【文献】
「Ti−Al系軽量金属間化合物の相安定性と構造用材料としての基礎的特性」小林郁夫他、軽金属 44(11)595−600 1994年
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造は飛躍的な進歩を遂げ、G(ギガ)バイトスケールのDRAMの設計がなされている。これら半導体装置等の製造工程の中で多数の薄膜が形成されるが、薄膜相互間の距離が極めて小さく集積密度が向上しているために、薄膜を構成する物質あるいはその薄膜に含まれる不純物が隣接する薄膜に拡散するという問題が発生した。これにより自膜及び隣接膜の構成物質のバランスが崩れ、本来所有していなければならない膜の機能が低下するという問題が起こる。このような薄膜の製造工程においては数百度に加熱される場合があり、また半導体装置を組み込んだ電子機器の使用中にも温度が上昇する。このような温度上昇は前記物質の拡散係数をさらに上げ、拡散による電子機器の機能低下に大きな問題を生じさせることがあった。
【0003】
一例を挙げると、バリウム−ストロンチウム−チタネイト(BST)を使用するキャパシタであるが、一般にこの構造ではシリサイド(TiSi
2)層とBST層との間に、TiAlNのバリア層(膜)が形成される。これは前記シリサイド層のBST層からの酸素の拡散により汚染されるのを防止するためである。このTiAlNのバリア層は緻密な層であり、多少の熱では他の物質とほとんど反応しないので、この場合も約3〜5nm程度でバリア層としての機能を十分に果たすことができる。一般に、このTiAlNのバリア層はスパッタリングにより形成する。スパッタリングは陰極に設置したターゲットに、Ar+などの正イオンを物理的に衝突させてターゲットを構成する金属原子をその衝突エネルギーで放出させる手法であるが、上記窒化物を形成するにはターゲットとしてTiAl合金を使用し、アルゴンガスと窒素の混合ガス雰囲気中でスパッタリングすることによって形成することができる。
【0004】
従来、このような極めて薄いTiAlNのバリア層で十分な機能を有すると考えられていたために、TiAl合金ターゲットがあまり考慮されずに使用されていた。しかし、TiAlNのバリア層の多くは他の機能薄膜に影響を与えないように極めて薄い膜を形成するものであるから、均一かつ良好で緻密な膜が形成されないことは、バリア膜としての機能が損なわれる可能性が非常に高い。さらに、このバリア膜を形成する際に発生するパーティクルは、その特性を著しく低下させることから、極力低減することが求められている。特に、半導体装置の高集積度化、超微細化に伴って、このような要求は一段と高まっている。このようなことから、TiAl合金ターゲットの性質をより注意深くかつ厳密にコントロールする必要があった。
【0005】
Ti−Al合金スパッタリングターゲットに関しては、例えば、特許文献1には、アルカリ金属、放射性元素、遷移金属などの不純物を低減させたターゲットが開示されている。この技術は、バリア膜の機能の低下を抑制するために優れた技術であるが、スパッタリング時に発生するパーティクルを十分に抑制することができなかった。また、特許文献2にも同様に、酸素や窒素、炭素などの含有量を低減することで、素子特性の劣化や不純物ガス成分に起因する異常放電などを抑制することが開示されている。不純物含有量を低減することは膜質を向上させるのにそれなりに有効であるものの、それだけではパーティクルの少ない均質な膜が得られなかった。その他にも、ターゲット中の不純物を極力低減させる技術が知られている(特許文献3〜12)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、スパッタリングの際の異常放電を防止することができ、パーティクルの発生が少ないTi−Al合金スパッタリングターゲットを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明者は鋭意研究を行った結果、粉末冶金法によって提供されるTi−Al合金ターゲットにおいて、原料粉末の組成、混合比率を厳密に調整することによって、ターゲットの内部組織を制御することができると共にエロージョン表面の凹凸を低減することができ、これによって、パーティクルの発生が少ない膜を形成することができるとの知見を得た。
