(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下の節において、本発明をより詳細に記載する。そのように記載された各態様は、明らかにそうでないことが示されているのでなければ、いずれの他の態様または複数態様と組み合わせてもよい。特に、好ましいまたは有利なものとして示されたいずれの構成要件も、好ましいまたは有利なものとして示されたいずれの他の構成要件または複数の構成要件と組み合わせてもよい。
【0012】
本発明の文脈においては、文脈がそうでないことを指示するのでなければ、用いられる用語は、以下の定義に従って解釈されるべきである。
【0013】
本明細書中で用いる場合、単数形「a」「an」(ある)、および「the」(該)は、文脈が明瞭にそうでないことを指示するのでなければ、単数および複数の指示対象を共に含む。
【0014】
本明細書中で用いられる用語「comprising」(含んでいる)、「comprises」(含む)および「composed of」(含んでなる)は、「including」(包含している)、「includes」(包含する)または「containing」(含有している)、「contains」(含有する)と同義であって、包括的であるか、または非限定的であって、追加の記載されていない部材、エレメントまたは方法工程を排除しない。
【0015】
数値の終点の記載は、各範囲内に包摂される全ての数および分数、ならびに記載された終点を含む。
【0016】
量、濃度または他の値もしくはパラメーターが、範囲、好ましい範囲、または好ましい上限値および好ましい下限値の形態で表される場合、いずれの上限または好ましい値と、いずれの下限または好ましい値とを組み合わせることによって得られたいずれの範囲も、得られた範囲が明瞭に文脈において述べられているか否かを考慮することなく具体的に開示されていると理解されるべきである。
【0017】
本明細書中で引用される全ての文献は、その全体が、ここに引用して援用される。
【0018】
そうでないことが定義されるのでなければ、技術的および科学的用語を含めた本発明を開示するのに用いられる全ての用語は、本発明が属する技術分野における当業者によって通常理解される意味を有する。さらなる指針によって、用語の定義は、本発明の教示を良好に理解するために含める。
【0019】
本発明は、a)1未満のエチレン性不飽和基の平均数を有する(メタ)アクリレート封鎖脂肪族ポリウレタン;b)単官能性(メタ)アクリレートモノマーもしくはオリゴマー;およびc)光開始剤を含む、光硬化性接着剤組成物に関する。用語「単官能性」とは、本明細書中においては、各分子鎖中にただ1つのエチレン結合を有するモノマーまたはオリゴマーを意味する。
【0020】
本発明による光硬化性接着剤組成物は、1未満のエチレン性不飽和基の平均数を有する(メタ)アクリレート封鎖脂肪族ポリウレタンを含む。(メタ)アクリレート封鎖脂肪族ポリウレタンは、構造Iおよび構造IIまたは構造IIIを含み、あるいは構造I、IIおよびIIIを含む。
【0022】
Xは(メタ)アクリレート基で終端された、C1−C20アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アクリルまたはアラルキルを示し;
YはC1−C20アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アシル、アラルキル基を示し;
Aは、ポリエーテル、ポリエステル、ポリカーボネートまたはポリ炭化水素を表し;
BはC1−C10アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アシルまたはアルキル基を示し;および
nは1から500の整数である。
【0023】
置換基Aの優先性は用途に依存する。例えば、高チクソトロピー指数が望まれ/要求されるならば、ポリエーテルが好ましい。なぜならば、それはレオロジー改質剤とより相溶性だからである。他方、低誘電定数が望まれるならば、ポリ炭化水素が好ましい。
【0024】
本明細書中で用いられる用語「チクソトロピー指数」は、標準ASTM D2196−10に従って、各々、1Hzおよび10Hzの剪断速度において測定された粘度の比率を意味する。
【0025】
