特許第6654629号(P6654629)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6654629
(24)【登録日】2020年2月3日
(45)【発行日】2020年2月26日
(54)【発明の名称】食品調理システム
(51)【国際特許分類】
   F24C 7/02 20060101AFI20200217BHJP
【FI】
   F24C7/02 H
   F24C7/02 511N
   F24C7/02 551C
【請求項の数】3
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2017-511485(P2017-511485)
(86)(22)【出願日】2016年2月9日
(86)【国際出願番号】JP2016053763
(87)【国際公開番号】WO2016163146
(87)【国際公開日】20161013
【審査請求日】2018年7月5日
(31)【優先権主張番号】特願2015-77865(P2015-77865)
(32)【優先日】2015年4月6日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000226998
【氏名又は名称】株式会社日清製粉グループ本社
(73)【特許権者】
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】パナソニック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】特許業務法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮島 孝明
(72)【発明者】
【氏名】入江 謙太朗
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 俊之
(72)【発明者】
【氏名】仲西 由美子
(72)【発明者】
【氏名】片岡 章
(72)【発明者】
【氏名】澁谷 昌樹
【審査官】 大谷 光司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−156818(JP,A)
【文献】 特開平09−101034(JP,A)
【文献】 実開昭53−013955(JP,U)
【文献】 特開平08−128645(JP,A)
【文献】 特開2005−257120(JP,A)
【文献】 特開2005−308312(JP,A)
【文献】 特開2012−075586(JP,A)
【文献】 特開2004−239465(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24C7/02
B65D81/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被調理物である食品と該食品を収容する収容体とを含む個食包装体と、該個食包装体を収容する加熱室と、該加熱室に蒸気を供給する蒸気供給手段と、該加熱室にマイクロ波を供給するマイクロ波供給手段とを備え、該蒸気と該マイクロ波とで該食品を加熱調理する食品調理システムであって、
前記収容体は、前記加熱室内の蒸気を前記個食包装体内に取り込み可能になされており、
前記個食包装体内の食品に対し、該食品の上下両方向から前記蒸気を供給し、
更に、前記個食包装体用の蒸気透過性の載置台と、該載置台上に載置され、該個食包装体が該載置台の上面より上方位置に留まるように該個食包装体を支持する支持部材とを備え、
前記収容体は、食品が載置される底面部と、該底面部の周縁から立ち上がる周面部とを含んで構成される樹脂製又は紙製のトレーであり、該底面部及び該収容体内の食品より上方位置それぞれに蒸気通気用の通気孔を有し、且つ該周面部の上端部にフランジ部が突出形成されており、
前記支持部材は、前記トレーの周面部を囲繞し得る枠体であり、前記載置台上に載置された該枠体の上端に該トレーのフランジ部を当接させることにより、該トレーを該載置台の上面より上方位置にて支持可能になされており、
前記載置台の下方に前記蒸気を直接供給し、その供給された蒸気が該載置台を透過し、その透過した蒸気の一部が、前記底面部の前記通気孔を介して前記個食包装体内に導入されると共に、該載置台を透過した蒸気の他の一部が、該載置台と該個食包装体と前記支持部材とで画成された空間部に導入され、さらに、前記食品より上方位置の前記通気孔を介して該個食包装体内に導入されるようになされており、
