【課題を解決するための手段】
【0004】
したがって、第一の態様において、本発明は、ヒドロシリル化反応によって得ることができるポリアルキルシロキサンの混合物であって、
a)1〜100モル%、好ましくは10〜30モル%のモノ置換またはgem−二置換
のいずれかであ
る1つの末端二重結合および1以上のトリ−またはテトラ置換二重結
合を有する1以上のポリエンであって、前記末端二重結合および前記1以上のトリ−またはテトラ置換二重結合は好ましくは非共役であり、前記ポリエンは好ましくはテルペン、より好ましくは(R)−リモネン、(S)−リモネンまたはそれらの混合物であるポリエン、および
b)0〜99モル%、好ましくは70〜90モル%の炭素数6〜15のモノ不飽和オレフィン、好ましくは、1−ドデセン
からなるエチレン性不飽和オレフィンの混合物を、ヒドロシリル化触媒の存在下で一定量の1以上のポリアルキルヒドロシロキサンと反応させてなり、ここで、各ポリアルキルヒドロシロキサンは、一般構造式(I):
【化1】
[式中、nは5〜10,000、好ましくは10〜100の範囲、より好ましくは25である繰り返し単位の数を示し、
残基R
1は炭素数6未満の直鎖または分岐鎖アルキル基から選択される]の繰り返し単位を含む、混合物に関する。
【0005】
別の態様において、本発明は、一般構造式(II):
【化2】
[式中、nはポリアルキルシロキサンに含まれる繰り返し単位の数を示し、nは5〜10,000の整数であり、残基R
1は炭素数6未満の直鎖または分岐鎖アルキル基からなる群から選択され、
ここで、
a)繰り返し単位の1〜100%において、R
2は、モノ置換またはgem−二置換
のいずれかであ
る1つの末端二重結合および1以上のトリ−またはテトラ置換二重結
合を有するポリエンの末端二重結合
にSi−H結合を付加すること
により得られ
る、直鎖または分岐鎖または環状アルケニル基からなる群から選択され、前記末端二重結合および前記1以上のトリ−またはテトラ置換二重結合は好ましくは非共役であり、前記ポリエンは、ヒドロシリル化反応において、好ましくはテルペン、より好ましくは(R)−リモネン、(S)−リモネンまたはその混合物であり、
b)繰り返し単位の0〜99%において、R
2は、炭素数6〜15の直鎖または分岐鎖アルキル基からなる群から選択され、および
c)繰り返し単位の0〜10%、好ましくは10%未満において、R
2はHである]
の繰り返し単位を含むポリアルキルシロキサンに関する。
【0006】
さらなる態様において、本発明は、
a)1〜50重量%の、上記定義のポリアルキルシロキサンの混合物またはポリアルキルシロキサン、
b)1〜15重量%の、HLB値が少なくとも8である非イオン性界面活性剤、および
c)0〜30重量%のワックス、鉱油および/または天然/合成油
を含む、離型剤として金属鋳造プロセスで用いるのに適した水性組成物に関する。
【0007】
別の態様において、本発明は、金属鋳造プロセスにおける離型剤としてのポリアルキルシロキサンの使用であって、i)該ポリアルキルシロキサンが本明細書中で定義されたポリアルキルシロキサンの混合物であり、ii)該ポリアルキルシロキサンが本明細書中で定義されたポリアルキルシロキサンであり、またはiii)該ポリアルキルシロキサンが、以下の一般構造式(II):
【化3】
[式中、nは5〜10,000の範囲にある繰り返し単位の数を示し、各繰り返し単位について、残基R
1は、独立して、炭素数6未満の直鎖アルキル基から選択され、かつ各繰り返し単位について、残基R
2は、独立して、(a)水素、または(b)炭素数6〜15の直鎖もしくは分岐鎖アルキル基、または(c)モノ置換またはgem−二置換
のいずれかであ
る1つの末端二重結合および1以上のトリ−またはテトラ置換二重結
合を有するポリエンの末端二重結合
にSi−H結合を付加すること
により得られ
る、直鎖または分岐鎖または環状アルケニル基であって、前記末端二重結合および前記1以上のトリ−またはテトラ置換二重結合は好ましくは非共役であり、前記ポリエンは、ヒドロシリル化反応において、好ましくはテルペン、より好ましくは(R)−リモネン、(S)−リモネンまたはその混合物であり、残基R
2が水素である繰り返し単位の割合は0.1未満であり、残基R
