(54)【発明の名称】窒素ドープされた空孔優勢であるシリコンインゴット、およびそれから形成された半径方向に均一に分布した酸素析出の密度およびサイズを有する熱処理されたウエハ
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記窒素ドープCZシリコン結晶インゴットからスライスされた単結晶シリコンウエハであって、表面と、裏面と、該表面と該裏面の間の中心平面と、該表面および該裏面を接合する周縁エッジと、該中心平面に垂直な中心軸と、該中心平面と該表面との間の該ウエハの領域を含むバルク層と、を含む請求項1に記載の窒素ドープCZシリコン結晶インゴットから作製された研磨エピタキシャルウエハ。
窒素ドープCZシリコン結晶インゴットからスライスされ、並びに780℃で3時間、およびその後1000℃で16時間熱処理されたウエハにおける半径方向のバルク微小欠陥サイズ分布、半径方向のバルク微小欠陥密度分布および酸素析出物密度分布をシミュレーションする方法であって、該方法は、メモリに結合されたプロセッサを含むコンピューティングデバイスによって実施され、
(1)該コンピューティングデバイスによって、少なくとも(i)前記窒素ドープCZシリコン結晶インゴットの直径、(ii)前記窒素ドープCZシリコン結晶インゴットの引上速度または前記窒素ドープCZシリコン結晶インゴットの引上速度範囲、(iii)前記窒素ドープCZシリコン結晶インゴットの窒素濃度または前記窒素ドープCZシリコン結晶インゴットの窒素濃度範囲、および(iv)前記窒素ドープCZシリコン結晶インゴットの融液/結晶界面付近の表面の温度勾配または前記温度勾配の範囲についての値を受け取り、および該コンピューティングデバイスによって、受け取られた値に基づいて、該ウエハの中心から該ウエハのエッジまで広がっている領域における熱処理されたウエハの半径方向のバルク微小欠陥サイズ分布をシミュレーションするステップと、
(2)該コンピューティングデバイスによって、少なくとも(i)前記窒素ドープCZシリコン結晶インゴットの直径、(ii)前記窒素ドープCZシリコン結晶インゴットの引上速度または前記窒素ドープCZシリコン結晶インゴットの引上速度範囲、および(iii)前記窒素ドープCZシリコン結晶インゴットの窒素濃度または前記窒素ドープCZシリコン結晶インゴットの窒素濃度範囲についての値を受け取り、および該コンピューティングデバイスによって、受け取られた値に基づいて、該ウエハの中心から該ウエハのエッジまで広がっている領域における熱処理されたウエハの半径方向のバルク微小欠陥密度分布をシミュレーションするステップと、
(3)該コンピューティングデバイスによって、少なくとも(i)前記窒素ドープCZシリコン結晶インゴットの直径、(ii)前記窒素ドープCZシリコン結晶インゴットの引上速度または前記窒素ドープCZシリコン結晶インゴットの引上速度範囲、(iii)前記窒素ドープCZシリコン結晶インゴットの窒素濃度または前記窒素ドープCZシリコン結晶インゴットの窒素濃度範囲、および(iv)前記温度勾配または前記温度勾配の範囲についての値を受け取り、および該コンピューティングデバイスによって、該ウエハの中心から該ウエハのエッジまで広がっている領域における熱処理されたウエハの酸素析出物密度分布をシミュレーションするステップと、
を含むシミュレーションスキームの少なくとも1回の反復を完了することを含み、
該前記窒素ドープCZシリコン結晶インゴットは、150mm〜450mmの直径を有し、および1cm3あたり1×1013個の窒素原子〜1cm3あたり1×1015個の窒素原子を含み、および該熱処理されたウエハは、該ウエハのエッジまで1000μmの点から該ウエハのエッジまで広がっている領域内のエッジバンドを有し、
前記窒素ドープCZシリコン結晶インゴットの引上速度または前記窒素ドープCZシリコン結晶インゴットの引上速度範囲、前記窒素ドープCZシリコン結晶インゴットの窒素濃度または前記窒素ドープCZシリコン結晶インゴットの窒素濃度範囲、および前記温度勾配または前記温度勾配の範囲の組合せは、(i)該ウエハの中心から該ウエハのエッジまで広がっている領域における半径方向のバルク微小欠陥サイズ分布の20%未満の増加および/または(ii)該ウエハの中心から該ウエハのエッジまで広がっている領域における半径方向のバルク微小欠陥密度分布の200%未満の増加、を有する熱処理されたウエハを製造するための条件を提供するためのシミュレーションから導かれるシミュレーション方法。
(i)前記窒素ドープCZシリコン結晶インゴットの直径、(ii)前記窒素ドープCZシリコン結晶インゴットの引上速度または前記窒素ドープCZシリコン結晶インゴットの引上速度範囲、(iii)前記窒素ドープCZシリコン結晶インゴットの窒素濃度または前記窒素ドープCZシリコン結晶インゴットの窒素濃度範囲、および(iv)前記温度勾配または前記温度勾配の範囲の組合せに基づいて、前記熱処理されたウエハの前記エッジに近接した領域内の酸素析出物の半径をシミュレーションするステップを更に含む請求項9に記載の方法。
窒素ドープCZシリコン結晶インゴットからスライスされ、並びに780℃で3時間、およびその後1000℃で16時間熱処理されたウエハの酸素析出物のエッジバンドを制御する方法であって、該方法は、メモリに結合されたプロセッサを含むコンピューティングデバイスによって実施され、
該コンピューティングデバイスによって、シミュレーションによって、CZプロセスによる溶融シリコンからの前記窒素ドープCZシリコン結晶インゴットの製造を可能にする、(i)前記窒素ドープCZシリコン結晶インゴットの直径、(ii)前記窒素ドープCZシリコン結晶インゴットの引上速度または前記窒素ドープCZシリコン結晶インゴットの引上速度範囲、(iii)前記窒素ドープCZシリコン結晶インゴットの窒素濃度または前記窒素ドープCZシリコン結晶インゴットの窒素濃度範囲、および(iv)前記窒素ドープCZシリコン結晶インゴットの融液/結晶界面付近の表面の温度勾配または前記温度勾配の範囲の組合せを決定する工程であって、それらのインゴットからスライスされ熱処理されたウエハは、該ウエハのエッジまで1000μmの点から該ウエハのエッジまで広がっている領域内のエッジバンドを有し、および30nm〜100nmの平均直径を有する酸素析出物によって特徴付けられ、(i)該前記窒素ドープCZシリコン結晶インゴットは、150mm〜450mmの直径を有し、および(ii)該前記窒素ドープCZシリコン結晶インゴットの窒素濃度は、1×1013atoms/cm3〜1×1015atoms/cm3であり、
該シミュレーションは、
(1)該コンピューティングデバイスによって、少なくとも(i)前記窒素ドープCZシリコン結晶インゴットの直径、(ii)前記窒素ドープCZシリコン結晶インゴットの引上速度または前記窒素ドープCZシリコン結晶インゴットの引上速度範囲、(iii)前記窒素ドープCZシリコン結晶インゴットの窒素濃度または前記窒素ドープCZシリコン結晶インゴットの窒素濃度範囲、および(iv)前記温度勾配または前記温度勾配の範囲についての値を受け取り、および該コンピューティングデバイスによって、受け取られた値に基づいて、該ウエハの中心から該ウエハのエッジまで広がっている領域における熱処理されたウエハの半径方向のバルク微小欠陥サイズ分布をシミュレーションするステップと、
(2)該コンピューティングデバイスによって、少なくとも(i)前記窒素ドープCZシリコン結晶インゴットの直径、(ii)前記窒素ドープCZシリコン結晶インゴットの引上速度または前記窒素ドープCZシリコン結晶インゴットの引上速度範囲、および(iii)前記窒素ドープCZシリコン結晶インゴットの窒素濃度または前記窒素ドープCZシリコン結晶インゴットの窒素濃度範囲についての値を受け取り、および該コンピューティングデバイスによって、受け取られた値に基づいて、該ウエハの中心から該ウエハのエッジまで広がっている領域における熱処理されたウエハの半径方向のバルク微小欠陥密度分布をシミュレーションするステップと、
(3)該コンピューティングデバイスによって、少なくとも(i)前記窒素ドープCZシリコン結晶インゴットの直径、(ii)前記窒素ドープCZシリコン結晶インゴットの引上速度または前記窒素ドープCZシリコン結晶インゴットの引上速度範囲、(iii)前記窒素ドープCZシリコン結晶インゴットの窒素濃度または前記窒素ドープCZシリコン結晶インゴットの窒素濃度範囲、および(iv)前記温度勾配または前記温度勾配の範囲についての値を受け取り、および該コンピューティングデバイスによって、該ウエハの中心から該ウエハのエッジまで広がっている領域における熱処理されたウエハの酸素析出物密度分布をシミュレーションするステップと、
(4)該コンピューティングデバイスによって、(i)該ウエハの中心から該ウエハのエッジまで広がっている領域における該熱処理されたウエハの半径方向のバルク微小欠陥サイズ分布と、(ii)該ウエハの中心から該ウエハのエッジまで広がっている領域における該熱処理されたウエハの半径方向のバルク微小欠陥密度分布と、および(iii)該ウエハの中心から該ウエハのエッジまで広がっている領域における該熱処理されたウエハの酸素析出物密度分布と、についてシミュレーションされた値に基づいて該熱処理されたウエハのエッジバンドの酸素析出物の平均サイズをシミュレーションするステップであって、該コンピューティングデバイスは、シミュレーションによって、30nm〜100nmの平均直径を有する酸素析出物を含む該熱処理されたウエハのエッジバンドを予測するステップと、を含むシミュレーションスキームの少なくとも1回の反復を含む工程と、
前記窒素ドープCZシリコン結晶インゴットの引上速度または前記窒素ドープCZシリコン結晶インゴットの引上速度範囲、前記窒素ドープCZシリコン結晶インゴットの窒素濃度または前記窒素ドープCZシリコン結晶インゴットの窒素濃度範囲、および前記温度勾配または前記温度勾配の範囲のシミュレーションされた値で前記窒素ドープCZシリコン結晶インゴットを溶融シリコンから引き上げ、そこから処理されたウエハが製造される前記窒素ドープCZシリコン結晶インゴットを製造する工程と、
を含む方法。
【背景技術】
【0003】