前記蒸気供給手段によって前記加熱室に温度85〜130℃の蒸気が供給され、該蒸気が前記個食包装体内に供給されている状態で、前記マイクロ波供給手段によって実出力500〜3000Wのマイクロ波が15〜180秒間供給される食品調理システム。
【請求項2】
記通気孔の開孔面積6〜80mm2、前記底面部の開孔率1〜40%である請求項に記載の食品調理システム。
【請求項3】
前記加熱室において前記個食包装体が載置される蒸気透過性の載置台を備え、該載置台の下方に前記蒸気を直接供給すると共に、該載置台上の該個食包装体内の食品に、該食品より上方位置から前記蒸気を直接供給する請求項1又は2に記載の食品調理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品を蒸気とマイクロ波とで加熱する食品調理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
冷凍食品を再加熱して喫食可能な状態にする解凍手段としては、直火加熱解凍、湯煎解凍、電子レンジ解凍等がある。中でも電子レンジは、手を汚さずに衛生的に冷凍食品の解凍を簡便に行うことができるため、一般に広く普及している。電子レンジとしては、従来、被加熱物である食品に対してマイクロ波を放射することで食品を高周波加熱する、いわゆる「あたため」や「レンジ調理」機能のみを備えるタイプが主流であったが、近年、食品の多様化等に伴い電子レンジの多機能化が進み、高周波加熱による調理機能に加えて、スチーム加熱によるいわゆる「スチーム調理」機能を備えるタイプが普及している(特許文献1及び2参照)。高周波加熱は、加熱時間が短いという長所を有する一方で、加熱ムラが生じ易く、過加熱になると食品の乾燥や硬化を招きやすいという短所を有しているところ、スチーム加熱は、水を沸騰させて発生した蒸気により食品を加熱するため、高周波加熱と組み合わせることで、高周波加熱の短所を補うことができる。
【0003】
特許文献3〜5には、レンジ調理機能及びスチーム調理機能を備えた加熱調理器の改良技術として、加熱調理器の加熱室に、被加熱物である食品を収容する容器を配置し、該容器に、蒸気供給手段から供給される蒸気の導入口を設けて、該容器内に蒸気を直接導入可能にすることが記載されている。特許文献3に記載の蓋付き容器(蒸し器)は、その内部空間が蒸気透過性の仕切板によって上下2つに区分されており、その上部空間に食品が収容され、下部空間を画成する壁部に蒸気の導入口が設けられ、該下部空間に蒸気が直接導入されるようになされている。特許文献4及び5に記載の容器は、食品が載置される受け皿と該受け皿を覆うグリル皿蓋とを有し、該グリル皿蓋に蒸気の導入口が設けられている。特許文献3〜5記載の技術によれば、調理の効率化、調理時間の短縮化を図りつつ、食品をおいしく調理できるとされている。
【0004】
特許文献6には、冷凍食品(米粉入りパスタ)の解凍にスチーム加熱を採用した技術が開示されている。特許文献6記載技術は、米粉入りパスタが、小麦粉のみからなる通常のパスタに比して、冷凍状態から解凍したときの品質の劣化が著しいという課題を有している点に鑑みてなされたもので、特定条件下でボイル・冷凍してなる冷凍米粉入りパスタを、ゲージ圧力が特定範囲にある蒸気中に特定時間保持することにより、急速解凍する工程を有している。特許文献6記載技術によれば、加工工場でのボイル工程及び冷凍工程、加工工場から店舗までの輸送工程、並びに、店舗での保管工程及び急速解凍工程を一元管理することができ、注文を受けてから短時間で、コシのある米粉入りパスタを提供することができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013−120018号公報
【特許文献2】特開2014−25612号公報
【特許文献3】特開2007−271104号公報
【特許文献4】特開2011−237144号公報
【特許文献5】特開2011−241987号公報
【特許文献6】特開2013−215139号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1〜5に記載の如き従来の加熱調理器は、調理の効率化、調理時間の短縮化に対する要求に応え、高品質の調理済み食品を提供し得るものであるが、ライフスタイルの多様化、食品の多様化等を背景に、要求されるレベルは近年ますます高まっており、より高性能の食品調理システムが要望されている。また例えば、特許文献3〜5記載の加熱調理器における受け皿や蒸し器等の容器は、基本的に調理専用容器であり、食品の調理前には、被調理物である食品をその包装容器から取り出して該調理専用容器に移す作業が必要であり、また、該調理専用容器を用いた食品の調理後は、該調理専用容器に収容されている調理済み食品を喫食用・提供用の食器(皿など)に移す作業が必要であるため、それらの作業分だけ手間がかかり、またそれらの作業に起因して、調理前から調理を経て喫食されるまでの間に食品が手や調理器具等に触れるおそれがあり、衛生面でも改善の余地がある。蒸気とマイクロ波とを用いる加熱調理器において、被調理物である食品をその収容体ごと加熱調理するニーズに十分に応え得る技術は未だ提供されていない。