2がアルケニル残基、好ましくはテルペン残基、より好ましくは(R)−リモネン残基、(S)−リモネン残基またはその混合物である繰り返し単位の割合は0.01〜1.0の範囲にあり、また残基R
2が炭素数6〜15の直鎖または分岐鎖アルキル基である繰り返し単位の割合は0〜0.99の範囲にある]
の繰り返し単位を含む、使用に関する。
【0008】
さらなる実施形態は添付の請求の範囲に定義される。
【0009】
本発明の発明者らは、驚くべきことに、炭素数6〜15のモノ不飽和オレフィン、特には1−ドデセン、およびモノ置換またはgem−二置換
のいずれかであ
る1つの末端二重結合および1以上のトリ−またはテトラ置換二重結
合を有する1以上のポリエンの混合物で、ポリメチルヒドロシロキサンを官能化することによって調製されたシリコーン油であって、前記末端二重結合および前記1以上のトリ−またはテトラ置換二重結合は好ましくは非共役であり、前記ポリエンは好ましくはテルペン、より好ましくは(R)−リモネン、(S)−リモネンまたはその混合物であるシリコーン油は、結果として、低(170℃未満)温で硬化する(薄膜を形成する)シリコーン油であることが見出された。これにより、該油は、より冷たい鋳造ダイへの適用、またはマグネシウム鋳造において特に適したものになる。さらに、ポリマー骨格に結合された1以上のポリエンにより、酸化的非金属触媒プロセスによるポリシロキサン鎖が架橋される。標準シリコーン油は225℃を超える温度で硬化を開始するが、この硬化は170℃を超える温度で始まり、この新しいシリコーン油を、より冷たい鋳造ダイおよび/または鋳造ダイのより冷たい部分での薄膜形成に対して理想的なものとする。硬化は、好ましくは、(10μmの層について)190℃未満で完了させる。シリコーン油は、室温で安定しており、高温安定性は技術水準のシリコーン油に匹敵するか、またはそれと比較して良好である。本発明のポリエンの1つの末端二重結合(モノ置換またはgem−二置換いずれか)は、ヒドロシリル化反応において活性かつ選択的であり、他方、1つの(またはそれ以上の)トリ−またはテトラ置換二重結合は、(低温硬化に要求される)酸化的架橋反応において活性であるが、ヒドロシリル化を介して架橋(シリコーン油合成中の不必要な架橋)しないことが判明した。本発明に従って用いるポリエンとは対照的に、1,7−オクタジエンなどのアルファ−オメガジエンは、シリコーン油合成中のヒドロシリル化による不要な架橋をもたらすことが判明した。さらに、(トリまたはテトラの代わりに)二置換アルケンを用いた場合、望ましい酸化的架橋(より高いTが要求される)におけるより低い活性が観察された(例えば、ポリブタジエンのカップリング)。好ましいポリエンは、再生可能源に由来するもの、例えば、テルペン、特に、その低コストおよび再生可能源からの生産のため好ましいリモネンである。
【0010】
新しい改良されたポリアルキルシロキサン誘導体は、シリコーン油の形態であり得る。
【0011】
本化合物は、潤滑剤として直接用いてよく、または加圧ダイカスト用の離型剤に含めてよい。
【0012】
新しいポリアルキルシロキサン誘導体は、水性組成物において特に有利である。
【0013】
しかしながら、適用の第二の分野は、鋳造プロセスにおける新しい改質シリコーン油の使用であり、ここで、該シリコーン油は鋳型に(エマルジョンとしてではなく)直接的に適用される。
したがって、本発明は、技術水準の方法に従った、上記定義の1以上のポリエンおよび炭素数6〜15のモノ不飽和オレフィンの混合物でポリメチルヒドロシロキサンをヒドロシリル化することによって調製された改質ポリシロキサンに関する。1以上のポリエンに対するモノ不飽和オレフィンの比は、25℃において100〜20000mPa・sの動粘度を有する液状改質ポリシロキサンを提供するように選択される。
【0014】
ある実施形態において、改質ポリシロキサンは、鋳型に直接適用することができ、すなわち、ダイカスト離型剤として直接用いることができる。
【0015】
さらなる実施形態において、改質ポリシロキサンは、鉱油、天然/合成油および/または(石油)蒸留物との混合物として鋳型に適用される。そのような実施形態において、改質ポリシロキサンは、さらに列挙された成分、すなわち、鉱油、天然/合成油および/または(石油)蒸留物を含むダイカスト離型剤に含まれる。
