【文献】
RAKOWSKI et al.,Metrology of Mo/Si multilayer mirrors at 13.5 nm with the use of a laser-produced plasma extreme ultraviolet(EUV) source based on a gas puff target,Optica Applicata,2006年,Vol.36,No.4,p.593-600
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
EUV光学系(200)用の波長可変試験スペクトルを発生させる発生ユニット(10)であって、2つの対向配置されたミラー(31、32)を有するフィルタユニット(30)を備え、該フィルタユニット(30)は2つの前記ミラー(31、32)のうちの一方のミラーを貫通する入射放射線用の入射開口(33)を備え、ビームが前記ミラー(31、32)間で多重反射され、出射放射線が、他方のミラーを貫通する少なくとも1つの出射開口(34)を通してフィルタユニット(30)から出る発生ユニット。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、EUV光学系を光学的に測定するための改良デバイス及び改良法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的は、第1態様によれば、EUV光学系用の試験デバイスであって、
EUV光学系用の波長可変スペクトルを発生させる発生ユニットであり、EUV光学系から出る試験スペクトルをセンサユニットによって感知可能である発生ユニット
を備えた試験デバイスによって達成される。
【0008】
第2態様によれば、上記目的は、EUV光学系用の波長可変試験スペクトルを発生させる発生ユニットであって、2つの対向配置されたミラーを有するフィルタユニットを備え、フィルタユニットは入射放射線用の入射開口を備え、ビームがミラー間で多重反射され、出射放射線が少なくとも1つの出射開口を通してフィルタユニットから出る発生ユニットによって達成される。
【0009】
第3態様によれば、本発明は、EUV光学系を測定する方法であって、
波長可変試験放射線をEUV光学系に照射するステップと、
EUV光学系の下流の試験放射線をセンサユニットによって感知するステップと、
感知した試験放射線を評価ユニットによって評価するステップと
を含む方法を提供する。
【0010】
従属請求項は、本発明による試験デバイスの好適な実施形態に関する。
【0011】
本発明による試験デバイスの好適な一実施形態は、発生ユニットがプラズマ源を含み、プラズマ源は、EUV光学系の作動波長領域で放出する少なくとも1つのガスを含むことを特徴とする。プラズマ源に適したガスを選択することにより、こうしてEUV光学系の適当な試験スペクトルをもたらすことが可能である。
【0012】
本発明による試験デバイスのさらに別の好適な実施形態では、アルゴン、クリプトン、キセノン、窒素、ネオン、及び酸素の群からの少なくとも1つをガスとして使用可能である。結果として、EUV光学系の有効作動範囲である波長領域で放出するガスが選択される。さらに、上記ガスは、EUV光学系に適合することが有利である。
【0013】
本発明による試験デバイスのさらに別の好適な実施形態では、少なくとも2つの発生した異なる「ベーススペクトル」が重畳可能であるように「目標スペクトル」を発生ユニットによって発生可能である。本願に関連して、目標スペクトルは、使用条件下のスペクトルに対応するか又は近いスペクトルを意味すると理解すべきである。ガススペクトルのそれぞれがベーススペクトルを表す。有利には、それにより試験スペクトルを変えることが可能であり、長期間にわたって大量の試験パラメータを調整する必要なく一動作行程でEUV光学系の試験を行うことが可能となる。このように、有利には、複雑な機械的設定を実行又は変更する必要がない。
【0014】
本発明による試験デバイスのさらに別の好適な実施形態は、ベーススペクトルをEUV光学系に連続して適用することによって所定の目標スペクトルをできる限り良好に近似可能であることを特徴とする。これは、ごくわずかなベーススペクトルでの連続試験を可能にすることが有利である。
【0015】
本発明による試験デバイスのさらに別の有利な実施形態では、ガスの混合比が可変である。これにより、特定の試験要件によく適合させることができる変動性の高い試験スペクトルを発生させることができるという利点が得られる。
【0016】
本発明によるデバイスのさらに別の好適な実施形態は、目標スペクトルが、目標スペクトルの最大値、幅、及び中心波長を含む3つのパラメータを用いた数学関数として表現可能であることによって特徴付けられる。これは、ごくわずかなパラメータでの対象の目標スペクトルの記述を意味するので有利である。目標スペクトルの形成に用いるスペクトルの数をこのようにして最小化できることが有利である。
