(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記式(1−1)中、Aは、1,4−シクロヘキシレン、任意の水素がハロゲンで置き換えられた1,4−シクロヘキシレン、1,4−フェニレン、任意の水素がハロゲンもしくはメチル基で置き換えられた1,4−フェニレン、フルオレン−2,7−ジイル、または任意の水素がハロゲンもしくはメチル基で置き換えられたフルオレン−2,7−ジイルである、
請求項2に記載の放熱部材用組成物。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のとおり、放熱部材は、電子機器の発達に伴い、常により効果の高い熱伝導化が望まれる。
そこで本発明は、高熱伝導性を有する放熱部材を形成可能な組成物および放熱部材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、液晶性を有する重合性化合物のメソゲン部位を一定の方向に配向させて重合することにより得られる、分子配列が固定された重合体からなる放熱部材では、熱伝導の主な要素であるフォノンの伝達損失が抑制され、樹脂の高熱伝導化が望めることを利用してさらなる高熱伝導化を試みた。本発明者らは、このようなメソゲン部位を有するモノマーを含む樹脂の液晶相を発現させて重合させる際に、特定の高熱伝導性無機充填材(高熱伝導性無機フィラー)と複合させると、組み合わせの相乗効果により熱伝導率の極めて高い複合材を実現できることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
本発明の第1の態様に係る放熱部材用組成物は、オキシラニル基またはオキセタニル基を含む構造を両末端に有する重合性液晶化合物と;前記重合性液晶化合物を硬化させる硬化剤と;窒化物で形成された無機フィラーとを含み;硬化温度は、前記重合性液晶化合物が液晶相を示す温度範囲以上、等方相を示す温度範囲以下である。「液晶相を示す温度範囲」とは、ネマチック相、スメクチック相、またはコレステリック相を示す温度範囲を言う。
このように構成すると、放熱部材用組成物は、重合性液晶化合物が液晶相および等方相を示す温度範囲内で硬化する。すなわち、流動性を持つ状態で重合を起こすことができ、さらに重合性液晶化合物が配向している状態(分子が一方向に揃った状態)で重合性液晶化合物を重合させて、無機フィラーとともに硬化させることができる組成物となる。重合温度が液晶相を示す温度領域よりも高くなり、等方相を示す温度領域になった場合でも、メソゲン部位は冷却時に高い配向性を発現する。したがって、放熱部材用組成物から形成された膜(放熱部材)は、重合した液晶化合物の熱伝導性と、窒化物で形成された無機フィラーの熱伝導性の相乗効果により、高い熱伝導性を有することができる。
【0009】
本発明の第2の態様に係る放熱部材用組成物は、上記本発明の第1の態様に係る放熱部材用組成物において、前記重合性液晶化合物は、下記式(1−1)で表される少なくとも1種の化合物である。
R
a1−Z−(A−Z)
m1−R
a1 ・・・(1−1)
[上記式(1−1)中、
R
a1は、それぞれ下記式(2−1)〜(2−2)のいずれかで表される重合性基であり;
Aは、1,4−シクロヘキシレン、1,4−シクロヘキセニレン、1,4−フェニレン、ナフタレン−2,6−ジイル、テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル、フルオレン−2,7−ジイル、ビシクロ[2.2.2]オクト−1,4−ジイル、またはビシクロ[3.1.0]ヘキス−3,6−ジイルであり、
これらの環において、任意の−CH
2−は、−O−で置き換えられてもよく、任意の−CH=は、−N=で置き換えられてもよく、任意の水素は、ハロゲン、炭素数1〜10のアルキル、または炭素数1〜10のハロゲン化アルキルで置き換えられてもよく、
該アルキルにおいて、任意の−CH
2−は、−O−、−CO−、−COO−、または−OCO−で置き換えられてもよく、任意の−CH
2CH
2−は、−CH=CH−、または−C≡C−で置き換えられてもよく;
Zは、それぞれ単結合、または炭素数1〜20のアルキレンであり、
該アルキレンにおいて、任意の−CH
2−は、−O−、−S−、−CO−、−COO−、または−OCO−で置き換えられてもよく、任意の−CH
2CH
2−は、−CH=CH−、−CF=CF−、−CH=N−、−N=CH−、−N=N−、−N(O)=N−、または−C≡C−で置き換えられてもよく、任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよく;
m1は、1〜6の整数である。]
【化1】
[式(2−1)〜(2−2)中、R
bは、水素、ハロゲン、−CF
3、または炭素数1〜5のアルキルであり、qは0または1である。]
このように構成すると、放熱部材用組成物は、重合性液晶化合物としてより好ましい化合物を含有することができる。これらの化合物は、熱硬化性でありフィラーの量に影響を受けずに硬化させることができ、さらに耐熱性に優れる。また分子構造は、対称性、直線性を有するため、フォノンの伝導に有利であると考えられる。
【0010】
本発明の第3の態様に係る放熱部材用組成物は、上記本発明の第2の態様に係る放熱部材用組成物において、上記式(1−1)中、Aは、1,4−シクロヘキシレン、任意の水素がハロゲンで置き換えられた1,4−シクロヘキシレン、1,4−フェニレン、任意の水素がハロゲンもしくはメチル基で置き換えられた1,4−フェニレン、フルオレン−2,7−ジイル、または任意の水素がハロゲンもしくはメチル基で置き換えられたフルオレン−2,7−ジイルである。
このように構成すると、放熱部材用組成物は、重合性液晶化合物としてさらに好ましい化合物を含有することができる。これらの化合物は、分子の直線性がより高くなり、フォノンの伝導により有利であると考えられる。
【0011】
本発明の第4の態様に係る放熱部材用組成物は、上記本発明の第3の態様に係る放熱部材用組成物において、上記式(1−1)中、Zは、単結合、−(CH
2)
a−、−O(CH
2)
a−、−(CH
2)
aO−、−O(CH
2)
aO−、−CH=CH−、−C≡C−、−COO−、−OCO−、−CH=CH−COO−、−OCO−CH=CH−、−CH
2CH
2−COO−、−OCO−CH
2CH
2−、−CH=N−、−N=CH−、−N=N−、−OCF
2−または−CF
2O−であり、該aが1〜20の整数である。
このように構成すると、放熱部材用組成物は、重合性液晶化合物として特に好ましい化合物を含有することができる。これらの化合物は、物性、作り易さ、または扱い易さに優れるため好ましい。
【0012】
本発明の第5の態様に係る放熱部材用組成物は、上記本発明の第1の態様〜第4の態様のいずれか1の態様に係る放熱部材用組成物において、前記無機フィラーは、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、および窒化珪素から選ばれる少なくとも一つである。
このように構成すると、放熱部材用組成物は、無機フィラーとしてより好ましい化合物を含有することができる。
【0013】
本発明の第6の態様に係る放熱部材用組成物は、上記本発明の第1の態様〜第5の態様のいずれか1の態様に係る放熱部材用組成物において、前記硬化剤は、下記式(3−1)で表される少なくとも1種のジアミン化合物である。
H
2N−Z−(A−Z)
m2−NH
2 ・・・(3−1)
[上記式(3−1)中、
Aは、1,4−シクロヘキシレン、または1,4−フェニレンであり、これらの環の任意の水素は、ハロゲン、または炭素数1〜10のアルキルで置き換えられてもよく;
Zは、それぞれ単結合、または炭素数1〜10のアルキレンであり;
m2は1〜7の整数である。]
このように構成すると、放熱部材用組成物は、硬化剤としてより好ましい化合物を含有することができる。特にm2が偶数の場合、ジアミン化合物は、重合性液晶化合物の液晶性を阻害することなく、硬化させることができるため好ましい。
【0014】
