特許第6650300号(P6650300)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6650300-キャリア芯材 図000004
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6650300
(24)【登録日】2020年1月22日
(45)【発行日】2020年2月19日
(54)【発明の名称】キャリア芯材
(51)【国際特許分類】
   G03G 9/107 20060101AFI20200210BHJP
   G03G 9/113 20060101ALI20200210BHJP
【FI】
   G03G9/107 321
   G03G9/113 351
【請求項の数】4
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-47937(P2016-47937)
(22)【出願日】2016年3月11日
(65)【公開番号】特開2017-161808(P2017-161808A)
(43)【公開日】2017年9月14日
【審査請求日】2019年1月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】506334182
【氏名又は名称】DOWAエレクトロニクス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000224802
【氏名又は名称】DOWA IPクリエイション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111811
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】濱田 心
(72)【発明者】
【氏名】堀江 龍也
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 信也
【審査官】 福田 由紀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−182064(JP,A)
【文献】 特開2012−013865(JP,A)
【文献】 特開2011−112960(JP,A)
【文献】 特開2013−205614(JP,A)
【文献】 特開2011−164224(JP,A)
【文献】 特開2010−181524(JP,A)
【文献】 特開2016−033655(JP,A)
【文献】 特開2016−025288(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 9/10−9/113
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Tiを含有するフェライト粒子から構成されるキャリア芯材であって、
Tiの含有量が0.6質量%以上1.2質量%以下の範囲であり、
前記フェライト粒子がCa及びBaの少なくとも1つの元素を含有し、
残留磁化σr(Am/kg)に対する保持力Hc(10/4π・A/m)の比率Hc/σrが11.0以上13.0以下であることを特徴とするキャリア芯材。
【請求項2】
前記フェライト粒子がMn及びMgの少なくとも一方の元素をさらに含有する請求項1記載のキャリア芯材。
【請求項3】
請求項1又は2記載のキャリア芯材の表面が樹脂で被覆されていることを特徴とする電子写真現像用キャリア。
【請求項4】
請求項記載の電子写真現像用キャリアとトナーとを含む電子写真用現像剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はキャリア芯材並びにそれを用いた電子写真現像用キャリア及び電子写真用現像剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式を用いたファクシミリやプリンター、複写機などの画像形成装置では、フェライト粒子から構成されるキャリア芯材の表面を絶縁性樹脂で被覆したいわゆるコーティングキャリアとトナーとを混合した二成分系現像剤によって、感光体表面に形成された静電潜像を可視像化している。
【0003】
