特許第6653722号(P6653722)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6653722
(24)【登録日】2020年1月30日
(45)【発行日】2020年2月26日
(54)【発明の名称】基板処理装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/02 20060101AFI20200217BHJP
   G05B 19/418 20060101ALI20200217BHJP
   H01L 21/31 20060101ALN20200217BHJP
   H01L 21/316 20060101ALN20200217BHJP
【FI】
   H01L21/02 Z
   G05B19/418 Z
   !H01L21/31 C
   !H01L21/316 X
【請求項の数】16
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2018-47207(P2018-47207)
(22)【出願日】2018年3月14日
(65)【公開番号】特開2019-161072(P2019-161072A)
(43)【公開日】2019年9月19日
【審査請求日】2018年9月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】318009126
【氏名又は名称】株式会社KOKUSAI ELECTRIC
(74)【代理人】
【識別番号】100145872
【弁理士】
【氏名又は名称】福岡 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100091362
【弁理士】
【氏名又は名称】阿仁屋 節雄
(72)【発明者】
【氏名】水口 靖裕
(72)【発明者】
【氏名】大橋 直史
(72)【発明者】
【氏名】高崎 唯史
(72)【発明者】
【氏名】松井 俊
【審査官】 小池 英敏
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/189045(WO,A1)
【文献】 特開2014−082497(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/02
G05B 19/418
H01L 21/31
H01L 21/316
H01L 21/3065
C23C 16/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を処理する処理室と、
前記処理室のクリーンルーム内での設置位置を特定する位置情報を取得する位置情報取得部と、
前記位置情報を保存する記憶部と、
前記位置情報取得部が取得した前記位置情報を前記記憶部に保存させるとともに、必要に応じて前記記憶部が保存する前記位置情報を出力させる情報制御部と、
を有し、
前記位置情報は、前記クリーンルーム内の装置配置に関するマップに相当するマップ情報を生成する基になる情報であり、
前記マップ情報は、装置サイズ情報に応じた占有情報に基づいてエラー表示をするものである
基板処理装置。
【請求項2】
上位装置との間で情報を送受信する送受信部を有し、
前記情報制御部は、前記送受信部が前記上位装置から前記位置情報の送信要求情報を受信すると、前記上位装置を出力先として前記記憶部が保存する前記位置情報を前記送受信部に送信させるように構成されている
請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
情報の表示出力を行う表示部を有し、
前記情報制御部は、前記上位装置に送信した前記位置情報を基に生成された前記マップ情報を前記上位装置から受信すると、前記マップ情報を前記記憶部に保存させるとともに、前記マップ情報を前記表示部に表示させるように構成されている
請求項2に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記表示部は、移動端末に設けられる
請求項3に記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記情報制御部は、前記上位装置から受信した前記マップ情報と前記記憶部で保存している前記マップ情報とを比較して、それぞれの間に差異がある場合に、その旨の情報を前記表示部または前記上位装置の少なくとも一方に出力するように構成されている
請求項3または4に記載の基板処理装置。
【請求項6】
基板を処理する処理室を有した基板処理装置と、前記基板処理装置との間で情報の送受信を行うように構成された上位装置と、
を備え、
前記基板処理装置は、
前記処理室のクリーンルーム内での設置位置を特定する位置情報を取得する位置情報取得部と、
前記位置情報を保存する記憶部と、
前記位置情報取得部が取得した前記位置情報を前記記憶部に保存させるとともに、前記上位装置からの前記位置情報の送信要求情報に応じて前記記憶部が保存する前記位置情報を前記上位装置に送信させる情報制御部と、
前記記憶部に保存された情報を表示する表示部と、
を有し、
前記上位装置は、
前記処理室の位置情報を前記基板処理装置から受信すると、前記位置情報に基づいて前記クリーンルーム内の装置配置に関するマップに相当するマップ情報を生成するマップ情報生成部と、
前記マップ情報生成部が生成した前記マップ情報を前記基板処理装置に送信して、前記基板処理装置が有する前記表示部に表示させるマップ管理部と、
を有し、
前記マップ情報は、前記基板処理装置のサイズ情報に応じた占有情報に基づいてエラー表示をするものである
基板処理システム。
【請求項7】
上位装置との間で情報を送受信する送受信部を有し、
前記情報制御部は、前記送受信部が前記上位装置から前記位置情報の送信要求情報を受信すると、前記上位装置を出力先として前記記憶部が保存する前記位置情報を前記送受信部に送信させるように構成されている
請求項6に記載の基板処理システム。
【請求項8】
情報の表示出力を行う表示部を有し、
前記情報制御部は、前記上位装置に送信した前記位置情報を基に生成された前記マップ情報を前記上位装置から受信すると、前記マップ情報を前記記憶部に保存させるとともに、前記マップ情報を前記表示部に表示させるように構成されている
請求項7に記載の基板処理システム。
【請求項9】
前記表示部は、移動端末によって構成されている
請求項8に記載の基板処理システム。
【請求項10】
前記情報制御部は、前記上位装置から受信した前記マップ情報と前記記憶部で保存している前記マップ情報とを比較して、それぞれの間に差異がある場合に、その旨の情報を前記表示部または前記上位装置の少なくとも一方に出力するように構成されている
請求項8または9に記載の基板処理システム。
【請求項11】
基板を処理する処理室を有した基板処理装置について前記処理室のクリーンルーム内での設置位置を特定する位置情報を取得するとともに、取得した前記位置情報を前記基板処理装置が有する記憶部に保存させる第一工程と、
前記記憶部が保存する前記位置情報の送信を要求する第二工程と、
要求に応じて前記記憶部が保存する前記位置情報を送信する第三工程と、
送信された前記位置情報を基に、前記クリーンルーム内の装置配置に関するマップに相当するマップ情報であって、前記基板処理装置のサイズ情報に応じた占有情報に基づいてエラー表示をするものを生成する第四工程と、
生成した前記マップ情報を前記基板処理装置に送信して前記記憶部に保存させる第五工程と、
前記マップ情報を前記基板処理装置が有する表示部に表示させる第六工程と、
を有する半導体装置の製造方法。
【請求項12】
前記基板処理装置に送信された前記マップ情報と当該基板処理装置の前記記憶部で保存している前記マップ情報とを比較して、それぞれの間に差異がある場合に、その旨の情報を出力する第七工程
を有する請求項11に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項13】
基板を処理する処理室を有した基板処理装置について前記処理室のクリーンルーム内での設置位置を特定する位置情報を取得するとともに、取得した前記位置情報を前記基板処理装置が有する記憶部に保存させる手順と、
必要に応じて前記記憶部が保存する前記位置情報を出力する手順と、
前記記憶部から出力した前記位置情報を基に生成された、前記クリーンルーム内の装置配置に関するマップに相当するマップ情報であって、前記基板処理装置のサイズ情報に応じた占有情報に基づいてエラー表示をするものを受け取って、前記マップ情報を前記記憶部に保存させる手順と、
前記マップ情報を前記基板処理装置が有する表示部に表示させる手順と、
をコンピュータによって前記基板処理装置に実行させるプログラム。
【請求項14】
受け取った前記マップ情報と前記記憶部で保存している前記マップ情報とを比較して、それぞれの間に差異がある場合に、その旨の情報を出力する手順
をコンピュータによって前記基板処理装置に実行させる請求項13に記載のプログラム。
【請求項15】
基板を処理する処理室を有した基板処理装置について前記処理室のクリーンルーム内での設置位置を特定する位置情報を取得するとともに、取得した前記位置情報を前記基板処理装置が有する記憶部に保存させる手順と、
必要に応じて前記記憶部が保存する前記位置情報を出力する手順と、
前記記憶部から出力した前記位置情報を基に生成された、前記クリーンルーム内の装置配置に関するマップに相当するマップ情報であって、前記基板処理装置のサイズ情報に応じた占有情報に基づいてエラー表示をするものを受け取って、前記マップ情報を前記記憶部に保存させる手順と、
