特許第6651134号(P6651134)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6651134-半導体単結晶基板の結晶欠陥検出方法 図000004
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6651134
(24)【登録日】2020年1月24日
(45)【発行日】2020年2月19日
(54)【発明の名称】半導体単結晶基板の結晶欠陥検出方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/66 20060101AFI20200210BHJP
   G01N 21/956 20060101ALI20200210BHJP
【FI】
   H01L21/66 N
   G01N21/956 A
【請求項の数】8
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-59637(P2017-59637)
(22)【出願日】2017年3月24日
(65)【公開番号】特開2018-163951(P2018-163951A)
(43)【公開日】2018年10月18日
【審査請求日】2019年3月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000190149
【氏名又は名称】信越半導体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100131048
【弁理士】
【氏名又は名称】張川 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100174377
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 健吾
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 温
【審査官】 古川 哲也
(56)【参考文献】
【文献】 特表2015−501533(JP,A)
【文献】 特開2011−119528(JP,A)
【文献】 特開2003−197547(JP,A)
【文献】 特開2000−100730(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/64 − 21/66
G01N 21/956
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体単結晶基板を、水素と体積パーセント濃度が5%より大きく50%以下の塩化水素とを含む雰囲気下で、1100℃より大きく1200℃以下の温度で熱処理した後、前記半導体単結晶基板の表面に顕在化した結晶欠陥の検出を行うことを特徴とする半導体単結晶基板の結晶欠陥検出方法。
【請求項2】
前記熱処理における塩化水素の体積パーセント濃度が10%〜30%であることを特徴とする請求項1に記載の半導体単結晶基板の結晶欠陥検出方法。
【請求項3】
前記熱処理を第2の熱処理として、その第2の熱処理の前に、前記半導体単結晶基板を、水素を含むが塩化水素を含まない雰囲気下で第1の熱処理を行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体単結晶基板の結晶欠陥検出方法。
【請求項4】
前記第1の熱処理の温度は前記第2の熱処理の温度と同じであることを特徴とする請求項3に記載の半導体単結晶基板の結晶欠陥検出方法。
【請求項5】
前記半導体単結晶基板の表面は、ポリッシュ又は劈開により鏡面とし、その後、前記第1の熱処理及び前記第2の熱処理を行うことを特徴とする請求項3又は4に記載の半導体単結晶基板の結晶欠陥検出方法。
【請求項6】
前記半導体単結晶基板に前記鏡面を形成した後、洗浄を行い、その後、前記第1の熱処理及び前記第2の熱処理を行うことを特徴とする請求項5に記載の半導体単結晶基板の結晶欠陥検出方法。
【請求項7】
前記顕在化した結晶欠陥を、走査型電子顕微鏡又は表面欠陥検査装置を用いて検出することを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の半導体単結晶基板の結晶欠陥検出方法。