本発明による(メタ)アクリレート封鎖脂肪族ポリウレタンは、1000から100,000、好ましくは10,000から30,000、より好ましくは15,000から25,000の数平均分子量を有する。1000よりも低い分子量を有する(メタ)アクリレート封鎖脂肪族ポリウレタンは、低い伸張率および低い破断強度などの機械的特性に対して負の効果を有する傾向がある。他方、(メタ)アクリレート封鎖脂肪族ポリウレタンが100,000を超える分子量を有する場合、組成物は非常に高い粘度を有し、これは、均質な組成物を処方し、混合する困難性を招く。分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用いることによって測定する。
【0026】
本発明による(メタ)アクリレート封鎖脂肪族ポリウレタンは、0.01から0.99、好ましくは0.1から0.9、より好ましくは0.1から0.5の平均官能価を有する。用語「平均官能価」とは、本明細書中においては、(メタ)アクリレート封鎖脂肪族ポリウレタンにおける(メタ)アクリレート基の平均数を意味する。1よりも大きな平均官能価は過剰架橋をもたらし、これは、他方、硬化した組成物の非常に高い弾性率をもたらす。連鎖移動剤および/または可塑剤は、架橋密度を低下させるのに通常は用いられる。しかしながら、連鎖移動剤および可塑剤の双方は、組成物の総体的性能に対して負の効果を有する。通常使用される連鎖移動剤は、メルカプタンまたはハロゲン化炭化水素などの含硫化合物である。含硫化合物は、エージングの間に黄変する傾向があり、加えて、それらは不快な臭いを有する。ハロゲン化炭化水素は毒性であって、エージングの間に黄変する潜在的傾向を有する。可塑剤は、他方、小さな分子であって、接着剤の硬化の後可動なままであり、これは滲み出しを招き、さらに、接着を低下させる。
【0027】
0.01から0.99の(メタ)アクリレート基の平均官能価を選択することによって、架橋の密度を制御して、従って、光学的に透明な接着剤を得ることができる。加えて、0.01から0.99の(メタ)アクリレート基の平均官能価を有することは、可塑剤および連鎖移動剤なくしての処方を可能とする。
【0028】
(メタ)アクリレート封鎖脂肪族ポリウレタンの官能価は、2つの方法によって調整することができる。用語「官能価」とは、本明細書中においては、各(メタ)アクリレート封鎖脂肪族ポリウレタンにおける(メタ)アクリレート基の数を意味する。
【0029】
第一の方法は、0.01から0.99の平均官能価を有する(メタ)アクリレート封鎖脂肪族ポリウレタンを直接的に合成することである。例えば、イソシアネートおよびヒドロキシルの比率を1.8:1としつつ、触媒としてジブチル錫ジラウレートを加えながら、ポリプロピレングリコールおよびイソホロンジイソシアネートを混合する。引き続いて、n−ブタノールを、ヒドロキシルおよび未反応イソシアネートの比率が0.85:1となる量にて封鎖剤として加える。引き続いて、数時間加熱する。引き続いて、アクリル酸ヒドロキシルエチルを、ヒドロキシルおよび未反応イソシアネートの比率が1:1となる量にて封鎖剤として加える。続いて、数時間加熱する。合成された(メタ)アクリレート封鎖脂肪族ポリウレタンは、0.3の平均官能価を有する。
【0030】
第二の方法は2つの工程を含む。まず、各々、0、1および2の官能価を有する(メタ)アクリレート封鎖脂肪族ポリウレタンを合成する。第二に、(重量パーセンテージに基づいて)0および1または0および2または0、1および2の官能価を有する(メタ)アクリレート封鎖脂肪族ポリウレタンを混合して、0.01から0.99の平均官能価を有する(メタ)アクリレート封鎖脂肪族ポリウレタンを得る。0の官能価を有する(メタ)アクリレート封鎖脂肪族ポリウレタンを得るためには、アクリレート官能性封鎖剤を加えない。2の官能価を有する(メタ)アクリレート封鎖脂肪族ポリウレタンを得るためには、アクリレート官能性封鎖剤のみを加える。1の官能価を有する(メタ)アクリレート封鎖脂肪族ポリウレタンを得るためには、非−アクリレート官能性封鎖剤およびアクリレート官能性封鎖剤の比率は1:2とする。
【0031】
別法として、0.01から0.99の平均官能価を有する(メタ)アクリレート封鎖脂肪族ポリウレタンは、0、1、2以外の官能価を有する(メタ)アクリレート封鎖脂肪族ポリウレタンから合成することができる。各々、<1および>1の官能価を有する(メタ)アクリレート封鎖脂肪族ポリウレタンを合成する。引き続いて、(重量パーセンテージに基づいて)これらの(メタ)アクリレート封鎖脂肪族ポリウレタンを混合して、0.01から0.99の平均官能価を有する(メタ)アクリレート封鎖脂肪族ポリウレタンを得る。