前記マップ情報を前記基板処理装置が有する表示部に表示させる手順と、
をコンピュータによって前記基板処理装置に実行させるプログラムが格納されたコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【請求項16】
受け取った前記マップ情報と前記記憶部で保存している前記マップ情報とを比較して、それぞれの間に差異がある場合に、その旨の情報を出力する手順
をコンピュータによって前記基板処理装置に実行させる請求項15に記載のプログラムが格納されたコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造工程で用いられる基板処理装置の一態様としては、例えばリアクタを有するモジュールを備えた装置がある(例えば、特許文献1参照)。このような基板処理装置においては、装置稼働情報等をディスプレイ等で構成される入出力装置に表示して、装置管理者が確認し得るようにしている。また、半導体装置を製造するクリーンルームには複数の基板処理装置が設置され、各基板処理装置がネットワークを介して管理されるようになっている(例えば、特許文献2、3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017―103356号公報
【特許文献2】特開2008―21835号公報
【特許文献3】特開2015―115540号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、基板処理装置について効率のよい管理を実現するための技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一態様によれば、
基板を処理する処理室と、
前記処理室の位置情報を取得する位置情報取得部と、
前記位置情報を保存する記憶部と、
前記位置情報取得部が取得した前記位置情報を前記記憶部に保存させるとともに、必要に応じて前記記憶部が保存する前記位置情報を出力させる情報制御部と、
を有する技術が提供される。
【発明の効果】
【0006】
本開示に係る技術によれば、基板処理装置について効率のよい管理を行うことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本開示の一実施形態に係る基板処理システムの概略構成例を模式的に示すイメージ図である。
図2】本開示の一実施形態に係る基板処理装置の構成例を模式的に示す横断面図である。
図3】本開示の一実施形態に係る基板処理装置の構成例を模式的に示す縦断面図であり、図2におけるα−α’断面を示す図である。
図4】本開示の一実施形態に係る基板処理装置が有するリアクタ(処理室)の構成例を模式的に示す説明図である。
図5】本開示の一実施形態に係る基板処理装置が有するコントローラの構成例を模式的に示すブロック図である。
図6】本開示の一実施形態に係る基板処理装置で行われる基板処理工程の概要を示すフロー図である。
図7】本開示の一実施形態に係る基板処理装置で行われる成膜工程の基本的な手順を示すフロー図である。
図8】本開示の一実施形態に係る群管理装置の構成例を模式的に示すブロック図である。
図9】本開示の一実施形態に係る基板処理システムで行われる管理方法の一具体例の手順を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<本開示の一実施形態>
以下に、本開示の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0009】
(1)基板処理装置の管理状況
はじめに、半導体装置の製造工程で用いられる基板処理装置の管理に関する状況について説明する。近年、半導体装置の製造工程では、以下のような状況が存在する。
【0010】
第一の状況は、生産効率の向上が求められている点である。半導体装置の生産効率を向上させるためには、例えば、クリーンルーム内で稼働させる基板処理装置の台数を増加させることが有効である。その一方で、各基板処理装置については、ダウンタイム時間を短くするために、メンテナンス時間の短縮が求められる。したがって、基板処理装置の台数を増加させる場合、クリーンルーム内の各基板処理装置のそれぞれについて、稼働状況を迅速かつ的確に把握し得ることが、生産効率を向上させる上では必要となる。
【0011】
第二の状況は、近年の半導体装置は、回路の高集積化や微細化等が求められている点である。これらの回路は複数の工程を跨いで製造されるため、それぞれの工程に対応した基板処理装置が準備される。ただし、連続する工程に対応した基板処理装置については、同じクリーンルーム内に配される場合が多い。つまり、回路の高集積化や微細化等のためには、複数の工程に対応するそれぞれの基板処理装置について、クリーンルーム内の設置場所にも配慮することが求められる。
【0012】
第三の状況は、年々、多くの膜や回路等が新たに開発されており、半導体装置の製造工場はそれに対応する必要がある点である。例えば、ある工程で使用する基板処理装置を、新たな回路に対応した高い性能を有する基板処理装置に入れ替えたり、あるいは全く異なる膜を形成可能な基板処理装置に置き換えたりする、といったことが起こり得る。基板処理装置の入れ替えまたは置き換えを繰り返すと、連続する工程に対応した基板処理装置であっても、近くに配することが困難になる場合が多い。したがって、クリーンルーム内の各基板処理装置については、新たな回路等に対応するための入れ替えまたは置き換えを想定した上で、それぞれを適切に管理し得るようにすることが求められる。
【0013】
本実施形態では、以上の状況の少なくとも一つに対応可能な技術を説明する。
【0014】
(2)基板処理システムの概要
次に、本実施形態に係る基板処理システムについて説明する。
図1は、本実施形態に係る基板処理システムの概略構成例を模式的に示すイメージ図である。
【0015】
図1に示す基板処理システムは、クリーンルーム(以下「CR」と称する。)400内に設置された複数の基板処理装置100と、各基板処理装置100を管理する上位装置としての群管理装置500と、を備えて構成されている。
【0016】
CR400は、フロア401上に主通路403、メンテナンスエリア404および側通路405が配されており、これらによってフロア401上が複数の区画に区切られている。
【0017】
フロア401上の各区画には、基板処理装置100が設置される。基板処理装置100は、半導体集積回路装置(半導体デバイス)が作り込まれる半導体ウエハ基板(以下、単に「ウエハ」という。)に対して所定の処理を行うもので、原則として、一区画に一台が設置される。ただし、基板処理装置100の機種(処理内容の種類)によっては、一台が複数区画を跨ぐように設置されていてもよい。つまり、CR400内には、複数種類の基板処理装置100が存在していてもよい。これらの基板処理装置100は、半導体装置の製造するための複数の工程のそれぞれに対応したものである。また、これらの基板処理装置100については、必要に応じて入れ替えまたは置き換えを行い得るように構成することが考えられる。
【0018】
群管理装置500は、各基板処理装置100の上位装置として機能するコンピュータによって構成されたもので、図示せぬ無線または有線のネットワークを介して各基板処理装置100との間で情報の送受信を行い得るようになっている。
【0019】
以下、このような基板処理システムを構成する基板処理装置100および群管理装置500について、さらに詳しく説明する。
【0020】
(3)基板処理装置の構成
まず、基板処理装置100の構成例について説明する。
図2は、本実施形態に係る基板処理装置の構成例を模式的に示す横断面図である。図3は、図2におけるα−α’断面を示す縦断面図である。
【0021】
図2および図3に示すように、本実施形態に係る基板処理装置100は、基板としてのウエハWを処理するもので、IOステージ110、大気搬送室120、ロードロック室130、真空搬送室140、リアクタ(RC)200で主に構成される。なお、基板処理装置100は、IOステージ110が主通路403側となるように、CR400内に配される。
【0022】
(大気搬送室・IOステージ)
基板処理装置100の手前には、IOステージ(ロードポート)110が設置されている。IOステージ110上には、複数のポッド111が搭載されている。ポッド111はシリコン(Si)基板等のウエハWを搬送するキャリアとして用いられる。
【0023】
IOステージ110は、大気搬送室120に隣接する。大気搬送室120には、IOステージ110と異なる面に、後述するロードロック室130が連結されている。大気搬送室120内には、ウエハWを移載する大気搬送ロボット122が設置されている。
【0024】
大気搬送室120の筐体127の前側には、ウエハWを大気搬送室120に対して搬入搬出するための基板搬入出口128と、ポッドオープナ121と、が設置されている。大気搬送室120の筐体127の後ろ側には、ウエハWをロードロック室130に搬入搬出するための基板搬入出口129が設けられる。基板搬入出口129は、ゲートバルブ133によって開放・閉鎖することにより、ウエハWの出し入れを可能とする。
【0025】
(ロードロック室)
ロードロック室130は、大気搬送室120に隣接する。ロードロック室130を構成する筐体131が有する面のうち、大気搬送室120と異なる面には、後述する真空搬送室140が配置される。
【0026】
ロードロック室130内には、ウエハWを載置する載置面135を少なくとも二つ有する基板載置台136が設置されている。基板載置面135間の距離は、後述するロボット170のアームが有するエンドエフェクタ間の距離に応じて設定される。
