【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明によれば、この目的は、ファセット面が光軸を含む断面において複数の仮想楕円シェル上に配置され、仮想楕円シェルは、光軸に沿って相互に変位し且つ共通の数学的焦点位置が第1及び第2焦点と一致し、ミラー面は、仮想楕円シェルに沿って延び、隣接するミラーファセット対の周縁領域側ミラーファセットが第1楕円シェル上に配置され、ミラーファセット対の頂点領域側ミラーファセットが第1楕円シェルに隣接した第2楕円シェル上に配置され、第1楕円シェルは、光軸に沿って第2楕円シェルから第1焦点の方に変位することにより、導入部分で述べたタイプのコレクタミラーに関して達成される。
【0018】
各ファセット面は、ファセット面が楕円シェルに沿って又は楕円シェルに対して接線方向に延在するように楕円シェル上に配置される。複数の仮想楕円シェルは共通の焦点位置を有するので、これらの楕円シェルは仮想共焦点楕円族を形成する。各楕円シェルは、光軸に対して少なくとも部分的に回転対称である仮想楕円シェルに数学的に対応する。したがって、空間的に考慮した各ファセット面が仮想楕円シェル上に配置され、個々の仮想楕円シェルは共焦点楕円族を形成する。そこから得られるミラー面は、光軸と同心であり光軸の方向に相互に離間した円形経路を含む経路配置に沿って、又は光軸回りの螺旋状経路に沿って延在する。
【0019】
したがって、本発明によるコレクタミラーは、特定の広い残留スペクトル域からの残留線の遮断を可能にする。単一波長の効果的な残留線抑制しか可能にしない以前のSPF格子、特にバイナリ格子とは対照的に、本発明によるコレクタミラーを用いると、広帯域残留線抑制が有利に達成される。
【0020】
さらに、コレクタミラーのミラー面は、楕円形ミラー面から逸脱している。楕円形のコレクタミラー、すなわち楕円形ミラー面を有するコレクタミラーの場合、コレクタミラーの第1焦点から第2焦点への結像の結像スケールの変化がある。これは、特にIF及び/又は遠視野でのエタンデュのエンベロープの大幅な拡大につながる。これは、IFでの使用線が絞りを完全に通過するのに十分なほど小さな直径を有する光束を形成するように集束されないので、使用線の高損失を招く。
【0021】
これとは対照的に、本発明によるコレクタミラーは、使用線を第1焦点から第2焦点に結像し、ミラー面に沿った結像スケールの変化は、共焦点楕円族上のファセット面の配置により少なくとも低減される。エタンデュのエンベロープの拡大がこうして低減される。これにより、EUVマイクロリソグラフィシステムの極端な照明モードでも使用線の損失を減らすことができる。発生したEUV光は、IFで集束されて縮径された光束を形成する。したがって、より小さな絞り開口を有する絞りを用いることができる。これにより、絞りが遮断する残留線の割合が増加する。
【0022】
同時に、コレクタミラーの下流に配置された光学ユニットは、EUV光源による汚染からよりよく保護される。光学ユニットの保護に役立つ例えばH2ガスの洗浄ガスを、低いガス圧で用いることができることが有利であり、これは、費用効果に加えて、ガス雰囲気中のEUV光の透過を改善する。
【0023】
コレクタミラーのミラー面は、仮想楕円シェルの頂点領域から周縁領域まで延在することができる。しかしながら、ミラー面が頂点領域まで完全に延びないことも可能であり、例として、ミラー面は、仮想楕円シェルの頂点領域になくてもよく、例えばそこに穿孔又は孔を有していてもよい。
【0024】
さらに、隣接するミラーファセット対の周縁領域側ミラーファセットが、第1楕円シェル上に配置され、ミラーファセット対の頂点領域側ミラーファセットが、第1楕円シェルに隣接した第2楕円シェル上に配置され、第1楕円シェルは、光軸に沿って第2楕円シェルから第1焦点の方に変位するようになっている。
【0025】