【0016】
種々の実施形態において、改質ポリシロキサンは、水性エマルジョンなどの水性組成物に含まれる。
【0017】
より具体的には、ダイカスト離型剤は、改質ポリシロキサン(5〜50重量%)、界面活性剤混合物(1〜15重量%)、任意に、ワックス鉱油および/または天然/合成油(0〜30重量%)を含み、水を加えて100重量%とした水性エマルジョンであってよい。
【0018】
典型的には、改質ポリシロキサンは以下のように調製される。改質シリコーン油は、触媒有効量の白金触媒などのヒドロシリル化触媒を、ポリメチルヒドロシロキサンと、炭素数6〜15のモノ不飽和オレフィンとの混合物へ添加することによって調製される。次に、さらなるモノ不飽和オレフィンを反応混合物に加えて、温度を80〜170℃の範囲に保ち、続いて、ポリエンを混合物に滴下し、95%未満のSi−H転化率を得た。
【0019】
改質ポリシロキサンは、上記定義の1以上のポリエン、好ましくはエチレン性不飽和テルペン残基、より好ましくは(R)−リモネン、(S)−リモネンまたはその混合物(1〜100モル%)と、炭素数6〜15のアルキル残基(0〜99モル%)との混合物で官能化したポリメチルシロキサンであってよい。改質ポリシロキサンは、好ましくは、25℃において20000mPa・s未満、好ましくは7000mPa・s未満の動粘度を有し、うまく乳化することが可能となる。
【0020】
したがって、本発明は、ヒドロシリル化反応によって得ることができるポリアルキルシロキサンの混合物であって、
a)1〜100モル%、好ましくは10〜30モル%のモノ置換またはgem−二置換
のいずれかであ
る1つの末端二重結合および1以上のトリ−またはテトラ置換二重結
合を有する1以上のポリエンであって、前記末端二重結合および前記1以上のトリ−またはテトラ置換二重結合は好ましくは非共役であり、前記ポリエンは好ましくはテルペン、より好ましくは(R)−リモネン、(S)−リモネンまたはそれらの混合物であるポリエン、および
b)0〜99モル%、好ましくは70〜90モル%の炭素数6〜15のモノ不飽和オレフィン、好ましくは、1−ドデセン
からなるエチレン性不飽和オレフィンの混合物を、ヒドロシリル化触媒の存在下で一定量の1以上のポリアルキルヒドロシロキサンと反応させてなり、ここで、各ポリアルキルヒドロシロキサンは、一般構造式(I):
【化4】
[式中、nは5〜10,000、好ましくは10〜100の範囲、より好ましくは25である繰り返し単位の数を示し、
残基R
1は炭素数6未満の直鎖または分岐鎖アルキル基から選択される]の繰り返し単位を含む、混合物に関する。
【0021】
本明細書中で用いる用語「エチレン性不飽和オレフィン」は、モノ−、ジ−またはポリ不飽和オレフィン、すなわち、直鎖および分岐鎖などの1、2またはそれを超えるエチレン性二重結合を有する炭化水素、および環状脂肪族オレフィンをいう。
【0022】
本明細書中で用いる用語「ポリエン」は、直鎖および分岐鎖および環状脂肪族アルケンを含む、2以上の二重結合を有する炭化水素に関する。
【0023】
本明細書中で用いる用語「テルペン」は、2以上のイソプレン(2−メチル−1,3−ブタジエン)単位に由来する化合物をいう。本用語は、かくして、炭素数5、10、15、20、25、30、35、40個等の炭化水素残基を網羅する。本用語は、分岐鎖および環状化合物を含む。本発明により有利に用いることができるテルペンには、アクリル系および単環テルペン、好ましくは単環テルペンが挙げられる。特に好ましいのは、モノテルペン、具体的には、リモネンなどの単環モノテルペンである。
【0024】
本明細書中で用いる「非共役」は、一方では、末端二重結合を意味し、他方では、1以上のトリ−またはテトラ置換二重結合が単一の結合によって分離されていないことを意味する。
【0025】
用語「モル%」は、反応におけるオレフィンの合計量に対する所与の成分のモル比に関する。
【0026】
用語「ポリアルキルヒドロシロキサン」とは、一般構造式(I)の繰り返し単位を含むポリマーをいう。ある実施形態において、ポリマーは、さらに、ターミネーターとしてトリメチル基を含む。