ここで使用されるキャリア芯材には電気的特性と磁気的特性とが要求される。具体的には、高抵抗且つ高磁力であることが要求される。キャリア芯材の抵抗が低いと、トナーに対する帯電付与性が低下し、非画像部にトナーが付着するいわゆるカブリが発生しやすくなる。また、キャリア芯材の磁力が低いと、現像ローラへの吸着が弱くなりキャリア飛散が生じやすくなる。
【0004】
そこで、例えば特許文献1では、磁化、BET比表面積及び平均粒径が一定範囲にあり、かつ周囲長/包絡長の個数分布が特定範囲にあるフェライトキャリア芯材が提案されている。また、先行文献2では、Mg、Ti及びFeを一定量含有し、細孔容積、ピーク細孔径及び磁気特性が特定範囲にある多孔質フェライト芯材が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−181398号公報
【特許文献2】特開2011−112960号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、いずれの提案技術でもキャリア芯材の抵抗と磁力は未だ十分とは言えず、更なる向上が望まれている。
【0007】
そこで本発明の目的は、一層の高抵抗且つ高磁力を有するキャリア芯材を提供することにある。
【0008】
また本発明の他の目的は、キャリア飛散やカブリといった不具合を招くことなく、安定して良好な画質の画像を形成することができる電子写真現像剤用キャリア及び電子写真現像剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成する本発明に係るキャリア芯材は、Tiを含有するフェライト粒子から構成されるキャリア芯材であって、残留磁化σr(Am/kg)に対する保持力Hc(10/4π・A/m)の比率Hc/σrが11.0以上13.0以下であることを特徴とする。
【0010】
ここで、Tiの含有量としては0.6質量%以上1.2質量%以下の範囲であるのが好ましい。
【0011】
また、前記フェライト粒子はMn及びMgの少なくとも一方の元素をさらに含有しているのが好ましい。
【0012】
そしてまた、前記フェライト粒子はCa、Sr、Baの少なくとも1つの元素をさらに含有しているのが好ましい。
【0013】
また本発明によれば、前記のいずれかに記載のキャリア芯材の表面が樹脂で被覆されていることを特徴とする電子写真現像用キャリアが提供される。
【0014】
さらに本発明によれば、前記の電子写真現像用キャリアとトナーとを含む電子写真用現像剤が提供される。
【発明の効果】
【0015】
本発明のキャリア芯材によれば所望の抵抗と磁力とが得られ、キャリア飛散及びカブリといった不具合が抑制される。
【0016】
また本発明の電子写真現像用キャリア及び電子写真用現像剤によれば、長期間の使用においてもキャリア飛散やカブリといった不具合を招くことなく、安定して良好な画質の画像を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明に係る電子写真用現像剤を用いた現像装置の一例を示す概説図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明者等は、フェライト粒子からなるキャリア芯材が所望の磁力を有し且つ高い帯電性を有することができないか鋭意検討を重ねたところ、フェライト粒子中の磁壁面積を適切な範囲に制御することで磁力の低下を抑えながら抵抗を高められることを見出した。
【0019】
また、フェライト粒子中の磁壁は、結晶構造がペロブスカイト構造であるTi成分原料を添加すること及び高温・高酸化雰囲気下で焼成を行うことにより効果的に形成させることができ、磁壁面積の制御は前記Ti成分原料の添加量及び焼成工程における焼成温度と酸素濃度などによって行うことができることを突き止め本発明に成すに至った。
【0020】
すなわち、本発明の大きな特徴の一つは、キャリア芯材を構成するフェライト粒子がTiを含有することにある。前述のように、ペロブスカイト構造のTi成分原料を添加することによって、その機構は未だ明確ではないがフェライト粒子中に磁壁が形成されやすくなる。
【0021】