【0027】
(真空搬送室)
基板処理装置100は、負圧下でウエハWが搬送される搬送空間となる搬送室としての真空搬送室(トランスファモジュール)140を備えている。真空搬送室140を構成する筐体141は、平面視が五角形に形成され、五角形の各辺には、ロードロック室130およびウエハWを処理する処理室としてのリアクタ200(200a〜200d)が連結されている。以下、リアクタのことを「RC」とも呼ぶ。
【0028】
真空搬送室140を構成する筐体141の側壁のうち、各RC200と向かい合う壁には、基板搬入出口148が設けられる。例えば、図3に記載のように、RC200cと向かい合う壁には、基板搬入出口148cが設けられる。さらには、ゲートバルブ149がRC200ごとに設けられる。例えば、RC200cには、ゲートバルブ149cが設けられる。なお、RC200a、200b、200dもRC200cと同様の構成であるため、ここでは説明を省略する。
【0029】
真空搬送室140の略中央部には、負圧下でウエハWを移載(搬送)する搬送部としての搬送ロボット170が、フランジ144を基部として設置されている。ロボット170は、二つのアーム180を備える。アーム180は、ウエハWを載置するエンドエフェクタを備える。アーム180は、アーム軸(図示省略)を介してフランジ144に接続される。つまり、二つのアーム180を備えるロボット170は、エレベータ145およびフランジ144によって、真空搬送室140の気密性を維持しつつ昇降できるように構成されている。なお、図3においては、説明の便宜上、アーム180のエンドエフェクタを表示し、フランジ144と接続されるロボット軸等の構造は省略している。
【0030】
エレベータ145は、アーム180の昇降や回転を制御する。これにより、アーム180は、アーム軸を中心とした回転や延伸が可能である。アーム180が回転や延伸を行うことで、ロボット170は、RC200(200a〜200d)内にウエハWを搬送したり、RC200(200a〜200d)内からウエハWを搬出したりする。
【0031】
(リアクタ)
真空搬送室140の外周には、ウエハWを処理する処理室としてのRC200a〜200dが接続される。
図4は、本実施形態に係る基板処理装置が有するリアクタの構成例を模式的に示す説明図である。
なお、RC200aからRC200dは同様の構成であるので、以下の説明では、これらを総称しRC200として説明する。
【0032】
(容器)
図4に示すように、RC200は、容器202を備えている。容器202は、例えば横断面が円形であり扁平な密閉容器として構成されている。また、容器202は、例えばアルミニウム(Al)やステンレス(SUS)等の金属材料により構成されている。容器202内には、ウエハWを処理する処理空間205と、ウエハWを処理空間205に搬送する際にウエハWが通過する搬送空間206とが形成されている。容器202は、上部容器202aと下部容器202bで構成される。上部容器202aと下部容器202bの間には、仕切り板208が設けられる。
【0033】
下部容器202bの側面には、ゲートバルブ149に隣接した基板搬入出口148が設けられており、その基板搬入出口148を介してウエハWが真空搬送室140との間を移動するようになっている。下部容器202bの底部には、リフトピン207が複数設けられている。さらに、下部容器202bは接地されている。
【0034】
処理空間205には、ウエハWを支持する基板支持部210が配される。基板支持部210は、ウエハWを載置する基板載置面211と、基板載置面211を表面に持つ基板載置台212と、基板載置台212内に設けられた加熱源としてのヒータ213と、を主に有する。基板載置台212には、リフトピン207が貫通する貫通孔214が、リフトピン207と対応する位置にそれぞれ設けられている。
【0035】
基板載置台212は、シャフト217によって支持される。シャフト217は、容器202の底部を貫通しており、さらに容器202の外部で昇降部218に接続されている。
【0036】
昇降部218は、シャフト217を支持する支持軸218aと、支持軸218aを昇降させたり回転させたりする作動部218bと、を主に有する。作動部218bは、例えば昇降を実現するためのモータを含む昇降機構218cと、支持軸218aを回転させるための歯車等の回転機構218dと、を有する。
昇降部218には、昇降部218の一部として、作動部218bに昇降・回転指示するための指示部218eを設けても良い。指示部218eは、後述するコントローラ280に電気的に接続される。指示部218eは、コントローラ280の指示に基づいて、作動部218bを制御する。
昇降部218を作動させてシャフト217および支持台212を昇降させることにより、基板載置台212は、載置面211上に載置されるウエハWを昇降させることが可能となっている。なお、シャフト217下端部の周囲は、ベローズ219により覆われており、これにより処理空間205内が気密に保持されている。
【0037】
基板載置台212は、ウエハWの搬送時には、基板載置面211が基板搬入出口148に対向する位置まで下降する。また、ウエハWの処理時には、図4で示されるように、ウエハWが処理空間205内の処理位置となるまで上昇する。
【0038】
処理空間205の上部(上流側)には、ガス分散機構としてのシャワーヘッド230が設けられている。シャワーヘッド230の蓋231には、貫通孔231aが設けられる。貫通孔231aは、後述するガス供給管242と連通する。
【0039】
シャワーヘッド230は、ガスを分散させるための分散機構としての分散板234を備えている。この分散板234の上流側がバッファ空間232であり、下流側が処理空間205である。分散板234には、複数の貫通孔234aが設けられている。分散板234は、基板載置面211と対向するように配置されている。分散板234は、例えば円盤状に構成される。貫通孔234aは、分散板234の全面にわたって設けられている。
【0040】
シャワーヘッド230の支持ブロック233は、上部容器202aが有するフランジ上に載置されて固定される。また、分散板234は、支持ブロック233が有するフランジ233a上に載置されて固定される。さらに、蓋231は、支持ブロック233の上面に固定される。このような構造とすることで、上方から、蓋231、分散板234、支持ブロック233の順に取り外すことが可能となる。
【0041】
(供給部)
シャワーヘッド230の蓋231には、その蓋231に設けられたガス導入孔231aと連通するように、共通ガス供給管242が接続される。
【0042】
共通ガス供給管242には、第一ガス供給管243a、第二ガス供給管244a、第三ガス供給管245aが接続されている。第二ガス供給管244aは共通ガス供給管242に接続される。第二ガス供給管244aは、詳細を後述するようにガスを励起してプラズマ状態にするプラズマ生成部としてのリモートプラズマユニット(RPU)244eを介して、共通ガス供給管242に接続される。
【0043】
(第一ガス供給系)
第一ガス供給管243aには、上流方向から順に、第一ガス源243b、流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ(MFC)243c、および、開閉弁であるバルブ243dが設けられている。そして、第一ガス供給管243aからは、第一処理ガスが、MFC243c、バルブ243d、共通ガス供給管242を介して、シャワーヘッド230に供給される。
【0044】
第一処理ガスは、第一元素を含有する原料ガスである。ここで、第一元素は、例えばシリコン(Si)である。すなわち、第一元素含有ガスは、例えばシリコン含有ガスである。具体的には、シリコン含有ガスとして、ヘキサクロロジシラン(SiCl。HCDとも呼ぶ。)ガスが用いられる。
【0045】
主に、第一ガス供給管243a、MFC243c、バルブ243dにより、第一ガス供給系(以下「シリコン含有ガス供給系」ともいう。)243が構成される。なお、第一ガス供給源243b、共通ガス供給管242を、第一ガス供給系243に含めて考えてもよい。
【0046】
(第二ガス供給系)
第二ガス供給管244aには、上流方向から順に、第二ガス源244b、MFC244cおよびバルブ244dが設けられている。そして、第二ガス供給管244aからは、第二処理ガスが、MFC244c、バルブ244d、共通ガス供給管242を介して、シャワーヘッド230に供給される。
【0047】
第二処理ガスは、第一元素とは異なる第二元素を含有するガスである。ここで、第二元素は、例えば、酸素(O)、窒素(N)、炭素(C)のいずれか一つである。本実施形態において、第二元素含有ガスは、例えば酸素含有ガスであるものとする。具体的には、酸素含有ガスとしては、酸素(O)ガスが用いられる。なお、第二元素含有ガスである第二処理ガスについては、反応ガスまたは改質ガスとして考えてもよい。
【0048】
ウエハWをプラズマ状態の第二処理ガスで処理する場合、第二ガス供給管244aにリモートプラズマユニット244eを設けてもよい。
リモートプラズマユニット244eには、配線251が接続される。配線251の上流側には電源253が設けられ、リモートプラズマユニット244eと電源253の間には周波数整合器252が設けられる。電源253からの電力供給とともに、周波数整合器252によるマッチング用パラメータの調整を行い、リモートプラズマユニット244eでプラズマを生成する。なお、本実施形態においては、リモートプラズマユニット244e、配線251、周波数整合器252をまとめてプラズマ生成部と呼ぶ。プラズマ生成部に電源253を加えてもよい。
