(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
【0019】
ここに開示される技術は、シリコン基板(特にシリコンウェーハ)を研磨対象物とする研磨に好ましく適用される。ここでいうシリコンウェーハの典型例はシリコン単結晶ウェーハであり、例えば、シリコン単結晶インゴットをスライスして得られたシリコン単結晶ウェーハである。ここに開示される技術における研磨対象面は、典型的には、シリコンからなる表面である。
上記シリコン基板には、ここに開示される予備研磨工程の前に、ラッピングやエッチング、上述したHLMの付与等の、予備研磨工程より上流の工程においてシリコン基板に適用され得る一般的な処理が施されていてもよい。
【0020】
なお、以下の説明において、いずれの予備研磨段階で用いられる研磨スラリーであるか(例えば、第1研磨スラリーか第2研磨スラリーか)を問わず、予備研磨工程において使用される研磨スラリーを包括的に指す用語として「予備研磨スラリー」の語を用いることがある。同様に、いずれの研磨工程に用いられる研磨スラリーであるか(例えば、予備研磨工程に用いられる研磨スラリーであるか仕上げ研磨工程に用いられる研磨スラリーであるか)を問わず、ポリシング工程において使用される研磨スラリーを包括的に指す用語として「研磨スラリー」の語を用いることがある。
【0021】
<予備研磨スラリー>
ここに開示される研磨方法は、予備研磨工程を含む。その予備研磨工程は、研磨対象のシリコン基板に対し、第1研磨スラリーおよび第2研磨スラリーを、この順に、上記シリコン基板の研磨途中で切り替えて供給することを包含する。上記予備研磨工程は、典型的には同一定盤上で、研磨対象物を第1研磨スラリーで研磨する第1段階(第1予備研磨段階)と、該研磨対象物を第2研磨スラリーで研磨する第2段階(第2予備研磨段階)とをこの順に実施する態様で行われる。すなわち、第1段階と第2段階とは、途中で研磨対象物を別の研磨装置または別の定盤に移動させることなく行われる。第1段階および第2段階は、同一の研磨対象物に対して、段階を追って(逐次的に)行われる。ただし、各予備研磨段階において複数の研磨対象物を同時に(並行して)研磨すること、すなわちバッチ式の研磨を行うことは妨げられない。
【0022】
各予備研磨段階において使用される予備研磨スラリーは、それぞれ、典型的には砥粒および水を少なくとも含む。以下、予備研磨スラリーの構成につき説明する。
【0023】
(砥粒)
ここに開示される技術において使用される予備研磨スラリーに含まれる砥粒の材質や性状は特に制限されず、使用目的や使用態様等に応じて適宜選択することができる。砥粒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。砥粒の例としては、無機粒子、有機粒子、および有機無機複合粒子が挙げられる。無機粒子の具体例としては、シリカ粒子、窒化ケイ素粒子、炭化ケイ素粒子等のシリコン化合物粒子や、ダイヤモンド粒子等が挙げられる。有機粒子の具体例としては、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)粒子、ポリアクリロニトリル粒子等が挙げられる。なかでも無機粒子が好ましい。
【0024】
ここに開示される技術において特に好ましい砥粒として、シリカ粒子が挙げられる。ここに開示される技術は、例えば、上記砥粒が実質的にシリカ粒子からなる態様で好ましく実施され得る。ここで「実質的に」とは、砥粒を構成する粒子の95重量%以上(好ましくは98重量%以上、より好ましくは99重量%であり、100重量%であってもよい。)がシリカ粒子であることをいう。
【0025】
シリカ粒子の具体例としては、コロイダルシリカ、フュームドシリカ、沈降シリカ等が挙げられる。シリカ粒子は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。研磨対象物表面にスクラッチを生じにくく、かつ良好な研磨性能(表面粗さを低下させる性能や隆起解消性等)を発揮し得ることから、コロイダルシリカが特に好ましい。コロイダルシリカとしては、例えば、イオン交換法により水ガラス(珪酸Na)を原料として作製されたコロイダルシリカや、アルコキシド法コロイダルシリカ(アルコキシシランの加水分解縮合反応により製造されたコロイダルシリカ)を好ましく採用することができる。コロイダルシリカは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0026】
シリカ粒子を構成するシリカの真比重は、1.5以上であることが好ましく、より好ましくは1.6以上、さらに好ましくは1.7以上である。シリカの真比重の増大により、研磨レートは高くなる傾向にある。かかる観点から、真比重が2.0以上(例えば2.1以上)のシリカ粒子が特に好ましい。シリカの真比重の上限は特に限定されないが、典型的には2.3以下、例えば2.2以下である。シリカの真比重としては、置換液としてエタノールを用いた液体置換法による測定値を採用し得る。
【0027】
各予備研磨スラリーに含まれる砥粒のBET径(D
BET)は、特に限定されない。研磨効率等の観点から、上記BET径は、通常、5nm以上が適当であり、好ましくは10nm以上、より好ましくは20nm以上である。より高い研磨効果(例えば、表面粗さRaの低減、隆起解消性等)を得る観点から、BET径が25nm以上、さらには30nm以上(例えば32nm以上)の砥粒を好ましく用いることができる。また、スクラッチ防止等の観点から、砥粒のBET径は、好ましくは200nm以下、より好ましくは150nm以下、さらに好ましくは100nm以下である。
【0028】
砥粒のBET径は、BET法により測定される比表面積(BET値)から、BET径(nm)=6000/(真密度(g/cm
3)×BET値(m
2/g))の式により算出される粒子径をいう。例えばシリカ粒子の場合、BET径(nm)=2727/BET値(m
2/g)によりBET径を算出することができる。比表面積の測定は、例えば、マイクロメリテックス社製の表面積測定装置、商品名「Flow Sorb II 2300」を用いて行うことができる。
【0029】
各予備研磨スラリーに含まれる砥粒の体積平均径(Mean Volume Diameter;Mv)は、特に限定されない。研磨効率等の観点から、上記Mvは、通常、7nm以上が適当であり、好ましくは15nm以上、より好ましくは25nm以上である。より高い研磨効果(例えば、表面粗さRaの低減、隆起解消性等)を得る観点から、Mvが35nm以上、さらには45nm以上(例えば55nm以上)の砥粒を好ましく用いることができる。また、スクラッチ防止等の観点から、砥粒のMvは、好ましくは400nm以下、より好ましくは300nm以下、さらに好ましくは250nm以下である。
砥粒のMvは、動的光散乱法に基づいて測定される。測定には、例えば、日機装株式会社製の型式「UPA−UT151」を用いることができる。
【0030】
特に限定するものではないが、各予備研磨スラリーに含まれる砥粒の体積基準の90%累積径(D
90)は、スクラッチ防止等の観点から、通常、500nm以下であることが適当であり、好ましくは400nm以下、より好ましくは350nm以下(例えば300nm以下)である。また、研磨効率等の観点から、砥粒のD
90は、好ましくは10nm以上(より好ましくは30nm以上、さらに好ましくは50nm以上)である。
なお、上記体積基準の90%累積径(D
90)とは、動的光散乱法に基づく粒子径測定により得られる体積基準の粒子径分布において、小粒子径側からの累積が90%となる点に相当する粒子径をいう。動的光散乱法に基づく粒子径測定は、例えば、日機装株式会社製の型式「UPA−UT151」を用いて行うことができる。