【0017】
本発明による試験デバイスのさらに別の好適な実施形態は、発生ユニットが2つの対向配置されたミラーを有するフィルタユニットを備え、フィルタユニットが入射放射線用の入射開口を備え、ビームがミラー間で多重反射され、出射放射線が少なくとも1つの出射開口を通してフィルタユニットから出ることによって特徴付けられる。この場合、2つの対向配置されたミラーは、完全反射平面ミラーとして具現されることが好ましい。さらに、入射開口を2つのミラーのうちの一方に、出射開口を2つのミラーのうちの他方に形成することができる。
【0018】
このように、波長の所望の変動をスペクトルフィルタによってもたらすことができ、これは、数学的観点から見て可変試験スペクトルによるものと同じ効果を可能にする。フィルタ効果は、多重反射によって増幅させることができる。この場合、ビームが2つのミラーのうちの一方によって画定される平面に対して種々の傾きでフィルタユニットに入射することができ、ビームは、2つの対向配置されたミラー間で往復反射される。EUV光学系用のスペクトルは、このようにしてミラーの規定の幾何学的形状によってもたらされる。
【0019】
従来のモノクロメータに勝る主な利点は、この原理を用いて、さらに多くのビームを同時にフィルタリングすることができ、反射に確実に影響を及ぼすことができることである。この場合も同じミラーで1つおきに反射が起こり、個々のミラーを概して非常に均一且つ正確に製造できることによって測定精度の向上が得られる。結果として、このようにして比較的単純な構造によってベーススペクトルを所望の目標スペクトルに制限することができる。
【0020】
試験デバイスのさらに別の実施形態では、2つのミラーが相互に平行又は実質的に平行に配置される。これに関して、実質的に平行とは、2つのミラーの角度偏差が1mrad未満、特に1mradよりも大幅に小さいように設計され得ることを意味する。
【0021】
本発明による試験デバイスのさらに別の好適な実施形態は、試験スペクトルが、入射開口と出射開口との間の距離の変動及び/又はミラー間のプレート間距離(plate distance)の変動によって設定可能であることによって特徴付けられる。結果として、スペクトルフィルタの帯域幅又は中心波長を変える種々の可能性が得られることが有利である。原理上、フィルタユニットの帯域幅が反射又は二重反射の数に応じて変わり、そこで生じる反射が多いほどフィルタが狭帯域になると言える。
【0022】
本発明による試験デバイスのさらに別の好適な実施形態は、2つのミラーの平行度が設定可能であることを特徴とする。これにより、2つのミラーの平行度を調整又は設定することが単純に可能となることが有利である。
【0023】
本発明による試験デバイスのさらに別の好適な実施形態は、フィルタの上側及び下側で開口が格子状に具現され、開口間の距離が座標位置合わせに応じて実質的に同一又は実質的に可変であることを特徴とする。このように、多くのビームに関して同じ波長を常にフィルタリングする、ある種の篩構造が形成される。有利には、かかる構造は、実質的に平行なビームがEUV光学系に対して出入りする場合に使用可能である。
【0024】
本発明による試験デバイスのさらに別の好適な実施形態は、フィルタユニットが発生ユニット内に可動に配置されることによって特徴付けられる。付加的なパラメータがこの可動性によって与えられ、この付加的なパラメータによって試験スペクトルの変動性がさらに高まる。
【0025】
本発明による試験デバイスのさらに別の好適な実施形態は、フィルタユニットがEUV光学系の上流及び/又は下流に配置されることによって特徴付けられる。したがって、2つの位置がスペクトルフィルタに利用可能であり、第1の場合には、所定且つ所望の波長を有する光がEUV光学系に入ることができ、したがってフィルタを光源の一部とみなすべきである。第2の場合には、センサユニットが所望の波長領域を捉えることが意図され、したがってその結果としてスペクトルフィルタをセンサユニットの一部とみなすことができる。
【0026】
試験デバイスに関して述べた態様及び詳細を、発生ユニット及び試験法にも適用できることを指摘する。
【発明の効果】
【0027】
本発明による発生ユニットによって、EUV光学系を実質的にその現用のスペクトル領域で試験可能であることが特に有利であるとみなされる。この目的で、EUV光学系の有効スペクトルをマッピングする試験スペクトルが提供されるか、又は試験スペクトルがEUV光学系の有効スペクトルに実質的に対応する。このように、光学ユニットの欠陥を初期段階で識別し、ひいては製造プロセスを最適化することが可能であることが有利である。したがって、波長のパラメータは、本発明によって変わり、その結果としてEUV光学系の適格性確認(qualified)又は品質保証が行われる。
【0028】