このような知見に基づき、本発明者は下記の発明を提供するものである。
1)Alを39.6〜80.0at%含有し、残余Ti及び不可避的不純物からなる焼結体ターゲットであって、該ターゲット組織において、Ti
3Al結晶相の面積比率が40%以下であることを特徴とするTi−Al合金スパッタリングターゲット。
2)相対密度が98%以上であることを特徴とする上記1)記載のTi−Al合金スパッタリングターゲット。
3)酸素含有量が400wtppm以下であることを特徴とする上記1)又は2)記載のTi−Al合金スパッタリングターゲット。
【発明の効果】
【0009】
本発明のTi−Al合金スパッタリングターゲットは、ターゲット組織内に存在するTi
3Al結晶相の領域を減らすことにより、ターゲット面内のクラックを抑制して、スパッタリング時のパーティクルを減少させることができるという優れた効果を有する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のTi−Al合金スパッタリングターゲットは、Alを39.6〜80.0at%含有し、残余がTi及び不可避的不純物からなり、ターゲットの組織中にTi
3Al結晶相とTiAl結晶相とが存在することを特徴とする。
通常、合金スパッタリングターゲットは溶解鋳造法によって作製されるが、Ti−Al合金の場合、Al組成が約40〜80at%の範囲では、塑性加工が困難であるため、粉末冶金法が採用される。本発明は、このような粉末冶金法が採用される組成範囲において、所望の特性のターゲットを得るものである。
また、Al組成が39.6at%未満では、結晶組織が著しい脆性を示し、焼結時の加圧、冷却による熱衝撃、加工による歪導入などに耐えられず、ミクロに亀裂の入ったような組織をもつ結晶粒を、ターゲットの表面及び内部に生成するため、Alの組成は39.6at%以上とする。
【0012】
本発明において重要なことは、スパッタリングターゲット組織において、Ti
3Al結晶相の面積比率が40%以下、好ましくは30%以下、さらに好ましくは20%以下とすることである。Ti−Al合金においては、TiAl相だけでなく、Alの低組成側にTi
3Al、Alに高組成側にTiAl
2、TiAl
3等の複数の金属間化合物が存在する。Alを39.6〜80.0at%を含有する場合、単一相ではなく、このような複数の混合組織を有する。中でも、Ti
3Alは脆性が強いため、結晶相の面積比率が高くなると、スパッタリング時にパーティクルが増加する。したがって、Ti
3Al結晶相の面積比率を上記の数値範囲に収めるのが望ましい。
【0013】
Ti
3Al結晶相の面積比率の計算は次の通りに行う。
まず、スパッタリングターゲット表面について、室温にて、酸(水:硝酸:弗酸=6:3:1の混合液)を用いて、20秒間エッチングすることで組織出しを行う。次に、光学顕微鏡(倍率:100倍)によって、ターゲットの表面組織を観察する。そして、その視野(面積:900μm×700μm)において、Ti
3Al結晶相の面積を、視野全体の面積で除した比率を面積比率(%)とする。
具体的には、視野に対して100μm間隔で縦に9分割、横に7分割する(総区分数:63)。そして、分割した各区分の一部にTi
3Al組織が存在すれば“0.5”とし、各区分の全体にTi
3Al組織が存在すれば“1”として、Ti
3Alの結晶相の面積比率を求める。
例えば、区分の一部にTi
3Al組織が存在する区分数が12、区分の全体にTi
3Al組織が存在する区分数が3の場合、(12×0.5+3×1)/63×100=14.3(%)が、Ti
3Al結晶相の面積比率となる。
【0014】
また、本発明は、スパッタリングターゲットの相対密度が95%以上、さらには98%以上とすることが好ましい。粉末冶金法は、溶解鋳造法で作製する場合に比べると、密度の低下は生じるが、誘導加熱により一旦溶融した均質な合金からなるアトマイズ原料を用いることで、極めて緻密なターゲット組織を得ることができる。そして、このような緻密なターゲットは、スパッタリング時に異常放電が抑制されパーティクルの発生が少ないという優れた効果を有する。上記相対密度は、以下の式により算出することができる。