【0031】
砥粒の形状(外形)は、球形であってもよく、非球形であってもよい。非球形をなす粒子の具体例としては、ピーナッツ形状(すなわち、落花生の殻の形状)、繭型形状、金平糖形状、ラグビーボール形状等が挙げられる。例えば、粒子の多くがピーナッツ形状をした砥粒を好ましく採用し得る。
【0032】
特に限定するものではないが、砥粒の長径/短径比の平均値(平均アスペクト比)は、原理的に1.0以上であり、好ましくは1.05以上、さらに好ましくは1.1以上である。平均アスペクト比の増大によって、より高い隆起解消性が実現され得る。また、砥粒の平均アスペクト比は、スクラッチ低減等の観点から、好ましくは3.0以下であり、より好ましくは2.0以下、さらに好ましくは1.5以下である。
【0033】
砥粒の形状(外形)や平均アスペクト比は、例えば、電子顕微鏡観察により把握することができる。平均アスペクト比を把握する具体的な手順としては、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、独立した粒子の形状を認識できる所定個数(例えば200個)のシリカ粒子について、各々の粒子画像に外接する最小の長方形を描く。そして、各粒子画像に対して描かれた長方形について、その長辺の長さ(長径の値)を短辺の長さ(短径の値)で除した値を長径/短径比(アスペクト比)として算出する。上記所定個数の粒子のアスペクト比を算術平均することにより、平均アスペクト比を求めることができる。
【0034】
各予備研磨スラリーにおける砥粒の含有量は特に制限されない。一態様において、上記含有量は、好ましくは0.05重量%以上、より好ましくは0.1重量%以上、さらに好ましくは0.3重量%以上(例えば0.5重量%以上)である。砥粒の含有量の増大によって、より高い研磨レートが実現され得る。また、研磨対象物からの除去性等の観点から、上記含有量は、通常、10重量%以下が適当であり、好ましくは7重量%以下、より好ましくは5重量%以下、さらに好ましくは3重量%以下(例えば2重量%以下)である。
【0035】
ここに開示される技術は、予備研磨工程において、砥粒A
2のMvが砥粒A
1のMvより小さく、かつ砥粒A
2のMv/D
BETが砥粒A
1のMv/D
BET以下である第2研磨スラリーを使用する態様で好適に実施される。かかる態様によると、良好な隆起解消性と表面粗さの低減とを好適に両立し得る。理論により拘束されることを望むものではないが、このような効果が発揮される理由は、例えば以下のように考えられる。すなわち、砥粒のMv/D
BETがより大きいことは、概して、該砥粒がよりゴツゴツした(より顕著なデコボコのある)外形であったり非球形を呈することを意味するといえる。このため、よりMv/D
BETの高い砥粒を用いることにより、隆起解消性を高め得る一方、表面粗さ(例えば、算術平均粗さRa)は上昇する傾向にある。ここに開示される技術では、予備研磨工程における研磨途中で、研磨対象物に供給する予備研磨スラリーを、砥粒A
1を含む第1研磨スラリーから砥粒A
2を含む研磨スラリーに切り替える。砥粒A
2は、Mv/D
BET(砥粒のデコボコの程度や非球形度)が砥粒A
1と同等以下であり、かつ砥粒A
1よりもMvが小さいため、砥粒A
1に比べて機械的な研磨力が弱く、表面粗さの低減に適している。したがって、上記MvおよびMv/D
BETの関係を満たす第1研磨スラリーおよび第2研磨スラリーをこの順に供給することにより、予備研磨工程において、隆起解消性の向上および表面粗さの低減が効果的に達成されるものと考えられる。また、これらの予備研磨スラリーを同一定盤上において切り替えて供給することにより、作業の煩雑化や設備の複雑化を抑えつつ、上記複数種類の予備研磨スラリーを用いる予備研磨工程を効率よく実施することができる。
【0036】
砥粒A
1のMv/D
BETは、特に限定されないが、通常は1.10以上が適当であり、好ましくは1.30以上、より好ましくは1.50以上、さらに好ましくは1.70以上(例えば1.85以上、さらには1.90以上)である。砥粒A
1のMv/D
BETが大きくなると、機械的な研磨力が増し、隆起解消性が向上する傾向にある。また、砥粒A
1のMv/D
BETは、例えば5.00以下であってよく、通常は3.00以下が適当であり、好ましくは2.50以下、より好ましくは2.40以下、さらに好ましくは2.30以下、特に好ましくは2.10以下(例えば2.00以下)である。砥粒A
1のMv/D
BETが小さくなると、後続する研磨段階または研磨工程において、より低い表面粗さRaが実現されやすくなる傾向にある。
【0037】
砥粒A
2のMv/D
BETは、砥粒A
1のMv/D
BETと同等以下(好ましくは、砥粒A
1のMv/D
BET未満)であればよく、特に限定されない。砥粒A
2のMv/D
BETは、通常は1.00以上、典型的には1.10以上であり、好ましくは1.20以上、より好ましくは1.30以上である。一態様において、砥粒A
2のMv/D
BETは、1.50以上であってよく、さらには1.70以上であってもよい。また、砥粒A
2のMv/D
BETは、通常、2.40以下(典型的には2.20以下)が適当であり、2.00以下(例えば1.90以下)であることが好ましい。一態様において、砥粒A
2のMv/D
BETは、1.80以下であってもよく、さらには1.60以下であってもよい。砥粒A
2のMv/D
BETが小さくなると、より低い表面粗さRaが実現されやすくなる傾向にある。
【0038】
ここに開示される技術の一態様において、砥粒A
1のMv/D
BETから砥粒A
2のMv/D
BETを減算した値は、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.05以上(例えば0.08以上)であり得る。また、砥粒A
1のMv/D
BETから砥粒A
2のMv/D
BETを減算した値は、好ましくは0.60以下、より好ましくは0.50以下であり、0.30以下(例えば0.20以下)であってもよい。上記値が大きすぎないことにより、研磨対象物の表面粗さRaが効果的に低減され得る。
【0039】
砥粒A
1のMvは特に限定されない。砥粒A
1のMvは、隆起解消性等の観点から、通常、60nm以上とすることが適当であり、好ましくは75nm以上、より好ましくは90nm以上である。また、スクラッチ防止等の観点から、砥粒A
1のMvは、好ましくは400nm以下、より好ましくは300nm以下、さらに好ましくは250nm以下である。一態様において、Mvが200nm以下(より好ましくは150nm以下、例えば120nm以下)の砥粒A
1を好ましく用いることができる。
【0040】
砥粒A
2のMvは、砥粒A
1のMvより小さければよく、特に限定されない。より低い表面粗さRaを実現する観点から、砥粒A
2のMvは、好ましくは100nm以下、より好ましくは90nm以下、さらに好ましくは80nm以下(例えば70nm以下)である。また、砥粒A
2のMvは、通常、7nm以上が適当であり、好ましくは15nm以上、より好ましくは25nm以上である。一態様において、Mvが35nm以上、さらには45nm以上(例えば55nm以上)の砥粒A
2を好ましく用いることができる。
【0041】
砥粒A
2のMvに対する砥粒A
1のMvの倍率(すなわち、砥粒A
2のMvに対する砥粒A
1のMvの比)は、1.00倍より大きければよく、特に限定されない。上記倍率は、通常、1.05倍以上とすることが適当であり、1.20倍以上が好ましく、1.30倍以上がより好ましく、1.40倍以上(例えば1.50倍以上)がさらに好ましい。また、上記倍率は、通常、5.00倍以下が適当であり、4.00倍以下が好ましく、3.50倍以下がより好ましい。ここに開示される技術は、上記倍率が3.00倍以下(より好ましくは2.50倍以下、さらに好ましくは2.00倍以下、例えば1.80倍以下)である態様で好ましく実施され得る。上記倍率が大きすぎず、かつ小さすぎないことにより、隆起解消性の向上と表面粗さRaの低減とが好適に両立する傾向にある。
