特許第6648895号(P6648895)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6648895
(24)【登録日】2020年1月20日
(45)【発行日】2020年2月14日
(54)【発明の名称】出力回路
(51)【国際特許分類】
   H03K 19/003 20060101AFI20200203BHJP
   H03F 1/52 20060101ALI20200203BHJP
   H01L 21/822 20060101ALI20200203BHJP
   H01L 27/04 20060101ALI20200203BHJP
   H03K 17/08 20060101ALI20200203BHJP
   H03K 19/0175 20060101ALI20200203BHJP
【FI】
   H03K19/003 230
   H03F1/52 210
   H01L27/04 H
   H03K17/08 C
   H03K19/0175 220
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-183974(P2015-183974)
(22)【出願日】2015年9月17日
(65)【公開番号】特開2017-60032(P2017-60032A)
(43)【公開日】2017年3月23日
【審査請求日】2018年7月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000191238
【氏名又は名称】新日本無線株式会社
(72)【発明者】
【氏名】松田 丈智
【審査官】 渡井 高広
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−116415(JP,A)
【文献】 特開2005−252763(JP,A)
【文献】 特開平05−128872(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03K 19/003
H03K 19/0175
H03K 17/08
H03F 1/52
H01L 21/822
H01L 27/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Pチャネルの第1のMOSトランジスタとNチャネルの第2のMOSトランジスタとを直列接続した出力段で構成された出力回路であって、
出力端子の天絡状態を検出し制御信号を出力する天絡検出回路と、
ゲートが前記天絡検出回路の出力に接続され、ソースまたはドレインが前記第1のMOSトランジスタのゲートに接続され、ドレインまたはソースが前段の回路素子に接続されたPチャネルの第3のMOSトランジスタと、ゲートが前記天絡検出回路の出力に接続され、ドレインが前記第2のMOSトランジスタのゲートに接続され、ソースが接地端子に接続されたNチャネルの第4のMOSトランジスタと、アノードが前記天絡検出回路の出力に接続され、カソードが前記第1のMOSトランジスタのゲートに接続された第1のダイオードと、アノードが電源端子に接続され、カソードが前記第1のMOSトランジスタのバックゲートに接続された第2のダイオードと、アノードが電源端子に接続され、カソードが前記第3のMOSトランジスタのバックゲートに接続された第3のダイオードとから成る保護回路と、
を備えることを特徴とする出力回路。
【請求項2】
Pチャネルの第1のMOSトランジスタとNチャネルの第2のMOSトランジスタとを直列接続した出力段で構成された出力回路の出力端子に負荷抵抗が接続され、出力回路の電源電圧以上の高電圧が負荷抵抗を介して印加される出力回路であって、
絡状態を検出し制御信号を出力する天絡検出回路と、
ゲートが前記天絡検出回路の出力に接続され、ソースまたはドレインが前記第1のMOSトランジスタのゲートに接続され、ドレインまたはソースが前段の回路素子に接続されたPチャネルの第3のMOSトランジスタと、ゲートが前記天絡検出回路の出力に接続され、ドレインが前記第2のMOSトランジスタのゲートに接続され、ソースが接地端子に接続されたNチャネルの第4のMOSトランジスタと、アノードが前記天絡検出回路の出力に接続され、カソードが前記第1のMOSトランジスタのゲートに接続された第1のダイオードと、アノードが電源端子に接続され、カソードが前記第1のMOSトランジスタのバックゲートに接続された第2のダイオードと、アノードが電源端子に接続され、カソードが前記第3のMOSトランジスタのバックゲートに接続された第3のダイオードとから成る保護回路と、
