(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態について説明する。ただし、以下に示す形態は、本発明の技術思想を具体化するための例示であって、本発明を以下に限定するものではない。また、各図面が示す部材の位置や大きさ等は、説明を明確にするため誇張していることがある。同一の名称、符号については、原則として同一もしくは同質の部材を示しており、重複した説明は省略する。
【0010】
本発明の一実施形態に係る発光素子10は、
図1及び
図2A〜2Cに示すように、半導体積層体13と、半導体積層体13の上面に設けられた誘電体多層膜14aを含む光反射層14と、光反射層14を覆うと共に、光反射層14の周囲で半導体積層体13の上面に設けられた透光性絶縁層15と、透光性絶縁層15を覆うと共に、透光性絶縁層15の周囲で半導体積層体13の上面に設けられた透光性導電層16と、上面側から見て光反射層14の外縁よりも内側にあって、透光性導電層16の上面に設けられた電極12と、を有する。
【0011】
このような構成を有することにより、電極に向かって伝搬する光を光反射層で反射させることができるため、電極における光吸収を抑制できる。さらに、透光性絶縁膜により、電極から供給された電流を、電極直下に位置する半導体積層体の領域よりも外側の領域、つまり光反射層から離れた領域に拡散させると共に、光反射層に反射されずに透光性絶縁層を透過して外部に取り出される光を増やすことができる。その結果、半導体積層体からの光を効率よく外部に取り出すことができる。
【0012】
(半導体積層体13)
半導体積層体は、例えば、基板18の上面に、n側半導体層13bと、n側半導体層13bの上方であってn側半導体層13bの一部の領域に設けられたp側半導体層13aと、が積層されてなる。半導体積層体13は、n側半導体層13bの上方であってp側半導体層13aが設けられた領域と異なる領域に設けられ、かつn側半導体層13bと電気的に接続されたn電極11と、p側半導体層13aの上方に設けられ、かつp側半導体層13aと電気的に接続されたp電極12との間に電流を印加することにより発光する。また、半導体積層体13は、n側半導体層13bとp側半導体層13aとの間に活性層13cを有することが好ましい。発光領域(本実施形態では、活性層がこれに相当する)を基準として、n電極11が接続される側の半導体がn側半導体層13bであり、p電極12が接続される側の半導体がp側半導体層13aである。
【0013】
このような半導体積層体の材料としては、例えば、In
XAl
YGa
1-X-YN(0≦X、0≦Y、X+Y<1)で表される窒化物半導体を用いるのが好ましい。
【0014】
また、基板は、半導体積層体を支持するものであるが、半導体積層体をエピタキシャル成長させるための成長基板であってもよい。このような基板の材料としては、例えば、サファイア(Al
2O
3)を用いることができる。ただし、本実施形態の発光素子としては、このような基板が除去されたものでもよい。
【0015】
(光反射層14)
光反射層14は、電極に向かって伝搬する半導体積層体からの光を下方に反射するための層であり、その光の80%以上、より好ましくは90%以上の光を反射することができる。光反射層は、半導体積層体の上面に設けられており、半導体積層体の上面と接していることが好ましい。ここで半導体積層体の上面とは、上述したp側半導体層の上面及びn側半導体層の上面(いわゆる、上面側から見てp側半導体層が設けられた領域とは異なる領域のn側半導体層の面)のいずれであってもよいが、半導体積層体からの光を効果的に反射することができるように、p側半導体層の上面に光反射層が設けられていることが好ましい。例えば、n側半導体層の上面に光反射層を設けず、p側半導体層の上面にのみ光反射層を設けても良い。この場合、n側半導体層の上面では、後述する透光性絶縁層を直接設けることができる。
【0016】