【0032】
本発明による光硬化性接着剤組成物は、組成物の合計重量の5重量%から95重量%、好ましくは25重量%から90重量%、より好ましくは30重量%から65重量%の(メタ)アクリレート封鎖脂肪族ポリウレタンを含む。(メタ)アクリレート封鎖脂肪族ポリウレタンの含有量が5%未満である場合、硬化した接着剤は余りにも硬いであろうし、粘着性かつ柔軟性でないであろう。さらに、硬化した接着剤は低い伸張率および低い破断強度を有するであろう。もう1つの態様において、(メタ)アクリレート封鎖脂肪族ポリウレタンの含有量が95%を超える場合、機械的特性は必要なレベルに到達することができないであろう(組成物は、(メタ)アクリレート封鎖脂肪族ポリウレタンの構造に応じて、余りにも硬いかまたは余りにも柔らかい)。
【0033】
本発明による光硬化性接着剤組成物は、単官能性(メタ)アクリレートモノマーもしくはオリゴマーを含む。好ましくは、(メタ)アクリレートモノマーは、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、アクリル酸2−(2−エトキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸イソオクチル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸イソデシル、アクリル酸n−デシル、アクリル酸イソボルニル、アクリル酸2―フェノキシチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2(または4)−ヒドロキシブチル、アクリル酸カプロラクトン、(メタ)アクリル酸モルホリンおよびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0034】
より好ましくは、単官能性(メタ)アクリレートモノマーは、アクリル酸ラウリル、アクリル酸イソオクチル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸イソデシル、アクリル酸n−デシル、アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、およびそれらの混合物からなる群から選択される。これらの(メタ)アクリレートモノマーは適切なアクリル酸ウレタンと混和性である故に、それらは好ましい。
【0035】
本発明で用いる適切な商業的に入手可能な単官能性(メタ)アクリレートモノマーは、全てがBASFによって供給される、LA 1214(アクリル酸ラウリル)、LA 12(アクリル酸ラウリル)、BEA 1822(アクリル酸ベヘニル)、HexA(アクリル酸n−ヘキシル)、4−HBA(アクリル酸4−ヒドロキシブチル)、2−PHA HG(アクリル酸2−プロピルヘプチル高グレード)である。
【0036】
本発明による光硬化性接着剤組成物は、組成物の合計重量の5重量%から95重量%、好ましくは5重量%から70重量%、より好ましくは10重量%から35重量%の単官能性(メタ)アクリレートモノマーもしくはオリゴマーを含む。単官能性(メタ)アクリレートモノマーもしくはオリゴマーの含有量が5%未満である場合、組成物への添加剤の溶解性は非常に低くなる傾向がある。特定の添加剤が組成物のいくつかの特性を調整するのに必要であるが、それらの添加剤は組成物バルクから分離し、従って、それらが機能すべきようには機能しない。もう1つの態様において、単官能性(メタ)アクリレートモノマーもしくはオリゴマーの含有量が95%よりも大きいならば、機械的特性は必要とされるレベルに到達することができない(組成物は、(メタ)アクリレート封鎖脂肪族ポリウレタンの構造に応じて、余りにも硬いかまたは余りにも柔らかい)。加えて、硬化した接着剤は余りにも硬いであろうし、粘着性かつ柔軟性ではないであろう。さらに、硬化した接着剤は低い伸張率および低い破断強度を有するであろう。
【0037】
本発明による光硬化性接着剤組成物は光開始剤を含む。用語「光開始剤」とは、本明細書中においては、UV光に暴露し、引き続いて、UV−硬化反応を開始すると、フリーラジカルに分解する化合物を意味する。
【0038】
