【実施例】
【0066】
以下に本発明を実施例により詳細に説明する。
【0067】
<アミノシラン化合物の合成>
[実施例1:ジイソプロピルアミノターシャリーブチルアミノシランの合成]
窒素置換後、吹込み管、温度計、冷却管、モーター攪拌機をセットした2000mLのフラスコにジイソプロピルアミン101.2g(1.0モル)とヘキサン800gを添加し冷媒にアセトンを用いて投げ込みクーラーで0℃に冷却した。0℃で保温、攪拌しながらジクロロシラン50.5g(0.5モル)のガスを毎分50mLの速度で4時間液中に吹き込むことで導入したところ白煙が生じると共に白色の塩が生じた。ジクロロシランの吹き込み後、フラスコの内温を室温まで徐々に3時間かけて温め、5時間攪拌しながら保温した。その後、窒素置換したグローブボックス内で減圧濾過により副生物であるアミン塩酸塩が主である固形物を取り除きジイソプロピルアミノクロロシランを含むヘキサン溶液を得た。
【0068】
このジイソプロピルアミノクロロシラン溶液を温度計、冷却管、モーター攪拌機がセットされ、窒素置換された2000mLフラスコに添加し、冷媒にアセトンを用いて投げ込みクーラーで0℃に冷却した。0℃で保温、攪拌しながらターシャリーブチルアミン73.14g(1.0モル)を2時間かけてゆっくり滴下した。その後、窒素置換したグローブボックス内で減圧濾過により副生するアミン塩酸塩が主である固形物を取り除き、ジイソプロピルアミノターシャリーブチルアミノシランを含むヘキサン溶液を得た。
【0069】
この粗ジイソプロピルアミノターシャリーブチルアミノシラン溶液を内温80℃で常圧蒸留することで粗ジイソプロピルアミノターシャリーブチルアミノシラン溶液からヘキサンを除去し、さらに蒸留塔を用いて内温90℃、10Torrで減圧蒸留することで最終生成物を高純度で得た。
【0070】
蒸留後のGC分析により、99.6面積%の純度で62.7g(収率62%)のアミノシラン化合物が得られたことが確認された。得られたアミノシラン化合物は
1H-NMRおよびGC-MSによって同定した。
1H-NMRの帰属は以下の通りである。
【0071】
σ (ppm)=0.79 ((CH
3)
3-C-
NH-, 1H, s), 1.12 ([(
CH3)
2-CH]
2-N-, 12H, d, J=7.0Hz), 1.19 ((
CH3)
3-C-NH-, 9H, s), 3.27 ([(CH
3)
2-
CH]
2-N-, 2H, sep), 4.57 (-
SiH2-, 2H, d, J=3.0Hz)
【0072】
上記
1H-NMRおよびGC-MSの結果により、得られたアミノシラン化合物は、下式:
【0073】
【化14】
で表されるジイソプロピルアミノターシャリーブチルアミノシランと同定した。
【0074】
[実施例2:ジイソプロピルアミノジメチルアミノシランの合成]
窒素置換後、吹込み管、温度計、冷却管、モーター攪拌機をセットした2000mLのフラスコにジイソプロピルアミン101.2g(1.0モル)とヘキサン800gを添加し冷媒にアセトンを用いて投げ込みクーラーで0℃に冷却した。0℃で保温、攪拌しながらジクロロシラン50.5g(0.5モル)のガスを毎分50mLの速度で4時間液中に吹き込むことで導入したところ白煙が生じると共に白色の塩が生じた。ジクロロシランの吹き込み後、フラスコの内温を室温まで徐々に3時間かけて温め、5時間攪拌しながら保温した。その後、窒素置換したグローブボックス内で減圧濾過により副生物であるアミン塩酸塩が主である固形物を取り除きジイソプロピルアミノクロロシランを含むヘキサン溶液を得た。
【0075】