【0027】
触媒的ヒドロシリル化とも呼ばれる用語「ヒドロシリル化」は、不飽和結合にまたがるSi−H結合の付加をいう。典型的には、この反応は触媒により行われ、通常、基質は不飽和有機化合物である。モノ不飽和アルケンは、アルキルシランを生じる。通常、白金触媒が使用される。
【0028】
炭素数6〜15のオレフィンは、好ましくは、炭素数6〜14のオレフィンの群から選択される。最も好ましくは、本発明で用いるために選択される炭素数6〜15のオレフィンは、1−ドデセンである。
【0029】
ある実施形態において、nは5〜10,000、5〜7,000、または5〜5,000の整数である。好ましくは、nは5〜2,500、5〜1,000、または5〜500の整数である。より好ましくは、nは5〜250、5〜200、5〜100の整数である。なおより好ましくは、nは5〜50、5〜40、5〜30、5〜29、5〜28、5〜27、5〜26、または5〜25の整数である。
【0030】
いくつかの実施形態において、R
1は、メチル、エチル、直鎖または分岐鎖C3〜C5アルキルからなる群から選択される。いくつかの実施形態において、R
1は、メチル、エチル、n−プロピル、1−メチル−エチル、n−ブチル、tert−ブチル、1−メチルプロピル、2−メチルプロピル、n−ペンチル、2−ペンチル、3−ペンチル、2−メチルブチル、3−メチルブチル、3−メチルブタ−2−イル、2−メチルブタ−2−イル、および2,2−ジメチルプロピルからなる群から選択される。ある実施形態において、R
1は、H、エチル、n−プロピル、1−メチルエチルからなる群から選択される。ある実施形態において、R
1はHである。
【0031】
典型的には、得られるポリアルキルシロキサンの混合物は油である。
【0032】
ある実施形態において、ポリアルキルシロキサンの混合物は、化学量論量の少なくとも60%、好ましくは少なくとも80%に等しいが、好ましくは化学量論量以下に等しい量の一定量のポリアルキルヒドロシロキサンで行われるヒドロシリル化反応で得られる。ある実施形態において、該反応は、化学量論量の少なくとも60%、70%、80%、90%、95%、97.5%、99%、または99.5%に等しい一定量のポリアルキルヒドロシロキサンで行われる。
【0033】
いくつかの実施形態において、ポリアルキルシロキサンの混合物は、少なくとも部分的にポリメチルヒドロシロキサンから選択されるポリアルキルヒドロシロキサンで、好ましくは、一般構造式(I)の繰り返し単位の少なくとも80モル%がメチル基である残基R
1を有するポリアルキルヒドロシロキサンで行われるヒドロシリル化反応で得られる。
【0034】
しかしながら、いくつかの実施形態において、本発明の方法では、一般構造式(I)の繰り返し単位の少なくとも80、85、95、97.5、98、99、または99.5モル%がメチル基である残基R
1を有するポリアルキルヒドロシロキサンが使用される。
【0035】
さらなる実施形態において、ポリアルキルシロキサンの混合物は、モノ不飽和オレフィンの少なくとも80モル%がα−オレフィンから選択されるヒドロシリル化反応で得られる。
【0036】
好ましくは、ポリアルキルシロキサンの混合物は、モノ不飽和オレフィンの少なくとも80モル%、90モル%、95モル%、97.5モル%、99モル%、または99.5モル%がα−オレフィンから選択されるヒドロシリル化反応で得られる。
【0037】
種々の実施形態において、ポリアルキルシロキサンの混合物は、ヒドロシリル化触媒が白金触媒であるヒドロシリル化反応で得られる。白金触媒は、クロロ白金酸、アルコール変性クロロ白金酸、クロロ白金酸のオレフィン錯体、クロロ白金酸とジビニルテトラメチルジシロキサンとの錯体、炭素担体に吸着された白金微粒子、白金黒、白金アセチルアセトネート、第一白金ハライド、例えばPtCl
2、PtCl
4、Pt(CN)
2、第一白金ハライドと不飽和化合物、例えばエチレン、プロピレン、およびオルガノビニルシロキサンとの錯体、スチレンヘキサメチル二白金、RhCl
3(Bu
2S)
3、スパイヤー触媒、ならびにカールシュテット触媒からなる群から選択することができる。好ましくは、白金触媒はスパイヤーまたはカールシュテット触媒、より好ましくはスパイヤー触媒である。
