(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記プロセスガスを構成する窒素を含むガスが、アルゴンガスと窒素ガスから構成され、前記窒素を含むガスに占める前記窒素ガスの流量比が50(%)以上である請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の内部応力制御膜の形成方法。
前記プロセスガスを構成する窒素を含むガスが、アルゴンガスと窒素ガスから構成され、前記窒素を含むガスに占める前記窒素ガスの流量比が70(%)以上である請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の内部応力制御膜の形成方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
具体的な事例で説明すると、半導体装置の製造工程においては、所定の配線パターンを得るために被処理体である層間絶縁膜をドライエッチングする際に、エッチングされる層間絶縁膜の範囲を制限するハードマスクが用いられる。ハードマスクとして、例えば、窒化チタン(TiN)膜が好適に用いられるが、エッチングに対する耐性が必要であることから、高い密度を備えることが求められる。また、窒化チタン膜の内部応力が高い場合は、配線パターンが変形を生じる虞もあるため、内部応力は低い(絶対値が小さい)ことが望ましいとされていた。
【0005】
近年、デバイス構造の多様化により、ハードマスクを作製する以前に形成されている下地膜が、圧縮応力や引張応力といった様々な方向に生じる内部応力を持っている場合がある。このような場合は、ハードマスクを含んだ膜全体(下地膜とハードマスクの積層体)に働くストレスを低減する必要がある。例えば、ハードマスクを形成する以前に形成される下地膜が高い圧縮応力を持っている場合等は、引張側に高い応力(引張応力)を有する窒化チタン膜からなるハードマスクを形成し、膜全体としてストレスのバランスをとることが大切である。そこで、窒化チタン膜自体のストレスに関し、ハードマスクを形成する以前に生じているストレスを相殺するために、高い圧縮応力から高い引張応力まで(数値で言うと、−2GPaから+2GPa程度)、ストレスを制御する技術の開発が期待されていた。
【0006】
しかしながら、通常、高密度の窒化チタンを成膜した場合、窒化チタン膜は高い圧縮側のストレス(圧縮応力)を持っている。この場合、単純な方法で、引張側のストレス(引張応力)を有するように窒化チタン膜を形成すると、
図10に示すように膜密度が低下することが公知である。窒化チタン膜の密度を高い状態に保ったまま、圧縮側のストレスを小さくする、または、引張側のストレスを圧縮側のストレスに変化させる、さらには、圧縮側のストレスを高い引張側のストレスにするためには、例えば、成膜後の膜に熱を加える方法、または、窒化チタン膜の形成時に窒化チタン粒子の入射エネルギーを抑制するための複雑なシステムを用いる方法等、量産には不向きな手法を採る必要があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、窒化チタン膜の構造を解析し、発生する膜ストレスについて検討した。
図12A〜
図12Dは、窒化チタン膜の構造と膜ストレスとの関係を示す図である。
図12Aは膜の断面を示す模式図であり、基板(被処理体)に対して膜(窒化チタン膜)が縮むように働くTensile Stressが発生している状態を表している。
図12Bは
図12Aの拡大図であり、窒化チタン膜が柱状構造を有し、隣接する柱状構造の間に隙間が存在している様子を表している。
図12Cは窒化チタン膜の断面を示すSTEM写真であり、この写真から
図12Dに示す状態が確認された。
そこで、本発明者らは、
図12Dに示すように、隣接する柱状構造を密着させて、隙間を低減することができれば、高い膜密度を保ちつつ、圧縮側から引張側まで所望の膜ストレスを有する薄膜を作り分けることが可能ではないかと考察し、本発明を開発するに至った。
【0008】
本発明は、このような従来の実情に鑑みて考案されたものであり、薄膜を成膜する時の作製条件を選択するだけで、Tensile側に大きなStressと、高い密度を有することが可能な、内部応力制御膜の形成方法を提供することを目的とする。
【0010】
本発明の第
1態様に係る内部応力制御膜の形成方法は、スパッタリング法により被処理体の一面に内部応力制御膜を形成する方法であって、前記被処理体に印加するバイアスBSが0より大きく、前記バイアスBSの電力密度がターゲットに印加するバイアスBTの電力密度の1/150以下の範囲であり、かつ、前記内部応力制御膜を成膜する際のプロセスガスの圧力が、閾値5(Pa)より高い圧力領域から選択される。
【0011】
本発明の第