【請求項8】
前記半導体単結晶基板は、エピタキシャル成長用の半導体単結晶基板であることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の半導体単結晶基板の結晶欠陥検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体単結晶基板の結晶欠陥検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の半導体素子の高集積化に伴い、半導体単結晶中の結晶欠陥の正確な評価が重要になってきている。
【0003】
半導体単結晶基板の内部に存在する欠陥は、ケミカルエッチ法や、アングルポリッシュとエッチング法によって顕在化した欠陥を光学顕微鏡により欠陥観察を行う手法、レーザーを使った光学的手法などによって観察されてきた。このような手法により観察測定される欠陥像は、表面においてはデバイス歩留りに影響するし、内部の欠陥はシリコンウェーハのゲッタリング能力を示す重要なパラメータであり、開発時及び出荷検査時などの品質データとして重要である。
【0004】
ここで、下記特許文献1には、半導体単結晶基板を水素雰囲気下で熱処理した後、半導体単結晶基板の表面に顕在化した結晶欠陥の検出を行う技術が開示されている。
【0005】
また、下記特許文献2には、半導体基板を、水素と体積パーセント濃度が約0.05%〜約5%の塩化水素とを含む雰囲気下で、800℃〜1100℃の温度で熱処理を行った後に、半導体基板の表面の欠陥を検出する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第5463884号公報
【特許文献2】特許第5998225号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記技術は、欠陥検出前に、熱処理を行うことで結晶欠陥を顕在化させ、これにより結晶欠陥の検出感度を高くする技術であるが、一部の結晶欠陥に関しては欠陥顕在化力が弱く、依然として結晶欠陥の検出感度が低い。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、半導体単結晶基板の結晶欠陥を、より高感度に検出できる方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明は、半導体単結晶基板を、水素と体積パーセント濃度が5%より大きく50%以下の塩化水素とを含む雰囲気下で、1100℃より大きく1200℃以下の温度で熱処理した後、前記半導体単結晶基板の表面に顕在化した結晶欠陥の検出を行うことを特徴とする。このような条件で熱処理を行うことで、半導体単結晶基板の表面に、大きいサイズの結晶欠陥だけでなく、サイズの小さい又は浅い結晶欠陥に対してもピットとして顕在化させることができる。ゆえに、この熱処理後に半導体単結晶基板に対して結晶欠陥の検出を行うことで、結晶欠陥をより高感度に検出できる。
【0010】
また、前記熱処理における塩化水素の体積パーセント濃度が10%〜30%とすることができる。塩化水素の体積パーセント濃度を10%以上とすることで、より高感度に結晶欠陥を検出できる。また、熱処理装置の制約を考慮すると、塩化水素の体積パーセント濃度は30%以下とするのが好ましい。
【0011】
また、水素と塩化水素とを含む雰囲気下での熱処理を第2の熱処理として、その第2の熱処理の前に、半導体単結晶基板を、水素を含むが塩化水素を含まない雰囲気下で第1の熱処理を行うのが好ましい。第1の熱処理を行うことで、半導体単結晶基板の表面の酸化物を除去できる。そして、表面の酸化物が除去された半導体単結晶基板に対して第2の熱処理を行うことで、より多くの結晶欠陥を顕在化させることができる。
【0012】
また、第1の熱処理の温度と第2の熱処理の温度は同じとすることができる。これによって、第1の熱処理から第2の熱処理に移行する際に温度を変更する操作を不要にできるので、熱処理が複雑になるのを抑制できる。
【0013】