【0042】
砥粒A
1のBET径(D
BET)は特に限定されない。砥粒A
1のBET径は、隆起解消性等の観点から、通常、30nm以上が適当であり、好ましくは40nm以上、より好ましくは45nm以上、(例えば47nm以上、さらには50nm以上)である。また、スクラッチ防止等の観点から、砥粒A
1のBET径は、好ましくは200nm以下、より好ましくは150nm以下、さらに好ましくは100nm以下である。
【0043】
砥粒A
2のBET径(D
BET)は特に限定されないが、通常は、砥粒A
1のBET径よりも小さいことが好ましい。一態様において、砥粒A
2のBET径は、好ましくは80nm以下、より好ましくは60nm以下、さらに好ましくは50nm以下である。砥粒A
2のBET径が40nm以下であってもよい。砥粒A
2のBET径が小さくなると、より表面粗さRaの低い表面が実現されやすくなる傾向にある。また、研磨能率の観点から、砥粒A
2のBET径は、通常、5nm以上が適当であり、好ましくは10nm以上、より好ましくは20nm以上(例えば30nm以上)である。
【0044】
砥粒A
1の90%累積径(D
90)は特に限定されない。砥粒A
1の90%累積径は、隆起解消性等の観点から、通常、50nm以上が適当であり、好ましくは70nm以上、より好ましくは100nm以上、さらに好ましくは120nm以上(例えば140nm以上)である。また、スクラッチ防止等の観点から、砥粒A
1の90%累積径は、好ましくは350nm以下、より好ましくは300nm以下である。一態様において、90%累積径が250nm以下(より好ましくは200nm以下)である砥粒A
1を好ましく使用し得る。
【0045】
砥粒A
2の90%累積径(D
90)は特に限定されないが、通常は、砥粒A
1の90%累積径よりも小さいことが好ましい。一態様において、砥粒A
2の90%累積径は、好ましくは110nm以下、より好ましくは100nm以下である。砥粒A
2の90%累積径は、90nm以下であってもよく、さらには80nm以下であってもよい。砥粒A
2の90%累積径が小さくなると、より表面粗さRaの低い表面が実現されやすくなる傾向にある。また、研磨能率の観点から、砥粒A
2の90%累積径は、通常、10nm以上が適当であり、好ましくは20nm以上、より好ましくは30nm以上である。一態様において、90%累積径が40nm以上、さらには55nm以上(例えば70nm以上)の砥粒A
2を好ましく用いることができる。
【0046】
砥粒A
2のD
90/Mvは、特に限定されないが、通常は2.00以下が適当であり、好ましくは1.70以下、より好ましくは1.50以下である。一態様において、砥粒A
2のD
90/Mvは、1.40以下であってもよく、さらには1.30以下(例えば1.20以下)であってもよい。砥粒A
2のD
90/Mvが小さくなると、研磨対象物の平坦度が向上する傾向にある。ここでいう平坦度は、例えば、SEMI(Semiconductor equipment and materials international)規格におけるGBIR(Global backside ideal range)として評価され得る。GBIRは、ウェーハの裏面を平坦なチャック面に全面吸着させ、該裏面を基準面として、ウェーハの全面について上記基準面からの高さを測定し、最高高さから最低高さまでの距離を表したものである。なお、砥粒のD
90/Mvがより小さいことは、概して、砥粒の粒子径分布がよりシャープであることを意味する。砥粒A
2のD
90/Mvは、該砥粒の入手容易性等の観点から、好ましくは1.05以上、より好ましくは1.10以上(例えば1.15以上)である。
【0047】
砥粒A
1のD
90/Mvは、特に限定されないが、通常は1.10以上が適当であり、好ましくは1.20以上、さらに好ましくは1.30以上である。砥粒A
1のD
90/Mvが小さすぎないことにより、隆起解消性と平坦度の向上とを両立しやすくなる傾向にある。また、砥粒A
1のD
90/Mvは、通常、2.00以下が適当であり、好ましくは1.70以下である。砥粒A
1のD
90/Mvが大きすぎないことにより、後続する研磨段階または研磨工程において、より低い表面粗さRaが実現されやすくなる傾向にある。
【0048】
ここに開示される技術は、砥粒A
2のD
90/D
BETが砥粒A
1のD90/D
BETよりも小さい態様で好ましく実施することができる。このような関係を満たす砥粒A
1,A
2をそれぞれ含有する第1研磨スラリーおよび第2研磨スラリーをこの順に使用することにより、予備研磨工程において、隆起解消性と表面粗さRaの低減とを好適に両立し得る。特に限定するものではないが、砥粒A
1のD
90/D
BETは、例えば2.3以上であってよく、2.5以上、さらには2.8以上であってもよい。砥粒A
1のD
90/D
BETは、例えば5.0以下であり得る。また、砥粒A
2のD
90/D
BETは、砥粒A
1のD
90/D
BETよりも小さく、例えば2.8以下(好ましくは2.5以下、さらには2.3以下)であり得る。砥粒A
2のD
90/D
BETは、例えば1.5以上であり得る。
【0049】
なお、砥粒の体積平均径(Mv)、90%累積径(D
90)およびBET径(D
BET)ならびにこれらの値から算出されるMv/D
BET、D
90/MvおよびD
90/D
BETは、例えば、公知の技術による製造、市販品の選択、互いに粒子径分布の異なる2種以上の砥粒のブレンド等の公知の手法から1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて採用することによって調節することができる。
【0050】
(水)
予備研磨スラリーは、典型的には水を含む。水としては、イオン交換水(脱イオン水)、純水、超純水、蒸留水等を好ましく用いることができる。使用する水は、予備研磨スラリーに含有される他の成分の働きが阻害されることを極力回避するため、例えば遷移金属イオンの合計含有量が100ppb以下であることが好ましい。例えば、イオン交換樹脂による不純物イオンの除去、フィルタによる異物の除去、蒸留等の操作によって水の純度を高めることができる。
【0051】
(塩基性化合物)
予備研磨スラリーは、好ましくは塩基性化合物を含有する。本明細書において塩基性化合物とは、水に溶解して水溶液のpHを上昇させる機能を有する化合物を指す。塩基性化合物としては、窒素を含む有機または無機の塩基性化合物、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ土類金属の水酸化物、各種の炭酸塩や炭酸水素塩等を用いることができる。窒素を含む塩基性化合物の例としては、第四級アンモニウム化合物、第四級ホスホニウム化合物、アンモニア、アミン(好ましくは水溶性アミン)等が挙げられる。このような塩基性化合物は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0052】