【0007】
本発明の課題は、蒸気とマイクロ波とを用いて冷凍食品等の食品をその収容体ごと簡便に加熱調理することができ、加熱調理後は、その加熱調理済み食品と収容体とからなる個食包装体として一体的且つ衛生的に取り扱うことができ、しかも、加熱調理済み食品について高品質な仕上がりが得られる食品調理システムを提供することに関する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、被調理物である食品と該食品を収容する収容体とを含む個食包装体と、該個食包装体を収容する加熱室と、該加熱室に蒸気を供給する蒸気供給手段と、該加熱室にマイクロ波を供給するマイクロ波供給手段とを備え、該蒸気と該マイクロ波とで該食品を加熱調理する食品調理システムであって、前記収容体は、前記加熱室内の蒸気を前記個食包装体内に取り込み可能になされており、前記蒸気供給手段によって前記加熱室に温度85〜130℃の蒸気が供給され、該蒸気が前記個食包装体内に供給されている状態で、前記マイクロ波供給手段によって実出力500〜3000Wのマイクロ波が15〜180秒間供給される食品調理システムである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の食品調理システムによれば、蒸気とマイクロ波とを用いて冷凍食品等の食品をその収容体ごと簡便に加熱調理することができ、加熱調理後は、その加熱調理済み食品と収容体とからなる個食包装体として一体的且つ衛生的に取り扱うことができ、しかも、加熱調理済み食品について高品質な仕上がりが得られる。「高品質な仕上がり」とは、具体的には例えば、冷凍食品を加熱調理して得られた食品について、電子レンジ特有の過加熱や乾燥がなく、仕上がりにウェット感があって、冷凍前の調理直後と同様の味、食感、外観が達成できていることである。また、個食包装体を構成する収容体は、基本的に、一回の使用で収容物(食品)を使い切ることを目的とする使い切り収容体であり、個食包装体内の食品を喫食後は収容体を廃棄すれば良く、調理から喫食後の片づけまでを簡便且つ衛生的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の食品調理システムの一実施形態である加熱調理器の一例の概略正面図である。
図2図2(a)〜図2(c)は、それぞれ、図1に示す加熱調理器における収容体の一実施形態を模式的に示す斜視図である。
図3図3(a)は、本発明の食品調理システムの一実施形態である加熱調理器の他の一例の要部の概略図であり、図3(b)は、図3(a)に示す加熱調理器における収容体の一実施形態を模式的に示す斜視図である。
図4図4(a)は、本発明の食品調理システムの一実施形態である加熱調理器のさらに他の一例の要部の概略図であり、図4(b)は、図4(a)に示す加熱調理器における収容体及び支持部材を模式的に示す斜視図である。
図5図5(a)は、本発明の食品調理システムの一実施形態である加熱調理器のさらに他の一例の要部の概略図であり、図5(b)は、図5(a)に示す加熱調理器における収容体の一実施形態を模式的に示す斜視図である。
図6図6(a)及び図6(b)は、それぞれ、本発明の食品調理システムの一実施形態である加熱調理器のさらに他の一例の要部の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。図1には、本発明の食品調理システムの一実施形態である加熱調理器1Aの概略構成が示されている。加熱調理器1Aは、被加熱物である食品Fを蒸気(水蒸気)とマイクロ波とで加熱する食品調理システムの一種であり、食品Fと該食品Fを収容する収容体10とを含む個食包装体19と、該個食包装体19を収容する加熱室2と、該加熱室2に蒸気を供給する蒸気供給手段3と、該加熱室2にマイクロ波を供給するマイクロ波供給手段4とを備えている。
【0012】
さらに説明すると、加熱調理器1Aは、該加熱調理器1Aの外観を形作る直方体形状の本体ケーシング5を備え、該本体ケーシング5内に、正面視長方形形状の加熱室2が配置されている。本体ケーシング5の正面には、該本体ケーシング5の正面の一辺を回動軸として回動する扉(図示せず)が取り付けられており、この扉を開閉することで加熱室2を開閉可能になされている。また図示していないが、本体ケーシング5の正面における前記扉の側方には、液晶表示部、ダイヤル、ボタン等からなる操作パネルが設けられており、この操作パネルを操作することで、加熱調理器1Aの稼働、加熱条件の設定等を行うことが可能になされている。