【0049】
主に、第二ガス供給管244a、MFC244c、バルブ244dにより、第二ガス供給系(以下「酸素含有ガス供給系」ともいう。)244が構成される。なお、第二ガス供給源244b、共通ガス供給管242を、第二ガス供給系244に含めて考えてもよい。
【0050】
(第三ガス供給系)
第三ガス供給管245aには、上流方向から順に、第三ガス源245b、MFC245cおよびバルブ245dが設けられている。そして、第三ガス供給管245aからは、不活性ガスが、MFC245c、バルブ245d、共通ガス供給管242を介して、シャワーヘッド230に供給される。
【0051】
不活性ガスは、例えば、窒素(N)ガスである。不活性ガスは、基板処理工程では、容器202やシャワーヘッド230内に留まったガスをパージするパージガスとして作用する。
【0052】
主に、第三ガス供給管245a、MFC245c、バルブ245dにより、第三ガス供給系245が構成される。なお、第三ガス供給源245b、共通ガス供給管242を、第三ガス供給系245に含めて考えてもよい。
【0053】
(排気系)
容器202の雰囲気を排気する排気系は、容器202に接続された複数の排気管を有する。具体的には、処理空間205に接続される排気管(第一排気管)262と、搬送空間206に接続される排気管(第二排気管)261とを有する。また、各排気管261,262の下流側には、排気管(第三排気管)264が接続される。なお、バッファ空間232に接続される排気管(第四排気管)263を設けてもよい。第四排気管263は、第三排気管264に接続される。
【0054】
排気管261は、搬送空間206の側方あるいは下方に設けられる。排気管261には、処理空間205内と搬送空間206内のいずれかまたは両方を所定の圧力に制御する圧力調整器であるAPC(Auto Pressure Controller)265が設けられる。APC265は、開度調整可能な弁体(図示せず)を有し、後述するコントローラ280からの指示に応じて排気管261のコンダクタンスを調整する。また、排気管261において、APC265の上流側には、搬送空間用第一排気バルブとしてのバルブ266が設けられる。
【0055】
排気管262は、処理空間205の側方に設けられる。排気管262には、処理空間205内を所定の圧力に制御する圧力制御器であるAPC(Auto Pressure Controller)267が設けられる。APC267は、開度調整可能な弁体(図示せず)を有し、後述するコントローラ280からの指示に応じて排気管262のコンダクタンスを調整する。また、排気管262において、APC267の上流側には、バルブ269が設けられる。排気管262、バルブ269、APC267をまとめて処理室排気系と呼ぶ。
【0056】
排気管263は、バッファ空間232に連通するよう、シャワーヘッド230に接続される。排気管263には、バルブ269が備えられる。排気管263、バルブ269をまとめてシャワーヘッド排気系と呼ぶ。
【0057】
排気管264には、ドライポンプ(DP:Dry Pump)270が設けられる。図示のように、排気管264には、その上流側から排気管263、排気管262、排気管261が接続され、さらにそれらの下流にDP270が設けられる。DP270は、排気管262、排気管263、排気管261のそれぞれを介してバッファ空間232、処理空間205および搬送空間206のそれぞれの雰囲気を排気する。上記した排気系の各バルブには、例えばエアバルブが用いられる。
【0058】
(コントローラ)
基板処理装置100は、当該基板処理装置100の各部の動作を制御するコントローラ280を有している。
図5は、本実施形態に係る基板処理装置が有するコントローラの構成例を模式的に示すブロック図である。
【0059】
図5に示すように、コントローラ280は、CPU(Central Processing Unit)280a、RAM(Random Access Memory)280b、記憶部280c、I/Oポート280dを少なくとも備えたコンピュータとして構成されている。RAM280b、記憶部280c、I/Oポート280dは、内部バス280fを介して、CPU280aとデータ交換可能なように構成されている。
【0060】
また、コントローラ280には、例えば、タブレット端末等の携帯可能な移動端末として構成された入出力装置281が電気的に接続されている。入出力装置281からは、コントローラ280に対して情報入力を行い得る。また、入出力装置281は、コントローラ280の制御に従って情報の表示出力を行うようになっている。つまり、入出力装置281は、情報の表示出力を行う表示部281aを備えて構成されている。なお、入出力装置281は、移動端末として構成されていることから、コントローラ280から取り外して用いることができ、取り外した状態であってもCPU280a等とのデータ交換が可能に構成されている。
【0061】
また、コントローラ280は、入出力装置281の他にも、外部記憶装置282が接続可能に構成されている。さらに、コントローラ280は、送受信部283を通じてネットワークが接続可能に構成されている。このことは、コントローラ280がネットワーク上に存在する上位装置としての群管理装置500とも接続可能であることを意味する。つまり、コントローラ280は、送受信部283を通じてネットワーク上の群管理装置500との間で情報の送受信を行い得るようになっている。
【0062】
コントローラ280における記憶部280cは、例えばフラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)等で構成されている。記憶部280c内には、基板処理装置100の動作を制御する制御プログラムや、後述する基板処理の手順や条件等が記載されたプロセスレシピ、後述する位置情報およびマップ情報等が、読み出し可能に格納されている。なお、プロセスレシピは、後述する基板処理工程における各手順をコントローラ280に実行させ、所定の結果を得ることができるように組み合わされたものであり、プログラムとして機能する。以下、このプロセスレシピや制御プログラム等を総称して、単にプログラムともいう。なお、本明細書においてプログラムという言葉を用いた場合は、プロセスレシピ単体のみを含む場合、制御プログラム単体のみを含む場合、または、その両方を含む場合がある。また、RAM280bは、CPU280aによって読み出されたプログラムやデータ等が一時的に保持されるメモリ領域(ワークエリア)として構成されている。
【0063】
I/Oポート280dは、各ゲートバルブ149、RC200に設けられた昇降機構218、MFC243c〜245c、バルブ243d〜245d,266,268,269、RPU244e等をはじめとする基板処理装置100の各構成に接続されている。
【0064】
CPU280aは、記憶部280cから制御プログラムを読み出して実行するとともに、入出力装置281からの操作コマンドの入力等に応じて記憶部280cからプロセスレシピを読み出すように構成されている。そして、CPU280aは、読み出されたプロセスレシピの内容に沿うように、ゲートバルブ149の開閉動作、ロボット170の動作、昇降機構218の昇降動作、各ポンプのオンオフ制御、MFCの流量調整動作、バルブ等を制御可能に構成されている。また、CPU280aは、読み出されたプログラムを実行することで、詳細を後述するように、位置情報取得部280gおよび情報制御部280hとして機能するようになっている。
【0065】
なお、コントローラ280は、専用のコンピュータとして構成してもよいし、汎用のコンピュータとして構成してもよい。例えば、上述のプログラムを格納した外部記憶装置(例えば、磁気テープ、フレキシブルディスクやハードディスク等の磁気ディスク、CDやDVD等の光ディスク、MO等の光磁気ディスク、USBメモリ(USB Flash Drive)やメモリカード等の半導体メモリ)282を用意し、その外部記憶装置282を用いて汎用のコンピュータにプログラムをインストールすることにより、本実施形態に係るコントローラ280を構成することができる。また、コンピュータにプログラムを供給するための手段は、外部記憶装置282を介して供給する場合に限らない。例えば、インターネットや専用回線等の通信手段を用いても良いし、上位装置である群管理装置500から送受信部283を介して情報を受信し、外部記憶装置282を介さずにプログラムを供給するようにしてもよい。また、入出力装置281を用いて、コントローラ280に指示をしてもよい。
【0066】
コントローラ280における記憶部280c、および、コントローラ280に接続可能な外部記憶装置282は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体として構成される。以下、これらを総称して、単に記録媒体ともいう。なお、本明細書において記録媒体という言葉を用いた場合は、記憶部280c単体のみを含む場合、外部記憶装置282単体のみを含む場合、または、その両方を含む場合がある。
【0067】
(4)基板処理工程の概要
次に、半導体製造工程の一工程として、上述した構成の基板処理装置100を用いて、ウエハWに対する所定処理を行う基板処理工程について、その概要を説明する。
図6は、本実施形態に係る基板処理装置100で行われる基板処理工程の概要を示すフロー図である。
ここでは、基板処理工程として、ウエハW上に薄膜を形成する場合を例に挙げる。なお、以下の説明において、基板処理装置100を構成する各部の動作は、コントローラ280により制御される。