相対密度(%)=アルキメデス密度/理論密度×100
【0015】
また、本発明は、スパッタリングターゲット中の酸素含有量が400wtppm以下、好ましくは、300wtppm以下、さらには250wtppm以下とするのが好ましい。ターゲット中に含有する酸素は、酸化物を形成することがあるが、スパッタリングの際に、その酸化物を起点としたマイクロアーキングを発生して、パーティクルの発生を増加することがある。特に、均質で緻密なターゲットを得るために原料粉末を微細化する必要があるが、原料粉末であるTiは酸素との親和性が著しく高いという性質を有する。本発明は、後述するように、予め誘導加熱溶解によりTiAl合金を合成し、この合金溶湯をガスアトマイズ法により噴霧することで微細かつ低酸素の焼結用原料粉末を得ることができる。上記の酸素含有量は、LECO社製の酸素分析装置を用いて測定することができる。
【0016】
また、本発明は、ガス成分(C、O、H、N、P、S)を除き、純度が4N(99.99%)以上であることが好ましい。本発明のスパッタリングターゲットは拡散バリア膜などの半導体装置の積層薄膜の形成に使用されるため、金属不純物をできるだけ除去することで、特性の劣化を低減できるとともに、拡散バリア膜としての機能を有効に作用させることができる。このような高純度スパッタリングターゲットは、後述するように、高純度のTi原料とAl原料を誘導加熱溶解して、予めTiAl合金を合成し、この合金溶湯をガスアトマイズ法により噴霧することで高純度の焼結用原料粉末を得ることができる。上記純度は、GDMS(グロー放電質量分析)を用いて測定した焼結体中に含まれる不純物の含有量から算出することができる。但し、Srについては、測定精度が十分でないため、その純度の算出から除かれる。
【0017】
本発明のスパッタリングターゲットは、例えば、次のようにして作製することができる。まず、純度4N以上のTi塊状原料と純度4N以上のAl塊状原料を所定の比率で水冷銅坩堝に導入し、誘導加熱により溶解してTi−Al合金を合成する。次に、得られた合金溶湯をアトマイズ法により噴霧することで、低酸素のTi−Al合金粉末を得ることができる。次に、上記のように成分調整した平均粒径が350μm以下のTi−Al合金粉末を、温度1100〜1400℃、圧力300kgf/cm
2でホットプレス処理することで、緻密で、酸素含有量の少ないTi−Al合金ターゲット材を作製することができる。このとき、ホットプレスと併せて、または代えて、冷間静水圧プレス処理(CIP処理)や熱間静水圧プレス処理(HIP処理)することが、密度向上の観点から有効である。このようにして作製したインゴットを、ターゲット形状に切り出し、表面を研磨して、Ti−Al合金スパッタリングターゲットとする。
【0018】
ところで、例えばTi−50at%Alのターゲットを作製する場合、この上下の組成(たとえば、Ti−48at%AlまたはTi−52at%Al)にはTiAl相ではなく、Al低組成側にはTi
3Al相が存在し、Al高組成側にはTiAl
2相、TiAl
3相などの複数の金属間化合物が存在する。そのため、Ti−50at%Alの単一組成のアトマイズ粉を作製しようとした場合、TiとAlの融点の相違などにより、均質なTi−Al合金を得ることができないという問題がある。特に、Alが50at%よりも高組成側においては、TiAlの広い結晶相範囲があるに対して、Alが50at%よりも低組成側においては、すぐにTi
3Alへと結晶相が変化してしまうため、Ti−50at%Alの組成を直接狙って原料を溶解することは、Ti
3Al又はTiAlのどちらかに結晶相が偏ったターゲットとなり、ターゲット間の品質にバラツキが生じることがある。
【0019】