2態様に係る内部応力制御膜の形成方法は、スパッタリング法により被処理体の一面に内部応力制御膜を形成する方法であって、前記内部応力制御膜を成膜する際のプロセスガスの圧力が、閾値5(Pa)より高い圧力領域から選択され、前記内部応力制御膜が窒化チタンからなり、チタンからなるターゲットと、前記プロセスガスとして窒素を含むガスを用い、前記プロセスガスの圧力Pを横軸、前記被処理体に印加するバイアスBSを前記ターゲットに印加するバイアスBTにより除した数値である比率R1(=BS/BT)を縦軸としたグラフG1において、3つのプロット、a1(10.0、0.0016)、a2(17.0、0.00059)、およびa3(25.0、0.0001)を通過する曲線αより、右上の領域に含まれるように、前記圧力Pと前記比率R1の組み合わせを選択する。
本発明の第
2態様に係る内部応力制御膜の形成方法において、前記グラフG1において、3つのプロット、b1(10.0、0.00241)、b2(17.0、0.0012)、およびb3(25.0、0.0004)を通過する曲線βより、右上の領域に含まれるように、前記圧力Pと前記比率R1の組み合わせを選択する。
【0012】
本発明の第
3態様に係る内部応力制御膜の形成方法は、スパッタリング法により被処理体の一面に内部応力制御膜を形成する方法であって、前記内部応力制御膜を成膜する際のプロセスガスの圧力が、閾値5(Pa)より高い圧力領域から選択され、前記内部応力制御膜が窒化チタンからなり、チタンからなるターゲットと、前記プロセスガスとして窒素を含むガスを用い、前記プロセスガスの圧力Pを横軸、前記内部応力制御膜の成膜速度10nm/minに対する前記被処理体に印加するバイアスBSの数値である比率R2を縦軸としたグラフG2において、3つのプロット、c1(10.0、0.0032)、c2(17.0、0.0018)、およびc3(25.0、0.0008)を通過する曲線γより、右上の領域に含まれるように、前記圧力Pと前記比率R2の組み合わせを選択する。
本発明の第
3態様に係る内部応力制御膜の形成方法において、前記グラフG2において、3つのプロット、d1(10.0、0.008)、d2(17.0、0.0034)、およびd3(25.0、0.002)を通過する曲線δより、右上の領域に含まれるように、前記圧力Pと前記比率R2の組み合わせを選択する。
【0013】
本発明の第1態様〜第
3態様に係る内部応力制御膜の形成方法において、前記プロセスガスを構成する窒素を含むガスが、アルゴンガスと窒素ガスから構成され、前記窒素を含むガスに占める前記窒素ガスの流量比が50(%)以上である。
本発明の第1態様〜第
3態様に係る内部応力制御膜の形成方法において、前記プロセスガスを構成する窒素を含むガスが、アルゴンガスと窒素ガスから構成され、前記窒素を含むガスに占める前記窒素ガスの流量比が70(%)以上である。
【発明の効果】
【0014】
本発明の上記態様に係る内部応力制御膜の形成方法では、スパッタリング法により被処理体の一面に内部応力制御膜を形成する際に、前記被処理体に微弱なバイアスBSを印加する。バイアスBSを印加した状態の被処理体に対して、前記内部応力制御膜を成膜する。その際に、プロセスガスの圧力(薄膜を成膜する時の圧力、放電圧力)を閾値5(Pa)以上として、微弱なBiasを印加することにより、強いTensile Stress膜が得られる。さらに、印加するBiasの値を増やすことにより、高い膜密度を保ったまま、StressをTensile側からCompressive側へ変化させることができる。
また、プロセスガスの圧力Pを横軸、前記被処理体に印加するバイアスBSを前記ターゲットに印加するバイアスBTにより除した数値である比率R1(=BS/BT)を縦軸としたグラフG1、あるいは、前記プロセスガスの圧力Pを横軸、前記内部応力制御膜の成膜速度10nm/minに対する前記被処理体に印加するバイアスBSの数値である比率R2を縦軸としたグラフG2において、特定の指標を満たすように窒化チタン膜を製造するならば、膜密度が4.6(g/cm
3)以上、あるいは5.0(g/cm
3)以上であって、膜ストレスとして引張(Tensile)側の膜ストレスを有する窒化チタン膜を、安定して製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】内部応力制御膜の製造方法に用いる製造装置の一例を示す概略構成図である。
【
図2】薄膜を成膜する時の圧力と膜ストレスとの関係を示すグラフである。
【
図3A】被処理体に印加するバイアスと膜ストレスとの関係を示すグラフである。
【
図3B】被処理体の断面を示す図であって、STEM(走査型透過電子顕微鏡(Scanning Transmission Electron Microscope; STEM))を用いた撮影によって得られた写真である。
【
図3C】被処理体の断面を示す図であって、STEMを用いた撮影によって得られた写真である。
【
図3D】被処理体の断面を示す図であって、STEMを用いた撮影によって得られた写真である。
【
図3E】被処理体の断面を示す図であって、STEMを用いた撮影によって得られた写真である。
【