それから単結晶シリコンウエハが得られる単結晶シリコンは、いわゆるチョクラルスキー(「CZ」)法によって製造される。この方法では、多結晶シリコン(「ポリシリコン」)をるつぼに充填して溶融し、種結晶を溶融シリコンに接触させ、単結晶をゆっくりと引き上げることによって成長させる。ネックの形成が完了した後、結晶の直径は、所望のまたは目標の直径に達するまで、引上速度および/または溶融温度を低下させることによって拡大する。次に、ほぼ一定の直径を有する結晶の円筒形のメインボディは、溶融レベルの減少を補いながら引上速度および溶融温度を制御することによって成長する。成長プロセスの終了付近、しかしるつぼから溶融シリコンがなくなる前に、通常は結晶直径は徐々に減少してエンドコーン部を形成する。典型的には、エンドコーン部は、結晶引上速度およびるつぼに供給される熱を増加させることによって形成される。直径が十分に小さくなると、結晶は、融液から分離される。
【0004】
凝固後に結晶が冷却されると、結晶成長チャンバ内で単結晶シリコンの欠陥が多数形成されることが確認されている。そのような欠陥は、1つには、過剰(すなわち、溶解限度を超える濃度)の内因性点欠陥の存在に起因するものであり、これらは結晶格子空孔(「V」)およびシリコン自己格子間原子(self-interstitials)(「I」)として知られている。内因性点欠陥の種類および初期濃度は、凝固時に決定され、その濃度が臨界過飽和度に達し、点欠陥の移動度が十分に高い場合、反応または凝集事象が起こりやすい。酸素析出物などのバルク微細欠陥(「BMD」)を含むシリコン中の凝集した内因性点欠陥は、複雑で高度に集積化された回路の製造における材料の生産量に影響を及ぼす可能性がある。
【0005】
凝集した空孔型欠陥は、D欠陥、フローパターン欠陥(FPD)、結晶起因パーティクル(COP)欠陥、結晶起因輝点欠陥(LPD)、および走査型赤外線顕微鏡などの赤外線散乱技術およびレーザー走査型断層撮影法によって観察されるある種のバルク欠陥などの観察可能な結晶欠陥を含む。酸素析出物は、インゴットの成長中に形成される酸素析出核から製造される。より詳細には、酸素析出核は、電子デバイス製造に関連するその後の熱処理の間に酸素析出物を形成するために必要である。酸素析出物は、ウエハのバルク中の金属不純物および表面から離れた金属不純物を捕獲するためのゲッタリング部としての役割を果たす。金属不純物をゲッタリングする能力がなければ、ウエハの電子特性は、悪影響を受ける可能性がある;例えば、ウエハは、少数キャリア寿命の減少、p−n接合部における電流リーク、誘電率不連続性、および破壊強度の減少を受ける可能性がある。半導体デバイスの製造においては、シリコンウエハのバルクにおける酸素析出物による適切で頑強なゲッタリング能力の要求が高まっている一方で、同時に、酸素析出物に関連する生産量の低下を避けることへの要求が高まっている。
【0006】
窒素ドープシリコン結晶は、主としてボイドサイズ分布の窒素による減少のため、様々な用途で製造され使用されている。空孔トラップによって作用すると、窒素は、結晶の空孔領域内の点欠陥形成に影響を与え、本質的にボイド形成をより低い温度にシフトさせ、ボイド密度を増加させ、ボイドサイズを減少させると考えられている。窒素ドープされた結晶中の空孔のトラップ獲効果のために、酸素析出物は、窒素ドープされない結晶中の場合よりも高密度およびより大きなサイズで形成される。研磨されたウエハ、エピウエハ、アニールされたウエハ、および消費者のアプリケーションに欠陥を生じさせることなく満足なBMD性能を達成するために、好適には、ウエハは、熱処理後にほぼ均一な酸素析出物の半径方向の密度およびサイズの分布を示すことが好ましい。いくつかの高度な半導体デバイスの製造においては、より高密度のこのような大きな析出物は、ほぼ均一には分布しておらず、様々な理由で問題となり得る。特に、窒素ドープシリコン結晶からスライスされたウエハは、典型的に、熱処理後のウエハのエッジ部分におけるBMDのサイズおよび密度のプロファイルの増加を示す。理論により拘束されることを望まないが、窒素結合は空孔と強く結合し、窒素濃度が低いほど自由空孔が多くなり、次々にボイドが形成されると考えられる。その結果、この表面誘導効果の存在のため、いわゆる「エッジ効果」の中で、酸素析出物のサイズおよび密度が上昇の傾向にある結晶のエッジに比べて、結晶の内部領域では、酸素析出物は、小さくなり、密度は、減少する。
【0007】
エッジ効果では、BMDのサイズおよび密度のプロファイルは、窒素ドープCZシリコン結晶からスライスされた従来技術のウエハのエッジ部分で特徴的に上昇する傾向にある。
図1および
図2に示されているように、約0.78mm/分の引上速度で、約50℃/cmの温度差で成長させた窒素ドープCZシリコン結晶からスライスされた2つの従来技術の直径300mmのウエハの分析が描かれている。結晶は、エピについては1130℃で、および析出を特徴付ける目的で、780℃で3時間の第1ステップおよび1000℃で16時間の第2ステップの2ステップの熱サイクルで、アニールされた。酸素濃度は、10〜11ppmaの範囲であり、窒素濃度は、3×10
13〜2×10
14atoms/cm
3の範囲であった。
図1および
図2に示されているように、2つのウエハの分析は、BMDのサイズおよび密度が、ウエハのエッジにおいて、半径方向に5ミリメートルの範囲内で、約300%増加したことを示している。
【0008】
凝集した内因性点欠陥の問題に対処する1つのアプローチは、インゴットを「空孔優勢」(すなわち、空孔が優勢な内因性点欠陥であるシリコン)にするためにシリコン結晶インゴットを高速で成長させることと、および次に空孔優勢単結晶シリコンウエハの表面上にシリコンの薄い結晶層をエピタキシャル堆積させ、それによって凝集空孔欠陥を効果的に充填またはカバーすることと、を含む。エピタキシャル堆積プロセスは、典型的には、単結晶シリコンウエハを約1150℃の温度まで急速に加熱し、ガス状シリコン化合物をウエハ表面上に通過させ、凝集空孔欠陥をほぼ含まないシリコン層を堆積させる化学気相堆積プロセスを含む。エピタキシャル堆積プロセスは、典型的には、インゴットの成長の間に形成される酸素析出核を消滅させる。エピタキシャル堆積中に酸素析出核を消滅させるという問題に対処する1つの方法は、急速な熱エピタキシャル堆積プロセスと対照的に、酸素析出核を安定化させる長い熱アニールプロセス(例えば、約800℃で約4時間、続いて約1000℃で10時間など)である。この方法には、スループットを低下させ、シリコンウエハの製造コストを著しく増加させるという問題がある。
【0009】
Kulkarni(米国特許第8216362号)は、CZシリコン結晶中における、空孔の側面誘起凝集および酸素クラスタ形成の問題を扱った。しかしながら、開示された方法は、格子間原子優勢状態から空孔優勢状態への移行のため、Voronkovの理論に基づく臨界引上速度に近い引上速度における空孔の側面導入の制御に焦点を当てている。したがって、Kulkarniによって開示された引上速度は、比較的低い。Voronkovのモデルまたは理論によれば、融液/結晶界面近傍の温度場は、点欠陥の再結合を駆動し、(点欠陥がそれぞれの平衡濃度で存在する)融液/結晶界面から結晶バルクへの拡散のための駆動力を提供する。拡散と対流とによる点欠陥の移送同士の相互作用、およびそれらの再結合は、再結合距離と呼ばれる界面からの短い距離を超えると、点欠陥濃度を規定する。典型的には、過剰点欠陥濃度と呼ばれる、再結合距離を越えた空孔濃度と格子間原子濃度との間の差は、結晶の側表面から離れると基本的に一定のままである。急速に引き上げられた結晶では、再結合距離を越えた拡散による点欠陥の空間的な再分布は、点欠陥のシンクまたはソースとして作用する結晶の側表面に近い領域の場合を除いては、一般的には重要ではない。したがって、再結合距離を越えた過剰点欠陥濃度が正である場合、空孔は、過剰となり、低温で凝集してD欠陥(八面体のボイドとして同定される空孔凝集体)を形成する。過剰点欠陥濃度が負である場合、格子間原子は、優勢な点欠陥となり、凝集してA欠陥(Aスワール欠陥と呼ばれる、転位ループ)およびB欠陥(Bスワール欠陥と呼ばれる、球状格子間クラスタ)を形成する。過剰点欠陥濃度が検出閾値未満である場合、検出可能な微小欠陥は、形成されない。したがって、典型的には、成長中の(grown-in)微小欠陥の種類が決定される。このように、典型的には、成長中の微小欠陥の種類は、再結合距離を越えた領域の過剰点欠陥濃度によって決定される。過剰点欠陥濃度を決定付ける過程は、初期導入と呼ばれ、優勢な点欠陥種は、導入された優勢点欠陥と呼ばれる。導入される点欠陥のタイプは、界面近傍における軸方向温度勾配(G)と、結晶引上速度(v)との比によって決定される。v/Gが高い場合、点欠陥の対流が拡散より支配的となり、空孔は、導入された優勢点欠陥となるが、これは界面における空孔濃度が格子間原子濃度よりも高くなるためである。v/Gが低い場合、拡散が対流より支配的となり、優勢な点欠陥として、拡散の速い格子間原子の導入が可能となる。v/Gがその臨界値に近い場合、両者の点欠陥は、非常に低い同程度の濃度で導入され、互いに消滅させ合い、その結果、低温におけるいかなる微小欠陥の潜在的な形成をも抑制する。観察される微小欠陥の空間的分布は、Gの半径方向における不均一さ、およびvの軸方向変化に起因するv/Gの変化によって、典型的に説明できる。半径方向の微小欠陥の分布の1つの特徴は、酸化物粒子が、導入された空孔濃度が比較的低い領域において、臨界v/Gよりわずかに高い小さいv/Gの範囲で、酸素と空孔の相互作用によって形成されることである。これらの粒子は狭い空間的なバンドを形成し、このバンドは、熱酸化法によって、OSF(酸化誘起積層欠陥)リングとして観察することができる。
【0010】
Kulkarniは、側面導入効果が、界面形状操作および冷却速度の変化によって制御され得ることを更に提唱している。特に、平坦な表面からの界面形状のずれを考慮に入れた修正されたG値を表すG
corrected値が計算される。さらに、所与のインゴットセグメントの冷却速度が増加するにつれて、その中の凝集した欠陥の数密度が増加する一方で、凝集した欠陥のサイズは減少する。インゴットセグメントの冷却速度が十分に高い場合、凝集した欠陥の形成は、本質的に回避され得る。問題は、界面形状操作または冷却速度変化のいずれかが、所望の(i)空孔の半径および密度の半径方向均一性、(ii)結晶の半径方向の位置の関数としてのBMDの直径および密度の半径方向均一性、および(iii)エッジ効果の実質的不存在を達成するには不十分である点である。
【0011】