本発明で使用できるペロブスカイト構造のTi成分原料としては、CaTiO、SrTiO、BaTiO、MgTiOなどのチタン酸アルカリ土類金属が挙げられる。また、これらのTi成分原料の添加量は、キャリア芯材におけるTi含有量が0.6質量%以上1.2質量%以下となる範囲とするのが望ましい。キャリア芯材のTi含有量が0.6質量%未満であると、磁壁面積が小さくキャリア芯材の高抵抗化が図れないおそれがある。一方、キャリア芯材のTi含有量が1.2質量%を超えると、磁壁面積が広くなる反面、磁壁内のフェライト成分の総量が少なくなり、トナーへの電荷供給量が低下するおそれがある。
【0022】
また本発明では、フェライト粒子内の磁壁面積量の指標として、残留磁化σr(Am/kg)に対する保持力Hc(10/4π・A/m)の比率Hc/σrを用いることとし、比率Hc/σrを11.0以上13.0以下としたことが本発明のもう一つの大きな特徴である。比率Hc/σrが11.0未満であると、フェライト粒子中の磁壁面積が十分でなく、キャリア芯材の高抵抗化が図れずトナーに対する帯電付与性を高められない。一方、比率Hc/σrが13.0を超えると磁壁が多くなりすぎ、磁壁内のフェライト成分が少なくなるためトナーへの電荷供給量が低下し、トナー帯電性が低下する。
【0023】
残留磁化σrは0.4〜0.6(Am/kg)の範囲が好ましい。また保持力Hcは5.0〜7.0(10/4π・A/m)の範囲が好ましい。
【0024】
本発明におけるフェライト粒子の組成に特に限定はなく、例えば、一般式MFe3−X(但し、MはMg,Mn,Cu,Zn,Niなどの金属,0<X<1)で表される組成の粒子が挙げられる。また、Ca、Sr、Baの少なくとも1種の元素を含有しているのが好ましい。これらの組成の中でもTiを含有するMnフェライト粒子、Tiを含有するMgフェライト粒子及びTiを含有するMnMgフェライト粒子が好適に使用される。
【0025】
本発明のキャリア芯材の粒径に特に限定はないが、体積平均粒子径で20μm〜50μmの範囲が好ましく、粒度分布はシャープであるのが好ましい。
【0026】
次に、本発明のキャリア芯材を構成するフェライト粒子の製造方法について説明する。フェライト粒子の製造方法に特に限定はないが、以下に説明する製造方法が好適である。
【0027】
まず、Fe成分原料、M成分原料、Ti成分原料を秤量し、原料混合粉を作製する。なお、MはMg,Mn,Cu,Zn,Ni等の2価の金属元素から選ばれる少なくとも1種の金属元素である。また、必要によりCa成分原料、Sr成分原料、Ba成分原料を添加する。Fe成分原料としては、Fe等が好適に使用される。M成分原料としては、MnであればMnCO、Mn等が使用でき、MgであればMgO、Mg(OH)、MgCOが好適に使用できる。また、CaであればCaO、Ca(OH)、CaCO等が好適に使用される。また、SrであればSrCO、Sr(NOなどが好適に使用される。また前述のように、Ti成分原料としては、結晶構造がペロブスカイト構造のものが使用され、CaTiO、SrTiO、BaTiO、MgTiOなどのチタン酸アルカリ土類金属が好適に使用される。
【0028】
次いで、作製した原料混合粉を仮焼成する。仮焼成の温度としては750℃〜900℃の範囲が好ましい。750℃以上であれば、仮焼による一部フェライト化が進み、焼成時のガス発生量が少なく、固体間反応が十分に進むため好ましい。一方、900℃以下であれば、仮焼による焼結が弱く、後のスラリー粉砕工程で原料を十分に粉砕できるので好ましい。また、仮焼成時の雰囲気としては大気雰囲気が好ましい。
【0029】
そして、仮焼成した原料を解粒して分散媒中に投入しスラリーを作製する。なお、仮焼成することなく原料混合粉を分散媒中に投入しスラリーを作製してもよい。本発明で使用する分散媒としては水が好適である。分散媒には、前記仮焼成原料の他、必要によりバインダー、分散剤等を配合してもよい。バインダーとしては、例えば、ポリビニルアルコールが好適に使用できる。バインダーの配合量としてはスラリー中の濃度が0.5質量%〜2質量%程度とするのが好ましい。また、分散剤としては、例えば、ポリカルボン酸アンモニウム等が好適に使用できる。分散剤の配合量としてはスラリー中の濃度が0.5質量%〜2質量%程度とするのが好ましい。その他、潤滑剤や焼結促進剤等を配合してもよい。スラリーの固形分濃度は50質量%〜90質量%の範囲が望ましい。より好ましくは60質量%〜80質量%である。60質量%以上であれば、造粒品中に粒子内細孔が少なく、焼成時の焼結不足を防ぐことができる。一方、80質量%以下であれば、結合粒子が少なく、粒子形状による流動性悪化を防ぐことができる。