図4A】被処理体に印加するバイアスと膜密度との関係を示すグラフである。
【
図4B】被処理体の断面を示す図であって、STEM(走査型透過電子顕微鏡(Scanning Transmission Electron Microscope; STEM))を用いた撮影によって得られた写真である。
【
図4C】被処理体の断面を示す図であって、STEMを用いた撮影によって得られた写真である。
【
図4D】被処理体の断面を示す図であって、STEMを用いた撮影によって得られた写真である。
【
図4E】被処理体の断面を示す図であって、STEMを用いた撮影によって得られた写真である。
【
図5】表4に基づき、Pw−Ratio(sub./target)と膜ストレスとの関係を示すグラフである。
【
図6】表7に基づき、Pw−Ratio(sub./target)と膜ストレスとの関係を示すグラフである。
【
図7】表2に基づき、Pw−Ratio(sub./target)と膜密度との関係を示すグラフである。
【
図8】薄膜を成膜する時の圧力とPw−Ratio(sub./target)との関係を示すグラフ(グラフG1)である。
【
図9】薄膜を成膜する時の圧力とRatio(sub./Rate)との関係を示すグラフ(グラフG2)である。
【
図10】Bias Powerと膜ストレスとの関係を示すグラフである。
【
図11】従来の窒化チタン膜における膜ストレスと膜密度との関係を示すグラフである。
【
図12A】内部応力制御膜(窒化チタン膜)の構造と膜ストレスとの関係を示す図であって、内部応力制御膜の断面を示すとともに、基板(被処理体)に対して膜(窒化チタン膜)が縮むように働くTensile Stressが発生している状態を表す図である。
【
図12B】内部応力制御膜(窒化チタン膜)の構造と膜ストレスとの関係を示す図であって、
図12Aの拡大図である。
【
図12C】内部応力制御膜(窒化チタン膜)の構造と膜ストレスとの関係を示す図であって、窒化チタン膜の断面を示すSTEM写真である。
【
図12D】内部応力制御膜(窒化チタン膜)の構造と膜ストレスとの関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下では、図面を参照して、本発明に係る内部応力制御膜の製造方法の一実施形態について説明する。本実施形態は、被処理体を構成する基板Wがシリコンウェハであり、この基板Wの上に内部応力制御膜として窒化チタンを成膜する場合について詳述する。
【0017】
図1は、本発明の一実施形態に係る内部応力制御膜の製造方法を実施することができるスパッタリング装置SMの一例を示す概略構成図である。スパッタリング装置SMは、マグネトロン方式のスパッタリング装置であり、真空処理室1aを画成する真空チャンバ1を備える。真空チャンバ1の天井部にカソードユニットCが取り付けられている。以下では、
図1において、真空チャンバ1の天井部側を向く方向を「上」とし、真空チャンバ1の底部側を向く方向を「下」として説明する。
【0018】
カソードユニットCは、内部応力制御膜の母材であるターゲット2と、このターゲット2の上方に配置された磁石ユニット3とから構成されている。ターゲット2は、チタン製(例えば、チタンと不可避的な元素とを含むターゲット)であり、被処理体を構成する基板Wの輪郭に応じて、公知の方法で平面視円形に形成されている。
ターゲット2の上面(スパッタリング面2aとは反対側の面)には、スパッタリングによる成膜中、ターゲット2を冷却するバッキングプレート21が装着され、スパッタリング面2aが下側に位置するように、不図示の絶縁体を介して真空チャンバ1に取り付けられている。
【0019】
ターゲット2には、DC電源等のスパッタリング電源E1からの出力が接続されており、薄膜を成膜する時には、ターゲット2に対して、負の電位を有する直流電力(30kW以下)が投入されるように構成されている。ターゲット2の上方に配置される磁石ユニット3は、ターゲット2のスパッタリング面2aの下方空間に磁場を発生させる。磁石ユニット3は、スパッタリング時にスパッタリング面2aの下方で電離した電子等を補足してターゲット2から飛散したスパッタリング粒子を効率よくイオン化する公知の構造を有する。磁石ユニット3の詳細な説明は省略する。
【0020】
真空チャンバ1の底部には、ターゲット2のスパッタリング面2aに対向させてステージ4が配置されている。このステージ4に載置された基板Wは、基板Wの成膜面が上側に向くように位置決め保持される。本実施形態においては、ターゲット2と基板Wとの間隔は、生産性や散乱回数等を考慮して、20〜800mmに設定されてよく、40〜450mmが好ましく、40〜100mmがより好ましい。
また、ステージ4には、RF電源等のバイアス電源E2からの出力が接続されており、薄膜を成膜する時には、基板Wに対して、交流電力の投入が可能なように構成されている。さらに、ステージ4は、温度制御装置H(温度制御手段)を内蔵しており、必要に応じて、薄膜を成膜する時の基板Wの温度をコントロールするように構成されている。