デバイス製造における新しい技術が出現し、デバイスのサイズと構造はますます小さくなり、複雑になり続けているため、エピタキシャルウエハ内の制御されたサイズおよび密度において、BMDの半径方向均一性を得ることが望ましい。したがって、半径方向に均一に分布した酸素析出物の密度およびサイズを示し、酸素析出物のエッジバンドを制御する窒素ドープシリコンウエハが必要とされている。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本開示によると、窒素ドープCZ単結晶シリコンインゴットおよびそれから製造されるウエハが提供され、このインゴットは、結晶断面を横切る結晶の半径方向の位置の関数としての空孔の半径および密度の半径方向の実質的な均一性によって特徴付けられ、およびそれからスライスされ熱処理されたウエハは、結晶断面を横切る結晶の半径方向の位置の関数としてのBMDの直径および密度の半径方向の実質的な均一性によって特徴付けられ、このインゴットおよびウエハは、エッジ効果がほぼないことを示す。
【0021】
更に本開示によると、結晶断面を横切る結晶の半径方向の位置の関数としての空孔の半径および密度の半径方向の実質的な均一性によって特徴付けられる窒素ドープCZ単結晶シリコンインゴットを製造し、および結晶断面を横切る結晶の半径方向の位置の関数としてのBMDの直径および密度の半径方向の実質的な均一性によって特徴付けられるそのインゴットからスライスされ熱処理されたウエハであって、エッジ効果がほぼないことを示すウエハを提供するための方法であって、CZプロセスの溶融シリコンからの単結晶インゴットの製造において、引上速度、表面温度勾配および窒素濃度を制御する工程を含む方法が提供される。
【0022】
更に本開示によると、成長したままの(as-grown)窒素ドープCZ単結晶シリコンインゴットの中の空孔の凝集、および様々な熱処理の後にそのインゴットからスライスされたウエハの中の酸素のクラスタ化をシミュレーションする方法が提供され、このシミュレーションは、引上速度、窒素濃度および結晶表面温度勾配を含む変数の組合せに基づく与えられた直径について、BMDのサイズおよび密度の分布並びにエッジバンドの特徴を予測するアルゴリズムを採用する。
【0023】
本開示の様々な態様のいずれにおいても、(i)約150mm〜約450mmから選択されたCZシリコン結晶インゴットまたはウエハの直径、(ii)約1×10
13〜約1×10
15の範囲内の窒素濃度、(iii)約0.4mm/分〜約1.5mm/分の範囲内の引上速度範囲サブセット、および(iv)約1300℃〜約1415℃の平均表面温度において約10°K/cm〜約50°K/cmの範囲内の表面温度勾配サブセット範囲の組合せの選択は、与えられた任意の直径に対して、(i)ウエハの中心からウエハのエッジまで広がっている領域における半径方向のバルク微小欠陥サイズの20%未満の増加、(ii)ウエハの中心からウエハのエッジまで広がっている領域における半径方向のバルク微小欠陥密度の200%未満の増加、および(iii)エッジバンド効果の本質的な欠如のうちの1つ以上によって特徴付けられるドープされた窒素ウエハを提供する。
【0024】
本開示のシリコン結晶インゴットおよびウエハは、少なくとも約150mm、少なくとも約200mm、少なくとも約250mm、または少なくとも約300mm、例えば約150mm、200mm、250mm、300mm、350mm、400mmまたは450mmなどの直径を有する。いくつかの態様では、直径は、約300mmである。シリコンインゴットが通常150mm、200mm、250mm、300mmまたは300mmより大きい、例えば350mm、400mmまたは450mmなどの直径を有すると言われているが、正確な直径は、プロセスのわずかな変化のために、軸方向の長さに沿っていくらか変化する場合があり、または同様のサイズのウエハを製造することができるインゴットを成長させるために、意図的に変化する場合があることに注意しなければならない。例えば、当業者に知られているように、300mm径のインゴットまたはウエハは、例えば310mmまたは320mmまたはそれ以上などの300mmを超える直径のインゴットまたはウエハから随意に準備され、続いて、グラインディングなどの当技術分野において公知の任意のプロセスによって、そのインゴットまたはウエハの周辺部分から取り除かれ、インゴットまたはウエハの直径を減少させてもよい。
【0025】
本開示のインゴットからスライスされ熱処理されたウエハは、ウエハの中心からウエハのエッジまで広がっている領域におけるBMDサイズの20%未満の増加によって、またはウエハのエッジから約10mmの点からウエハのエッジまで広がっている領域におけるバルク微小欠陥サイズの15%未満の増加によって特徴付けられる。ウエハは、ウエハの中心からウエハのエッジまで広がっている領域におけるバルク微小欠陥密度の200%未満の増加によって、またはウエハのエッジから約10mmの点からウエハのエッジまで広がっている領域におけるバルク微小欠陥サイズの100%未満の増加によって特徴付けられる。
【0026】
開示のいくつかの態様では、本開示のインゴットからスライスされ熱処理されたウエハは、結晶のエッジ(側面)から約5000μm、4000μm、3000μm、2000μmまたは1000μmの点から結晶のエッジまで広がっている領域内に広がっているエッジバンドによって特徴付けられる。エッジバンドは、約30nm〜約100nmの平均直径および約1×10
8atoms/cm
3〜約1×10
10atoms/cm
3の酸素析出物密度を有する酸素析出物によって特徴付けられる。エッジバンドにおけるBMDのサイズおよび密度の分布は、と中心軸からエッジバンドまで広がっている領域における分布とほぼ同一である。本開示のいくつかの態様では、エッジバンドの半径方向のBMDサイズは、ウエハの残りの部分のBMDサイズから20%を超えて変化しない。本開示の他のいくつかの例では、エッジバンドのBMD密度は、ウエハの残りの部分のBMD密度から200%を超えて変化しない。
【0027】
単結晶シリコンインゴットは、標準的なCZ法によって成長してもよい。単結晶シリコンインゴットは、結晶引上装置内で成長させられる。米国特許第6554898号およびWO99/27165(両者ともサンエディソン・セミコンダクター・テクノロジ社に譲渡されている)などを参照すると、それらの開示は、その全体が記載されているかのように本明細書に組み込まれる。典型的なCZ引上装置は、ハウジングと、溶融シリコンを収容するためのハウジング内のるつぼと、成長しているインゴットを溶融シリコンから上方に引き上げるための引上機構と、固体シリコン原料(すなわち、多結晶の顆粒および/または塊の多結晶を含む多結晶チャージ)を溶融シリコン融液槽中に溶融するのに十分な加熱機構とをるつぼに近接して含む。多結晶原料は、(サンエディソン・セミコンダクター・テクノロジ社に譲渡されている)WO99/55940に記載されているものなどの当技術分野において公知の技術に従ってるつぼに充填されてもよい。
【0028】
CZ法に従ったインゴットの成長は、加熱機構に電圧を加えることにより固体シリコン原料のチャージを融解することによって開始する。例えば、WO99/20815(サンエディソン・セミコンダクター・テクノロジ社に譲渡されている)などを参照。種結晶を溶液に浸す前に、るつぼの回転速度、不活性ガスの流速などによって溶融物の流れを安定化させることができる。種を上に引き上げると、固液界面で融液が結晶化し、結晶が成長し始める。種結晶から直径の増大した円錐形ネックは、融液からの種結晶の引上速度を減少させることによって成長する。一度所望の直径に達すると、引上速度は、結晶がほぼ一定の直径領域に成長するまで徐々に増加する。結晶引上装置の加熱機構は、成長中のシリコンインゴットの凝固および冷却速度を制御するために制御される。るつぼは、典型的には、結晶と反対の方向に回転されて、融液流を安定化させ、結晶中の酸素濃度を制御する。結晶成長の最終段階は、直径が徐々に減少し円錐形が達成されるテールの成長であり、そこではエンドコーンの直径は、一定の直径の領域から結晶の端部に向かって軸方向に減少する。一旦結晶が融液から離れると、引上装置への電力が減少し、結晶は上部チャンバへ持ち上げられながら冷却される。プロセスの終点では、結晶は、更なるプロセスのために引上装置から取り除かれる。
【0029】
本開示の結晶インゴットは、中心軸と、シード端部と、反対側の端部と、シード端部と反対側の端部との間の一定直径部であって側面および中心軸から側面まで伸びる半径rを有する一定直径部とを含み、単結晶シリコンインゴットは、シリコン融液から成長され、次にCZ法に従って凝固から冷却される。単結晶シリコンインゴットは、そこでは空孔が優勢な内因性点欠陥であり、中心軸から側面に延びる半径を有する、半径方向に対照な領域を含む一定直径部によって特徴付けられる。
【0030】
本開示のいくつかの態様は、本明細書で上に詳述したインゴットから得られた(スライスされた)単結晶シリコンウエハに関する。特に、本開示は、約150mm〜約450mmの直径を有する単結晶シリコンウエハに関する。ウエハは、好適には、表面と、裏面と、表面と裏面の間にあり表面と裏面にほぼ平行な仮想中心平面と、表面および裏面を接合する周縁エッジとを有する。ウエハは、中心平面に垂直な仮想中心軸と、中心軸から周縁エッジに伸びる半径方向長とを更に含む。この文脈における「表(front)」および「裏(back)」の用語は、ウエハの2つの主要な、一般に平坦な表面を区別するために使用される。ウエハの表面(ここで使用される語句としての)は、必ずしもその上に後に電子デバイスが製造される表面でないし、ウエハの裏面(ここで使用される語句としての)は、必ずしも電子デバイスが製造される表面の反対側のウエハの主要な表面ではない。さらに、シリコンウエハは、一般には、いくらかの総膜厚ばらつき(total thickness variation)(TTV)、たわみ、および反りを有するため、表面上のすべての点と、裏面上の全ての点との間の中間点は、正確には平面内にはない。しかしながら、実際には、TTV、たわみ、および反りは、通常わずかであるため、中間点は、表面と裏面との間のおおよそ等距離の仮想中心平面内にあると近似できる。ウエハは、研磨されてもよいし、または代わりにラップおよびエッチングされるが研磨されなくてもよい。そのような方法は、標準的なシリコンのスライス、ラッピング、エッチングおよび研磨技術と共に、例えば、F. Shimuraの、Semiconductor Silicon Crystal Technology, Academic Press, 1989や、Silicon Chemical Etching (J. Grabmaier ed), Springer-Verlag, New York, 1982 に記載されている(参照により、ここに組み込まれる)。好適には、ウエハは、当業者に知られた標準的な方法により研磨および洗浄される。例えば、W. C. O’Mara et al, Handbook of Semiconductor Silicon Technology, Noyes Publications参照。