本発明の第7の態様に係る放熱部材用組成物は、上記本発明の第1の態様〜第6の態様のいずれか1の態様に係る放熱部材用組成物において、前記無機フィラーは、カップリング剤により処理されたフィラー、または、カップリング処理された後、前記重合性液晶化合物により表面修飾されたフィラーである。「表面修飾」とは、カップリング処理されたフィラーに結合しているカップリング剤にさらに重合性液晶化合物を結合させることを言う。
このように構成すると、カップリング処理したフィラー、表面修飾したフィラーを用いた放熱部材で、厚み方向により高い熱伝導性を得られるため好ましい。
【0015】
本発明の第8の態様に係る放熱部材は、上記本発明の第1の態様〜第7の態様のいずれか1の態様に係る放熱部材用組成物を、配向処理をおこなった後、硬化させて得られる放熱部材であり、前記無機フィラーを20〜95重量%含有する。
このように構成すると、放熱部材は、重合した液晶化合物の熱伝導性と窒化物で形成された無機フィラーの熱伝導性の相乗効果により、高い熱伝導性を有することができる。
【0016】
本発明の第9の態様に係る電子機器は、上記本発明の第8の態様に係る放熱部材と;発熱部を有する電子デバイスとを備え;前記放熱部材が前記発熱部に接触するように前記電子デバイスに配置される。
このように構成すると、高熱伝導性を有する放熱部材により、電子デバイスに生じた熱を効率よく伝導させることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の放熱部材用組成物から形成された放熱部材は、高熱伝導性を有する。さらに、化学的安定性、耐熱性、硬度および機械的強度などの優れた特性をも有する。当該放熱部材は、たとえば、放熱板、放熱シート、放熱塗膜、放熱接着剤などに適している。
【発明を実施するための形態】
【0019】
この出願は、日本国で2014年5月9日に出願された特願2014−098190号に基づいており、その内容は本出願の内容として、その一部を形成する。本発明は以下の詳細な説明によりさらに完全に理解できるであろう。本発明のさらなる応用範囲は、以下の詳細な説明により明らかとなろう。しかしながら、詳細な説明および特定の実例は、本発明の望ましい実施の形態であり、説明の目的のためにのみ記載されているものである。この詳細な説明から、種々の変更、改変が、本発明の精神と範囲内で、当業者にとって明らかであるからである。出願人は、記載された実施の形態のいずれをも公衆に献上する意図はなく、改変、代替案のうち、特許請求の範囲内に文言上含まれないかもしれないものも、均等論下での発明の一部とする。
【0020】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。なお、各図において互いに同一または相当する部分には同一あるいは類似の符号を付し、重複した説明は省略する。また、本発明は、以下の実施の形態に制限されるものではない。
【0021】
本明細書における用語の使い方は以下のとおりである。
「液晶化合物」「液晶性化合物」は、ネマチック相やスメクチック相などの液晶相を発現する化合物である。
【0022】
「アルキルにおける任意の−CH
2−は、−O−などで置き換えられてもよい」あるいは「任意の−CH
2CH
2−は−CH=CH−などで置き換えられてもよい」等の句の意味を下記の一例で示す。たとえば、C
4H
9−における任意の−CH
2−が、−O−または−CH=CH−で置き換えられた基としては、C
3H
7O−、CH
3−O−(CH
2)
2−、CH
3−O−CH
2−O−などである。同様にC
5H
11−における任意の−CH
2CH
2−が、−CH=CH−で置き換えられた基としては、H
2C=CH−(CH
2)
3−、CH
3−CH=CH−(CH
2)
2−など、さらに任意の−CH
2−が−O−で置き換えられた基としては、CH
3−CH=CH−CH
2−O−などである。このように「任意の」という語は、「区別なく選択された少なくとも1つの」を意味する。なお、化合物の安定性を考慮して、酸素と酸素とが隣接したCH
3−O−O−CH
2−よりも、酸素と酸素とが隣接しないCH
3−O−CH
2−O−の方が好ましい。
【0023】
また、環Aに関して「任意の水素は、ハロゲン、炭素数1〜10のアルキル、または炭素数1〜10のハロゲン化アルキルで置き換えられてもよい」の句は、例えば1,4−フェニレンの2,3,5,6位の水素の少なくとも1つがフッ素やメチル基等の置換基で置き換えられた場合の態様を意味し、また置換基が「炭素数1〜10のハロゲン化アルキル」である場合の態様としては、2−フルオロエチル基や3−フルオロ−5−クロロヘキシル基のような例を包含する。
【0024】
「化合物(1−1)」は、下記式(1−1)で表される液晶化合物を意味し、また、下記式(1−1)で表される化合物の少なくとも1種を意味することもある。「放熱部材用組成物(1)」は、前記化合物(1−1)から選択される少なくとも1種の化合物を含有する液晶組成物を意味する。「重合体(1)」は前記組成物(1)を重合させることにより得られる液晶重合体を意味する。1つの化合物(1−1)が複数のAを有するとき、任意の2つのAは同一でも異なっていてもよい。複数の化合物(1−1)がAを有するとき、任意の2つのAは同一でも異なっていてもよい。この規則は、R
a1やZなど他の記号、基などにも適用される。
【0025】
[放熱部材用組成物]
本発明の第1の実施の形態に係る放熱部材用組成物は、オキシラニル基またはオキセタニル基を含む構造を両末端に有する重合性液晶化合物と;前記重合性液晶化合物を硬化させる硬化剤と;窒化物で形成された無機フィラーとを含む。放熱部材用組成物の硬化温度は、前記重合性液晶化合物が液晶相を示す温度範囲以上、等方相を示す温度範囲以下である。
重合性液晶化合物の液晶相を利用することにより、分子が秩序良くならんだ状態で重合(硬化)した樹脂相を形成させることが可能になる。熱は配向した分子および配向に沿って整列した無機フィラーを通じて流れ、高熱伝導な特性を得ることができる。
【0026】
<重合性液晶化合物>
本発明で用いられる化合物(1−1)は、下記式(1−1)で表される液晶化合物を意味し、液晶骨格と重合性基を有し、高い重合反応性、広い液晶相温度範囲、良好な混和性などを有する。この化合物(1−1)は他の液晶性の化合物や重合性の化合物などと混合するとき、容易に均一になりやすい。
R
a1−Z−(A−Z)
m1−R
a1 (1−1)
【0027】
上記化合物(1−1)の末端基R
a1、環構造Aおよび結合基Zを適宜選択することによって、液晶相発現領域などの物性を任意に調整することができる。末端基R
a1、環構造Aおよび結合基Zの種類が、化合物(1−1)の物性に与える効果、ならびに、これらの好ましい例を以下に説明する。
【0028】
・末端基R
a1
上記化合物(1−1)のR
a1が直鎖状アルキルである場合、液晶相の温度範囲が広く、かつ粘度が小さい。一方、R
a1が分岐状アルキルである場合、他の液晶性の化合物との相溶性がよい。R
a1がシアノ、ハロゲン、−CF
3、−OCF
3である場合においても、良好な液晶相温度範囲を示し、誘電率異方性が高く、適度な相溶性を有する。
【0029】
好ましいR
a1としては、水素、フッ素、塩素、シアノ、−N=C=O、−N=C=S、アルキル、アルコキシ、アルコキシアルキル、アルコキシアルコキシ、アルキルチオ、アルキルチオアルコキシ、アルケニル、アルケニルオキシ、アルケニルオキシアルキル、アルコキシアルケニル、アルキニル、アルキニルオキシなどが挙げられる。これらの基において、少なくとも1つの水素がハロゲンで置き換えられた基も好ましい。好ましいハロゲンはフッ素、塩素であり、さらに好ましくはフッ素である。具体例としては、モノフルオロアルキル、ポリフルオロアルキル、ペルフルオロアルキル、モノフルオロアルコキシ、ポリフルオロアルコキシ、ペルフルオロアルコキシなどである。これらの基はフォノンの伝導しやすさ、すなわち熱の伝わり易さの観点から、分岐鎖よりも直鎖の方が好ましい。
【0030】
さらに好ましいR