【0030】
次に、以上のようにして作製されたスラリーを湿式粉砕する。例えば、ボールミルや振動ミルを用いて所定時間湿式粉砕する。粉砕後の原材料の体積平均粒径は10μm以下が好ましく、より好ましくは5μm以下である。振動ミルやボールミルには、所定粒径のメディアを内在させるのがよい。メディアの材質としては、鉄系のクロム鋼や酸化物系のジルコニア、チタニア、アルミナなどが挙げられる。粉砕工程の形態としては連続式及び回分式のいずれであってもよい。粉砕物の粒径は、粉砕時間や回転速度、使用するメディアの材質・粒径などによって調整される。
【0031】
そして、粉砕されたスラリーを噴霧乾燥させて造粒する。具体的には、スプレードライヤーなどの噴霧乾燥機にスラリーを導入し、雰囲気中へ噴霧することによって球状に造粒する。噴霧乾燥時の雰囲気温度は100℃〜300℃の範囲が好ましい。これにより、粒径10μm〜200μmの球状の造粒物が得られる。なお、得られた造粒物は、振動ふるい等を用いて、粗大粒子や微粉を除去し粒度分布をシャープなものとするのが望ましい。
【0032】
次に、造粒物を所定温度に加熱した炉に投入して焼成することによりフェライト粒子を生成させる。焼成温度としては通常よりも高い1100℃以上1300℃以下の範囲が好ましい。焼成温度が1100℃より低い温度であると、相変態が起こりにくくなるとともに焼結も進みにくくなる。また、磁壁の出現が促進しないおそれがある。一方、焼成温度が1300℃を超えると、過剰焼結による過大グレインが発生するおそれがある。前記焼成温度に至るまでの昇温速度としては200℃/h〜500℃/hの範囲が好ましい。
【0033】
加えて、焼成工程における酸素濃度を通常よりも高くする。焼成工程における酸素濃度を高くすることによって、磁壁の出現が促進されて粒子の高抵抗化が図られる。具体的には、酸素濃度を6%〜15%の範囲とするのが好ましい。これにより、前記のペロブスカイト構造のTi成分原料の配合と相まって、粒子中の磁壁の出現が促進される。
【0034】
このようにして得られたフェライト粒子を必要により解粒する。具体的には、例えば、ハンマーミル等によって焼成物を解粒する。解粒工程の形態としては連続式及び回分式のいずれであってもよい。そして、必要により、粒径を所定範囲に揃えるため分級を行ってもよい。分級方法としては、風力分級や篩分級など従来公知の方法を用いることができる。また、風力分級機で1次分級した後、振動篩や超音波篩で粒径を所定範囲に揃えるようにしてもよい。さらに、分級工程後に、磁場選鉱機によって非磁性粒子を除去するようにしてもよい。フェライト粒子の体積平均粒子径としては20μm〜50μmの範囲が好ましい。
【0035】
その後、必要に応じて、分級後のフェライト粒子を酸化性雰囲気中で加熱して、粒子表面に酸化被膜を形成してフェライト粒子のさらなる高抵抗化を図ってもよい(高抵抗化処理)。酸化性雰囲気としては大気雰囲気又は酸素と窒素の混合雰囲気のいずれでもよい。また、加熱温度は、200℃〜800℃の範囲が好ましく、250℃〜600℃の範囲がさらに好ましい。加熱時間は0.5時間〜5時間の範囲が好ましい。
【0036】
以上のようにして作製したフェライト粒子を本発明のキャリア芯材として用いる。そして、所望の帯電性等を得るために、キャリア芯材の外周を樹脂で被覆して電子写真現像用キャリアとする。
【0037】
キャリア芯材の表面を被覆する樹脂としては、従来公知のものが使用でき、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ−4−メチルペンテン−1、ポリ塩化ビニリデン、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)樹脂、ポリスチレン、(メタ)アクリル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、並びにポリ塩化ビニル系やポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリブタジエン系等の熱可塑性エストラマー、フッ素シリコーン系樹脂などが挙げられる。
【0038】