【0013】
蒸気供給手段3は、蒸気発生部30と蒸気供給管31とを含んで構成されている。蒸気発生部30は、水を加熱して水蒸気にするためのヒータ等を含んで構成され、本体ケーシング5内において加熱室2の側方に隣接配置されている。加熱調理器1Aの稼働時においては、蒸気発生に必要な水が蒸気発生部30に供給され、その供給された水は蒸気発生部30で加熱されて沸騰し、水蒸気(飽和水蒸気)となる。蒸気発生のための水は、例えば、水道から直接供給されるか、又は、加熱調理器1Aが備える水タンク(図示せず)から給水ポンプ(図示せず)により供給される。蒸気発生部30で発生した水蒸気(飽和水蒸気)は、蒸気供給管31を介して加熱室2に供給される
【0014】
マイクロ波供給手段4は、本体ケーシング5内において加熱室2の上方及び下方に配置されており、マイクロ波を発生するマグネトロン、発生したマイクロ波を伝送する導波管、マイクロ波を加熱室3に放射する回転アンテナ等を含んで構成されている。
【0015】
加熱調理器1Aは、いわゆるスチーム調理機能を有する公知の電子レンジと同様の基本構成を有しており、蒸気供給手段3及びマイクロ波供給手段4は、該電子レンジにおけるものと同様に構成することができ、さらに、該電子レンジが通常備えているその他の各種手段、例えば、加熱室2の温度を検知する温度検知手段等を備えている。また加熱調理器1Aは、この種のスチーム調理機能を有する公知の電子レンジと同様に、各種調理モードの切り替えが可能に構成されており、蒸気供給手段3によるスチーム加熱とマイクロ波供給手段4による高周波加熱との両方を用いた調理モードの他、両者のうちの一方のみを用いた調理モードを実行することが可能である。
【0016】
個食包装体19は、調理され喫食される食品Fと、該食品Fを収容・包装する収容体10とを含んで構成されており、商業用パッケージである。個食包装体19は、それ単体で市場流通可能な形態とされており、そのままの形態で店頭に並べられ、一般消費者の手に渡り得る。一般消費者が個食包装体19を店舗で購入する態様を例にとると、店舗で購入された個食包装体19は、必要に応じそのまま冷蔵又は冷凍保管することができ、提供・喫食する際には、個食包装体19をそのまま加熱調理器1Aの加熱室2に収容して加熱調理すれば良く、調理済みの食品Fを、別体の皿などの喫食用・提供用容器に移さずに、収容体10に収容されたままの状態で提供・喫食することができる。収容体10は食品Fの喫食後に廃棄することもできる。従って、個食包装体19を用いることで、食品の調理から提供・喫食までを簡便に衛生的に実行することが可能となり、例えば、店舗における専用調理場を備えない部署(例えばスーパーのレジ周り)等でも調理が可能である。
【0017】
個食包装体19に収容される食品Fの種類は特に限定されず、例えば、パスタ、うどん、そば、中華麺等の麺類の他、米飯、パン類、蒸し物類が挙げられる。食品Fの状態も特に限定されず、生(非冷凍非加熱状態)でも良く、冷蔵又は冷凍状態でも良い。加熱調理器1Aは、例えば、生の食品(非冷凍非加熱食品)の加熱、冷凍食品の解凍、チルド(冷蔵)食品の温めなどに利用でき、特に、冷凍麺類の解凍、米飯類の解凍・加熱に有効である。
【0018】
個食包装体19を構成する収容体10は、電子レンジ加熱に耐え得る材質、具体的には樹脂又は紙で構成されているもので、加熱室2内の蒸気を個食包装体19内に取り込み可能になされている。より具体的には、本実施形態における収容体10は、図中符号Fで示す食品を収容する空間部を画成する壁部を有し、該壁部は、食品Fが載置される底面部11と、該底面部11の周縁から立ち上がる周面部12とを含み、該壁部に、該壁部を厚み方向に貫通する蒸気通気用の通気孔15が複数形成されており、それら複数の通気孔15を介して、加熱室2内の蒸気を個食包装体19内に取り込み可能になされている。周面部12は、平面視長方形形状の底面部11の四辺それぞれから立ち上がる4枚の平板状の側壁部から構成されている。底面部11と周面部12(4枚の側壁部)とで囲まれた内側が、被加熱物である食品の収容部となっている。
【0019】