光反射層は、上面側から見て、後述する電極の形状に沿った形状を有する。上面側から見た光反射層の幅は、電極による光吸収を抑制するために、電極の幅よりも広く形成されているか、電極の幅と一致するように形成されている。光取出し効率の観点から、光反射層の幅を電極の幅と一致させることが好ましい。
【0017】
このような光反射層14は、例えば、Ag、Alの金属又はこれらを含む合金、誘電体膜を含む層によって形成することができ、なかでも誘電体多層膜14aを含む層によって形成することが好ましい。
【0018】
誘電体多層膜14aを含む層としては、DBR(分布ブラッグ反射器)膜が挙げられる。DBR膜は、例えば、任意に酸化膜からなる下地層の上に、低屈折率層と高屈折率層とからなる1組の誘電体を、複数組(例えば、2〜5組)にわたって積層させた多層構造であり、所定の波長光を選択的に反射することができる。具体的には屈折率の異なる膜を1/4波長の厚みで交互に積層することにより、所定の波長を高効率に反射させることができる。材料として、Si、Ti、Zr、Nb、Ta、Alからなる群より選択された少なくとも一種の酸化物または窒化物を含んで形成することができる。DBRの総膜厚は、0.2μm〜1μm程度が好ましい。
【0019】
DBR膜を酸化膜で形成する場合、低屈折率層を例えばSiO
2、高屈折率層を例えばNb
2O
5、TiO
2、Ti
3O
5、Ti
2O
3、TiO、Ta
2O
5、ZrO
2,TiO
2ZrO
2、Nb
2O
5又はAl
2O
3とすることができる。具体的には、下地層側から順番に(Nb
2O
5/SiO
2)
n(nは2〜5)とすることができる。
【0020】
光反射層14は、誘電体多層膜14aに加えて、誘電体多層膜の光抜けをより確実に防止するために、金属膜14bを含むことが好ましい。そのために、金属膜14bは、誘電体多層膜に対して、発光層に遠い側に形成する。金属膜14bとしては、例えば、Ag、Al、Cu又はこれらのいずれかを含む合金(例えば、耐熱性にも優れたAlCu合金やAlNd合金)からなる単層膜又は積層膜が挙げられる。このように、光反射層に金属膜を配置することにより、誘電体多層膜によって反射しきれない、斜め方向から光反射層に照射される光をも確実に反射させることができる。金属膜の厚みは、例えば、0.01μm〜1μm程度が挙げられる。また、金属膜は、短絡、加工及び駆動時の劣化を防止するために、その上面が絶縁膜によって完全に被覆されていることが好ましい。ここでの絶縁膜は、光反射層を構成する膜の1つであって、後述する透光性絶縁層とは別の膜であり、例えば、上述した誘電体多層膜を構成する材料によって形成することができる。
【0021】
(透光性絶縁層15)
透光性絶縁層15は、電極から供給される電流を、半導体積層体の電極直下に位置する領域であって光反射層が設けられた領域よりも外側の領域に拡散するための層であり、この外側の領域で生じる半導体積層体からの光を少なくとも透過できる材料が用いられる。例えば、透光性絶縁膜は、半導体積層体からの光の60%以上を透過するのが好ましく、さらには90%以上を透過するのが好ましい。
【0022】
透光性絶縁層15は、光反射層14及びその周囲にある半導体積層体13の上面を覆う。透光性絶縁層は、光反射層の上面のみならず、側面をも覆っている。このため、光反射層、特に上述した光反射層に金属膜が含まれる場合、製造のときに施される加熱処理やエッチング処理などで金属膜が損傷するのを抑制することができる結果、光反射層としての機能を長期にわたって維持することができる。
【0023】