また、前記半導体単結晶基板の表面は、ポリッシュ又は劈開により鏡面とし、その後、前記第1の熱処理及び前記第2の熱処理を行うことが好ましい。このように、本発明において半導体単結晶基板の表面とは、半導体単結晶基板の主表面だけではなく、劈開により現れる表面も含まれる。これによって、半導体単結晶基板の表面及び内部のいずれをも、より高感度に結晶欠陥を検出できる。半導体単結晶基板の内部に存在する結晶欠陥を検出することで、半導体単結晶基板の持つゲッタリング能力などに代表されるウェーハの特性評価を詳細に得ることができる。
【0014】
また、前記半導体単結晶基板に前記鏡面を形成した後、洗浄を行い、その後、前記第1の熱処理及び前記第2の熱処理を行うことが好ましい。このように、半導体単結晶基板に鏡面を形成した後に洗浄を行い、その後熱処理を行うことによって、異物を除去できるとともに、半導体単結晶基板の表面に存在していた結晶欠陥に加えて、表面直下に存在していた結晶欠陥もピットとして顕在化させることができる。
【0015】
また、前記顕在化した結晶欠陥を、走査型電子顕微鏡又は表面欠陥検査装置を用いて検出することが好ましい。このように、顕在化した結晶欠陥を、走査型電子顕微鏡を用いて検出することによって、結晶欠陥の形状、サイズ、組成、結晶欠陥密度等の評価をすることができる。また、顕在化した結晶欠陥を、表面欠陥検査装置を用いて検出することによって、結晶欠陥密度や分布を短時間で正確に評価できる。
【0016】
また、前記半導体単結晶基板は、エピタキシャル成長用の半導体単結晶基板とすることができる。これによれば、エピタキシャル成長時に形成されるエピタキシャル欠陥を生む積層欠陥核を顕在化させることができる。本発明により評価され、品質基準を満たした半導体単結晶基板は、エピタキシャル成長用の半導体単結晶基板として有用であり、エピタキシャルウェーハの高品質化に資する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】半導体単結晶基板の結晶欠陥評価の手順を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図1を参照して実施形態に係る半導体単結晶基板の結晶欠陥評価方法を説明する。
【0019】
先ず、評価する半導体単結晶基板として例えばシリコン単結晶基板を準備する(S1)。また、準備する半導体単結晶基板は、エピタキシャル成長用の半導体単結晶基板とすることができる。準備する半導体単結晶基板は、チョクラルスキー法(CZ法)で作製されたとしても良いし、フローティングゾーン法(FZ法)で作製されたとしても良い。また半導体単結晶基板の抵抗率、導電型(n型かp型か)、結晶方位は特に限定されない。
【0020】
次に、準備した半導体単結晶基板の表面をポリッシュ(アングルポリッシュを含む)又は劈開により鏡面とする(S2)。
【0021】
次に、鏡面を形成した半導体単結晶基板の洗浄を行う(S3)。この洗浄としては、過酸化水素をベースとした、HO/H/NHOH(SC−1洗浄)、HO/H/HCl(SC−2洗浄)による2段階洗浄を行うことができる。このような洗浄を行うことによって、半導体単結晶基板の表面がエッチングされ、確実に異物が除去されるとともに、半導体単結晶基板の表面に存在していた結晶欠陥に加えて、表面直下に存在していた結晶欠陥も、後述の熱処理により半導体単結晶基板の表面に顕在化させることができる。よって、より精度良く半導体単結晶基板の評価をすることができる。また、自然酸化膜除去のためにフッ酸を用いた洗浄も行うことができる。
【0022】
次に、洗浄を行った半導体単結晶基板の表面の酸化物を除去するために、この半導体単結晶基板に対して、水素を含むが塩化水素を含まない雰囲気下で第1の熱処理を行う(S4)。第1の熱処理は、水素100%の雰囲気下で行っても良いし、水素の他に、窒素やアルゴン等の不活性ガスを含む雰囲気下で行っても良い。第1の熱処理の温度は例えば1100℃より大きく1200℃以下とする。さらに、第1の熱処理の温度は、後述の第2の熱処理の温度と同じとすることができるが、第2の熱処理の温度と異なっていても良い。また、第1の熱処理の時間は、半導体単結晶基板の表面から酸化物を除去できるように適宜に設定される。
【0023】