有利には、複雑な機械的設定を実行又は変更する必要がない。有利には、真空に適した機構を用いる必要もない。結果として、これは、試験シーケンスを加速させることを意味するので有利である。
【0029】
複数の図を参照して、本発明をさらなる特徴及び利点と共に以下で詳細に説明する。この場合、記載又は図示される全ての特徴が、特許請求項又はその従属項での引用(dependency reference)におけるそれらの併記とは無関係に、また説明又は図面におけるそれらの文言又は図示とは無関係に、単独又は任意の所望の組み合わせで本発明の主題を形成する。図面は、本発明に不可欠な原理を説明することを主に意図したものであり、必ずしも縮尺に忠実に図示されていない。図中、同一の又は機能的に同一の要素は同一の参照符号を有する。
【発明を実施するための形態】
【0031】
非特許文献1に記載の従来技術とは対照的に、本発明は、光学結像時の分解能に関するのではなく、その強度及びスペクトル依存性の測定に関する。
【0032】
nm領域の放射線(軟X線)用のEUV光学系は、その反射率及び/又は透過率のプロファイルの波長依存性が高いという一般的な基本問題を有する。
【0033】
図1は、特定の入射角それぞれに関するEUV光学系の典型的な反射率曲線を左図に示す。この図は、入射角φの種々の値に関する反射率Rのプロファイルを示し、通常のミラーコーティングのスペクトル反射率曲線が入射角φに応じて変わることが分かる。既知のブラッグの条件によれば、最大反射率が生じる波長λmaxは、次式に従って入射角φ及び層厚d
sに応じて変わる。
dS=λmax/2×cosφ
この関係は、狭帯域性と共に、EUV光学系をその設計の対象となった入射角φでしか作動させることができないという制限をもたらす。
図1は、従来のEUVブラッグミラーの典型的な構造を右図に示す。この図は、例えば石英の形態の基板Sと、その上に配置されたシリコン又はモリブデンをそれぞれ施したいくつかのMoSi層とを示す。
【0034】
図2は、13.5nmの固定波長での入射角φに対するEUVブラッグミラーの反射率Rの典型的な依存性を示す。ミラーが約10°の入射角φで最もよく反射するよう設計されていることが分かる。
【0035】
EUV光学系のさらに別の既知の問題は、空気がEUV放射線を吸収するのでEUV光学系を真空で作動させなければならないことである。言及した難題は、原理上は透過コンポーネントにも当てはまる。
【0036】
EUV光学系の狭帯域性にさらに伴う事実として、特に使用されるセンサシステムがスペクトルフィルタを含まない場合でも、透過、反射、及び他の光学的変数(例えば偏光)が光源のスペクトルに敏感に応じて変わる。したがって、その後の使用条件に対応しない条件下で光学系を試験することは困難であり補正計算を必要とする。
【0037】
しかしながら、かかる試験は、特にEUV光学系の一部を機械全体への組み込み前に別個に試験しなければならない場合に、光学系の製造において必要であることが多い。
【0038】
既知のEUV光源(概してプラズマ)は全て多色なので、光学試験に関するこの態様に関しては、実際には後の用途でも用いられるのと同じ光源を用いる必要がある。他のEUV光学系が実際の光源と試験対象部品との間に位置してスペクトルに影響を及ぼす場合、厳密に言えば、これらの光学系も試験設備(set-up)の一部として再現しなければならない。しかしながら、使用条件を正確にシミュレートして光学系を試験しなくてもよい場合に、一連の利点が得られる。設備が誤差(例えば調整誤差)にできる限り敏感に反応しないように光学試験測定を最適化することで、ここでは柔軟性が特に重要だが例えば高い光パワーを通常は不要にすることができることが望ましい。さらに、代替的な光源は、より安価且つ小型であり得る。しかしながら、異なる光源の使用がもたらす影響として、概して、光の発生に用いられる技術(例えば、レーザ誘起プラズマ又はアーク放電)及び光源のソースジオメトリ(source geometry)に密接に関連した異なるスペクトルを用いる必要がある。換言すれば、ここでは、用途にできる限り近いスペクトルと十分に柔軟な測定設備との間の妥協案を探る必要がある。
【0039】
しかしながら、光学測定変数が特定の多色光源スペクトルを用いて測定される場合、この手段だけでは、異なる多色光源スペクトルに関して上記測定変数が有することになる値を正確に予測することはまだ不可能である。かかる予測は、個々のコンポーネント及び調整の品質を確保することによって、又は光学系のスペクトル特性を試験することによって、さらなる情報を必要とする。
【0040】
個々のミラーを試験する際、チューナブルモノクロメータ又はスペクトルフィルタをかかるスペクトル特性化に用いることが慣習である。しかしながら、現在知られているモノクロメータ(ブラッグミラー、回折格子、又は結晶)が特定の入射角でしか機能せず、非常に小さな開口角を有するビームしか十分に単色にすることができないので、この方法は、非常に複雑で時間がかかることが不利である。