a1としては、水素、フッ素、塩素、シアノ、−CF
3、−CF
2H、−CFH
2、−OCF
3、−OCF
2H、炭素数1〜10のアルキル、炭素数1〜10のアルコキシ、炭素数2〜10のアルコキシアルキルなどが挙げられる。前記アルキル、アルコキシおよびアルコキシアルキルとしては、たとえば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、メトキシ、エトキシ、プロピルオキシ、ブチルオキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、ヘプチルオキシ、オクチルオキシ、ノニルオキシ、デシルオキシ、メトキシメチル、メトキシエチルなどが挙げられる。特に好ましいR
a1としては、炭素数1〜10のアルキル、炭素数1〜10のアルコキシである。
【0031】
・環構造A
上記化合物(1−1)の環構造Aにおける少なくとも1つの環が1,4−フェニレンの場合、配向秩序パラメーター(orientationalorder parameter)および磁化異方性が大きい。また、少なくとも2つの環が1,4−フェニレンの場合、液晶相の温度範囲が広く、さらに透明点が高い。1,4−フェニレン環上の少なくとも1つの水素がシアノ、ハロゲン、−CF
3または−OCF
3に置換された場合、誘電率異方性が高い。また、少なくとも2つの環が1,4−シクロヘキシレンである場合、透明点が高く、かつ粘度が小さい。
【0032】
好ましいAとしては、1,4−シクロへキシレン、1,4−シクロヘキセニレン、2,2−ジフルオロ−1,4−シクロへキシレン、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、2,3−ジフルオロ−1,4−フェニレン、2,5−ジフルオロ−1,4−フェニレン、2,6−ジフルオロ−1,4−フェニレン、2,3,5−トリフルオロ−1,4−フェニレン、ピリジン−2,5−ジイル、3−フルオロピリジン−2,5−ジイル、ピリミジン−2,5−ジイル、ピリダジン−3,6−ジイル、ナフタレン−2,6−ジイル、テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル、フルオレン−2,7−ジイル、9−メチルフルオレン−2,7−ジイル、9,9−ジメチルフルオレン−2,7−ジイル、9−エチルフルオレン−2,7−ジイル、9−フルオロフルオレン−2,7−ジイル、9,9−ジフルオロフルオレン−2,7−ジイルなどが挙げられる。
【0033】
1,4−シクロヘキシレンおよび1,3−ジオキサン−2,5−ジイルの立体配置は、シスよりもトランスが好ましい。2−フルオロ−1,4−フェニレンおよび3−フルオロ−1,4−フェニレンは構造的に同一であるので、後者は例示していない。この規則は、2,5−ジフルオロ−1,4−フェニレンと3,6−ジフルオロ−1,4−フェニレンとの関係などにも適用される。
【0034】
さらに好ましいAとしては、1,4−シクロへキシレン、1,4−シクロヘキセニレン、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、2,3−ジフルオロ−1,4−フェニレン、2,5−ジフルオロ−1,4−フェニレン、2,6−ジフルオロ−1,4−フェニレンなどである。特に好ましいAは、1,4−シクロへキシレンおよび1,4−フェニレンである。
【0035】
・結合基Z
上記化合物(1−1)の結合基Zが、単結合、−(CH
2)
2−、−CH
2O−、−OCH
2−、−CF
2O−、−OCF
2−、−CH=CH−、−CF=CF−または−(CH
2)
4−である場合、特に、単結合、−(CH
2)
2−、−CF
2O−、−OCF
2−、−CH=CH−または−(CH
2)
4−である場合、粘度が小さくなる。また、結合基Zが、−CH=CH−、−CH=N−、−N=CH−、−N=N−または−CF=CF−である場合、液晶相の温度範囲が広い。また、結合基Zが、炭素数4〜10程度のアルキルの場合、融点が低下する。
【0036】
好ましいZとしては、単結合、−(CH
2)
2−、−(CF
2)
2−、−COO−、−OCO−、−CH
2O−、−OCH
2−、−CF
2O−、−OCF
2−、−CH=CH−、−CF=CF−、−C≡C−、−(CH
2)
4−、−(CH
2)
3O−、−O(CH
2)
3−、−(CH
2)
2COO−、−OCO(CH
2)
2−、−CH=CH−COO−、−OCO−CH=CH−などが挙げられる。
【0037】
さらに好ましいZとしては、単結合、−(CH
2)
2−、−COO−、−OCO−、−CH
2O−、−OCH
2−、−CF
2O−、−OCF
2−、−CH=CH−、−C≡C−などが挙げられる。特に好ましいZとしては、単結合、−(CH
2)
2−、−COO−または−OCO−である。
【0038】
上記化合物(1−1)が3つ以下の環を有するときは粘度が低く、3つ以上の環を有するときは透明点が高い。なお、本明細書においては、基本的に6員環および6員環を含む縮合環等を環とみなし、たとえば3員環や4員環、5員環単独のものは環とみなさない。また、ナフタレン環やフルオレン環などの縮合環は1つの環とみなす。
【0039】
上記化合物(1−1)は、光学活性であってもよいし、光学的に不活性でもよい。化合物(1−1)が光学活性である場合、該化合物(1−1)は不斉炭素を有する場合と軸不斉を有する場合がある。不斉炭素の立体配置はRでもSでもよい。不斉炭素はR
a1またはAのいずれに位置していてもよく、不斉炭素を有すると、化合物(1−1)の相溶性がよい。化合物(1−1)が軸不斉を有する場合、ねじれ誘起力が大きい。また、施光性はいずれでも構わない。
以上のように、末端基R
a1、環構造Aおよび結合基Zの種類、環の数を適宜選択することにより、目的の物性を有する化合物を得ることができる。
【0040】
・化合物(1−1)
化合物(1−1)は、下記式(1−a)または(1−b)のように表すこともできる。
P−Y−(A−Z)
m−R
a (1−a)
P−Y−(A−Z)
m−Y−P (1−b)
【0041】
上記式(1−a)および(1−b)中、A、Z、R
aは上記式(1−1)で定義したA、Z、R
a1と同義であり、Pは上記式(2−1)〜(2−2)で表される重合性基を示し、Yは単結合または炭素数1〜20のアルキレン、好ましくは炭素数1〜10のアルキレンを示し、該アルキレンにおいて、任意の−CH
2−は、−O−、−S−、−CO−、−COO−、−OCO−または−CH=CH−で置き換えられてもよい。特に好ましいYとしては、炭素数1〜10のアルキレンの片末端もしくは両末端の−CH
2−が−O−で置き換えられたアルキレンである。mは1〜6の整数、好ましくは2〜6の整数、さらに好ましくは2〜4の整数である。
【0042】
好ましい化合物(1−1)の例としては、以下に示す化合物(a−1)〜(g−20)が挙げられる。
【0056】
上記化学式(a−1)〜(g−20)において、R
a、PおよびYは上記式(1−a)および(1−b)で定義したとおりである。
Z
1は、単結合、−(CH
2)
2−、−(CF
2)
2−、−(CH
2)
4−、−CH
2O−、−OCH
2−、−(CH
2)
3O−、−O(CH
2)
3−、−COO−、−OCO−、−CH=CH−、−CF=CF−、−CH=CHCOO−、−OCOCH=CH−、−(CH
2)
2COO−、−OCO(CH
2)
2−、−C≡C−、−C≡C−COO−、−OCO−C≡C−、−C≡C−CH=CH−、−CH=CH−C≡C−、−CH=N−、−N=CH−、−N=N−、−OCF
2−または−CF
2O−である。なお、複数のZ
1は同一でも異なっていてもよい。
【0057】
Z
2は、−(CH
2)
2−、−(CF
2)
2−、−(CH
2)
4−、−CH
2O−、−OCH
2−、−(CH
2)
3O−、−O(CH
2)
3−、−COO−、−OCO−、−CH=CH−、−CF=CF−、−CH=CHCOO−、−OCOCH=CH−、−(CH
2)
2COO−、−OCO(CH
2)