この構成では、換言すれば、2つの隣接するミラーファセットのうちミラー面の周縁領域に近いミラーファセットが、2つのミラーファセットのうち頂点領域に近いミラーファセットが位置する仮想楕円シェルよりも第1焦点に近い仮想楕円シェル上に位置する。全てのミラーファセットに関してそうである場合、例えばコレクタミラーのミラー面は、断面において楕円形ミラー面と比べて頂点に向かって「突出」していてもよい。すなわち、周縁領域でコレクタミラーのミラー面に重なる仮想楕円シェルと比べて、コレクタミラーのミラー面は、頂点領域で仮想楕円シェルから離れる方向に湾曲する。有利には、以前のコレクタミラーと比べて、本発明によるコレクタミラーは、作動距離を変えずにより小さなコレクタ直径で、したがってより小型に、且つ/又はコレクタ直径を変えずにより大きな作動距離で、したがってより大きな放射抵抗で形成することができる。しかしながら、一定の結像スケールを有するコレクタミラーの実施形態に関連して後述するように、上述した構成は「突出」していないミラー面につながり得る可能性もある。「頂点領域側」及び「周縁領域側」という用語は、相対的であり、ミラー面の経路に関して理解すべきであり、それぞれ「比較的頂点領域に近いか又は周縁領域から離れていること」及び「比較的周縁領域に近いか又は頂点領域から離れていること」を意味する。
【0026】
複数の仮想楕円シェルは、コレクタミラーの物理的なシェルではなく、ブレーズド格子の構造を数学的に説明する役割を果たすにすぎない。さらに、本発明に関して、「焦点」という用語は、本コレクタミラーの物理的又は光学的特徴として理解すべきであるが、「焦点位置」という用語は、本発明を数学的に説明する役割を果たすにすぎない。
【0027】
好適な一構成では、ブレーズド格子は、ファセット面が格子表面に対してそれぞれ局所的に傾斜するブレーズ角を有し、ブレーズ角は、周縁領域から頂点領域に向かって増加する。
【0028】
この構成において、ブレーズ角は、周縁領域から頂点領域に向かって連続的に増加することができ、この構成は、ブレーズ角が周縁領域から頂点領域に向かって部分的に一定である場合も包含する。ファセット光学ユニット又は格子光学ユニットの場合、鏡面ファセット反射の、すなわちミラー面で反射された使用線の一部が隣接ミラーファセットにより遮断されるシェーディング効果が生じる。これらのシェーディング効果は、ブレーズ角プロファイルに関連する。有利には、この措置を用いてシェーディング効果の軽減が達成される。
【0029】
さらに別の好適な構成では、ファセット面は、ファセット面が仮想円形線の少なくとも一部との楕円シェルの交点に配置されるように楕円シェルに沿って分配され、円形線上の点毎に、第1焦点からその点までの距離とその点から第2焦点までの距離との比が同じ値を有する。
【0030】
この措置には、この配置仕様を満たすミラーファセットの結像スケールが一定又は少なくともほぼ一定であるという利点がある。第1焦点からの光は、この配置仕様を満たす全てのミラーファセットにより第2焦点に鮮鋭に結像される。コレクタミラーは、存在する全てのミラーファセットがこの配置仕様を満たして、ミラー面の結像スケールが全体として一定となるよう構成されることができる。
【0031】
この措置のさらに別の利点は、コレクタミラーが基板側に球面を有することができることであり、これによりコレクタミラーの製造が単純化されることが有利である。
【0032】
上述した構成は、隣接するミラーファセット対の周縁領域側ミラーファセットが第1弾シェル上に配置され、ミラーファセット対の頂点領域側ミラーファセットが第1楕円シェルに隣接した第2楕円シェル上に配置され、第1楕円シェルが第1焦点から見て光軸に沿って第2楕円シェルから第1焦点の方に変位するという請求項1の特徴を有しない、独立発明としてもみなされる。さらに、この構成は、コレクタミラーだけでなく、有利にはEUVリソグラフィシステム内の、例えば投影レンズの結像ミラーにも用いることができるが、それはこうしたミラーが非常に鮮鋭な結像を可能にするからである。このような結像ミラーのミラー面は、特に完全に光軸外に(「軸外」)配置することができる。
【0033】
さらに別の好適な構成では、それぞれ1つのファセット面のみが楕円シェル上に配置される。
【0034】
ファセット面と楕円シェルとの間の単純な割り当てにより、焦点に関する設計の複雑性が軽減されることで、本発明によるコレクタミラーは、特に単純に、またそれに関連して特に費用効果高く作製可能である。
【0035】
さらに別の好適な構成では、楕円シェルは、光軸に沿って相互から実質的に等距離に離間している。
【0036】
共焦点楕円族の単純な幾何学的形態により、ブレーズド格子は高い計算複雑性を伴わずに設計することができる。これは、作製単純性及び費用効果の向上につながることが有利である。