【0038】
いくつかの実施形態において、ポリアルキルシロキサンの混合物は、反応混合物が、好ましくは、10モル%以下のSi−H結合を含有するポリアルキルシロキサンの混合物を生じさせるのに十分な時間にわたって、80〜180℃の範囲の温度に維持されるヒドロシリル化反応で得られる。好ましくは、反応は、10、9、8、7、6、5、4、3、2、または1モル%以下のSi−H結合を含有するポリアルキルシロキサンの混合物を生じさせるのに十分な時間にわたって行われる。好ましくは、反応は、6モル%以下のSi−H結合を含有するポリアルキルシロキサンの混合物を生じさせるのに十分な時間にわたって行われる。
【0039】
ある実施形態において、ポリアルキルシロキサンの混合物は、一定量の1以上のポリアルキルヒドロシロキサンまたはエチレン性不飽和オレフィンに対する、溶媒として作用する不活性な液状媒体の重量分率が20重量%未満、好ましくは10重量%未満、より好ましくは1重量%未満であってよいヒドロシリル化反応で得られる。適切な不活性な液状媒体は、トルエンまたはテトラヒドロフランなどの非プロトン性溶媒から選択することができるが、これらに限定されない。反応は、好ましくは、あらゆるそのような不活性な液状媒体なしに行われる。好ましくは、反応の完了の後に、いずれの残存溶媒も除去される。触媒は、当該分野で既知の方法によって反応混合物から除去することができる。
【0040】
別の態様において、本発明は、一般構造式(II):
【化5】
[式中、nはポリアルキルシロキサンに含まれる繰り返し単位の数を示し、nは5〜10,000の整数であり、残基R
1は炭素数6未満の直鎖または分岐鎖アルキル基からなる群から選択され、
ここで、
a)繰り返し単位の1〜100%、好ましくは10〜30%おいて、R
2は、モノ置換またはgem−二置換
のいずれかであ
る1つの末端二重結合および1以上のトリ−またはテトラ置換二重結
合を有するポリエンの末端二重結合
にSi−H結合を付加することに
より得られ
る、直鎖または分岐鎖または環状アルケニル基からなる群から選択され、前記末端二重結合および前記1以上のトリ−またはテトラ置換二重結合は好ましくは非共役であり、前記ポリエンは、ヒドロシリル化反応において、好ましくはテルペン、より好ましくは(R)−リモネン、(S)−リモネンまたはその混合物であり、
b)繰り返し単位の0〜99%、好ましくは70〜90%おいてにおいて、R
2は、炭素数6〜15の直鎖または分岐鎖アルキル基からなる群から選択され、および
c)繰り返し単位の0〜10%、好ましくは10%未満において、R
2はHである]
の繰り返し単位を含むポリアルキルシロキサンに関する。
【0041】
これらの実施形態において、a)〜c)で定義された繰り返し単位のパーセンテージは合計100%となる。定められたパーセンテージは、ポリアルキルシロキサンにおける繰り返し単位の合計数に関する。
【0042】
構造式(II)のR
1は、構造式(I)におけるR
1と同一であると定義される。
【0043】
ある実施形態において、ポリアルキルシロキサンは、25℃において100〜20000mPa・s、好ましくは25℃において100〜7000mPa・sの動粘度を有する。
【0044】
用語「動粘度」とは、動的粘度μを決定し、該動的粘度μを流体の密度ρで割ることによって決定される粘度をいう。
【0045】
動粘度を決定する方法は当該分野でよく知られている。
【0046】
さらなる実施形態において、ポリアルキルシロキサンは上記のように定義され、ここで、画分b)については、R
2は炭素数6〜14の直鎖または分岐鎖アルキル基からなる群から選択される。ある実施形態において、画分b)のR
2は、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、およびドデシルからなる群から選択される。好ましくは、画分b)のR
2はドデシルである。
【0047】
いくつかの実施形態において、画分(a)の繰り返し単位は、ポリアルキルシロキサンにおける繰り返し単位の合計の10〜30%、好ましくは少なくとも約10%を構成する。
【0048】
ある実施形態において、画分b)の範囲内に入るR