本実施形態における収容体10は、平面視略四角形形状のトレーであり、食品の収容・取り出しが可能な上部開口を有している。この上部開口は図1に示すように、個食包装体19の調理時には蓋部17で覆われている。蓋部17は、個食包装体19の調理後に内部の食品Fを喫食する際に除去される。蓋部17としては、蒸気非透過性を有し且つ収容体10の内と外とを分け隔てられる開封可能な部材であれば良く、例えば、包装用ラップなどの樹脂製フィルム、周面部12の上端部(フランジ部13)に係合可能な嵌合蓋などの樹脂製板状部材を用いることができる。
【0020】
本実施形態における収容体10は、周面部12の上端部にフランジ部13が突出形成されている。フランジ部13は、周面部12の上端部から面方向(収容体の深さ方向と直交する方向)の外方に向けて水平に突出しており、収容体10の上面視において、収容体10の上部開口を包囲するように連続している。フランジ部13は、収容体10(個食包装体19)を手指で把持する際の摘みとして利用することができ、また、後述する他の実施形態においては、個食包装体19を調理する際に使用する支持部材6の係合部位として利用される(図4参照)。またフランジ部13は、蓋部17として包装用ラップなどの樹脂製フィルムを用いた場合には、そのフィルムが接着される被接着部として機能する。
【0021】
本実施形態においては、通気孔15は底面部11のみに複数散在形成されており、周面部12には形成されていない。複数の通気孔15は互いに平面視において同形状同寸法である。本発明において通気孔15は、収容体10における食品を収容する空間部を画成する壁部に形成されていれば良く、周面部12に形成されていても良いし、底面部11と相対向する蓋部17に形成されていても良い。食品Fが載置される底面部11に形成された通気孔15は、蒸気通気用として機能するのみならず、食品Fから滲み出した水分等の液体の排出孔としても機能し得るため、通気孔15は少なくとも底面部11に形成することが好ましい。
【0022】
本発明に係る収容体において、その底面部における蒸気通気用の通気孔の開孔面積及び開孔率は、収容体の形態に応じて適宜調整すれば良く特に制限されないが、収容体が図1に示す収容体10の如きトレーの場合、蒸気による食品の加熱効率と容器としての機能とのバランスの観点から、1個の通気孔の開孔面積は好ましくは6〜80mm2、さらに好ましくは12〜65mm2、より好ましくは15〜55mm2であり、収容体としてのトレーの底面部の開孔率は好ましくは1〜40%、さらに好ましくは2〜30%、より好ましくは4〜20%である。ここでいう「開孔率」は、対象となる部位(例えば底面部11)の外面又は内面の全面積に対する、該部位に形成されている全ての通気孔15の開孔面積の合計値の割合を意味する。尚、周面部12や蓋部17に通気孔15を形成する場合、その開孔面積及び開孔率は、底面部11と同様に設定することができる。
【0023】
また、本発明に係る収容体には、図示の如きトレーのみならず、食品を個別包装する樹脂製の包装袋も含まれるところ、収容体が斯かる包装袋の場合、前記と同様の観点から、1個の通気孔の開孔面積は好ましくは2〜80mm2、さらに好ましくは3〜50mm2、より好ましくは4〜25mm2であり、収容体としての包装袋の底面部の開孔率は好ましくは1〜30%、さらに好ましくは1〜20%、より好ましくは1〜10%である。
【0024】
収容体10の底面部11の複数の通気孔15は、それぞれ、収容体10の内面側の開孔端部における最長部分の長さが、好ましくは50mm以下、さらに好ましくは3〜30mmである。ここでいう「通気孔15の最長部分」は、通気孔15の平面視形状が、図2(a)に示す真円形状の如き、等方性形状の場合は直径等を意味し、図2(b)に示す長楕円形状の如き、異方性形状の場合は長軸等を意味する。また、「通気孔15の最長部分」は、収容体10の内面側(食品の収容空間側)における開孔端部についての測定値を意味する。本実施形態における通気孔15は、それが形成されている壁部の厚み方向において大きさが一定であり、収容体10の内面側と外面側とで通気孔15の最長部分は同じである。
【0025】
通気孔15の平面視形状、形成パターン等は特に限定されず、適宜設定可能である。図2には、食品容器10のバリエーション10A,10B,10Cが示されている。尚、説明容易の観点から、図2並びに後述する図3(b)、図4(b)及び図5(b)においては、蓋部17(図1参照)の記載を省略している。図2に示す収容体10A,10B,10Cは、何れも底面部11に通気孔15が複数散在形成されたものであり、図1に示す収容体10として利用可能である。収容体10A,10B,10Cは、通気孔15の平面視形状が互いに異なっており、図2(a)に示す収容体10Aにおける通気孔15は平面視真円形状、図2(b)に示す収容体10Bにおける通気孔15は平面視長楕円形状、図2(c)に示す収容体10Cにおける通気孔15は平面視星形形状である。尚、図示の形態は何れも、全ての通気孔15の形状及び寸法が互いに同一であるが、本発明においては、複数の通気孔15は互いに形状や寸法が異なっていても良い。