【0021】
真空チャンバ1の側壁には、アルゴン等の希ガスであるスパッタガスを導入する第1ガス管5aと、窒素を含むガスを導入する第2ガス管5bとが接続されている。第1ガス管5aと第2ガス管5bには各々、マスフローコントローラ51a、51bが介設され、不図示のガス源に連通している。これにより、流量制御されたスパッタガスと反応ガスとが、後述の真空排気装置(真空排気手段)により、一定の排気速度で真空引きされている真空処理室1aの内部に導入される。ゆえに、成膜中、真空処理室1aの圧力(全圧)は、略一定に保持される。
【0022】
真空チャンバ1の底部には、所望のポンプから構成される不図示の真空排気装置に通じる排気管6が接続されている。このスパッタリング装置SMは、特に図示しないが、マイクロコンピュータやシーケンサ等を備えた公知の制御装置(制御手段)を備えている。この制御装置は、上述した電源E1、E2の稼働や、マスフローコントローラ51a、51bの稼働、真空排気装置の稼働等を統括管理するように構成されている。
【0023】
以下では、前述したスパッタリング装置SMを用いた内部応力制御膜の製造方法について具体的に説明する。
まず、チタン製のターゲット2が装着された真空チャンバ1内のステージ4に基板W(例えば、シリコンウェハ)を載置する。真空排気装置を作動させて、真空処理室1a内を所定の真空度(例えば、1×10
−5Pa)まで真空引きする。真空処理室1a内が所定圧力に達した後、マスフローコントローラ51a、51bを各々制御して、アルゴンガスと窒素ガスとを所望の流量にて、真空処理室1a内に導入する。ここで、アルゴンガスに窒素ガスを加えたガスが、本発明における「窒素を含むガス」である。例えば、真空処理室1aの内部が0.5〜40Paの範囲の所定圧力(全圧)となるように、アルゴンガスと窒素ガスは各々、所望の流量に制御される。ここで、チタン製のターゲットとは、チタンを主成分とするターゲットであり、主成分とはチタンが重量比50%以上であることを指す。なお、チタン及び不可避不純物からなるターゲットを用いることが好ましい。
【0024】
真空処理室1a内が所定圧力(全圧)とされた状態にて、スパッタリング電源E1よりターゲット2に所定の負の電位を有する直流電力を投入して、真空チャンバ1内にプラズマ雰囲気を形成する。これにより、反応性スパッタリングによって、基板Wの表面に窒化チタン膜が成膜される。
【0025】
上述の反応性スパッタリングを、ある圧力条件下で行う際に、例えば、5(W)程度の微弱なBiasを印加することにより、強いTensile Stress膜が得られる。さらに、印加するBiasの値を増やすことにより、高い膜密度を保ったまま、StressをTensile側からCompressive側へ変化させることができる。
【0026】
上述したTensile Stress膜を得るためには、前記被処理体に印加するバイアスBSが0より大きく、前記バイアスBSの電力密度がターゲットに印加するバイアスBTの電力密度の1/150以下の範囲であり、かつ、前記内部応力制御膜を成膜する際のプロセスガスの圧力が、閾値5(Pa)より高い圧力領域から選択される、という条件を満たすことが重要である。
【0027】
換言すると、本発明の実施形態に係る内部応力制御膜の製造方法は、高圧力で、かつ、窒素が多く存在する成膜雰囲気において、被処理体上に柱状に成長する窒化チタン膜に対して微弱なバイアスBSを印加しながら成膜が行われる。ゆえに、本発明の実施形態によれば、高い膜密度を保ちつつ、窒化チタン膜の柱状構造に急激なダメージを与えることなく、被処理体に対して、圧縮(Compressive)側から引張(Tensile)側までの所望の膜ストレスを有する膜を作り分けることができる。したがって、本発明は、高密度な状態を保ちながら、必要な膜ストレスを有する窒化チタン膜を狙って形成できる製造方法をもたらす。
【0028】
本発明の実施形態によれば、内部応力制御膜が窒化チタンの場合には、5.0(g/cm
3)以上の高い膜密度を備えるとともに、被処理体に対して約−2GPaの圧縮(Compressive)側から約+2GPaの引張(Tensile)側までの所望の膜ストレスを有する膜を作り分けることができる。
つまり、膜ストレスの小さい内部応力制御膜を形成するという観点から、約−500MPaの圧縮(Compressive)側よりも引張(Tensile)側の膜ストレス、又は、約+500MPaの引張(Tensile)側よりも圧縮(Compressive)側の膜ストレスを選択することができる。また、約−100MPaの圧縮(Compressive)側よりも引張(Tensile)側の膜ストレス、又は、約+100MPaの引張(Tensile)側よりも圧縮(Compressive)側の膜ストレスを選択することもできる。あるいは内部応力制御膜を形成する以前に形成される下地膜が高い応力を持っている場合等は、膜全体としてストレスを相殺してバランスをとるために、内部応力制御膜の膜ストレスを約−2GPaの圧縮(Compressive)側から約+2GPaの引張(Tensile)側までの間で選択することができる。