2−、−C≡C−、−C≡C−COO−、−OCO−C≡C−、−C≡C−CH=CH−、−CH=CH−C≡C−、−CH=N−、−N=CH−、−N=N−、−OCF
2−または−CF
2O−である。
【0058】
Z
3は、単結合、炭素数1〜10のアルキル、−(CH
2)
a−、−O(CH
2)
aO−、−CH
2O−、−OCH
2−、−O(CH
2)
3−、−(CH
2)
3O−、−COO−、−OCO−、−CH=CH−、−CH=CHCOO−、−OCOCH=CH−、−(CH
2)
2COO−、−OCO(CH
2)
2−、−CF=CF−、−C≡C−、−CH=N−、−N=CH−、−N=N−、−OCF
2−または−CF
2O−であり、複数のZ
3は同一でも異なっていてもよい。aは1〜20の整数である。
【0059】
Xは、任意の水素がハロゲン、アルキル、フッ化アルキルで置き換えられてもよい1,4−フェニレンおよびフルオレン−2,7−ジイルの置換基であり、ハロゲン、アルキルまたはフッ化アルキルを示す。
【0060】
上記化合物(1−1)のより好ましい態様について説明する。より好ましい化合物(1−1)は、下記式(1−c)または(1−d)で表すことができる。
P
1−Y−(A−Z)
m−R
a (1−c)
P
1−Y−(A−Z)
m−Y−P
1 (1−d)
上記式中、A、Y、Z、R
aおよびmはすでに定義したとおりであり、P
1は下記式(2−1)〜(2−2)で表される重合性基を示す。上記式(1−d)の場合、2つのP
1は同一の重合性基(2−1)〜(2−2)を示し、2つのYは同一の基を示し、2つのYは対称となるように結合する。
【0062】
上記化合物(1−1)のより好ましい具体例を以下に示す。
【0066】
・化合物(1−1)の合成方法
上記化合物(1−1)は、有機合成化学における公知の手法を組み合わせることにより合成できる。出発物質に目的の末端基、環構造および結合基を導入する方法は、たとえば、ホーベン−ワイル(Houben-Wyle,Methods of Organic Chemistry, GeorgThieme Verlag, Stuttgart)、オーガニック・シンセシーズ(OrganicSyntheses, John Wily &Sons, Inc.)、オーガニック・リアクションズ(OrganicReactions, John Wily & Sons Inc.)、コンプリヘンシブ・オーガニック・シンセシス(ComprehensiveOrganic Synthesis, Pergamon Press)、新実験化学講座(丸善)などの成書に記載されている。また、特開2006−265527号公報を参照してもよい。
【0067】
<硬化剤>
好ましい硬化剤の例を以下に示す。
アミン系硬化剤として、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、o−キシレンジアミン、m−キシレンジアミン、p−キシレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、2−メチルペンタメチレンジアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、イソホロンジアミン、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ノルボルネンジアミン、1,2−ジアミノシクロヘキサン、3,9−ジプロパンアミン−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−1,2−ジフェニルエタン、o−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、ポリオキシプロピレンジアミン、ポリオキシプロピレントリアミン、ポリシクロヘキシルポリアミン、N−アミノエチルピペラジンなどが挙げられる。
特にジアミンは、重合性液晶化合物の液晶性を阻害することなく重合性液晶化合物を硬化させることができるため好ましい。硬化剤の量は、エポキシ当量またはオキセタン当量により適宜選択すればよい。
【0068】
<充填材としての無機フィラー>
高熱伝導性の充填材(無機フィラー)として、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化珪素などの窒化物が挙げられる。ダイアモンド、黒鉛、炭化珪素、珪素、ベリリア、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化珪素、酸化銅、酸化チタン、酸化セリウム、酸化イットリウム、酸化錫、酸化ホルミニウム、酸化ビスマス、酸化コバルト、酸化カルシウム、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化珪素、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、金、銀、銅、白金、鉄、錫、鉛、ニッケル、アルミニウム、マグネシウム、タングステン、モリブデン、ステンレスなどの無機充填材および金属充填材であってもよい。が挙げられる。充填材の形状としては、球状、無定形、繊維状、棒状、筒状、板状などが挙げられる。充填財の形状は、重合性液晶化合物が液晶相を発現した際の配向を妨げない形状のものが好ましい。充填材の種類、形状、大きさ、添加量などは、目的に応じて適宜選択できる。得られる放熱部材が絶縁性を必要とする場合、所望の絶縁性が保たれれば導電性を有する充填材であっても構わない。
【0069】
好ましくは、窒化ホウ素、窒化アルミニウムである。特に六方晶系の窒化ホウ素(h−BN)や窒化アルミニウムが好ましい。チッ化ホウ素、窒化アルミニウムは平面方向の熱伝導率が非常に高く、誘電率も低く、絶縁性も高いため好ましい。
例えば、板状結晶の窒化ホウ素を用いると、板状構造が液晶化合物の配向に沿って配置され易い、または液晶化合物が板状構造に沿って配向され易いため好ましい。
【0070】
充填材の平均粒径は、0.1〜200μmであることが好ましい。より好ましくは、1〜100μmである。0.1μm以上であると熱伝導率がよく、200μm以下であると充填率を上げることができる。
なお、本明細書において平均粒径とは、レーザー回折・散乱法による粒度分布測定に基づく。すなわち、フランホーファー回折理論およびミーの散乱理論による解析を利用して、湿式法により、粉体をある粒子径から2つに分けたとき、大きい側と小さい側が等量(体積基準)となる径をメジアン径とした。
充填材の量は、硬化後の放熱部材中が20〜95重量%の充填材を含有するようにすることが好ましい。より好ましくは、50〜95重量%である。20重量%以上であると熱伝導率が高くなり好ましい。95重量%以下であると放熱部材が脆くならず好ましい。
【0071】
充填材は、そのまま未修飾のもの(
図2左)を使用してもよい。または、その表面をカップリング剤で処理したもの(
図2中央)を用いてもよい。例えば、
図2に示すように、窒化ホウ素(h−BN)をシランカップリング剤で処理する。窒化ホウ素の場合は粒子の平面に反応基がないため、その周囲のみにシランカップリング剤が結合する。カップリング剤で処理された窒化ホウ素は、放熱部材用組成物中の重合性液晶化合物との結合を形成でき、この結合は熱伝導に寄与すると考えられる。
カップリング剤は、オキシラニル基等または硬化剤と反応することが好ましいので、アミン系もしくはオキシラニル基等を末端にもつものが好ましい。たとえば、JNC(株)製では、サイラエースS310,S320,S330,S360,S510,S530などが挙げられる。なお、カップリング剤による修飾は、多ければ多いほど結合が増えるため好ましい。
【0072】
充填材は、カップリング剤で処理した後さらに重合性液晶化合物で表面修飾したもの(
図2右)を用いてもよい。例えば、
図2に示すように、シランカップリング剤で処理された窒化ホウ素(h−BN)を重合性液晶化合物で表面修飾する。重合性液晶化合物で表面修飾された窒化ホウ素は、放熱部材用組成物中の重合性液晶化合物との結合を形成でき、この結合は熱伝導に寄与すると考えられる。