【0037】
さらに別の好適な構成では、少なくとも2つのミラーファセットが少なくとも約0の焦点距離逆数値を有するか、又は少なくとも2つのミラーファセットが同一の焦点距離逆数値を有する。
【0038】
この措置を用いて、同じ焦点距離を有する複数のミラーファセットの具現及び/又は使用が可能である。結果として、本発明によるコレクタミラーは、より少ない費用で作製することができる。好ましくは、焦点距離逆数値は、全てのミラーファセットに関して無視できるほど小さいか又はゼロに等しい。これにより、ファセット面及び/又はファセット縁の勾配誤差が減ることが有利である。さらに、ファセット面を平面ファセット面として具現することができることで、コレクタミラーの作製単純性が高くなる。
【0039】
さらに別の好適な実施形態では、ブレーズド格子は、残留線を回折させる回折格子を含み、ミラー面で反射された使用線は、0次回折の回折残留線からブレーズ角の少なくとも2倍で偏向され、且つ/又は0次回折の回折残留線と1次回折の回折残留線との間を通る。
【0040】
入射使用線の鏡面ファセット反射は、回折残留線とは別個に進む。結果として、使用線は、中間焦点(IF)にのみ集束する。有利には、異なる回折次数の残留線が効果的に抑制されることで、実質的に使用線のみが絞りを通過する。
【0041】
さらに別の好適な構成では、残留スペクトル域は赤外スペクトル域を含み、0次及び1次の回折は、残留スペクトル域の最小波長を有する回折残留線に関係する。
【0042】
入射使用線の鏡面ファセット反射は、0次及び1次回折の回折IR光とは別個に進み、したがって最低回折次数のIR光を重ねられることなく絞りの開口のみを通過することができる。有利には、露光プロセスに望ましくない高強度IR光が、結果として特に効果的に抑制される。
【0043】
さらに別の好適な構成では、ファセット面は、断面においてそれぞれファセット長を有し、少なくとも2つのファセット長が異なり、且つ/又はファセット長が残留スペクトル域の最小波長に応じて選択された最大ファセット長を超えない。
【0044】
ミラー面に沿って変わるファセット長を用いて、コレクタミラーは、EUVマイクロリソグラフィの多様な実用的要件を満たすように特に柔軟に作ることができる。さらに、コレクタミラーは、短波残留線を特に効果的に抑制する。
【0045】
さらに別の好適な構成では、ファセット長は10μmm〜20μmの範囲にある。
【0046】
この構成では、ファセット長がEUV光の波長と比べて十分に大きいことで、EUV光に関する回折効果が最大限に抑制される。反射したEUV光は、実質的に1方向に進み、したがって第2焦点に特に効果的に集束させることができる。同時に、ファセット長が十分に短いことで、IR光及びDUV光に関する回折効果が無視され得ない。
【0047】
さらに別の好適な構成では、ブレーズド格子は、0nm〜0.2nmの範囲の表面粗さを有する。
【0048】
したがって、使用線を高精度で第2焦点に集束させることができる。中間焦点の拡大が減ることで、絞り開口が縮小された絞りをより効果的な残留線抑制の目的で用いることができる。
【0049】
さらに別の好適な構成では、ブレーズド格子は、0μm〜1μmの範囲の半径を有する縁丸みを有する。
【0050】
本発明によるコレクタミラーの縁丸みを十分に減らすことで、使用線集束の精度が高まる。さらに縮小された絞り開口を有する絞りを用いることができ、これにより照明・投影光学ユニットに対する残留線の衝突が低減される。
【0051】
さらに別の好適な構成では、ブレーズド格子は、加工工具を格子工作物に対して螺旋状経路及び/又は同心円から構成される経路配置に沿って移動させる超精密旋削法で格子工作物から作製される。
【0052】
ブレーズド格子は、ブレーズ角及び/又はファセット長のプロファイルに関して高精度で形成される。格子工作物に対して加工工具、例えばダイヤモンド工具が螺旋状に相対運動する場合、工具を上記工作物に対して交互に接近離反移動させる必要はなく、その結果として構造化時間が特に短いことが有利である。さらに、格子品質に対するダイヤモンド工具の振動の影響が減る。
【0053】
さらに別の好適な構成では、ミラーファセットは、ミラー面を加工工具のうちミラー面に面する圧力側と係合させる単一の機械加工プロセスでそれぞれ作製される。