本発明で用いる適切な光開始剤は好ましくは、1―ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−1−N,N−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−1−ブタノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンとベンゾフェノンとの組合せ、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル−2,4,6−トリメチルペンチル)ホスフィンオキシドと2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オンとの組合せ、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−1−プロパン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシドと2―ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オンとの組合せ、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシドおよびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0039】
より好ましくは、光開始剤は、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシドおよびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0040】
本発明で用いる適切な商業的に入手可能な光開始剤は、全てBASFによって供給される、Irgacure(登録商標)184(2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン)、Irgacure(登録商標)1173(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン)、Irgacure(登録商標)2959(2−ヒドロキシ−1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−メチル−1−プロパノン)、Darocur(登録商標)TPO(ジフェニル(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−ホスフィンオキシド)、Irgacure 819(ホスフィンオキシド、フェニルビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル))、Irgacure(登録商標)651(ベンゾイルぎ酸メチル(Darocure MBF)、α,α−ジメトキシ−α−フェニルアセトフェノン)、Irgacure(登録商標)2020(Irgacure(登録商標)819およびIrgacure(登録商標)1173の混合された開始剤)である。本発明による光硬化性接着剤組成物は、組成物の合計重量の0.05重量%から5重量%、好ましくは0.05重量%から2.5重量%、より好ましくは0.1重量%から1重量%の光開始剤を含む。光開始剤の含有量が組成物の合計重量の0.05重量%未満である場合、重合反応は完了せず、これは機械的および光学的特性に関する問題を招く。しかしながら、含有量が5重量%よりも高い場合、組成物は過剰の光開始剤を含有し、未反応の光開始剤は組成物に対する負の効果、主としてエージングおよび組成物の黄変を有する。
【0041】
任意に、光硬化性接着剤組成物は、さらに、レオロジー改質剤、光安定化剤等といった他の添加剤を含んでよい。
【0042】
適当なレオロジー改質剤は、粘土およびシリカなどの無機レオロジー改質剤、およびセルロースなどの有機レオロジー改質剤を含む。
【0043】
存在させる場合、光硬化性接着剤組成物は、組成物の合計重量の1重量%から10重量%、好ましくは0.5重量%から8重量%のレオロジー改質剤を含む。
【0044】
適当な光安定化剤は、抗酸化剤および/またはUV吸収剤である。
【0045】
存在させる場合、光硬化性接着剤組成物は、0.1%から3%、好ましくは0.1%から2%の光安定化剤を含む。
【0046】
本発明による光硬化性接着剤は、可塑剤または連鎖移動剤を含まず、なぜならば、それら双方は機械的および光学的特性に対して悪影響を有するからである。しかしながら、時には、本発明による組成物は、可塑剤または連鎖移動剤を含んでよく、但し、それらのいずれも所望の特性に対して悪影響を有しないことを条件とする。
【0047】