【0041】
したがって、EUV光学系の開口全体を同時に単色光で照明することは困難であることが知られている。したがって、ブラッグミラー、回折格子、又は結晶を用いたスペクトルフィルタリングによる測定は、連続的にしか可能でなく、これは、光学系の入力開口全体を細いビームで走査しなければならないことを意味する。
【0042】
したがって、第1に長い測定時間の場合にドリフトが生じ得ること、また第2に波長の調整用のモノクロメータ及びスペクトルフィルタを機械的に動かす(例えば傾ける)必要があることから、記載した測定法は時間がかかり、さらには高い測定精度を得るのに不適当である。試験体の光学特性の角度依存性が高いことにより、全ての運動の場合に、入射角が常に十分に正確に守られていることを確実にするよう留意する必要がある。さらに、全てのアクチュエータも真空で機能しなければならない。EUV領域のスペクトルフィルタは、角度依存反射率(結晶モノクロメータ、多層を有するブラッグミラー)又は透過率(自立多層)に対して機能する。ブラッグミラー及び透過多層には、結晶及び格子と比べて、フィルタ特性が層構造の変化によって決まり得るという利点がある。しかしながら、透過コンポーネントは非常に敏感であり、したがって限られた範囲でのみ使用可能である。ミラー系の場合、難題は、良好なフィルタ効果を得るために複数のミラーを前後に並べて配置しなければならないことである。個々のミラーは、反射毎に目的の入射角が十分に正確に守られるように相互に関して且つ入射ビームに関して調整しなければならない。チューナブルフィルタを(スペクトル的に又は種々の入射角に関して)構成することが望まれる場合、全てのミラーが高精度で可動でなければならない。特に、EUV光が空気中に吸収されるので設備も真空に適していなければならないという理由から、これは設備及びコンポーネントに関して大きな支出を要する。
【0043】
本発明は、複数の非単色スペクトル(いわゆる「ベーススペクトル」)によるEUV光学系の試験を提案する。原理上はこうして、EUV光学系の形態の試験体に関するスペクトル情報を試験設備の機械的移動を伴わずに得ることができる。
図5は、対応する基本的な試験設備を概略的に示す。
【0044】
ベーススペクトル又は少なくともそれらの差が既知であり、関心の光強度測定変数の値がスペクトル(又はスペクトルが変化すると生じる差)毎に測定される場合、ベーススペクトルの線形結合として表すことができるスペクトル毎の測定値を予測することも可能である。この場合、光透過の線形性を利用する。ベーススペクトルl1に関するセンサユニット20(
図5参照)における強度プロファイルを、次式として表すことができる。
【数1】
【0045】
ベーススペクトルl2に関するセンサユニット20における強度プロファイルを、次式として表すことができる。
【数2】
【0046】
ベーススペクトルl1及びl2の線形結合に関するセンサユニット20における強度プロファイルを、次式(1)によって数学的に表すことができ、
【数3】
式中のパラメータは、
λ 波長
x センサ上の空間座標
T 測定対象の試験体のスペクトル透過率(又は反射率)
a 0〜1の自由に選択可能なパラメータ
l
1、l
2 光源又は下流に光学試験設備がある光源のスペクトル
l1,Sensor、l2,Sensor 試験体後方のセンサにおけるスペクトル
であり、ベーススペクトルl
1、l
2が分かれば、式(1)を用いて測定可能な変数l
1,Sensor、l
2,Sensorから、スペクトルの線形結合を記述するパラメータaの種々の値に関する値l
Sensorを導き出すことができる。対応する式が、3つ以上のベーススペクトルに関して成り立つ。ベーススペクトルの差のみが分かっている場合、2つのスペクトル毎に差分測定に関して次式(2)を用いることが可能である。
【数4】
式(1)によるベーススペクトルの線形結合を、
図3に示す。ベーススペクトルB1、B2の線形結合を組み合わせて目標スペクトルZA、ZBを形成することができることが分かる。
【0047】
本発明は、費用上の理由からスキャナでその後用いられるLPP(レーザ誘起プラズマ)源と共に適格性確認を行うことができないEUV照明系の試験のために技術的に実施される場合に、この原理を用いることを提案する。他のEUV光学系及び同じく個々のコンポーネント測定の用途も、同様に考えられる。
【0048】
特に、ここでは理想的には異なるガスのみを導入しなければならず、適切な場合には破壊電圧を適合させなければならないので、アーク放電プラズマ源(DPP源、放電生成プラズマ)が実用的実施に適している。かかる測定の実施に用いることができる種々の希ガスの例を
図4に示す。
【0049】
図4は、希ガスであるキセノン、アルゴン、及びクリプトンのスペクトルからの抜粋を示す。
【0050】