特に、前記内部応力制御膜を成膜する際のプロセスガスの圧力が、閾値5(Pa)より高い圧力領域の中から選択されるならば、本発明の実施形態によって5.0(g/cm
3)以上の高い膜密度を保ちつつ、引張側の膜ストレスを有する内部応力制御膜を形成することが可能となった。
【0029】
次に、内部応力制御膜が窒化チタンからなる場合についてより具体的に説明する。
図8に示すグラフG1においては、チタンからなるターゲットと、窒素を含むガスを用いており、前記プロセスガスの圧力Pが横軸に示されており、前記被処理体に印加するバイアスBSを前記ターゲットに印加するバイアスBTにより除した数値である比率R1(=BS/BT)が縦軸に示されている。グラフG1において、3つのプロット、a1(10.0、0.0016)、a2(17.0、0.00059)、およびa3(25.0、0.0001)を通過する曲線αより、右上の領域に含まれるように、前記圧力Pと前記比率R1の組み合わせを選択することにより、4.6(g/cm
3)以上の高い膜密度を備え、かつ、引張(Tensile)側の膜ストレスを有する内部応力制御膜を形成することができる。
ここで、「3つのプロット、a1(10.0、0.0016)、a2(17.0、0.00059)、およびa3(25.0、0.0001)」のことを、特定の指標とも呼ぶ。
【0030】
中でも、グラフG1において、3つのプロット、b1(10.0、0.00241)、b2(17.0、0.0012)、およびb3(25.0、0.0004)を通過する曲線βより、右上の領域に含まれるように、前記圧力Pと前記比率R1の組み合わせを選択することにより、膜密度はさらに高くなり、膜密度が5.0(g/cm
3)以上の窒化チタン膜を安定して作製できる。
ここで、「3つのプロット、b1(10.0、0.00241)、b2(17.0、0.0012)、およびb3(25.0、0.0004)」のことを、特定の指標とも呼ぶ。
【0031】
また、内部応力制御膜が窒化チタンからなる場合についてより具体的に説明する。
図9に示すグラフG2においては、チタンからなるターゲットと、窒素を含むガスを用いており、前記プロセスガスの圧力Pが横軸に示されており、前記内部応力制御膜の成膜速度DRを前記被処理体に印加するバイアスBSにより除した数値である比率R2(=DR/BS)が縦軸に示されている。グラフG2において、3つのプロット、c1(10.0、0.0032)、c2(17.0、0.0018)、およびc3(25.0、0.0008)を通過する曲線γより、右上の領域に含まれるように、前記圧力Pと前記比率R2の組み合わせを選択することにより、4.6(g/cm
3)以上の高い膜密度を備え、かつ、引張(Tensile)側の膜ストレスを有する内部応力制御膜を形成することができる。
ここで、「3つのプロット、c1(10.0、0.0032)、c2(17.0、0.0018)、およびc3(25.0、0.0008)」のことを、特定の指標とも呼ぶ。
【0032】
中でも、グラフG2において、3つのプロット、d1(10.0、0.008)、d2(17.0、0.0034)、およびd3(25.0、0.002)を通過する曲線δより、右上の領域に含まれるように、前記圧力Pと前記比率R2の組み合わせを選択することにより、膜密度はさらに高くなり、膜密度が5.0(g/cm
3)以上の窒化チタン膜を安定して作製できる。
ここで、「3つのプロット、d1(10.0、0.008)、d2(17.0、0.0034)、およびd3(25.0、0.002)」のことを、特定の指標とも呼ぶ。
【0033】
本発明の実施形態に係る内部応力制御膜の形成方法においては、前記窒素を含むガスとして、アルゴンガスと窒素ガスの組み合わせが好適に用いられる。前記窒素を含むガスに占める前記窒素ガスの流量比が50(%)以上とすることにより、内部応力制御膜が形成される真空処理室1aの内部を、高圧力で、かつ、窒素が多く存在する成膜雰囲気とすることができる。
これにより、上述したグラフG1やグラフG2に示す作製条件の組み合わせが得られる。
前記窒素を含むガスに占める前記窒素ガスの流量比を、70%以上とした場合には、真空処理室1aの内部をさらに窒素が多く存在する成膜雰囲気とすることができる。これによって、より大きなTensile側のStressを得ることができるので、より好ましい。また、高い膜密度を備えながらも、引張(Tensile)側の膜ストレスを有する内部応力制御膜を形成するにおいて、前記内部応力制御膜を成膜する際のプロセスガスの圧力が5(Pa)以上の圧力領域の中から選択されることが好ましい。
【0034】
<実施例1>
本実施例では、
図1のスパッタリング装置SMを用い、被処理体(シリコンウェハからなる基板W)上に、薄膜を成膜する時の圧力(放電圧力)を0.35〜25Paの間で変更して、窒化チタン膜(厚さ:20nm)を形成した。その際、基板Wに対して印加するバイアスBSを変更(3条件:0W、5W、50W)することにより、バイアスBS依存性について調べた。この結果が、
