(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1の電極を一定のゼロDCバイアス電圧で前記動作させることが、前記第1の電極にゼロDCバイアス電圧を印加することによって実施される、請求項1に記載の方法。
前記第1の電極を一定のゼロDCバイアス電圧で前記動作させることが、DCバイアス電圧を前記第1の電極から接地に誘導することによって実施される、請求項1に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0010】
理解を容易にするため、可能な場合には、図に共通する同一の要素を示すために同一の参照番号を使用した。一実施形態で開示する要素は、具体的な記述がなくても、他の実施形態で有益に利用され得ることが企図されている。
【0011】
本開示の実施形態は、一般的には、処理チャンバ内の粒子の発生を減少させる装置及び方法に関する。方法には、一般的には、頂部電極と底部電極との間にプラズマを生成することと、膜堆積プロセスの間、頂部電極が一定のゼロDCバイアス電圧で動作するように、頂部電極にゼロDCバイアス電圧を印加することとが含まれる。別の実施形態では、基板を処理するための装置が提供される。装置には、一般的には、チャンバ本体の上方に配置されたリッドアセンブリが含まれる。リッドアセンブリは、頂部通電電極及び、頂部通電電極と平行に配置された、底部接地電極を有し、両者の間でプラズマ体積が規定される。ローパスフィルタが、リッドアセンブリとRF電源との間に配置され、膜堆積プロセスの間、頂部電極(RF高温)が一定のゼロDCバイアス電圧で動作するように、DCバイアスを接地に誘導するように構成される。
【0012】
頂部電極にゼロDCバイアス電圧を印加することによって、さもなければ、頂部通電電極または底部接地電極の保護コーティング層のイオン衝突によって、基板表面の粒子の汚染の原因になるであろう、頂部通電電極とプラズマとの間の電位差、または底部接地電極とプラズマとの間の電位差が最小化される。本開示及び様々な実施形態の詳細が、以下に記載される。
【0013】
例示的なチャンバハードウェア
図1は、本開示の実施形態による半導体基板130の処理に用いられ得る、処理チャンバ100の概略断面図である。処理チャンバ100は、熱またはプラズマをベースにした処理の実施に、特に有用であり得る。処理チャンバ100には、一般的にチャンバ本体102、チャンバ本体102の上方に配置されたリッドアセンブリ104、及び部分的にチャンバ本体102内に配置された基板支持体アセンブリ106が含まれる。リッドアセンブリ104は、(内部に配置された基板130を有する)基板処理領域152の上方に、ガス供給プレート134及びオプションのブロッカプレート132によって基板処理領域152から離されて、配置される。ブロッカプレート132(使われる場合)及びガス供給プレート134はそれぞれ、リッドアセンブリ104から基板処理領域152へのプラズマの通過を可能にする貫通孔133及び135を有する。処理チャンバ100からガスを除去するため、真空システムが使用され得る。真空システムには、チャンバ本体102内に配置された真空ポート110に連結された真空ポンプ108が含まれる。処理チャンバ100は、処理チャンバ100内の処理を制御するため、コントローラ136を追加で含み得る。
【0014】
リッドアセンブリ104には、第2の電極114の相対的に上方に配置された第1の電極112が含まれる。第1の電極112及び第2の電極114は、一対の平行な電極を形成する。第1及び第2の電極112、114は、高濃度でドープされた、シリコンまたは(アルミニウム、ステンレス鋼などといった)金属から作られ得る。第1及び第2の電極112、114は、アルミナまたは酸化イットリウムを含む保護層でコーティングされ得る。一実施形態においては、第1の電極112は、2つの積層構成要素116、118を含み得、構成要素116の一部は、構成要素118によって取り囲まれた円錐形を形成し得る。積層構成要素116、118及び、積層構成要素116、118を支持している第2の電極114は、その間にプラズマ体積または空洞120を画定する。所望であれば、積層構成要素116、118は、単一の一体化されたユニットとして構築され得る。どちらの場合でも、第1の電極112は、第2の電極114とは、間に絶縁部材を挟んで、分離され得る。
【0015】