【0026】
通気孔15の平面視形状が真円形状の場合、その直径は好ましくは1〜10mmである。通気孔15の平面視形状が長楕円形状や長方形形状の如き、一方向に長い形状の場合、その短辺は好ましくは1〜10mm、長辺は好ましくは10〜50mmである。尚、ここでいう通気孔15の平面視形状に関する寸法は、収容体10の内面側(食品の収容空間側)における開孔端部についての測定値を意味する。
【0027】
収容体10の形状は、図示の如き平面視四角形形状に限定されず、円形状、楕円形状、四角形以外の多角形形状等にすることができ、また、収容体10の各部の寸法も特に制限されない。但し、本発明者らの知見によれば、収容体10の如きトレータイプの平面視形状は、円形状が特に好ましい。トレータイプの収容体の平面視形状が円形状であると、該収容体内に食品を詰め込んだ場合に、該食品の平面視形状も円形状となって角部を有さないため、加熱調理時に供給されるマイクロ波が食品の角部に集中する不都合が防止され、食品全体に均一にマイクロ波が照射されやすくなるという利点がある。また、トレータイプの収容体の平面視形状が円形状であることの別の利点として、後述する載置台20における個食包装体19の載置面(上面)とは反対側において、蒸気が均一に拡散しやすいことが挙げられ、これによって、個食包装体19の全体に均一に蒸気を供給しやすくなる。
【0028】
また、個食包装体19の取り扱い性の向上等を考慮すると、個食包装体19を構成する収容体10は、普通の大人が一回で食べきる程度の量の食品を過不足なく収容できる程度の大きさを有していることが好ましい。斯かる観点から、例えば、収容体10における食品を収容する空間部が、図2に示す如き平面視四角形形状の場合、その平面視四角形の空間部の一辺の長さは、好ましくは50〜300mm、さらに好ましくは100〜200mmであり、また、該空間部が円形状の場合、その平面視円形の空間部の直径は、好ましくは50〜250mm、さらに好ましくは100〜200mmである。また、収容体10における食品を収容する空間部の深さは、好ましくは20〜100mm、さらに好ましくは30〜80mmである。
【0029】
図1に示すように、加熱調理器1Aは、加熱室2において個食包装体19が載置される載置台20を備えている。載置台20は、平板状の天井板21と、天井板21を下方から支持する複数の脚部22とを含んで構成され、テーブル形状をなしている。天井板21の上面は、個食包装体19が載置される載置面である。載置台20は、電子レンジ加熱に耐え得る材質(例えば各種合成樹脂)で構成されている。
【0030】
蒸気供給手段3の蒸気供給管31の先端は、図1に示すように、天井板21の下方又はその近傍に位置しており、これにより天井板21の下方に蒸気を直接供給可能になされている。天井板21は蒸気透過性を有しており、蒸気供給管31から噴出した蒸気は、天井板21を厚み方向に透過して、その上面に載置された個食包装体19に到達し、さらに個食包装体19の一部である収容体10の底面部11に形成された複数の通気孔15を通って、個食包装体19(収容体10)内の食品Fに到達する。図中の矢印は、蒸気の流れを示している。蒸気透過性を有する天井板21の形態は特に限定されず、例えば、樹脂等の蒸気透過性を有しない素材にこれを厚み方向に貫通する蒸気通気用の通気孔が複数散在形成された形態でも良く、あるいは、蒸気透過性を有する素材(例えば不織布)から構成された形態でも良い。天井板21に形成する蒸気通気用の通気孔は、収容体10における通気孔15と同様に形成することができる。
【0031】
以上の構成からなる加熱調理器1Aにおいて、加熱室2に載置された個食包装体19の食品Fを加熱する際には、蒸気供給手段3によって加熱室2に温度85〜130℃の蒸気を供給し、且つ、該蒸気が通気孔15を介して個食包装体19内に供給されている状態で、マイクロ波供給手段4によって実出力500〜3000Wのマイクロ波を15〜180秒間供給する。蒸気及びマイクロ波を斯かる条件で個食包装体19(収容体10)内の食品Fに供給することにより、加熱ムラや過加熱を起こすことなく食品Fを短時間で十分に加熱調理することが可能となり、高品質の加熱調理済み食品を、手を汚すことなく簡便且つ衛生的に得ることが可能となる。蒸気の温度が85℃未満、又はマイクロ波の実出力が500W未満若しくはマイクロ波の供給時間が15秒未満では、調理時間が長くかかりすぎるおそれがあり、蒸気の温度が130℃超、又はマイクロ波の実出力が3000W超若しくはマイクロ波の供給時間が180秒超では、過加熱により調理後の食品の品質が低下するおそれがある。ここでいう「マイクロ波の実出力」は、定格高周波出力を意味する。蒸気の温度は好ましくは95〜120℃、マイクロ波の実出力は好ましくは800〜2000W、マイクロ波の供給時間は好ましくは30〜100秒間である。