2を有する繰り返し単位は、ポリアルキルシロキサンにおける繰り返し単位の合計の70〜90%を構成する。
【0049】
いくつかの実施形態において、画分b)に対する画分a)の比は、10:1〜1:10、好ましくは1:2.3〜1:9の範囲にある。
【0050】
いくつかの実施形態によると、一般構造式(II)の各繰り返し単位の置換基R
1はメチル基である。さらなる実施形態において、一般構造式(II)の繰り返し単位の少なくとも80%において、R
1はメチル基である。ある実施形態において、一般構造式(II)の繰り返し単位の少なくとも80、90、95、97.5、99、または99.5%において、R
1はメチル基である。
【0051】
好ましくは、本発明のポリアルキルシロキサンは油である。その場合、ポリアルキルシロキサンは、さらなる添加剤なしにダイカスト潤滑剤として用いることができる。
【0052】
他の実施形態において、それはダイカスト成分として用いることができ、さらに、鉱油、天然/合成油および/または(石油)蒸留物を含むことができる。
【0053】
なおさらなる実施形態において、改質ポリシロキサンは、適当な界面活性剤、任意にワックス、鉱油および/または天然/合成油、および水と組み合わせて水性エマルジョンに含まれていてよい。
【0054】
ある実施形態において、水性エマルジョンは界面活性剤混合物を含む。界面活性剤混合物は、改質ポリシロキサンと安定なエマルジョンを形成することができる乳化剤を含む。ある実施形態において、該界面活性剤混合物は、エトキシ化オキソアルコールの混合物であってよい。
【0055】
用語「エトキシ化」とは、アルコールにエチレンオキサイドを付加して界面活性剤を生成することをいう。
【0056】
用語「オキソアルコール」は、ヒドロホルミル化反応を用いて一酸化炭素(CO)および水素をオレフィンに付加してアルデヒドを得、次いで、該アルデヒドを水素化してアルコールを得ることによって調製されるアルコールを意味する。
【0057】
用語「エトキシ化オキソアルコール」は、エトキシ化されたオキソアルコールに関する。
【0058】
例えば、水性エマルジョンで用いられる界面活性剤は、ポリソルベート85とエトキシ化(6−8)トリデシルアルコールとの混合物であってもよい。
【0059】
いくつかの実施形態において、エトキシ化オキソアルコールは、改質ポリシロキサンに対して1:4〜1:10の重量比で水性エマルジョンで用いられる。加えて、アニオン性、非イオン性および/またはカチオン性のいずれかの他の界面活性剤を水性エマルジョンで用いてよい。
【0060】
したがって、本発明は、a)1〜50重量%の、本明細書中で定義されたポリアルキルシロキサンの混合物またはポリアルキルシロキサン、b)1〜15重量%の、HLB値が少なくとも8である非イオン性界面活性剤、およびc)0〜30重量%のワックス、鉱油および/または天然/合成油を含む、離型剤として金属鋳造プロセスで用いるのに適した水性組成物にも関する。
【0061】
ある実施形態においては、水性エマルジョン中の改質ポリシロキサンの含有量は、1〜50重量%、好ましくは5〜50重量%、より好ましくは5〜30重量%である。
【0062】
さらに、水性エマルジョン中の界面活性剤の含有量は、1〜15重量%、好ましくは5〜15重量%、より好ましくは5〜10重量%であってよい。
【0063】
本明細書中で用いる用語「ワックス(単数または複数)」は、水に不溶性であって、20℃で可塑性(可鍛性)であり、45℃超で融解して、低粘度の液体を生じるある種の有機化合物に関する。ワックスは水に不溶性であるが、有機非極性溶媒に可溶性である。全てのワックスは、合成のものも天然のものも、有機化合物である。
【0064】
本明細書中で用いる用語「鉱油」は、非植物性(鉱物)源、特に石油の蒸留物からの、C15〜C40の範囲にあるアルカンのあらゆる種々の無色、無臭の軽質混合物に関する。
【0065】
本明細書中で用いる用語「天然/合成油」は、20℃において水に不溶性であって、かつ液状である、ある種の有機化合物に関する。該油は水に不溶性であるが、有機非極性溶媒に可溶性である。全ての含まれる油は、合成のものも天然のものも、有機化合物である。
【0066】