本発明で用いる適切な連鎖移動剤は、メルカプタンまたはハロゲン化炭化水素などの含硫化合物である。
【0048】
本発明で用いる適切な可塑剤は、可塑化特性を有することが知られたいずれかの化合物または化合物の組合せである。
【0049】
本発明で用いる適切な商業的に入手可能な可塑剤は、SartomerからのCyroflex SR660(ジブトキシエトキシエチルホルマール)およびEastmanからのTXIB(2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジイソブチレート)である。
【0050】
存在させる場合、本発明による光硬化性接着剤組成物は、組成物の合計重量の5重量%未満、好ましくは3重量%未満、より好ましくは1重量%未満の可塑剤を含ませてよい。
【0051】
存在させる場合、本発明による光硬化性接着剤組成物は、組成物の合計重量の5重量%未満、好ましくは2重量%未満、より好ましくは1重量%未満の連鎖移動剤を含ませてよい。
【0052】
本発明による光硬化性接着剤組成物は、全ての成分を一緒に混合して、均質な混合物を得ることによって調製することができる。混合は室温で行う。混合デバイスは、例えば、軌道運動(遊星型)ミキサー、または強制ミキサーとすることができる。
【0053】
得られた混合物は、3よりも大きい、好ましくは5よりも大きい、より好ましくは7よりも大きいチクソトロピー指数を有し、チクソトロピー指数は、標準ASTM D2196−10に従って測定する。チクソトロピー指数が3未満である場合、それは、剪断または撹拌下の粘度が余り減少せず、剪断力または撹拌を停止すると、粘度は余り増加しないことを意味する。従って、3未満のチクソトロピー指数を有する接着剤組成物をタッチパネルまたはLCDスクリーンあるいは他の同様なデバイスの狭いベゼルに適用するのは非常に困難であろう。これは、接着剤組成物は適用後に狭いベゼルの領域から流出するからである。
【0054】
本発明による光硬化性組成物はUV光下で硬化させて、硬化した接着剤が得られる。
【0055】
光源は、Henkel LED Flood Array波長365nm、405nm、Indigo(商標)などの水銀ランプまたはLED光とすることができる。
【0056】
光量は一般には約3000mJとする。異なる調合は異なるUV量を必要とする。本発明によるUV量は800から20000mJの範囲とする。
【0057】
硬化後に、接着剤組成物は10000よりも大であって150000未満の、好ましくは40000よりも高い弾性率を有し、ここに、弾性率は本明細書中の以下に記載されたテスト方法に従って測定する。弾性率が10000未満である場合、接着剤の強度は非常に低く、これは適用の要件を満足しない。他方、弾性率が150000よりも高い場合、接着剤の硬度は余りにも高く、これは組成物のリワーク性において問題を生じさせる。
【0058】
弾性率測定は当該分野においてよく知られている。弾性率は、例えば、Anton Paar GmbH、ドイツ国からのPhysica MCR301 Photorheometerを用いることにより、光レオメトリー測定を用いることによって測定する。フォトレオメーターは(初期ギャップを1.00mmとした)一対の平行プレートを有し、底部プレートは石英で作成されている。本発明による接着剤組成物を該プレートの間に挟む。(UVA強度が93mW/cm
2の)UV光を高圧水銀アーク(HPMA)ランプによって生じさせ、底部プレートを通って導いて、平行プレートの間に挟んだ接着剤を硬化させる。接着剤は、(30ラジアン/秒の固定角周波数および0.5%歪にて)振動モード下で試験する。弾性率はUV硬化時間に対して記録する。ギャップが自動的に低下して、硬化の間に試料収縮を収容するように、ゼロ固定垂直抗力(Fn)を用いる。
【0059】
硬化の後、接着剤組成物は、2.0cmよりも大きい、好ましくは2.5cmよりも大きい側面硬化深さを有する。側面硬化深さは、以下に記載する側面硬化深さ試験方法に従って測定する。比較として、既存の光硬化性接着剤組成物は、通常、1.0cm以下の側面硬化深さを有する。より大きい側面硬化深さは、基板(表示デバイスまたはタッチパネル)のシャドウエリアがよく接着し、いずれの潜在的な製品の欠陥も回避することを確実とする。
【0060】
側面硬化深さは、以下に記載する側面硬化深さ試験方法に従って測定する。
【0061】