プラズマの場所が電極の幾何学的形状によって十分に正確に定義される場合、測定設備の光学部品を機械的に移動させる必要なく、このように試験対象のEUV光学系のスペクトル変化に対する反応を検査することが可能である。結果として、入射角の変化によって機能する従来のモノクロメータ及びスペクトルフィルタの高い機械的精度要件が不要となることが有利である。主に達成されるのは、EUV光学系の入力開口全体をその後の使用と幾何学的に同様に照明する並列の、したがって時間節約的な測定法に関連したスペクトル特性化である。
【0051】
図5は、本発明による試験デバイス100の一実施形態の基本構造を示す。ブラッグミラーを備えた試験対象のEUV光学系200が、真空チャンバ40に配置される。真空チャンバ40の分離部には、アーク放電プラズマ光源の形態の発生ユニット10が配置され、そこにガスライン51を介して2つのガス50、60が供給される。制御ユニット90によって、ガス50、60の弁70を制御することができ、プラズマ光源用のガスの混合比をこうして設定することができる。光源のスペクトルは、光源用の可変ガス混合物によって変わり得る。EUV光学系200の全試験系列の自動化が、制御ユニット90によって可能となることが有利である。評価ユニット80(例えば電子コンピュータユニット)が、制御ユニット90に機能的に接続されてセンサユニット20の感知信号を評価する役割を果たす。コンピュータ実装方法が、こうして制御ユニット90において進み、したがって自動化された試験系列を実施することができる。
【0052】
結果として、プラズマ光源は、非常に変動性の高いスペクトルを発生させることができ、EUV光学系200(「試験体」)は、移動の必要なく、EUV光学系200の所定の目標スペクトルZを重ね合わせによってもたらすか又は少なくとも近似するベーススペクトルを連続的に適用される。結果として、EUV光学系200は、資源を大いに節約するように適格性確認が行われ得る。センサユニット20は、EUV光学系200の下流に配置されてEUV光学系200から出る試験放射線を感知する。センサユニット20は、制御ユニット90に機能的に接続され、その結果として適格性確認機構全体のフィードバックが実現される。
【0053】
2つのガス50、60の混合物も有利に用いることができる。これに関して、混合は、式(1)からのパラメータaが0〜1の連続値をとり得る状況が、図示の測定設備で成立し得ることを意味する。このように、式(1)に従った予測は、ガス混合物の付加的な測定によって確認することができる。結果として、発生させるベーススペクトルに応じてガス50若しくは60又はガス50及び60の混合物が用いられるように、ガス組成が変更される。
【0054】
試験測定の情報量を最大化するために、ベーススペクトルは、特に以下の2つの基準に従って選択されるべきである。
(i)スペクトルの差は、適格性確認すべきEUV光学系200で可能性のある調整、コーティング、又は他の製造欠陥が特に有意な影響をもたらすような波長領域では、大きいものとする。
(ii)試験すべきEUV光学系200の設計対象である目標スペクトル、すなわちソース又は入力スペクトルは、ベーススペクトルの線形結合によってできる限り良好に近似可能であるものとする。
【0055】
必要なベーススペクトルの数は、測定から得ることが望まれる情報の量に応じて変わる。適格性確認すべきEUV光学系200の透過特性、目標スペクトル、又は両方が構造の弱い(structure-poor)スペクトルプロファイルを有する場合、より少ない数のベーススペクトルで足りる傾向がある。
【0056】
概して常にもたらされる平滑な反射率プロファイルの場合、例えば
図6に示すように、狭帯域線スペクトルを目標スペクトルの近似に用いることもできる。
【0057】
図6は、スペクトル線を有する2つのベーススペクトルB1、B2による目標スペクトルZの近似を示し、これは、センサユニット20において試験体の透過率がスペクトルを狭帯域にする状況を表す。このように、目標スペクトルZは、目標スペクトルZの最大値、幅、及び中心波長を含む3つのパラメータによって数学的に表現可能である。目標スペクトルZの非対称性パラメータも、さらなる任意のパラメータとして考えられる。
【0058】
さらに、EUV光学系200の蓋然的な製造欠陥(例えば、調整、層厚、層粗さ等)に関して試験法の感度を高めることも可能である。この場合、相互にスペクトル的に異なり得る検出すべき各製造欠陥が、付加的なベーススペクトルを必要とする。したがって、最初に、できる限り経済的にパラメータ化されるモデルがEUV光学系200のスペクトル感度に関して確立され、このモデルのパラメータは、種々のスペクトルで得られた測定値から計算することができる。
【0059】
1つのみの試験パラメータ、すなわちEUV光学系200のスペクトル幅に関する例を、
図7a〜eに示す。ベーススペクトルB2が反射率エッジの位置に敏感に反応して、他方のベーススペクトルB1と比べて、広帯域反射率Rの場合に狭帯域反射率R(