【0031】
先の公開(例えば、WO98/45507、WO98/45508、WO98/45509、およびWO98/45510参照。すべてサンエディソン・セミコンダクター・テクノロジ社に譲渡されている)によれば、内因性点欠陥の型および初期濃度は、凝固の温度(すなわち、約1410℃)から1300℃より高い温度までインゴットを冷却して、最初に決定される。すなわち、それらの欠陥の型および初期濃度は、v/G比により制御され、ここでは、vは、成長速度であり、Gは、この温度範囲での平均軸方向温度勾配である。v/Gの値が増加するほど、徐々に減りつつある自己格子間原子が優勢な成長から、徐々に増えつつある空孔が優勢な成長への移動が、臨界値v/G
0近傍で起こり、この臨界値は、現在入手可能な情報に基づくと、約2.1×10
−5cm
2/sKであり、ここでG
0は、上述の温度範囲内で軸方向温度勾配が一定である条件下で決定される。この臨界値では、それらの内因性点欠陥の濃度は、平衡状態である。v/G
0の値が臨界値を超えると、空孔の濃度が増加する。同様に、v/G
0の値が臨界値より小さくなると、自己格子間原子の濃度が増加する。
【0032】
電子デバイスの製造で使用される一般的な熱処理サイクルは、酸素が過飽和のシリコンウエハ中で、酸素を析出させる。ウエハの位置に応じて、析出が有害であったり有益であったりする。ウエハの活性デバイス領域中に位置する酸素析出は、デバイスの動作を害する。しかしながら、ウエハのバルク中に位置する酸素の析出は、そのウエハと接触する望まない金属不純物のトラップを可能にする。金属をトラップするための、ウエハのバルク中に位置する酸素析出物の使用は、一般に、内在または内因性ゲッタリング(IG)と呼ばれる。
【0033】
CZシリコン材料中での酸素析出挙動は、内因性点欠陥濃度に強く影響される。例えば、軽くドープされた材料では、空孔型材料において一般的に強力な析出が観察され、一方、格子間原子型材料では、析出は起きない。酸素析出物を核形成および成長させるのに十分な熱処理は、ウエハ全体にわたって、すなわち、中心軸から周縁エッジまで広がっている領域および更にウエハの表面からウエハの裏面まで広がっている領域において、均一で高い酸素析出物で本発明のウエハを製造するのに適している。いくつかの具体例では、BMDは、約700℃を超える温度で、酸素析出物を核形成および成長させるのに十分な時間、ウエハを酸素析出熱処理させることによって特徴付けられる。いくつかの他の特徴付けの具体例では、ウエハは、800℃で4〜8時間、次に1000℃で16時間ウエハをアニールすることなどのNEC1テスト手順を含む酸素析出熱処理されてもよい。いくつかの他の特徴付けの具体例では、ウエハは、780℃で3時間、次に1000℃で16時間ウエハをアニールすることを含む酸素析出熱処理されてもよい。いくつかの他の具体例では、ウエハは、酸素析出熱処理されたポストエピタキシャルウエハであって、ポストエピタキシャル処理は、約900℃、約950℃、約1000℃、約1050℃、約1100℃、約1150℃、または約1200℃、および約900℃〜約1200℃、約1000℃〜約1200℃、または約1050℃〜約1150℃などのこれらの範囲の温度で行われる。
【0034】
窒素ドーパント濃度、CZシリコン結晶引上速度、および引上げ中のCZ結晶温度勾配は、CZシリコン結晶インゴットからスライスされ熱処理されたウエハBMDのサイズおよび分布に影響を与える。本開示の様々な態様において、BMDサイズ分布、BMD密度分布および本CZシリコン結晶インゴットおよびウエハのエッジバンド特徴は、以下に記載のモデリングおよびシミュレーション技術によって決定される、以下に記載の範囲内の変数の選択によって制御されてもよい。好適な範囲は、インゴットの直径によって適切に変化し得る。ある具体例では、窒素ドーパント濃度範囲は、約1×10
13atoms/cm
3〜約1×10
15atoms/cm
3であり、引上速度範囲は、約0.4mm/分〜約1.5mm/分であり、およびインゴット表面温度勾配は、約1300℃〜約1415℃の平均結晶表面温度において約10°K/cm〜約50°K/cmである。ある具体例では、300mm径のインゴットについて、窒素ドーパント濃度範囲は、約1×10
13atoms/cm
3〜約1×10
15atoms/cm
3であり、引上速度範囲は、約0.85mm/分〜約1.5mm/分であり、およびインゴット表面温度勾配は、約1300℃〜約1415℃の平均結晶表面温度において約10°K/cm〜約35°K/cmである。
【0035】
窒素ドーパント濃度
本開示のシリコン結晶は、CZシリコン内のボイドサイズ分布の減少を誘導する窒素ドーパント原子を含む。窒素濃度は、結晶の半径方向の位置の関数としての成長したままの酸素クラスタの半径に影響を与える。シリコン結晶中の窒素濃度は、約1×10
13atoms/cm
3〜約1×10
15atoms/cm
3または約1×10
14atoms/cm
3〜約1×10
15atoms/cm
3である。インゴットは、例えば、成長チャンバ内へ窒素ガスを導入することおよび/またはポリシリコン融液に窒素を添加することなどの当技術分野において公知の様々な方法のいずれかによって窒素でドープされてもよい。成長している結晶に添加される窒素の量は、窒素をポリシリコン融液に添加することによって、より正確に制御され、そのような方法が好適な方法である。典型的なポリシリコン融液窒素濃度は、約1×10
16atoms/cm
3〜約1×10
18atoms/cm
3、または約1×10
17atoms/cm
3〜約1×10
18atoms/cm
3、または約1×10
17atoms/cm
3〜約5×10
17atoms/cm
3である。例えば、結晶に添加される窒素の量は、公知の直径のシリコンウエハ上に公知の厚さのシリコン窒化物(Si
3N
4)の層を堆積させることによって容易に決定され、シリコン融液を形成する前にポリシリコンと共にるつぼ内に導入される。
【0036】
窒素は、空孔と強く結合するため(M.Kulkarni、"Defect Dynamics in the presence of nitrogen in growing Czochralski silicon crystals"、Journal of Crystal Growth、Volume 310、324-335頁(2008)参照)、窒素濃度が低いほどボイドの形成に有利な自由空孔が多くなり、したがって、酸素析出物は、結晶の内部領域では小さくなると考えられている。先に開示したように、窒素ドーピングは、CZシリコン結晶のボイドサイズ分布の減少を誘導する。空孔トラップによって作用すると、窒素は、結晶の空孔領域における点欠陥形成に影響を与え、本質的にボイド形成を低温にシフトさせ、ボイド密度を増大させ、ボイドサイズを減少させると考えられる。窒素ドープ結晶における空孔のトラップ効果のため、酸素析出物は、窒素ドープされない結晶より高密度およびより大きいサイズで形成される。特定の理論に拘束されることなく、窒素ドーパント原子は、シリコン結晶中の空孔の拡散を遅らせることによって酸素析出核を熱的に安定化させると考えられている。特に、成長する結晶が冷却するにつれて、空孔の濃度は臨界過飽和レベルに達し(すなわち、この点で凝集事象が起こる)、凝集した空孔欠陥または微小ボイドの形成が起こる。例えば、過飽和は、約1150℃〜1050℃の温度で起こる。空孔が拡散し続けるため、結晶が冷却するにつれて、微小ボイドのサイズは成長する。微小ボイドの凝集事象および継続した成長は、結晶中の非凝集の、または「自由な」空孔の濃度を著しく減少させるが、冷却を続けると、結晶中の自由空孔と酸素とが相互作用して酸素析出核を形成する第2レベルの臨界過飽和に達する。窒素ドープされない結晶については、第2レベルの臨界過飽和は、結晶が約700℃以下まで冷却されると起こる。しかしながら、窒素ドープされたシリコンにおいては、凝集事象中の微小ボイドの形成は、空孔の拡散速度が遅いため、わずかに抑制される。この結果、第1凝集事象の後に結晶中に残存する自由空孔濃度が高くなる。窒素ドープされたシリコン中の自由空孔濃度の増加は、第2レベルの臨界過飽和が生じる温度を、例えば約800℃から1050℃へ、上昇させる。上昇した温度では、結晶中の酸素原子は、結晶中の酸素原子はより動き、より多くの酸素原子が自由空孔と相互作用し、したがってより安定した酸素析出核が得られる。安定化した酸素析出核は、エピタキシャルシリコン層の成長などのその後の熱処理中の溶解に対してより耐性がある。
【0037】
図7および
図8に描かれているように、エッジ付近では、表面誘起効果の存在のため、予測される酸素析出物の大きさは同様に補償されない。特に
図7に示されているように、窒素濃度は、結晶の半径方向の位置の関数としての成長したままの酸素クラスタの半径に影響を与え、半径サイズの不均一な分布をもたらし、300mm径のインゴットについて、酸素クラスタ半径は、エッジ領域において、著しく増加する。
図8に示されているように、窒素濃度は、結晶の半径方向の位置の関数としての成長したままのボイドの半径に影響を与え、半径サイズの不均一な分布をもたらし、300mm径のインゴットについて、ボイドサイズ半径は、エッジ領域において、著しく減少する。
【0038】
窒素濃度の影響から生じる平均BMD密度の依存性は、アニール温度とは無関係であると考えられる。
図9に描かれているように、予測される平均BMD密度は、1100℃のアニール温度において、約7.5×10
13atoms/cm
3のインゴットの窒素濃度において約9.1×10
7/cm
3から、約2.5×10
14atoms/cm
3のインゴットの窒素濃度において約4.1×10
8/cm
3まで変化する。
図10に描かれているように、予測される平均BMD密度は、1000℃のアニール温度において、約7.5×10
13atoms/cm
3のインゴットの窒素濃度において約2.15×10
10/cm
3から、約2.5×10
14atoms/cm
3のインゴットの窒素濃度において約3.75×10
10/cm
3まで変化する。1000℃における平均BMD密度は、1100℃におけるものよりも大きかったが、窒素濃度に基づく平均BMD密度の依存性は両方の温度で同様であった。
【0039】
引上速度
図3に示されているように、引上速度は、結晶の半径方向の位置の関数としての成長したままの酸素クラスタの予測半径に影響を与え、半径サイズの不均一な分布をもたらす。300mm径のインゴットの引上速度が約0.78mm/分の場合、酸素クラスタ半径は、エッジ領域において著しく増加する。
