(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6651866
(24)【登録日】2020年1月27日
(45)【発行日】2020年2月19日
(54)【発明の名称】ポリマー液の溶解・希釈装置
(51)【国際特許分類】
B01F 5/00 20060101AFI20200210BHJP
B01F 3/08 20060101ALI20200210BHJP
B01D 21/01 20060101ALI20200210BHJP
B01F 1/00 20060101ALI20200210BHJP
B01F 15/02 20060101ALI20200210BHJP
【FI】
B01F5/00 A
B01F3/08 Z
B01D21/01 B
B01F1/00 Z
B01F15/02 A
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-8909(P2016-8909)
(22)【出願日】2016年1月20日
(65)【公開番号】特開2017-127815(P2017-127815A)
(43)【公開日】2017年7月27日
【審査請求日】2018年12月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001063
【氏名又は名称】栗田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100144967
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 隆之
(72)【発明者】
【氏名】吉田 恒行
【審査官】
菊地 寛
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2015/0366827(US,A1)
【文献】
国際公開第2010/044340(WO,A1)
【文献】
特表2015−525117(JP,A)
【文献】
特開2005−205407(JP,A)
【文献】
米国特許第05011292(US,A)
【文献】
特開2007−069167(JP,A)
【文献】
米国特許第4233265(US,A)
【文献】
米国特許第3852234(US,A)
【文献】
米国特許第5316031(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01F 5/00
B01D 21/01
B01F 1/00
B01F 3/08
B01F 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶解又は希釈用の水が第1のダイアフラムポンプ及び第1の逆止弁を介して被処理水系への注入点へ供給される配管と、
該第1の逆止弁よりも下流側において第2の逆止弁を介して該配管内に、液体高分子凝集剤であるポリマー液を供給するポリマー液供給手段と
を備えたことを特徴とするポリマー液の溶解・希釈装置。
【請求項2】
請求項1において、前記ポリマー液供給手段は、前記ポリマー液を送液するための第2のダイアフラムポンプを有することを特徴とするポリマー液の溶解・希釈装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記配管の前記ポリマー液供給点から被処理水系への注入点までの長さが、供給される液体の滞留時間が1分以上を有するものであることを特徴とするポリマー液の溶解・希釈装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液状ポリマーや、ポリマーの溶液又は分散液などのポリマー液を水などの媒体に溶解又は希釈させるための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エマルション型ポリマーやディスパージョン型ポリマーなどの液体高分子凝集剤は、原液のまま使用するよりも、原液を水で0.1〜1%程度に溶解して使用するほうが効果が2〜5倍良いため、希釈して使用するのが望ましい。従来の自動希釈、溶解、注入装置では、希釈溶解のための撹拌タンクに水とポリマーを連続的または間欠的に入れ、タンクで十分撹拌、溶解したうえで、その溶解液をポンプで送り、注入したり、配管で送られてくる水に原液ポリマーを注入し、その後ラインミキサーで撹拌、溶解して注入していた。
【0003】
ラインミキサーは、詰まりやすく、頻繁な清掃が必要であったり、滞留時間がとれないので、ポリマーの十分な溶解が困難である。また、タンクで撹拌、溶解する方法は、ポンプで送る液がポリマーの溶解液で粘性も高く、ポンプもやや特殊で、さらに、撹拌機、制御などの設備は、煩雑、高価なものが多かった。
【0004】
特許文献1には、希釈水を定量供給装置で配管中を送水しながら高分子薬品液をポンプで添加し、次いでラインミキサや遠心ポンプで混合する溶解方法、溶解システムが記載されているが、ラインミキサや遠心ポンプ等の混合装置が必要である。
【0005】