図7d参照)の場合よりも高い全強度(
図7e参照)でセンサユニット20に到達することが分かる。センサユニット20が全強度を測定する、すなわちスペクトル積分を行う場合、反射率曲線のスペクトル幅をセンサ信号の比から導き出すことができる。
【0060】
図7a〜
図7eは、スペクトル反射率曲線の幅に関する試験の一例を示す。簡単のために、個々のブラッグミラーをここでは試験体と仮定するが、マルチコンポーネントEUV光学系200を全く同様に試験することができる。
【0061】
図7aは、測定に用いられるような2つの仮定ベーススペクトルB1及びB2を示す。
【0062】
図7bは、ブラッグミラーの狭帯域反射率曲線の設定値プロファイルを示す。
【0063】
図7cは、ブラッグミラーの広帯域反射率曲線の実際のプロファイルを示す。
【0064】
図7dは、狭帯域反射率曲線の場合のセンサユニット20におけるスペクトルを示し、
図7bの反射率曲線のエッジにおけるベーススペクトルB2の矢印で示すピークが抑制されている。
【0065】
図7eは、
図7cからの広帯域反射率曲線の場合のセンサユニット20におけるスペクトルを示す。ベーススペクトルB2の印のついたピークが、
図7dと比べて大幅に強く形成されていることが分かる。さらに、結果として、スペクトル積分された全強度がB1の場合よりもB2の場合に大きく変わることが認められる。これは、波長λでの積分を含む上記式(1)及び(2)からも認められる。
【0066】
記載の手順は、ベーススペクトルB1、B2自体が結果としてそれらの特性を知るのに十分なほど正確に測定され得ることを前提としている。この目的で必要な較正測定が、試験設備の起動時に1回行われることが好ましく、このプロセスで得られた情報を続いて多くの後続の試験測定に用いることができる。機械的精度が重要な従来のモノクロメータが、ベーススペクトルB1、B2の測定に用いられることが好ましい。
【0067】
スペクトルを変えるために、光源の、すなわち試験設備の一部としてフィルタを用いることができる。この場合、スペクトル効果に関してはフィルタが試験体の上流に位置するか下流に位置するかは重要ではなく、その理由は、数学的観点から、ビーム経路に位置する全てのスペクトル透過率/反射率がコンポーネントの順序とは無関係に増加するからである。
【0068】
図8は、本発明による試験デバイス100の一実施形態の、スペクトルフィルタとして具現されたフィルタユニット30を原理上示す。この場合、第1ミラー31が第2ミラー32に対向して配置され、ビームST1、ST2が入射開口33に入り、2つのミラー31、32間で多重反射されることにより、続いて出射条件(emergence condition)を満たすと出射開口34においてフィルタユニット30から再度出る。好ましくは、2つのミラー31、32は、相互に平行に又は相互に実質的に平行に配置される。ここで意図されるのは、平行からの角度偏差を1mradよりも大幅に小さくすることである。入射開口33を備えたミラー31は、完全反射平面ミラーとして具現されることが好ましい。出射開口34を備えたミラー32は、完全反射平面ミラーとして具現されることが好ましい。
【0069】
これに関して、実質的に平行とは、2つのミラー31、32の長さがそれぞれ約数cmである場合、マイクロメートル範囲の平行からの2つのミラー31、32の偏差が許容可能であることを意味し得る。入射開口33に入るビームST1、ST2から、第1ビームST1のみが出射開口34においてフィルタユニット30から再度出ることが分かる。これは、第1ビームST1がミラー31、32に対する垂線に対して「正確な」入射角φを有することによって可能となる。したがって、ビームST1、ST2は、ミラー31によって画定される平面に対して異なる「傾き」でフィルタユニット30に入り、ミラー31、32間で反射される。結果として、これは、広帯域放射線スペクトルのフィルタリングを意味し、フィルタ効果は、反射層スタックの構造及び入射角φによって規定される。
図1は、入射角の変動が反射率のスペクトルプロファイルにどのように影響し得るかを例として示し、
図2も同様に、通常の層スタックのスペクトル積分全反射率に関する角度依存性を例として示す。
【0070】
ビームST1、ST2の反射の回数は、2つの開口33、34間の距離Lによって設定することができる。このように、正確な入射角が入射孔33及び出射孔34によって選択される、2つのミラー31、32を備えた多重反射体原理がこうして実現される。この原理は、いくつかの利点をもたらす。
・2つのミラー31、32を製造及び調整するだけでよい。
・ミラーが平面ミラーであることが好ましく、これは比較的単純に製造できる。
・開口33、34が、「正確な」入射角φを有するビームのみの通過を確実にする。