を備え、前記高電圧が印加される端子に前記天絡検出回路の入力が接続されることを特徴とする出力回路。
【請求項3】
Pチャネルの第1のMOSトランジスタとNチャネルの第2のMOSトランジスタとを直列接続した出力段で構成された出力回路の出力端子に負荷抵抗が接続され、出力回路の電源電圧以上の高電圧が負荷抵抗を介して印加される出力回路であって、
天絡状態を検出し制御信号を出力する天絡検出回路と、
ゲートが前記天絡検出回路の出力に接続され、ソースまたはドレインが前記第1のMOSトランジスタのゲートに接続され、ドレインまたはソースが前段の回路素子に接続されたPチャネルの第3のMOSトランジスタと、ゲートが前記天絡検出回路の出力に接続され、ドレインが前記第2のMOSトランジスタのゲートに接続され、ソースが接地端子に接続されたNチャネルの第4のMOSトランジスタと、アノードが前記天絡検出回路の出力に接続され、カソードが前記第1のMOSトランジスタのゲートに接続された第1のダイオードと、アノードが電源端子に接続され、カソードが前記第1のMOSトランジスタのバックゲートに接続された第2のダイオードと、アノードが電源端子に接続され、カソードが前記第3のMOSトランジスタのバックゲートに接続された第3のダイオードとから成る保護回路と、
を備え、前記天絡検出回路の2つの入力が前記出力回路の出力端子と前記第2のMOSトランジスタのゲートノードであることを特徴とする出力回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、MOS型FETで構成された天絡保護機能を有する出力回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、品質の向上及び安全性の観点から、出力端子を備える半導体集積回路において、出力端子が天絡した場合に出力端子からの過電流の流入や半導体素子の破壊が問題となることがある。ここで、天絡とは、出力端子を備える半導体製品の電源電圧以上の高電圧との短絡を意味する。
【0003】
特許文献1に、過負荷による過電流が流れた場合に出力回路を保護することができる技術が開示されている。特許文献1では、半導体素子で構成された電力増幅器の出力端子と負荷との間に保護制御回路とリレー接点による開閉手段を設けており、保護制御回路にて過電流を検出するとリレー接点を開くことで過電流を遮断し電力増幅器内部の半導体素子を保護するというものである。ここで、リレー接点はディスクリート素子で構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−77356号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで特許文献1に開示されている保護手段をディスクリート素子で構成する代わりにリレーやスイッチのような保護スイッチを出力回路内に内蔵して天絡保護機能を持たせることもできる。しかし、ディスクリート素子で構成する場合にはリレーやスイッチのオン抵抗は1Ω以下や数Ωのものを容易に選択できるが、同等のオン抵抗の保護スイッチを半導体集積回路内で構成しようとするとチップ面積の増大につながる。また、この保護スイッチは保護する天絡電圧が高い場合には高耐圧素子で構成する必要があり、よりチップ面積が増大してしまう。さらに、出力段の素子のオン抵抗に保護スイッチのオン抵抗が直列に追加されることになるため、ダイナミックレンジを大きく確保するためには出力段の素子と保護スイッチのオン抵抗を低く設計する必要があり、よりチップ面積の増大を招くことになる。
【0006】
本発明は上記問題点を解消し、チップ面積の増大を抑えつつダイナミックレンジを確保し、半導体集積回路で構成した天絡保護機能を有する出力回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項にかかる発明は、Pチャネルの第1のMOSトランジスタとNチャネルの第2のMOSトランジスタとを直列接続した出力段で構成された出力回路であって、出力端子の天絡状態を検出し制御信号を出力する天絡検出回路と、ゲートが前記天絡検出回路の出力に接続され、ソースまたはドレインが前記第1のMOSトランジスタのゲートに接続され、ドレインまたはソースが前段の回路素子に接続されたPチャネルの第3のMOSトランジスタと、ゲートが前記天絡検出回路の出力に接続され、ドレインが前記第2のMOSトランジスタのゲートに接続され、ソースが接地端子に接続されたNチャネルの第4のMOSトランジスタと、アノードが前記天絡検出回路の出力に接続され、カソードが前記第1のMOSトランジスタのゲートに接続された第1のダイオードと、アノードが電源端子に接続され、カソードが前記第1のMOSトランジスタのバックゲートに接続された第2のダイオードと、アノードが電源端子に接続され、カソードが前記第3のMOSトランジスタのバックゲートに接続された第3のダイオードとから成る保護回路と、を備えることを特徴とする。