一実施形態においては、第1の電極112は、高周波(RF)電源122及びDCバイアス変調構成150にそれぞれ接続される。RF電源122は、約0W〜約3000Wの間で、約400kHz〜約60MHzの間の周波数で、動作し得る。一実施例においては、RF電源122は、周波数13.56MHzで動作する。DCバイアス変調構成150は、DC電源124、DC電源124に結合されたRFフィルタ126、及び電力コントローラ144を含み得る。RFフィルタ126は、例えばRF電源122からの信号といったRF信号が、DC電源124に侵入して損傷を与えるのを防止するように構成される。電力コントローラ144は、DC電源124に結合され、第1の電極112から送信されたDCバイアスフィードバック信号に基づいて、DC電源124の設定点を設定するように構成される。RF電源122から供給され、整合回路網146によって整調されたRF電力は、第1の電極112のイオン衝突のエネルギーを制御するために、第1の電極112上のDCバイアスを誘導する。図示しないが、RF電源122は、DC電源124と同一の筐体内に配置され得る。
【0016】
第2の電極114は接地に接続されており、それによって第1の電極112と第2の電極114との間にキャパシタンスを形成する。所望であれば、第2の電極114は、電気的にフロートし得る。リッドアセンブリ104は、第2の電極114内に形成された貫通孔131、ブロッカプレート132内に形成された貫通孔133、次いでガス供給プレート134内に形成された貫通孔135を通じ、基板130の表面へと処理ガスを連続的に提供するための、1または複数のガス注入口128もまた、含み得る。処理ガスは、イオン化されたフッ素、塩素、もしくはアンモニアといった、エッチャントもしくはイオン化された活性基、またはオゾンといった酸化剤であり得る。いくつかの実施形態では、処理ガスは、NF
3及びHeを含有するプラズマを含み得る。所望であれば、上記の化学物質を含有する遠隔プラズマが、別個のガス取り入れ口(図示せず)を通じてガス供給プレート134へと、処理チャンバ100内に導入され得る。
【0017】
基板支持体アセンブリ106は、処理の間、基板130を上で支持する基板支持体138を含み得る。基板支持体138は、チャンバ本体102の底面に形成された、中央に位置する開口部を通って延伸するシャフト142によって、アクチュエータ140に連結され得る。アクチュエータ140は、シャフト142付近からの真空漏れを防止するベロー(図示せぬ)によって、チャンバ本体102にフレキシブルに封着される。アクチュエータ140は、基板支持体138が、処理位置と(より低い)移動位置との間で、チャンバ本体102内で垂直に動かされることを可能にする。移動位置は、チャンバ本体102の側壁内に形成されたスリットバルブの開口部のわずかに下である。
【0018】
基板支持体138は、処理される基板130を上で支持するための、平らな、または実質的に平らな表面を有する。基板支持体138は、シャフト142によってチャンバ本体102に連結されているアクチュエータ140によって、チャンバ本体102内で垂直に動かされ得る。処理される基板130の温度を制御するため、操作中、基板支持体138は、リッドアセンブリ104にごく接近した位置まで上げられ得る。こうして、基板130は、供給プレート134から発せられる放射または、供給プレート134からの対流によって、加熱され得る。
【0019】
DCバイアス変調による、粒子発生抑制装置
本開示の背景の中で提起されたように基板表面の粒子汚染を減少させる目的で、本発明者らは、種々のDCバイアス電力が基板表面上の粒子の数にどのような影響を与えるかを決定するため、同一の処理方策を用い、様々なDCバイアススキーム(1)〜(5)で、一連の例示的な窒化物堆積処理を実施した。例示的な窒化物堆積処理は、
図1の処理チャンバ100といった処理チャンバの中で実施された。種々のDCバイアススキーム(1)〜(5)(及び
図3に関連して以下で記載されるスキーム(6)〜(9))が、
図1のDCバイアス変調構成150または、
図5に示すDCバイアス変調構成500を用いて実施された。
【0020】
様々なDCバイアススキーム(1)〜(5)において、例示的な窒化物堆積処理は、チャンバ圧力が約0.7Torr、RF電力(13.56MHz)が約575W、NF
3流量が約20sccm、N
2O流量が約900sccm、He流量が約4000sccm、第1の電極112の温度が約15°C、 第2の電極114の温度が約70°C、及び、第1及び第2の電極112、114のそれぞれが約60nmの厚さの酸化物の保護層(例えば酸化イットリウム)でコーティングされた状態で、約300秒間実施された。各DCバイアススキーム(1)〜(5)の粒子測定結果が、
図2に示される。本発明者らは、第2の電極114が電気的に接地され、第1の電極112にDCバイアス電圧が全く印加されていない場合(即ち、