ワックスとの関係で用いられる用語「可塑性」は、ワックスが加えられた力に応答して不可逆的に形状が変化する場合の変形に関する。用語「可鍛性」とは、圧縮応力下で変形するワックスの能力をいう。先行技術の離型組成物で用いられるワックスの例は、改質されていてもよいポリエチレンおよびポリプロピレンである。ポリエチレンおよびポリプロピレンとの関係での用語「改質された」は、エステル化された、またはケン化されたポリエチレンおよびポリプロピレンを意味する。
【0067】
また、他の成分、例えば、腐食阻害剤、抗微生物剤、および種々の天然または合成油のエマルジョンをダイカスト離型剤に配合してよい。
【0068】
好ましくは、本発明の水性組成物は、水中油型エマルジョンである。
【0069】
本発明のダイカスト離型剤の調製もまた本発明に含まれる。
【0070】
離型剤は、適切な乳化装置を用いて改質ポリシロキサン、乳化剤および水を合わせて、安定な水中油型エマルジョンを製造し、続いて、水および任意の他の構成成分を加えることによって調製することができる。
【0071】
一般に、ダイカスト離型剤の適用は、好ましくは、スプレーコーティングによって行われる。典型的には、ダイカスト離型剤は希釈して使用される。ある実施形態において、ダイカスト離型剤は、1〜200倍希釈、好ましくは1〜100倍希釈、1〜50倍希釈、または1〜20倍希釈で使用される。
【0072】
いくつかの実施形態において、水性組成物は、ポリソルベート85とエトキシ化(6−8)トリデシルアルコールとの混合物である非イオン性界面活性剤を含む。
【0073】
種々の実施形態において、水性組成物は、水中油型エマルジョンである。
【0074】
ある実施形態において、ワックスは、改質された、または改質されていない、水に不溶性であって、20℃において可塑性(可鍛性)であり、45℃を超えると融解するポリエチレンおよび/またはポリプロピレンである。
【0075】
さらなる態様において、本発明は、金属鋳造プロセスにおける離型剤としてのポリアルキルシロキサンの使用であって、i)該ポリアルキルシロキサンが本明細書中で定義されたポリアルキルシロキサンの混合物であり、ii)該ポリアルキルシロキサンが本明細書中で定義されたポリアルキルシロキサンであり、またはiii)該ポリアルキルシロキサンが、以下の一般構造式(II):
【化6】
[式中、nは5〜10,000の範囲にある繰り返し単位の数を示し、各繰り返し単位について、残基R
1は、独立して、炭素数6未満の直鎖アルキル基から選択され、かつ各繰り返し単位について、残基R
2は、独立して、(a)水素、または(b)炭素数6〜15の直鎖もしくは分岐鎖アルキル基、または(c)モノ置換またはgem−二置換
のいずれかであ
る1つの末端二重結合および1以上のトリ−またはテトラ置換二重結
合を有するポリエンの末端二重結合
にSi−H結合を付加すること
により得られ
る、直鎖または分岐鎖または環状アルケニル基であって、前記末端二重結合および前記1以上のトリ−またはテトラ置換二重結合は好ましくは非共役であり、前記ポリエンは、ヒドロシリル化反応において、好ましくはテルペン、より好ましくは(R)−リモネン、(S)−リモネンまたはその混合物であり、残基R
2が水素である繰り返し単位の割合は0.1未満であり、残基R
2がアルケニル残基、好ましくはテルペン残基、より好ましくは(R)−リモネン残基、(S)−リモネン残基またはその混合物である繰り返し単位の割合は0.01〜1.0、好ましくは0.1〜0.3の範囲にあり、また残基R
2が炭素数6〜15の直鎖または分岐鎖アルキル基である繰り返し単位の割合は0〜0.99、好ましくは0.7〜0.9の範囲にある]
の繰り返し単位を含む、使用に関する。
【0076】
R
1は、上記で定義した通りである。R
2は、上記した本発明のポリアルキルシロキサンについて定義した通りであってよい。
【0077】
いくつかの実施形態において、R
2は、炭素数6〜14の直鎖または分岐鎖アルキル基からなる群から選択されてよい。ある実施形態において、R
2は、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、およびドデシルからなる群から選択される。好ましくは、R
2はドデシルである。
