【実施例】
【0052】
参考例1
キャリア芯材を次のようにして作製した。原料としてのFe
2O
3(平均粒径:0.3μm)17.04kg、Mn
3O
4(平均粒径:0.5μm)6.51kg、MgO(平均粒径:0.6μm)0.86kg、MgTiO
3(ペロブスカイト構造,平均粒径:1.5μm)0.39kgを純水6.2kg中に分散し、分散剤としてポリカルボン酸アンモニウム系分散剤を0.6wt%添加して混合物とした。この混合物の固形分濃度は80wt%であった。この混合物を湿式ボールミル(メディア径2mm)により粉砕処理し、混合スラリーを得た。
【0053】
この混合スラリーをスプレードライヤーにて約130℃の熱風中に噴霧し、粒径10〜75μmの乾燥造粒物を得た。この造粒物から、網目54μmの篩網を用いて粗粒を分離し、網目33μmの篩網を用いて微粒を分離した。
【0054】
この造粒物を、電気炉に投入し1200℃まで5時間かけて昇温した。その後1200℃で4.5時間保持することにより焼成を行った。その後冷却速度2℃/分で500℃まで冷却した。電気炉内の酸素濃度は10%となるよう酸素と窒素とを混合したガスを炉内に供給した。
【0055】
得られた焼成物をハンマーミルで解粒した後に振動ふるいを用いて分級し、体積平均粒径(平均粒径)35.5μmの焼成物を得た。
【0056】
次いで、得られた焼成物を大気雰囲気下450℃で1.5時間保持することにより酸化処理(高抵抗化処理)を行い、キャリア芯材を得た。
【0057】
得られたキャリア芯材の組成、磁気特性、帯電特性などを後述の方法で測定した。測定結果を表2に示す。
【0058】
次に、このようにして得られたキャリア芯材の表面を樹脂で被覆してキャリアを作製した。具体的には、シリコーン樹脂450重量部と、(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン9重量部とを、溶媒としてのトルエン450重量部に溶解してコート溶液を作製した。このコート溶液を、流動床型コーティング装置を用いてキャリア芯材50000重量部に塗布し、温度300℃の電気炉で加熱してキャリアを得た。以下、比較例についても同様にしてキャリアを得た。
【0059】
得られたキャリアと体積平均粒径5.0μm程度のトナーとを、ポットミルを用いて所定時間混合し、二成分系の電子写真現像剤を得た。この場合、キャリアとトナーとをトナーの重量/(トナーおよびキャリアの重量)=5/100となるように調整した。以下、全ての比較例についても同様にして現像剤を得た。得られた現像剤について後述の実機評価を行った。評価結果を表2に示す。
【0060】
(
実施例1)
原料としてFe
2O
3(平均粒径:0.3μm)16.92kg、Mn
3O
4(平均粒径:0.4μm)6.47kg、MgO(平均粒径:0.6μm)0.85kg、CaTiO
3(ペロブスカイト構造,平均粒径:1.5μm)0.55kgを用いた以外は
参考例1と同様にして平均粒径35.2μmのキャリア芯材を作成した。
【0061】
(
参考例2)
原料としてFe
2O
3(平均粒径:0.3μm)16.76kg、Mn
3O
4(平均粒径:0.4μm)6.40kg、MgO(平均粒径:0.6μm)0.85kg、SrTiO
3(ペロブスカイト構造,平均粒径:1.5μm)0.79kgを用いた以外は
参考例1と同様にして平均粒径35.1μmのキャリア芯材を作成した。
【0062】
(
実施例2)
原料としてFe
2O
3(平均粒径:0.3μm)16.34kg、Mn
3O
4(平均粒径:0.4μm)6.24kg、MgO(平均粒径:0.6μm)0.82kg、BaTiO
3(ペロブスカイト構造,平均粒径:1.8μm)1.39kgを用いた以外は
参考例1と同様にして平均粒径33.4μmのキャリア芯材を作成した。
【0063】
(比較例1)