図4に示されているように、引上速度は、結晶の半径方向の位置の関数としての成長したままのボイドの予測半径に影響を与え、半径サイズの不均一な分布をもたらし、300mm径のインゴットの引上速度が約0.7mm/分の場合、ボイドサイズ半径は、エッジ領域において著しく減少する。
図3および
図4に基づくデータは、断面にわたって一定である、5.5×10
10atoms/cm
3の酸素濃度および1.26×10
14atoms/cm
3の窒素濃度について得られたものである。それぞれの引上速度について、融液/結晶界面付近の結晶表面温度勾配は、51.14°K/cmであった。結晶中のin−grown空孔は、ボイドに凝集し、結晶温度が低下すると酸素クラスタの形成を促進することができる。空孔クラスタおよび酸素クラスタのサイズプロファイルに、各場合について結晶表面に付近に見られるピークがある。高い引上速度値においては、ボイドサイズのエッジピークは、酸素クラスタについて観測されたものに比べてはるかに急勾配ではない。この観測結果は、側面導入効果に関する確立された理論と一致する。低い引上速度においては、あらゆる場所で誘導される空孔はより少なく、ボイド形成を遅らせるが、空孔優勢結晶において、高い結晶引上速度では、より早く酸素クラスタの形成を促進することができる。したがって、自由空孔濃度に依存するボイド形成と酸素クラスタ形成との間の競合は、軸方向の導入、酸素と窒素の結合の強度、および横方向の導入に基づいて決定され、酸素クラスタのサイズ分布の均一性を高めるために調整される必要がある。引上速度を増加させると、あらゆる場所に十分な空孔ができ、ボイドサイズが増加し、酸素クラスタのサイズが小さくなる。引上速度が約0.95mm/分または更には1mm/分に増加した場合、エッジバンドの酸素析出の強度が著しく減少することが発見されている。
【0040】
本開示の範囲内の引上速度範囲は、インゴットの直径と共に変化し、一般的に、約0.4〜約1.5mm/分、約0.5〜約1.5mm/分、約0.6〜約1.5mm/分、約0.7〜約1.5mm/分である。本開示の範囲内の速度は、約0.4mm/分、約0.5mm/分、約0.6mm/分、約0.7mm/分、約0.78mm/分、約0.8mm/分、約0.85mm/分、約0.9mm/分、約1.0mm/分、約1.1mm/分、約1.2mm/分、約1.3mm/分、約1.4mm/分、約1.5mm/分、およびそれらの範囲を含む。例えば。300mmインゴットについては、一般的に、約0.85mm/分〜約1.5mm/分、約0.85mm/分〜約1.0mm/分または約0.9mm/分〜1.0mm/分の引上速度が好ましい。約400mmまたは約450mmなどの300mmを超える直径を有するインゴットの引上速度範囲は、好適には、約0.8mm/分未満、例えば約0.4〜約0.7mm/分、約0.5〜約0.7mm/分、または約0.5〜約0.6mm/分である。Voronkov理論にかかる臨界値を超えるv/Gを提供する引上速度が好ましい。
【0041】
平均BMD密度は、引上速度と相関があり、アニール温度に依存してこの相関性の特徴が変化することが見出された。例えば、
図5に示されているように、1100℃のアニール温度では、300mmインゴットについて予測平均BMD密度は、1000℃のアニール温度についてのものよりも約2桁低く、かつ引上速度が増加するに連れて減少する。
図6に示されているように、300mmインゴットについて予測平均BMD密度は、1100℃のアニール温度についてのものよりも約2桁大きく、かつ引上速度が0.95mm/分まで増加するに連れて増加し、1mm/分ではわずかに減少する。
【0042】
温度勾配
成長中のCZ結晶がさらされる平均軸方向温度勾配は、結晶断面を中心軸からエッジへ横切るボイドサイズ分布に影響を与える。一般的に、ボイドサイズの増加は、温度勾配に反比例し、ボイドサイズは、融液/結晶界面付近の結晶エッジにおける温度勾配の減少に対応して、特に結晶エッジ付近で増加する。この予測結果は、
図11および
図12に図示されている。これは、実際には、結晶内部にある酸素析出物のサイズが温度勾配に実質的に影響されずに、結晶エッジ付近の酸素析出物のサイズを減少させるのに役立つ。
【0043】
融液/結晶界面付近の結晶表面における温度勾配の減少は、その部分をホットゾーンのより熱い部分にさらすことによって、成されることができる。例えば、これを達成する1つの方法は、融液表面とリフレクタ黒鉛の底との間のギャップ(「Hr」として知られている」)を増加させることである。別の方法は、より高い底部ヒータ電力を稼動させることによって、側部ヒータ電力を増加させることである。
【0044】
本開示の範囲内の温度勾配の範囲は、約1300℃〜約1415℃の平均結晶表面温度において、約10°K〜約50°K/cm、約10°K〜約35°K/cm、約25°K〜約50°K/cm、約25°K〜約45°K/cm、約30°K〜約45°K/cm、または約35°K〜約45°K/cmである。温度勾配は、約10°K/cm、約20°K/cm、約25°K/cm、約30°K/cm、約35°K/cm、約40°K/cm、約45°K/cm、約50°K/cm、およびそれらの様々な範囲を含む。
【0045】
温度勾配の影響から生じる平均BMD密度は、アニール温度にはほとんど関係しないと考えられる。
図13に描かれているように、300mmインゴットについての予測平均BMD密度は、1100℃のアニール温度において、約31k/cmの結晶表面温度勾配で約2×10
8/cm
3〜約51k/cmの結晶表面温度勾配で約2.25×10
8/cm
3まで変化する。
図14に描かれているように、300mmインゴットについての予測平均BMD密度は、1000℃のアニール温度において、約31k/cmの結晶表面温度勾配で約2.8×10
10/cm
3〜約51k/cmの結晶表面温度勾配で約2.8×10
10/cm
3よりわずかに小さい値まで変化する。平均BMD密度は、1100℃においてよりも1000℃においての方がより大きなものであったが、インゴットの窒素濃度に基づく平均BMD密度の依存性は、両温度においてほぼ同一であった。
【0046】
引上速度、表面温度勾配および窒素濃度の組合せ
本開示によると、引上速度、表面温度勾配および窒素濃度の組合せは、窒素ドープCZシリコン結晶からスライスされ熱処理されたウエハの(i)結晶断面を横切る結晶の半径方向の位置の関数としての空孔の半径および密度の半径方向の均一性、(ii)結晶断面を横切る結晶の半径方向の位置の関数としてのBMDの直径および密度の半径方向の均一性、および(iii)エッジバンドの特徴に影響を与えることが見出された。更に、引上速度、表面温度勾配および窒素濃度の組合せは、結晶断面を横切る結晶の半径方向の位置の関数としてのBMDの直径および密度の半径方向の実質的な均一性、およびエッジ効果がほぼないことを達成するように選択できることが見出された。本明細書に記載の様々なアルゴリズムおよびそれらの組合せが採用され、(i)BMDのサイズおよび密度の分布における引上速度および温度勾配の影響、(ii)BMDのサイズおよび密度の分布における引上速度および温度勾配と共に酸素濃度および窒素濃度の影響、(iii)集中型モデルに基づくBMDサイズ分布、および(iv)エッジバンドの特徴をモデル化する。
【0047】
更に本開示によると、引上速度、窒素濃度および結晶表面温度勾配の組合せは、シミュレーションおよび実験によって求められ、結晶断面を横切る結晶の半径方向の位置の関数としての空孔の半径および密度の半径方向の実質的な均一性によって特徴付けられた窒素ドープCZシリコン結晶インゴット、および結晶断面を横切る結晶の半径方向の位置の関数としてのBMDの直径および密度の半径方向の実質的な均一性によって特徴付けられたそれらのインゴットからスライスされ熱処理されたウエハであって、エッジ効果が本質的にないこと示すウエハの製造のために適した条件のセットを導いた。特に、本明細書において開示される欠陥シミュレーションモデルを利用すると、所与の直径のシリコン結晶およびウエハにおける空孔の凝集および酸素クラスタ化に対するいくつかの重要なパラメータからの寄与を予測することができる。シミュレーションモデルでは、300mm径ウエハについての一例で、0.78〜1.0mm/分の高い引上速度におけるシリコンウエハ付近の酸素析出バンドの存在が処理された。この発見は、Kulkarni(米国特許第8216362号)によって開示された空孔の側面導入の効果を裏付けている。エピおよびアニールとしてシミュレーションできる様々な熱処理の後の成長したままの結晶からスライスされたウエハの横断面にわたって平均化された平均BMD密度にこれらの変化が及ぼす影響もまた、シミュレーションによって処理される。シミュレーション結果に基づいて、これらの主要パラメータの様々な組合せが、設計され、評価された。シミュレーションモデルを使用して、パラメータの組合せ効果を評価し、結晶成長をテストし、ウエハを評価するための基礎を確立し、シミュレーションモデルを較正し、最終結果を確認した。シミュレーション、較正、およびテストが数回反復され、制御されたサイズおよび密度の結晶インゴット、研磨されたエピウエハにおけるBMDの半径方向の均一性が達成された。シミュレーション結果は、実験的に確認された。シミュレーションのためのBMDサイズは、半径に基づいて見積もられるが、熱処理されたまたはポストエピ熱処理されたウエハにおけるBMDサイズは、直径に基づくものであることに留意すべきである。
【0048】
シミュレーションおよび実験に基づいて、ウエハのBMDと、窒素濃度、結晶引上速度および温度勾配を含むCZインゴットの独立のパラメータのそれぞれとの間の相関が、確立されている。研磨されたウエハ、エピウエハ、アニールされたウエハに満足なBMD性能を達成するために、本明細書で開示される様々なパラメータ間の相互関係は、シミュレーションモデルによって確立され、ウエハにおいて制御されたサイズおよび密度の均一なBMDの半径方向の分布で、実質的なエッジ効果なしに、所望の最適化された酸素析出挙動を達成するためにパラメータの様々な組み合わせの結果の予測を可能にした。
【0049】
シミュレーションおよび実験的評価に基づいて、本開示の目的を達成するのに十分な変数の組合せが確立されている。その範囲は、インゴットの直径に応じて適切に変化し得る。CZシリコン結晶インゴットの製造のための本開示の様々な態様のいずれにおいても、(1)窒素濃度は、約1×10
13atoms/cm
3〜約1×10
15atoms/cm