重合性液晶化合物は、上記式(1−1)で示す化合物が好ましい。しかし、それ以外の重合性液晶化合物であってもよく、液晶性の無い重合性化合物であってもよい。重合性液晶化合物等による表面修飾は、多ければ多いほど結合が増えるため好ましい。
【0073】
<その他の構成要素>
本願の放熱部材用組成物(1)は、上記化合物(1−1)を少なくとも1種含み、高熱伝導無機充填材としての無機フィラーと複合させた物である。該組成物(1)は、2種以上の化合物(1−1)で構成されていてもよく、また、少なくとも1種の化合物(1−1)と、化合物(1−1)以外の少なくとも1種の化合物との組み合わせで構成されていてもよい。このような化合物(1−1)以外の構成要素としては、特に限定されないが、たとえば、化合物(1−1)以外の重合性化合物(以下「その他の重合性化合物」ともいう)、非重合性の液晶性化合物、重合開始剤、および溶媒などが挙げられる。
【0074】
<その他の重合性化合物>
放熱部材用組成物(1)は、その他の重合性化合物を構成要素としてもよい。このような重合性化合物としては、膜形成性および機械的強度を低下させない化合物が好ましい。この重合性化合物は、液晶性を有しない化合物と液晶性を有する化合物とに分類される。液晶性を有しない重合性化合物としては、ビニル誘導体、スチレン誘導体、(メタ)アクリル酸誘導体、ソルビン酸誘導体、フマル酸誘導体、イタコン酸誘導体などが挙げられる。
【0075】
<非重合性の液晶性化合物>
放熱部材用組成物(1)は、重合性基を有しない液晶性化合物を構成要素としてもよい。このような非重合性の液晶性化合物の例は、液晶性化合物のデータベースであるリクリスト(LiqCryst, LCIPublisher GmbH, Hamburg, Germany)などに記載されている。非重合性の液晶性化合物を含有する該組成物(1)を重合させることによって、化合物(1−1)の重合体と液晶性化合物との複合材料(composite materials)を得ることができる。このような複合材料では、たとえば、高分子分散型液晶のような高分子網目中に非重合性の液晶性化合物が存在している。
【0076】
<重合開始剤>
放熱部材用組成物(1)は重合開始剤を構成要素としてもよい。重合開始剤は、該組成物(1)の重合方法に応じて、たとえば光ラジカル重合開始剤、光カチオン重合開始剤、熱ラジカル重合開始剤などを用いればよい。
【0077】
熱ラジカル重合用の好ましい開始剤としては、たとえば、過酸化ベンゾイル、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシピバレート、ジ−t−ブチルパーオキシド(DTBPO)、t−ブチルパーオキシジイソブチレート、過酸化ラウロイル、2,2’−アゾビスイソ酪酸ジメチル(MAIB)、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル(ACN)などが挙げられる。
【0078】
<溶媒>
放熱部材用組成物(1)は溶媒を含有してもよい。該組成物(1)の重合は溶媒中で行っても、無溶媒で行ってもよい。溶媒を含有する該組成物(1)を基板上に、たとえばスピンコート法などにより塗布した後、溶媒を除去してから光重合させてもよい。また、光硬化後適当な温度に加温して熱硬化により後処理を行ってもよい。
【0079】
好ましい溶媒としては、たとえば、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、テトラヒドロフラン、γ−ブチロラクトン、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、PGMEAなどが挙げられる。上記溶媒は1種単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
なお、重合時の溶媒の使用割合を限定することにはあまり意味がなく、重合効率、溶媒コスト、エネルギーコストなどを考慮して、個々のケースごとに決定すればよい。
【0080】
<その他>
上記化合物(1−1)および放熱部材用組成物(1)は高い重合性を有するので、取扱いを容易にするために、安定剤を添加してもよい。このような安定剤としては、公知のものを制限なく使用でき、たとえば、ハイドロキノン、4−エトキシフェノールおよび3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシトルエン(BHT)などが挙げられる。
さらに、放熱部材用組成物の粘度や色を調整するために添加剤(酸化物等)を添加してもよい。例えば、白色にするための酸化チタン、黒色にするためのカーボンブラック、粘度を調整するためのシリカの微粉末を挙げることができる。また、機械的強度をさらに増すために添加剤を添加してもよい。例えば、ガラス、カーボンファイバーなどの無機繊維やクロス、または高分子添加剤として、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミドなどの繊維または長分子を挙げることができる。
【0081】
[放熱部材]
本発明の第2の実施の形態に係る放熱部材は、上記第1の実施の形態に係る放熱部材用組成物を硬化させた硬化物(重合体(1))を用途に応じて成形したものである。
重合体(1)は、少なくとも1種の化合物(1)を含む放熱部材用組成物(1)を、配向制御して重合させることによって得られる。この重合体(1)は、高い熱伝導性を有するとともに、透水性、吸水性およびガス透過度が低く、化学的安定性、耐熱性、硬度および機械的強度などに優れている。なお、前記機械的強度とは、ヤング率、引っ張り強度、引き裂き強度、曲げ強度、曲げ弾性率、衝撃強度などである。
図1は、充填材として窒化ホウ素を用いた場合の放熱部材のイメージ図である。
【0082】
重合体(1)は、熱硬化性樹脂である。両末端が重合性基である化合物(1−1)を用いると、熱硬化性樹脂が得られやすい。
熱硬化性樹脂は三次元の架橋構造を有する。このような重合体(1)は溶媒に不溶であるので、分子量を測定することができない。しかし、基板上に放熱部材用組成物(1)を塗布し、分子の配向を固定して重合することにより放熱部材を得る場合においては、さらに加工を施すことがないので、分子量の大小は問題とならず、使用環境において条件を満足すればよい。また、より分子量を上げるために、架橋剤を添加してもよい。これにより、耐薬品性および耐熱性に極めて優れた重合体(1)を得ることができる。このような架橋剤としては、公知のものを制限なく使用できるが、たとえば、トリス(3−メルカプトプロピオネート)などが挙げられる。
【0083】
前述したように重合体(1)は、任意の方向に分子配向が固定化されているという特徴を有することができる。このように液晶分子のメソゲン部位を一定方向にできるだけ均一に配向させて固定化することにより、該一定方向に高い熱伝導性が付与された重合体(1)を得ることができる。この方向は重合前に液晶分子を配列させることにより任意に制御できる。
【0084】
なお、一定方向に配列したフィルムを各方向に積層させることよって、全方向への高熱伝導化を達成できる。このような積層構造は「放熱部材用組成物の塗布→重合→放熱部材用組成物の塗布→重合」の過程を繰り返すことによっても形成することができる。このように積層構造を形成することは、得られる放熱部材の機械的強度の異方性を緩和させることにおいても有用である。また、一定方向に配列したフィルムを切り取り、配向が縦になるようにフィルムを再配置して、フィルムの厚み方向の熱伝導化を向上させてもよい。
【0085】
放熱部材用組成物(1)中の液晶分子のメソゲン部位を配向制御する方法としては、配向膜を用いた方法、該組成物(1)に配向制御剤を添加する方法、ラビング処理法、該組成物(1)自体が有する自己配向規制力により配向させる方法などが挙げられる。これらの方法は、1種単独で行っても、2種以上を組み合わせて行ってもよい。このような配向制御方法により制御する配向状態としては、たとえば、ホモジニアス、ツイスト、ホメオトロピック、ハイブリッド、ベンドおよびスプレー配向などが挙げられ、用途や配向制御方法に応じて適宜決定することができる。