図1の処理チャンバ100内においてDC電源124が全く使用されていない場合)、堆積処理後、DCバイアススキーム(1)の基板表面上の粒子の数が、約45から約145への増加を示すことを観測した。粒子の数の増加は、プラズマ内に生成され、プラズマが生成されたときに第1の電極112上に発達した不可避の自己誘導DCバイアス(約+31V)によって負電位を帯びた第1の電極112に引き付けられた、陽イオンの結果であると確信される。当該イオンは、第1の電極112に向かって加速させられ、堆積処理の間、第1の電極112上の保護コーティング層に衝突する。これによって保護コーティング層の一部が剥がれ落ち、基板表面を汚染する原因となる。
【0021】
DCバイアススキーム(3)〜(5)は、(第2の電極114が電気的に接地している状態で)第1の電極112に−25V、−75V、−150Vの負のDCバイアス電圧がそれぞれ印加された場合に、基板表面上の粒子の総数が少しずつ増加することを示す。具体的には、DCバイアススキーム(3)は、堆積処理後の、基板表面上の粒子の数の約22から約96への増加を示す。DCバイアススキーム(4)は、堆積処理後の、基板表面上の粒子の数の約14から約189への増加を示す。DCバイアススキーム(5)は、堆積処理後の、基板表面上の粒子の数の約11から飽和レベルへの増加を示す。DCバイアススキーム(3)〜(5)は、第1の電極112に対して負のバイアス電圧を増大させると、主として第1の電極112とプラズマとの間の電位差が少しずつ増大することによって、基板表面上により多くの粒子が発生するという明確な傾向を示す。第1の電極112とプラズマとの間の電位差が増大する場合、それに従って第1の電極112のシース電圧も上昇し、それによって、第1の電極112のシース領域中の陽イオンが加速し、イオンの第1の電極112上の保護コーティング層との衝突力が増大する結果となる。結果として、基板表面上により多くの粒子の発生が観測される。堆積処理に高入力電力(550W超)が使われる場合、粒子の発生はより問題が大きくなる。なぜならば、より高い入力電力によって、高圧の負の自己誘導DCバイアスもまた、リッドアセンブリの通電された第1の電極112において発達するからである。第1の電極112における、こうした高圧の負の自己誘導DCバイアス及びシース電圧によって、(第1の電極112とプラズマとの電位差により、)第1の電極112上の保護コーティング層の高エネルギーのイオン衝突が引き起こされる。したがって、保護コーティング層の一部が第1の電極112から剥がれ落ち、基板表面を汚染する。
【0022】
驚くべきことに、本発明者らは、第1の電極112にゼロDCバイアス電圧を印加した場合(即ち、堆積処理の間に第2の電極114が電気的に接地される一方、第1の電極112が堆積処理中に一定のゼロDCバイアス電圧で動作された場合)、堆積処理後、DCバイアススキーム(2)の基板表面上の粒子の数が、約8から約66への相対的に小さい増加のみを示すことを観測した。DCバイアススキーム(2)は、DCバイアススキーム(1)と比較して粒子が100から約58へと減少し、改善されていることを示す。実際、DCバイアススキーム(2)における粒子の数の増大は、スキーム(1)〜(5)中で最小であることが判明した。こうして、本発明者らは、第1の電極112(RF高温表面)とプラズマとの間の電位差(V
1st electrode - V
plasma)が減少し、それによって第1の電極におけるシース電圧が低下する(
図4参照)ため、堆積処理の間に第1の電極112に一定のゼロDCバイアス電圧を印加することによって、基板表面上の粒子の発生が大幅に抑制できることを発見した。結果として、第1の電極112のシース領域におけるイオンの加速は減少し、イオンの第1の電極112の保護コーティング層との衝突力は最小化される。
【0023】
本発明者らはさらに、種々のDCバイアス電力(特に正の電圧)が基板表面上の粒子の数にどのような影響を与えるかを決定するため、上記のように同一の処理方策を用い、様々なDCバイアススキーム(6)〜(9)で一連の窒化物堆積処理を実施した。各DCバイアススキーム(6)〜(9)の粒子測定結果が、
図3に示される。本発明者らは、第1の電極112にDCバイアス電圧が全く印加されていない場合(即ち、
