特許第6652919号(P6652919)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日清フーズ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6652919-冷凍食品 図000004
  • 特許6652919-冷凍食品 図000005
  • 特許6652919-冷凍食品 図000006
  • 特許6652919-冷凍食品 図000007
  • 特許6652919-冷凍食品 図000008
  • 特許6652919-冷凍食品 図000009
  • 特許6652919-冷凍食品 図000010
  • 特許6652919-冷凍食品 図000011
  • 特許6652919-冷凍食品 図000012
  • 特許6652919-冷凍食品 図000013
  • 特許6652919-冷凍食品 図000014
  • 特許6652919-冷凍食品 図000015
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6652919
(24)【登録日】2020年1月28日
(45)【発行日】2020年2月26日
(54)【発明の名称】冷凍食品
(51)【国際特許分類】
   A23L 3/36 20060101AFI20200217BHJP
   A23L 7/109 20160101ALI20200217BHJP
   A23L 3/365 20060101ALI20200217BHJP
   A23L 23/00 20160101ALI20200217BHJP
【FI】
   A23L3/36 Z
   A23L7/109 E
   A23L7/109 C
   A23L3/365 A
   A23L23/00
【請求項の数】7
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2016-532647(P2016-532647)
(86)(22)【出願日】2016年1月13日
(86)【国際出願番号】JP2016050816
(87)【国際公開番号】WO2016139972
(87)【国際公開日】20160909
【審査請求日】2018年7月12日
(31)【優先権主張番号】特願2015-41983(P2015-41983)
(32)【優先日】2015年3月4日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】398012306
【氏名又は名称】日清フーズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】特許業務法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河原 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】仲西 由美子
【審査官】 上村 直子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−049224(JP,A)
【文献】 特開2006−061113(JP,A)
【文献】 特開2012−044927(JP,A)
【文献】 特開平07−322838(JP,A)
【文献】 特開2005−269937(JP,A)
【文献】 特開平09−299052(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3155263(JP,U)
【文献】 特開2002−199852(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3092734(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 3/36−3/375
A23L 7/00−7/25
A23L 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
調理済み食品を冷凍固化してなる食品本体部と、該調理済み食品と共に喫食されるソースを冷凍固化してなるソース部とを含む冷凍食品であって、
前記食品本体部は、前記ソース部が配置されるソース部配置面を有し、該ソース部配置面に開口部が形成されており、
前記ソース部は、下端側が前記開口部に挿入され、上端側が前記ソース部配置面側に突出するように、前記食品本体部に配置され、且つ該開口部の該ソース部配置面側の開口縁部において該食品本体部と接しており、該開口縁部以外の他の部分では該食品本体部と接しておらず、且つ該ソース部の下端が、該食品本体部における該ソース部配置面とは反対側の面から離間している冷凍食品。
【請求項2】
前記ソース部は、下端側に向かうに従って前記面方向の長さが漸次短くなる部分を有している請求項1に記載の冷凍食品。
【請求項3】
前記開口部は前記食品本体部を厚さ方向に貫通しており、該食品本体部の前記ソース部配置面とは反対側の面も開口している請求項1又は2に記載の冷凍食品。
【請求項4】
前記食品本体部は、加熱調理済みの麺類を冷凍固化してなる冷凍麺塊である請求項1〜の何れか一項に記載の冷凍食品。
【請求項5】
前記ソース部はゲル化剤を含有する請求項1〜の何れか一項に記載の冷凍食品。
【請求項6】
請求項1〜の何れか一項に記載の冷凍食品の製造方法であって、
平面視形状が前記開口部と同形状の凸部を内部底面に有する容器の該内部底面上に、前記調理済み食品を、該凸部を包囲するように盛り付けて、上面に該凸部の露出部を有する食品収容体を得る工程と、
前記食品収容体の上面における前記凸部の露出部及びその周辺部に、ゲル化剤が配合された前記ソースを載せるソース載せ工程と、
前記ソース載せ工程を経た前記食品収容体を冷凍する工程とを有する、冷凍食品の製造方法。