キャリア芯材の表面を樹脂で被覆するには、樹脂の溶液又は分散液をキャリア芯材に施せばよい。塗布溶液用の溶媒としては、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル類溶媒;エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール系溶媒;エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒などの1種又は2種以上を用いることができる。塗布溶液中の樹脂成分濃度は、一般に0.001質量%〜30質量%、特に0.001質量%〜2質量%の範囲内にあるのがよい。
【0039】
キャリア芯材への樹脂の被覆方法としては、例えばスプレードライ法や流動床法あるいは流動床を用いたスプレードライ法、浸漬法等を用いることができる。これらの中でも、少ない樹脂量で効率的に塗布できる点で流動床法が特に好ましい。樹脂被覆量は、例えば流動床法の場合には吹き付ける樹脂溶液量や吹き付け時間によって調整することができる。
【0040】
キャリアの体積平均粒子径は10μm〜200μmの範囲、特に20μm〜50μmの範囲が好ましい。
【0041】
本発明に係る電子写真用現像剤は、以上のようにして作製したキャリアとトナーとを混合してなる。キャリアとトナーとの混合比に特に限定はなく、使用する現像装置の現像条件などから適宜決定すればよい。一般に現像剤中のトナー濃度は1質量%〜15質量%の範囲が好ましい。トナー濃度が1質量%未満の場合、画像濃度が薄くなりすぎ、他方トナー濃度が15質量%を超える場合、現像装置内でトナー飛散が発生し機内汚れや転写紙などの背景部分にトナーが付着する不具合が生じるおそれがあるからである。より好ましいトナー濃度は3質量%〜10質量%の範囲である。
【0042】
トナーとしては、重合法、粉砕分級法、溶融造粒法、スプレー造粒法など従来公知の方法で製造したものが使用できる。具体的には、熱可塑性樹脂を主成分とする結着樹脂中に、着色剤、離型剤、帯電制御剤等を含有させたものが好適に使用できる。
【0043】
トナーの粒径は、一般に、コールターカウンターによる体積平均粒径で5μm〜15μmの範囲が好ましく、7μm〜12μmの範囲がより好ましい。
【0044】
トナー表面には、必要により、改質剤を添加してもよい。改質剤としては、例えば、シリカ、アルミナ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化マグネシウム、ポリメチルメタクリレート等が挙げられる。これらの1種又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0045】
キャリアとトナーとの混合は、従来公知の混合装置を用いることができる。例えばヘンシェルミキサー、V型混合機、タンブラーミキサー、ハイブリタイザー等を用いることができる。
【0046】
本発明の現像剤を用いた現像方法に特に限定はないが、磁気ブラシ現像法が好適である。図1に、磁気ブラシ現像を行う現像装置の一例を示す概説図を示す。図1に示す現像装置は、複数の磁極を内蔵した回転自在の現像ローラ3と、現像部へ搬送される現像ローラ3上の現像剤量を規制する規制ブレード6と、水平方向に平行に配置され、互いに逆向きに現像剤を撹拌搬送する2本のスクリュー1,2と、2本のスクリュー1,2の間に形成され、両スクリューの両端部において、一方のスクリューから他方のスクリューに現像剤の移動を可能とし、両端部以外での現像剤の移動を防ぐ仕切板4とを備える。
【0047】
2本のスクリュー1,2は、螺旋状の羽根13,23が同じ傾斜角で軸部11,21に形成されたものであって、不図示の駆動機構によって同方向に回転し、現像剤を互いに逆方向に搬送する。そして、スクリュー1,2の両端部において一方のスクリューから他方のスクリューに現像剤が移動する。これによりトナーとキャリアからなる現像剤は装置内を常に循環し撹拌されることになる。
【0048】
一方、現像ローラ3は、表面に数μmの凹凸を付けた金属製の筒状体の内部に、磁極発生手段として、現像磁極N、搬送磁極S、剥離磁極N、汲み上げ磁極N、ブレード磁極Sの5つの磁極を順に配置した固定磁石を有してなる。現像ローラ3が矢印方向に回転すると、汲み上げ磁極Nの磁力によって、スクリュー1から現像ローラ3へ現像剤が汲み上げられる。現像ローラ3の表面に担持された現像剤は、規制ブレード6により層規制された後、現像領域へ搬送される。
【0049】