【0032】
前述した作用効果をより確実に奏させるようにする観点から、温度85〜130℃の蒸気の個食包装体19(収容体10)内への供給量は、好ましくは1〜100g、さらに好ましくは30〜80gである。但し、ここで好ましいとしている蒸気の供給量は、収容体10の如き、底面部に通気孔が形成されている場合のものであり、後述する収容体10E(図6参照)の如き、底面部に通気孔が形成されていない場合には、個食包装体を加熱調理したときにその内部の食品から滲み出る水分等の液体(結露水)によって該食品が濡れてしまう不都合を防止する観点から、蒸気の供給量は、好ましくは1〜100g、さらに好ましくは20〜50gである。個食包装体19内への蒸気の供給量は、収容体10の通気孔15の平面視形状や形成パターン、蒸気の供給形態を適宜調整することによって調整可能であり、後者の具体例としては、例えば、蒸気発生部30への水の供給量を調整する、蒸気供給管31の形状や配置を工夫する、加熱室2における蒸気の流れを調整可能なファンを設置する、等によって実施可能である。
【0033】
図3図6には、本発明の食品調理システムの他の一実施形態が示されている。後述する他の実施形態については、前記実施形態の加熱調理器1Aと異なる構成部分を主として説明し、同様の構成部分は同一の符号を付して説明を省略する。特に説明しない構成部分は、加熱調理器1Aについての説明が適宜適用される。
【0034】
前述した加熱調理器1Aは、個食包装体19内の食品Fに対し、食品Fの下方のみから蒸気を供給する形態であったのに対し、図3図5に示す実施形態は何れも、個食包装体19内の食品Fに対し、食品Fの上下両方向から蒸気を供給する形態である。食品の上下両方向から蒸気を供給することで、一方向のみから蒸気を供給する場合に比して、調理時間の短縮化が図られ、得られる品質のさらなる向上も期待できる。
【0035】
図3に示す加熱調理器1Bにおいては、底面部11のみならず周面部12にも通気孔15が形成された収容体10Dが採用されている。収容体10Dは、周面部12に通気孔15が形成されている点、及び上部開口14を塞ぐ蓋部を有していない点以外は、図2(b)に示す収容体10Bと同様に構成されている。周面部12の通気孔15は、収容体10Dに収容される食品より上方に位置し、上部開口14と同様に、その位置における蒸気の導入部として機能する。周面部12の通気孔15、即ち、収容されている食品より上方に位置する通気孔15は、周面部12の上端近傍、より具体的には、周面部12の上端から収容体10の深さの50%以内の領域に複数散在形成されている。周面部12の通気孔15は、底面部11の通気孔15と同様に形成可能であり、また、底面部11の通気孔15と同形状同寸法でも良く、底面部11の通気孔15とは異なっていても良い。
【0036】
また加熱調理器1Bは、収容体10Dの周面部12に通気孔15が形成されていることに対応して、図3(a)に示すように、載置台20(天井板21)に載置された状態の個食包装体19の全体を覆う包装体カバー23を備えている。包装体カバー23は、蒸気透過性を有しておらず且つ電子レンジ加熱に耐え得る材質(例えば各種合成樹脂)で構成されている。従って、包装体カバー23を、個食包装体19の全体を覆うように載置台20の天井板21の上面に載置することで、天井板21を透過してきた蒸気が、天井板21と包装体カバー23とで画成された空間に充満しやすくなり、該空間内の一部の蒸気は、個食包装体19における収容体10Dの周面部12の通気孔15及び上部開口14を通って、食品Fより上方位置から収容体10D内に入り、食品Fに到達する。
【0037】
加熱調理器1Bはこのように、収容体10Dが、食品Fが載置される底面部11及び該収容体10D内の食品Fより上方位置それぞれに通気孔15を有し、載置台20の下方に蒸気を直接供給し、その供給された蒸気が載置台20を透過し、その透過した蒸気の一部が、底面部11の通気孔15を介して個食包装体19(収容体10D)内に導入されると共に、載置台20を透過した蒸気の他の一部が、載置台20と包装体カバー23とで画成された空間部に導入され、さらに、食品Fより上方位置の通気孔15(周面部12の通気孔)及び上部開口14を介して、個食包装体19内に導入されるようになされており、これによって、個食包装体19内の食品Fに対し、食品Fの上下両方向から蒸気を供給可能である。従って加熱調理器1Bによれば、食品を効率良く加熱調理することができ、加熱ムラなどの不都合を起こし難く、より高品質の加熱調理済み食品が比較的短時間で得られる。
