(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について図を参照して説明する。
【0021】
≪実施の形態1≫
図1は、実施の形態1に係る増幅器の回路構成を示す図である。
同図に示される増幅器100は、例えば、光通信システムや無線通信システム等の受信装置用の増幅器である。具体的に、増幅器100は、例えば光通信システムの受信装置おいて、伝送路(光ファイバ)から送られた光信号からフォトダイオードの光−電流変換によって変換された電流信号を電圧信号に変換するとともに、後段の回路(例えば、アナログ・デジタル変換器およびデジタルシグナルプロセッサ等)で処理可能な電圧振幅まで線形増幅するための増幅器である。
【0022】
具体的に、増幅器100は、トランスインピーダンスアンプ(TIA)20が形成された半導体チップ2とフィルタ回路(FLTR)3とが、基体1に実装されることによって実現されている。
【0023】
基体1は、電子部品を実装するための部材である。基体1としては、電子部品を載置するための載置面を有する円柱形状または多面体の基台、およびプリント基板等を例示することができる。基体1には、例えば、TIA20に信号Iinを入力するための入力端子INと、TIA20の出力信号Vout,Voutxを出力するための出力端子OUT,OUTXが形成されている。
【0024】
TIA20は、例えば、光ファイバ等の伝送路から送信された光信号からフォトダイオードの光−電流変換によって変換された電流信号Iinを入力し、電流信号Iinを電圧信号Vout,Voutxに変換する回路である。TIA20は、増幅器100として要求される帯域よりも広い帯域を有している。
なお、本実施の形態では、TIA20が、一つの入力端子と一対の差動出力端子を有する単相入力/差動出力の増幅回路であるとして説明する。
【0025】
TIA20は、例えば、公知のHBT(Heterojunction Bipolar Transistor)製造プロセスによって半導体チップ(半導体基板)2上に形成された半導体集積回路として構成されている。
【0026】
半導体チップ2には、TIA20の他に、外部端子として電極TI,TO,TOXが形成されている。電極TI,TO,TOXは、例えば、ボンディングワイヤ(例えば金ワイヤ)を圧着するためのボンディングパッドである。
【0027】
電極T1は、半導体チップ2上においてTIA20の入力端子に接続されるとともに、基体1上において入力端子INと接続されている。電極TOは、半導体チップ2上においてTIA20の一方の差動出力端子(例えば非反転出力端子)に接続され、基体1上において出力端子OUTと接続されている。電極TOXは、半導体チップ2上においてTIA20の他方の差動出力端子(例えば反転出力端子)に接続され、基体1上において出力端子OUTXと接続されている。
【0028】
フィルタ回路3A,3Bは、TIA20の差動出力端子毎に設けられている。具体的に、フィルタ回路3Aは、固定電位VcmとTIA20の一方の差動出力端子(電極TO)との間に接続され、フィルタ回路3Bは、固定電位VcmとTIA20の他方の差動出力端子(電極TOX)との間に接続されている。
【0029】
ここで、固定電位Vcmは、例えばグラウンド電位(0V)であり、信号Vout,Voutx等のAC信号の基準となる電位である。固定電位Vcmが供給される信号配線は、例えば基体1に形成されている。
【0030】
フィルタ回路3A,3Bは、TIA20の高域側の遮断周波数よりも低い遮断周波数を持つ帯域特性を有している。フィルタ回路3A,3Bは、例えばローパスフィルタである。
図2および
図3に、フィルタ回路3A、3Bの回路構成例を示す。
【0031】
図2は、実施の形態1に係る増幅器におけるフィルタ回路の回路構成例を示す図である。
図2に示されるように、フィルタ回路3Aは、固定電位VcmとTIA20の一方の差動出力端子(電極TO)との間に接続されたキャパシタC1を含み、フィルタ回路3Bは、固定電位VcmとTIA20の他方の差動出力端子(電極TOX)との間に接続されたキャパシタC2を含む。キャパシタC1,C2は、例えばチップ型のコンデンサ素子であり、互いの容量値は等しい。
【0032】
図3は、実施の形態1に係る増幅器におけるフィルタ回路の別の回路構成例を示す図である。