図2であり、薄膜を成膜する時の圧力(放電圧力)と膜ストレスとの関係を示すグラフである。
【0035】
図2より、以下の点が明らかとなった。
(A1)バイアスBSが50Wの場合は、作製された窒化チタン膜は、放電圧力に依存せず、被処理体に対して圧縮(Compressive)側の膜ストレスを有する。放電圧力が1Paを超えると、圧縮(Compressive)側の膜ストレスが増加傾向を示し、放電圧力が25Paにおいて、最大の膜ストレス(およそ−2800(MPa))が観測された。膜密度は、およそ5.65(g/cm
3)であった(後段の
図4参照)。
【0036】
(A2)バイアスBSを印加しない場合(0W)は、放電圧力の増加に伴い、膜ストレスが被処理体に対して圧縮(Compressive)側の膜ストレスから引張(Tensile)側の膜ストレスへ変化することが分かった。圧縮から引張への変化は、閾値5Pa付近で生じる。この場合の膜ストレス(MPa)は、−1000〜+600の範囲で変更できる。膜密度は、およそ4.15(g/cm
3)であった(後段の
図4参照)。
【0037】
(A3)バイアスBSを微弱に印加する場合(5W)は、放電圧力の増加に伴い、膜ストレスが被処理体に対して圧縮(Compressive)側の膜ストレスから引張(Tensile)側の膜ストレスへ急激に変化することが分かった。この場合も、バイアスBSを印加しない場合と同様に、圧縮から引張への変化は、閾値5Pa付近で生じる。この場合の膜ストレス(MPa)は、−1600〜+1500の範囲で変更できる。膜密度は、およそ5.35(g/cm
3)であった(後段の
図4参照)。
【0038】
図3Aは、被処理体に印加するバイアスBSと膜ストレスとの関係を示すグラフである。
図3B〜
図3Eは、断面を示すSTEM(走査型透過電子顕微鏡(Scanning Transmission Electron Microscope; STEM))写真である。
図3B〜
図3Eは、順に、バイアスBSが、0W、5W、15W、20Wの場合を示している。
図4Aは、被処理体に印加するバイアスパワーと膜密度との関係を示すグラフである。
図4B〜
図4Eは、断面を示すSTEM写真である。
図4B〜
図4Eは、順に、バイアスBSが、0W、5W、15W、20Wの場合を示している。
【0039】
図3及び
図4より、以下の点が明らかとなった。
(B1)バイアスBSが0Wから5Wに増加すると、膜ストレスは、引張(Tensile)側において増加傾向を示す(+600→+1500(MPa))。その際、膜密度が急激に増加する(4.15→5.35(g/cm
3))。
(B2)バイアスBSが5Wを超えると、膜ストレスは、単調に減少する傾向を示す。バイアスBSが20W付近を閾値として、引張(Tensile)側の膜ストレスから圧縮(Compressive)側の膜ストレスへ、膜ストレスが変化する。
(B3)バイアスBSが5Wを超えると、膜密度は5.50〜5.75(g/cm
3)の範囲で安定する。断面SEM写真より、薄膜を成膜する時に印加するバイアスBSの大きさを増やすにつれて、柱状構造の離間部が狭まり、離間部が閉じて緻密な構造へ変化したことにより、膜密度の大きな窒化チタン膜が得られたと推定した。また、密度の変化が殆どない状態でStressが大きく変化していることから、これらの領域では膜自体のStress特性が変わっていると推測できる。
【0040】
また、原子間力顕微鏡(AFM)を用いて膜表面の粗さ(算術平均粗さRa)を測定した。その結果、高圧だけの条件(上記バイアスBSが0Wの場合)にて作製した膜表面の粗さは0.94nmであった。これに対して、高圧かつ弱バイアスの条件(上記バイアスBSが5Wの場合)にて作製した膜表面の粗さは0.26nmであった。この膜表面の粗さに関する評価結果は、上記推定(柱状構造の離間部が狭まり、離間部が閉じて緻密な構造へ変化した)を支持している。
【0041】
<実施例2>
本実施例では、窒化チタン膜について、4つの圧力条件(10.0、17.0、25.0、37.0(Pa))下における膜ストレスと膜密度を調べた。その際、ターゲット2に印加される(負の電位を有する)直流電力は、最大5条件(3.5、7、10.5、14、17.5、21(kW))変化させた。また、被処理体に印加するバイアスBSは、最大8条件(0、2、5、10、15、20、25、30(W))変化させた。
【0042】
表1〜表3は、プロセスガスの圧力Pが10.0(Pa)の場合であり、表1は膜ストレス、表2は膜密度、表3は成膜速度を表す。
表4〜表6は、プロセスガスの圧力Pが17.0(Pa)の場合であり、表4は膜ストレス、表5は膜密度、表6は成膜速度を表す。
表7〜表9は、プロセスガスの圧力Pが25.0(Pa)の場合であり、表7は膜ストレス、表8は膜密度、表9は成膜速度を表す。
表10〜表12は、プロセスガスの圧力Pが37.0(Pa)の場合であり、表10は膜ストレス、表11は膜密度、表12は成膜速度を表す。