図1の処理チャンバ100内においてDC電源124が全く使用されていない場合)、堆積処理後、DCバイアススキーム(6)の基板表面上の粒子の数が、約16から約4097への増加を示すことを観測した。粒子の数の増大は、負のDCバイアスによる以前の損傷、(第1の電極112のイオン衝突を引き起こす)プラズマと第1の電極112上に発達した高圧の負の自己誘導DCバイアスとの間の電位差、及び、プラズマの電位が、接地された第2の電極114の電位よりも大幅に大きいという事実によって、堆積処理の間、第1の電極112にはDCバイアス電圧が全く印加されていなくても、第2の電極114上の保護コーティング層へのイオン衝突が引き起こされることによる。
【0024】
DCバイアススキーム(8)〜(9)は、(第2の電極114が電気的に接地している状態で)第1の電極112に75V及び100Vの正のDCバイアス電圧がそれぞれ印加された場合に、基板表面上の粒子の総数が大幅に増加することを示す。具体的には、DCバイアススキーム(8)は、堆積処理後の、基板表面上の粒子の数の約27から約9102への大幅な増加を示す。DCバイアススキーム(9)もまた、堆積処理後の、基板表面上の粒子の数の約11から約3469への大幅な増加を示す。DCバイアススキーム(8)〜(9)は、正のDCバイアス電圧が第1の電極112に印加されたことに起因する、より大きいイオンシース電位を反映して、接地された第2の電極114において同規模の電位を生み出すためには、プラズマが正の電位を帯びなくてはならないことから、主として接地された第2の電極114とプラズマとの間の電位差のより大幅な増大(第1の電極112と比較して。
図4参照)によって、第1の電極112への正のDCバイアス電圧の増大が、基板表面上により多くの粒子を発生させる結果となることを示す。第2の電極114とプラズマとの間の電位差が増大する場合、それに従って第2の電極114のシース電圧も上昇し、それによって、第2の電極114のシース領域中のイオンが加速し、イオンの第2の電極114上の保護コーティング層との衝突力が増大する結果となる。結果として、基板表面上により多くの粒子の発生が観測される。
【0025】
同様に、本発明者らは、第1の電極112にDCバイアス電圧が全く印加されていない場合(即ち、第1の電極112が堆積処理中に一定のゼロDCバイアス電圧で動作された場合)、堆積処理後、DCバイアススキーム(7)の基板表面上の粒子の数が、約15から約767への相対的に小さい増加を示すことを観測した。DCバイアススキーム(7)は、電極が以前の負のDCバイアスによって損傷を受けていても、ゼロDCバイアス電圧を印加することによって、DCバイアススキーム(6)と比較して、やはり粒子の減少は4081から約752へと改善されるということを示す。実際、DCバイアススキーム(7)における粒子の数の増大は、スキーム(6)〜(9)中で最小であることが判明した。それにより、本発明者らは、堆積処理の間、一定のゼロDCバイアス電圧を第1の電極に印加することで、第1の電極112とプラズマとの間の電位差(V
1st electrode - V
plasma)と、プラズマと第2の電極114(接地表面)及びチャンバ壁(接地表面)との間の電位差(V
2nd electrode - V
plasma)とが互いに実質的に同じであり、その結果、第1及び第2の電極112、114においてシース電圧が約60Vと最小になるため(
図4参照)、基板表面上の粒子の発生が大幅に抑制され得ることを発見した。それにより、第1及び第2の電極112、114の両方が、高RF入力電力によって、プラズマからの、実質的に同じイオン衝突を受ける。しかし、第1の電極112に対してゼロDCバイアス電圧が印加されている場合に、両方の電極112、114に衝突するイオンのエネルギーは、本開示の一実施形態により、第1の電極(FP)及び第2の電極(SMD)上で、種々のDCバイアス電圧で測定されたイオンエネルギーの変化を示す
図400である
図4に示すように、第1の電極112に対して正または負のDCバイアスエネルギーが印加されている場合の両方の電極112、114に衝突するイオンのエネルギーに比べて相対的に小さい。
図4は、第1の電極にゼロDCバイアス電圧が印加されている場合に第1及び第2の電極上で測定されたイオンエネルギーが約60Vであることを示しており、それは、第1の電極に−100VのDCバイアス電圧が印加されている場合に第1の電極で計測されたイオンエネルギー(約110V)または、第1の電極に100VのDCバイアス電圧が印加されている場合に第2の電極で計測されたイオンエネルギー(約160V)に比べて、相対的に小さい。
【0026】