【0068】
(基板搬入・加熱工程:S102)
先ず、基板搬入・加熱工程(S102)について説明する。
基板搬入・加熱工程(S102)では、容器202内にウエハWを搬入する。そして、容器202内にウエハWを搬入したら、真空搬送ロボット170を容器202の外へ退避させ、ゲートバルブ149を閉じて容器202内を密閉する。その後、基板載置台212を上昇させることにより、基板載置台212に設けられた基板載置面211上にウエハWを載置させ、さらに基板載置台212を上昇させることにより、前述した処理空間205内の処理位置(基板処理ポジション)までウエハWを上昇させる。
【0069】
ウエハWが搬送空間206に搬入された後、処理空間205内の処理位置まで上昇すると、バルブ266(とバルブ269)を閉状態とする。これにより、搬送空間206とAPC265の間(および、バッファ空間232と排気管264との間)が遮断され、APC265による搬送空間206の排気が終了する。一方、バルブ268を開き、処理空間205とAPC267の間を連通させるとともに、APC267とDP270の間を連通させる。APC267は、排気管262のコンダクタンスを調整することで、DP270による処理空間205の排気流量を制御し、処理空間205を所定の圧力(例えば10−5〜10−1Paの高真空)に維持する。
【0070】
このようにして、基板搬入・加熱工程(S102)では、処理空間205内を所定の圧力となるように制御するとともに、ウエハWの表面温度が所定の温度となるように制御する。温度は、例えば室温以上500℃以下であり、好ましくは室温以上であって400℃以下である。圧力は例えば50〜5000Paとすることが考えられる。
【0071】
(成膜工程:S104)
続いて、成膜工程(S104)について説明する。
処理空間201内の処理位置にウエハWを位置させたら、基板処理装置100では、成膜工程(S104)を行う。成膜工程(S104)は、プロセスレシピに応じて、異なる処理ガスである第一処理ガス(第一元素含有ガス)と第二処理ガス(第二元素含有ガス)とを処理空間205に供給することで、ウエハW上に薄膜を形成する工程である。成膜工程(S104)では、第一処理ガスと第二処理ガスとを同時に処理空間205に存在させてCVD(chemical vapor deposition)処理を行ったり、第一処理ガスと第二処理ガスとを交互に供給する工程を繰り返すサイクリック(交互供給)処理を行ったりしてもよい。また、第二処理ガスをプラズマ状態として処理する場合は、RPU244eを起動してもよい。なお、成膜工程(S104)については、その詳細を後述する。
【0072】
(基板搬入出工程:S106)
次に、基板搬入出工程(S106)について説明する。
成膜工程(S104)の終了後、基板処理装置100では、基板搬入出工程(S106)を行う。基板搬入出工程(S106)では、上述した基板搬入・加熱工程(S102)と逆の手順にて、処理済みのウエハWを容器202の外へ搬出する。そして、基板搬入・加熱工程(S102)と同様の手順にて、次に待機している未処理のウエハWを容器202内に搬入する。その後、搬入されたウエハWに対しては、成膜工程(S104)が実行されることになる。
【0073】
(判定工程:S108)
次に、判定工程(S108)を説明する。
基板搬入出工程(S106)を終えると、基板処理装置100では、上述した一連の処理(S102〜S106)を1つのサイクルとし、その1サイクルを所定回数実施したか否かを判定する。そして、所定回数実施していなければ、基板搬入・加熱工程(S102)から基板搬入出工程(S106)までの1サイクルを繰り返す。一方、所定回数実施したときには、基板処理工程を終了する。
【0074】
(5)成膜工程の基本的な手順
次に、上述した基板処理工程のうちの成膜工程(S104)について、基本的な手順を説明する。
図7は、本実施形態に係る基板処理装置で行われる成膜工程の基本的な手順を示すフロー図である。
ここでは、第一処理ガス(第一元素含有ガス)としてHCDを気化させて得られるHCDガスを用い、第二処理ガス(第二元素含有ガス)としてOガスを用いて、それらを交互に供給することによって、ウエハW上にシリコン含有膜としてのシリコン酸化膜(SiO)膜を形成する場合を例に挙げる。
【0075】
(第一処理ガス供給工程:S202)
第一処理ガス供給工程(S202)を説明する。
成膜工程に際しては、先ず、第一ガス供給系243から処理空間205内に第一処理ガス(第一元素含有ガス)としてのHCDガスを供給する。処理空間205内に供給されたHCDガスは、ウエハ処理位置にあるウエハWの面上に到達する。これにより、ウエハWの表面には、HCDガスが接触することによって「第一元素含有層」としてのシリコン含有層が形成される。シリコン含有層は、例えば、容器202内の圧力、HCDガスの流量、基板載置台212の温度、処理空間205の通過にかかる時間等に応じて、所定の厚さおよび所定の分布で形成される。
【0076】
DCSガスの供給を開始してから所定時間経過後、バルブ243dを閉じて、HCDガスの供給を停止する。なお、第一処理ガス供給工程(S202)では、バルブ268が開とされ、APC267によって処理空間205の圧力が所定の圧力となるように制御される。また、第一処理ガス供給工程(S202)において、バルブ268以外の排気系のバルブは全て閉とされる。
【0077】
(パージ工程:S204)
パージ工程(S204)を説明する。
第一処理ガス供給工程(S202)の後は、次に、第三ガス供給管245aからNガスを供給し、処理空間205およびシャワーヘッド230のパージを行う。これにより、第一処理ガス供給工程(S202)でウエハWに結合できなかったHCDガスは、DP270により処理空間205から除去される。また、シャワーヘッド230(バッファ空間232)内に残留したHCDガスは、DP270によりバッファ空間232から除去される。
【0078】
(第二処理ガス供給工程:S206)
第二処理ガス供給工程(S206)を説明する。
パージ工程(S204)の後は、次に、第二ガス供給系244から処理空間205内に第二処理ガス(第二元素含有ガス)としてのOガスを供給する。Oガスは、RPU244eによりプラズマ状態とされ、ウエハ処理位置にあるウエハWの面上に照射されるようにしてもよい。これにより、ウエハWの面上では、既に形成されているシリコン含有層が改質され、例えばSi元素およびO元素を含有する層であるSiO膜が形成される。
【0079】
そして、所定時間の経過後、バルブ244dを閉じて、Oガスの供給を停止する。なお、第二処理ガス供給工程(S206)においても、上述した第一処理ガス供給工程(S202)と同様に、バルブ268が開とされ、APC267によって処理空間205の圧力が所定の圧力となるように制御される。また、バルブ268以外の排気系のバルブは全て閉とされる。
【0080】
(パージ工程:S208)
パージ工程(S208)を説明する。
第二処理ガス供給工程(S206)の後に、パージ工程(S208)を実行する。パージ工程(S208)における各部の動作は、上述したパージ工程(S204)の場合と同様であるので、ここではその説明を省略する。
【0081】
(判定工程:S210)
判定工程(S210)を説明する。
パージ工程(S208)を終えると、続いて、コントローラ280は、上述した一連の処理(S202〜S208)を1つのサイクルとし、その1サイクルを所定回数(n cycle)実施したか否かを判定する。そして、所定回数実施していなければ、第一処理ガス供給工程(S202)からパージ工程(S208)までの1サイクルを繰り返す。一方、所定回数実施したときには、成膜工程(S104)を終了する。
【0082】
このように、成膜工程(S104)では、第一処理ガス供給工程(S202)からパージ工程(S208)までの各工程を順次行うことで、ウエハWの面上に所定の厚さのSiO膜が堆積される。そして、これらの各工程を1サイクルとし、その1サイクルを所定回数繰り返すことで、ウエハWの面上に形成されるSiO膜が所望の膜厚に制御される。
【0083】
(6)群管理装置の構成
次に、基板処理装置100の上位装置である群管理装置500の構成例について説明する。
図8は、本実施形態に係る群管理装置の構成例を模式的に示すブロック図である。
【0084】
図6に示すように、本実施形態に係る群管理装置500は、CPU510、RAM520、記憶部530を少なくとも備えたコンピュータとして構成されている。RAM520、記憶部530は、内部バス540を介して、CPU510とデータ交換可能なように構成されている。
【0085】
また、群管理装置500は、送受信部550を通じてネットワークが接続可能に構成されている。このことは、群管理装置500がネットワークを介してCR400内に設置された各基板処理装置100と接続可能であることを意味する。つまり、群管理装置500は、送受信部283を通じて各基板処理装置100のそれぞれとの間で情報の送受信を行い得るようになっている。
【0086】
群管理装置500における記憶部530は、例えばフラッシュメモリ、HDD等で構成されている。記憶部530内には、各基板処理装置100を管理する管理プログラムや、後述するマップ情報に関する制御動作を行うための制御プログラム等が、読み出し可能に格納されている。また、RAM520は、CPU510によって読み出されたプログラムやデータ等が一時的に保持されるメモリ領域(ワークエリア)として構成されている。
【0087】