この試験方法を用いて、側面硬化機器LOCTITE LEDラインアレイ365nmによって硬化されたシャドウエリアにおける液状の光学的に透明な接着剤の硬化深さを同定する。該方法は:
1)黒色インクで25.4mm*101.6mm*6mmのサイズのガラス基板を調製する工程;
2)該2つのガラス基板のいずれか1つにおいて接着剤組成物を適用する工程(約1μmの厚み);
3)2つのガラス基板を組み立てて、それらが完全に重なり、接着剤がガラス基板の間に挟まれるのを確実とする工程;
4)線光であるLOCTITE LEDラインアレイ365nmなどのLED光を用いることによって接着剤組成物を硬化させる工程;
5)硬化した試料を手で分離し、ノギスを用いて、硬化幅を測定する工程;
6)中央領域における3つの平行点を試験して、平均値を計算する工程
を含む。
【0062】
本発明による光硬化性接着剤組成物は、表示パネルおよびタッチパネルの基板を結合させるのに用いられる。
【0063】
1つの好ましい実施態様において、基板を液晶ディスプレイに結合させる方法は:
i)本発明による光硬化性接着剤組成物を基板または液晶ディスプレイあるいは双方の表面に適用する工程;
ii)基板および液晶ディスプレイの該表面を接触させる工程;次いで、
iii)該接着剤組成物をUV硬化させる工程
を含む。
【0064】
好ましくは、光硬化性接着剤組成物は、工程iにおいてスリットコーティングまたは孔版印刷によって適用する。
【0065】
1つの実施態様において、本発明は、光学的に透明な積層体の形態である、本発明による硬化された接着剤組成物を含む表示デバイスまたはタッチパネルに関する。
【実施例】
【0066】
種々の修飾および変形を、本発明の範囲または精神から逸脱することなく本発明でなすことができるのは当業者に明らかであろう。本発明の他の実施態様は、本明細書および本明細書中で開示する本発明の実施を考慮すると当業者に明らかであろう。本明細書および実施例は例示的なものに過ぎないと考えられることを意図し、本発明の真の範囲および精神は特許請求の範囲によって示される。
【0067】
実施例1
0.3の官能価を有する(メタ)アクリレート封鎖脂肪族ポリウレタンの合成
雰囲気温度にて、10gのポリプロピレングリコール(DOWからのVoranol2120)を、500ppmのジブチル錫ジラウレート触媒(Sigma−AldrichからのDBTDL(CAS 77−58−7))と一緒に、温度調節器および機械スターラーを有するガラスリアクター中に加え、撹拌した。引き続いて、イソホロンジイソシアネート(Sigma−AldrichからのCAS 4098−71−9)を加え、イソシアネートおよびヒドロキシルの比率を1.8:1とした。反応混合物を75℃にて2時間撹拌した。n−ブタノール封鎖剤(Sinopharm chemical reagent Co. Ltd.からのCAS 71−36−3)を、ヒドロキシルおよび未反応イソシアネートの比率が0.85:1となる量で加えた。反応混合物を75℃にて2時間撹拌する。
【0068】
アクリル酸2−ヒドロキシルエチル(Sigma−Aldrichからの2−HEA(CAS 818−61−1))を、第二の封鎖剤として、ヒドロキシルおよび未反応イソシアネートの比率が1:1となる量で加えた。反応混合物を75℃にて2時間撹拌する。
【0069】
反応をリアルタイムFTIRでモニターした。次いで、GPCを用いることによって、最終分子量を測定した。
【0070】
実施例2
光硬化性接着剤組成物の調製
実施例1で調製した74.35gの(メタ)アクリレート封鎖脂肪族ポリウレタン(官能価=0.3)、
16.52gのアクリル酸ラウリル(BASFからのLA12)、
0.2gの光開始剤(CibaからのDarocur TPO)、
8.93gのレオロジー改質剤−ヒュームドシリカ(EvonikからのAerosil300)
を、均質な混合物が達成されるまで、Speedmixer(商標)(FlackTek Inc.)中で一緒に混合した。より大きなスケールでは、遊星型ミキサーまたは強制ミキサーを代わりに使用すべきである。
【0071】
実施例2の光硬化性接着剤組成物の硬化前のTI(チクソトロピー指数)、硬化後の弾性率および側面硬化深さを、前記した試験方法に従って測定した。
【0072】
TI 7.2
硬化後の弾性率50000Pa
側面硬化深さ>2.3cm
【0073】
実施例3
1.0の官能価を有する(メタ)アクリレート封鎖脂肪族ポリウレタンの合成