【0078】
いくつかの実施形態によると、一般構造式(II)の各繰り返し単位の残基R
1はメチル基である。さらなる実施形態において、一般構造式(II)の繰り返し単位の少なくとも80%の残基R
1はメチル基である。ある実施形態において、一般構造式(II)の繰り返し単位の少なくも80、90、95、97.5、99、または99.5%の残基R
1はメチル基である。
【0079】
種々の実施形態において、金属鋳造プロセスにおける離型剤としてのポリアルキルシロキサンの使用は、上記定義のポリアルキルシロキサンに関し、ここで、残基R
2が炭素数6〜15の直鎖または分岐鎖アルキル基である一般構造式(III)の繰り返し単位に対する、残基R
2が上記定義のアルケニル基である一般構造式(III)の繰り返し単位の比は、の範囲にある。いくつかの実施形態において、画分b)に対する画分a)の比は、10:1〜1:10、好ましくは1:2.3〜1:9の範囲にある。
【0080】
いくつかの実施形態において、金属鋳造プロセスにおける離型剤としてのポリアルキルシロキサンの使用は、上記定義のポリアルキルシロキサンに関し、ここで、一般構造式(II)の各繰り返し単位の残基R
1はメチル基であり、ポリアルキルシロキサンは25℃において100〜20000mPa・s、好ましくは25℃において100〜7000mPa・sの動粘度を有する。
【0081】
さらに、本発明の使用のためのポリアルキルシロキサンは、好ましくは油である。
【0082】
本明細書中で数値に関して用いる用語「約」は、その用語が言及する数値の±10%を意味する。結果として、「約50%」は45%〜55%の範囲を意味する。
【0083】
本発明による用語「から実質的になる」は、あるものが、特定の化合物または組成物の少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも99%、なおより好ましくは少なくとも99.5、最も好ましくは少なくとも99.9%を構成することを意味する。本用語が金属酸化物層を指す場合、パーセントは重量%(w/w%)と理解される。流体相または周囲環境を特徴付ける場合、パーセントの特定は、容量パーセント(vol%)をいう。
【0084】
「からなる」とは、フレーズ「からなる」に続く全てを含み、それに限定されることを意味する。したがって、フレーズ「からなる」は、列挙された要素が必要であるか必須であり、他の要素が存在できないことを示す。
【0085】
「含む」とは、単語「含む」に続く全てを包含するが、それに限定されないことを意味する。したがって、用語「含む」の使用は、列挙された要素が必要であるか必須であるが、他の要素は任意であって、存在しても存在しなくてもよいことを示す。
【0086】
本明細書中に説明的に記載された発明は、本明細書中に具体的に開示されていないいかなる要素や限定が存在しない場合でも適切に実施することができる。したがって、例えば、用語「含む」、「包含する」、「含有する」等は、広く限定せずに解釈すべきである。加えて、本明細書中で使用される用語および表現は、記載のための用語として用いられ、限定するものではなく、そのような用語および表現の使用によって、示されかつ記載された特徴のいかなる均等物またはその一部をも排除する意図はないが、種々の変更が特許請求される発明の範囲内で可能であることが認識される。したがって、本発明を好ましい実施形態および任意の特徴によって具体的に開示してきたが、当業者であれば、本明細書中で具体化され本明細書に開示された発明の変更および変形に依拠することができ、そのような変更および変形は、本発明の範囲内にあると考えられると理解されるべきである。
【0087】
本明細書中では、本発明を広くかつ上位概念的に記載してきた。上位概念の開示の範囲内にある狭い種および下位概念の群の各々もまた、本発明の一部をなす。これは、削除された材料が本明細書に具体的に記載されているか否かにかかわらず、上位概念からいかなる主題を除去する但書または否定的限定を伴った本発明の上位概念的記載を含む。
【0088】
他の実施形態は、以下の特許請求の範囲および非限定的な実施例の範囲内にある。本明細書中で引用された全ての書類は、参照によってその全体が本明細書中に記載されているものとみなす。