【0086】
放熱部材用組成物(1)自体が有する自己配向力によって配向を制御する方法として、該組成物(1)を熱処理する方法が挙げられる。該組成物(1)の熱処理は、該組成物(1)の透明点以上で行われる。熱処理方法の一例として、該組成物(1)が液晶相を示す温度まで加温して、該組成物(1)に配向を形成させる方法がある。また、該組成物(1)が液晶相を示す温度範囲内で、温度を変化させることによって配向を形成させてもよい。この方法は、前記液晶相を示す温度範囲の高温域まで該組成物(1)を加温することによって該組成物(1)の配向を概ね完成させ、次いで温度を下げることによってさらに秩序だった配向にするものである。なお、上記放熱部材用組成物(1)が発現する液晶相はネマチック、スメクチック、コレステリック相のいずれでもよい。
【0087】
上記熱処理温度は、室温〜150℃、好ましくは室温〜100℃、より好ましくは室温〜70℃の範囲である。上記熱処理時間は、5秒〜2時間、好ましくは10秒〜60分、より好ましくは20秒〜30分の範囲である。熱処理時間が上記範囲よりも短いと、放熱部材用組成物(1)からなる層の温度を所定の温度まで上昇できないことがあり、上記範囲よりも長いと、生産性が低下することがある。なお、上記熱処理条件は、該組成物(1)に用いられる化合物の種類および組成比、重合開始剤の有無および含有量などによって変化するため、あくまでおおよその範囲を示したものである。
【0088】
放熱部材用組成物(1)の重合方法としては、たとえば、ラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合、配位重合などが挙げられるが、分子配列を固定化したり、らせん構造を固定化するには、電子線、紫外線、可視光線または赤外線(熱線)などの光線や熱を利用した熱重合や光重合が適している。熱重合はラジカル重合開始剤の存在下で行うことが好ましく、光重合は光ラジカル重合開始剤の存在下で行うのが好ましい。また、充填材の含有量によっては、熱による熱重合が好ましい。得られる重合体(1)は、単独重合体、ランダム共重合体、交互共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体のいずれであってもよく、用途などに応じて適宜選択すればよい。
【0089】
熱重合により放熱部材用組成物(1)の配向を固定化する条件としては、熱硬化温度が、室温〜350℃、好ましくは室温〜250℃、より好ましくは50℃〜200℃の範囲であり、硬化時間は、5秒〜10時間、好ましくは1分〜5時間、より好ましくは5分〜1時間の範囲である。重合後は、応力ひずみなど抑制するために徐冷することが好ましい。また、再加熱処理を行い、ひずみなどを緩和させてもよい。
【0090】
上記のようにして配向制御した重合体もしくは重合過程の重合体を延伸などの機械的操作により、さらに任意の方向に配向制御してもよい。
単離した重合体(1)は、溶媒に溶かして配向処理基板上で配向させフィルムなどに加工してもよく、2つの重合体を混合して加工してもよく、複数の重合体を積層させてもよい。前記溶媒としては、たとえば、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドジメチルアセタール、テトラヒドロフラン、クロロホルム、1,4−ジオキサン、ビス(メトキシエチル)エーテル、γ−ブチロラクトン、テトラメチル尿素、トリフルオロ酢酸、トリフルオロ酢酸エチル、ヘキサフルオロ−2−プロパノール、2−メトキシエチルアセテート、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノンなどが好ましい。これらは、アセトン、ベンゼン、トルエン、ヘプタン、塩化メチレンなど一般的な有機溶媒と混合して用いてもよい。
【0091】
本願の放熱部材は、上記重合体(1)からなり、シート、フィルム、薄膜、繊維、成形体などの形状で使用する。好ましい形状は、フィルムおよび薄膜である。これらは、流動を利用した配向処理を行い配向した状態で硬化させること好ましい。フィルムおよび薄膜は、放熱部材用組成物(1)を基板に塗布した状態または基板で挟んだ状態で重合させることによって得られる。また、溶媒を含有する該組成物(1)を、配向処理した基板に塗布し、溶媒を除去することによっても得られる。さらに、フィルムについては、重合体をプレス成形することによっても得られる。なお、本明細書におけるシートの膜厚は1mm以上であり、フィルムの膜厚は5μm以上、好ましくは10〜500μm、より好ましくは20〜300μmであり、薄膜の膜厚は5μm未満である。膜厚は、用途に応じて適宜変更すればよい。
【0092】
[製造方法]
以下、放熱部材用組成物(1)および放熱部材を製造する方法について具体的に説明する。
<カップリング処理を施す場合>
カップリング剤で処理された充填材を用いる場合は、充填材にカップリング処理を施す。カップリング処理は、公知の方法を用いることができる。
一例として、まず充填材粒子とカップリング剤を溶媒に加える。スターラー等を用いて撹拌したのち、放置する。溶媒乾燥後に、真空乾燥機等を用いて、真空条件下で加熱処理をする。この充填材粒子に溶媒を加えて、超音波処理により粉砕する。遠心分離機を用いてこの溶液を分離精製する。上澄みを捨てたのち、溶媒を加えて同様の操作を数回行う。オーブンを用いて精製後の充填材粒子を乾燥させる。
次にカップリング処理された充填材粒子と重合性液晶化合物を、メノウ乳鉢等を用いて混合したのち、2軸ロール等を用いて混練する。その後、超音波処理および遠心分離によって分離精製する。
さらにアミン系硬化剤と、メノウ乳鉢等を用いて混合したのち、2軸ロール等を用いて混練する。これにより、溶媒を含有しない放熱部材用組成物(1)を得ることができる。
<放熱部材の製造>
一例として、溶媒を含有しない放熱部材用組成物(1)を用いて、放熱部材としてのフィルムを製造する方法について具体的に説明する。
溶媒を含有しない放熱部材用組成物(1)を、圧縮成形機を用いて加熱板中にはさみ、圧縮成形により配向成形する。重合性液晶化合物は、液晶相を示す温度範囲以上で重合させて、重合体を形成する。さらに適切な時間、温度で後硬化を施してもよい。なお、圧縮成形時の圧力は、50〜200kgf/cm
2が好ましく、より好ましくは70〜180kgf/cm
2である。硬化時の圧力は基本的には高い方が好ましい。しかし、金型の流動性や、目的とする物性(どちら向きの熱伝導率を重視するかなど)によって適宜変更し、適切な圧力を加えることが好ましい。
【0093】
以下、溶媒を含有する放熱部材用組成物(1)を用いて、放熱部材としてのフィルムを製造する方法について具体的に説明する。
まず、基板上に該組成物(1)を塗布し、溶媒を乾燥除去して膜厚の均一な塗膜層を形成する。塗布方法としては、たとえば、スピンコート、ロールコート、カテンコート、フローコート、プリント、マイクログラビアコート、グラビアコート、ワイヤーバーコード、デップコート、スプレーコート、メニスカスコート法などが挙げられる。
【0094】
溶媒の乾燥除去は、たとえば、室温での風乾、ホットプレートでの乾燥、乾燥炉での乾燥、温風や熱風の吹き付けなどにより行うことができる。溶媒除去の条件は特に限定されず、溶媒がおおむね除去され、塗膜層の流動性がなくなるまで乾燥すればよい。なお、放熱部材用組成物(1)に用いる化合物の種類と組成比によっては、塗膜層を乾燥する過程で、塗膜層中の液晶分子の分子配向が完了していることがある。このような場合、乾燥工程を経た塗膜層は、前述した熱処理工程を経由することなく、重合工程に供することができる。しかしながら、塗膜層中の液晶分子の配向をより均一化させるためには、乾燥工程を経た塗膜層を熱処理し、その後に重合処理して配向を固定化することが好ましい。
【0095】