【請求項7】
前記ソースにおける前記ゲル化剤の含有量が1〜10質量%であり、前記ソース載せ工程において、予め所定形状に成形された該ソースの成形体を前記食品収容体の上面に載せる請求項に記載の冷凍食品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子レンジ等によって解凍調理される冷凍食品に関する。
【背景技術】
【0002】
冷凍食品の一種である冷凍麺類として、加熱調理済みの麺類を冷凍固化して冷凍麺塊としたものがある。冷凍麺塊は、電子レンジで加熱調理するだけで喫食可能な状態となり、短時間で簡単に茹でたてに近い食感が得られるため、近年広く普及している。冷凍麺塊には、例えば、調味料や具材を収納するための窪みを有するものや、該冷凍麺塊を分割する際に利用する溝が形成されているものがある。
【0003】
窪みを有する冷凍麺塊に関し、例えば特許文献1には、冷凍麺塊の上面又は下面の中央に特定の大きさの窪みを形成すると共に、冷凍麺塊の一部を氷膜で被覆することが記載されている。特許文献1記載の冷凍麺塊は、窪みの大きさと氷膜として付着させる水分の量とが適切に設計されているため、窪みの体積を比較的小さくすることができ、麺塊全体としてコンパクトであるという特長を有し、且つ密封包装のまま電子レンジで加熱調理することができ、比較的短時間で麺塊全体をムラ少なく加熱でき、麺の食感が良好であるとされている。また特許文献2には、窪みを有する冷凍麺塊を効率良く生産し、且つ割れや破損の生じにくいものとし得る製造方法が記載されている。また特許文献3には、電子レンジ調理及び鍋調理の両方において、ほぼ同様の食味・食感に仕上がる冷凍麺塊として、上部中央に凹部を有し、該凹部の開孔周辺に環状の氷層を付着させたものが記載されている。特許文献1〜3は、主として、冷凍麺塊自体に関する技術を開示するものであり、冷凍麺塊を解凍調理して得られる麺塊と共に喫食される、たれ・つゆ・各種ソース等のソース類に関しては、技術的な点では特に言及されていない。
【0004】
特許文献4には、天面及び底面の中央部で開口した中央貫通孔を有する主麺塊(冷凍麺塊)と、具材・スープ等の副食材が冷凍固化された薄い円板形状の副食材塊とからなり、該副食材塊が、該冷凍麺塊の天面側の開口を塞ぐように配置された冷凍麺類が記載されている。特許文献4記載の冷凍麺類において、円板形状の副食材塊の直径は中央貫通孔の内径より大きく、そのため、副食材塊は中央貫通孔の内部には挿入されず、副食材塊全体が主麺塊の天面上に位置している。特許文献4記載の冷凍麺類は、冷凍麺を電子レンジ調理したときに加熱ムラが生じ、食感に悪影響を及ぼすという課題に鑑みてなされたもので、特許文献4記載の冷凍麺類によれば、主麺塊に形成された中空貫通孔とこれを塞ぐ副食材塊とによって、電子レンジ調理したときに主麺塊の加熱温度が均一になるため、良好な食感が得られるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014−64482号公報
【特許文献2】特開2012−244945号公報
【特許文献3】特開2013−17481号公報
【特許文献4】特開2005−269937号公報
【発明の概要】
【0006】
本発明は、調理済み食品を冷凍固化してなる食品本体部と、該調理済み食品と共に喫食されるソースを冷凍固化してなるソース部とを含む冷凍食品である。前記食品本体部は、前記ソース部が配置されるソース部配置面を有し、該ソース部配置面に開口部が形成されている。前記ソース部は、その一部が前記開口部に挿入され且つ残りの部分が前記ソース部配置面側に突出するように、前記食品本体部に配置される。
【0007】
また本発明は、前記の本発明の冷凍食品の製造方法であって、下記工程1ないし3を有する冷凍食品の製造方法である。
・工程1:平面視形状が前記開口部と同形状の凸部を内部底面に有する容器の該内部底面上に、前記調理済み食品を、該凸部を包囲するように盛り付けて、上面に該凸部の露出部を有する食品収容体を得る工程。
・工程2:前記食品収容体の上面における前記凸部の露出部及びその周辺部に、ゲル化剤が配合された前記ソースを載せるソース載せ工程。
・工程3:前記ソース載せ工程を経た前記食品収容体を冷凍する工程。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明の冷凍食品の一実施形態である冷凍麺類の一例を模式的に示す斜視図である。
図2図2は、図1のI−I線断面を模式的に示す、冷凍麺類の厚さ方向に沿った断面図である。
図3図3は、本発明の冷凍食品の他の一実施形態の図2相当図である。
図4図4は、本発明の冷凍食品のさらに他の一実施形態の図2相当図である。
図5図5は、本発明の冷凍食品のさらに他の一実施形態の図2相当図である。
図6図6(a)及び図6(b)は、それぞれ、本発明に係る食品本体部の他の一実施形態の厚さ方向に沿った断面図(図2相当図)である。
図7図7(a)及び図7(b)は、それぞれ、本発明の範囲外の冷凍食品の図2相当図である。
図8図8は、本発明の冷凍食品の製造方法の実施に使用する容器の一例を模式的に示す斜視図である。
図9図9は、図8のII−II線断面を模式的に示す断面図である。
図10図10は、図8に示す容器に調理済み食品を盛り付けた状態、即ち食品収容体の模式的な斜視図である。
図11図11は、図10に示す食品収容体の上面にソースを載せた状態を模式的に示す斜視図である。
図12図12(a)〜図12(f)は、それぞれ、本発明の冷凍食品のさらに他の一実施形態の下面側(ソース部配置面とは反対側)を模式的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
特許文献1〜4は、主として、冷凍麺塊自体の食感等の改善を図ったものであり、例えばスパゲッティのような、麺にソースを絡めて喫食するタイプの食品において重要視される、麺とソースとの一体感やソースが絡んだ際の麺の食感等については特段言及されていない。電子レンジで加熱調理するだけで、麺とソースとの一体感に優れる冷凍食品は未だ提供されていない。