CPU510は、記憶部530からプログラムを読み出して実行するように構成されている。そして、CPU510は、読み出されたプログラムを実行することで、詳細を後述するように、位置情報要求部511、マップ情報生成部512およびマップ情報管理部513として機能するようになっている。
【0088】
なお、群管理装置500は、専用のコンピュータとして構成してもよいし、汎用のコンピュータとして構成してもよい。このことは、上述したコントローラ280の場合と同様である。また、汎用のコンピュータにプログラムをインストールすることにより、本実施形態に係る群管理装置500を構成することができる。その場合に、コンピュータにプログラムを供給するための手段が特に限定されないことは、上述したコントローラ280の場合と同様である。
【0089】
(7)基板処理システム管理方法
次に、上述した各基板処理装置100および群管理装置500を備えて構成された基板処理システムにおいて、各基板処理装置100を管理する方法の一具体例について説明する。
図9は、本実施形態に係る基板処理システムで行われる管理方法の一具体例の手順を示すフロー図である。
ここでは、基板処理システムにおいて、各基板処理装置100および群管理装置500が、以下に説明する第一工程(S302)〜第七工程(S314,S316)の各工程を行う場合を例に挙げる。なお、各基板処理装置100および当該基板処理装置100におけるコントローラ280については、以下「ツール」と称することもある。
【0090】
(第一工程:S302)
先ず、第一工程(S302)について説明する。
第一工程(S302)は、各基板処理装置100の側で行われる工程であり、各基板処理装置100について後述する位置情報を取得するとともに、取得した位置情報を各基板処理装置100のコントローラ280における記憶部280cに保存させる工程である。位置情報を取得することから、第一工程(S302)は、「位置情報取得工程」と言い換えることもできる。このような第一工程(S302)は、例えば、CR400内への基板処理装置100の設置またはCR400内での基板処理装置100の移動があった時点で行われる。
【0091】
第一工程(S302)で取得する位置情報は、基板処理装置100(特に、当該基板処理装置100が備えるRC(処理室)200)のCR400内での設置位置を特定する情報である。具体的には、位置情報として、例えば、CR400内での設置区画を特定するアドレス情報が挙げられる。ただし、CR400内での設置位置を特定可能であれば、他の形式の情報であってもよい。
【0092】
位置情報の取得は、コントローラ280のCPU280aによって実現される位置情報取得部280gとしての機能を用いて行う。つまり、位置情報取得部280gが位置情報の取得を行う。具体的には、例えば、位置情報取得部280gによる制御に従いつつ、入出力装置281の表示部281aに所定のGUI(Graphical User Interface)画面を表示し、そのGUI画面を通じて基板処理装置100の管理者、操作者または保守作業者に情報入力操作を行わせることで、位置情報の取得を行うことが考えられる。ただし、必ずしもこれに限定されることはなく、例えば、位置情報取得部280gがGPS(Global Positioning System)機能に対応していれば、そのGPS機能を利用して位置情報の取得を行うようにしてもよい。また、例えば、位置情報取得部280gがWi−Fi機能に対応していれば、そのWi−Fi機能を通じて外部装置から位置情報の取得を行うようにしてもよい。
【0093】
取得した位置情報は、コントローラ280のCPU280aによって実現される情報制御部280hとしての機能により記憶部280cに保存される。つまり、情報制御部280hは、位置情報取得部280gが取得した位置情報を記憶部280cに保存させる。このとき、情報制御部280hは、位置情報を、位置情報ファイルを構成する情報の一つとして、記憶部530に保存させる。
【0094】
記憶部530に保存させる位置情報ファイルには、必須設定情報である位置情報の他に、以下のような任意設定情報を含めるようにしてもよい。具体的には、任意設定情報として、例えば、基板処理装置100の固有ID情報、基板処理装置100の種別情報(例えば、CVD、スパッタ、プロセス種類の別等に関する情報)、基板処理装置100が対応するガスパターン情報(例えば、ガス種や排気経路等に関する情報)、基板処理装置100のサイズ情報(例えば、基板処理装置100の設置面積やCR400内の占有区画数等に関する情報)等が挙げられる。
【0095】
(第二工程:S304)
続いて、第二工程(S304)について説明する。
第二工程(S304)は、群管理装置500の側で行われる工程であり、各基板処理装置100に対して、当該基板処理装置100の記憶部530が保存する位置情報の送信を要求する工程である。位置情報の送信を要求することから、第二工程(S304)は、「位置情報要求工程」と言い換えることもできる。このような第二工程(S304)は、予め設定された所定のタイミング毎(例えば、1分毎、5分毎、10分毎等)に行われる。
【0096】
位置情報の送信の要求は、群管理装置500のCPU510によって実現される位置情報要求部511としての機能を用いて行う。つまり、位置情報要求部511が位置情報を要求する。具体的には、位置情報要求部511は、各基板処理装置100に対して、所定フォーマットの送信要求情報を送信することによって、位置情報の要求を行えばよい。送信要求情報のフォーマット等は、特に限定されるものではない。
【0097】
(第三工程:S306)
次に、第三工程(S306)について説明する。
第三工程(S306)は、各基板処理装置100の側で行われる工程であり、群管理装置500からの要求に応じて、記憶部280cが保存している位置情報を読み出して、要求元の群管理装置500へ送信する工程である。位置情報を送信することから、第三工程(S306)は、「位置情報送信工程」と言い換えることもできる。このような第三工程(S306)は、群管理装置500からの要求がある毎に行われる。したがって、第二工程(S304)および第三工程(S306)は、所定のタイミング毎(例えば、1分毎、5分毎、10分毎等)に定期的に繰り返し行われることになる。
【0098】
位置情報の記憶部280cからの読み出しおよび群管理装置500への送信は、情報制御部280hとしての機能を用いて行う。つまり、情報制御部280hは、群管理装置500からの送信要求情報を受信すると、記憶部280cが保存している位置情報を読み出すとともに、要求元の群管理装置500を出力先として、読み出した位置情報の出力(送信)を行う。
【0099】
なお、記憶部530が位置情報ファイルによって保存を行っており、その位置情報ファイルに複数の設定情報が含まれている場合に、情報制御部280hは、群管理装置500へ送信する情報を選択可能にしてもよい。例えば、情報制御部280hは、位置情報ファイルの送信設定の画面にチェックボックスを表示し、そのチェックボックスを利用して、位置情報に加えて群管理装置500へ送信する任意設定情報を選択し得るようにしてもよい。
【0100】
(第四工程:S308)
次に、第四工程(S308)について説明する。
第四工程(S308)は、群管理装置500の側で行われる工程であり、各基板処理装置100から送信された位置情報を基に、後述するマップ情報を生成する工程である。マップ情報を生成することから、第四工程(S308)は、「マップ情報生成工程」と言い換えることもできる。このような第四工程(S308)は、各基板処理装置100から位置情報を受信した時点で行われる。
【0101】
第四工程(S308)で生成するマップ情報は、CR400内における各基板処理装置100の配置を視覚的に認識し得るように表した情報であり、CR400内の装置配置に関するマップ(地図)に相当する情報である。このようなマップ情報によれば、各基板処理装置100がCR400内のどこにあるかや、ある基板処理装置100の周囲にどのような基板処理装置100が配置されているか等を容易に把握し得るようになり、さらにはCR400内における動線の判別が容易となる。なお、マップ情報は、各基板処理装置100のサイズ情報に応じて、当該基板処理装置100の占有率を表示するものであってもよい。また、マップ情報は、各基板処理装置100の占有情報が重複した場合に、エラー表示をするものであってもよい。
【0102】
マップ情報の生成は、群管理装置500のCPU510によって実現されるマップ情報生成部512としての機能を用いて行う。つまり、マップ情報生成部512がマップ情報の生成を行う。具体的には、マップ情報生成部512は、所定のマップフォーマットデータに基づいて、そのマップフォーマットデータに各基板処理装置100から受信した位置情報の内容を当て嵌めることによって、マップ情報の生成を行えばよい。マップフォーマットデータの形式等は、特に限定されるものではない。また、マップフォーマットデータは、予め群管理装置500の記憶部530が保持しているものであってもよいし、群管理装置500がネットワーク等を通じてアクセス可能な外部装置(サーバ装置)等から取得したものであってもよい。
【0103】
(第五工程:S310)
次に、第五工程(S310)について説明する。
第五工程(S310)は、群管理装置500の側で行われる工程であり、マップ情報生成部512が生成したマップ情報を、各基板処理装置100のそれぞれに対して送信する工程である。マップ情報を送信することから、第五工程(S310)は、「マップ情報送信工程」と言い換えることもできる。このような第五工程(S310)は、マップ情報生成部512によるマップ情報の生成が終了した時点で行われる。
【0104】