透光性絶縁層15は、半導体積層体から光を効果的に取り出すために、半導体積層体を構成する複数の半導体層のうち透光性絶縁層と接する半導体層(以下、単に「コンタクト層」とも言う。)の屈折率以下の材料を用いることが好ましい。ここで、半導体積層体が窒化物半導体から構成される場合、コンタクト層は典型的にはGaNからなる。なお、本明細書における屈折率とは、特に限定しない限り半導体積層体から発せられる光の波長における屈折率を言う。透光性絶縁層の屈折率は、例えば、コンタクト層の屈折率よりも0.2以上小さいのが好ましく、0.4以上小さいものがより好ましい。また、透光性絶縁層は、後述する透光性導電層に光を効果的に透過させるため、透光性導電層の屈折率以上の材料であることがより好ましい。具体的には、透光性絶縁層に用いられる材料として、Zr、Si、V、Nb、Hf、Ta、Al、Ce、In、Sb、Zn等の酸化物、窒化物又は酸窒化物が挙げられる。なかでも、SiN(屈折率が約2.01)が好ましい。透光性絶縁層に用いられる材料は、コンタクト層の屈折率と略同等又はより小さく、かつ後述する透光性導電層(例えば、ITO、455nmの波長の光に対する屈折率が約1.97)の屈折率と略同等又はより大きい屈折率を有するものが好ましい。これにより透光性導電層との界面における光の反射を緩和でき、半導体積層体からの光をさらに外部に効率よく取り出すことができる。
透光性絶縁層の膜厚は、例えば、100〜300nm程度が挙げられる。
【0024】
(透光性導電層16)
透光性導電層16は、半導体積層体のより広い領域に電流を流すために、電極から供給される電流を拡散するための層である。このため、本実施形態に係る透光性導電層においては、p側半導体積層体の上面であって、透光性絶縁層が形成された領域以外の略全面に配置されることが好ましい。ここで略全面とは、p側半導体層の上面のうち外縁以外の領域をいう。例えば、透光性導電層は、p側半導体層の上面の90%以上の面に設けられていえることが好ましい。また、透光性導電層は、p側半導体層の上面と同様に、n側半導体層の上面に設けてもよい。
【0025】
透光性導電層16は、半導体積層体からの光を効率的に外部に取り出すために、半導体積層体からの光に対して60%以上、より好ましくは90%以上の光を透過させることができる材料が用いられる。このような透光性導電層の材料としては、Zn、In、Sn、Mgから選択される少なくとも1種を含む酸化物から構成されるのが好ましく、例えば、ITO(酸化インジウム)、ZnO(酸化亜鉛)、In
2O
3(酸化インジウム)、SnO
2(酸化スズ)、これらの複合物(例えば、IZO(酸化インジウム+酸化亜鉛))が挙げられ、なかでもITOが好ましい。
【0026】
透光性導電層の厚みは、例えば、順方向電圧を低減できる50nm以上、かつ半導体積層体からの光の媒質伝搬による光損失が低減できる300nm以下程度の厚みとすることができる。
【0027】
(電極11、12)
電極11、12は、透光性導電層16又は導電層19の上面に設けられる。電極11、12は、上面側から見て、その外縁の一部又は全部が、光反射層14の外縁と一致するか、その外縁よりも内側にある。ここでの電極とは、n側半導体層に電気的に接続された電極11、p側半導体層に電気的に接続された電極12のいずれでもよいが、p側半導体層13aに電気的に接続された電極12(いわゆる、p電極)であることが好ましい。ここで一致とは、完全に重なり合うことが好ましいが、製造における加工精度を考慮すると、±2μm程度の変動は許容され、好ましくは±1μm以下であることが好ましい。
【0028】
電極、特にp電極12の外縁は、光反射層14の外縁との最短距離を2μm以下とすることが好ましい。また、p電極12の外縁は、透光性絶縁層15の外縁との最短距離を4μm以下とすることが好ましい。このような配置により、電極から供給される電流を半導体積層体の全体に拡散させることができるとともに、電極による光吸収を最小限に止めて、より効率的に光取り出しを向上させることができる。
【0029】
電極に用いられる材料としては、例えば、Au、Pt、Pd、Rh、Ni、W、Mo、Cr、Ti、Al、Cuから選択される金属又はこれらの合金が挙げられる。具体的には、これら電極は、半導体積層体側から順にTi/Pt/Au、Cr/Pt/Au、又はCrRh合金/Pt/Auなどの積層構造にすることもできる。
【0030】
実施例1
この実施例1の発光素子10は、
図1及び