【0010】
本発明の課題は、調理済み食品及びこれと共に喫食されるソースを含む冷凍食品で、解凍調理して喫食した際に、該食品とソースとの一体感に優れ、食感が良好な冷凍食品に関する。
【0011】
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。図1及び図2には、本発明の冷凍食品の一実施形態である冷凍麺類1Aが示されている。冷凍麺類1は、調理済み食品を冷凍固化してなる食品本体部としての冷凍麺塊2と、該調理済み食品と共に喫食されるソースを冷凍固化してなるソース部3とを含んで構成されている。
【0012】
本発明に係る「調理済み食品」は、食材に対して喫食可能になるまで加熱調理等の調理が施された食品であり、そのまま喫食することができる。食材の種類は特に限定されず、例えば、麺類、丼物、カレー、シチュー、オムライス等が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また、食材の調理の例としては、茹でる、煮る、蒸す、焼く、炒める、揚げる、燻す、和える等が挙げられ、特に限定されない。調理の条件は、食材の種類等に応じて適宜選択可能である。
【0013】
また、本発明に係る「ソース」は、常温(25℃)で流動性を有している食品であり、通常、水分が主体の液状物又は流動物である。尚、本発明には後述するように、本発明に係るソース部の製造工程においてその原材料となるソースにゲル化剤を配合する形態が含まれるところ、ここでいう「常温で流動性を有している」というのは、斯かる形態においてはゲル化剤の配合前のソースのことである。ソースの種類は、ソースと共に喫食される調理済み食品に応じて適宜選択され、特に限定されない。ソースには、野菜、畜肉類、魚介類等の固形物が含まれていても良い。例えば、調理済み食品がスパゲッティ(茹で麺)の場合、ソースとしてはミートソース、ホワイトソース、ナポリタンソース、カレーソース等が挙げられる。ソースの原材料としては、例えば、水、牛乳、塩、砂糖、卵、生クリーム;トマトや玉ねぎなどの野菜類やエンドウなどの豆類のペースト;野菜類や豆類のピューレ状物;しょうゆ、酢、ブイヨン、コンソメなどの調味料類などが挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。ソースには、原材料の他に必要に応じて、酸味料、乳化剤、増粘剤、安定剤、着色料など、従来からソースの原材料として用いられている添加剤を用いることができ、ソースの種類に応じて適宜選択することができる。
【0014】
冷凍麺塊2(食品本体部)は、加熱調理済みの麺類を冷凍固化して得られたものである。本発明に係る「麺類」には、中華麺、うどん、そば、冷麦、素麺、ライスヌードル、春雨の他、スパゲッティ、マカロニ等のパスタ類も含まれる。麺類の加熱調理の例については、前述した通りである。「加熱調理済みの麺類」の典型例としては、茹で麺が挙げられる。茹で麺は、生麺、乾麺又は冷凍麺を茹で調理することで得られる。茹で調理後は、必要に応じ、湯切り、水洗、冷却などの処理を施すことができる。
【0015】
図1及び図2に示すように、冷凍麺塊2はソース部3が配置されるソース部配置面2aを有し、ソース部配置面2aに開口部20が形成されている。より具体的には、冷凍麺塊2は、高さが比較的低い略円筒状をなし、上面2aとこれに相対向する下面2bとを有し、上面2aがソース部配置面2aである。
【0016】
開口部20は、平面視において略円形状をなしている。本実施形態における開口部20は、冷凍麺塊2を厚さ方向(図2の上下方向)に貫通しており、冷凍麺塊2のソース部配置面2aとは反対側の面である下面2bも開口している。つまり、冷凍麺塊2は略円環状をなしている。開口部20は、ソース部配置面2a及び下面2bそれぞれの中央部に形成されている。開口部20の開口長さW2は、冷凍麺塊2の厚さ方向の全長にわたって一定であり、開口部20のソース部配置面2a側の開口と下面2b側の開口とは同形状同寸法である。
【0017】
前記の「開口部の開口長さ」は、開口部20の平面視における最大長さであり、本実施形態のように、開口部20の平面視形状が円形状即ち等方性形状の場合は、その円の直径である。また図示していないが、開口部20の平面視形状が楕円形状、長方形形状の如き異方性形状の場合は、その平面視における長さが最大となる部分の長さ(最大長さ)が、該開口部20の開口長さである。
【0018】
冷凍麺塊2は、開口部(凹部、窪み)を有する公知の冷凍麺塊と同様の方法で製造することができる。具体的には例えば、茹で調理済みの麺の一定量を、開口部を形成するための凸部を底部中央に有する型の内部に収容し、急速冷凍又は緩慢冷凍することによって製造可能である。こうして製造された冷凍麺塊における型の凸部に対応する部分が、開口部となるので、開口部の形状・寸法は、該凸部の形状・寸法を調整することで調整可能である。冷凍手段は、従来技術を適宜利用することができる。
【0019】
冷凍麺塊2の各部の寸法は特に制限されないが、通常、厚さ方向と直交する面方向の長さW1(図2参照)は50〜200mm、開口部20の開口長さW2(図2参照)は20〜120mm、厚さ(高さ)H(図2参照)は15〜40mmである。本実施形態においては、ソース部配置面2aと下面2bとで長さW1,W2は同じであるが、本発明においては、ソース部配置面2aと下面2bとで長さW1,W2が異なっていても良い。また、冷凍麺塊2の重量は特に制限されないが、通常一食分であり、80〜500g程度である。
【0020】