また、放熱部材用組成物(1)の塗布前に基板表面を配向処理することも好ましい。配向処理方法としては、たとえば、基板上に配向膜を形成するだけでもよいし、基板上に配向膜を形成させた後、レーヨン布などでラビング処理する方法、基板を直接レーヨン布などでラビング処理する方法、さらには酸化ケイ素を斜方蒸着する方法、延伸フィルム、光配向膜またはイオンビームなどを用いるラビングフリー配向などの方法が挙げられる。また、基板表面の処理を行わなくても、所望の配向状態を形成することができる場合もある。たとえば、ホメオトロピック配向を形成する場合はラビング処理等の表面処理を行わない場合が多いが、配向欠陥等を防止する点でラビング処理を行ってもよい。
【0096】
上記配向膜としては、放熱部材用組成物(1)の配向を制御できるものであれば特に限定されず、公知の配向膜を用いることができ、たとえば、ポリイミド、ポリアミド、ポリビニルアルコール、アルキルシラン、アルキルアミンもしくはレシチン系配向膜が好適である。
【0097】
上記ラビング処理には任意の方法を採用することができ、通常は、レーヨン、綿およびポリアミドなどの素材からなるラビング布を金属ロールなどに捲き付け、基板または配向膜に接した状態でロールを回転させながら移動させる方法や、ロールを固定したまま基板側を移動させる方法などが採用される。
【0098】
また、より均一な配向を得るために配向制御添加剤を放熱部材用組成物(1)中に含有させてもよい。このような配向制御添加剤としては、たとえば、イミダゾリン、4級アンモニウム塩、アルキルアミンオキサイド、ポリアミン誘導体、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン縮合物、ポリエチレングリコールおよびそのエステル、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ラウリル硫酸アミン類、アルキル置換芳香族スルホン酸塩、アルキルリン酸塩、脂肪族もしくは芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物、ラウリルアミドプロピルベタイン、ラウリルアミノ酢酸ベタイン、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンアルキルアミン、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物、パーフルオロアルキルトリメチルアンモニウム塩、パーフルオロアルキル基と親水性基とを有するオリゴマー、パーフルオロアルキル基と親油性基とを有するオリゴマー、パーフルオロアルキル基を有するウレタン、および、1級アミノ基を有する有機ケイ素化合物(例えば、アルコキシシラン型、直鎖状のシロキサン型、および、3次元縮合型のシルセスキオキサン型の有機ケイ素化合物)などが挙げられる。
【0099】
上記のようにして配向処理を施した基板を適宜選択し、放熱部材用組成物をその基板で挟み込むことによりホモジニアス、ホメオトロピック、ツイスト、スプレー、ハイブリッドなどの配向を得ることができる。また、上記方法に加え電場または磁場などを印加することにより、さらに配向を任意に制御してもよい。
【0100】
上記基板としては、たとえば、アルカリガラス、ホウ珪酸ガラス、フリントガラスなどのガラス基板;アルミニウム、鉄、銅などの金属基板;シリコンなどの無機基板;ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトン、ポリケトンサルファイド、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニレンオキサイド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリアリレート、アクリル樹脂、ポリビニルアルコール、ポリプロピレン、セルロース、トリアセチルセルロースもしくはその部分鹸化物、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ノルボルネン樹脂などのプラスティックフィルム基板などが挙げられる。
【0101】
上記フィルム基板は、一軸延伸フィルムでも、二軸延伸フィルムであってもよい。上記フィルム基板は、事前に鹸化処理、コロナ処理、プラズマ処理などの表面処理を施してもよい。なお、これらのフィルム基板上には、上記放熱部材用組成物(1)に含まれる溶媒に侵されないような保護層を形成してもよい。保護層として用いられる材料としては、たとえばポリビニルアルコールが挙げられる。さらに、保護層と基板の密着性を高めるためにアンカーコート層を形成させてもよい。このようなアンカーコート層は保護層と基板の密着性を高めるものであれば、無機系および有機系のいずれの材料であってもよい。
本発明の放熱部材は、放熱板、放熱シート、放熱フィルム、放熱接着材、放熱成形品などに有用である。
【0102】
[電子機器]
本発明の第3の実施の形態に係る電子機器は、上記第2の実施の形態に係る放熱部材と、発熱部を有する電子デバイスとを備える。放熱部材は、前記発熱部に接触するように電子デバイスに配置される。放熱部材の形状は、放熱板、放熱シート、放熱フィルム、放熱接着材、放熱成形品などのいずれであってもよい。
例えば、電子デバイスとして、半導体素子を挙げることができる。本願の放熱部材は、高熱伝導性に加えて、高耐熱性、高絶縁性を有する。そのため、半導体素子の中でも高電力のためより効率的な放熱機構を必要とする絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(Insulated Gate Bipolar Transistor、IGBT)に特に有効である。IGBTは半導体素子のひとつで、MOSFETをゲート部に組み込んだバイポーラトランジスタであり、電力制御の用途で使用される。IGBTを備えた電子機器には、大電力インバータの主変換素子、無停電電源装置、交流電動機の可変電圧可変周波数制御装置、鉄道車両の制御装置、ハイブリッドカー、エレクトリックカーなどの電動輸送機器、IH調理器などを挙げることができる。
【実施例】
【0103】
以下に、本発明を実施例を用いて詳細に説明する。しかし本発明は、以下の実施例に記載された内容に限定されるものではない。
【0104】
本発明の実施例に用いた、放熱部材を構成する成分材料は次のとおりである。
<重合性液晶化合物>
・液晶性エポキシ:下記式(4−1)(JNC(株)製)
なお、特許第5084148号公報に記載の方法で合成することができる。
【化19】
<重合性化合物>
・エポキシ:jER828(三菱化学(株)製)
<硬化剤>
・アミン系硬化剤1:4,4’−ジアミノ−1,2−ジフェニルエタン(和光純薬工業(株)製
・アミン系硬化剤2:4,4’−ジアミノ−1,2−ジフェニルメタン(和光純薬工業(株)製)
・アミン系硬化剤3:jER113(三菱化学(株)製)
・アミン系硬化剤4:EDR148(三井化学ファイン(株)製)
<充填材>
・窒化ホウ素:h−BN粒子(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン(合)製、(商品名)PolarTherm PTX―25)
<シランカップリング剤>
・オクタデシルトリエトキシシラン(アヅマックス(株)製)
・3−アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学(株)製、(商品名)KBM−903)
【0105】
<放熱部材の調製>
以下に、放熱部材の調製例を示す(下記分量は実施例35、36に該当する)。
・カップリング剤処理窒化ホウ素粒子の準備
窒化ホウ素粒子(PTX25、以下BNと略記)5.0gと3−アミノプロピルトリメトキシシラン0.75gをトルエン(無水)50mLに加え、スターラーを用いて750rpmで1時間攪拌し、得られた混合物を40℃で5時間、室温で19時間乾燥した。さらに、溶媒乾燥後に125℃に設定した真空乾燥機を用いて真空条件下で5時間加熱処理した。
このカップリング剤で修飾したBN粒子をサンプル管に移してTHF(ナカライテスク(株)製)50mLを加えたのち、超音波処理(BRANSON(株)製MODEL450)により粉砕した。さらに、この溶液を遠心分離機(日立工機(株)製CT6E)を用いて6000rpmで10分間分離精製した。上澄み液を捨てたのち、アセトンを50mL加えて同様の操作を二回行った。精製後の修飾BN粒子を60℃のオーブン中で24時間乾燥した。