雰囲気温度にて、50gのポリプロピレングリコール(Dow ChemicalsからのVoranol2120、Mw=2000)を、500ppmのジブチル錫ジラウレート触媒(Sigma−AldrichからのDBTDL(CAS 77−58−7))と共に、温度調節器および機械スターラーを備えたガラスリアクターに加えた。引き続いて、イソホロンジイソシアネート(Sigma−AldrichからのCAS 4098−71−9)を加え、イソシアネートおよびヒドロキシルの比率を1.8:1とした。反応混合物を75℃にて2時間撹拌した。
【0074】
引き続いて、n−ブタノール封鎖剤(Sinopharm chemical reagent Co. Ltd.からのCAS 71−36−3)を、ヒドロキシルおよび未反応イソシアネートの比率が0.5:1となるように加えて、イソシアネート末端基を部分的にブロックした。反応混合物を75℃にて2時間撹拌して、封鎖反応を完了させた。
【0075】
アクリル酸2−ヒドロキシルエチル(アクリレート官能性封鎖剤)(Sigma−Aldrichからの2−HEA(CAS 818−61−1)を加えて、ヒドロキシルおよび未反応イソシアネートの比率を1:1とした。反応混合物を75℃にて2時間撹拌して、封鎖反応を完了させた。
【0076】
引き続いて、反応混合物を室温まで冷却し、(メタ)アクリレート官能価1を持つ(メタ)アクリレート封鎖脂肪族ポリウレタンを得た。
【0077】
反応をリアルタイムFTIRでモニターした。次いで、GPCを用いることによって、最終分子量を測定した。
【0078】
実施例4
0の官能価を有する(メタ)アクリレート封鎖脂肪族ポリウレタンの合成
雰囲気温度にて、50gのポリプロピレングリコール(Dow ChemicalsからのVoranol2120、Mw=2000)を、500ppmのジブチル錫ジラウレート触媒(Sigma−AldrichからのDBTDL(CAS 77−58−7))と一緒に、温度調節器および機械スターラーを備えたガラスリアクターに加えた。引き続いて、イソホロンジイソシアネート(Sigma−AldrichからのCAS 4098−71−9)を加え、イソシアネートおよびヒドロキシルの比率を1.8:1とした。反応混合物を75℃にて2時間撹拌した。
【0079】
引き続いて、n−ブタノール封鎖剤(Sinopharm chemical reagent Co. Ltd.からのCAS 71−36−3)を加えて、ヒドロキシルおよび未反応イソシアネートの比率を1:1とし、イソシアネート末端基を部分的にブロックした。反応混合物を75℃にて2時間撹拌して、封鎖反応を完了させた。
【0080】
引き続いて、反応混合物を室温まで冷却し、(メタ)アクリレート官能価1を持つ(メタ)アクリレート封鎖脂肪族ポリウレタンを得た。
【0081】
反応をリアルタイムFTIRでモニターした。次いで、GPCを用いることによって、最終分子量を測定した。
【0082】
実施例5
光硬化性接着剤組成物の調製
実施例3で調製された23.05gの(メタ)アクリレート封鎖脂肪族ポリウレタン(官能価=0)、
実施例4で調製された46.10gの(メタ)アクリレート封鎖脂肪族ポリウレタン(官能価=1)、
23.05gのアクリル酸ラウリル(BASFからのLA12)、
0.2gの光開始剤(Cibaからの0.1gのDarocur TPOおよびCibaからの0.1gのIrgacure184)、
7.6gのレオロジー改質剤−ヒュームドシリカ(EvonikからのAerosil300)を、均質な混合物が達成されるまで、Speedmixer(商標)(FlackTek Inc.)中で一緒に混合した。より大きなスケールでは、遊星型ミキサーまたは強制ミキサーを代わりに使用すべきである。
【0083】
実施例4の光硬化性接着剤組成物の硬化前のTI(チクソトロピー指数)、硬化後の弾性率および側面硬化深さを、前記した試験方法に従って測定した。
【0084】
TI 7.2
硬化後の弾性率46000Pa
側面硬化深さ>2.3cm
【0085】
比較例
同一の試験条件下で、Loctite ×0011を試験した。Loctite ×0011で用いた(メタ)アクリレート封鎖脂肪族ポリウレタンは、1を超えるエチレン性不飽和基の平均数を有する。
【0086】
TI=3
硬化後の弾性率25000Pa
側面硬化深さ<5mm
【0087】
同一の試験条件下で、Loctite ×0055を試験した。Loctite ×0055で用いた(メタ)アクリレート封鎖脂肪族ポリウレタンは、1を超えるエチレン性不飽和基の平均数を有する。
