品名:V−570、日本分光社製)を用いて、500nm〜750nmの範囲内における反射スペクトルを測定した。
結果を
図3に示す。
その結果、500nm〜750nmの範囲内における、塗膜付きプラスチック基材の反射率の最大値と最小値の差は0.5%であった。
【0097】
[比較例1]
3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランを6.0質量%、アルキルジメチルアミンを0.4質量%、プロピレングリコールモノメチルエーテルを63.6質量%用いる替わりに、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランを4.5質量%、メチルエチルケトンを65.5質量%用いた以外は実施例1と同様にして、塩基性物質を含有しない比較例1の無機粒子分散液を調製しようとしたが、ビーズミルで分散させても、無機粒子が沈降し、分散液が得られなかった。
【0098】
[比較例2]
3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランを6.0質量%、アルキルジメチルアミンを0.4質量%、プロピレングリコールモノメチルエーテルを63.6質量%用いる替わりに、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランを4.5質量%、1質量%水酸化ナトリウム水溶液を3質量%、メチルエチルケトンを62.5質量%用いた以外は実施例1と同様にして、水を多く含む、比較例2の無機粒子分散液を得た。
【0099】
「無機粒子分散液の評価」
実施例1と同様に評価した結果、水の含有量は3.3質量%であった。
また、D50は30nm、D90は135nmで、D90/D50は4.5であった。
この無機粒子分散液は、2か月経過時に無機粒子が沈降し、長期の分散安定性に優れないことが確認された。評価結果を表1に示す。
【0100】
「無機粒子含有組成物、塗膜付きプラスチック基材」
比較例2の無機粒子分散液を用いた以外は実施例1と全く同様にして、比較例2の無機粒子組成物、比較例2の塗膜付きプラスチック基材を得た。
【0101】
「塗膜付きプラスチック基材の評価」
比較例2の塗膜付きプラスチック基材について、全光線透過率、ヘーズ値、塗膜の屈折率、塗膜付きプラスチック基材の色ムラを評価した。
評価結果を表1に示す。
また、実施例1と同様にして、500nm〜750nmの範囲内における、塗膜付きプラスチック基材の反射スペクトルを測定したところ、塗膜付きプラスチック基材の反射率の最大値と最小値の差は1%を超えていた。
【0102】
[比較例3]
3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランを6.0質量%、アルキルジメチルアミンを0.4質量%、プロピレングリコールモノメチルエーテルを63.6質量%用いる替わりに、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランを4.5質量%、1質量%酢酸水溶液を3質量%、メチルエチルケトンを62.5質量%用いた以外は実施例1と同様にして、水を多く含み、かつ、塩基性物質を含有しない比較例3の無機粒子分散液を調製しようとしたが、ビーズミルで分散させても、無機粒子が沈降し、分散液が得られなかった。
【0103】
[比較例4]
「無機粒子含有組成物」
比較例2の無機粒子分散液を60質量%、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートを11質量%、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オンを0.5質量%、プロピレングリコールモノメチルエーテルを28.5質量%混合し、比較例4の無機粒子含有組成物を得た。
【0104】
「塗膜付きプラスチック基材」
この比較例4の無機粒子含有組成物を、100μm厚のポリエチレンテレフタレートフィルムに、乾燥膜厚が1.5μmとなるようにバーコーティング法で塗布し、90℃で加熱して乾燥させ、塗膜を形成した。
次いで、高圧水銀灯(120W/cm)を用い、塗膜に紫外線を250mJ/cm
2のエネルギーとなるように露光して、塗膜を硬化させて、比較例4の塗膜付きプラスチック基材を得た。
【0105】
比較例4の塗膜付きプラスチック基材について、全光線透過率、ヘーズ値、塗膜付きプラスチック基材の色ムラを実施例1と同様に評価した。塗膜の屈折率は、アッベ式屈折率計(型番:DR−M2、アタゴ社製)を用いて測定した。
評価結果を表1に示す。
【0106】
「塗膜付きプラスチック基材の反射スペクトルの測定」
比較例4の塗膜付きプラスチック基材について、分光光度計(商品名:V−570、日本分光社製)を用いて、500nm〜750nmの範囲内における反射スペクトルを測定した。
結果を
図3に示す。
その結果、500nm〜750nmの範囲内における、塗膜付きプラスチック基材の反射率の最大値と最小値の差は1.7%であった。
【0107】
【表1】
【0108】
表1の結果から、実施例1〜実施例3と、比較例1〜比較例3とを比較すると、実施例1〜実施例3の無機粒子分散液は、無機粒子の分散安定性に優れ、分散液の長期保管の安定性に優れていることが確認できた。
表1の結果から、実施例1および実施例2と、比較例2とを比較すると、実施例1および2では、全光線透過率、ヘーズ値、塗膜の屈折率、および、塗膜付きプラスチック基材の色ムラが、比較例2よりも向上していることが確認できた。
また、実施例4の反射スペクトルと、比較例4の反射スペクトルとを比較すると、膜厚を1.5μmのような厚膜としたときであっても、実施例4の塗膜付きプラスチック基材は、光の干渉に起因するリップルの振幅が小さく、目視でも色ムラが抑制されていることが確認できた。
また、比較例4を実施例4と同じ屈折率に調整するためには、比較例4の酸化ジルコニウムの含有量を多くする必要があり、実施例4は、従来の膜よりも少ない酸化ジルコニウムの量で屈折率を向上できることが確認できた。