現像領域では、直流電圧に交流電圧を重畳したバイアス電圧が転写電圧電源8から現像ローラ3に印加される。バイアス電圧の直流電圧成分は、感光体ドラム5表面の背景部電位と画像部電位との間の電位とされる。また、背景部電位と画像部電位とは、バイアス電圧の最大値と最小値との間の電位とされる。バイアス電圧のピーク間電圧は0.5〜5kVの範囲が好ましく、周波数は1〜10kHzの範囲が好ましい。またバイアス電圧の波形は矩形波、サイン波、三角波などいずれであってもよい。これによって、現像領域においてトナー及びキャリアが振動し、トナーが感光体ドラム5上の静電潜像に付着して現像がなされる。
【0050】
その後現像ローラ3上の現像剤は、搬送磁極Sによって装置内部に搬送され、剥離電極Nによって現像ローラ3から剥離して、スクリュー1,2によって装置内を再び循環搬送され、現像に供していない現像剤と混合撹拌される。本発明のキャリア芯材を用いた現像剤では、剥離電極Nによる現像ローラ3からの剥離が円滑に行われる。そして汲み上げ極Nによって、新たに現像剤がスクリュー1から現像ローラ3へ供給される。これにより、画像濃度ムラが防止される。また、搬送磁極Sや現像磁極Nによって現像剤は現像ローラ3にしっかりと吸着しキャリア飛散が抑制される。
【0051】
なお、図1に示した実施形態では現像ローラ3に内蔵された磁極は5つであったが、現像剤の現像領域での移動量を一層大きくしたり、汲み上げ性等を一層向上させるために、磁極を8極や10極、12極と増やしてももちろん構わない。
【実施例】
【0052】
参考例1
キャリア芯材を次のようにして作製した。原料としてのFe(平均粒径:0.3μm)17.04kg、Mn(平均粒径:0.5μm)6.51kg、MgO(平均粒径:0.6μm)0.86kg、MgTiO(ペロブスカイト構造,平均粒径:1.5μm)0.39kgを純水6.2kg中に分散し、分散剤としてポリカルボン酸アンモニウム系分散剤を0.6wt%添加して混合物とした。この混合物の固形分濃度は80wt%であった。この混合物を湿式ボールミル(メディア径2mm)により粉砕処理し、混合スラリーを得た。
【0053】
この混合スラリーをスプレードライヤーにて約130℃の熱風中に噴霧し、粒径10〜75μmの乾燥造粒物を得た。この造粒物から、網目54μmの篩網を用いて粗粒を分離し、網目33μmの篩網を用いて微粒を分離した。
【0054】
この造粒物を、電気炉に投入し1200℃まで5時間かけて昇温した。その後1200℃で4.5時間保持することにより焼成を行った。その後冷却速度2℃/分で500℃まで冷却した。電気炉内の酸素濃度は10%となるよう酸素と窒素とを混合したガスを炉内に供給した。
【0055】
得られた焼成物をハンマーミルで解粒した後に振動ふるいを用いて分級し、体積平均粒径(平均粒径)35.5μmの焼成物を得た。
【0056】
次いで、得られた焼成物を大気雰囲気下450℃で1.5時間保持することにより酸化処理(高抵抗化処理)を行い、キャリア芯材を得た。
【0057】
得られたキャリア芯材の組成、磁気特性、帯電特性などを後述の方法で測定した。測定結果を表2に示す。
【0058】
次に、このようにして得られたキャリア芯材の表面を樹脂で被覆してキャリアを作製した。具体的には、シリコーン樹脂450重量部と、(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン9重量部とを、溶媒としてのトルエン450重量部に溶解してコート溶液を作製した。このコート溶液を、流動床型コーティング装置を用いてキャリア芯材50000重量部に塗布し、温度300℃の電気炉で加熱してキャリアを得た。以下、比較例についても同様にしてキャリアを得た。
【0059】
得られたキャリアと体積平均粒径5.0μm程度のトナーとを、ポットミルを用いて所定時間混合し、二成分系の電子写真現像剤を得た。この場合、キャリアとトナーとをトナーの重量/(トナーおよびキャリアの重量)=5/100となるように調整した。以下、全ての比較例についても同様にして現像剤を得た。得られた現像剤について後述の実機評価を行った。評価結果を表2に示す。
【0060】
実施例1
原料としてFe(平均粒径:0.3μm)16.92kg、Mn(平均粒径:0.4μm)6.47kg、MgO(平均粒径:0.6μm)0.85kg、CaTiO(ペロブスカイト構造,平均粒径:1.5μm)0.55kgを用いた以外は参考例1と同様にして平均粒径35.2μmのキャリア芯材を作成した。