アルカリ金属の水酸化物の具体例としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等が挙げられる。炭酸塩または炭酸水素塩の具体例としては、炭酸水素アンモニウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素カリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム等が挙げられる。アミンの具体例としては、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン、モノエタノールアミン、N−(β−アミノエチル)エタノールアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、無水ピペラジン、ピペラジン六水和物、1−(2−アミノエチル)ピペラジン、N−メチルピペラジン、グアニジン、イミダゾールやトリアゾール等のアゾール類等が挙げられる。第四級ホスホニウム化合物の具体例としては、水酸化テトラメチルホスホニウム、水酸化テトラエチルホスホニウム等の水酸化第四級ホスホニウムが挙げられる。
【0053】
第四級アンモニウム化合物としては、テトラアルキルアンモニウム塩、ヒドロキシアルキルトリアルキルアンモニウム塩等の第四級アンモニウム塩(典型的には強塩基)を好ましく用いることができる。かかる第四級アンモニウム塩におけるアニオン成分は、例えば、OH
−、F
−、Cl
−、Br
−、I
−、ClO
4−、BH
4−等であり得る。なかでも好ましい例として、アニオンがOH
−である第四級アンモニウム塩、すなわち水酸化第四級アンモニウムが挙げられる。水酸化第四級アンモニウムの具体例としては、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラプロピルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム、水酸化テトラペンチルアンモニウムおよび水酸化テトラヘキシルアンモニウム等の水酸化テトラアルキルアンモニウム;水酸化2−ヒドロキシエチルトリメチルアンモニウム(コリンともいう。)等の水酸化ヒドロキシアルキルトリアルキルアンモニウム;等が挙げられる。これらのうち水酸化テトラアルキルアンモニウムが好ましく、なかでも水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)が好ましい。
【0054】
予備研磨スラリーは、上述のような第四級アンモニウム化合物(例えば、TMAH等の水酸化テトラアルキルアンモニウム)と弱酸塩とを組み合わせて含み得る。弱酸塩としては、シリカ粒子を用いる研磨に使用可能であって、第四級アンモニウム化合物との組合せで所望の緩衝作用を発揮し得るものを適宜選択することができる。弱酸塩は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。弱酸塩の具体例としては、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、オルト珪酸ナトリウム、オルト珪酸カリウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、プロピオン酸ナトリウム、プロピオン酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸水素カルシウム、酢酸カルシウム、プロピオン酸カルシウム、酢酸マグネシウム、プロピオン酸マグネシウム、プロピオン酸亜鉛、酢酸マンガン、酢酸コバルト等が挙げられる。アニオン成分が炭酸イオンまたは炭酸水素イオンである弱酸塩が好ましく、アニオン成分が炭酸イオンである弱酸塩が特に好ましい。また、カチオン成分としては、カリウム、ナトリウム等のアルカリ金属イオンが好適である。特に好ましい弱酸塩として、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウムおよび炭酸水素カリウムが挙げられる。なかでも炭酸カリウム(K
2CO
3)が好ましい。
【0055】
(キレート剤)
予備研磨スラリーには、任意成分として、キレート剤を含有させることができる。キレート剤は、予備研磨スラリー中に含まれ得る金属不純物と錯イオンを形成してこれを捕捉することにより、金属不純物による研磨対象物の汚染を抑制する働きをする。キレート剤の例としては、アミノカルボン酸系キレート剤および有機ホスホン酸系キレート剤が挙げられる。アミノカルボン酸系キレート剤の例には、エチレンジアミン四酢酸、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム、ニトリロ三酢酸、ニトリロ三酢酸ナトリウム、ニトリロ三酢酸アンモニウム、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸ナトリウム、ジエチレントリアミン五酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸ナトリウム、トリエチレンテトラミン六酢酸およびトリエチレンテトラミン六酢酸ナトリウムが含まれる。有機ホスホン酸系キレート剤の例には、2−アミノエチルホスホン酸、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸、アミノトリ(メチレンホスホン酸)、エチレンジアミンテトラキス(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)、エタン−1,1−ジホスホン酸、エタン−1,1,2−トリホスホン酸、エタン−1−ヒドロキシ−1,1−ジホスホン酸、エタン−1−ヒドロキシ−1,1,2−トリホスホン酸、エタン−1,2−ジカルボキシ−1,2−ジホスホン酸、メタンヒドロキシホスホン酸、2−ホスホノブタン−1,2−ジカルボン酸、1−ホスホノブタン−2,3,4−トリカルボン酸およびα−メチルホスホノコハク酸が含まれる。これらのうち有機ホスホン酸系キレート剤がより好ましい。なかでも好ましいものとして、エチレンジアミンテトラキス(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)およびジエチレントリアミン五酢酸が挙げられる。特に好ましいキレート剤として、エチレンジアミンテトラキス(メチレンホスホン酸)およびジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)が挙げられる。キレート剤は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0056】
(その他の成分)
予備研磨スラリーは、本発明の効果が著しく妨げられない範囲で、水溶性高分子、界面活性剤、有機酸、有機酸塩、無機酸、無機酸塩、防腐剤、防カビ剤等の、研磨スラリー(典型的には、シリコン基板のポリシング工程に用いられる研磨スラリー)に用いられ得る公知の添加剤を、必要に応じてさらに含有してもよい。
【0057】
予備研磨スラリーは、酸化剤を実質的に含まないことが好ましい。予備研磨スラリー中に酸化剤が含まれていると、当該予備研磨スラリーが研磨対象物(ここではシリコン基板)に供給されることで該研磨対象物の表面が酸化されて酸化膜が生じ、これにより研磨レートが低下してしまうことがあり得るためである。ここでいう酸化剤の具体例としては、過酸化水素(H
2O
2)、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム、ジクロロイソシアヌル酸ナトリウム等が挙げられる。なお、予備研磨スラリーが酸化剤を実質的に含まないとは、少なくとも意図的には酸化剤を含有させないことをいう。
【0058】
(pH)
予備研磨スラリーのpHは、典型的には8.0以上であり、好ましくは8.5以上、より好ましくは9.0以上、さらに好ましくは9.5以上、例えば10.0以上である。予備研磨スラリーのpHが高くなると、研磨レートや隆起解消性が向上する傾向にある。一方、砥粒(例えばシリカ粒子)の溶解を防ぎ、該砥粒による機械的な研磨作用の低下を抑制する観点から、予備研磨スラリーのpHは、12.0以下であることが適当であり、11.8以下であることが好ましく、11.5以下であることがより好ましく、11.0以下であることがさらに好ましい。後述する仕上げ研磨スラリーにおいても同様のpHを好ましく採用し得る。
