【課題を解決するための手段】
【0016】
上記の従来技術は、水素と、二酸化炭素、一酸化炭素及びメタン等の炭化水素ガスとを含む混合ガスから、水素及び二酸化炭素を分離回収する方法であり、分離装置としては、吸着塔を複数並列に設置して使用する、いわゆる多塔式一段吸着分離方式のPSA装置を使用するものである。更に、二酸化炭素の分離又は除去を促進するために、該PSA装置に加えて、別途、吸着剤又は分離膜を組み合わせて使用するものである。上記の多塔式一段吸着分離方式のPSA装置では、比較的低い圧力で水素を分離回収することはできるが、回収されたガス中の水素濃度は十分に高いものとは言えなかった。また、圧力をあまり高くしたのでは、操業及び装置コストが増大するのみならず、操業の安全性の面からも好ましいものとは言えなかった。そこで、水素濃度を高めるために、吸着剤又は分離膜を組み合わせて使用することが考えられたが、これでは、やはりコスト高を生じ好ましいものとは言えなかった。
【0017】
上記問題を解決するために、本発明者らは、バイオマスを熱処理することにより得た熱分解ガスから水素を回収する方法であって、上記熱分解ガスから、加圧下において二酸化炭素を吸着除去して、該熱分解ガスを精製する第1精製段階、及び、第1精製段階から得た精製ガスを、第1精製段階における圧力を維持したまま更に昇圧して、該精製ガスから、加圧下において水素以外のガスを吸着除去して更に精製することにより、該精製ガスから水素を回収する第2精製段階を含み、かつ、上記第1精製段階において吸着除去した二酸化炭素を回収することを特徴とする水素回収方法を、既に出願した(特許文献8)。該方法によれば、比較的低い圧力で、バイオマス熱分解ガスから、高濃度の水素を回収することが可能である。
【0018】
更に本発明者らは、上記のような、いわゆる多塔式二段吸着分離方式のPSA装置による水素回収方法について、第2精製段階における圧力を、第1精製段階における圧力以下としても、好ましくは、第1精製段階及び第2精製段階の両者の圧力を、0.15MPa以上0.6MPa以下という低い圧力にしても、バイオマス熱分解ガスから、二酸化炭素、一酸化炭素及びメタン等の炭化水素ガス等を良好に分離することができて、高い水素濃度を有するガスを回収し得ることを見出し、既に出願した(特許文献9)。該方法によれば、上記特許文献8記載の方法に比べて、更に低い圧力で、バイオマス熱分解ガスから、高濃度の水素を回収することが可能であることから、より効率的かつ経済的な操業が可能である。
【0019】
本発明者らは、これら特許文献8及び9記載の方法を更に改良すべく、更なる検討を試みた。その結果、バイオマス熱分解ガスを精製して水素を回収するばかりではなく、高濃度水素の回収と同時に貯蔵を実施できれば、水素の回収と貯蔵並びにその利用をより効率的に行うことができるのではないかと考えた。しかし、従来のように高圧ガスボンベに貯蔵するのでは取扱いが容易ではない。そこで、本発明者らは、水素吸蔵合金を使用して、水素吸蔵合金を充填した容器に水素を貯蔵することに思い至った。好ましくは、水素吸蔵合金を充填した容器を、水素を燃料とする燃料電池を搭載した機器の水素貯蔵容器として、そのまま使用可能なカートリッジ形式すれば、水素を貯蔵した容器を、そのまま、所定の用途において使用可能なことから、著しく効率的に、水素の精製から使用までをストリームライン化し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0020】
即ち、本発明は、
(1)バイオマスを熱処理することにより得た熱分解ガスから水素を回収する方法であって、上記熱分解ガスから、加圧下において二酸化炭素を主として含むガスを吸着除去して、該熱分解ガスを精製する第1精製段階、及び、第1精製段階から得た精製ガスを、第1精製段階における圧力以下の圧力で、該精製ガスから、加圧下において二酸化炭素を含むガスを更に吸着除去して精製することにより、該精製ガスから水素を主として含むガスを回収する第2精製段階を含み、かつ、第2精製段階から回収された、水素を主として含むガスを、水素吸蔵合金が充填された容器に供給して、該容器中に高純度水素を貯蔵する水素貯蔵段階を更に含むことを特徴とする水素回収方法である。