このジイソプロピルアミノクロロシラン溶液を温度計、冷却管、モーター攪拌機がセットされ、窒素置換された2000mLフラスコに添加し、冷媒にアセトンを用いて投げ込みクーラーで0℃に冷却した。0℃で保温、攪拌しながらジメチルアミン45.08g(1.0モル)を4時間かけてゆっくり吹き込んだ。その後、窒素置換したグローブボックス内で減圧濾過により副生するアミン塩酸塩が主である固形物を取り除き、ジイソプロピルアミノジメチルアミノシランを含むヘキサン溶液を得た。
【0076】
この粗ジイソプロピルアミノジメチルアミノシラン溶液を内温80℃で常圧蒸留することで粗ジイソプロピルアミノジメチルアミノシラン溶液からヘキサンを除去し、さらに蒸留塔を用いて内温90℃、10Torrで減圧蒸留することで最終生成物を高純度で得た。
【0077】
蒸留後のGC分析により、96.1面積%の純度で28.0g(収率32%)のアミノシラン化合物が得られたことが確認された。得られたアミノシラン化合物は
1H-NMRおよびGC-MSによって同定した。
1H-NMRの帰属は以下の通りである。
【0078】
σ (ppm)=1.10 ([(
CH3)
2-CH]
2-N-, 12H, d, J=7.0Hz), 2.51 ((
CH3)
2-N-, 6H, s), 3.18 ([(CH
3)
2-
CH]
2-N-, 2H, sep), 4.47 (-
SiH2-, 2H, s)
【0079】
上記
1H-NMRおよびGC-MSの結果により、得られたアミノシラン化合物は、下式:
【0080】
【化15】
で表されるジイソプロピルアミノジメチルアミノシランと同定した。
【0081】
<シリコン含有膜の製造方法>
[実施例3:ジイソプロピルアミノターシャリーブチルアミノシランを用いた酸化シリコン膜の形成]
真空装置内にシリコン基板を設置し、150〜600℃の所定温度に加熱した。実施例1で得られたジイソプロピルアミノターシャリーブチルアミノシランおよびキャリアガスを含むアミノシラン組成物を1〜6秒の所定時間注入し、加熱したシリコン基板に吸着させた。次いで、装置内にアルゴンガスを6〜30秒の所定時間、導入することで未吸着のアミノシラン組成物および副生物をパージした。その後、反応ガスとしてオゾンを8Torrの圧力で3秒注入し、基板上に堆積したジイソプロピルアミノターシャリーブチルアミノシラン由来の酸化シリコンの原子層を形成した。次いで、アルゴンガスを30秒、導入することで未反応のオゾンガスと副生物をパージした。上記のサイクルを繰り返して、所望の膜厚の酸化シリコン膜を得た。
【0082】
[実施例4:ジイソプロピルアミノジメチルアミノシランを用いた酸化シリコン膜の形成]
真空装置内にシリコン基板を設置し、150〜600℃の所定温度に加熱した。実施例2で得られたジイソプロピルアミノジメチルアミノシランおよびキャリアガスを含むアミノシラン組成物を1〜6秒の所定時間、注入し、加熱したシリコン基板に吸着させた。次いで、装置内にアルゴンガスを6〜30秒の所定時間、導入することで未吸着のアミノシラン組成物および副生物をパージした。その後、反応ガスとしてオゾンを8Torrの圧力で3秒注入し、基板上に堆積したジイソプロピルアミノジメチルアミノシラン由来の酸化シリコンの原子層を形成した。次いで、アルゴンガスを30秒、導入することで未反応のオゾンガスと副生物をパージした。上記のサイクルを繰り返して、所望の膜厚の酸化シリコン膜を得た。
【0083】
[実施例5:ジイソプロピルアミノターシャリーブチルアミノシランを用いた窒化シリコン膜の形成]
真空装置内にシリコン基板を設置し、100〜600℃の所定の温度に加熱した。実施例1で得られたジイソプロピルアミノターシャリーブチルアミノシランおよびキャリアガスを含むアミノシラン組成物を0.05〜100Torrの所定の圧力で注入し、加熱したシリコン基板に吸着させた。次いで、装置内に未吸着のアミノシラン組成物および副生物をパージした。その後、反応ガスとしてアンモニアを0.05〜100Torrの圧力で注入し、基板上に堆積したジイソプロピルアミノターシャリーブチルアミノシラン由来の窒化シリコンの原子層を形成した。次いで、未反応のアンモニアガスと副生物をパージした。上記のサイクルを繰り返して、所望の膜厚の窒化シリコン膜を得た。