【0059】
なお、ここに開示される技術において、液状の組成物(研磨スラリー、その濃縮液、後述するリンス液等であり得る。)のpHは、pHメーター(例えば、堀場製作所製のガラス電極式水素イオン濃度指示計(型番F−23))を使用し、標準緩衝液(フタル酸塩pH緩衝液 pH:4.01(25℃)、中性リン酸塩pH緩衝液 pH:6.86(25℃)、炭酸塩pH緩衝液 pH:10.01(25℃))を用いて3点校正した後で、ガラス電極を測定対象の組成物に入れて、2分以上経過して安定した後の値を測定することにより把握することができる。
【0060】
ここに開示される予備研磨工程は、研磨対象物を第1研磨スラリーで研磨する第1段階(第1予備研磨段階)の前に、該第1段階と同一定盤上で研磨対象物に研磨スラリーEiを供給して行われる予備研磨段階Eiを含んでもよい。かかる予備研磨工程は、上記研磨対象物の研磨途中で、該研磨対象物に供給する研磨スラリーを研磨スラリーEiから第1研磨スラリーに切り替える態様で好ましく実施され得る。また、ここに開示される予備研磨工程は、研磨対象物を第2研磨スラリーで研磨する第2段階(第2予備研磨段階)の後に、該第2段階と同一定盤上で研磨対象物に研磨スラリーFiを供給して行われる予備研磨段階Fiを含んでもよい。かかる予備研磨工程は、上記研磨対象物の研磨途中で、該研磨対象物に供給する研磨スラリーを第2研磨スラリーから研磨スラリーFiに切り替える態様で好ましく実施され得る。予備研磨段階Eiおよび予備研磨段階Fiは、それぞれ、二以上の研磨段階を含んでいてもよい。
【0061】
ここに開示される技術において、同一定盤上で行われる複数の予備研磨段階(第1段階および第2段階を少なくとも含む。)の数は、2段階であってもよく、3段階以上であってもよい。予備研磨工程が過度に煩雑になることを避ける観点から、通常は、上記予備研磨段階の数を5段階以下とすることが適当である。3段階以上の予備研磨段階を含む予備研磨工程は、上記第1段階および上記第2段階が、最初の2つの段階であるか、または最後の2つの段階である態様で好ましく実施され得る。
【0062】
同一定盤上で行われる他の予備研磨段階(予備研磨段階Eiや予備研磨段階Fi)を含む予備研磨工程において、それらの研磨段階に用いられる予備研磨スラリーは、順次、研磨途中で切り替えて研磨対象物に供給される。特に限定するものではないが、各研磨段階に用いられる予備研磨スラリーは、各切替えの後に供給される予備研磨スラリーに含まれる砥粒のMvが、該切替え前の予備研磨スラリーに含まれる砥粒のMvよりも小さくなるように構成することが好ましい。また、各切替えの後に供給される予備研磨スラリーに含まれる砥粒のMv/D
BETが、該切替え前の予備研磨スラリーに含まれる砥粒のMv/D
BETと同等以下となるように(より好ましくは、より小さくなるように)構成することが好ましい。このことによって、予備研磨工程における表面粗さRaの低減および隆起の解消が効率よく行われ得る。
【0063】
上記予備研磨工程は、同一定盤上で行われる複数の予備研磨段階の他に、別の定盤(同一の研磨装置の有する別の定盤、または別の研磨装置の定盤)上で行われる1または2以上の予備研磨段階をさらに含んでもよい。
【0064】
(リンス液)
ここに開示される技術における予備研磨工程は、同一定盤上で行われる複数の予備研磨段階のうち最後の予備研磨段階の後に、砥粒を含まないリンス液で研磨対象物をリンスする段階を含み得る。上記リンス液としては、例えば水を用いることができる。また、予備研磨スラリーまたは後述する仕上げ研磨スラリーに使用し得る成分のうち砥粒以外の任意の成分を水中に含むリンス液を用いてもよい。そのようなリンス液の一好適例として、水中に塩基性化合物(例えばアンモニア)および水溶性高分子(例えば、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体)を含むリンス液が挙げられる。上記リンスは、上記最後の予備研磨段階と同一定盤上において行うことができる。
【0065】
<仕上げ研磨スラリー>
予備研磨工程を終えた研磨対象物は、典型的には、さらに仕上げ研磨工程に供される。したがって、この明細書に開示される事項には、ここに開示されるいずれかの研磨方法における予備研磨工程と、該予備研磨工程の後に行われる仕上げ研磨工程と、を含むシリコン基板の研磨方法、該研磨方法を適用することを特徴とする研磨物の製造方法、および上記研磨方法または製造方法に好ましく用いられ得る研磨用組成物セットが包含される。
【0066】
仕上げ研磨工程は、通常、予備研磨工程とは別の研磨装置を用いて、研磨対象物に仕上げ研磨スラリーを供給して行われる。仕上げ研磨工程は、同一の定盤上または異なる定盤上で行われる複数の仕上げ研磨段階を含んでいてもよい。
【0067】
仕上げ研磨工程において使用される仕上げ研磨スラリーは、典型的には、砥粒および水を含む。水としては、予備研磨スラリーに用いられ得る水と同様のものを用いることができる。
【0068】
(砥粒)
仕上げ研磨スラリー用の砥粒としては、予備研磨スラリーと同様、シリカ粒子を好ましく使用し得る。シリカ粒子としてはコロイダルシリカが特に好ましく、例えば、アルコキシド法コロイダルシリカ(アルコキシシランの加水分解縮合反応により製造されたコロイダルシリカ)を好ましく採用することができる。コロイダルシリカは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。シリカ粒子の好ましい真比重、砥粒の外形および平均アスペクト比については、予備研磨スラリーの砥粒と同様であるので、重複する記載は省略する。
【0069】
仕上げ研磨スラリーに含まれる砥粒(典型的にはシリカ粒子)のBET径は特に限定されない。研磨効率等の観点から、上記BETは、好ましくは5nm以上、より好ましくは10nm以上である。より高い研磨効果(例えば、ヘイズの低減、欠陥の除去等の効果)を得る観点から、BET径は、15nm以上が好ましく、20nm以上(例えば20nm超)がより好ましい。また、より平滑性の高い表面が得られやすいという観点から、砥粒のBET径は、好ましくは100nm以下、より好ましくは50nm以下、さらに好ましくは40nm以下である。より高品位の表面を得やすい等の観点から、BET径が35nm以下(典型的には35nm未満、好ましくは32nm未満、例えば30nm未満)の砥粒を用いてもよい。
【0070】
仕上げ研磨スラリーにおける砥粒の含有量は特に制限されない。一態様において、上記含有量は、好ましくは0.01重量%以上、より好ましくは0.03重量%以上、さらに好ましくは0.05重量%以上(例えば0.08重量%以上)とすることができる。砥粒の含有量の増大によって、より高い研磨効果が実現され得る。また、研磨対象物からの除去性等の観点から、仕上げ研磨スラリーの砥粒含有量は、通常、7重量%以下が適当であり、好ましくは5重量%以下、より好ましくは3重量%以下、さらに好ましくは2重量%以下(例えば1重量%以下)である。
【0071】
(塩基性化合物)
仕上げ研磨スラリーは、好ましくは塩基性化合物を含有する。塩基性化合物としては、予備研磨スラリーに使用し得る塩基性化合物として例示したものの1種または2種以上を使用し得る。なかでもアンモニアが好ましい。
【0072】
(水溶性高分子)
好ましい一態様において、仕上げ研磨スラリーは水溶性高分子を含み得る。水溶性高分子の種類は特に制限されず、研磨スラリーの分野において公知の水溶性高分子のなかから適宜選択することができる。水溶性高分子は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0073】