図3に示されるように、フィルタ回路3Aは、TIA20の一方の差動出力端子(電極TO)と固定電位Vcmとの間に、直列に接続されたキャパシタC1とインダクタL1とを含む。また、フィルタ回路3Bは、TIA20の他方の差動出力端子(電極TOX)と固定電位Vcmとの間に、直列に接続されたキャパシタC2とインダクタL2とを含む。ここで、例えば、キャパシタC1とキャパシタC2とは互いに容量値が等しく、インダクタL1とインダクタL2とは互いにインダクタンスが等しい。
【0033】
次に、実施の形態1に係る増幅器100の具体的な構成について説明する。
図4は、実施の形態1に係る増幅器100の具体的な構成例を示す図である。
同図には、
図3に示したLC直列回路から成るフィルタ回路3A,3Bを有する増幅器100の具体的な構成が示されている。
【0034】
図4に示されるように、増幅器100は、基体1としての金属材料から構成された基台1Aの載置面1Aa上に、半導体チップ2とキャパシタC1,C2とを実装することによって実現することができる。
【0035】
基台1Aの載置面1Aaは、固定電位Vcm(例えばグラウンド電位)に接続されている。また、基台1Aには、増幅器100の入力端子IN,出力端子OUT,出力端子OUTXとしての、高周波伝送用の高速信号ピン11A,11B,11Cを有している。各高速信号ピン11A〜11Cは、基台1Aの載置面1Aaとその裏面とを貫通して基台1Aに固定されている。なお、各高速信号ピン11A〜11Cは、固定電位Vcmとは絶縁されている。
【0036】
キャパシタC1、C2は、チップ型のコンデンサ素子であって、例えば直方体形状に形成され、コンデンサ素子の複数の面のうち向かい合う一組の面に電極が夫々形成されている。
図4に示すように、キャパシタC1、C2は、一方の電極が形成された面と載置面1Aaとが接するように、例えば半田付けにより基台1Aに接合されている。これにより、キャパシタC1,C2の他方の電極が形成された面は、載置面1Aaとの接合面に対して反対側に配置される。
【0037】
半導体チップ2は、電極TI、TO、TOXが形成された面の反対側の面が載置面1Aaと接するように、基台1Aに固定されている。
【0038】
電極T1は、ボンディングワイヤによって、入力端子INとしての高速信号ピン11Cに接続されている。電極TOは、出力端子OUTとしての高速信号ピン11Aを介してキャパシタC1の他方の電極に接続され、電極TOXは、高速信号ピン11Bを介してキャパシタC2の他方の電極に接続されている。
【0039】
具体的には、
図4に示されるように、電極TOと高速信号ピン11Aとがボンディングワイヤ12Aによって接続されるとともに、その高速信号ピン11AとキャパシタC1の他方の電極とがボンディングワイヤ13Aによって接続される。また、電極TOXと1つの高速信号ピン11Bとがボンディングワイヤ12Bによって接続されるとともに、高速信号ピン11BとキャパシタC2の他方の電極とがボンディングワイヤ13Bによって接続される。
【0040】
ここで、ボンディングワイヤ13A,13Bは、ワイヤ長に比例した寄生インダクタンスが生じ、インダクタンス素子として機能する。すなわち、インダクタL1,L2は、ボンディングワイヤ13A,13Bによって夫々実現され、インダクタL1,L2のインダクタンスは、ボンディングワイヤ13A,13Bの夫々のワイヤ長によって調整することができる。
【0041】
次に、実施の形態1に係る増幅器100の作用および効果について説明する。
図5は、実施の形態1に係る増幅器の周波数特性を示す図である。
同図において、縦軸はトランスインピーダンスのゲインZtを示し、横軸は周波数freq〔GHz〕を示している。また、同図には、
図3に示した増幅器100におけるTIA20の遮断周波数(ゲインがピーク値から3dB低下する周波数であり、以下「−3dB帯域」とも称する。)を9.80GHzとし、キャパシタC1,C2の容量値をC1=C2=500fFとし、インダクタL1,L2のインダクタンスを可変したときの増幅器100の周波数特性が示されている。例えば、参照符号301は、L1=L2=500pHとしたときの増幅器100の周波数特性であり、参照符号302は、L1=L2=750pHとしたときの増幅器100の周波数特性であり、参照符号303は、L1=L2=1nHとしたときの増幅器100の周波数特性である。また、比較例として、フィルタ回路3A、3Bを有していないTIA20のみから成る増幅器の周波数特性を参照符号304によって示している。
【0042】
図5に示されるように、フィルタ回路3A、3Bを有していないTIA20のみから成る増幅器の−3dB帯域が9.80GHzであるのに対し、L1=L2=500pHとした場合には、増幅器100の−3dB帯域が6.07GHzとなる。また、L1=L2=750pHとした場合には、増幅器100の−3dB帯域が6.72GHzとなり、L1=L2=1nHとした場合には、増幅器100の−3dB帯域が7.64GHzとなる。