特許文献2にはエマルションポリマー又はその一次希釈液に希釈水を添加し、スタティッキミキサで混合することが記載されているが、スタティッキミキサが必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−57790
【特許文献2】特開2007−69167
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
スタティッキミキサやラインミキサ、遠心ポンプなどの混合装置を用いると、溶解・希釈装置の構成が複雑でコスト高になると共に、混合装置での閉塞等のトラブルにより溶解・希釈装置の運転の安定性が損なわれるおそれもある。
【0008】
本発明は、スタティッキミキサやラインミキサ、遠心ポンプ等の混合装置が不要であり、装置構成が簡易であると共に、運転の安定性にも優れたポリマー液の溶解・希釈装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のポリマー液の溶解・希釈装置は、溶解又は希釈用の水が第1のダイアフラムポンプ及び第1の逆止弁を介して被処理水系のポリマー注入点に供給される配管と、該第1の逆止弁よりも下流側において第2の逆止弁を介して該配管内にポリマー液を供給するポリマー液供給手段とを備える。
【0010】
本発明では、前記ポリマー液供給手段は、ポリマー液を送液するための第2のダイアフラムポンプを有することが好ましい。
【0011】
また、本発明では、前記配管のポリマー液供給点から被処理水系への注入点までの長さが、供給される液体の滞留時間が1分以上を有するものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明のポリマー液の溶解・希釈装置では、第1のダイアフラムポンプから供給された水は、脈動しながら配管(ホース)内を流れ、この配管にポリマー液が添加される。水が、脈動しながら配管内を流れることによる撹拌効果により、ポリマー液が十分に均一に溶解及び/又は希釈される。
【0013】
ポリマー液を第2のダイアフラムポンプで添加することにより、ポリマー液も脈動しながら添加されるようになり、ポリマー液が十分に均一に溶解又は希釈される。
【0014】
本発明のポリマー液の溶解・希釈装置は、ラインミキサ等の混合装置がなく、低コストである。また、混合装置の閉塞等によるトラブルもないので、運転が安定して行われる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施の形態に係るポリマー液の溶解・希釈装置の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、
図1を参照して実施の形態に係るポリマー液の溶解・希釈装置について説明する。
【0017】
溶解・希釈用の水(この実施の形態では工水(工業用水))を貯留するためのタンク1に対し、工水がボールタップ1aによって規定水位となるように導入される。タンク1内の水は、ホース2a、ダイアフラムポンプ2、ホース2b及び第1の逆止弁(この実施の形態ではバタフライ逆止弁)3を介してブレードホース等よりなる配管としてのホース4に送り出される。ホース4の末端はチーズ5の第1流入口5aに接続されている。
【0018】
ポリマー液タンク6内のポリマー液は、ダイアフラムポンプ7及びホース等よりなる配管としてのホース8及び逆止弁9を介してチーズ5の第2流入口5bに供給される。チーズ5の流出口5cに長いホース等よりなる配管としてのホース10が接続され、該ホース10の末端からブース循環水や排水等の被処理水に溶解又は希釈液が注入される。
【0019】
タンク1からの工水は、ダイアフラムポンプ2でホース10へ送水されるため、脈動する。また、ポリマー液タンク6からのポリマー液も、ダイアフラムポンプ7でチーズ5からホース10へ送液されるため、脈動する。このように工水及びポリマー液が脈動しながら配管10内を流れることで得られる撹拌効果により、ポリマー液が十分に溶解又は希釈される。
【0020】
ホース10の長さLは、ポリマーが十分に溶解するだけの滞留時間を要するような長さにすることが好ましい。ポリマーが十分に溶解するための滞留時間は、ポリマー液によって異なるが、いずれのポリマー液であっても1分以上であることが好ましく、ディスパージョン型ポリマーの場合には2分以上、エマルション型ポリマーの場合には3分以上であることがより好ましい。
【0021】
また、ポリマー液を十分に溶解または希釈するためには、溶解又は希釈液がホース10内を十分な流速で供給されることが好ましく、例えば、ポリマー液(ポリマー原液)を0.1〜1質量%程度に希釈する場合には、ホース10の内径を4〜50mm、ポリマー希釈液(ポリマー液+溶解又は希釈用の水)の流速を10〜100,000mL/min程度、特に500〜50,000mL/min程度とすることが好ましい。
【0022】
このポリマー液の溶解・希釈装置は、ラインミキサ、スタティックミキサ、遠心ポンプなどの混合装置が不要であり、構成が簡易であり、低コストである。また、上記混合装置を用いないため、混合装置での閉塞がなく、装置の運転の安定性に優れる。配管10の長さを長くすることにより、溶解しにくいポリマー液であっても十分に溶解又は希釈することができる。なお、ホース10の長さをポリマー液の溶解特性に合わせて調整してもよい。