上記水溶性高分子は、分子中に、カチオン性基、アニオン性基およびノニオン性基から選ばれる少なくとも1種の官能基を有するものであり得る。上記水溶性高分子は、例えば、分子中に水酸基、カルボキシ基、アシルオキシ基、スルホ基、第1級アミド構造、複素環構造、ビニル構造、ポリオキシアルキレン構造等を有するものであり得る。凝集物の低減や洗浄性向上等の観点から、上記水溶性高分子としてノニオン性のポリマーを好ましく採用し得る。
【0074】
水溶性高分子の例としては、セルロース誘導体、デンプン誘導体、オキシアルキレン単位を含むポリマー、窒素原子を含有するポリマー、ポリビニルアルコール等が挙げられる。なかでも、セルロース誘導体、デンプン誘導体が好ましく、セルロース誘導体がより好ましい。
【0075】
セルロース誘導体は、主たる繰返し単位としてβ−グルコース単位を含むポリマーである。セルロース誘導体の具体例としては、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等が挙げられる。なかでもHECが好ましい。
【0076】
デンプン誘導体は、主たる繰返し単位としてα−グルコース単位を含むポリマーである。デンプン誘導体の具体例としては、アルファ化デンプン、プルラン、カルボキシメチルデンプン、シクロデキストリン等が挙げられる。なかでもプルランが好ましい。
【0077】
オキシアルキレン単位を含むポリマーとしては、ポリエチレンオキサイド(PEO)や、エチレンオキサイド(EO)とプロピレンオキサイド(PO)またはブチレンオキサイド(BO)とのブロック共重合体、EOとPOまたはBOとのランダム共重合体等が例示される。そのなかでも、EOとPOのブロック共重合体またはEOとPOのランダム共重合体が好ましい。EOとPOとのブロック共重合体は、PEOブロックとポリプロピレンオキサイド(PPO)ブロックとを含むジブロック共重合体、トリブロック共重合体等であり得る。上記トリブロック共重合体の例には、PEO−PPO−PEO型トリブロック共重合体およびPPO−PEO−PPO型トリブロック共重合体が含まれる。通常は、PEO−PPO−PEO型トリブロック共重合体がより好ましい。
EOとPOとのブロック共重合体またはランダム共重合体において、該共重合体を構成するEOとPOとのモル比(EO/PO)は、水への溶解性や洗浄性等の観点から、1より大きいことが好ましく、2以上であることがより好ましく、3以上(例えば5以上)であることがさらに好ましい。
【0078】
窒素原子を含有するポリマーとしては、主鎖に窒素原子を含有するポリマーおよび側鎖官能基(ペンダント基)に窒素原子を有するポリマーのいずれも使用可能である。主鎖に窒素原子を含有するポリマーの例としては、N−アシルアルキレンイミン型モノマーの単独重合体および共重合体が挙げられる。N−アシルアルキレンイミン型モノマーの具体例としては、N−アセチルエチレンイミン、N−プロピオニルエチレンイミン等が挙げられる。ペンダント基に窒素原子を有するポリマーとしては、例えばN−ビニル型のモノマー単位を含むポリマー等が挙げられる。例えば、N−ビニルピロリドンの単独重合体および共重合体等を採用し得る。
【0079】
水溶性高分子としてポリビニルアルコールを用いる場合、該ポリビニルアルコールのけん化度は特に限定されない。一態様において、けん化度が90モル%以上(典型的には95モル%以上、例えば98モル%以上)のポリビニルアルコールを用いることができる。
【0080】
ここに開示される技術において、水溶性高分子の分子量は特に限定されない。水溶性高分子の重量平均分子量(Mw)は、例えば200×10
4以下とすることができ、通常は150×10
4以下(典型的には100×10
4以下)が適当である。分散安定性等の観点から、上記Mwは、90×10
4以下が好ましく、80×10
4以下がより好ましく、60×10
4以下がさらに好ましい。また、研磨後における研磨対象物の表面保護性向上の観点から、通常は、Mwが1×10
4以上が適当であり、10×10
4以上がより好ましく、20×10
4以上がさらに好ましい。上記Mwは、セルロース誘導体(例えばHEC)に対して特に好ましく適用され得る。
【0081】
水溶性高分子の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との関係は特に制限されない。凝集物の発生防止等の観点から、例えば分子量分布(Mw/Mn)が10.0以下であるものが好ましく、7.0以下であるものがさらに好ましい。
【0082】
なお、水溶性高分子のMwおよびMnとしては、水系のゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)に基づく値(水系、ポリエチレンオキサイド換算)を採用することができる。
【0083】
(界面活性剤)
好ましい一態様において、仕上げ研磨スラリーは、界面活性剤(典型的には、Mwが分子量1×10
4未満の水溶性有機化合物)を含み得る。界面活性剤は、研磨スラリーまたはその濃縮液の分散安定性向上に寄与し得る。界面活性剤としては、アニオン性またはノニオン性のものを好ましく採用し得る。低起泡性やpH調整の容易性の観点から、ノニオン性の界面活性剤がより好ましい。例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のオキシアルキレン重合体;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリルエーテル脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等のポリオキシアルキレン付加物;複数種のオキシアルキレンの共重合体(例えば、ジブロック型共重合体、トリブロック型共重合体、ランダム型共重合体、交互共重合体);等のノニオン性界面活性剤が挙げられる。界面活性剤は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0084】
界面活性剤のMwは、典型的には1×10
4未満であり、研磨スラリーの濾過性や研磨対象物の洗浄性等の観点から9500以下が好ましい。また、界面活性剤のMwは、典型的には200以上であり、ヘイズ低減効果等の観点から250以上が好ましく、300以上(例えば500以上)がより好ましい。界面活性剤のMwとしては、GPCにより求められる値(水系、ポリエチレングリコール換算)または化学式から算出される値を採用することができる。なお、ここに開示される技術は、上述のような界面活性剤を実質的に含まない仕上げ研磨スラリーを用いる態様で実施することができる。
【0085】
(その他の成分)
仕上げ研磨スラリーは、本発明の効果が著しく妨げられない範囲で、キレート剤、有機酸、有機酸塩、無機酸、無機酸塩、防腐剤、防カビ剤等の、研磨スラリー(典型的には、シリコン基板のポリシング工程に用いられる研磨スラリー)に用いられ得る公知の添加剤を、必要に応じてさらに含有してもよい。キレート剤としては、予備研磨スラリーに用いられ得るキレート剤と同様のものを使用し得る。ここに開示される技術は、キレート剤を実質的に含まない仕上げ研磨スラリーを用いる態様で実施することができる。
【0086】
なお、仕上げ研磨スラリーは、予備研磨スラリーと同様、酸化剤を実質的に含まないことが好ましい。
【0087】
<研磨>
予備研磨工程および仕上げ研磨工程における研磨は、例えば以下の操作を含む態様で行うことができる。