マップ情報の送信は、群管理装置500のCPU510によって実現されるマップ情報管理部513としての機能を用いて行う。つまり、マップ情報管理部513がマップ情報の送信を行う。なお、マップ情報管理部513は、後述するように、送信先の記憶部280cにマップ情報を保存させるとともに、そのマップ情報を送信先の入出力装置281における表示部281aに表示させるために、マップ情報の送信を行う。
【0105】
(第六工程:S312)
次に、第六工程(S312)について説明する。
第六工程(S312)は、各基板処理装置100の側で行われる工程であり、群管理装置500からマップ情報を受信すると、そのマップ情報を記憶部280cに保存させるとともに、そのマップ情報を入出力装置281における表示部281aに表示させる工程である。マップ情報の表示を行うことから、第六工程(S312)は、「マップ情報表示工程」と言い換えることもできる。このような第六工程(S312)は、群管理装置500からマップ情報を受信する毎に行われる。
【0106】
受信したマップ情報の記憶部280cへの保存および表示部281aでの表示は、情報制御部280hとしての機能を用いて行う。つまり、情報制御部280hは、群管理装置500から受信したマップ情報を、記憶部280cに保存させるとともに、表示部281aに表示させる。
【0107】
このとき、マップ情報を表示する表示部281aを備える入出力装置281は、タブレット端末等の移動端末によって構成されている。したがって、基板処理装置100の管理者、操作者または保守作業者は、入出力装置281をコントローラ280から取り外した状態で携帯して移動することで、当該基板処理装置100から離れた場所にいても、当該基板処理装置100の周囲状況の把握や動線の判別等を容易に行うことができる。
【0108】
(第七工程:S314,S316)
次に、第七工程(S314,S316)について説明する。
第七工程(S314,S316)は、各基板処理装置100の側で行われる工程であり、群管理装置500からマップ情報を受信する毎に行われる工程である。
【0109】
第七工程では、先ず、群管理装置500から受信したマップ情報と、既に記憶部280cで保存しているマップ情報とを比較して、それぞれの間に差異があるか否か、すなわち新旧のマップ情報の間で情報修正があるか否かを判別する(S314)。そして、情報修正がある場合には、CR400内における各基板処理装置100の設置状況に変更が生じていることから、その旨のメッセージ情報を出力する(S316)。メッセージ情報を出力することから、第七工程(S314,S316)は、「メッセージ出力工程」と言い換えることもできる。
【0110】
マップ情報の比較、情報修正有無の判別およびメッセージ情報の出力は、情報制御部280hとしての機能を用いて行う。つまり、情報制御部280hは、群管理装置500からマップ情報を受信すると、これを保存済みのマップ情報と比較して、情報修正の有無の判別し、情報修正がある場合にその旨のメッセージ情報の出力を行う。
【0111】
情報制御部280hが出力するメッセージ情報は、予め設定されたフォーマットによるであればよい。ただし、基板処理装置100の設置状況に変更が生じている旨を報知し得るものであれば、そのフォーマット等が特に限定されるものではない。
【0112】
メッセージ情報の出力先は、入出力装置281における表示部281aまたは群管理装置500の少なくとも一方、好ましくは両方とすることが考えられる。これにより、少なくとも基板処理装置100の管理者、操作者または保守作業者のいずれかに対して、基板処理装置100の設置状況に変更が生じている旨を報知し得るようになる。
【0113】
つまり、このようなメッセージ情報の出力により、基板処理装置100の管理者、操作者または保守作業者のいずれかに対して、基板処理装置100の設置状況の変更に応じて、各基板処理装置100の設定確認を促すメッセージを報知することができる。具体的には、例えば、ある基板処理装置100の隣の区画の基板処理装置100が撤去された場合を考える。その場合には、当該ある基板処理装置100の排気特性が向上し、これまでに行っていた基板処理工程における処理特性に影響を及ぼす可能性が生じてしまう。ところが、基板処理装置100の設置状況の変更に応じてメッセージ情報を出力すれば、これにより当該ある基板処理装置100の設定確認を管理者等に促すことができるので、設定確認作業を行わせることで、基板処理工程における処理特性への影響を未然に排除し得るようになる。
【0114】
本実施形態では、上述した第一工程(S302)〜第七工程(S314,S316)の各工程を行うことで、CR400内に設置された各基板処理装置100の管理を行う。そして、各工程のうち、特に第二工程(S304)および第三工程(S306)については、所定のタイミング毎(例えば、1分毎、5分毎、10分毎等)に定期的に繰り返す。つまり、CR400内に設置された各基板処理装置100の位置情報は、所定のタイミングで恒常的に監視される。したがって、例えば各基板処理装置100の設置状況の変更がどのタイミングで行われるかに拘らず、その変更が基板処理装置100による基板処理工程の処理特性に影響を及ぼしてしまうのを未然に排除し得るようになる。
【0115】
(8)本実施形態の効果
本実施形態によれば、以下に示す一つまたは複数の効果を奏する。
【0116】
(a)本実施形態では、各基板処理装置100において、位置情報取得部280gが位置情報の取得を行うとともに、取得した位置情報を情報制御部280hが記憶部280cに保存させる。つまり、位置情報を基板処理装置100そのものに持たせるようになっている。したがって、CR400内に複数の基板処理装置100が設置されている場合に、各基板処理装置100の設置状況に変更(例えば、新たな基板処理装置100の設置、基板処理装置100の位置移動、基板処理装置100の撤去等)が生じても、その変更に迅速かつ適切に対応することが可能となる。
【0117】
(b)本実施形態では、各基板処理装置100において、上位装置である群管理装置500から位置情報の送信要求情報を受信すると、情報制御部280hが記憶部280cから位置情報を読み出して要求元の群管理装置500へ出力(送信)する。つまり、各基板処理装置100に送信要求情報を送信することで、各基板処理装置100の位置情報を群管理装置500に集約させる。したがって、位置情報を各基板処理装置100に持たせる場合であっても、各基板処理装置100の位置情報を適切に管理することが可能となる。具体的には、各基板処理装置100の配置を視覚的に認識可能にするマップ情報を作成する上で、非常に好適なものとなる。
【0118】
特に、本実施形態で説明したように、送信要求情報の送信および位置情報の集約(具体的には、第二工程および第三工程)を所定のタイミング毎に定期的に繰り返すようにすれば、各基板処理装置100の位置情報は、所定のタイミングで恒常的に監視されることになる。したがって、例えば各基板処理装置100の設置状況の変更がどのタイミングで行われるかに拘らず、その変更が基板処理装置100による基板処理工程の処理特性に影響を及ぼしてしまうのを未然に排除し得るといったように、各基板処理装置100についての管理を適切に行い得るようになる。
【0119】
(c)本実施形態では、各基板処理装置100において、上位装置である群管理装置500で生成されたマップ情報を受信すると、そのマップ情報を入出力装置281における表示部281aに表示させる。したがって、表示部281aで表示されるマップ情報を参照することで、基板処理装置100の管理者、操作者または保守作業者は、当該基板処理装置100がCR400内のどこにあるか、当該基板処理装置100の周囲にどのような基板処理装置100が配置されているか等を容易に把握し得るようになり、さらにはCR400内における動線の判別が容易となる。つまり、基板処理装置100の管理者、操作者または保守作業者にとって、優れた利便性を有したものとなる。
【0120】
(d)本実施形態では、マップ情報を表示する表示部281aを備える入出力装置281が、タブレット端末等の移動端末によって構成されている。したがって、基板処理装置100の管理者、操作者または保守作業者は、入出力装置281をコントローラ280から取り外した状態で携帯して移動することで、当該基板処理装置100から離れた場所にいても、当該基板処理装置100の周囲状況の把握や動線の判別等を容易に行うことができる。つまり、基板処理装置100の管理者、操作者または保守作業者にとっては、より一層利便性に優れたものとなる。
【0121】
(e)本実施形態では、各基板処理装置100において、上位装置である群管理装置500からマップ情報を受信すると、情報制御部280hが、受信したマップ情報と既に記憶部280cで保存しているマップ情報とを比較して、それぞれの間に差異がある場合に、その旨のメッセージ情報を入出力装置281における表示部281aまたは群管理装置500の少なくとも一方に出力する。このようなメッセージ情報の出力により、基板処理装置100の管理者、操作者または保守作業者のいずれかに対して、基板処理装置100の設置状況の変更に応じて、各基板処理装置100の設定確認を促すメッセージを報知することができる。つまり、基板処理装置100の設置状況の変更に応じてメッセージ情報を出力することで、各基板処理装置100の設定確認を管理者等に促すことができるので、設置状況の変更が各基板処理装置100での基板処理工程の処理特性に影響を及ぼしてしまうのを未然に排除することができる。
【0122】
<他の実施形態>