そこで、本発明では、狙い組成に対して上下の組成2種類の原料粉末を用意し、これらの原料粉末を、所望の組成比のターゲットとなるように混合比を算出し所定の比率で混合して、これを焼結することで、ターゲットにおいて、マクロ的な視野で均質であり、ターゲット間の組成変動も少なく、かつ、ターゲット間の品質バラツキを抑えたターゲットの作製が可能となる。また、異なる結晶相は、異なるスパッタリング速度を持つことから、それぞれの結晶相の比率が大きく異なると、局所的なエロージョンが形成されることになり、その凹凸がパーティクルの発生を増加することになる。そのため、狙い組成に対して同等程度組成のずれた2種類の原料粉末を等量混合して狙いとする中間組成を得ることが望ましい。
【実施例】
【0020】
次に、実施例及び比較例について説明する。なお、これらの実施例及び比較例は、本願発明の理解を容易にするためのものであって、発明の内容はこれらによって制限されるものでないことは理解されるべきことである。
【0021】
(実施例1)
純度4N以上のTi塊状原料と純度4N以上のAl塊状原料を、水冷銅製坩堝を用いて誘導加熱により溶解し、この合金溶湯をアトマイズ法により噴霧して、平均粒径300μmの、Alを53.0at%を含有するTi−Al合金アトマイズ粉を作製した。また、同様の方法を用いて、Alを47.0at%を含有するTi−Al合金粉末(アトマイズ粉末)を作製した。次に、これらの粉末をTi:Al=50:50(at%)となるように秤量、混合した後、温度:1300℃、加圧力:300Kgf/cm
2にて、3時間ホットプレス処理して焼結体を作製した。
【0022】
得られた焼結体について、相対密度を測定したところ、99.98%であった。この焼結体の表面を弗硝酸で組織出しを行った後、光学顕微鏡(倍率:100倍)で組織を観察した(
図1)。その結果、Ti
3Alの面積比率は4.0%であった。また、焼結体の不純物分析を行った結果、純度が99.99%であり、酸素含有量が250ppmであった。次に、この焼結体を切削、研磨等の機械加工を施して、Ti−Al合金スパッタリングターゲットを作製した。このようにして作製したターゲットをバッキングプレートに接合後、チャンバー内でスパッタリングを実施し、スパッタリング時のパーティクル量を調べた。スパッタリング条件は、電源:直流、投入電力:15kW、到達真空度:5×10
−8Torr、雰囲気ガス:Ar、スパッタガス圧:5×10
−3Torr、スパッタ時間:15秒、とした。その結果、25個と後述の比較例に比べて少なかった。
【0023】
【表1】
【0024】
(実施例2〜3)
純度4N以上のTi塊状原料と純度4N以上のAl塊状原料を、水冷銅製坩堝を用いて誘導加熱により溶解し、この合金溶湯をアトマイズ法により噴霧して、平均粒径300μmの、Alを38.0at%を含有するTi−Al合金アトマイズ粉を作製した。また、同様の方法を用いて、Alを47.0at%を含有するTi−Al合金粉末(アトマイズ粉末)を作製した。次に、これらの粉末を、実施例2ではTi:Al=55:45(at%)、実施例3ではTi:Al=60:40(at%)となるように秤量、混合した後、温度:1300℃、加圧力:300Kgf/cm
2にて、3時間ホットプレス処理して焼結体を作製した。
【0025】
得られた焼結体について、相対密度を測定したところ、いずれも99.99%であった。この焼結体の表面を弗硝酸で組織出しを行った後、光学顕微鏡(倍率:100倍)で組織を観察した結果、Ti
3Alの面積比率はそれぞれ10.2%(実施例2)、21.8%(実施例3)であった。また、焼結体の不純物分析を行った結果、純度が99.99%であり、酸素含有量がそれぞれ270ppm(実施例2)、360ppm(実施例3)であった。次に、この焼結体を切削、研磨等の機械加工を施して、Ti−Al合金スパッタリングターゲットを作製した。このようにして作製したターゲットをバッキングプレートに接合後、実施例1と同様の条件にて、チャンバー内でスパッタリングを実施し、スパッタリング時のパーティクル量を調べた。その結果、それぞれ12個(実施例2)、16個(実施例3)と後述の比較例に比べて少なかった。
【0026】
(実施例4)