すなわち、各研磨工程または各研磨段階で用いられる研磨スラリーを用意する。次いで、その研磨スラリー(ワーキングスラリー)を研磨対象物に供給し、常法により研磨する。例えば、研磨対象物を研磨装置にセットし、該研磨装置の定盤(研磨定盤)に固定された研磨パッドを通じて上記研磨対象物の表面(研磨対象面)に研磨スラリーを供給する。典型的には、上記研磨スラリーを連続的に供給しつつ、研磨対象物の表面に研磨パッドを押しつけて両者を相対的に移動(例えば回転移動)させる。
【0088】
各研磨スラリーは、研磨対象物に供給される前には濃縮された形態(すなわち、研磨スラリーの濃縮液の形態であり、研磨スラリーの原液としても把握され得る。)であってもよい。このように濃縮された形態の研磨スラリーは、製造、流通、保存等の際における利便性やコスト低減等の観点から有利である。濃縮倍率は特に限定されず、例えば、体積換算で2倍〜100倍程度とすることができ、通常は5倍〜50倍程度(例えば10倍〜40倍程度)が適当である。
【0089】
このような濃縮液は、所望のタイミングで希釈して研磨スラリー(ワーキングスラリー)を調製し、該研磨スラリーを研磨対象物に供給する態様で使用することができる。上記希釈は、例えば、上記濃縮液に水を加えて混合することにより行うことができる。
【0090】
上記濃縮液における砥粒の含有量は、例えば50重量%以下とすることができる。上記濃縮液の取扱い性(例えば、砥粒の分散安定性や濾過性)等の観点から、通常、上記濃縮液における砥粒の含有量は、好ましくは45重量%以下、より好ましくは40重量%以下である。また、製造、流通、保存等の際における利便性やコスト低減等の観点から、砥粒の含有量は、例えば0.5重量%以上とすることができ、好ましくは1重量%以上、より好ましくは3重量%以上(例えば4重量%以上)である。好ましい一態様において、砥粒の含有量は、5重量%以上としてもよく、10重量%以上(例えば15重量%以上、または20重量%以上、または30重量%以上)としてもよい。
【0091】
ここに開示される技術において使用される研磨スラリーまたはその濃縮液は、一剤型であってもよく、二剤型を始めとする多剤型であってもよい。例えば、研磨スラリーの構成成分のうち少なくとも砥粒を含むパートAと、残りの成分を含むパートBとを混合し、必要に応じて適切なタイミングで希釈することにより研磨スラリーが調製されるように構成されていてもよい。
【0092】
研磨スラリーまたはその濃縮液の調製方法は特に限定されない。例えば、翼式攪拌機、超音波分散機、ホモミキサー等の周知の混合装置を用いて、研磨スラリーまたはその濃縮液に含まれる各成分を混合するとよい。これらの成分を混合する態様は特に限定されず、例えば全成分を一度に混合してもよく、適宜設定した順序で混合してもよい。
【0093】
各研磨工程または各研磨段階において、研磨スラリーは、いったん研磨に使用したら使い捨てにする態様(いわゆる「かけ流し」)で使用されてもよいし、循環して繰り返し使用されてもよい。研磨スラリーを循環使用する方法の一例として、研磨装置から排出される使用済みの研磨スラリーをタンク内に回収し、回収した研磨スラリーを再度研磨装置に供給する方法が挙げられる。
【0094】
各定盤において用いられる研磨パッドは特に限定されない。例えば、発泡ポリウレタンタイプ、不織布タイプ、スウェードタイプ等の研磨パッドを用いることができる。各研磨パッドは、砥粒を含んでもよく、砥粒を含まなくてもよい。
【0095】
研磨装置としては、研磨対象物の両面を同時に研磨する両面研磨装置を用いてもよく、研磨対象物の片面のみを研磨する片面研磨装置を用いてもよい。特に限定するものではないが、例えば、予備研磨工程においては両面研磨装置(例えば、バッチ式の両面研磨装置)を好ましく採用し得る。また、仕上げ研磨工程において片面研磨装置を好ましく採用し得る。各研磨装置の備える定盤の数は、1でもよく2以上でもよい。各研磨装置は、一度に一枚の研磨対象物を研磨するように構成された枚葉式の研磨装置でもよく、同一の定盤上で複数の研磨対象物を同時に研磨し得るバッチ式の研磨装置でもよい。
【0096】
好ましい一態様において、予備研磨工程において使用する研磨装置は、同一の定盤に供給される研磨スラリーを途中で(典型的には、上記同一の定盤上で行われる一連の予備研磨段階において、一の予備研磨段階から次の予備研磨段階に移るタイミングで)切り替え得るように構成されている。このような研磨装置を用いることにより、同一の定盤上で複数の予備研磨段階を好適に実施することができる。
【0097】
特に限定するものではないが、上記予備研磨工程の前におけるシリコン基板の表面粗さ(算術平均粗さ(Ra))は、例えば凡そ1nm以上凡そ1000nm以下(好ましくは凡そ10nm以上凡そ100nm以下)であり得る。また、予備研磨工程を終えたシリコン基板の表面粗さRaは、例えば凡そ0.1nm以上凡そ1nm以下(好ましくは凡そ0.2nm以上凡そ0.5nm以下)であり得る。ここで、シリコン基板の表面粗さRaは、例えば、Schmitt Measurement System Inc.社製のレーザースキャン式表面粗さ計「TMS−3000WRC」を用いて測定することができる。
【0098】
予備研磨工程を終えた研磨対象物は、仕上げ研磨工程を開始する前に、典型的には洗浄される。この洗浄は、適当な洗浄液を用いて行うことができる。使用する洗浄液は特に限定されず、例えば、半導体等の分野において一般的なSC−1洗浄液(水酸化アンモニウム(NH
4OH)と過酸化水素(H
2O
2)と水(H
2O)との混合液)、SC−2洗浄液(HClとH
2O
2とH
2Oとの混合液)等を用いることができる。洗浄液の温度は、例えば室温(典型的には約15℃〜25℃)以上、約90℃程度までの範囲とすることができる。洗浄効果を向上させる観点から、50℃〜85℃程度の洗浄液を好ましく使用し得る。なお、仕上げ研磨工程を終えた研磨対象物も、同様にして洗浄され得る。上記洗浄は、典型的には、予備研磨工程に用いた研磨装置の外部で(すなわち、上記研磨装置から研磨対象物を取り外した後に)行われる。
【0099】
ここに開示される研磨方法によると、上述のような予備研磨工程およびその後の仕上げ研磨工程を経て、研磨対象物(ここではシリコン基板、典型的にはシリコン単結晶ウェーハ)の研磨が完了する。したがって、ここに開示される技術の他の側面として、ここに開示されるいずれかの研磨方法を適用して上記研磨対象物を研磨することを特徴とする、研磨物(研磨による結果物)の製造方法が提供される。
【0100】
<研磨用組成物セット>
この明細書によると、ここに開示される研磨方法に好ましく使用され得る研磨用組成物セットが提供される。その研磨用組成物セットは、互いに分けて保管される第1組成物と第2組成物とを少なくとも含む。第1組成物は、上記第1研磨スラリーまたはその濃縮液であり得る。第2組成物は、上記第2研磨スラリーまたはその濃縮液であり得る。ここに開示される研磨方法は、かかる研磨用組成物セットを用いて好適に実施することができる。したがって、上記研磨用組成物セットは、ここに開示される研磨方法や、該研磨方法を実施することを含む研磨物製造方法等に好ましく利用され得る。研磨用組成物セットを構成する各研磨用組成物は、それぞれ、一剤型であってもよく、二剤型を始めとする多剤型であってもよい。多剤型の研磨用組成物は、例えば、各研磨用組成物の構成成分のうち少なくとも砥粒を含むパートAと、残りの成分を含むパートBとに分けて保管され、上記パートAと上記パートBとを混合して必要に応じて適切なタイミングで希釈することにより研磨用組成物または研磨スラリーが調製されるように構成され得る。
【実施例】
【0101】
以下、本発明に関するいくつかの実施例を説明するが、本発明をかかる実施例に示すものに限定することを意図したものではない。
【0102】
1.研磨液の調製
(スラリーA)
コロイダルシリカ分散液A、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)、炭酸カリウム(K
2CO