・各ミラー31、32のコーティングが、単一のコーティングプロセスで作製されたものなので全ての反射点で実質的に同一に具現される(場合によっては、ミラー31、32の両方を同じプロセスでコーティングすることもできる)。
【0071】
全体として、これは、スペクトルフィルタ効果の不変性を維持することが有利である。有利には、フィルタユニット30はさらに、特に約45°の入射角用に設計される場合に偏光効果を有する。反射毎に、電場が入射平面にあるp偏光成分が、電場が入射平面に対して垂直であるs偏光成分よりも系統的に大きく減衰される。この効果は45°付近の反射角で最大であるが、その理由は、EUV領域における全材料の屈折率が1に非常に近い、したがってブリュースター角が45°に近くなるからである。試験対象のEUV光学系200も概して偏光特性を有することにより、フィルタユニット30の偏光特性を適格性確認目的で用いることができる。
【0072】
図9は、ミラー31、32の平行度及び距離をどのように干渉調整できるかの可能性を原理上示す。図は、微分干渉計35、36によるミラー31、32の調整のための補助設備を示す。ミラー31、32を備えたプレートを、2つの距離d
1及びd
2が実質的に等しい大きさとなり所定の目標値dに達するように調整しなければならず、それにより、ミラー31、32の高い平行度が達成される結果としてフィルタユニット30の精度が得られる。この場合、マイクロメートル範囲の精度で通常は十分であり、これは製造精度に関して単純に達成することができる。開口33、34間の長手方向距離Lも同様に、例えば下側ミラー31の表面に対して規定の照射角での照射によって調整しなければならない。付加的な調整デバイス(図示せず)がこの目的で必要である。
【0073】
アクチュエータを用いて距離d及びLを制御下で変えることによって、フィルタユニット30のフィルタ効果を調整することが可能である。この場合、それぞれ変位したミラー31、32の全自由度を十分に正確に把握しなければならないが、これは従来の解決手段とは対照的に単一のミラー31、32に関してのみであることが有利である。小さな変位には、スペクトルフィルタ30を他の入射角に合わせるという効果があり、例として、
図8の上側ミラー32を右側に変位させることで、ビームST1を遮断してビームST2を透過させる。通常のミラーコーティングの角度依存性は、
図1及び
図2における反射率プロファイルから得ることができる。
【0074】
同じ効果を達成するために、ミラー距離dを減らすこともできる。この用途では、ミラー31、32のコーティングが変更後の入射角に関して依然として反射可能でなければならないことを考慮にいれなければならない。大きな変位では、ビームが2倍、4倍、…2n倍高い頻度又は低い頻度で反射され得る。したがって、このように、
図8の四重極フィルタは、2重又は6重フィルタにすることができ、この場合に入射光のスペクトルに関する情報を得ることができる。
【0075】
奇数回の反射に関しては、入射開口33及び出射開口34は同じミラー31、32に配置すべきであり、これは、孔距離Lを顕微鏡下で測定することが可能であり、付加的な調整ユニットが不要なので、調整に有利である。このとき、フィルタユニット30の調整には、ミラー距離dのみが自由度として利用可能である。
【0076】
図10は、
図8からの配置に原理上は対応するが、ここではフィルタユニット30が任意の所望の数のビームのために設けられている点が異なる。
図10は、フィルタリング原理を複数のビームST1、ST2、及びST3の並列測定にどのように拡張できるかを例として原理上は示す。
【0077】
図11に示すように、2つのミラー31、32を篩状に穿孔した2次元場の測定も同様に可能である。それにより形成された「篩状反射体(sieve reflector)」に関しては、角孔格子の場合、較正センサを90°の倍数だけ回転させるか又は孔距離の倍数だけ変位させる回転すべり自己較正が考えられる。これらの類似の動作毎に測定結果が理想的には同じままであるべきであるという条件から、センサについて考えられる誤差を特定することができ、適切な場合には補正として考慮に入れることができる。
【0078】
図12は、1点から出る発散ビームのフィルタリングをどのように実現できるかを示す。この場合、図は、有限開口角を有するビームをフィルタリングするための2つの可能な変形形態を示し、複数の出射開口34を有する篩状の変形形態を上図に示し、単一の出射開口34を有する開口角全体用の変形形態を下図に示す。
【0079】
図13は、同様の効果を積層多重反射体で達成できるさらに別の変形形態を示す。かかるフィルタユニット30は、有限サイズの開口を有するセンサ及び光源に用いることができる。
【0080】
提案されたフィルタユニット30は、狭帯域EUV光との使用に備えたEUV光学系200を広帯域光源でも試験できるように、例えば光学測定及び/又は試験技術で用いることができる。フィルタユニット30を光源の後方に取り付けることによって、そのスペクトルを「正確な」範囲に制限することが可能であり、適切な場合にはそれをフィルタユニット30の記載の幾何学的自由度で変えることが可能である。