【0043】
図5から理解されるように、TIA20にフィルタ回路3A、3Bを接続することにより、TIA20による広い帯域がフィルタ回路3A、3Bによって制限されるので、増幅器100の回路全体の帯域を低下させることができる。また、フィルタ回路3A、3BのインダクタL1、L2のインダクタンス値、すなわちフィルタ回路3A、3Bの回路定数を調整することによって、増幅器100の帯域を調整することができる。例えば、増幅器100の帯域を7GHz程度に設定したい場合には、500fFの容量C1、C2と500pH〜750pH程度のインダクタL1、L2を設ければよい。
【0044】
なお、
図5の周波数特性301〜303に示されるように、インダクタンスL1(L2)およびキャパシタC1(C2)よって生じる共振点を超える周波数帯において、再びゲインが高くなる傾向が表れているが、フィルタ回路3A,3Bがない場合の周波数特性304に比べると利得が低いので、後段に接続される回路(例えばリミッティングアンプ等)の帯域が過度に広過ぎない限りは、上記周波数帯域のゲインは抑制され、ノイズ帯域として作用することはないと考えられる。また、インダクタおよびキャパシタはそれ自体がノイズを発生することはないため、LC直列回路で構成したフィルタ回路3A,3Bを接続することによるノイズ特性劣化は、無視できるほど小さいと考えられる。
【0045】
以上のように、実施の形態1に係る増幅器100によれば、増幅器として要求される帯域よりも広い帯域を有するTIA20に、TIA20の高域側の遮断周波数よりも低い遮断周波数を有するフィルタ回路3A,3Bを接続することにより、TIA20の帯域を低減することができるので、要求された帯域を満足する増幅器100を実現することが容易となる。すなわち、半導体チップ2に形成したTIA20の帯域が目標値からずれた場合であっても、半導体チップ2に外付けしたフィルタ回路3A,3Bの回路定数(
図2の場合はキャパシタC1、C2の容量値、
図3の場合は、キャパシタC1,C2およびインダクタL1,L2の何れか一方または双方)を調整することによって、増幅器10の帯域を目標値に合せ込むことができる。これにより、適切な帯域特性を有する増幅器を実現することができるので、光受信器の受信感度を最適化することができる。
【0046】
また、実施の形態1に係る増幅器100によれば、外付けのフィルタ回路3A,3Bによって帯域特性を調整することができるので、TIA20の帯域の設計値と実測値との間に多少のズレが生じた場合であっても、TIA20の半導体チップの製造後において、要求される帯域を満足するように増幅器100の帯域特性を調整することができる。これにより、TIA20の半導体集積回路の設計時に広めに帯域設計を行うことが可能となり、上記半導体集積回路の設計条件を緩和することができる。
【0047】
また、実施の形態1に係る増幅器100によれば、フィルタ回路3A,3Bの回路定数を調節することにより増幅器100の帯域を調節することができるので、一種類の広帯域なTIA20を用意するだけで、様々な帯域要求に応じた増幅器100を実現することができる。例えば、
図4に示したように、フィルタ回路3A,3BのインダクタL1,L2をボンディングワイヤで形成し、ボンディングワイヤのワイヤ長を調節すれば、半導体チップ2とキャパシタC1,C2のコンデンサ素子を交換することなく、様々な帯域の増幅器100を実現することができる。
【0048】
また、実施の形態1に係る増幅器100によれば、半導体プロセスのバラつき等によってTIA20の帯域特性が変動した場合であっても、上述のように後工程(外付けのフィルタ回路3A,3Bの設置)によって必要な帯域を調整すればよいので、TIA20の生産性(歩留まり)が向上し、低コスト化が可能となる。
以上のように、実施の形態1に係る増幅器100によれば、増幅器100の開発費用の削減と開発期間の短縮が可能となる。
【0049】
また、実施の形態1に係る増幅器100によれば、TIA20の差動出力端子にフィルタ回路3A,3Bが接続するので、ESD(Electro−Static Discharge)による電流を逃がす信号経路として、増幅器100の出力信号配線とグラウンドとの間にフィルタ回路3A,3Bを介した信号経路を形成することができる。これによれば、TIA20の出力にフィルタ回路3A,3Bを有していない従来の増幅器のように、ESDによる電流を逃がすための信号経路として、上記出力信号配線とグラウンドとの間にTIAの半導体チップを介した信号経路のみが形成される構成に比べて、ESD耐性の強化を図ることができる。