【0054】
ミラーファセットの加工時間は、それにより従来のミラーファセットの場合よりも短くなる。ファセット面を圧力側の、例えば平面圧力側の「像」として形成できることで、ファセット面の表面品質は、実質的に圧力側の構造のみに依存する。ファセット面の勾配誤差が減ることが有利である。
【0055】
さらに別の好適な構成では、ファセット面は、超精密旋削法の下流で、イオンビーム及び/又は少なくとも1つの液膜を用いて平滑化法で表面加工される。
【0056】
結果として、ファセット面の表面粗さがさらに減る。さらに、このようにして表面加工されたファセット面は特に均一である。
【0057】
さらに別の好適な構成では、ファセット面は、モリブデン及びケイ素(MoSi)の複数の交互個別層を含む層スタックでコーティングされ、個別層の層厚は、個々のファセット面に関する局所光線入射角に応じて選択される。
【0058】
個々のミラーファセットの反射特性は、MoSi層を用いて改善される。MoSi層の選択された層厚により、EUV光が、全てのミラーファセットで均一な高い精度で第2焦点に集束されることが有利である。
【0059】
さらに別の態様によれば、本発明は、光学有効ミラー面を有する光学格子を備え且つ全体としてミラー面にわたって少なくともほぼ一定の結像スケールを有する、特にEUVマイクロリソグラフィシステム用の、又はUVスペクトル域用のミラーを提供するという目的に基づく。
【0060】
このさらに別の態様によれば、この目的は、第1焦点から出た電磁線を反射してそれらを第2焦点に集束させる光学有効ミラー面を有する光学格子を備えたミラーであって、第1及び第2焦点は、光学格子のうちミラー面に面する側にあり光軸を規定し、光学格子は、ファセット面をそれぞれが有する複数のミラーファセットを含み、ファセット面は格子のミラー面を形成するミラーにより達成される。本発明によれば、ファセット面は、光軸を含む断面において複数の仮想楕円シェル上に配置され、複数の仮想楕円シェルは、光軸に沿って相互に変位し且つ共通の数学的焦点位置が第1焦点及び第2焦点と一致し、ファセット面は、ファセット面が仮想円形線の少なくとも一部との楕円シェルの交点に配置されるように楕円シェルに沿って分配され、円形線上の点毎に、第1焦点からその点までの距離とその点から第2焦点までの距離との比が同じ値を有する。
【0061】
幾何学的形状に関して、2つの所定の点に対する距離の比が所定の値である全ての点のセットを、アポロニウスの円とも称する。したがって、本発明の本態様によれば、ファセット面は、相互に対して変位した楕円族上に配置されるだけでなく、第1及び第2焦点を固定点としてファセット面がアポロニウスの円上にさらに配置されるようにも配置される。ここでの利点は、ミラーの基板表面を球状にすることができ、これによりミラーの製造が大幅に単純化されることである。アポロニウスの円の一部に沿って楕円シェル間に分配されたファセット面の配置により、全てのファセット面が第1焦点を第2焦点に同一の結像スケールで結像する。こうしたミラーは、コレクタミラーとしてだけでなく、概して結像ミラーとしても用いることができるが、それはミラーが本発明による構成により第1焦点から第2焦点への非常に鮮鋭な結像をもたらすからである。
【0062】
一発展形態では、ミラーファセットの基点が交点に配置される。
【0063】
これにより、各ファセットがアポロニウスの円との楕円シェルの交点に正確に割り当てられることとなり、したがって製造のためのミラーファセットの配置仕様が非常に正確になる。
【0064】
さらに、ミラー面が完全に光軸外に配置されれば好ましい。
【0065】
この構成では、本発明によるミラーは、例えばEUVマイクロリソグラフィシステムの、又はUV光学系の、特に結像ミラーとして適している。
【0066】
本発明によるミラーの光学格子は、ブレーズド格子又はフレネル構造であることが好ましい。
【0067】
さらに他の利点及び特徴は、以下の説明及び添付図面から明らかとなるであろう。
【0068】
本発明の範囲から逸脱することなく、上記特徴及びこれから後述する特徴は、それぞれ指定された組み合わせだけでなく、他の組み合わせで又は単独でも用いることができることを理解されたい。
【0069】
本発明の例示的な実施形態を図面に示し、図面を参照して以下で説明する。