上記のDCバイアススキーム(1)〜(9)に基づいて、本発明者らは、電極112、114上の保護コーティング層は、イオン衝突(そのイオンのエネルギーは第1の電極112における自己誘導DCバイアスによって大きく左右される)によって容易に損傷され得ることを解明した。本発明者らは、(正のDCバイアス電圧であると負のDCバイアス電圧であるとに関わらず)高DCバイアス電圧を第1の電極112に印加する結果、基板表面の粒子の汚染がより激しくなることを発見した。しかし、高電力の膜堆積処理の間、一定のゼロDCバイアス電圧を第1の電極112に印加することは、膜堆積プロファイルに重大な影響を与えることなく、第1の電極112(RF高温)とプラズマとの間の電位差(V
1st electrode - V
plasma)または、プラズマと第2の電極114(接地表面)及びチャンバ壁(接地表面)との間の電位差(V
2nd electrode - V
plasma)を最小化するのに役立つ。プラズマと電極112、114との間の電位差を最小化することによって、粒子の発生は減少し得る。なぜならば、RF入力電力が高い場合(550W超)でも、第1及び第2の電極の両端のシース電圧は最小に保たれるからである。したがって、イオンの第1及び第2の電極112、114上の保護コーティング層との衝突力は減少し、基板表面上の粒子の発生の減少という結果になる。
【0027】
所望であれば、DCバイアス電圧の極性を制御することによって第1の電極112及び/または第2の電極114上のイオン衝突の量を制御するため、DCバイアス電圧は変調され得る。DCバイアスを正確に制御するため、電力コントローラ(例えば
図1に示す電力コントローラ144)を用い、チャンバ構成、電極の表面積、化学的条件及びプロセス条件といった他の要素の中でも、第1の電極112から送信されるDCバイアスフィードバック信号、または電極のコーティング品質に基づいて、閉ループDCバイアス変調が実施され得る。例えば、第1の電極112が(本来的に頑丈なコーティングが不可能な円錐形のため)より脆い保護コーティング層を有しており、第2の電極114がより頑丈な保護コーティング層を有している場合、第1の電極112への衝突を減少させるため、第1の電極112に、わずかに正のDCバイアスが供給され得る。例示的な一実施形態においては、電力コントローラ144は、第1の電極112にDCバイアス電圧を印加することなく第1の電極112(RF高温)上の自己誘導DCバイアスをモニタするように構成され得る。DCバイアスフィードバックに応じて、堆積処理の間、適切なDCバイアス電圧が第1の電極112に印加される。上記のようにDCバイアス電圧の極性を制御することによって第1の電極112及び/または第2の電極114上のイオン衝突の量を制御するため、DCバイアス電圧はゼロであり得、または調整され得る。
【0028】
基板表面上の粒子の発生の減少をさらに増進するため、様々な手法が実施され得る。例えば、幾つかの実施形態では、より頑丈な保護コーティング層を提供するため、保護コーティング層と下にある電極との間に、ボンディング/接着材が用いられ得る。第1の電極112が本来的に頑丈なコーティングが不可能な円錐形のためより脆い保護コーティング層を有し得る一方、第2の電極114は、イオン衝突に耐えるためのより頑丈なコーティング能力を可能にする貫通孔131を底部に有することによってはるかに良いコーティング品質を有し得るため、ボンディング/接着材は、第1の電極112に関して特に有利である。幾つかの実施形態において、堆積処理の間、第2の電極114の温度を低下させるため、ガス供給プレート134は、(処理能力に影響がない程度の)効果的な冷却処理を受け得る。これは、処理の間に第2の電極114が加熱及び冷却され、上に堆積した保護コーティング層がこうした温度循環によって熱ストレスを受け得、その結果、粒子の発生の増大につながり得るからである。(例えばガス供給プレート134内に形成されたチャンネル137を通じて冷却液を流すことによって)第2の電極114の温度を低下させることで、第2の電極114の温度変化が減少し、それによって基板表面上の粒子の発生の減少が促進される。
【0029】
粒子汚染を減少させるためにリッドアセンブリ104(これによってプラズマのグロー放電領域が限定される)の通電電極に一定のゼロDCバイアス電圧を印加するというコンセプトは、
図5に示すもののように様々な手法によって実現され得る。
図5は、本開示の実施形態による、DCバイアス変調構成500に連結されたリッドアセンブリ104を示す、
図1の処理チャンバ100の概略断面図である。
【0030】