前記の「面方向の長さ」は、対象物(冷凍麺塊2、ソース部3など)の厚さ方向と直交する面方向の長さの最大値、即ち、対象物の平面視における最大長さであり、例えば、冷凍麺塊2(ソース部3)の平面視形状が本実施形態のように円形状即ち等方性形状の場合は、その円の直径(外径)である。また例えば、冷凍麺塊2(ソース部3)の平面視形状が楕円形状、長方形形状の如き異方性形状の場合は、その平面視における長さが最大となる部分の長さ(最大長さ)が、該冷凍麺塊2(ソース部3)の面方向の長さである。
【0021】
ソース部3は、図1に示すように、平面視において円形状をなし、また図2に示すように、下端側(開口部20への挿入方向先端側)に向かうに従って面方向の長さW3が漸次短くなる部分を有している。より具体的には、ソース部3は、面方向の長さW3が上端から下端に向かって漸次短くなっており、下端側に凸となった、ドーム状に緩やかに湾曲する形状をなしている。つまり、ソース部3は、図2に示す如きソース部3の厚さ方向に沿う断面視において略半円状である。
【0022】
ソース部3は、公知の冷凍ソースと同様の方法で製造することができる。具体的には例えば、常温で流動性を有しているソースの一定量を、所望の内部形状を有する容器内に収容し、急速冷凍又は緩慢冷凍することによって製造可能である。ソース部3の寸法は特に制限されないが、通常、面方向の長さW3(図2参照)の最大値、即ち上面の最大長さ(直径)は30〜130mm、厚さ(高さ)は15〜600mmである。本実施形態においては、ソース部3の面方向の長さW3の最大値は、冷凍麺塊2のソース部配置面2a側の面方向の長さW1より短いが、本発明においては、ソース部3の長さW3の最大値は、冷凍麺塊2のソース部配置面2a側の長さW1と同じか、又はこれより長くても良い。また、ソース部3の重量は特に制限されないが、通常一食分であり、30〜400g程度である。
【0023】
本実施形態の冷凍麺類1Aの主たる特徴の1つとして、ソース部3が、その一部が開口部20に挿入され且つ残りの部分がソース部配置面2a側に突出するように、食品本体部である冷凍麺塊2に配置されている点が挙げられる。本実施形態においては、図2に示すように、ソース部3は、下端側(下端及びその近傍)が開口部20に挿入され、上端側〔上端(上面)及びその近傍〕がソース部配置面2a側に突出している。またソース部3は、開口部20のソース部配置面2a側の開口縁部(角部)において冷凍麺塊2と接しており、該開口縁部以外の他の部分では冷凍麺塊2と接していない。ソース部3の下端は、冷凍麺塊2のソース部配置面(上面)2aと下面2bとの中間に位置しており、下面2bから離間している。
【0024】
このように、ソース部3の一部が開口部20に挿入され且つ残りの部分がソース部配置面2a側に突出するように、ソース部3が冷凍麺塊2に対して配置されていることにより、斯かる配置形態を有する冷凍麺類1Aを解凍調理して喫食した際に、麺類とソースとの一体感に優れ、且つ麺の食感が滑らかで適度な弾力がある調理済み麺類が得られるようになる。斯かる配置形態が麺類とソースとの一体感等を高める上で有効である理由は、定かではないが、電子レンジ解凍時に、ソースから麺へ水分が移行し、麺とソースの絡みが悪くなることを防ぐためと推測される。図7(a)に示す冷凍麺類100Aのように、ソース部3の全体が冷凍麺塊2の開口部20に挿入されている形態(ソース部の開口部占有率100%)、あるいは図7(b)に示す冷凍麺類100Bのように、ソース部3の全体が冷凍麺塊2の開口部20に挿入されていない形態(ソース部の開口部占有率0%)では、麺類とソースとの一体感及び食感の向上効果は望めない。
【0025】
前述した作用効果をより確実に奏させるようにする観点から、冷凍麺塊2の開口部20の全容積に占める、開口部20に挿入されているソース部3の体積の割合、即ち、ソース部の開口部占有率は、好ましくは5〜97.5%、さらに好ましくは20〜50%である。尚、本発明において、冷凍麺塊の体積又はその開口部の容積とは、特に記載した場合を除き、麺線及び麺線間の空隙を含む体積(容積)を意味し、麺線間に生じる窪みを考慮しない。開口部20の容積は、例えば、開口部20が本実施形態の如き円柱状である場合には、開口部20全体を包含する最小の円柱を想定し、その円柱の体積として定義される。ソース部の開口部占有率は、次式によって算出される。
ソース部の開口部占有率(%)={(開口部に含まれるソース部の体積)/(開口部の容積)}×100
【0026】
図3図6には、本発明の冷凍食品の他の実施形態が示されている。後述する他の実施形態については、前記実施形態の冷凍麺類1Aと異なる構成部分を主として説明し、同様の構成部分は同一の符号を付して説明を省略する。特に説明しない構成部分は、冷凍麺類1Aについての説明が適宜適用される。
【0027】
図3に示す冷凍麺類1Bにおいては、ソース部3の下端が冷凍麺塊2の下面2bと同位置にあり、ソース部3の上端部(上面及びその近傍)以外の部分が開口部20に挿入され、ソース部3の上端部がソース部配置面2a側に突出している。冷凍麺類1Bによっても、冷凍麺類1Aと同様の効果が奏されるが、図2に示す冷凍麺類1Aのように、ソース部3の下端が、冷凍麺塊2のソース部配置面(上面)2aと下面2bとの中間に位置している(下面2bから離間している)形態がより好ましい。
【0028】
図4に示す冷凍麺類1Cにおいては、ソース部3は、面方向の長さW3が相対的に長い大径部31と、面方向の長さW3が相対的に短い小径部32とを厚さ方向(図4の上下方向)に有しており、面方向の長さW3が部分的に異なる。大径部31はソース部3の上部を構成し、小径部32はソース部3の下部を構成している。大径部31と小径部32とは一体不可分となっており、ソース部3は厚さ方向に連続している。尚、図4においては、識別を容易にする観点から、大径部31と小径部32とで模様を異ならせているが、実際にこのように両者の外観が異なっているか否かとは無関係である。
【0029】