図2A〜2Cに示すように、上面側から見た外縁が略長方形の半導体積層体13と、半導体積層体13の上面に設けられた誘電体多層膜14aを含む光反射層14と、光反射層14を覆い、かつ光反射層14の周囲で半導体積層体13の上面に設けられた透光性絶縁層15と、透光性絶縁層15を覆い、かつ透光性絶縁層15の周囲で半導体積層体13の上面に設けられた透光性導電層16と、上面側から見て光反射層14の外縁よりも内側にあって、透光性導電層16の上面に設けられたp電極12と、を備える。半導体積層体13は、サファイアからなる基板18上に形成されており、基板18側から順にn側半導体層13b、活性層13c、p側半導体層13aを備える。
【0031】
また、半導体積層体13の上面は、p側半導体層13aの上面と、n側半導体層13bの上面(半導体積層体13の外周側の一部において、p側半導体層13a及び発光層の一部が除去されてn側半導体層13bが露出した領域)と、を含む。n側半導体層13bの上面には、p電極12と同一面側に接続された導電層19を介してn電極11を有する。なお、上面側から見た発光素子10の辺の長さは850mm×240mmである。
【0032】
光反射層14は、上面側から見て、p側半導体層13aの上面及びn側半導体層13bの上面のそれぞれに配置されている。p側半導体層13aの上面においては、光反射層14は、長手方向に細長く延伸し、その一端において幅広の形状で配置されている。延伸部分の幅は、例えば、約3μmであり、幅広部分の形状は、その直径が約70μmの略円形である。n側半導体層13bの上面に配置された光反射層14は、複数の延伸部が長手方向に配列し、その一端において列から外れた部位に配置した円形部を有する
【0033】
光反射層14は、下層においてSiO
2膜(厚み:約228nm)を有し、その上に、TiO
2/SiO
2(厚み:約44nm/約76.3nm)2ペアの誘電体多層膜14aが配置され、その上に、金属膜14bとして、AlCu膜(厚み:約100nm)が配置され、このAlCu膜を完全に被覆するようにSiO
2膜14c(厚み:約150nm)が形成されている。これらの光反射層14を構成する膜(誘電体多層膜14a、金属膜14b及びSiO
2膜14c)は、その端面が一致している。
【0034】
透光性絶縁層15は、p側半導体層13aの上面において光反射層14の全周囲を取り囲むように、p側半導体層13aの上面に及んで配置されている。p電極12の外縁から透光性絶縁層15の外縁までの幅(
図2AのW)は、例えば、約4μmである。n側半導体層13bの上面においては、上述した複数の延伸部と、円形部とのそれぞれに対して、光反射層14の全周囲を取り囲むように、n側半導体層13bの上面に及んで配置されている。n側半導体層上においても、p側半導体上と同様の幅Wである。透光性絶縁層15は、SiO
2膜(厚み:約150nm)によって形成されている。
【0035】
透光性導電層16は、p側半導体層13aの上面において、その外周以外の略全面を被覆しており、透光性絶縁層15の周囲にあるp側半導体層13aとの接触領域においてオーミック接触している。透光性導電層16は、ITOによって、厚み約60nmで形成されている。n側半導体層13bの上面には、透光性導電層16は配置されていてもよいが、
図1及び
図2A〜2Cにおいては配置されていない。
【0036】
p電極12は、その外縁の全部が上面側から見て光反射層14の外縁よりも内側に配置されており、外縁同士の距離(
図2AのD)は、約2μmである。p電極12は、p側半導体層13a側からCrRh合金/Pt/Au(厚み:約3nm/約50nm/約1600nm)によって形成されている。
【0037】
n側半導体層13bの露出領域は、上から見て、半導体層13の2辺に沿って配列されており、短辺に対向する位置で幅広に露出されている。n電極11は、導電層19を介して配置されている。導電層19は、n側半導体層13b側からTi/AlCu/Ti/Ru(厚み:約0.6nm/約500nm/約150nm/約100nm)によって形成されており、n電極11は、n側半導体層13b側からCrRh合金/Pt/Au(厚み:約3nm/約50nm/約1600nm)によって形成されている。これによって、n電極11は、半導体積層体13の平面積の5%程度(全露出部の合計平面積)で半導体積層体13と接続されている。