3であり、(2)温度勾配は、約10°K/cm〜約50°K/cm、約10°K/cm〜約35°K/cm、約25°K/cm〜約50°K/cm、約30°K/cm〜約50°K/cm、または約35°K/cm〜約50°K/cmであり、および(3)引上速度は、約0.4mm/分〜約1.5mm/分、約0.5mm/分〜約1.5mm/分、約0.85mm/分〜約1.5mm/分、約0.7mm/分〜約1.0mm/分、約0.78mm/分〜約1.0mm/分、約0.8mm/分〜約1.0mm/分、約0.85mm/分〜約1.0mm/分、約0.75mm/分〜約1.0mm/分、または約0.9mm/分〜約1.0mm/分である。いくつかの300mm径CZシリコン結晶インゴットの態様においては、約0.85mm/分〜約1.5mm/分の引上速度、約1300℃〜約1415℃の平均結晶表面温度において約10°K/cm〜約35°K/cmの温度勾配、および約1×10
13atoms/cm
3〜約1×10
15atoms/cm
3の窒素濃度から選択された変数の組合せは、本明細書に記載のBMDのサイズおよび密度の分布と、エッジバンドの特徴とを有するインゴットを提供する。いくつかの他のこのような態様においては、引上速度は、約0.85mm/分〜約1.0mm/分または約0.9mm/分〜約1.0mm/分である。300mm以外の直径を有するCZシリコン結晶については、本開示のBMD分布およびエッジバンドのオブジェクトを達成するために必要な引上速度、窒素濃度範囲、および温度勾配範囲の組合せは、本明細書に開示されるシミュレーションによって決定されてもよく、予測される範囲は、300mm径のインゴットに必要な範囲の外になるか、その範囲と重なり合うか、またはその範囲に包含されてもよい。
【0050】
シミュレーション
半径方向に均一に分布したBMDの直径および密度と、本明細書で開示されたエッジバンドの特徴とを有する窒素ドープCZシリコンウエハの製造を可能にする所与のCZシリコン結晶インゴット直径についての引上速度、窒素濃度および温度勾配の変数のセットの予測を可能にするアルゴリズムおよびシミュレーション方法が、ここに開示されている。
【0051】
BMDのサイズおよび分布に対する引上速度および温度勾配の影響をモデル化および予測するために使用されるアルゴリズムは、M.S.KulkarniおよびV.V.Voronkov、"Simplified Two-Dimensional Quantification of the Grown-in Microdefect Distributions in Czochralski Grown Silicon Crystals"、Journal of the Electrochemical Society、152(10)、G781〜G786頁(2005)によって開示されており、本明細書において「Kulkarni2005アルゴリズム」として参照される。開示された集中モデルは、熱処理されたウエハのBMD分布の計算的予測を可能にする。要約すると、微小欠陥は、球状のクラスタとして近似することができる。CZ結晶の要素では、実際のクラスタ集団の平均半径に等しい、同じ半径の同一クラスタの同等の集団は、実際のクラスタ集団を表す。平均クラスタ半径をクラスタの二乗半径の平均の平方根で置き換えることによって、欠陥動力学を記述する方程式は、計算上簡略化できる。微小欠陥分布は、点欠陥濃度(C)、クラスタ密度(N)、総クラスタ集団の表面積に比例する補助変数(U)を記述する開示された方程式のセットによって定量化される。クラスタ密度Nは、古典的な核形成理論によって予測され、Uは、開示されたクラスタ成長方程式を使用して記述され、およびCは、点欠陥の成長中のクラスタによる移送、再結合、および消費を含む開示された方程式によって記述される。このモデルは、微小欠陥の密度およびサイズの最終的な(成長した)空間分布を捕捉するのに十分正確であり、モデルの予測と厳密なモデルの予測と実験的な観測との比較によって検証された。
【0052】
BMDのサイズおよび分布に対する窒素濃度、引上速度および温度勾配の影響をモデル化および予測するために使用されるアルゴリズムは、M.S.Kulkarni、"Defect dynamics in the presence of nitrogen in growing Czochralski silicon crystals"、Journal of Crystal Growth 310、324〜335頁(2008)によって開示されており、本明細書において「Kulkarni2008アルゴリズム」として参照される。開示モデルは、全ての凝集体を球状のクラスタとして近似する。Kulkarniによって開示されているように、古典的な核形成理論は、妥当な精度ですべてのクラスタの形成を捕捉する。形成されたクラスタは、拡散制限動力学によって成長する。空孔クラスタおよび自己格子間クラスタは、空孔および自己格子間原子それぞれの均質な核形成によって形成される。酸素クラスタは、より高い比体積のために、空孔による促進によって形成される。酸素クラスタの成長は、空孔が豊富である場合は、酸素の拡散によって、および空孔が乏しい場合は、空孔の拡散によって、制限される。成長中の結晶中の所与の場所におけるクラスタの集団は、同一のクラスタの同等の集団によって近似される。このモデルは、CZ結晶成長における異なる微小欠陥の形成を導く条件を定量化する。変化する引上速度および窒素濃度の影響も、捕捉される。このモデルは、定常状態および非定常状態の両方の下で成長するCZ結晶の微小欠陥分布を定量化する。開示されたモデル予測は、低濃度から適度に高濃度の窒素の存在における報告された微小欠陥分布とよく一致する。しかしながら、非常に高濃度の窒素(10
18cm
−3のオーダまたはそれ以上)の存在下では、モデル予測はそれほど正確ではない。
【0053】
BMDのサイズおよび分布に対する酸素濃度、引上速度および温度勾配の影響をモデル化および予測するために使用されるアルゴリズムは、M.S.Kulkarni、"Defect dynamics in the presence of oxygen in growing Czochralski silicon crystals"、Journal of Crystal Growth 303、438〜448頁(2007)によって開示されており、本明細書において「Kulkarni2007アルゴリズム」として参照される。成長中のCZ結晶中の微小欠陥の分布を定量化する開示モデルは、微小欠陥の形成および成長と連動してシリコンおよび酸素の真性点欠陥を含む反応を処理することによって達成できる。酸素の存在は、主に、2つの結合空孔種、vOおよびvO
2と、酸素の凝集体とを生成する。空孔の凝集体は、球状のvクラスタとしてモデル化され、自己格子間原子の凝集体は、球状のiクラスタとしてモデル化され、酸素の凝集体、主に二酸化シリコンは、球状のOクラスタとしてモデル化されている。この処理の複雑さは、KulkarniおよびVoronkovによって開発された集中モデル("Simplified Two-Dimensional Quantification of the Grown-in Microdefect Distributions in Czochralski Grown Silicon Crystals"、Journal of the Electrochemical Society、152(10)、G781〜G786頁(2005))の適用によって低減され、ここで、この集中モデルは、CZ結晶中の任意の所与の場所における異なるサイズのクラスタの集団を、同一クラスタの同等な集団として近似するものである。開示モデルの重要な要素は、Oクラスタの空孔補助形成である。効果的には、Oクラスタの比体積がシリコンの比体積よりも大きいので、CZ成長における全ての大きなOクラスタは、空孔を吸収することによって形成される。成長中のOクラスタは、自由空孔(v)のみを直接消費するが、自由空孔濃度が減少するにつれて、vO種およびvO
2種の解離によってより多くの自由空孔が生成される。したがって、自由空孔と、vO種およびvO
2種に結合した空孔の両方が消費される。
【0054】
開示モデルは、定常状態および非定常状態の下で成長するCZ結晶における微小欠陥分布を定量化する。結晶中の所与の領域に形成される微小欠陥のタイプは、界面から近距離に確立された真性点欠陥の濃度並びにvO種およびvO
2種の濃度によって決まると考えられる。高い自由空孔濃度の領域では、ボイドまたはvクラスタは、高温で空孔の核形成によって形成される。vクラスタの成長は、自由空孔および結合空孔の両方を消費する。適度な自由空孔濃度の領域では、vクラスタ形成は、高温において抑制され、自由空孔および結合空孔は、Oクラスタの形成および成長によって消費される。空孔と酸素との間の結合は、vクラスタおよびOクラスタの存在下であっても、低温において、非常に低濃度で、結合形態の空孔の生存を可能にする。自己格子間原子が優勢の領域では、iクラスタが形成される。
【0055】
界面付近の真性点欠陥の濃度場は、主にフレンケル反応と本質的な点欠陥移送との間の相互作用によって確立されると考えられる。酸素は、確定した結晶成長条件では、vO種およびvO
2種の濃度を増加させることによって、自己格子間原子による再結合に利用可能な有効空孔濃度を増加させ、優勢な真性点欠陥種としての空孔の生存につながる条件をわずかに助ける。大きなvクラスタおよびiクラスタのない結晶が、酸素濃度の増加とともに成長することができる引上速度範囲の増加もまた、モデルによって予測および説明される。この挙動は、確定した結晶成長条件では、酸素濃度の増加に伴う結合空孔の濃度の増加によって引き起こされる。文献で報告されているCZ結晶における定性的な微小欠陥分布は、発展したモデルによって定量化することができる。
【0056】
集中モデルに基づいてBMDサイズ分布をモデル化し予測するために使用されるアルゴリズムは、G.SamantaおよびM.S.Kulkarni、"Efficient computation of population distribution of microdefects at any location in growing Czochralski silicon single crystals"、Journal of Crystal Growth,393,49〜53頁(2014)、によって開示されており、本明細書において「Samantaアルゴリズム」として参照される。開示モデルは、M.S.KulkarniおよびV.V.Voronkov("Simplified Two-Dimensional Quantification of the Grown-in Microdefect Distributions in Czochralski Grown Silicon Crystals"、Journal of the Electrochemical Society、152(10)、G781〜G786頁(2005))に記載されたモデルに基づいており、クラスタ形成および経路(移動)エネルギーを考慮に入れずに、結晶中の任意の位置における微小欠陥集団のサイズ分布の計算を可能にする。熱応力およびドーパント濃度の依存性も考慮されていない。真性点欠陥平衡濃度に対するドーパント誘起歪み効果は、従来のドーピングレベルでは無視できるほど小さい。フェルミレベルにおけるドーパント誘起シフトによる点欠陥濃度の平衡値の変化は、非常に高いドーピングレベル(10