一実施形態においては、第1の電極112は、高周波(RF)電源522及びDCバイアス変調構成500にそれぞれ電気的に接続される。DCバイアス変調構成500は、第1の電極112と接地との間の位置といった、リッドアセンブリ104の外部の任意の位置に配置され得る。図示しないが、RF電源522は、DCバイアス変調構成500と同一の筐体内に配置され得る。DCバイアス変調構成500は、一般的に、RF電源522から供給され、整合回路網524によって整調されたRF電力が接地に侵入するのを防止し、代わりに第1の電極112に行くように、第1の電極112で生成された自己誘導DCバイアス及び/または任意のDCバイアスを接地に誘導するように構成された、ローパスフィルタとして機能する。第1の電極112のDCバイアスは接地に誘導されているため、堆積処理の間、RF入力電力またはプロセスに関わらず、第1の電極112は、接地電位で維持され得る(即ち、第1の電極112のDCバイアス電圧は、常にゼロで保持される)。結果として、第1の電極112(RF高温)とプラズマとの間の電位差(V
1st electrode - V
plasma)または、プラズマと第2の電極114(接地表面)及びチャンバ壁(接地表面)(V
2nd electrode - V
plasma)が減少するか、最小化される。
図2〜4に関連して上記したように、プラズマと電極112、114との間の電位差を最小化することによって、膜堆積プロファイルに大きく影響することなく、粒子の発生を減少させることが可能である。なぜならば、第1及び第2の電極の両端におけるシース電圧が最少に保たれるからである。したがって、イオンの第1及び第2の電極112、114上に形成された保護コーティング層との衝突力は減少し、基板表面上の粒子の発生が減少するという結果になる。
【0031】
図5に示す一実施形態においては、DCバイアス変調構成500には、一般的に、コア要素528及び、コア要素528の一部の周囲に巻きつけられたコイル530が含まれる。DCバイアスのインダクタンス効果を増大させるため、コイル530はコア要素528の長さにわたって均等に分布し得る。コア要素528はインダクタンス効果を強化するために使用されるので、コイル530自体は、幾つかの実施形態では、DCバイアス電圧を誘導するため、DCバイアス変調構成500中にコア要素528が存在することなしに使用され得る。コア要素528は、高透磁率のロッドまたはチューブ、例えばフェライトロッドを備え得るが、結合構造に応じて、より低周波において有用な他の磁性材料でもあり得る。一実施形態においては、コア要素528は、約3インチから約8インチの間の、例えば約5インチの長さを有し、約0.2インチから約2インチの間の、例えば約1インチの直径を有し得る。
【0032】
この結果によるDCバイアス変調構成500は、13.56MHzの周波数で50dbの電力減衰を有し得、約22uHのインダクタンス(1900オームの抵抗と同等)を有し得る。これによって、RF信号に対する高インピーダンスが提供され、したがってRF信号がDCバイアス変調構成500を通じて接地に侵入することが妨げられる。しかし、こうした高い値の抵抗は、DC信号にとって、電気的に閉鎖されていると考えられる。言い換えれば、DCバイアス変調構成500は、DCバイアス電圧に対してインピーダンスを全く有しない。
【0033】
コア要素528及びコイル530はDCバイアス変調構成500の例として示されているが、これらの構成要素によって本明細書に記載される開示の範囲を限定することは意図されていない。代わりに、電気的構成要素または回路が、RF信号に対する高インピーダンスパス、及び第1の電極112から接地までのDC信号に対する低インピーダンスパスまたは無インピーダンスパスを提供できる限り、(単一ステージ構成または多重ステージ構成の)ローパスフィルタまたはバンドパスフィルタとして構成され得る、目的の周波数を遮断するための任意の電気的構成要素または回路が検討される。
【0034】
要約すると、処理チャンバ内で粒子の発生を減少させる実施形態は、通電電極とプラズマとの間の電位差または、接地電極とプラズマとの間の電位差を最小化するために、チャンバ本体の基板処理領域の上方に配置されたリッドアセンブリの通電電極(プラズマのグロー放電領域を限定するために、接地された電極と平行の関係にある)に一定のゼロDCバイアス電圧を印加することによって達成される。プラズマと電極との電位差を最小化することによって、電極のシース領域内のイオンの加速が減少し得、イオンの電極上の保護コーティング層との衝突力が最小化されるため、粒子の発生が減少し得る。結果として、基板表面上の粒子の発生は減少する。
【0035】
以上の説明は本発明の実施形態を対象としているが、本発明の基本的な範囲を逸脱することなく本発明の他の追加の実施形態を考案することができ、本発明の範囲は、後出の特許請求の範囲によって定められる。