【0038】
このような構成によって、電極に向かって伝搬する光を光反射層14で反射することができるため、電極における光吸収を抑制できる。さらに、透光性絶縁膜15により、電極から供給された電流が半導体積層体13の電極直下に位置する領域よりも外側の領域、つまり光反射層14から離れた領域に拡散されるため、光反射層14に反射されずに透光性絶縁層15を透過して外部に取り出される光を増やすことができる。またさらに、光反射層14が透光性絶縁層15によって完全に被覆されており、光反射層14を構成する金属膜14bが製造時において損傷されることないため、長期にわたって劣化することなく安定して光反射層14としての機能を継続することができる。その結果、発光素子の信頼性及び光取り出し効率を向上させることができる。
【0039】
このような発光素子は、例えば、
図3に示すように、以下の方法によって製造することができる。
まず、
図3Aに示したように、基板18の上面に積層され、かつn側半導体層13bと、n側半導体層13bの上方であってn側半導体層13bの一部の領域に積層された活性層13c及びp側半導体層13aとを含む半導体層13を準備する。
次に、
図3Bに示すように、レジスト層によって、p側半導体層13aの上方の一部と、p側半導体層13aが積層されていないn側半導体層13bの上方の一部とにそれぞれ開口部を有するリフトオフ用のパターン21を形成する。
【0040】
パターン21の上面及びその開口部で露出した半導体積層体13の上面に光反射層14を成膜した後、リフトオフ法を行うことによって、
図3Cに示すように、光反射層14を所定の領域に形成する。
図3Dに示すように、レジスト層によって、光反射層14及びその周囲の半導体積層体13の上方の一部にそれぞれ開口部を有するリフトオフ用のパターン22を、半導体積層体13の上面に形成する。
【0041】
次に、パターン22の上面、その開口部で露出した光反射層14の上面及び半導体積層体13の上面に透光性絶縁層15を成膜した後、リフトオフ法を行うことによって、
図3Eに示すように、光反射層14を被覆する透光性絶縁層15を形成する。
図3Fに示すように、半導体積層体13の上面及び透光性絶縁層15の上面に透光性導電層16を成膜し、その後、
図3Gに示すように、p側半導体層13aの上方であって、透光性導電層16の上面にマスク23を形成する。
このマスク23を用いたエッチング工程によって透光性導電層16を形成し、次いで、
図3Hに示すように、マスク23を除去する。
【0042】
図3Iに示すように、レジスト層によって、p側半導体層13aが積層されていないn側半導体層13bの上方であって透光性絶縁層15の上方一部に開口部を有するリフトオフ用のパターン24を形成する。
パターン24の上面及びその開口部で露出した透光性絶縁層15の上面に導電層19を成膜した後、リフトオフ法を行うことによって、
図3Jに示すように、導電層19を形成する。
【0043】
次に、半導体積層体13の上面側の全体に保護膜17を形成する。その後、その保護膜17の上面に、透光性導電層16及び導電層19の上方の一部にそれぞれ開口部を有するマスクを形成する。次に、その開口部で露出した保護膜17を除去し、続けて同じマスク用いて保護膜17から露出した透光性導電層16の上面及び導電層19の上面に電極材料を成膜し、リフトオフ法を行うことによって、
図3Kに示すように、p電極12及びn電極11を形成する。
【0044】
このような方法により、光反射層14に金属膜を含む場合であっても、金属膜は、透光性絶縁膜16によって被覆されているため、例えば透光性導電層16をエッチングするときに用いられる薬液にさらされることがなくなる。このため、製造時における金属膜の損傷、劣化を回避することができる。そして、金属膜は、透光性絶縁層16によって外部環境からも保護されることになるため、発光素子として使用する際にも金属膜の損傷及び劣化を防止することができる。
【0045】