18cm
−3のオーダまたはそれ以上)でのみ有意である。熱応力が平衡濃度値に与える影響も小さい。集中モデルの計算上の利点は、それを介して発達した点欠陥濃度場が、結晶中の選択された位置における微小欠陥集団のサイズ分布を解くためにも使用される場合、損なわれない。集中モデルから予測されたサイズ分布は、定常条件および非定常条件の下での厳しいモデルから予測されたものと合理的によく一致する。
【0057】
本開示によると、結晶断面を横切る結晶の半径方向の位置の関数としての空孔の半径および密度の半径方向の実質的な均一性によって、および結晶断面を横切る結晶の半径方向の位置の関数としてのBMDの直径および密度の半径方向の実質的な均一性によって、およびエッジ効果が実質的にないことによって特徴付けられる単結晶CZシリコンの製造を可能にする引上速度、温度勾配および窒素濃度の値を導出するための上述のアルゴリズムに基づく方法が開発されている。1つのそのような具体例が、
図23のフローチャートに描かれている。要約すると、Kulkarni2005、Kulkarni2007、およびKulkarni2008アルゴリズムは、Samantaアルゴリズムと組み合わせて使用され、酸素析出物の密度およびサイズの半径方向のプロファイルをシミュレーションし、単結晶CZシリコンインゴットおよびウエハのエッジバンドの特徴を評価する。引上速度、温度勾配および窒素濃度の変数の所与のセットについて、(i)インゴットまたはウエハの中心からインゴットまたはウエハのエッジまで広がっている領域における半径方向のバルク微小欠陥サイズの20%を超える増加、(ii)インゴットまたはウエハの中心からインゴットまたはウエハのエッジまで広がっている領域における半径方向のバルク微小欠陥密度の200%を超える増加、(iii)インゴットまたはウエハのエッジから約10mmの点からインゴットまたはウエハのエッジまで広がっている領域における半径方向のバルク微小欠陥サイズの15%を超える増加、(iv)インゴットまたはウエハのエッジから約10mmの点からインゴットまたはウエハのエッジまで広がっている領域における半径方向のバルク微小欠陥密度の100%を超える増加、および(v)インゴットまたはウエハのエッジから約1000μmの点からインゴットまたはウエハのエッジまで広がっている領域におけるエッジバンドであって、約30nm未満のまたは約100nmより大きな平均半径および約1×10
8atoms/cm
3〜約1×10
10atoms/cm
3の酸素析出物密度を有する酸素析出物を含むエッジバンドのためシミュレーションによって失敗すると予測された場合、シリコン結晶インゴットまたはウエハは、条件を満たさないと判断される。変数のセットが条件を満たさないインゴットまたはウエハをもたらすと予測される場合、後続のシミュレーション反復が新しい変数のセットに基づいて行われる。シミュレーションの反復は、所望のBMDのサイズおよび分布を提供すると予測される変数のセットが導出されるまで継続される。
【0058】
本開示のいくつかの更なる態様では、BMDサイズは、シミュレーションによって予測されてもよい。まず、酸素析出物のクラスタサイズ分布は、軸方向位置の結晶の断面を横切る多数の半径方向の位置で計算される。次に、古典的な核形成理論(CNT)に基づいて臨界サイズ(R
cr)が次のように決定される。
【0059】
式(1)では、R
crは、ナノメートル(nm)であり、Tは、ケルビン度でアニール温度を示し、C
Oは、結晶中の酸素レベルを示し、C
Oeは、温度Tにおけるシリコン結晶中の酸素濃度の平衡値を示す。R
crより大きいサイズを有する酸素析出物の密度は、あらゆる場所で積分され、次に、BMD密度を見積もるためにそれらの全ての場所にわたって数平均される。
【0060】
本開示は、更に、アニール中の、ウエハの深さ方向を横切る酸素析出物密度をシミュレーションするための方法に関する。シミュレーションのための数学モデルは、VoronkovとFalsterの核形成モデル("Nucleation of oxide precipitates in vacancy-containing silicon"、Journal of Applied Physics、Volume 51、5802〜5810頁(2002))に基づいており、以下の式が、点欠陥バランス、空孔と酸素との相互作用、および析出物の成長を支配すると考えられる。その式は、次の通りである。
式(2)は、成長中の酸素析出物に起因する空孔の結合状態および自由状態、点欠陥の拡散フラックスおよび自己格子間原子の放出フラックスを説明する点欠陥のバランスを記述している。自由空孔の消費フラックスは、拡散制限値よりも小さいと評価されるため、無視できる。
式(3)は、自己格子間原子の放出フラックスの定量的評価を与える。
式(4)は、核形成された酸化析出物の拡散制限された成長を記述している。
式(5)は、結合および自由空孔と自己格子間原子との間の速い反応の合理的仮定の結果である。
式(6)は、自由空孔が酸素クラスタによって迅速に捕捉されるという仮定から生じる。
【0061】
8×10
17atoms/cm
3の酸素および6×10
12個/cm
3の初期総空孔濃度(C
vt)を含む600ミクロンの厚さのウエハの800℃、1時間のアニールのシミュレーションが行われた。選択されたC
vtの値は、Pt拡散技術を用いて測定された空孔優勢ウエハの典型的な値であると考えられる。
図19は、アニール中の様々な時刻における、ウエハの深さ方向にわたる予測酸素析出物密度のグラフである。
図20は、アニール中の様々な時刻における、ウエハの深さ方向にわたる予測されたC
vtのグラフである。
図19および
図20は、表面上に平衡状態が存在するためにウエハ表面に近接して起こる変化を示している。総空孔濃度は、バルクからウエハ表面に向かって外向きに拡散し、析出物密度もバルクから離れて低下する。ウエハ表面から約30〜40ミクロンの深さでは、析出物密度はバルクの値に比べて低いままである。
【0062】
本開示のシリコンウエハは、様々な用途に使用されてもよい。例えば、鏡面仕上げに研磨された裸のシリコン表面を有するこのようなウエハ(すなわち、研磨されたウエハ)は、集積回路製造プロセスにおいて直接使用されてもよい。代わりに、ウエハは、(層移動または酸素注入によって)エピタキシャル堆積またはシリコン・オン・インシュレータ(SOI)のための基板として使用されてもよい。必要に応じて、例えば一般に約2マイクロメートルまでのウエハの表面近傍領域は、当該技術分野において慣用のエッチング液および技術を用いて化学エッチングによって十分にまたは完全に除去されてもよい。必要に応じて、ウエハは、酸素析出の前または後に、化学的にまたは化学機械的に研磨され、鏡面仕上げされてもよい。エピタキシャル層は、ウエハ全体に堆積されてもよいし、あるいは、ウエハの一部分のみに堆積されてもよい。好適には、エピタキシャル層は、ウエハの表面上に堆積される。より好適には、ウエハの表面全体に堆積される。ウエハの他の部分に堆積されるエピタキシャル層を有することが好ましいかどうかは、ウエハの意図される用途次第である。ほとんどの用途では、ウエハの他の部分上のエピタキシャル層の存在または非存在は重要ではない。
【0063】
シリコン・オン・インシュレータ構造は、一般的に、デバイス層と、ハンドルウエハまたは支持層と、支持層とデバイス層との間の絶縁膜または絶縁層(通常は酸化物層)とを含む。一般的に、デバイス層は、約0.5〜20マイクロメートルの厚さである。シリコン・オン・インシュレータ構造は、SIMOXまたはBESOIなどの当技術分野で知られている様々な技術を用いて調製されてもよい。SOI構造は、例えば、ウエハに当該技術分野で標準的なイオン注入プロセスを行うことによって、SIMOXプロセスによって製造されてもよい。(例えば、米国特許第5436175号およびPlasma Immersion Ion Implantation for Semiconductor Processing、Materials Chemistry and Physics 46(1996) 132-139頁参照。この両者は参照により本明細書に組み込まれる。)SOI構造は、2枚のウエハを接合し、接合されたウエハのうち1枚のウエハの一部を除去することによって製造されてもよい。例えば、SOI構造は、ウエハが他のウエハに接合されるBESOIプロセスによって製造することができ、次に、デバイス層を得るために、公知のウエハ薄化技術を用いて、一方のウエハの相当な部分がエッチング除去される。(米国特許第5024723号および第5189500号参照。これらは参照により本明細書に組み込まれる。)
【0064】
好適には、エピタキシャル堆積は、化学気相堆積によって行われる。一般に、化学気相堆積は、エピタキシャル堆積反応炉、例えばApplied Materials社製のCentura内でシリコンを含む雰囲気にウエハの表面をさらすことを含む。好適には、ウエハの表面は、シリコン(例えば、SiCl
4、SiHCl
3、SiH
2Cl
2、SiH
3Cl、またはSiH
4)を含む揮発性気体を含む雰囲気にさらされる。好適には、雰囲気は、キャリアガス(好適にはH
2)をも含む。例えば、エピタキシャル堆積中のシリコンのソースは、SiH
2Cl
2またはSiH
4であってもよい。SiH
2Cl
2が使用される場合、好適には、堆積中の化学反応炉内の真空圧力は、約500〜約760Torrである。一方、SiH
4が使用される場合、好適には、化学反応炉内の圧力は、約100Torrである。最も好適には、堆積中のシリコンのソースは、SiHCl
3である。これは他の情報源よりもはるかに安価である傾向がある。さらに、SiHCl
3を使用するエピタキシャル堆積は、大気圧で行われてもよい。これは、真空ポンプが必要でなく、化学反応炉チャンバが崩壊を防止するように頑丈である必要がないので、有利である。さらに、安全危険性より少なくなり、化学反応炉チャンバ内への空気または他のガスの漏出の可能性が少なくなる。