【0081】
図14〜
図14cは、EUV光学系200の従来のコーティングの場合の3つの典型的なフィルタ透過率曲線を示す。
【0082】
これらの図は、1回反射後(
図14b)、4回反射後(
図14a)、及び6回反射後(
図14c)の透過率曲線を示し、そこから、反射回数の増加に伴いフィルタ透過率曲線の帯域幅が狭くなることが分かる。結果として、これは、フィルタユニット30の帯域幅を反射回数によって設定可能であることを意味する。フィルタユニット30に対する入射光の非偏光(実線プロファイル)、p偏光成分(破線プロファイル)、及びs偏光成分(点線プロファイル)が、狭帯域化による影響を受けることが認められる。
【0083】
図15は、フィルタユニット30の2つの例示的な可能な位置A、Bを有する光学試験デバイス100の一実施形態の詳細を示す。位置A(発生ユニット10の下流)では、光ビームが発散し、
図12又は
図13に示すようなフィルタユニット30をここに組み込むことができる。位置B(センサユニット20の上流)では、平行ビームが利用可能であり、
図10又は
図11に示すようなフィルタユニット30がここでは可能となる。EUV光学系200の上流にフィルタユニット30を配置すること(位置A)で、「正確な」波長を有する光がEUV光学系200に照射されることが促される。EUV光学系200の下流の位置Bにフィルタユニット30を配置すると、センサユニット20が「正確な」波長領域を感知することが可能となる。この場合、フィルタユニット30は、センサユニット20に組み込むことができる。結果として、フィルタユニット30は、センサユニット20の一部として用いられる。
【0084】
2つのフィルタ位置A及びBにおいて、同じフィルタ効果を実際には達成することができ、好ましくは、位置A、Bのうち、試験体によって予め画定されたビームの幾何学的形状でフィルタユニット30をよりよく実現できるものが選択される。これは、フィルタの幾何学的形状及びコーティングの選択がビームの幾何学的形状に応じて変わり、その結果としてフィルタユニット30の製造費が異なり得るからである。
【0085】
しかしながら、
図15に示すように、EUV光学系200に対して出入りするビーム経路の図示の幾何学的形状を正確に逆にすることも当然ながら考えられる。各フィルタユニット30を両方の位置A、Bに配置することも考えられる。両方のビーム経路の幾何学的形状が平行又は発散であることも考えられる。
【0086】
全ての用途で、フィルタユニット30のスペクトル透過率曲線が非常に正確に1回測定され、測定設備におけるその光学的効果が十分によく分かるようになる。
【0087】
図16は、本発明による方法の一実施形態の基本フローチャートを示す。
【0088】
ステップ300において、試験対象のEUV光学系200に波長可変試験放射線を照射し、上記試験放射線の波長は、実質的にEUV光学系200の有効放射線程度である。
【0089】
さらなるステップ400において、試験放射線をセンサユニットによってEUV光学系200の下流で感知する。
【0090】
さらなるステップ500において、感知された試験放射線を評価ユニットによって評価する。
【0091】
要約すると、本発明は、EUV光学系の適格性確認を改善するための試験デバイス及び方法を提案する。試験対象のEUV光学系が、ここでは実質的にその後の実動作でも作動される波長で適格性確認を行われることにより、使用条件を正確にシミュレートする必要なく非常に現実的な試験シナリオを実現できることが有利である。
【0092】
試験スペクトルを目標通りに適合させることで、EUV光学系の予想製造障害を事前に考慮することが可能なことにより、EUV光学系の製造プロセスが初期段階で品質保証されるようになることが有利である。有利には、本発明によるデバイスによって、試験中の試験設備の機械的パラメータを変更する必要があるとは限らず、その結果として試験結果の精度及び再現性が高まることが有利である。
【0093】
有利には、本発明による試験デバイスによって、完成したEUV光学系のその後の実動作でも用いられる波長で、組立て前のEUV光学系の個々のコンポーネント及び/又は個々のモジュールの適格性確認を行うことも可能である。このように、試験のためにEUV光学系を完全に組み立てる必要がないことが有利である。結果として、試験シーケンスの加速を達成できることが有利である。
【0094】
本発明が、記載されていないか又は部分的にしか上述されていない実施形態も包含するように、ここに記載した変形形態を任意の所望の方法で相互に組み合わせることも考えられることが有利である。
【0095】
したがって、当業者であれば、本発明の本質から逸脱せずに記載の特徴を適当に変更するか又は相互に組み合わせるであろう。