【0050】
また、実施の形態1に係る増幅器100によれば、増幅器100のインピーダンスマッチングを改善することが可能となる。
【0051】
例えば、
図2に示す増幅器100において、TIA20のパッケージ、ステムや、増幅器100と後段の回路とを接続するフレキシブルケーブル上の配線、およびボンディングワイヤによる信号配線の誘導性が強い場合(特性インピーダンス>50Ωの場合)には、キャパシタから成るフィルタ回路3A,3B(
図3)の容量性が付加されることによって、増幅器100の出力信号配線の全体の特性インピーダンスを50Ωに近づけることができるので、増幅器100と後段の接続される回路とのインピーダンスマッチングを改善することが可能となる。
【0052】
また、例えば、
図3に示す増幅器100において、TIA20の出力パッド(電極TO,TOX)と高速信号ピン11A,11Bとの間のボンディングワイヤ12A,12Bや、高速信号ピン11A,11Bによって形成される増幅器100の出力信号配線の誘導性が強い場合(特性インピーダンス>50Ωの場合)には、直列LCフィルタから成るフィルタ回路3A,3Bの容量性が付加されることによって増幅器100の出力信号配線の全体の特性インピーダンスを50Ωに近づけることができるので、増幅器100の後段に接続される回路とのインピーダンスマッチングを改善することが可能となる。
【0053】
実施の形態1に係る増幅器100において、フィルタ回路3A,3BのインダクタL1,L2をボンディングワイヤで形成することにより、TIA20の半導体チップ2とキャパシタC1,C2のコンデンサ素子を交換することなく、ボンディングワイヤのワイヤ長を調節することで、増幅器100の帯域を調節することができる。
【0054】
また、実施の形態1に係る増幅器100によれば、フィルタ回路3A,3Bを接続することにより、設計値以上の広帯域なTIA20が出来上がった場合等に問題となる発振現象の発生を防ぐことも可能となる。
【0055】
また、実施の形態1に係る増幅器100によれば、フィルタ回路3A,3BをLC直列回路によって実現することにより(
図3参照)、フィルタ回路3A,3Bをキャパシタのみ、または抵抗およびキャパシタによって構成するローパスフィルタに比べて、−6dB/octの傾きよりも急峻なロールオフ特性を実現することができ、より高感度な光受信器を実現することができる。
【0056】
なお、実施の形態1に係る増幅器100として
図4に具体的な構成例を示したが、フィルタ回路3A,3BのインダクタL1,L2をボンディングワイヤによって実現する構成であれば、基台1Aの種類や形状およびコンデンサ素子の位置等は、これに限定されない。
【0057】
≪実施の形態2≫
図6は、実施の形態2に係る増幅器101の具体的な構成例を示す図である。
実施の形態2に係る増幅器101は、TIA20の出力に接続されるLC直列回路から成るフィルタ回路3A,3BのインダクタL1,L2をチップ型のコンデンサ素子内部の寄生インダクタによって実現する点において、実施の形態1に係る増幅器100と相違する。
【0058】
実施の形態2に係る増幅器101の回路構成は、
図3に示した実施の形態1に係る増幅器100と同様である。なお、実施の形態2に係る増幅器101において、実施の形態1に係る増幅器100と同様の構成要素には同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0059】
図6に示すように、増幅器101は、基体1としての基板1Bの載置面1Ba上に、半導体チップ2とキャパシタC1,C2とを実装することによって構成されている。
【0060】
基板1Bは、例えばプリント基板であり、基板1Bの載置面1Baには、金属材料から成る配線パターン15A〜15Eが形成されている。配線パターン15A,15Bは、固定電位Vcm(例えばグラウンド電位)に接続されている。配線パターン15Cは、増幅器101の入力端子INとして機能し、配線パターン15Dは、増幅器101の出力端子OUTとして機能し、配線パターン15Eは、増幅器101の出力端子OUTXとして機能する。
【0061】
キャパシタC1、C2は、例えば、横置き用のチップ型のコンデンサ素子である。上記コンデンサ素子は、例えば直方体形状を有し、長手方向の一端と他端に電極が夫々形成されている。