【0065】
エピタキシャル堆積の間、ウエハ表面の温度は、好適には、シリコンを含む雰囲気が表面上に多結晶シリコンを堆積させるのを防ぐために十分な温度まで上げられ、その温度で維持される。一般的に、この期間中の表面の温度は、好適には、少なくとも約900℃である。より好適には、表面の温度は、約1050〜約1150℃の範囲で維持される。最も好適には、表面の温度は、シリコン酸化物除去温度に維持される。好適には、エピタキシャル堆積の成長速度は、約0.5〜約7.0μm/分である。例えば、約1150℃の温度および約1atmまでの絶対圧力において、約2.5モル%のSiHCl
3および約97.5モル%のH
2を本質的に含む雰囲気を使用することによって、約3.5〜約4.0μm/分の速度が達成されてもよい。
【0066】
いくつかの用途では、ウエハは、電気特性を付与するエピタキシャル層を含む。いくつかの具体例では、エピタキシャル層は、リンで軽くドープされる。したがって、エピタキシャル堆積のための雰囲気は、例えば、ホスフィン、PH
3などの、揮発性化合物として存在するリンを含む。いくつかの具体例では、エピタキシャル層は、ホウ素を含むことができる。このような層は、例えば、堆積中に雰囲気中にB
2H
6を含むことによって製造されてもよい。エピタキシャル堆積は、典型的には、エピタキシャル堆積中に形成された副産物を除去するために、エピタキシャル堆積後にポストエピ洗浄ステップを必要とする。このステップは、そのような副生成物が空気と反応する場合に生じる時間依存のヘイズを防止するために使用される。さらに、多くのポストエピ洗浄技術は、エピタキシャル表面上に、表面を不動態化(すなわち保護)するのに役立つシリコン酸化物層を形成するのに役立つ。本開示のエピタキシャルウエハは、当該技術分野で知られている方法によって洗浄されてもよい。
【0067】
ウエハ表面は、酸化物層または窒化物層を含んでもよい。例えば、室温で空気中にさらされた場合、シリコン酸化物層がシリコン表面上に形成し、一般的に約10〜15Åの厚さを有する。好適には、窒化物層、酸化物層、または窒化物/酸化物層は、エピタキシャル層がウエハの表面状に堆積される前に、ウエハの表面から除去される。シリコン酸化物または窒化物/酸化物層の除去は、酸化剤のない雰囲気中で、酸化物または窒化物/酸化物層が表面から除去されるまでウエハの表面を熱することによって行われてもよい。例えば、好適には、ウエハの表面は、少なくとも約1100℃の温度に、より好適には少なくとも約1150℃に、加熱される。好適には、この加熱は、H
2または希ガス(He、Ne、またはArなど)を含む雰囲気にウエハの表面をさらしながら行われる。より好適には、雰囲気は、H
2を含む。最も好適には、他の雰囲気の使用がウエハの表面にエッチピットを形成させる傾向があるので、雰囲気は、本質的にH
2からなる。一般的に、ウエハ表面を加熱してシリコン酸化物または窒化物/酸化物層を除去し、次に酸化物または窒化物/酸化物が除去されてから30秒未満に(より好適には約10秒以内に)、シリコン堆積を開始することが好ましい。一般的に、これは、ウエハ表面を少なくとも約1100℃(より好適には少なくとも約1150℃)の温度に加熱すること、および次にウエハ表面がその温度に達してから30秒未満に(より好適には約10秒以内に)シリコン堆積を開始することによって達成されてもよい。シリコン酸化物または窒化物/酸化物層を除去した後最大約10秒までシリコン堆積の開始を待つことにより、ウエハの温度が安定して均一になることが可能になる。
【0068】
代わりに、酸化物または窒化物/酸化物層は、化学的にストリッピングされてもよい。シリコン表面が窒化物/酸化物層を有する具体例では、化学的ストリッピングが窒化物/酸化物層を除去するための好適な手段である。化学的ストリッピングは、リン酸、フッ化水素酸、または公知の他の酸を用いて当該分野で公知の手段によって行われてもよい。別の代替案では、酸化物または窒化物/酸化物層は、例えば、Applied Materials社製のeMAXまたは当技術分野において公知の他の方法を使用するプラズマエッチングによってエッチングされてもよい。表面層が主にシリコン窒化物層である具体例では、窒化物層は、研磨、化学エッチング、または(Applied Materials社製のeMAXまたは当技術分野において公知の他のエッチング方法などの)プラズマエッチングによって除去されてもよい。
【実施例1】
【0069】
シミュレーションが行われ、窒素ドープ単結晶シリコンインゴットからスライスされた300mm径のウエハを製造することを可能にする変数のセットが導かれた。ここで、ウエハは、BMDのサイズおよび分布の半径方向の実質的な均一性によって特徴付けられる。シミュレーションは、表1に開示された変数の組合せに対して、
図23に描かれた方法に基づくものであった。ここで、「組合せ」は組合せを指し、「従来技術」は、比較の従来技術のインゴットである。表1の窒素濃度は、シリコン融液中の濃度を指し、形成されたシリコン結晶中の窒素濃度は、約1×10
13atoms/cm
3〜約1×10
15atoms/cm
3の範囲にあると予測される。
【0070】
【表1】
【0071】
ウエハ断面を中心軸からエッジまで横切る様々な位置における成長したままの酸素析出物の半径および成長したままのボイドの半径が、本明細書において開示されたシミュレーション方法を使用して予測された。
図15は、ウエハ断面を横切る半径方向位置の関数としての成長したままの酸素析出物の予測半径を示すグラフであり、
図16は、ウエハ断面を横切る半径方向位置の関数としての成長したままのボイドの予測半径を示すグラフである。下の表2は、(i)ウエハの中心からウエハのエッジまでおよび(ii)ウエハのエッジから10mmの点からウエハのエッジまでの予測BMDサイズの増加率についての
図15のシミュレーション結果を表形式で示している。
【0072】
【表2】
【0073】
1100℃および1000℃における高温アニールに起因するウエハ中のBMD密度が、シミュレーションに基づいて予測された。シミュレーション結果は、
図17および
図18に描かれ、ここで組合せ0は、従来技術の組合せを指す。
図17は、1100℃で行われた一定高温アニールについての、結晶表面温度勾配の関数としてのウエハの予測平均BMD密度を示すグラフであり、
図18は、1000℃で行われた一定高温アニールについての、結晶表面温度勾配の関数としてのウエハの予測平均BMD密度を示すグラフである。
【実施例2】
【0074】
300mm径単結晶CZシリコンインゴット(均一サンプル1、2および3と示されている)は、それぞれ、0.9mm/分の引上速度、約35°K/cm〜約46°K/cmの温度勾配、および約1×10
14atoms/cm
3〜約1×10
15atoms/cm
3のインゴット窒素濃度で製造された。比較の300mm径単結晶CZシリコンインゴット(不均一サンプル1および2と示されている)は、それぞれ、0.78mm/分の引上速度、約51°K/cmの温度勾配、および約3×10
13atoms/cm
3〜約2×10
14atoms/cm
3のインゴット窒素濃度で製造された。ウエハは、インゴットからスライスされ、780℃で3時間、そして1000°で16時間のウエハのアニールによって、酸素析出熱処理された。
【0075】
図1に描かれているように、ウエハの中心からウエハのエッジまでの平均BMDサイズ(直径)の増加は、不均一の従来技術のサンプル1および2について、それぞれ約47%および約37%であった。エッジから10mmの点からウエハのエッジまでの平均BMDサイズの増加は、不均一の従来技術のサンプル1および2について、それぞれ半径10mm内で約28%および約29%であった。
図2に描かれているように、ウエハの中心からウエハのエッジまでの平均BMD密度の増加は、不均一の従来技術のサンプル1および2について、それぞれ約660%および約285%であった。エッジから10mmの点からウエハのエッジまでの平均BMD密度の増加は、不均一の従来技術のサンプル1および2について、それぞれ半径10mm内でそれぞれ約357%および約308%であった。
【0076】
図21に描かれているように、ウエハの中心からウエハのエッジまでの平均BMDサイズの減少は、本開示の不均一サンプル1、2および3について、それぞれ約6%、7%および4%であった。ウエハの中心からウエハのエッジまでの平均BMDサイズの減少は、本開示の不均一サンプル1、2および3について、それぞれ約6%、3%および1%であった。
図22に描かれているように、ウエハの中心からウエハのエッジまでの平均BMD密度の減少は、本開示の不均一サンプル1、2および3について、それぞれ約23%、37%、4%であった。
図22に描かれているように、ウエハの中心からウエハのエッジまでの平均BMD密度の減少は、本開示の不均一サンプル1、2および3について、それぞれ約6%、12%、16%であった。密度とサイズの両方の減少のため、これらの均一なサンプルに検出可能なエッジバンドは存在しなかった。
【0077】
実験の結果は、いくつかの組合せのシミュレーションを通して、従来のプロセスのエッジ領域における酸素析出物の半径が、有意なボイドサイズの変化なしに著しく減少可能であることを実証している。1100℃でアニールが行われる場合、従来技術でゲッタリングに十分であることが示されている1×10
8/cm
3を超える密度を維持しながら、平均BMD密度を減少させることもできる。
【0078】
この記載された説明は、実施例を使用して、ベストモードを含む本発明を開示し、当業者が製造、あらゆるデバイスまたはシステムの使用、任意の組み込まれた方法の実施を含む本発明を実施することを可能にする。本発明の特許可能な範囲は、特許請求の範囲によって規定され、当業者に想到する他の例を含む。そのような他の例は、特許請求の範囲の文字通りの言葉と異ならない構造要素を有する場合、または特許請求の範囲の文字通りの言葉とは実質的に相違するが等価の構造要素を含む場合、特許請求の範囲内にあることが意図されている。
【0079】
本発明またはその好適な具体例の要素を導入する場合に、「ある(a)」、「ある(an)」、「その(the)」、および「上記(said)」の冠詞は、1またはそれ以上の要素があることを意味することを意図する。「含む(comprising)」、「含む(including)」、および「有する(having)」の用語は、包括的であることを意図し、列挙された要素以外の追加の要素も存在することを意味する。