純度4N以上のTi塊状原料と純度4N以上のAl塊状原料を、水冷銅製坩堝を用いて誘導加熱により溶解し、この合金溶湯をアトマイズ法により噴霧して、平均粒径300μmの、Alを47.0at%を含有するTi−Al合金アトマイズ粉を作製した。また、同様の方法を用いて、Alを58.0at%を含有するTi−Al合金粉末(アトマイズ粉末)を作製した。次に、これらの粉末をTi:Al=50:50(at%)となるように秤量、混合した後、温度:900℃、加圧力:100Kgf/cm
2にて、2時間ホットプレス処理して焼結体を作製した。
【0027】
得られた焼結体について、相対密度を測定したところ92.34%と低下した。この焼結体の表面を弗硝酸で組織出しを行った後、光学顕微鏡(倍率:100倍)で組織を観察した。その結果、Ti
3Alの面積比率は8.9%であった。また、焼結体の不純物分析を行った結果、純度が99.99%であり、酸素含有量が290ppmであった。次に、この焼結体を切削、研磨等の機械加工を施して、Ti−Al合金スパッタリングターゲットを作製した。このようにして作製したターゲットをバッキングプレートに接合後、実施例1と同様の条件にて、チャンバー内でスパッタリングを実施し、スパッタリング時のパーティクル量を調べた。その結果、密度が92.34%である実施例4では、76個と若干増加した。
【0028】
(実施例5)
純度4N以上のTi塊状原料と純度4N以上のAl塊状原料を、水冷銅製坩堝を用いて誘導加熱により溶解し、この合金溶湯をアトマイズ法により噴霧して、平均粒径50μmの、Alを47.0at%を含有するTi−Al合金アトマイズ粉を作製した。また、同様の方法を用いて、Alを58.0at%を含有するTi−Al合金粉末(アトマイズ粉末)を作製した。次に、これらの粉末をTi:Al=50:50(at%)となるように秤量、混合した後、温度:1300℃、加圧力:300Kgf/cm
2にて、3時間ホットプレス処理して焼結体を作製した。
【0029】
得られた焼結体について、相対密度を測定したところ、99.99%であった。この焼結体の表面を弗硝酸で組織出しを行った後、光学顕微鏡(倍率:100倍)で組織を観察した。その結果、Ti
3Alの面積比率は6.3%であった。また、焼結体の不純物分析を行った結果、純度が99.99%であり、酸素含有量が570ppmであった。次に、この焼結体を切削、研磨等の機械加工を施して、Ti−Al合金スパッタリングターゲットを作製した。このようにして作製したターゲットをバッキングプレートに接合後、実施例1と同様の条件にて、チャンバー内でスパッタリングを実施し、スパッタリング時のパーティクル量を調べた。その結果、酸素値が570ppmである実施例5では、53個と若干増加した。
【0030】
(比較例1〜3)
純度4N以上のTi塊状原料と純度4N以上のAl塊状原料を、水冷銅製坩堝を用いて誘導加熱により溶解し、この合金溶湯をアトマイズ法により噴霧して、平均粒径300μmの、Alを35.0at%を含有するTi−Al合金アトマイズ粉を作製した。また、同様の方法を用いて、Alを55.0at%を含有するTi−Al合金粉末(アトマイズ粉末)を作製した。次に、これらの粉末を、比較例1ではTi:Al=50:50(at%)、比較例2ではTi:Al=55:45(at%)、比較例3ではTi:Al=60:40(at%)となるように秤量、混合した後、温度:1300℃、加圧力:300Kgf/cm
2にて、3時間ホットプレス処理して焼結体を作製した。
【0031】
得られた焼結体について、相対密度を測定したところ、いずれも99.9%以上であった。この焼結体の表面を弗硝酸で組織出しを行った後、光学顕微鏡(倍率:100倍)で組織を観察した。参考までに比較例1の組織写真を
図2に示す。Ti
3Alの面積比率はそれぞれ93.7%(比較例1)、72.1%(比較例2)、69.6%(比較例3)であった。また、焼結体の不純物分析を行った結果、いずれも純度が99.99%であり、酸素含有量が400wtppm以下であった。次に、この焼結体を切削、研磨等の機械加工を施して、Ti−Al合金スパッタリングターゲットを作製した。このようにして作製したターゲットをバッキングプレートに接合後、実施例1と同様の条件にて、チャンバー内でスパッタリングを実施し、スパッタリング時のパーティクル量を調べた。その結果、129個(比較例1)、201個(比較例2)、153個(比較例3)であった。