【0021】
好ましい態様として、
(2)上記の水素吸蔵合金が充填された容器が、水素を燃料とする燃料電池を搭載した機器の水素貯蔵容器として、そのまま使用可能なカートリッジ形式である、上記(1)記載の水素回収方法、
(3)上記の水素を燃料とする燃料電池を搭載した機器が、自動車、バックアップ電源、無線機、携帯電話機、無人航空機及び家庭用熱電気供給システムより成る群から選ばれる、上記(2)記載の水素回収方法、
(4)上記水素吸蔵合金が、LaNi
5、LaNi
4.7Al
0.3、TiFe
0.9Mn
0.1、MmNi
4.15Fe
0.35、CaNi
5、TiCrV及びLm-Ni系合金より成る群から選ばれる一つ以上である、上記(1)〜(3)のいずれか一つに記載の水素回収方法、
(5)上記水素貯蔵段階における圧力が、0.15MPa以上0.6MPa以下である、上記(1)〜(4)のいずれか一つに記載の水素回収方法、
(6)上記水素貯蔵段階における圧力が、0.2MPa以上0.6MPa以下である、上記(1)〜(4)のいずれか一つに記載の水素回収方法、
(7)上記水素貯蔵段階における圧力が、0.2MPa以上0.5MPa以下である、上記(1)〜(4)のいずれか一つに記載の水素回収方法、
(8)上記水素貯蔵段階が、2器以上の、水素吸蔵合金が充填された容器を備えており、ここで、第2精製段階から回収された、水素を主として含むガス中の水素を、一の、水素吸蔵合金が充填された容器中の水素吸蔵合金に吸蔵せしめて、該容器に貯蔵し、次いで、他の一の、水素吸蔵合金が充填された容器に切り替えて、水素を主として含むガス中の水素を該水素吸蔵合金に吸蔵せしめて、該容器に貯蔵しつつ、既に、水素の貯蔵を完了した上記の一の容器を取り除いて、新たな水素吸蔵合金が充填された容器と交換することにより、水素の貯蔵を継続する、上記(1)〜(7)のいずれか一つに記載の水素回収方法、
(9)上記水素貯蔵段階が、2〜5器の、水素吸蔵合金が充填された容器を備える、上記(1)〜(8)のいずれか一つに記載の方法、
(10)上記の水素吸蔵合金が充填された容器が、冷却及び/又は加熱可能な設備を備える、上記(1)〜(9)のいずれか一つに記載の方法、
(11)上記第1精製段階における圧力が、0.15MPa以上0.6MPa以下である、上記(1)〜(10)のいずれか一つに記載の方法、
(12)上記第1精製段階における圧力が、0.2MPa以上0.6MPa以下である、上記(1)〜(10)のいずれか一つに記載の方法、
(13)上記第1精製段階における圧力が、0.2MPa以上0.5MPa以下である、上記(1)〜(10)のいずれか一つに記載の方法、
(14)上記第2精製段階における圧力が、0.15MPa以上0.6MPa以下である、上記(1)〜(13)のいずれか一つに記載の方法、
(15)上記第2精製段階における圧力が、0.2MPa以上0.6MPa以下である、上記(1)〜(13)のいずれか一つに記載の方法、
(16)上記第2精製段階における圧力が、0.2MPa以上0.5MPa以下である、上記(1)〜(13)のいずれか一つに記載の方法、
(17)上記第1精製段階における圧力が、0.15MPa以上0.6MPa以下であり、かつ、上記第2精製段階における圧力が、0.15MPa以上0.6MPa以下である、上記(1)〜(16)のいずれか一つに記載の方法、
(18)上記第1精製段階における圧力が、0.2MPa以上0.6MPa以下であり、かつ、上記第2精製段階における圧力が、0.2MPa以上0.6MPa以下である、上記(1)〜(16)のいずれか一つに記載の方法、
(19)上記第1精製段階における圧力が、0.2MPa以上0.6MPa以下であり、かつ、上記第2精製段階における圧力が、0.2MPa以上0.5MPa以下である、上記(1)〜(16)のいずれか一つに記載の方法、
(20)上記第1精製段階、第2精製段階及び水素貯蔵段階における温度が、いずれも、0〜100℃の範囲である、上記(1)〜(19)のいずれか一つに記載の方法、
(21)上記第1精製段階、第2精製段階及び水素貯蔵段階における温度が、いずれも、10〜40℃の範囲である、上記(1)〜(19)のいずれか一つに記載の方法、