大径部31と小径部32とは平面視形状が同じで何れも円形状をなしているが、大径部31は、面方向の長さW3(直径)が厚さ方向の全長にわたって一定である円板状をなしているのに対し、小径部32は、面方向の長さW3(直径)が下端側(開口部20への挿入方向先端側)に向かうに従って、換言すれば大径部31から離れるに従って、漸次短くなっており、下端側に凸となった、ドーム状に緩やかに湾曲する形状をなしている。つまり、小径部32の輪郭線は、図4に示す如きソース部3の厚さ方向に沿う断面視において円弧状である。大径部31と小径部32との厚さ比(高さ比)は特に制限されないが、ソース部3全体を厚さ(高さ)方向に10等分した場合に、前者:後者として、1:9〜5:5の範囲とすることが好ましい。
【0030】
冷凍麺類1Cにおいては、小径部32の一部(下端側)が開口部20に挿入され、大径部31の全体がソース部配置面2a側に突出している。大径部31は、面方向の長さW3がその厚さ方向の全長にわたって一定であり、その大径部31の面方向の長さW3が、開口部20のソース部配置面2a側の開口長さW2(本実施形態においては開口部20の直径)に比して長く(W3>W2)、それ故、大径部31は開口部20に挿入不可である。一方、ソース部3の小径部32は、下端側に向かうに従って漸次縮径するドーム状をなし、少なくともその下端側(下端部及びその近傍)の面方向の長さW3が、開口部20のソース部配置面2a側の開口長さW2に比して短い(W3<W2)ため、その下端側が開口部20に挿入されている。小径部32の下端は、冷凍麺塊2のソース部配置面(上面)2aと下面2bとの中間に位置しており、下面2bから離間している。冷凍麺類1Cによっても、冷凍麺類1Aと同様の効果が奏される。
【0031】
図5に示す冷凍麺類1Dにおいては、小径部32が、大径部31と同様に、面方向の長さW3がその厚さ方向の全長にわたって一定である。そして、冷凍麺類1Dの小径部32の面方向の長さW3は、開口部20のソース部配置面2a側の開口長さW2(本実施形態においては開口部20の直径)と略同じか、該開口長さW2より短く、小径部32の全体が開口部20に挿入されている。また、冷凍麺類1Dにおいては、開口部20は貫通孔ではなく、冷凍麺塊2の下面2b側に底部を有する凹部(窪み)である。ソース部3(小径部32)の下端は、この開口部20の底部には達しておらず、該底部(下面2b)から離間した位置にある。冷凍麺類1Dによっても、冷凍麺類1Aと同様の効果が奏される。
【0032】
前述した冷凍麺類1Aないし1Dは、冷凍麺塊2(即ち調理済み食品を冷凍固化してなる食品本体部)とソース部3(即ち該調理済み食品と共に喫食されるソースの冷凍固化物)とをそれぞれ個別に製造し、冷凍麺塊2のソース部配置面2aに、ソース部3を、該ソース部配置面2aの開口部20を覆うように配置することで製造することができる。
本発明の冷凍食品は、このような、共に冷凍状態の食品本体部とソース部とを組み合わせる製造方法のみならず、共に冷凍されておらず且つ調理済みの食品本体部とソース部とを組み合わせた後に両者を一体的に冷凍する製造方法によっても製造することができる。以下、この後者の製造方法の具体例として、前記工程1ないし3を有する、本発明の冷凍食品の製造方法について、図1及び図2に示す冷凍麺類1Aの製造方法を例にとって説明する。
【0033】
図8及び図9には、前記工程1で調理済み食品(調理済み麺類2’)の盛り付けに使用する容器40が示されている。容器40は、内部底面40Uを形成する底壁41と、その周縁に立設された周壁42と、上部開口43とを備えたトレー状容器である。容器40の内部は、製造目的物である冷凍麺類1Aにおける冷凍麺塊2の外形に対応した形状をなし、具体的には冷凍麺塊2と同じく円筒状をなし、冷凍麺塊2(冷凍前の茹で調理済み麺)が載置される内部底面40Uは平面視円形状をなしている。
【0034】
容器40の内部底面40Uの中央部には、冷凍麺塊2に開口部20を形成するための凸部44が1個形成されている。凸部44は、底壁41の中央部が上部開口43側に突出変形して形成されており、中空である。また、凸部44の内部底面40Uからの高さは周壁42の内部底面40Uからの高さと同じか又はそれよりも低くなされており、図9に示す形態では凸部44の方が相対的に高さが低い。凸部44は開口部20の形状に対応した形状をなし、具体的には平面視形状が開口部20と同形状であり、本実施形態においては略円筒状をなしている。
【0035】
凸部44の頂部には、凹状に窪んだ窪み部45が形成されている。窪み部45は、冷凍麺類1Aにおけるソース部3の元となるソースの受け部として機能するもので、容器40に収容される調理済み食品(調理済み麺類2’)と該ソースとを物理的に分離するのに役立つ。窪み部45は、平面視において円形状をなし、また、図9に示す如き凸部44の高さ方向に沿う断面視において半円状(円弧状)をなしている。窪み部45の底部は、内部底面40Uよりも高い位置に存している。
【0036】
先ず前記工程1では、容器40の内部底面40U上に、冷凍麺塊2の原材料ともいうべき調理済み食品である加熱調理(例えば茹で調理)済み麺類2’を盛り付けることで、図10に示すように、容器40に冷凍前の食品を収容してなる食品収容体50を得る。この調理済み麺類2’の容器40への盛り付けは、凸部44を包囲するように調理済み麺類2’を盛り付ける、即ち内部底面40Uにおける凸部44以外の部分に調理済み麺類2’を載せることで行い、凸部44の窪み部45には調理済み麺類2’を入れない。容器40に収容する調理済み麺類2’の量は、通常、内部底面40Uにおける凸部44の部分の略全域が調理済み麺類2’で覆われ、且つ容器40に収容された調理済み麺類2’の内部底面40Uからの高さが凸部44の高さを越える量である。