図6に示すように、キャパシタC1は、一方の電極が配線パターン15A上に配置され、他方の電極が配線パターン15D上に配置されている。また、キャパシタC2は、一方の電極が配線パターン15B上に配置され、他方の電極が配線パターン15E上に配置されている。キャパシタC1、C2と配線パターン15A、15B、15D、および15Eとは、例えば半田付けにより接合されている。
【0062】
半導体チップ2は、電極TI、TO、TOXが形成された面の反対側の面と載置面1Baとが接するように、基板1Bに固定されている。
【0063】
電極T1は、配線パターン15Bにボンディングワイヤによって接続されている。電極TOは、配線パターン15Dにボンディングワイヤ12Aによって接続され、電極TOXは、配線パターン15Eにボンディングワイヤ12Bによって接続されている。
【0064】
ここで、フィルタ回路3A,3BのインダクタL1,L2は、キャパシタC1,C2を構成する横置き用のチップ型のコンデンサ素子の寄生インダクタスによって実現されている。一般に、チップ型のコンデンサ素子は内部に寄生インダクタンスを有している。特に、実装基板等の平面方向に2つの電極を並べて実装する横置き用のチップ型のコンデンサ素子の場合、数百pH程度の大きな寄生インダクタンスを有していることが多い。そこで、実施の形態では、この寄生インダクタンスをインダクタL1,L2として利用する。
【0065】
図6において、配線パターン15Dと配線パターン15Aとの間には、キャパシタC1を構成するチップ型のコンデンサ素子内部の寄生インダクタンスによるインダクタL1とキャパシタC1とから成るLC直列回路が形成される。同様に、配線パターン15Eと配線パターン15Bとの間には、キャパシタC2を構成するチップ型のコンデンサ素子内部の寄生インダクタンスによるインダクタL2とキャパシタC2とから成るLC直列回路が形成される。
【0066】
インダクタL1,L2のインダクタンスは、キャパシタC1,C2を構成する横置き用のチップ型のコンデンサ素子の物理形状によって決定される。一般に、チップ型のコンデンサ素子の物理形状は、ボンディングワイヤの形状よりも加工精度が高いため、より精度の高い安定したインダクタンスを得ることが可能となる。
【0067】
以上、実施の形態2に係る増幅器101によれば、実施の形態1に係る増幅器100と同様に、適切な帯域特性を有する増幅器を実現することができるので、光受信器の受信感度を最適化することができ、増幅器の開発費用の削減と開発期間の短縮が可能となる。
【0068】
また、実施の形態2に係る増幅器101によれば、フィルタ回路3A,3BのインダクタL1,L2を、キャパシタC1,C2を構成する横置き用のチップ型のコンデンサ素子の寄生インダクタンスを利用するので、より精度の高い安定したインダクタL1,L2を実現することができ、増幅器101の帯域をより高精度に定めることが可能となる。
【0069】
また、実施の形態2に係る増幅器101によれば、増幅器101のインピーダンスマッチングを改善することが可能となる。例えば、
図6において、TIA20の出力パッド(電極TO,TOX)と配線パターン15D,15Eとの間のボンディングワイヤや、当該配線パターン15D,15Eによって形成される増幅器101の出力信号配線の誘導性が強い(特性インピーダンス>50Ω)場合には、直列LCフィルタから成るフィルタ回路3A,3Bの容量性が付加されることによって、上記出力信号配線の全体の特性インピーダンスを50Ωに近づけることができるので、増幅器101に接続される後段の回路とのインピーダンスマッチングを改善することが可能となる。
【0070】
なお、実施の形態2に係る増幅器101として
図6に具体的な構成例を示したが、チップ型のコンデンサ素子の寄生インダクタンスを利用したフィルタ回路を用いるのであれば、基体1の種類や形状およびコンデンサ素子の位置等は、これに限定されない。
【0071】
例えば、
図4に示した基台1Aを用い、その基台1Aの載置面1Aaと裏面を貫通する高速信号ピン11A,11BとTIA20の電極TO,TOXとをボンディングワイヤによって夫々接続し、高速信号ピン11A,11Bの上記裏面側にフレキシブルケーブル等を接続することで増幅器を構成し、そのフレキシブルケーブルに形成された差動出力信号線とフレキシブルケーブルに形成されたグラウンド線との間にキャパシタC1,C2として横置き用のチップ型のコンデンサ素子を載置してもよい。
【0072】
≪実施の形態3≫
図7は、実施の形態3に係る増幅器102の回路構成を示す図である。