【0084】
[実施例6:ジイソプロピルアミノジメチルアミノシランを用いた窒化シリコン膜の形成]
真空装置内にシリコン基板を設置し、100〜600℃の所定の温度に加熱した。実施例2で得られたジイソプロピルアミノジメチルアミノシランおよびキャリアガスを含むアミノシラン組成物を0.05〜100Torrの所定の圧力で注入し、加熱したシリコン基板に吸着させた。次いで、装置内に未吸着のアミノシラン組成物および副生物をパージした。その後、反応ガスとしてアンモニアを0.05〜100Torrの圧力で注入し、基板上に堆積したジイソプロピルアミノジメチルアミノシラン由来の窒化シリコンの原子層を形成した。次いで、未反応のアンモニアガスと副生物をパージした。上記のサイクルを繰り返して、所望の膜厚の窒化シリコン膜を得た。
【0085】
[比較例1:ビスジエチルアミノシランを用いたシリコン含有膜の形成]
ビスジエチルアミノシランを用いてシリコン含有膜の形成を実施した。真空装置内にシリコン基板を設置し、150〜600℃の所定温度に加熱した。ビスジエチルアミノシランおよびキャリアガスを含むアミノシラン組成物を1〜6秒の所定時間、注入し、加熱したシリコン基板に吸着させた。次いで、アルゴンガスを6〜90秒の所定時間導入することで装置内に未吸着のアミノシラン組成物および副生物をパージした。その後、反応ガスとしてオゾンを3秒注入し、基板上に堆積したビスジエチルアミノシラン由来の酸化シリコンの原子層を形成した。次いで、アルゴンガスを30秒導入することで未反応のオゾンガスと副生物をパージした。上記のサイクルを繰り返して、所望の膜厚の酸化シリコン膜を得た。
【0086】
以下、表1に具体的な蒸着方法を示し、表2に基板温度300℃での原料アミノシランの供給時間と堆積速度の関係を示し、表3に基板温度300℃での原料アミノシランのパージ時間と堆積速度の関係を示し、表4に基板温度と堆積速度の関係を示した。なお、形成した層の厚さはエリプソメータで測定した。
【0087】
【表1】
【0088】
【表2】
【0089】
【表3】
【0090】
【表4】
【0091】
表2に示したように、実施例3および実施例4で製造した酸化シリコン膜は共に1秒以上で堆積速度が一定となるのに対し、同条件である比較例1の酸化シリコン膜は3秒以上で堆積速度が一定となり、実施例3および4は堆積速度が一定となるまでの時間が比較例1よりも短時間であることを確認することができた。
【0092】
表3に示したように、実施例3および実施例4で製造した酸化シリコン膜はアルゴンパージ時間20秒以上で堆積速度が一定になるのに対し、比較例1の酸化シリコン膜はアルゴンパージ時間60秒以上で堆積速度が一定になり、実施例3および実施例4は堆積速度が一定となるまでの時間が短時間であることを確認することができた。
【0093】
表4に示したように、実施例3および実施例4で製造した酸化シリコン膜は、ALD成膜が可能となる温度領域(ALDウインドウ)が基板温度250〜500℃であるのに対し、比較例1の酸化シリコン膜は300〜550℃であることを確認することができた。ここでのALDウィンドウとは堆積速度が極大となる点から極小となる点までと定義した。
【0094】
すなわち、本発明におけるアミノシラン化合物を用いて、原子層堆積法で酸化シリコン膜を製造する場合、原料の供給時間およびパージ時間を短時間化することができ、なおかつ、成膜温度も低温化できることが分かった。