以上に、本開示の一実施形態を具体的に説明したが、本開示が上述の実施形態に限定されることはなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能である。
【0123】
例えば、上述した実施形態では、基板処理工程の一工程である成膜工程において、第一処理ガス(第一元素含有ガス)としてHCDガスを用い、第二処理ガス(第二元素含有ガス)としてOガスを用いて、これらを交互に供給することによってウエハW上にSiO膜を形成する場合を例に挙げたが、本開示がこれに限定されることはない。すなわち、成膜処理に用いる処理ガスは、HCDガスやOガス等に限られることはなく、他の種類のガスを用いて他の種類の薄膜を形成しても構わない。さらには、3種類以上の処理ガスを用いる場合であっても、これらを交互に供給して成膜処理を行うのであれば、本開示を適用することが可能である。具体的には、第一元素としては、Siではなく、例えばチタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)等、種々の元素であってもよい。また、第二元素としては、Oではなく、例えば窒素(N)等であってもよい。
【0124】
また、例えば、上述した各実施形態では、基板処理装置が行う処理として成膜処理を例に挙げたが、本開示がこれに限定されることはない。すなわち、本開示は、各実施形態で例に挙げた成膜処理の他に、各実施形態で例示した薄膜以外の成膜処理にも適用できる。また、基板処理の具体的内容は不問であり、成膜処理だけでなく、アニール処理、拡散処理、酸化処理、窒化処理、リソグラフィ処理等の他の基板処理を行う場合にも適用できる。さらに、本開示は、他の基板処理装置、例えばアニール処理装置、エッチング装置、酸化処理装置、窒化処理装置、露光装置、塗布装置、乾燥装置、加熱装置、プラズマを利用した処理装置等の他の基板処理装置にも適用できる。また、本開示は、これらの装置が混在していてもよい。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加、削除、置換をすることも可能である。
【0125】
また、例えば、上述した実施形態では、半導体装置の製造工程の一工程として、ウエハに対する処理を行う場合を例に挙げたが、本開示がこれに限定されることはない。すなわち、処理対象となる基板は、ウエハに限らず、ホトマスク、プリント配線基板、液晶パネル、磁気ディスク、光ディスク等であってもよい。
【0126】
<本開示の好ましい態様>
以下に、本開示の好ましい態様について付記する。
【0127】
[付記1]
本開示の一態様によれば、
基板を処理する処理室と、
前記処理室の位置情報を取得する位置情報取得部と、
前記位置情報を保存する記憶部と、
前記位置情報取得部が取得した前記位置情報を前記記憶部に保存させるとともに、必要に応じて前記記憶部が保存する前記位置情報を出力させる情報制御部と、
を有する基板処理装置が提供される。
【0128】
[付記2]
好ましくは、
上位装置との間で情報を送受信する送受信部を有し、
前記情報制御部は、前記送受信部が前記上位装置から前記位置情報の送信要求情報を受信すると、前記上位装置を出力先として前記記憶部が保存する前記位置情報を前記送受信部に送信させるように構成されている
付記1に記載の基板処理装置が提供される。
【0129】
[付記3]
好ましくは、
情報の表示出力を行う表示部を有し、
前記情報制御部は、前記上位装置に送信した前記位置情報を基に生成されたマップ情報を前記上位装置から受信すると、前記マップ情報を前記記憶部に保存させるとともに、前記マップ情報を前記表示部に表示させるように構成されている
付記2に記載の基板処理装置が提供される。
【0130】
[付記4]
好ましくは、
前記表示部は、移動端末によって構成されている
付記3に記載の基板処理装置が提供される。
【0131】
[付記5]
好ましくは、
前記情報制御部は、前記上位装置から受信した前記マップ情報と前記記憶部で保存している前記マップ情報とを比較して、それぞれの間に差異がある場合に、その旨の情報を前記表示部または前記上位装置の少なくとも一方に出力するように構成されている
付記3または4に記載の基板処理装置が提供される。
【0132】
[付記6]
本開示の他の一態様によれば、
基板を処理する処理室を有した基板処理装置との間で情報を送受信する送受信部と、
前記処理室の位置情報を前記送受信部が前記基板処理装置から受信すると、前記位置情報に基づいてマップ情報を生成するマップ情報生成部と、
前記マップ情報生成部が生成した前記マップ情報を前記基板処理装置に送信して、前記基板処理装置が有する表示部に表示させるマップ情報管理部と、
を有する上位装置が提供される。
【0133】
[付記7]
本開示のさらに他の一態様によれば、
基板を処理する処理室を有した基板処理装置と、
前記基板処理装置との間で情報の送受信を行うように構成された上位装置と、
を備え、
前記基板処理装置は、
前記処理室の位置情報を取得する位置情報取得部と、
前記位置情報を保存する記憶部と、
前記位置情報取得部が取得した前記位置情報を前記記憶部に保存させるとともに、前記上位装置からの前記位置情報の送信要求情報に応じて前記記憶部が保存する前記位置情報を前記上位装置に送信させる情報制御部と、
前記記憶部に保存された情報を表示する表示部と、
を有し、
前記上位装置は、
前記処理室の位置情報を前記基板処理装置から受信すると、前記位置情報に基づいてマップ情報を生成するマップ情報生成部と、
前記マップ情報生成部が生成した前記マップ情報を前記基板処理装置に送信して、前記基板処理装置が有する前記表示部に表示させるマップ管理部と、
を有する基板処理システムが提供される。
【0134】
[付記8]
本開示のさらに他の一態様によれば、
基板を処理する処理室を有した基板処理装置について前記処理室の位置情報を取得するとともに、取得した前記位置情報を前記基板処理装置が有する記憶部に保存させる第一工程と、
前記記憶部が保存する前記位置情報の送信を要求する第二工程と、
要求に応じて前記記憶部が保存する前記位置情報を送信する第三工程と、
送信された前記位置情報を基にマップ情報を生成する第四工程と、
生成した前記マップ情報を前記基板処理装置に送信して前記記憶部に保存させる第五工程と、
前記マップ情報を前記基板処理装置が有する表示部に表示させる第六工程と、
を有する半導体装置の製造方法が提供される。
【0135】
[付記9]
好ましくは、
前記基板処理装置に送信された前記マップ情報と当該基板処理装置の前記記憶部で保存している前記マップ情報とを比較して、それぞれの間に差異がある場合に、その旨の情報を出力する第七工程
を有する付記8に記載の半導体装置の製造方法が提供される。
【0136】
[付記10]
本開示のさらに他の一態様によれば、
基板を処理する処理室を有した基板処理装置について前記処理室の位置情報を取得するとともに、取得した前記位置情報を前記基板処理装置が有する記憶部に保存させる手順と、
必要に応じて前記記憶部が保存する前記位置情報を出力する手順と、
前記記憶部から出力した前記位置情報を基に生成されたマップ情報を受け取って、前記マップ情報を前記記憶部に保存させる手順と、
前記マップ情報を前記基板処理装置が有する表示部に表示させる手順と、
をコンピュータによって前記基板処理装置に実行させるプログラムが提供される。
【0137】
[付記11]
好ましくは、
受け取った前記マップ情報と前記記憶部で保存している前記マップ情報とを比較して、それぞれの間に差異がある場合に、その旨の情報を出力する手順
をコンピュータによって前記基板処理装置に実行させる付記10に記載のプログラムが提供される。
【0138】
[付記12]
本開示のさらに他の一態様によれば、
基板を処理する処理室を有した基板処理装置について前記処理室の位置情報を取得するとともに、取得した前記位置情報を前記基板処理装置が有する記憶部に保存させる手順と、
必要に応じて前記記憶部が保存する前記位置情報を出力する手順と、
前記記憶部から出力した前記位置情報を基に生成されたマップ情報を受け取って、前記マップ情報を前記記憶部に保存させる手順と、
前記マップ情報を前記基板処理装置が有する表示部に表示させる手順と、
をコンピュータによって前記基板処理装置に実行させるプログラムが格納されたコンピュータ読み取り可能な記録媒体が提供される。
【0139】
[付記13]
好ましくは、
受け取った前記マップ情報と前記記憶部で保存している前記マップ情報とを比較して、それぞれの間に差異がある場合に、その旨の情報を出力する手順
をコンピュータによって前記基板処理装置に実行させる付記12に記載のプログラムが格納されたコンピュータ読み取り可能な記録媒体が提供される。
【符号の説明】
【0140】
100…基板処理装置、110…IOステージ、120…大気搬送室、130…ロードロック室、140…真空搬送室、200,200a〜200d…リアクタ(RC)、200…ウエハ(基板)、202…容器、205…処理空間、212…基板載置台、230…シャワーヘッド、242…共通ガス供給管、243…第一ガス供給系、244…第二ガス供給系、245…第三ガス供給系、261〜264…排気管、280…コントローラ、280a…CPU、280c…記憶部、280g…位置情報取得部、280h…情報制御部、281…入出力装置(移動端末)、281a…表示部、283…送受信部、400…クリーンルーム(CR)、500…群管理装置(上位装置)、510…CPU、511…位置情報要求部、512…マップ情報生成部、513…マップ情報管理部、520…記憶部、550…送受信部、W…ウエハ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9