実施の形態3に係る増幅器102は、TIA20の差動出力端子(電極TO,TOX)に接続されるフィルタ回路3A,3Bの代わりに、上記差動出力端子間にLC直列回路を接続する点において、実施の形態1に係る増幅器100と相違する。
【0073】
なお、実施の形態3に係る増幅器102において、実施の形態1,2に係る増幅器100,101と同様の構成要素には同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0074】
図7に示すように、実施の形態3に係る増幅器102は、TIA20の電極TO,TOX(出力端子OUT,OUTX)との間に接続されたフィルタ回路4を有する。フィルタ回路4は、一端が電極TOおよび出力端子OUTに接続されたインダクタL3と、一端が電極TOXおよび出力端子OUTXに接続されたインダクタL4と、インダクタL3の他端とインダクタL4の他端との間に接続されたキャパシタC3とを含む。
【0075】
フィルタ回路4によれば、キャパシタC3は、実施の形態1,2におけるフィルタ回路3A,3BにおけるキャパシタC1,C2に対して2倍の容量値に見えるため、インダクタL3=L4=L1=L2とし、キャパシタC3=C1/2=C2/2とすることにより、フィルタ回路4はフィルタ回路3A,3Bと同様の帯域特性となる。
【0076】
図8は、実施の形態3に係る増幅器102の具体的な構成を示す図である。
図8に示すように、増幅器102は、基体1としての基板1Cの載置面1Ba上に、半導体チップ2とキャパシタC3とが実装される。
【0077】
基板1Cは、例えばプリント基板であり、基板1Cの載置面1Caには、金属材料から成る配線パターン16A〜16Eが形成されている。配線パターン16A,16Bは、固定電位Vcm(例えばグラウンド電位)に接続されている。
【0078】
キャパシタC3は、例えば横置き用のチップ型のコンデンサ素子である。上記コンデンサ素子は、例えば直方体形状を有し、長手方向の一端と他端に電極が夫々形成されている。
図8に示すように、キャパシタC1は、一方の電極が配線パターン16D上に配置され、他方の電極が配線パターン16E上に配置されている。キャパシタC3と配線パターン16D、16Eとは、例えば半田付けにより接合されている。
【0079】
半導体チップ2は、上述した
図6の場合と同様に、電極TI、TO、TOXが形成された面の反対側の面を下にして基板1Bの載置面1Ba上に固定されている。
【0080】
電極T1は、配線パターン16Cにボンディングワイヤによって接続されている。電極TOは、配線パターン16Dにボンディングワイヤ17Aによって接続され、電極TOXは、配線パターン16Eにボンディングワイヤ17Bによって接続されている。
【0081】
キャパシタC3は、チップ型のコンデンサ素子によって構成される。これにより、実施の形態2に係る増幅器101と同様に、このコンデンサ素子内部の寄生インダクタンスがフィルタ回路4のインダクタL3,L4として機能する。
【0082】
以上、実施の形態3に係る増幅器102によれば、実施の形態1に係る増幅器100と同様に、適切な帯域特性を有する増幅器を実現することができるので、光受信器の受信感度を最適化することができ、増幅器の開発費用の削減と開発期間の短縮が可能となる。
【0083】
また、実施の形態3に係る増幅器102によれば、TIA20に接続するフィルタ回路に必要なコンデンサ素子の数が上記実施の形態1,2の増幅器100,101に比べて半分となるため、より低コストになる。
【0084】
なお、実施の形態3に係る増幅器102として
図8に具体的な構成例を示したが、
図7に示した回路を実現することができる構成であれば、
図8の構成例に限定されない。例えば、
図4に示した金属材料から形成される基台1A上に、キャパシタC3としての横置き用のチップ型のコンデンサ素子とTIA20の半導体チップ2とを載置する構成であってもよい。また、基台1Aの載置面1AaにTIA20の半導体チップ2を載置し、TIA20の差動出力端子と上記載置面1Aaの裏面に形成された高速信号ピンとをフレキシブルケーブル等によって接続することによって増幅器を構成し、そのフレキシブルケーブルに形成されたTIA20の差動出力信号線間にキャパシタC3として横置き用のチップ型のコンデンサ素子を載置してもよい。
【0085】
≪実施の形態4≫
図9は、実施の形態4に係る増幅器103の回路構成を示す図である。