【0009】
請求項にかかる発明は、Pチャネルの第1のMOSトランジスタとNチャネルの第2のMOSトランジスタとを直列接続した出力段で構成された出力回路の出力端子に負荷抵抗が接続され、出力回路の電源電圧以上の高電圧が負荷抵抗を介して印加される出力回路であって、天絡状態を検出し制御信号を出力する天絡検出回路と、ゲートが前記天絡検出回路の出力に接続され、ソースまたはドレインが前記第1のMOSトランジスタのゲートに接続され、ドレインまたはソースが前段の回路素子に接続されたPチャネルの第3のMOSトランジスタと、ゲートが前記天絡検出回路の出力に接続され、ドレインが前記第2のMOSトランジスタのゲートに接続され、ソースが接地端子に接続されたNチャネルの第4のMOSトランジスタと、アノードが前記天絡検出回路の出力に接続され、カソードが前記第1のMOSトランジスタのゲートに接続された第1のダイオードと、アノードが電源端子に接続され、カソードが前記第1のMOSトランジスタのバックゲートに接続された第2のダイオードと、アノードが電源端子に接続され、カソードが前記第3のMOSトランジスタのバックゲートに接続された第3のダイオードとから成る保護回路と、を備え、前記高電圧が印加される端子に前記天絡検出回路の入力が接続されることを特徴とする。
【0010】
請求項にかかる発明は、Pチャネルの第1のMOSトランジスタとNチャネルの第2のMOSトランジスタとを直列接続した出力段で構成された出力回路の出力端子に負荷抵抗が接続され、出力回路の電源電圧以上の高電圧が負荷抵抗を介して印加される出力回路であって、天絡状態を検出し制御信号を出力する天絡検出回路と、ゲートが前記天絡検出回路の出力に接続され、ソースまたはドレインが前記第1のMOSトランジスタのゲートに接続され、ドレインまたはソースが前段の回路素子に接続されたPチャネルの第3のMOSトランジスタと、ゲートが前記天絡検出回路の出力に接続され、ドレインが前記第2のMOSトランジスタのゲートに接続され、ソースが接地端子に接続されたNチャネルの第4のMOSトランジスタと、アノードが前記天絡検出回路の出力に接続され、カソードが前記第1のMOSトランジスタのゲートに接続された第1のダイオードと、アノードが電源端子に接続され、カソードが前記第1のMOSトランジスタのバックゲートに接続された第2のダイオードと、アノードが電源端子に接続され、カソードが前記第3のMOSトランジスタのバックゲートに接続された第3のダイオードとから成る保護回路と、を備え、前記天絡検出回路の2つの入力が前記出力回路の出力端子と前記第2のMOSトランジスタのゲートノードであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ディスクリート素子で構成された保護スイッチを設けずに天絡保護機能を有する出力回路を構成することができる。また、オン抵抗の低い保護スイッチを集積回路内部に設ける必要がなくなるため、チップ面積の増大を防ぐことができるとともにオン抵抗が増加せずダイナミックレンジを確保して天絡保護機能を有する出力回路を構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の天絡保護機能を有する出力回路の説明図である。
図2】本発明の第1の実施例の回路図である。
図3】本発明の第2の実施例の回路図である。
図4】本発明の第3の実施例の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について詳細に説明する。図1は本発明の天絡保護機能を有する出力回路の回路図で、MOS型FETで構成した出力回路の出力段に天絡検出回路と保護回路が接続された回路図である。出力トランジスタはPチャネルの第1のMOSトランジスタM1とNチャネルの第2のMOSトランジスタM2で構成され、互いのドレインの接続点と出力端子VOUTが接続されている。第1のMOSトランジスタM1のソースは電源端子V+に、第2のMOSトランジスタM2のソースは接地端子GNDにそれぞれ接続されている。Pチャネルの第3のMOSトランジスタM3は、ソースが第1のMOSトランジスタM1のゲートに、ドレインが前段の回路素子に、ゲートが天絡検出回路の出力にそれぞれ接続され、天絡時に第1のMOSトランジスタM1のゲートと前段の回路素子とを切り離すスイッチとして動作する。