実験例1
実施例1で得られた発光素子1を封止部材が覆う発光装置の状態を模して、
図4Aに示すように、半導体積層体13を構成する複数の半導体層のうち最も上方に位置するGaN(屈折率:2.42)からなるコンタクト層/透光性絶縁層15/透光性導電層(ITO、屈折率:2.01)16/保護膜17(SiO
2、屈折率1.97)/封止部材30(シリコーン樹脂、屈折率:1.55)の積層体を形成し、矢印で示した特定部位を想定した積分透過率をシミュレーションによって算出した。また、透光性絶縁層15には、TiO
2(屈折率:2.6)、SiN(屈折率:2.0)、SiO
2(屈折率:1.49)をそれぞれ用いた。なお、ここで言う屈折率は発光素子からの光の波長に相当する455nmの光に対するものである。
比較例として、実施例1の発光素子1において、透光性絶縁層15が存在しない発光素子についてもシミュレーションを行った。
【0046】
その結果、
図4Bに示すように、透光性絶縁層15が存在しない発光素子(
図4B中、実線)は、積分透過率が20%以上であった。一方、透光性絶縁層15が存在する発光素子は、透光性絶縁層15に用いられる材料の屈折率が高いほど、特に、コンタクト層であるGaNの屈折率に近い材料であるTiO
2(屈折率:2.6)、又は透光性導電層の屈折率に近い材料であるSiN(屈折率:2.0)を用いることによって、透光性絶縁層15が存在しない発光素子に近い積分透過率を示すことが分かった。なお、透光性導電層15の屈折率に近い材料としては、SiNの他に、例えばSiONが挙げられる。
【0047】
つまり、p側半導体層13a上に光反射層14が形成され、かつ透光性絶縁層15がさらに光反射層14を覆うように形成されていたとしても、その透光性絶縁層15に用いられる材料として、屈折率の高い材料、特に、半導体積層体13に含まれるコンタクト層の屈折率又は透光性導電層16の屈折率に近い材料であれば、この透光性絶縁層15による光の吸収等を招くことなく、透光性絶縁層15の有無にかかわらず、光取り出し効率を維持又は向上させることができる。
【0048】
また、そのような透光性絶縁層15の膜厚は、積分透過率にさらなる向上がみられる100nm〜200nm程度が好ましく、特に、透光性絶縁層15としてSiNを用いる場合は100nm〜150nm程度がより好ましく、SiO
2を用いる場合は150nm〜200nm程度がより好ましいことがわかる。
【0049】
このことから、コンタクト層、透光性絶縁層15、透光性導電層16の屈折率の関係は、好ましくはコンタクト層≧透光性絶縁層15≧透光性導電層16、より好ましくは、コンタクト層(例えば、GaN)>透光性絶縁層15(例えば、SiN又はSiON)≒透光性導電層16(例えば、ITO)、又は、コンタクト層(例えば、GaN)≒透光性絶縁層15(例えば、TiO
2)>透光性導電層16(例えば、ITO)であることが理解できる。
【0050】
実験例2
透光性絶縁層15の材料、
図2Aにおけるp電極12の外縁と光反射層14の外縁との距離D及びp電極12の外縁と透光性絶縁層15の外縁との距離Wを、以下の表に示すように変化させた発光素子を作製し、電流20mAでの光出力(mW)を測定した。比較例は、実施例1の発光素子において、光反射層14が存在しない発光素子とした。
【0052】
その結果、上述した実施例1〜5は、いずれにおいても、光反射層14が存在しない発光素子と比較して、光出力の向上が認められた。
また、実施例1が、実施例3よりも光出力が大きいことから、透光性絶縁層15は半導体積層体13の上面に最小限しか存在しないことが光出力を向上させる点で有効であることがわかる。
さらに、実施例2と実施例3と実施例4とから、光反射層14が小さいほど光出力が高いことを示す。従って、光反射層14の外縁を電極の外縁と一致させることにより、光出力が最大限に向上することが推測される。
加えて、実施例1と実施例5とから、透光性絶縁層15の屈折率が高い材料、つまり、透光性導電層16の屈折率により近いものであることが、光出力の向上に有効であることがわかる。