MgTiO
3を配合しなかった以外は
参考例1と同様にして平均粒径34.4μmのキャリア芯材を作成した。
【0064】
(比較例2)
原料としてFe
2O
3(平均粒径:0.3μm)15.32kg、Mn
3O
4(平均粒径:0.4μm)5.85kg、MgO(平均粒径:0.6μm)0.77kg、SrTiO
3(ペロブスカイト構造,平均粒径:1.5μm)2.85kgを用い、焼成温度を900℃とした以外は
参考例1と同様にして平均粒径35.7μmのキャリア芯材を作成した。
【0065】
(比較例3)
原料としてFe
2O
3(平均粒径:0.3μm)17.14kg、Mn
3O
4(平均粒径:0.4μm)6.55kg、MgO(平均粒径:0.6μm)0.87kg、TiO
2(ルチル構造,平均粒径:0.4μm)0.25kgを用いた以外は
参考例1と同様にして平均粒径33.7μmのキャリア芯材を作成した。
【0066】
(比較例4)
原料としてFe
2O
3(平均粒径:0.3μm)17.08kg、Mn
3O
4(平均粒径:0.4μm)6.53kg、MgO(平均粒径:0.6μm)0.86kg、TiO
2(ルチル構造,平均粒径:0.4μm)0.33kgを用いた以外は
参考例1と同様にして平均粒径34.3μmのキャリア芯材を作成した。
【0067】
(比較例5)
原料としてFe
2O
3(平均粒径:0.3μm)16.96kg、Mn
3O
4(平均粒径:0.4μm)6.48kg、MgO(平均粒径:0.6μm)0.86kg、TiO
2(ルチル構造,平均粒径:0.4μm)0.50kgを用いた以外は
参考例1と同様にして平均粒径35.2μmのキャリア芯材を作成した。
【0068】
(比較例6)
焼成工程における焼成温度を1200℃とし、電気炉内の酸素濃度を0.1%とした以外は比較例2と同様にして平均粒径35.1μmのキャリア芯材を作成した。
【0069】
(組成分析)
実施例及び比較例のキャリア芯材の組成(質量%)を下記の方法で算出した。
(Feの分析)
鉄元素を含むキャリア芯材を秤量し、塩酸と硝酸の混酸水に溶解させた。この溶液を蒸発乾固させた後、硫酸水を添加して再溶解し過剰な塩酸と硝酸とを揮発させる。この溶液に固体Alを添加して液中のFe
3+を全てFe
2+に還元する。続いて、この溶液中のFe
2+イオンの量を過マンガン酸カリウム溶液で電位差滴定することにより定量分析し、Fe(Fe
2+)の滴定量を求めた。
(Mnの分析)
キャリア芯材のMn含有量は、JIS G1311−1987記載のフェロマンガン分析方法(電位差滴定法)に準拠して定量分析を行った。本願発明に記載したキャリア芯材のMn含有量は、このフェロマンガン分析方法(電位差滴定法)で定量分析し得られたMn量である。
(Mgの分析)
キャリア芯材のMg含有量は、以下の方法で分析を行った。本願発明に係るキャリア芯材を酸溶液中で溶解し、ICPにて定量分析を行った。本願発明に記載したキャリア芯材のMg含有量は、このICPによる定量分析で得られたMg量である。
(Caの分析)
キャリア芯材のCa含有量は、Mgの分析同様にICPによる定量分析で行った。
(Srの分析)
キャリア芯材のSr含有量は、Mgの分析同様にICPによる定量分析で行った。
(Baの分析)
キャリア芯材のBa含有量は、Mgの分析同様にICPによる定量分析で行った。
(Tiの分析)
キャリア芯材のTi含有量は、Mgの分析同様にICPによる定量分析で行った。
【0070】
(磁力の測定)
室温専用振動試料型磁力計(VSM)(東英工業社製「VSM−P7」)を用いて、外部磁場を0〜79.58×10
4A/m(10000エルステッド)の範囲で1サイクル連続的に印加して、残留磁化σr、保磁力Hc及び79.58×10
3A/m(1000エルステッド)の磁場における磁化σ
1k(Am
2/kg)をそれぞれ測定した。
【0071】