【0061】
参考例2
原料としてFe(平均粒径:0.3μm)16.76kg、Mn(平均粒径:0.4μm)6.40kg、MgO(平均粒径:0.6μm)0.85kg、SrTiO(ペロブスカイト構造,平均粒径:1.5μm)0.79kgを用いた以外は参考例1と同様にして平均粒径35.1μmのキャリア芯材を作成した。
【0062】
実施例2
原料としてFe(平均粒径:0.3μm)16.34kg、Mn(平均粒径:0.4μm)6.24kg、MgO(平均粒径:0.6μm)0.82kg、BaTiO(ペロブスカイト構造,平均粒径:1.8μm)1.39kgを用いた以外は参考例1と同様にして平均粒径33.4μmのキャリア芯材を作成した。
【0063】
(比較例1)
MgTiOを配合しなかった以外は参考例1と同様にして平均粒径34.4μmのキャリア芯材を作成した。
【0064】
(比較例2)
原料としてFe(平均粒径:0.3μm)15.32kg、Mn(平均粒径:0.4μm)5.85kg、MgO(平均粒径:0.6μm)0.77kg、SrTiO(ペロブスカイト構造,平均粒径:1.5μm)2.85kgを用い、焼成温度を900℃とした以外は参考例1と同様にして平均粒径35.7μmのキャリア芯材を作成した。
【0065】
(比較例3)
原料としてFe(平均粒径:0.3μm)17.14kg、Mn(平均粒径:0.4μm)6.55kg、MgO(平均粒径:0.6μm)0.87kg、TiO(ルチル構造,平均粒径:0.4μm)0.25kgを用いた以外は参考例1と同様にして平均粒径33.7μmのキャリア芯材を作成した。
【0066】
(比較例4)
原料としてFe(平均粒径:0.3μm)17.08kg、Mn(平均粒径:0.4μm)6.53kg、MgO(平均粒径:0.6μm)0.86kg、TiO(ルチル構造,平均粒径:0.4μm)0.33kgを用いた以外は参考例1と同様にして平均粒径34.3μmのキャリア芯材を作成した。
【0067】
(比較例5)
原料としてFe(平均粒径:0.3μm)16.96kg、Mn(平均粒径:0.4μm)6.48kg、MgO(平均粒径:0.6μm)0.86kg、TiO(ルチル構造,平均粒径:0.4μm)0.50kgを用いた以外は参考例1と同様にして平均粒径35.2μmのキャリア芯材を作成した。
【0068】
(比較例6)
焼成工程における焼成温度を1200℃とし、電気炉内の酸素濃度を0.1%とした以外は比較例2と同様にして平均粒径35.1μmのキャリア芯材を作成した。
【0069】
(組成分析)
実施例及び比較例のキャリア芯材の組成(質量%)を下記の方法で算出した。
(Feの分析)
鉄元素を含むキャリア芯材を秤量し、塩酸と硝酸の混酸水に溶解させた。この溶液を蒸発乾固させた後、硫酸水を添加して再溶解し過剰な塩酸と硝酸とを揮発させる。この溶液に固体Alを添加して液中のFe3+を全てFe2+に還元する。続いて、この溶液中のFe2+イオンの量を過マンガン酸カリウム溶液で電位差滴定することにより定量分析し、Fe(Fe2+)の滴定量を求めた。
(Mnの分析)
キャリア芯材のMn含有量は、JIS G1311−1987記載のフェロマンガン分析方法(電位差滴定法)に準拠して定量分析を行った。本願発明に記載したキャリア芯材のMn含有量は、このフェロマンガン分析方法(電位差滴定法)で定量分析し得られたMn量である。
(Mgの分析)
キャリア芯材のMg含有量は、以下の方法で分析を行った。本願発明に係るキャリア芯材を酸溶液中で溶解し、ICPにて定量分析を行った。本願発明に記載したキャリア芯材のMg含有量は、このICPによる定量分析で得られたMg量である。
(Caの分析)
キャリア芯材のCa含有量は、Mgの分析同様にICPによる定量分析で行った。
(Srの分析)
キャリア芯材のSr含有量は、Mgの分析同様にICPによる定量分析で行った。
(Baの分析)
キャリア芯材のBa含有量は、Mgの分析同様にICPによる定量分析で行った。
(Tiの分析)
キャリア芯材のTi含有量は、Mgの分析同様にICPによる定量分析で行った。
【0070】
(磁力の測定)