Nチャネルの第4のMOSトランジスタM4は、ドレインが第2のMOSトランジスタM2のゲートに、ソースが接地端子GNDに、ゲートが天絡検出回路の出力にそれぞれ接続され、天絡時に第2のMOSトランジスタM2のゲートを接地電圧として第2のMOSトランジスタM2を非導通状態にするスイッチとして動作する。なお、各MOSトランジスタは出力端子VOUTに印加される天絡電圧以上の耐電圧をもつ高耐圧素子で構成される。第1のダイオードD1は、アノードが天絡検出回路の出力に、カソードが第1のMOSトランジスタM1のゲートに接続され、天絡時に第1のMOSトランジスタM1のゲートに出力端子VOUTの電圧が印加されるように動作する。第2のダイオードD2は、アノードが電源電圧VDDの電源端子V+に、カソードが第1のMOSトランジスタM1のバックゲートに接続され、天絡時に出力端子からの流入電流が電源端子V+に逆流するのを防止する。第3のダイオードD3は、アノードが電源端子V+に、カソードが第3のMOSトランジスタM3のバックゲートに接続され、天絡時に出力端子からの流入電流が電源端子V+に逆流するのを防止する。天絡検出回路は出力端子VOUTの天絡状態を検出し、Hレベル(=出力端子VOUTの電圧)またはLレベル(=接地電圧)の制御信号を出力する。
【0014】
まず、通常時の動作について説明する。通常時は、天絡検出回路の制御信号はLレベルである接地電圧が出力される。この制御信号により、第3のMOSトランジスタM3は導通状態、第4のMOSトランジスタM4と第1のダイオードD1は非導通状態となり、第1のMOSトランジスタM1と第2のMOSトランジスタM2より出力信号が出力端子VOUTに出力される。
【0015】
次に、天絡時の動作について説明する。天絡時は、天絡検出回路の制御信号はHレベルである出力端子VOUTの電圧(=天絡電圧)が出力される。この制御信号により第1のダイオードD1が導通状態となる。第1のダイオードD1のカソードは、ハイインピーダンスとなるノードに接続されており電流が流れ込まないため、第1のダイオードD1での電圧降下はほとんどなく、第1のMOSトランジスタM1のゲートは天絡電圧となる。第1のMOSトランジスタM1はドレインとソースが入れ替わるが、ゲートとソースが天絡電圧となるため、非導通状態となる。また、第3のMOSトランジスタM3もドレインとソースが入れ替わるが、ゲートとソースが天絡電圧となるため非導通状態となり、第1のMOSトランジスタM1のゲートと前段の回路素子とを切り離す。同時に第4のMOSトランジスタM4は導通状態となり、第2のMOSトランジスタM2のゲートを接地電圧として第2のMOSトランジスタM2を非導通状態にする。
【0016】
通常の出力回路では、第1のMOSトランジスタM1と第3のMOSトランジスタM3のバックゲートは通常動作時に最高電位となる電源電圧VDDの電源端子V+に接続されるが、本発明では第2のダイオードD2と第3のダイオードD3がそれぞれ接続されている。これらのダイオードにより、天絡時に出力端子VOUTと第1のMOSトランジスタM1のゲートが電源電圧VDD以上となり、第1のMOSトランジスタM1のソース(通常動作時はドレイン)とバックゲートおよび第3のMOSトランジスタM3のソース(通常動作時はドレイン)とバックゲートのPN接合が順方向バイアスされて、出力端子VOUTからの流入電流が電源端子V+へ逆流するのを防止する。なお、通常動作時は第2のダイオードD2と第3のダイオードD3による電圧降下はほとんどなく、第1のMOSトランジスタM1と第3のMOSトランジスタM3のバックゲートに電源電圧VDDが印加される。
【0017】
天絡が解除されると、天絡検出回路の制御信号はLレベルである接地電圧が出力される。この制御信号により、第3のMOSトランジスタM3は導通状態、第4のMOSトランジスタM4と第1のダイオードD1は非導通状態となり、第1のMOSトランジスタM1と第2のMOSトランジスタM2より出力信号が出力端子VOUTに出力される通常時の動作に復帰する。
【0018】
以上の動作により、天絡時には第1のMOSトランジスタM1と第2のMOSトランジスタM2が非導通状態となり、寄生のPN接合も順方向バイアスとならないため、出力端子VOUTから過大電流が流入するのを防止し出力回路の素子を保護することができるとともに、天絡が解除されると通常の動作に復帰することができる。このように集積回路内部にオン抵抗の低い保護スイッチを設ける必要がなくなるため、チップ面積の増大を抑えることができるとともにオン抵抗が増加しないためダイナミックレンジを確保して天絡保護機能を有する出力回路を構成することができる。