(22)上記第1精製段階、第2精製段階及び水素貯蔵段階における温度が、いずれも、環境温度である、上記(1)〜(19)のいずれか一つに記載の方法、
(23)上記第1精製段階において吸着除去した二酸化炭素を主として含むガスを回収する、上記(1)〜(22)のいずれか一つに記載の水素回収方法、
(24)上記第1精製段階における圧力と、上記第2精製段階における圧力との差圧が、0〜0.45MPaである、上記(1)〜(23)のいずれか一つに記載の水素回収方法、
(25)上記第1精製段階における圧力と、上記第2精製段階における圧力との差圧が、0〜0.4MPaである、上記(1)〜(23)のいずれか一つに記載の水素回収方法、
(26)上記第1精製段階における圧力と、上記第2精製段階における圧力との差圧が、0〜0.3MPaである、上記(1)〜(23)のいずれか一つに記載の水素回収方法、
(27)上記第1精製段階における圧力と、上記第2精製段階における圧力との差圧が、0〜0.2MPaである、上記(1)〜(23)のいずれか一つに記載の水素回収方法、
(28)上記第1精製段階における圧力と、上記第2精製段階における圧力との差圧が、0〜0.1MPaである、上記(1)〜(23)のいずれか一つに記載の水素回収方法、
(29)上記第1精製段階が2塔以上の吸着塔を備えており、ここで、一の吸着塔において、二酸化炭素を主として含むガスを吸着除去して熱分解ガスを精製し、次いで、他の一の吸着塔に切り替えて、二酸化炭素を主として含むガスを吸着除去して熱分解ガスを精製しつつ、既に、二酸化炭素を主として含むガスを吸着除去した上記一の吸着塔において、吸着除去した二酸化炭素を主として含むガスを、吸着塔内の圧力を低下させることにより脱着回収する、上記(1)〜(28)のいずれか一つに記載の水素回収方法、
(30)上記第1精製段階が2〜5塔の吸着塔を備える、上記(1)〜(29)のいずれか一つに記載の方法、
(31)上記第2精製段階が2塔以上の吸着塔を備えており、ここで、一の吸着塔において、二酸化炭素を含むガスを吸着除去して、第1精製段階において精製された熱分解ガスを更に精製し、次いで、他の一の吸着塔に切り替えて、二酸化炭素を含むガスを吸着除去して、第1精製段階において精製された熱分解ガスを更に精製しつつ、既に、二酸化炭素を含むガスを吸着除去した上記一の吸着塔において、吸着除去した二酸化炭素を含むガスを、吸着塔内の圧力を低下させることにより脱着回収する、上記(1)〜(30)のいずれか一つに記載の水素回収方法、
(32)上記第2精製段階が2〜5塔の吸着塔を備える、上記(1)〜(31)のいずれか一つに記載の方法、
(33)上記第1精製段階及び第2精製段階が、いずれも圧力変動吸着(PSA)装置により構成される、上記(1)〜(32)のいずれか一つに記載の方法、
(34)上記第1精製段階において二酸化炭素を主として含むガスの吸着除去に使用する吸着剤が、イモゴライト、非晶質アルミニウムケイ酸塩、活性炭、ゼオライト及び活性アルミナより成る群から選ばれる1つ以上である、上記(1)〜(33)のいずれか一つに記載の方法、
(35)上記第1精製段階において二酸化炭素を主として含むガスの吸着除去に使用する吸着剤が、イモゴライトである、上記(1)〜(33)のいずれか一つに記載の方法、
(36)上記第2精製段階において二酸化炭素を含むガスの吸着除去に使用する吸着剤が、イモゴライト、非晶質アルミニウムケイ酸塩、活性炭、ゼオライト及び活性アルミナより成る群から選ばれる1つ以上である、上記(1)〜(35)のいずれか一つに記載の方法、
(37)上記第2精製段階において二酸化炭素を含むガスの吸着除去に使用する吸着剤が、活性炭又はゼオライトである、上記(1)〜(35)のいずれか一つに記載の方法、
(38)上記第2精製段階において吸着除去される二酸化炭素を含むガスが、水素、二酸化炭素及びメタンを含むガスである、上記(1)〜(37)のいずれか一つに記載の方法、
(39)上記熱分解ガスが、バイオマスを熱処理することにより得た熱分解ガスを、更に、スチーム改質して得たガスを包含する、上記(1)〜(38)のいずれか一つに記載の方法
を挙げることができる。