容器40に収容された調理済み麺類2’の内部底面40Uからの高さが凸部44の高さを越えるものであると、次工程でゲル化剤が配合されたソース3’が載せられる「食品収容体50の上面」は調理済み麺類2’からなり、ソース3’は凸部44とは接触せずに調理済み麺類2’と直接接触することになるため、ソース3’延いてはその冷凍固化物であるソース部3の配置がより一層安定し、製造効率の向上に繋がり得る。容器40に収容された調理済み麺類2’の内部底面40Uからの高さが凸部44の高さを越えない場合は、調理済み麺類2’の上面から凸部44の頂部が突出することになるところ、その突出した凸部44の頂部上にソース3’を載せる形態は、前記の「調理済み麺類2’とソース3’とが直接接触する形態」に比して、ソース3’の配置安定性にやや劣る。尤も、容器40に調理済み麺類2’を、その内部底面40Uからの高さが凸部44の高さを越えるように収容するとしても、調理済み麺類2’が凸部44の頂部に載らない(窪み部45に入らない)ようにする点に留意する。こうして得られた食品収容体50は、上面視において凸部44の頂部(窪み部45)の略全体が露出しており、凸部44の露出部を有している。
【0037】
次いで前記工程2では、図11に示すように、食品収容体50の上面における凸部44の露出部及びその周辺部に、ゲル化剤が配合されたソース3’を載せる(ソース載せ工程)。このソース載せ工程後は、食品収容体50における凸部44はソース3’によって完全に覆われており、凸部44の露出部は消失している。
【0038】
ソース3’は、ゲル化剤が配合されることによって、意図的に流動性が低下され保形性が向上されている。斯かる特性のソース3’は、食品収容体50の上面における凸部44の露出部及びその周辺部に載せてから流動し難く、当初の載置部に留まりやすい。そのため、次工程の冷凍前に調理済み麺類2’とソース3’とが混ざり合うことが抑制され、それによって、ソース3’の水分が調理済み麺類2’に移行すること等に起因する食感の低下が抑制され、最終的に得られる冷凍麺類1Aの品質が一層向上し得る。また、食品収容体50に載せた後のソース3’の流動による拡がりに特段の注意を払う必要が無いため、冷凍麺類1Aの製造効率の向上が期待できる。
【0039】
本発明で用いるゲル化剤としては、食品の流動性を低下せしめる目的で従来使用されているものを特に制限なく用いることができ、例えば、寒天、ゼラチン、コラーゲンペプチド、増粘多糖類が挙げられ、それらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。ゼラチンとしては、例えば、牛骨、牛皮、サメ軟骨、豚骨、豚皮等から調製した動物由来のゼラチン、又は市販されている食用のゼラチンを用いることができる。コラーゲンペプチドとしては、例えば、牛骨、牛皮、サメ軟骨、豚骨、豚皮等から調製した動物由来のゼラチンやコラーゲンの加水分解物、又は市販されている食用のコラーゲンペプチドを用いることができる。増粘多糖類としては、例えば、カラギナン、キサンタンガム、ジェランガム、タマリンドガム、グアーガム、ローカストビーンガム、アラビアガム、トラガントガム、カラヤガム、ペクチン、カルボキシメチルセルロース、グルコマンナン、大豆多糖類、α化デンプン、α化加工デンプン等が挙げられる。これらのゲル化剤の中でも特にゼラチンは、冷凍食品を喫食した際の食感、食味の点で良好な結果が得られるため、本発明で好ましく用いられる。
【0040】
食品収容体50の上面にソース3’を載せる方法としては、1)予め所定形状に成形されたソース3’の成形体を載せる方法(以下、「第1の方法」ともいう)、及び2)充填機等から食品収容体50の上面に向けてソース3’を直接吐出する等して、流動性を有するソース3’を食品収容体50に載せる方法(以下、「第2の方法」ともいう)が挙げられる。
【0041】
前記第1の方法においては、食品収容体50の上面に載せるソース3’の成形体を予め調製する必要がある。ソース3’の成形体は、例えば、ゲル化剤配合直後の流動性を有するソース3’を、別途用意した成形用容器(図示せず)内に充填した後、必要に応じ該成形用容器を冷蔵し、所定時間静置してソース3’をゲル化させることによって得られる。ゲル化剤入りソース3’の冷蔵温度は、好ましくは10〜15℃である。前記第1の方法において、ソース3’におけるゲル化剤の含有量は、ソース3’の全質量に対して、好ましくは1〜10質量%、さらに好ましくは3〜7質量%である。ゲル化剤含有量が少なすぎると、ソース成形体の形成が困難となり、逆にゲル化剤含有量が多すぎると、流動性の著しい低下により成形用容器への充填性が低下し、また、ソース成形体中に気泡が多数混入してソースの品質が低下するおそれがある。
【0042】
ソース3’の成形体は、その後の冷凍処理を経てソース部3となるところ、通常、ソース3’の成形体の形状がほぼそのままソース部3の形状に反映される。そして、ソース部3については、前記の通り冷凍麺類1Aにおいて、「ソース部3の一部が開口部20に挿入され且つ残りの部分がソース部配置面2a側に突出するように、ソース部3が冷凍麺塊2に対して配置される」必要があり、斯かる特定配置が実現可能な形状を有することが必要であることから、ソース部3の前駆体ともいうべきソース3’の成形体の形状は、斯かる特定配置を考慮したものであることが好ましい。ソース3’の成形体の形状は、前記成形用容器の内部形状によって決まるので、前記成形用容器の形状・寸法等は、特定配置を実現し得るソース部3の形状を考慮の上、適宜設定されることが望ましい。
【0043】