【実施例1】
【0019】
図2は本発明の第1の実施例の天絡検出回路を簡潔に実現する具体的構成例である。出力端子VOUTに印加される天絡電圧以上の耐電圧をもつ高耐圧素子であるPチャネルMOSトランジスタM5とNチャネルトランジスタM6で構成された出力端子VOUTと接地端子GND間のインバータが、天絡検出回路として機能する。インバータの入力に電源端子V+が接続され、インバータの出力に天絡検出回路の制御信号が出力される。
【0020】
次に、図2に示す回路の動作を説明する。通常時は出力端子VOUTの電圧は電源電圧VDD以下のため、PチャネルMOSトランジスタM5は非導通状態、NチャネルMOSトランジスタM6は導通状態となり、天絡検出回路の出力である制御信号はLレベルである接地電圧が出力され、第1のMOSトランジスタM1と第2のMOSトランジスタM2より出力信号が出力端子VOUTに出力される。
【0021】
天絡時は、出力端子VOUTの電圧が電源電圧VDD+Vth_M5より高くなるとPチャネルMOSトランジスタM5が導通状態となり、天絡検出回路の出力である制御信号はHレベルが出力される。ここで、Vth_M5はPチャネルMOSトランジスタM5のしきい値電圧である。天絡時はNチャネルMOSトランジスタM6も導通状態となるため、Hレベルの電圧はPチャネルMOSトランジスタM5とNチャネルMOSトランジスタM6のオン抵抗の比率により決まる。PチャネルMOSトランジスタM5およびNチャネルMOSトランジスタM6のオン抵抗を適宜設計することで、制御信号のHレベル電圧が出力端子VOUTの電圧である天絡電圧となり、先に説明した図1と同じ動作で出力端子VOUTから過大電流が流入するのを防止し出力回路の素子を保護することができる。
【0022】
出力端子VOUTの電圧が電源電圧VDD+Vth_M5より低くなるとPチャネルMOSトランジスタM5は非導通状態となり天絡検出回路の出力である制御信号はLレベルである接地電圧が出力され、第1のMOSトランジスタM1と第2のMOSトランジスタM2より出力信号が出力端子VOUTに出力される通常時の動作に復帰する。
【実施例2】
【0023】
図3は本発明の第2の実施例の回路図であり、映像信号出力用途の出力回路の出力段に天絡保護機能を持たせたものである。映像信号出力用途の出力回路には出力端子VOUTに直列に負荷抵抗R1が接続される。図3は負荷抵抗R1を介して映像信号出力端子VIDEOOUTの天絡を検出する実施例であり、映像信号用出力回路に新たに設けた天絡検出入力端子DETを映像信号出力端子VIDEOOUTと接続することで天絡の有無を検出する。天絡検出回路は、天絡検出入力端子DETの電圧をしきい値電圧Vth1と比較するコンパレータ1と、映像信号出力端子VIDEOOUTに印加される天絡電圧以上の耐電圧をもつ高耐圧素子であるPチャネルMOSトランジスタM5とNチャネルトランジスタM6で構成された出力端子VOUTと接地端子GND間のインバータで構成される。
【0024】
次に、図3に示す回路の動作を説明する。通常時は天絡検出入力端子DETの電圧はしきい値電圧Vth1より低いためコンパレータ1の出力はHレベルである電源電圧VDDとなり、PチャネルMOSトランジスタM5は非導通状態、NチャネルMOSトランジスタM6は導通状態となり、天絡検出回路の出力である制御信号はLレベルである接地電圧が出力され、第1のMOSトランジスタM1と第2のMOSトランジスタM2より出力信号が出力端子VOUTに出力される。
【0025】
天絡時は天絡検出入力端子DETの電圧はしきい値電圧Vth1より高くなりコンパレータ1の出力はLレベルである接地電圧となり、PチャネルMOSトランジスタM5は導通状態、NチャネルMOSトランジスタM6は非導通状態となり、天絡検出回路の出力である制御信号はHレベルである出力端子VOUTの電圧が出力され、先に説明した図1と同じ動作で出力端子VOUTからの過大流入電流を防止し出力回路の素子を保護することができる。
【0026】
天絡が解除されると、天絡検出回路の出力である制御信号はLレベルである接地電圧が出力され、第1のMOSトランジスタM1と第2のMOSトランジスタM2より出力信号が出力端子VOUTに出力される通常時の動作に復帰する。
【実施例3】
【0027】