【0023】
本発明で溶解又は希釈されるポリマー液としては、液体状ポリマー(原液)、その溶解液又は分散液などが挙げられる。ポリマー液としては、具体的には液体高分子凝集剤が好適であり、エマルション型ポリマーやディスパーション型ポリマーなどの液体高分子凝集剤が例示される。
【0024】
ポンプ2からの工水の送水量及びポンプ7からのポリマー液の送液量を定量とすることにより、規定濃度のポリマー液溶解水又は分散液を供給することができる。
【0025】
なお、溶解又は希釈するための水は、工水のほか、水道水、地下水など任意である。
【実施例】
【0026】
[実施例1]
塗装ブース循環水ピットのスラッジ回収装置に添加されるポリマー水溶液を
図1に示す装置を用いて製造した。
【0027】
30Lポリプロピレンタンクよりなるタンク1にボールタップ1aを取り付けた。工水蛇口とボールタップ1aとを内径15mmのブレードホースで接続した。タンク1の上にタクミナ社CS2ダイアフラムポンプ(1.5L/min、0.3MPa)2を設置し、ポンプ2の吸込口にホース2aの一端を接続し、ホース2aの他端をタンク1内へ差し込んだ。
【0028】
ポンプ2の吐出口を長さ1mのホース2bを介して真鍮製のバタフライ逆止弁3の流入口に接続した。バタフライ逆止弁3の流出口を、長さ20cmのホース4を介してチーズ5の流入口5aに接続した。チーズ5の流入口5bにはポリマー原液用の逆止弁(イワキ社CA4)9を取り付け、流出口5cに内径d=15mm、長さL=20mのホース10の後端を接続した。このホース10は巻いて一か所にコンパクトに置いた。
【0029】
ポリマー原液用の逆止弁9を、内径4mmのホース8(長さ50cm)を介して、イワキ社製ダイアフラムポンプ(ソレノイド方式、38ml/min、1MPa)7の吐出口に接続した。このダイアフラムポンプ7の吸込口に接続したホース7aの先端を、ポリマー液タンク6内のポリマー原液(栗田工業株式会社製クリスタックB−303、ディスパージョン型カチオンポリマーよりなる高分子凝集剤)に差し込んだ。
【0030】
ホース10の先端を、ブース循環水ピットにある浮上スラッジ取水ポンプ(水中ポンプ)の吸込口に、ホース10から流出してきた溶解ポリマーが吸い込まれるようにセットした。
【0031】
ダイアフラムポンプ2を作動させ、タンク1内の工水を1.5L/min(ホース内滞留時間2.3分、線速8.7m/min)にてホース10に送水すると共に、ダイアフラムポンプ7を作動させ、10mL/minにてポリマー原液を、チーズ5を介してホース10に注入した。
【0032】
浮上スラッジ取水ポンプから送られた凝集水は、加圧浮上装置(取水100L/min、容量3m
3)に送られ、凝集したスラッジが浮上し、かきとられた。浮上したスラッジが分離された処理水はピットに戻した。この処理水および加圧浮上装置に入る凝集液(表1に原水と記載。以下、同様)を採取し、それぞれの懸濁物質濃度をJIS法で測定した。結果を表1に示す。
【0033】
[実施例2]
ポリマー凝集剤をクリフィックスEC−482(栗田工業株式会社エマルション型カチオンポリマー)に変え、その添加量を5mL/minにしたこと以外は、実施例1と同様に試験した。処理水および加圧浮上装置に入る凝集液を採取し、それぞれの懸濁物質濃度をJIS法で測定した。結果を表1に示す。
【0034】
[実施例3]
ポリマー混合液を送るホース10の長さを30mとしたこと以外は、実施例2と同様に試験した。処理水および加圧浮上装置に入る凝集液を採取し、それぞれの懸濁物質濃度をJIS法で測定した。結果を表1に示す。
【0035】
[比較例1]
前記ポリマー原液をそのまま取水口(前記ブース循環水ピットにある浮上スラッジ取水ポンプの吸込口)に添加したこと以外は、実施例1と同様の試験を行った。処理水および加圧浮上装置に入る凝集液を採取し、それぞれの懸濁物質濃度をJIS法で測定した。結果を表1に示す。
【0036】
[比較例2]
原液のまま取水口にポリマー添加したこと以外は、実施例3と同様の試験を行った。処理水および加圧浮上装置に入る凝集液を採取し、それぞれの懸濁物質濃度をJIS法で測定した。結果を表1に示す。
【0037】
[比較例3]
ダイアフラムポンプ2を用いず、圧力がかかった(約0.5MPa)工場内での工水の吐出口に逆止弁、バルブをつけ、ここから工水を1.5L/minにて供給したこと以外は実施例1と同じ方法で希釈ポリマーを取水ポンプの吸い口に送った。なお、この場合、ダイアフラムポンプを使用しないので、送水される工水には脈動がない。処理水および加圧浮上装置に入る凝集液を採取し、それぞれの懸濁物質濃度をJIS法で測定した。結果を表1に示す。
【0038】
【表1】
【0039】
表1の通り、実施例1〜3によると、処理水の懸濁物質濃度は比較例に比べて著しく低くなることが認められ、特にホース10の長さを30mとした実施例3によると、実施例2よりもさらに効果的であることが認められた。
【符号の説明】
【0040】
1,6 タンク
2,7 ダイアフラムポンプ
5 チーズ
10 配管(ホース)