実施の形態4に係る増幅器103は、TIA20の出力端子(電極TO,TOX)に接続されるLC直列回路から成るフィルタ回路のキャパシタC1,C2を可変容量素子によって実現する点において、実施の形態1に係る増幅器100と相違する。
なお、実施の形態4に係る増幅器103において、実施の形態1に係る増幅器100と同様の構成要素には同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0086】
図9に示すように、実施の形態4に係る増幅器103は、TIA20の電極TO(出力端子OUT)と固定電位Vcmとの間に接続されたフィルタ回路5Aと、TIA20の電極TOX(出力端子OUTX)と固定電位Vcmとの間に接続されたフィルタ回路5Bとを有する。
【0087】
フィルタ回路5Aは、一端が電極TOおよび出力端子OUTに接続されたインダクタL1と、一端が固定電位Vcmに接続され、他端がインダクタL1の他端に接続されたキャパシタCV1とを含む。また、フィルタ回路5Bは、一端が電極TOXおよび出力端子OUTXに接続されたインダクタL2と、一端が固定電位Vcmに接続され、他端がインダクタL2の他端に接続されたキャパシタCV2とを含む。
【0088】
ここで、キャパシタCV1,CV2は容量値が可変のコンデンサ素子である。これによれば、キャパシタCV1,CV2を調節することによって、増幅器103の帯域を調整することができる。
【0089】
実施の形態4に係る増幅器103によれば、実施の形態1に係る増幅器100と同様に、適切な帯域特性を有する増幅器を実現することができるので、光受信器の受信感度を最適化することができ、増幅器の開発費用の削減と開発期間の短縮が可能となる。
【0090】
また、実施の形態4に係る増幅器103によれば、キャパシタCV1,CV2の容量値を調節することができるので、フィルタ回路5A,5Bの実装後であっても、増幅器103の帯域を調整することができる。例えば、インダクタL2の製造上または実装上のバラつきによってインダクタンスが変化してしまう場合等において、フィルタ回路4の実装後にキャパシタCV1,CV2の容量値を調節することによって、増幅器103の帯域を一定に保つことができる。また、例えば、光受信器が複数のデータレートの信号を扱うような場合に、増幅器103の帯域を各データレートに最適な帯域特性となるように調整することができる。
【0091】
以上、本発明者らによってなされた発明を実施の形態に基づいて具体的に説明したが、本発明はそれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能であることは言うまでもない。
【0092】
例えば、上記実施の形態では、TIA20が単相入力/差動出力の増幅回路である場合を例示したが、TIA20の入力および出力が“単相”であるか“差動”であるかは特に限定されない。例えば、単相出力のTIAを有する増幅器において、当該TIAの単相出力端子に上記フィルタ回路を接続することにより、上述した増幅器100と同様の効果が得られる。
【0093】
また、上記実施の形態において、フィルタ回路3A,3BのインダクタL1,L2のインダクタンスを変化させることで、増幅器100全体の−3dB帯域を調整する場合を例示したが、これに限られず、キャパシタC1,C2の容量値を変化させてもよい。これによれば、上記と同様に、増幅器100の帯域を調整することができる。
【0094】
また、上記実施の形態において、フィルタ回路5A,5Bを構成するキャパシタC1,C2を可変容量素子で実現する場合を例示したが、
図2に示したフィルタ回路3A,3BのキャパシタC1や、
図7に示したフィルタ回路4のキャパシタC3も同様に、可変容量素子で実現してもよい。
【0095】
また、上記実施の形態において、インダクタンスL1〜L4を、ボンディングワイヤおよびチップ型のコンデンサ素子内部の寄生インダクタンスの何れか一方のインダクタンス成分によって実現する場合を例示したが、これに限られず、ボンディングワイヤおよびチップ型のコンデンサ素子内部の寄生インダクタンスの双方を組み合わせたインダクタンス成分によって実現してもよい。
【0096】
また、上記実施の形態において、キャパシタC1〜C3が横置き用のチップ型のコンデンサ素子である場合を例示したが、寄生インダクタを有するコンデンサ素子であれば、これに限定されるものではない。
【0097】
また、上記実施の形態において、半導体チップ2にTIA20および電極TI,TO,TOXが形成される場合を例示したが、TIA20および電極TI,TO,TOXに加えて、その他の回路や電極等が半導体チップ2に形成されていてもよい。