各表の中で、例えば、「7.6E−03」という表示は、「7.6×10
−3」を意味する。
符号「−−」は、該当するデータが無いことを意味する。
【0055】
図5は、表4に基づき、Pw−Ratio(sub./target)と膜ストレスとの関係を示すグラフである。
図6は、表7に基づき、Pw−Ratio(sub./target)と膜ストレスとの関係を示すグラフである。
図5より、表4の圧力条件(17Pa)では、測定したPw−Ratio(sub./target)の全域に亘って、膜ストレスは、引張(Tensile)側の膜ストレスとなることが分かった。7kW(記号◇印)の場合、測定したPw−Ratio(sub./target)の全域に亘って、最大の膜ストレスが得られた。
図6より、表7の圧力条件(25Pa)においても、測定したPw−Ratio(sub./target)の全域に亘って、膜ストレスは、引張(Tensile)側の膜ストレスとなることが分かった。7kW(記号◇印)の場合、測定したPw−Ratio(sub./target)の全域に亘って、最大の膜ストレスが得られた。特に、7kW(記号◇印)の測定結果を示す曲線と横軸との交点が、0.0067(1/150)であった。したがって、この交点より、Pw−Ratio(sub./target)の値が小さい条件を満たすとき、膜ストレスは、引張(Tensile)側の膜ストレスとなることが確認された。
【0056】
図7は、表2に基づき、Pw−Ratio(sub./target)と膜密度との関係を示すグラフである。
図7より、測定したPw−Ratio(sub./target)の全域に亘って、Pw−Ratio(sub./target)が増えるに連れて、膜密度は増加傾向を示すことが分かった。Pw−Ratio(sub./target)がおよそ0.0016の場合に、膜密度は4.6であった。また、Pw−Ratio(sub./target)がおよそ0.00241の場合に、膜密度は5.0であった。
ゆえに、
図7の結果より、膜密度を4.6(5.0)以上とするためには、Pw−Ratio(sub./target)の設定を0.0016以上(0.00241以上)とすれば良いことが明らかとなった。
【0057】
以下に示す表13〜表15は、表1〜表12のデータに基づき、ターゲット2に印加される(負の電位を有する)直流電力の3条件(7、10.5、14(kW))ごとに、再集計して示している。各表において、上段から下段に向けて、被処理体に印加するバイアスBSを増加させた条件の結果(膜ストレス、膜密度)が順に掲載されている。
【0061】
本発明者らは、上述した表1〜表15から、さらに特徴ある傾向を見出すため、
図8と
図9のグラフを作製した。
図8は、薄膜を成膜する時の圧力とPw−Ratio(sub./target)との関係を示すグラフである。
図9は、薄膜を成膜する時の圧力とRatio(sub./Rate)との関係を示すグラフである。
ここで、「薄膜を成膜する時の圧力」とは、「プロセスガスの圧力P」である。「Pw−Ratio(sub./target)」とは、「被処理体に印加するバイアスBSを前記ターゲットに印加するバイアスBTにより除した数値である比率R1(=BS/BT)」である。「Ratio(sub./Rate)」とは、「内部応力制御膜の成膜速度10nm/minに対する被処理体に印加するバイアスBSの数値である比率R2」を意味する。
【0062】
図8と
図9は、極めて同じ傾向が読み取れる。すなわち、横軸を、薄膜を成膜する時の圧力とし、縦軸をPw−Ratio(sub./target)としたグラフG1(
図8)においては、膜密度が等高線のような曲線をとることが分かった。膜密度が高くなるほど、グラフ1においては右上方の領域を占める傾向が確認された。
【0063】
具体的には、前記プロセスガスの圧力Pを横軸、前記被処理体に印加するバイアスBSを前記ターゲットに印加するバイアスBTにより除した数値である比率R1(=BS/BT)を縦軸としたグラフG1において、3つのプロット、a1(10.0、0.0016)、a2(17.0、0.00059)、およびa3(25.0、0.0001)を通過する曲線αより、右上の領域に含まれるように、前記圧力Pと前記比率R1の組み合わせを選択することにより、膜密度が4.6(g/cm
3)以上の窒化チタン膜が得られる。
【0064】
また、前記グラフG1において、3つのプロット、b1(10.0、0.00241)、b2(17.0、0.0012)、およびb3(25.0、0.0004)を通過する曲線βより、右上の領域に含まれるように、前記圧力Pと前記比率R1の組み合わせを選択することによって、作製される窒化チタン膜は、膜密度が5.0(g/cm
3)以上となる。
【0065】
同様に、横軸を、薄膜を成膜する時の圧力とし、縦軸をRatio(sub./Rate)としたグラフG2(
図9)においても、膜密度が等高線のような曲線をとることが分かった。膜密度が高くなるほど、グラフ2においては右上方の領域を占める傾向が確認された。