次に、第1の熱処理に引き続き、熱処理炉内に塩化水素を追加することで、水素と塩化水素とを含む雰囲気下で第2の熱処理を行う(S5)。このとき、雰囲気中の塩化水素の体積%濃度(言い換えると混合比率又は流量比)は5%より大きく50%以下とする。なお、水素の単位時間当たりの流量をF1、塩化水素の単位時間当たりの流量をF2とすると、塩化水素の体積%濃度=F2/(F1+F2)となる。また、第2の熱処理の温度は1100℃より大きく1200℃以下とする。さらに、第2の熱処理の温度は、上記第1の熱処理の温度と同じとすることができるが、1100℃より大きく1200℃以下の温度であれば、第1の熱処理の温度と異なっていても良い。また、第2の熱処理の時間は、半導体単結晶基板の表面をエッチングするのに十分であって且つ半導体単結晶基板に含まれる結晶欠陥の位置を示すのに十分な時間に設定されるが、第2の熱処理の時間を長くするほど、より多くの結晶欠陥を顕在化させることができる。第2の熱処理の時間は例えば300秒以下とすることができるが、これに限定されない。
【0024】
次に、第2の熱処理を行った半導体単結晶基板の表面にエピタキシャル膜を堆積させる(S6)。エピタキシャル膜を堆積させることで、半導体単結晶基板に存在する結晶欠陥に起因してエピタキシャル膜に発生する結晶欠陥を評価できる。堆積させるエピタキシャル膜としては例えばシリコン単結晶膜とすることができる。なお、エピタキシャルウェーハとしての評価が不要な場合には、このエピタキシャル膜の堆積工程は行わなくても良い。
【0025】
エピタキシャル膜を堆積させた後、又はエピタキシャル膜を堆積させない場合には第2の熱処理を行った後の半導体単結晶基板の表面に顕在化した結晶欠陥を検出し(S7)、この検出結果に基づいて半導体単結晶基板の結晶欠陥を評価する(S8)。この顕在化した結晶欠陥は、走査型電子顕微鏡や表面欠陥検査装置等を用いて検出することができる。走査型電子顕微鏡を用いて検出することによって、結晶欠陥の形状、サイズ、組成、結晶欠陥密度等の分析をすることができ、半導体単結晶基板の持つ品質特性を詳細に評価することができる。また、表面欠陥検査装置(例えば、MAGICS、SP1、SP2等)に適合する形状にあっては、このような表面欠陥検査装置を用いることによって、結晶欠陥密度や分布を短時間で正確に分析することができ、ゲッタリング能力等に代表されるウェーハの特性を評価することができる。
【0026】
また、本実施形態の結晶欠陥評価方法を用いて顕在化した結晶欠陥は、エピタキシャル成長時に積層欠陥核となり、エピタキシャル欠陥を生む可能性が高いことが判った。したがって、本実施形態により評価され、品質基準を満たした半導体単結晶基板は、エピタキシャル成長用の半導体単結晶基板として有用であり、また、本実施形態の評価方法を用いることによりこの積層欠陥核の原因究明にも有用である。
【0027】
このように、本実施形態によれば、結晶欠陥の検出に先立って、半導体単結晶基板に対して、水素と塩化水素とを含む雰囲気下で熱処理(第2の熱処理)を行うので、基板表面もしくは表層の欠陥とその他の領域とのエッチングレートの差により、欠陥部の結晶に結晶方位に沿ったピットを形成させることができる。つまり、結晶欠陥を顕在化させることができる。特に、第2の熱処理において、塩化水素を含ませ、この塩化水素の体積パーセント濃度を5%より大きく50%以下とし、さらに、熱処理温度を1100℃より大きく1200℃以下とすることで、欠陥顕在化力をより増加でき、その結果、結晶欠陥をより高感度に検出できる。
【実施例】
【0028】
以下、本発明の実施例及び比較例を挙げて具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0029】
(実施例1)
評価する半導体単結晶基板として、直径300mm、抵抗率10Ω・cm、p型のシリコン単結晶基板を用いた。このシリコン単結晶基板をポリッシュ加工し、表面を鏡面とした。その後、SC−1洗浄、SC−2洗浄、HF洗浄を行った。その後、枚葉式エピタキシャル成長装置において、シリコン単結晶基板の表面を、1100℃より大きく1200℃以下で水素100%の雰囲気下にさらし、その後、水素+塩化水素雰囲気下(塩化水素の混合比率5%〜50%)にさらした。水素雰囲気下での熱処理(第1の熱処理)と、水素+塩化水素雰囲気下での熱処理(第2の熱処理)の時間は合計で3分間とした。熱処理後、シリコン単結晶基板の表面のLLS欠陥数(LLS:Localized Light Scatters)を、KLA Tencor社製の表面欠陥検査装置SP3のDCO(Darkfield Composite Oblique)モード28nmupにて測定した。