図4は本発明の第3の実施例の回路図であり、図3に示す第2の実施例と同様に、映像信号出力用途の出力回路の出力段に天絡保護機能を持たせたものである。図3との違いは、映像信号用出力回路に天絡検出入力端子DETを新たに設けずに天絡の有無を検出することができる点である。出力端子VOUTと第2のMOSトランジスタM2のゲートが天絡検出回路へ入力されており、これら2つのノードの電圧をモニタすることで天絡の有無を検出する。天絡検出回路は、出力端子VOUTの電圧をしきい値電圧Vth2と比較するコンパレータ2と、第2のMOSトランジスタM2のゲートの電圧をしきい値電圧Vth3と比較するコンパレータ3と、論理回路NORと、映像信号出力端子VIDEOOUTに印加される天絡電圧以上の耐電圧をもつ高耐圧素子であるPチャネルMOSトランジスタM5とNチャネルトランジスタM6で構成された出力端子VOUTと接地端子GND間のインバータで構成される。
【0028】
次に、図4に示す回路の動作を説明する。通常時は出力端子VOUTの電圧はしきい値電圧Vth2より低いためコンパレータ2の出力はLレベルである接地電圧となる。また、第2のMOSトランジスタM2のゲートの電圧はしきい値電圧Vth3より低いためコンパレータ3の出力もLレベルである接地電圧となる。コンパレータ2とコンパレータ3の出力を受けて論理回路NORの出力はHレベルである電源電圧VDDとなり、PチャネルMOSトランジスタM5は非導通状態、NチャネルMOSトランジスタM6は導通状態となり、天絡検出回路の出力である制御信号はLレベルである接地電圧が出力され、第1のMOSトランジスタM1と第2のMOSトランジスタM2より出力信号が出力端子VOUTに出力される。
【0029】
天絡時は出力端子VOUTの電圧がしきい値電圧Vth2より高くなった場合にコンパレータ2の出力はHレベルである電源電圧VDDとなる。あるいは天絡時の出力信号の状態により第2のMOSトランジスタM2が流入電流を引き込み、第2のMOSトランジスタM2のゲートの電圧がしきい値電圧Vth3より高くなった場合にコンパレータ3の出力はHレベルである電源電圧VDDとなる。コンパレータ2またはコンパレータ3のいずれかの出力がHレベルである電源電圧VDDとなると論理回路NORの出力はLレベルである接地電圧となり、天絡検出回路の出力である制御信号はHレベルである出力端子VOUTの電圧となる。この制御信号により第1のダイオードD1が導通状態となり、第1のMOSトランジスタM1のゲートが出力端子VOUTの電圧となることで第1のMOSトランジスタM1と第3のMOSトランジスタM3は非導通状態となり、第1のMOSトランジスタM1のゲートと前段の回路素子とを切り離す。同時に第4のMOSトランジスタM4は導通状態となり第2のMOSトランジスタM2のゲートを接地電圧として第2のMOSトランジスタM2を非導通状態にする。
【0030】
このとき第2のMOSトランジスタM2のゲートは接地電圧となるためコンパレータ3の出力はLレベルである接地電圧となるが、出力端子VOUTからの流入電流が遮断されて映像信号出力端子VIDEOOUTの電圧(=天絡電圧)と出力端子VOUTの電圧は等しくなり、出力端子VOUTの電圧をモニタしているコンパレータ2で天絡を検出することができ、天絡検出回路の出力である制御信号はHレベルである出力端子VOUTの電圧を維持する。以上の動作により、出力端子VOUTからの過大流入電流を防止し出力回路の素子を保護することができる。
【0031】
天絡が解除されると出力端子VOUTの電圧が下がるため、コンパレータ2の出力はLレベルである接地電圧となり、論理回路NORの出力はHレベルである電源電圧VDDとなり、天絡検出回路の出力である制御信号はLレベルである接地電圧が出力され、第1のMOSトランジスタM1と第2のMOSトランジスタM2より出力信号が出力端子VOUTに出力される通常時の動作に復帰する。
【0032】
以上のように、本発明によれば集積回路内部にオン抵抗の低い保護スイッチを設ける必要がなくなるためチップ面積の増大を抑えることができるとともに、オン抵抗が増加しないためダイナミックレンジを確保して天絡保護機能を有する出力回路を構成することができる。また、ディスクリート素子で構成する保護スイッチも不要となるため電子機器内の部品数を削減できるという効果も得られる。なお、上記実施例における天絡検出回路は本発明の具体的な一例であって、本発明が実施例に限定されないことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0033】
M1:第1のMOSトランジスタ
M2:第2のMOSトランジスタ
M3:第3のMOSトランジスタ
M4:第4のMOSトランジスタ
D1〜D3:ダイオード
V+:電源端子
GND:接地端子
VOUT:出力端子
VIDEOOUT:映像信号出力端子
DET:天絡検出入力端子
図1
図2
図3
図4