【0066】
具体的には、前記プロセスガスの圧力Pを横軸、前記内部応力制御膜の成膜速度DRを前記被処理体に印加するバイアスBSにより除した数値である比率R2(=DR/BS)を縦軸としたグラフG2において、3つのプロット、c1(10.0、0.0032)、c2(17.0、0.0018)、およびc3(25.0、0.0008)を通過する曲線γより、右上の領域に含まれるように、前記圧力Pと前記比率R2の組み合わせを選択することにより、膜密度が4.6(g/cm
3)以上の窒化チタン膜が得られる。
【0067】
また、前記グラフG2において、3つのプロット、d1(10.0、0.008)、d2(17.0、0.0034)、およびd3(25.0、0.002)を通過する曲線δより、右上の領域に含まれるように、前記圧力Pと前記比率R2の組み合わせを選択することによって、作製される窒化チタン膜は、膜密度が5.0(g/cm
3)以上となる。
【0068】
図8と
図9が示した結果は、高い膜密度を備えるとともに、膜ストレスとして引張(Tensile)側の膜ストレスを有する窒化チタン膜を製造する工程を管理するための重要な指標を提供している。
つまり、
図8及び
図9の指標を満たすように窒化チタン膜を製造するならば、膜密度が4.6(g/cm
3)以上、あるいは5.0(g/cm
3)以上であって、膜ストレスとして引張(Tensile)側の膜ストレスを有する窒化チタン膜を、安定して製造できる、量産に好適な工程を構築することが可能となる。
【0069】
図10は、Bias Powerと膜ストレスとの関係を示すグラフである。プロセスガスを構成する窒素を含むガスが、アルゴンガスと窒素ガスから構成された場合について検討した。
図10において、記号◇印は窒素ガスが100%の場合、記号□印はアルゴンガス10%、窒素ガスが90%の場合、記号△印はアルゴンガス30%、窒素ガスが70%の場合、記号○印はアルゴンガス50%、窒素ガスが50%の場合、を各々表している。
【0070】
図10から、以下の点が明らかとなった。
(C1)バイアスBSを微弱に印加する場合(5W〜10W)は、バイアスBSを印加しない場合(0W)に比べて、膜ストレスが引張(Tensile)となり、増大傾向を示す。この増大傾向は、窒素を含むガスに占める窒素ガスの割合が50%以上であるなら、アルゴンガスと窒素ガスの比率に依存しない。
【0071】
(C2)バイアスBSが同じ数値(例えば、5(W))で比較すると、窒素を含むガスに占める窒素ガスの割合が増えるに連れて、より大きな引張(Tensile)の膜ストレスが観測された。
【0072】
(C3)バイアスBSが15Wの場合は、10Wに比べて膜ストレスが減少傾向に転じる。この増大傾向は、窒素を含むガスに占める窒素ガスの割合が50%以上であるなら、アルゴンガスと窒素ガスの比率に依存しない。
【0073】
以上の結果より、プロセスガスを構成する窒素を含むガスが、アルゴンガスと窒素ガスから構成され、前記窒素を含むガスに占める前記窒素ガスの流量比が50(%)以上とすることによって、引張(Tensile)側の膜ストレスを有する内部応力制御膜が安定して得られることが明らかとなった。
【0074】
以上、本発明の実施形態に係る内部応力制御膜の製造方法について説明してきたが、これらは本発明の例示的なものであり、限定するものとして考慮されるべきではないことを理解すべきである。追加、省略、置換、およびその他の変更は、本発明の範囲から逸脱することなく行うことができる。従って、本発明は、前述の説明によって限定されていると見なされるべきではなく、請求の範囲によって制限されている。
上述した実施形態では、内部応力制御膜が窒化チタンの場合について詳述したが、本発明は窒化チタン(TiN)に限定されるものではなく、窒素を含むガスを用いて成膜される材料に広く適用できる。すなわち、本発明が適用される内部応力制御膜としては、窒化チタン(TiN)の他に、窒化アルミニウム(AlN)、窒化シリコン(SiN)等が挙げられる。
【0075】
また、上述した実施形態では、被処理体としてシリコンウェハからなる基板Wを例として説明したが、例えば、層間絶縁膜の表面や多層構造体の最表面に形成するような場合にも、本発明を適用することが可能である。換言すると、本発明の製造方法により形成される内部応力制御膜は、その内部応力制御膜が設けられる下地材料や構造に依存せず、柔軟に適用できる利点を備えている。
【0076】
さらに、上述した実施形態では、内部応力制御膜を成膜する際に、被処理体である基板Wを熱処理していないが、本発明はこれに限定されるものではない。形成する内部応力制御膜の材質や膜厚、内部応力制御膜の下地条件(基板Wや膜材料、膜構造等)に応じて、被処理体は適宜、望ましい温度に制御してもよい。例えば、
図1において被処理体(基板W)を載置するステージ4の内部に、被処理体の温度を制御する温度制御装置Hを配置することによって、被処理体の温度管理が可能となる。