【0030】
第1の熱処理及び第2の熱処理の温度は共に1150℃とした。また、第2の熱処理における水素流量を80slmとし、塩化水素流量を変化させて、塩化水素の混合比率(体積%濃度)を5.5、10、30、50%とした。また、塩化水素を流さないで、水素雰囲気下のみの熱処理を行った場合についても、LLS欠陥数の測定を行った。
【0031】
そして、水素雰囲気下のみの熱処理を行った場合のLLS欠陥数に対する、塩化水素の混合比率を5.5、10、30、50%とした場合のLLS欠陥数の比である検出欠陥増加倍率を求めたところ、それぞれ5.92倍、9.85倍、85.5倍、882倍であった。
【0032】
(比較例1)
第2の熱処理における塩化水素の混合比率を3%としたこと以外は、実施例1と同様にして、水素雰囲気下のみの熱処理を行ったときに対する検出欠陥増加倍率を測定したところ、2.41倍であった。
【0033】
実施例1と比較例1をまとめたものを表1に示す。塩化水素の混合比率5%より大きく50%以下の範囲において、検出欠陥増加倍率が5倍以上となり、半導体単結晶基板の結晶欠陥をより高感度に検出可能であることが判った。塩化水素の混合比率50%以上に関しては枚葉式エピタキシャル成長装置においては装置制約上実現困難である。枚葉式エピタキシャル成長装置の制約を考慮すると、塩化水素の混合比率は30%以下とするのが好ましい。また、塩化水素の混合比率が10%以上の範囲では、検出欠陥増加倍率は約10倍以上となるので、塩化水素の混合比率は10%以上とするのが好ましい。
【0034】
【表1】
【0035】
(実施例2)
評価する半導体単結晶基板として、直径300mm、抵抗率10Ω・cm、p型のシリコン単結晶基板を用いた。このシリコン単結晶基板をポリッシュ加工し、表面を鏡面とした。その後、SC−1洗浄、SC−2洗浄、HF洗浄を行った。その後、枚葉式エピタキシャル成長装置において、シリコン単結晶基板の表面を、1100℃より大きく1200℃以下で水素雰囲気下にさらし、その後、水素+塩化水素雰囲気下(塩化水素の混合比率が5%より大きく50%以下)にさらした。水素雰囲気下での熱処理(第1の熱処理)と、水素+塩化水素雰囲気下での熱処理(第2の熱処理)の時間は合計で3分間とした。熱処理後、シリコン単結晶基板の表面のLLS欠陥数を、KLA Tencor社製の表面欠陥検査装置SP3のDCOモード28nmupにて測定した。
【0036】
第2の熱処理における塩化水素の混合比率を30%とし、第1の熱処理及び第2の熱処理の温度を1110℃、1150℃、1200℃とした。また、塩化水素を流さないで、水素雰囲気下のみの熱処理(温度は1110℃、1150℃、1200℃)を行った場合についても、LLS欠陥数の測定を行った。
【0037】
そして、水素雰囲気下のみの熱処理を行った場合のLLS欠陥数に対する、塩化水素の混合比率30%、熱処理温度を1110℃、1150℃、1200℃とした場合のLLS欠陥数の比である検出欠陥増加倍率を求めたところ、それぞれ93.1倍、85.5倍、80.8倍であった。
【0038】
(比較例2)
第1の熱処理及び第2の熱処理の温度を1000℃としたこと以外は実施例2と同様にして、水素雰囲気下のみの熱処理(温度は1000℃)を行ったときに対する検出欠陥増加倍率を測定したところ、3.85倍であった。
【0039】
実施例2と比較例2をまとめたものを表2に示す。第1の熱処理及び第2の熱処理の温度が1100℃より大きく1200℃以下の範囲で検出欠陥増加倍率が5倍以上となり、半導体単結晶基板の結晶欠陥をより高感度に検出可能であることが判った。1000℃以下では基板のエッチング量が減少し欠陥の顕在化が阻害されていると考えられる。熱処理温度が1200℃より大きいと基板にスリップ転移が生じてしまうため実用的ではない。
【0040】
【表2】
【0041】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであったとしても本発明の技術的範囲に包含される。
図1