(帯電量)
キャリア芯材9.5g、市販のフルカラー機のトナー0.5gを100mlの栓付きガラス瓶に入れ、25℃、相対湿度50%の環境下で12時間放置して調湿する。調湿したキャリア芯材とトナーを振とう器で15分間振とうさせ混合する。ここで、振とう器については、株式会社ヤヨイ製のNEW−YS型を用い、126回/分、角度60°で行った。撹拌15分後の電子写真現像剤を300mg採取し、ユーテック社製のEA02と自動吸引装置を用い、吸引圧力High、分離用メッシュをSUS製の795mesh、トナーの捕集器具をフィルターカプセル(ユーテック社製EA010C)として90秒吸引後の帯電量を測定した。同一サンプルについて2回の測定を行い、これらの平均値をキャリア芯材の帯電量とした。キャリア芯材の帯電量は下記式から算出した。なお、測定環境は、温度25℃、相対湿度50%とした。
帯電量(μC/g)=実測電荷(μC)÷トナー重量
(式中、トナー重量=フィルターカプセル吸引後重量(g)−フィルターカプセル吸引前重量(g))
【0072】
(実機評価)
図1に示した構造の現像装置(現像ローラの周速度Vs:406mm/sec,感光体ドラムの周速度Vp:205mm/sec,感光体ドラム−現像ローラ間距離:0.3mm)に、作製した二成分現像剤を投入し、画像形成(印字率5%)を1000枚行った後、キャリア飛散及びカブリを下記の手順及び基準で評価した。
【0073】
キャリア飛散
白紙を1000枚印刷し、1000枚目の用紙における黒点の数を目視で判断した。評価基準は下記の通りである。
「○」:発見された黒点の数が1〜5個の場合
「×」:発見された黒点の数が11個以上の場合
【0074】
カブリ
上記1,000枚目の用紙における非画像形成部の画像濃度を10か所測定し、この平均値から未使用の白紙について測定した濃度を差し引き、この値を用いて下記基準で評価した。なお、画像濃度は反射濃度計「TC−6D」(東京電色社製)を用いて測定した。
「○」:濃度差が0.006未満
「×」:濃度差が0.006以上
【0075】
【表1】
【0076】
【表2】
【0077】
ペロブスカイト構造のTi成分原料を用いると共に、焼成温度を1200℃と高くし、また電気炉内の酸素濃度を10%と高くした
実施例1,2及び参考例1,2のキャリア芯材では、磁壁面積の指標としてのHc/σrが11.2〜12.1と所望の磁壁面積を有していると考えられ、帯電量は38〜42μC/gと高く、画像のカブリは生じなかった。また、磁化σ
1kについても56Am
2/kg以上を有しており、キャリア飛散は生じなかった。
【0078】
これに対して、Ti成分原料を配合しなかった比較例1のキャリア芯材では、Hc/σrが10.8と低く所望の磁壁面積を有していないと考えられ、帯電量は35μC/gと低く画像のカブリが生じた。
【0079】
また、比較例2では、ペロブスカイト構造のTi成分原料(SrTiO
3)を多く配合すると共に、焼成温度を900℃と低くしたため、得られたキャリア芯材のHc/σrが13.7と過度に高くなり、磁化σ
1kが37Am
2/kgと低くキャリア飛散が生じた。また、帯電量も25μC/gと低く画像のカブリが生じた。
【0080】
比較例3,4,5は、ルチル構造のTi成分原料(TiO
2)の配合量を変えたものであって、得られたキャリア芯材はいずれもHc/σrは10.8以下と低く、帯電量も35μC/g以下と低く画像のカブリが生じた。また、比較例5のキャリア芯材では、磁化σ
1kが54Am
2/kgと低くキャリア飛散も生じた。
【0081】
比較例6では、ペロブスカイト構造のTi成分原料(SrTiO
3)を多く配合すると共に、焼成工程における電気炉内の酸素濃度を0.1%と低くしたため、得られたキャリア芯材のHc/σrが9.1と過度に低くなり、帯電量は21μC/gと低く画像のカブリが生じた。