このカップリング剤処理BN粒子と液晶性エポキシを、それぞれ2gと4g(BNの配合比が19vol%)薬包紙上に測りとり、乳鉢を用いて混合したのち、2軸ロール(日東反応機(株)製HR−3)を用いて120℃で10分混練した。その後、超音波処理および遠心分離によって分離精製し、未反応成分を取り除いたカップリング剤修飾BN粒子を得た。また被覆量は、作製したカップリング剤修飾BN粒子をTG−DTA装置(セイコーインスツル(株)製EXSTAR TG/DTA5200)を用いて、その600℃における加熱減量から算出した。
【0106】
・ジアミンとの混合
作製したシランカップリング剤修飾BN粒子と液晶性エポキシと、アミン系硬化剤1(DDET)を、それぞれ4.38gと0.34gと0.1gをメノウ乳鉢で混合したのち、2軸ロールを用いて55℃で10分間混練した。
【0107】
・重合および成形
得られた混合物をステンレス製板中にはさみ、150℃に設定した圧縮成形機((株)神藤金属工業所製F−37)を用いて9.8MPaまで加圧し、15分間加熱状態を続けることで、配向処理と前硬化をおこなった。すなわちステンレス板の間を混合物が広がる際に、広がり方向に液晶性エポキシが配向する。また、試料の厚みは約200μmになるように、試料の量を調整した。さらに、オーブンを用いて80℃で1時間、150℃で3時間の後硬化をおこない目的とする、本発明の放熱部材とした。
【0108】
・熱伝導率および熱拡散率の評価
熱伝導率は、予め放熱部材の比熱(セイコーインスツル(株)製DSC型入力補償型示差走査熱量測定装置EXSTAR6000で測定した。)と比重(メトラー・トレド製比重計AG204密度測定キットにより測定した。)を求めておき、その値をアルバック理工(株)製TC7000熱拡散率測定装置により求めた熱拡散率を掛け合わせることにより熱伝導率を求めた。なお、厚み方向の熱拡散率は、試料をカーボンスプレーを用いて黒化処理し、標準のサンプルホルダーを用いて測定した。また、平面方向の熱拡散率は、レーザーを照射するスポットと、赤外線を検出するスポットの間を5mm離すアダプターを作製し、試料にレーザーが照射されて赤外線が出るまでの時間と、その距離から算出した。
【0109】
実施例1〜13では、上記<放熱部材の調製>において、未修飾のBN粒子(PTX25)を用いて放熱部材を調製した。以下に熱伝導率を示す。
また、
図3、4に未修飾のBN粒子の体積分率と熱伝導率の関係をグラフで示す。
図3、4において、(a)はx−y方向の熱伝導率であり、(b)は厚み方向の熱伝導率である。
また、実施例1において液晶性エポキシの代わりにビスフェノール型エポキシ(jER828)を使用して、同様な評価をおこなったところ(比較例1)、x−y方向の熱伝導率は14.5W/mKしかなかった。
【表1】
【0110】
実施例21〜30では、上記<放熱部材の調製>において、オクタデシルトリエトキシシランで処理したBN粒子を用いて放熱部材を調製した。以下に熱伝導率を示す。修飾量は、BN粒子+オクタデシルトリエトキシシラン100重量%に対する量である。
また、
図3にBN粒子の体積分率と熱伝導率の関係をグラフで示す。
図3において、(a)はx−y方向の熱伝導率であり、(b)は厚み方向の熱伝導率である。
【表2】
【0111】
実施例31〜36では、上記<放熱部材の調製>において、3−アミノプロピルトリメトキシシランで処理しさらに液晶エポキシで表面修飾したBN粒子を用いて放熱部材を調製した。以下に熱伝導率を示す。修飾量は、BN粒子+KBM903+液晶エポキシ100重量%に対する量である。
また、
図4にBN粒子の体積分率と熱伝導率の関係をグラフで示す。
図4において、(a)はx−y方向の熱伝導率であり、(b)は厚み方向の熱伝導率である。
【表3】
【0112】
実施例41〜46では、上記<放熱部材の調製>において、3−アミノプロピルトリメトキシシランで処理しさらに液晶エポキシで表面修飾したBN粒子を用いて放熱部材を調製した。以下に熱伝導率を示す。修飾量は、BN粒子+KBM903+液晶エポキシ100重量%に対する量である。
また、
図4にBN粒子の体積分率と熱伝導率の関係をグラフで示す。
図4において、(a)はx−y方向の熱伝導率であり、(b)は厚み方向の熱伝導率である。
【表4】
【0113】
図3、4に示すとおり、未修飾窒化ホウ素粒子を用いた放熱部材、および、シランカップリング剤処理窒化ホウ素粒子を用いた放熱部材は、窒化ホウ素粒子の量が多いほど熱伝導率は高く、その値は、液晶性を示さない重合性のエポキシと窒化ホウ素粒子から形成された放熱部材と比較して、x−y(平面)方向および厚み方向のどちらも極めて高い値となった。例えば、比較例1(エポキシ)では、x−y方向の熱伝導率は14.5W/mKしかなく、実施例1(液晶性のエポキシ)の方が熱伝導率が高い。
図4(b)に示すとおり、厚み方向の熱伝導率は、未修飾窒化ホウ素粒子を用いた放熱部材よりも、カップリング修飾または表面修飾窒化ホウ素粒子を用いた放熱部材の方が高い。これは、高せん断時に修飾窒化ホウ素粒子の周囲の修飾分子が液晶高分子の流動配向を阻害し、修飾窒化ホウ素粒子に厚み方向の力が働き、厚み方向の熱伝導率を向上させたためと考えられる。
【0114】
実施例51〜53、比較例2では、上記<放熱部材の調製>において、BN粒子(PTX25)を含めず、それぞれ異なる硬化剤を用いて放熱部材を調製した。
ジアミンをアミン系硬化剤1から、アミン系硬化剤2〜4に変更して放熱部材を調製したところ、一部試料で気泡が入ってしまい、密度を測定できなかったので熱拡散率での評価とした(実施例51−53、比較例2)。硬化剤に式(3−1)で示すようなジアミンを用いるほうが、放熱性が高くなる結果となった。
【表5】
【0115】
本明細書中で引用する刊行物、特許出願および特許を含むすべての文献を、各文献を個々に具体的に示し、参照して組み込むのと、また、その内容のすべてをここで述べるのと同じ限度で、ここで参照して組み込む。
【0116】
本発明の説明に関連して(特に以下の請求項に関連して)用いられる名詞および同様な指示語の使用は、本明細書中で特に指摘したり、明らかに文脈と矛盾したりしない限り、単数および複数の両方に及ぶものと解釈される。語句「備える」、「有する」、「含む」および「包含する」は、特に断りのない限り、オープンエンドターム(すなわち「〜を含むが限定しない」という意味)として解釈される。本明細書中の数値範囲の具陳は、本明細書中で特に指摘しない限り、単にその範囲内に該当する各値を個々に言及するための略記法としての役割を果たすことだけを意図しており、各値は、本明細書中で個々に列挙されたかのように、明細書に組み込まれる。本明細書中で説明されるすべての方法は、本明細書中で特に指摘したり、明らかに文脈と矛盾したりしない限り、あらゆる適切な順番で行うことができる。本明細書中で使用するあらゆる例または例示的な言い回し(例えば「など」)は、特に主張しない限り、単に本発明をよりよく説明することだけを意図し、本発明の範囲に対する制限を設けるものではない。明細書中のいかなる言い回しも、本発明の実施に不可欠である、請求項に記載されていない要素を示すものとは解釈されないものとする。
【0117】
本明細書中では、本発明を実施するため本発明者が知っている最良の形態を含め、本発明の好ましい実施の形態について説明している。当業者にとっては、上記説明を読んだ上で、これらの好ましい実施の形態の変形が明らかとなろう。本発明者は、熟練者が適宜このような変形を適用することを予期しており、本明細書中で具体的に説明される以外の方法で本発明が実施されることを予定している。従って本発明は、準拠法で許されているように、本明細書に添付された請求項に記載の内容の変更および均等物をすべて含む。さらに、本明細書中で特に指摘したり、明らかに文脈と矛盾したりしない限り、すべての変形における上記要素のいずれの組み合わせも本発明に包含される。