一方、前記第2の方法においては、実質的に流動性を有しないソース3’の成形体を食品収容体50の上面に載せる前記第1の方法とは異なり、ゲル化剤配合直後の流動性を有する(ゲル化剤配合前より流動性が低下しているとしても依然として流動性を有する)ソース3’を食品収容体50の上面に直接載せる。前記第2の方法において、食品収容体50の上面に載せられるソース3’におけるゼラチンの含有量は、ソース3’の全質量に対して、好ましくは1〜10質量%、さらに好ましくは3〜7質量%である。ソース3’のゼラチン含有量が斯かる範囲にあることにより、ソース3’を食品収容体50の上面の所定位置(凸部44の露出部及びその周辺部)に載置したときに、ソース3’がその当初の載置部から周辺に拡散せずに、一定の形状を保持した状態で該載置部に留まりやすくなる。また、ソース3’を食品収容体50に載せる前に予め冷蔵しておくと、含有されているゼラチンによる作用効果と相俟って食品収容体50に載せた後のソース3’の保形性がより一層高まるため好ましい。尚、ソース3’を食品収容体50に載せた後に、そのソース3’が載った食品収容体50ごと一体的に冷蔵することは、食品収容体50における食品の品質低下を招くおそれがあるため避けた方が好ましい。
【0044】
次いで前記工程3では、前記工程2(ソース載せ工程)を経た食品収容体50(図11参照)を冷凍する。冷凍方法は特に限定されず、急速冷凍でも緩慢冷凍でも良い。冷凍温度は通常−18ないし−40℃である。斯かる冷凍処理により、食品収容体50における調理済み麺類2’は冷凍固化されて冷凍麺塊2(食品本体部)となり、ソース3’は冷凍固化されてソース部3となる。しかる後、容器40から冷凍麺塊2及びソース部3を取り出して、目的とする、図1及び図2に示す如き冷凍麺類1Aが得られる。こうして得られた冷凍麺類1Aにおけるソース部3は、ゲル化剤を含有しており、そのゲル化剤含有量は、前記第1の方法及び前記第2の方法の説明で述べた通りである。
【0045】
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は前記実施形態に制限されない。前記実施形態においては、食品本体部(冷凍麺塊)2の開口部20は、食品本体部2の厚さ方向の全長にわたって開口長さW2が一定であったが、開口長さW2は一定でなくても良い。例えば、図6(a)及び図6(b)に示すように、食品本体部2の上面(ソース部配置面)2aから離れるに従って(即ち下方に向けて)開口長さW2が徐々に短くなる、「厚さ方向に沿う断面視において下方に向けて先細りの形状」でも良く、図6に示す形態とは逆に、下面2bから離れるに従って(即ち上方に向けて)開口長さW2が徐々に短くなる、「厚さ方向に沿う断面視において上方に向けて先細りの形状」でも良い。図6(a)に示す開口部20は、開口部20を画成する壁面が厚み方向に沿う断面視において曲線であるのに対し、図6(b)に示す開口部20は、該壁面が同断面視において直線であり、いわゆるテーパー状をなしている。
【0046】
また、食品本体部(冷凍麺塊)2及び開口部20並びにソース部3の平面視形状は特に限定されず任意に選択可能であり、前記実施形態の如き円形状の他、四角形形状、楕円形状でも良い。また、食品本体部2と開口部20とソース部3とで平面視形状が異なっていても良い。図12(a)〜図12(f)には、本発明の冷凍食品の他の一実施形態の下面2b側(ソース部配置面とは反対側)が模式的に示されている。図12に示す冷凍麺類1E〜1Jは、何れも、平面視長方形形状の冷凍麺塊2(食品本体部)とソース部3とを備え、冷凍麺塊2の中央部にこれを厚み方向に貫通する開口部20が形成され、開口部20のソース部配置面側がソース部3によって閉塞されている。冷凍麺類1E〜1Jにおいても、前記実施形態と同様に、ソース部3は、その一部が開口部20に挿入され且つ残りの部分がソース部配置面側に突出するように、冷凍麺塊2に配置されている。冷凍麺類1E〜1Jは開口部20の平面視形状が互いに異なっているだけである。前述した一の実施形態のみが有する部分は、すべて適宜相互に利用できる。
【実施例】
【0047】
本発明を具体的に説明するために実施例を挙げるが、本発明は以下の実施例によって制限されるものではない。
【0048】
〔実施例1〜6及び比較例1〜2〕
スパゲッティ(日清フーズ(株)製、「マ・マー スパゲティ」、麺厚1. 6mm)を茹で歩留まり230%で茹で上げた後、冷水で冷却した。次いで、この茹でたスパゲッティ200gを、所定の型に充填して冷凍し、図1及び図2に示す如き、中央部に貫通孔としての開口部を有する円環状の冷凍麺塊(食品本体部)を得た。冷凍麺塊の製造に使用した型は、冷凍麺塊の形状に対応した形状をなし、1)内径150mm、深さ30mmの円筒の底中央部に、高さ28mmの円柱状の凸部が形成された形状であるか、又は2)同様の円筒状をなしているが、内部に凸部が形成されていない形状である。凸部を有する型として、凸部の直径が異なる複数種の型を使用することで、開口部の開口長さが異なる複数種の冷凍麺塊を得た。
また、95gのミートソース(日清フーズ(株)製、「マ・マー トマトの果肉たっぷりのミートソース」)を所定の型に充填して冷凍し、図1及び図2に示す如き、平面視円形状且つドーム状のソース部を得た。ソース部の製造に使用した型は、ソース部の形状に対応した形状をなし、ソース部の上面に対応する部分の内径95mm、深さ40mmであった。従って、この型を用いて得られたソース部は、上面の直径95mm、厚さ(高さ)40mmであった。
そして、冷凍麺塊の上面(ソース部配置面)の中央部に、開口部がある場合にはそれを覆うようにソース部を配置し、冷凍食品としての冷凍麺類を得た。
【0049】
実施例1の冷凍麺類は、冷凍麺類1B(図3参照)と同様に、ソース部の下端が冷凍麺塊の下面と略同位置にあり、ソース部の上端部以外の部分が冷凍麺塊の開口部に挿入され、ソース部の上端部が冷凍麺塊のソース部配置面側に突出している。
実施例2〜6の冷凍麺類は、冷凍麺類1A(図2参照)と同様に、ソース部の下端が、冷凍麺塊のソース部配置面(上面)と下面との中間に位置しており、該下面から離間している。
比較例1の冷凍麺類は、冷凍麺塊に開口部が形成されておらず、単に、冷凍麺塊の上面の中央部にソース部が載置されているだけであり、実質的に図7(b)に示す冷凍麺類100Bと同じである。