3)およびイオン交換水を混合することにより、コロイダルシリカA(D
BETが52nm、Mvが101nm、D
90が156nmであるシリカ粒子)を1.2重量%、TMAHを0.05重量%、K
2CO
3を0.03重量%の濃度で含むスラリーAを調製した。
【0103】
(スラリーB)
コロイダルシリカ分散液Aに代えてコロイダルシリカ分散液Bを用いた他はスラリーAの調製と同様にして、コロイダルシリカB(D
BETが45nm、Mvが66nm、D
90が95nmであるシリカ粒子)、TMAHおよびK
2CO
3を含むスラリーBを調製した。
【0104】
(スラリーC)
コロイダルシリカ分散液Aに代えてコロイダルシリカ分散液Cを用いた他はスラリーAの調製と同様にして、コロイダルシリカC(D
BETが35nm、Mvが64nm、D
90が76nmであるシリカ粒子)、TMAHおよびK
2CO
3を含むスラリーCを調製した。
【0105】
(スラリーD)
コロイダルシリカ分散液Aに代えてコロイダルシリカ分散液Dを用いた他はスラリーAの調製と同様にして、コロイダルシリカD(D
BETが90nm、Mvが220nm、D
90が275nmであるシリカ粒子)、TMAHおよびK
2CO
3を含むスラリーDを調製した。
なお、スラリーA〜DのpHは、いずれも10以上11以下となるように調節した。
【0106】
スラリーA〜Dの各々に含まれるコロイダルシリカのBET径(D
BET)は、マイクロメリテックス社製の表面積測定装置、商品名「Flow Sorb II 2300」により求めた。各コロイダルシリカの体積平均径(Mv)および体積基準の90%累積径(D
90)は、日機装株式会社製の型式「UPA−UT151」を用いて動的光散乱法に基づく粒子径測定(体積基準)を行うことにより求めた。これらの値から、スラリーA〜Dの各々に含まれる砥粒のMv/D
BET、D
90/MvおよびD
90/D
BETを算出した。
【0107】
2.シリコンウェーハの研磨
<例1>
スラリーAおよびスラリーBをそのまま研磨液(ワーキングスラリー)として使用して、表1に示す予備研磨段階からなる予備研磨工程を実施した。本例および以下の例2〜7において、研磨対象物(試験片)としては、ラッピングおよびエッチングを終えた直径300mmの市販シリコン単結晶ウェーハ(厚み:785μm、伝導型:P型、結晶方位:<100>、抵抗率:1Ω・cm以上100Ω・cm未満)を使用した。上記ウェーハには、SEMI M1(T7)規格に基づく裏面ハードレーザーマークが刻印されている。上記ウェーハについて、Schmitt Measurement System Inc.社製レーザースキャン式表面粗さ計「TMS−3000WRC」により測定される表面粗さ(算術平均粗さ(Ra))は約50nmであった。
【0108】
予備研磨工程は、具体的には次のようにして行った。すなわち、以下に示す両面研磨装置に5枚の試験片(研磨対象面の総面積;約0.71m
2)をセットし、スラリーAを供給して第1予備研磨段階を開始した。第1予備研磨段階の開始から20分経過後、供給するスラリーをスラリーBに切り替えて第2予備研磨段階を開始した。第2予備研磨段階の開始から3分経過後、スラリーBの供給および両面研磨装置の作動を停止した。
【0109】
[予備研磨条件]
研磨装置:スピードファム社製の両面研磨装置、型番「DSM20B−5P−4D」
研磨荷重:150g/cm
2
上定盤相対回転数:20rpm
下定盤相対回転数:−20rpm
研磨パッド:ニッタハース社製、商品名「MH S−15A」
供給レート:4リットル/分(かけ流し使用)
研磨環境の保持温度:23℃
【0110】
(洗浄)
予備研磨後の試験片を研磨装置から取り外し、NH
4OH(29%):H
2O
2(31%):脱イオン水(DIW)=1:3:30(体積比)の洗浄液を用いて洗浄した(SC−1洗浄)。より具体的には、周波数950kHzの超音波発振器を取り付けた洗浄槽を2つ用意し、それら第1および第2の洗浄槽の各々に上記洗浄液を収容して60℃に保持し、予備研磨後の試験片を第1の洗浄槽に6分、その後超純水と超音波によるリンス槽を経て、第2の洗浄槽に6分、それぞれ上記超音波発振器を作動させた状態で浸漬した。
【0111】
<例2〜4>
各予備研磨段階で供給するスラリーの種類を表1に示すように変更した他は例1と同様にして、シリコンウェーハの予備研磨工程を実施した。
【0112】
<例5,7>
各予備研磨段階で供給するスラリーの種類を表2に示すように変更した他は例1と同様にして、シリコンウェーハの予備研磨工程を実施した。
【0113】
<例6>
本例では、研磨途中でスラリーを切り替えることなく予備研磨工程を行った。すなわち、スラリーAを供給して予備研磨を開始し、25分経過後、スラリーAの供給および両面研磨装置の作動を停止した。その他の点は例1と同様にして、シリコンウェーハの予備研磨工程を実施した。
【0114】
3.評価
<隆起解消性>
例1〜7により得られたシリコンウェーハ(予備研磨工程およびその後の洗浄を終えた試験片)について、ケーエルエー・テンコール社製の「HRP340」を使用してハードレーザーマーク(HLM)を含む1mm×5mmの視野の表面粗さRtを測定することにより、隆起解消性を評価した。ここで、上記表面粗さRtは、粗さ曲線の最大断面高さを示すパラメータであって、一定視野内(ここでは、HLMを含む1mm×5mmの視野内)でのウェーハ表面の高さの最も高い部分と最も低い部分の高さの差分を示す。得られた測定値を以下の4段階で評価した。
A:50nm以下
B:50nmを超えて70nm以下
C:70nmを超えて90nm以下
D:90nm超
【0115】
<表面粗さRa>
例1〜7により得られたシリコンウェーハについて、Schmitt Measurement Systems Inc.製の型番「TMS−3000−WRC」を用いて表面粗さRa(算術平均表面粗さ)を測定した。得られた測定値を、例5の表面粗さRaを100%とする相対値に換算して、以下の4段階で評価した。
A:90%以下
B:90%を超えて100%以下
C:100%を超えて110%以下
D:110%超
【0116】
<平坦度(GBIR)>
ケーエルエー・テンコール社製の平坦度測定装置「WaferSight 2」を使用し、SEMI規格に準拠してGBIR(エッジ除外領域2mm)を測定した。得られた測定値を以下の3段階で評価した。
A:200nm以下
B:200nmを超えて300nm以下
C:300nm超
【0117】
上記隆起解消性、表面粗さ(Ra)および平坦度の評価結果を表1,2に示した。これらの表には、各研磨スラリー(供給液)に含まれる砥粒のBET径(D
BET)、体積平均径(Mv)、Mv/D
BET、90%累積径(D
90)、D
90/MvおよびD
90/D
BETの値を併せて示している。
【0118】
【表1】
【0119】
【表2】
【0120】
これらの表に示されるように、第1予備研磨段階で供給したスラリーに含まれる砥粒よりもMvが小さくかつMv/D
BETが同等以下である砥粒を含むスラリーを供給して第2予備研磨段階を行った例1〜4によると、隆起解消性が良く、表面粗さが低く、かつ平坦度の高い表面が得られた。これに対して、第2予備研磨段階で供給したスラリーに含まれる砥粒のMv/D
BETが第1予備研磨段階で供給したスラリーに含まれる砥粒のMv/D
BETよりも大きい例5、単一のスラリーのみを使用した例6、第2予備研磨段階で供給したスラリーに含まれる砥粒のMvが第1予備研磨段階で供給したスラリーに含まれる砥粒のMvよりも大きい例7は、いずれも、隆起解消性、表面粗さ低減、平坦度向上のバランスを欠くことが確認された。
【0121】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。