室温専用振動試料型磁力計(VSM)(東英工業社製「VSM−P7」)を用いて、外部磁場を0〜79.58×10A/m(10000エルステッド)の範囲で1サイクル連続的に印加して、残留磁化σr、保磁力Hc及び79.58×10A/m(1000エルステッド)の磁場における磁化σ1k(Am/kg)をそれぞれ測定した。
【0071】
(帯電量)
キャリア芯材9.5g、市販のフルカラー機のトナー0.5gを100mlの栓付きガラス瓶に入れ、25℃、相対湿度50%の環境下で12時間放置して調湿する。調湿したキャリア芯材とトナーを振とう器で15分間振とうさせ混合する。ここで、振とう器については、株式会社ヤヨイ製のNEW−YS型を用い、126回/分、角度60°で行った。撹拌15分後の電子写真現像剤を300mg採取し、ユーテック社製のEA02と自動吸引装置を用い、吸引圧力High、分離用メッシュをSUS製の795mesh、トナーの捕集器具をフィルターカプセル(ユーテック社製EA010C)として90秒吸引後の帯電量を測定した。同一サンプルについて2回の測定を行い、これらの平均値をキャリア芯材の帯電量とした。キャリア芯材の帯電量は下記式から算出した。なお、測定環境は、温度25℃、相対湿度50%とした。
帯電量(μC/g)=実測電荷(μC)÷トナー重量
(式中、トナー重量=フィルターカプセル吸引後重量(g)−フィルターカプセル吸引前重量(g))
【0072】
(実機評価)
図1に示した構造の現像装置(現像ローラの周速度Vs:406mm/sec,感光体ドラムの周速度Vp:205mm/sec,感光体ドラム−現像ローラ間距離:0.3mm)に、作製した二成分現像剤を投入し、画像形成(印字率5%)を1000枚行った後、キャリア飛散及びカブリを下記の手順及び基準で評価した。
【0073】
キャリア飛散
白紙を1000枚印刷し、1000枚目の用紙における黒点の数を目視で判断した。評価基準は下記の通りである。
「○」:発見された黒点の数が1〜5個の場合
「×」:発見された黒点の数が11個以上の場合
【0074】
カブリ
上記1,000枚目の用紙における非画像形成部の画像濃度を10か所測定し、この平均値から未使用の白紙について測定した濃度を差し引き、この値を用いて下記基準で評価した。なお、画像濃度は反射濃度計「TC−6D」(東京電色社製)を用いて測定した。
「○」:濃度差が0.006未満
「×」:濃度差が0.006以上
【0075】
【表1】
【0076】
【表2】
【0077】
ペロブスカイト構造のTi成分原料を用いると共に、焼成温度を1200℃と高くし、また電気炉内の酸素濃度を10%と高くした実施例1,2及び参考例1,2のキャリア芯材では、磁壁面積の指標としてのHc/σrが11.2〜12.1と所望の磁壁面積を有していると考えられ、帯電量は38〜42μC/gと高く、画像のカブリは生じなかった。また、磁化σ1kについても56Am/kg以上を有しており、キャリア飛散は生じなかった。
【0078】
これに対して、Ti成分原料を配合しなかった比較例1のキャリア芯材では、Hc/σrが10.8と低く所望の磁壁面積を有していないと考えられ、帯電量は35μC/gと低く画像のカブリが生じた。
【0079】
また、比較例2では、ペロブスカイト構造のTi成分原料(SrTiO)を多く配合すると共に、焼成温度を900℃と低くしたため、得られたキャリア芯材のHc/σrが13.7と過度に高くなり、磁化σ1kが37Am/kgと低くキャリア飛散が生じた。また、帯電量も25μC/gと低く画像のカブリが生じた。
【0080】
比較例3,4,5は、ルチル構造のTi成分原料(TiO)の配合量を変えたものであって、得られたキャリア芯材はいずれもHc/σrは10.8以下と低く、帯電量も35μC/g以下と低く画像のカブリが生じた。また、比較例5のキャリア芯材では、磁化σ1kが54Am/kgと低くキャリア飛散も生じた。
【0081】
比較例6では、ペロブスカイト構造のTi成分原料(SrTiO)を多く配合すると共に、焼成工程における電気炉内の酸素濃度を0.1%と低くしたため、得られたキャリア芯材のHc/σrが9.1と過度に低くなり、帯電量は21μC/gと低く画像のカブリが生じた。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明のキャリア芯材によれば所望の抵抗と磁力とが得られ、キャリア飛散及びカブリといった不具合が抑制され有用である。
【符号の説明】
【0083】
3 現像ローラ
5 感光体ドラム
図1