比較例2の冷凍麺類は、冷凍麺類100A(図7(a)参照)と同様に、ソース部全体が冷凍麺塊の開口部に挿入されている。
【0050】
〔評価試験1〕
各実施例及び比較例の冷凍麺類を、電子レンジを用いて600Wで5分30秒間加熱することにより解凍した後、10名のパネラーに喫食してもらってその品質を下記評価基準により評価してもらった。その結果(10名のパネラーの平均点)を下記表1に示す。
【0051】
(品質の評価基準)
5点:麺とソースとの一体感があり非常に良く、麺が滑らかで弾力があり、極めて良好。
4点:麺とソースとの一体感がやや良く、麺が滑らかで弾力があり、良好。
3点:麺とソースとの一体感がやや不良 であり、麺の滑らかさ及び弾力にやや欠ける。
2点:麺とソースとの一体感が不良であり、麺はやや軟らかく弾力も不良。
1点:麺とソースとの一体感がなく、麺が軟らかく弾力がない。
【0052】
【表1】
【0053】
〔製造試験例1〜7〕
スパゲッティ(日清フーズ(株)製、「マ・マー スパゲティ」、麺厚1. 6mm)を茹で歩留まり230%で茹で上げた後、冷水で冷却した。次いで、この調理済みスパゲッティ200gを、内部底面に凸部を有する容器の該内部底面上に該凸部を包囲するように盛り付けて、図10に示す食品収容体50の如き、円環状の調理済み麺類の上面に該凸部の露出部を有する食品収容体を得た(前記工程1)。また別途、ミートソースにゼラチン(新田ゼラチン製、「GBL−200」)を配合した直後に、該ミートソースを別途用意した成形用容器内に充填し、該成形用容器を庫内温度4℃の冷蔵庫に3時間静置して該ミートソースをゲル化させ、ソース成形体を得た。そして、得られたソース成形体を、前記食品収容体の上面における前記凸部の露出部及びその周辺部に配置した(前記第1の方法による前記工程2)後、そのソース成形体の載った食品収容体全体を冷凍した(前記工程3)。以上の点以外は、前記〔実施例1〜6及び比較例1〜2〕と同様にして、冷凍食品としての冷凍麺類を得た。ソース成形体の調製に使用した成形用容器は、ソース部の形状に対応した形状をなし、ソース部の上面に対応する部分の内径95mm、深さ40mmであった。従って、この成形用容器を用いて得られたソース成形体延いてはソース部は、上面の直径95mm、厚さ(高さ)40mmであった。
【0054】
製造試験例2〜7によって得られた冷凍麺類は、冷凍麺類1A(図2参照)と同様に、ソース部の下端が、冷凍麺塊のソース部配置面(上面)と下面との中間に位置しており、該下面から離間している。
一方、製造試験例1によって得られた冷凍麺類は、ソース部の下端側が、冷凍麺塊の開口部(貫通孔)内の略全空間を占める中空円筒状をなし、ソース部の下端側が該開口部に挿入されてはいるものの、「ソース部の下端」の判別が困難な形態であった。この製造試験例1におけるソース部の形態は、冷凍前のソース成形体の保形力の低さに起因するもので、冷凍麺塊の開口部を覆うように配置されたソース成形体が、その配置直後に該開口部の上下方向に延びる内面全体に沿って垂下し、その状態で冷凍されて形成されたものである。
【0055】
〔評価試験2〕
各製造試験例で得られた冷凍麺類を、電子レンジを用いて600Wで5分30秒間加熱することにより解凍した後、10名のパネラーに喫食してもらってその品質を前記評価基準により評価してもらった。その結果(10名のパネラーの平均点)を下記表2に示す。
また、各製造試験例の実施中において、ソース成形体の調製時におけるゼラチン配合ソースの成形用容器への充填性(ソースの充填容易性)、ソース成形体の冷凍麺塊上への配置直前の保形性(ソースの保形性)をそれぞれ下記評価基準により評価した。後者のソースの保形性の評価は、前記の通りに冷蔵庫で冷蔵して調製したソース成形体を、冷蔵庫から取り出して速やかに冷凍麺塊上に配置した直後の該ソース成形体の観察結果に基づくものである。それらの結果を下記表2に示す。
【0056】
(ソースの充填容易性)
3点:ソース中に気泡がほとんど混入しておらず、ソースを容器内に自然に充填できる。
2点:ソース中に気泡がやや多く混入しているものの、ソースの容器内への充填は可能。
1点:ソース中に気泡が多く混入しており、ソースの容器内への充填は困難。
(ソースの保形性)
3点:保形力が高く、扱いやすい。
2点:保形力がやや高く、扱いやすい。
1点:保形力が低く、崩れてしまう。
【0057】
【表2】
【0058】
表2に示す通り、製造試験例1及び7は、他の製造試験例に比して、冷蔵麺類の喫食時の品質に劣る結果となった。製造試験例7の評価が低い理由は、ソースにおけるゼラチン含有量の過多によるものと推察される。また、製造試験例1の評価が低い理由は、ソースにおけるゼラチン含有量の過小により、電子レンジ解凍前の冷凍麺類におけるソース部の形状(冷凍麺塊の開口部内の略全空間を占める中空円筒状)が適切ではないことによるものと推察される。この製造試験例1の結果を踏まえると、冷凍麺類(冷凍食品)は、「ソース部は、下端側が冷凍麺塊(食品本体部)の開口部に挿入され、上端側が該冷凍麺塊のソース部配置面(上面)側に突出している」という形態を具備するだけでなく、製造試験例7のソース部が具備していない形態、即ち、「ソース部は、下端側に向かうに従って面方向の長さが漸次短くなる部分を有している」(図2図4参照)又は「ソース部の下端が、冷凍麺塊のソース部配置面(上面)と下面との中間に位置している(即ち下面から離間している)」(図2図4及び図5参照)を具備することが好ましいと言える。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明によれば、調理済み食品及びこれと共に喫食されるソースを含む冷凍食品で、自然解凍や電子レンジ解凍等によって解凍調理して喫食した際に、該食品とソースとの一体感に優れ、食感が良好な冷凍食品が提供される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12