【0088】
TI=2.7
硬化後の弾性率22000Pa
側面硬化深さ<5mm
【0089】
結論として、本発明による光硬化性接着剤組成物は、タッチパネルデバイスの非常に狭いベゼルにおける実施を可能とするTI値を有し、硬化後には、強度は要件も満足する。さらに、側面硬化深さは、UV硬化条件下で十分である。
本発明の好ましい態様は、以下を包含する。
〔1〕
a)1未満のエチレン性不飽和基の平均数を有する(メタ)アクリレート封鎖脂肪族ポリウレタン;
b)単官能性(メタ)アクリレートモノマーもしくはオリゴマー;および
c)光開始剤
を含む、光硬化性接着剤組成物。
〔2〕
前記(メタ)アクリレート封鎖脂肪族ポリウレタンが、構造Iおよび構造IIまたは構造IIIを含み、または構造I、IIおよびIIIを含む、〔1〕に記載の光硬化性接着剤組成物。
【化2】
[式中、
Xは(メタ)アクリレート基で終端された、C1−C20アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アクリルまたはアラルキルを示し;
YはC1−C20アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アシル、アラルキル基を示し;
Aは、ポリエーテル、ポリエステル、ポリカーボネートまたはポリ炭化水素を表し;
BはC1−C10アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アシルまたはアルキル基を示し;および
nは1から500の整数である。]
〔3〕
前記(メタ)アクリレート封鎖脂肪族ポリウレタンが、1000から100,000、好ましくは10,000から30,000、より好ましくは15,000から25,000の数平均分子量を有する、〔1〕または〔2〕に記載の光硬化性接着剤組成物。
〔4〕
前記(メタ)アクリレート封鎖脂肪族ポリウレタンが、0.01から0.99、好ましくは0.1から0.9、より好ましくは0.1から0.5の平均官能価を有する、〔1〕から〔3〕のいずれか一項に記載の光硬化性接着剤組成物。
〔5〕
前記組成物が、前記組成物の合計重量の5重量%から95重量%、好ましくは25重量%から90重量%、より好ましくは30重量%から65重量%の(メタ)アクリレート封鎖脂肪族ポリウレタンを含む、〔1〕から〔4〕のいずれか一項に記載の光硬化性接着剤組成物。
〔6〕
前記組成物が、前記組成物の合計重量の5重量%から95重量%、好ましくは5重量%から70重量%、より好ましくは10重量%から35重量%の単官能性(メタ)アクリレートモノマーもしくはオリゴマーを含む、〔1〕から〔5〕のいずれか一項に記載の光硬化性接着剤組成物。
〔7〕
前記組成物が、前記組成物の合計重量の0.05重量%から5重量%、好ましくは0.05重量%から2.5重量%、より好ましくは0.1重量%から1重量%の光開始剤を含む、〔1〕から〔6〕のいずれか一項に記載の光硬化性接着剤組成物。
〔8〕
前記組成物が3よりも大きい、好ましくは5よりも大きい、より好ましくは7よりも大きいチクソトロピー指数を有し、前記チクソトロピー指数は標準ASTM D2196−10に従って測定される、〔1〕から〔7〕のいずれか一項に記載の光硬化性接着剤組成物。
〔9〕
前記硬化された組成物が、10000よりも大であって、150000未満の、好ましくは40000よりも高い弾性率を有し、弾性率は本明細書中に記載された弾性率試験方法に従って測定される、〔1〕から〔8〕のいずれか一項に記載の光硬化接着剤組成物。
〔10〕
前記硬化された組成物が、2.0cmよりも大きい、好ましくは2.5cmよりも大きい側面硬化深さを有し、側面硬化深さは本明細書中に記載された側面硬化深さ試験方法に従って測定される、〔1〕から〔9〕のいずれか一項に記載の光硬化接着剤組成物。
〔11〕
i)〔1〕から〔10〕のいずれか一項に記載の接着剤組成物を、基板または液晶ディスプレイあるいは双方の表面に適用する工程;
ii)基板および液晶ディスプレイの前記表面を接触させる工程;次いで、
iii)前記接着剤組成物をUV硬化させる工程
を含む、基板を液晶ディスプレイに結合させる方法。
〔12〕
表示パネルおよびタッチパネルの基板を結合させることにおける、〔1〕から〔10〕のいずれか一項に記載の接着剤組成物の使用。
〔13〕
〔1〕から〔10〕のいずれか一項に記載の光硬化接着剤組成物を含み、前記硬化接着剤組成物は光学的に透明な積層体の形態である、表示デバイスまたはタッチパネル。