【0038】
蒸気による食品の加熱効率と容器としての機能とのバランスの観点から、収容体10Dの周面部12の複数の通気孔15(収容体10D内の食品より上方位置にある通気孔)は、それぞれ、収容体10Dの内面側の開孔端部における最長部分の長さが、好ましくは50mm以下、さらに好ましくは10〜35mmである。また同様の観点から、周面部12の開孔率は、好ましくは1〜50%、さらに好ましくは10〜35%である。
【0039】
図4に示す加熱調理器1Cは、包装体カバー23を備えていない代わりに、支持部材6を備えている点で、図3に示す加熱調理器1Bと異なる。加熱調理器1Cは、図4(a)に示すように、載置台20と、該載置台20上に載置され、個食包装体19が載置台20の上面20aより上方位置に留まるように該個食包装体19を支持する支持部材6とを備えている。個食包装体19は収容体10Dを含んで構成されている。収容体10Dについては、前述した通りであり、図4(b)にも示すように、食品Fが載置される底面部11と、該底面部11の周縁から立ち上がる周面部12とを含んで構成される樹脂製又は紙製のトレーであり、底面部11及び収容体10D内の食品Fより上方位置それぞれに通気孔15を有し、且つ周面部12の上端部にフランジ部13が突出形成されている。
【0040】
支持部材6は、図4(b)に示すように、トレー型の収容体10Dの周面部12を囲繞し得る枠体である。支持部材6は、蒸気透過性を有しておらず且つ電子レンジ加熱に耐え得る材質(例えば各種合成樹脂)で構成されている。図示の形態における支持部材6は、相対向する二組の板状部材60,61、即ち、相対向する一組の相対的に長手方向の長さが長い板状部材60,60と、相対向する一組の相対的に長手方向の長さが短い板状部材61,61とから構成され、中央部が上下方向に貫通した平面視して長方形形状の開口62を有し、該開口62がこれら4枚の板状部材60,61によって囲まれた環状をなしている。支持部材6の開口62は、併用される収容体10Dの挿入口として使用されるものであり、開口62の平面視形状は、収容体10Dの底面部11の平面視形状と相似の関係にあり、且つ開口62の方が底面部11よりも面積が大きい。また、開口62の平面視形状は、収容体10Dのフランジ部13の平面視形状(フランジ部13の輪郭)とも相似の関係にあり、且つ開口62の方が、フランジ部13を含めた収容体10Dの上面部(蓋部17)よりも面積が小さい。尚、底面部11とフランジ部13と支持部材6とにおいて、それらの平面視形状が互いに相似の関係にある必要は無く、互いに異なる平面視形状であっても良い。また、支持部材6の高さ(開口62の深さ)は、収容体10Dの高さよりも深い。
【0041】
図4に示すように、載置台20上に載置された枠体型の支持部材6の開口62に、トレー型の収容体10Dを底面部11側から挿入すると、収容体10Dにおけるフランジ部13より下方に位置する部分は、支持部材6内に収容され、フランジ部13及びそれより上方に位置する蓋部17は、開口62に収容されずに開口部62から突出する。ここで、支持部材6の上端に収容体10Dのフランジ部13を当接させると、支持部材6が収容体10Dより高さが高いために、図4(a)に示すように、収容体10Dは支持部材6によって載置台20の上面20aより上方位置にて支持され、その結果、収容体10Dの底面部11と載置台20の天井板21との間に空間部が形成される。
【0042】
斯かる構成の加熱調理器1Cにおいては、図4(a)に示すように、載置台20の下方に蒸気を蒸気供給管31により直接供給し、その供給された蒸気が載置台20を透過し、その透過した蒸気の一部が、底面部11の通気孔15を介して個食包装体19(収容体10D)内に導入されると共に、載置台20を透過した蒸気の他の一部が、載置台20と個食包装体19と支持部材6とで画成された空間部に導入され、さらに、食品Fより上方位置の通気孔15を介して個食包装体19内に導入されるようになされており、これによって、個食包装体19内の食品Fに対し、食品Fの上下両方向から蒸気を供給可能である。従って加熱調理器1Cによれば、食品を効率良く加熱調理することができ、加熱ムラなどの不都合を起こし難く、より高品質の加熱調理済み食品が比較的短時間で得られる。
【0043】
図5に示す加熱調理器1Dにおいては、図5(a)に示すように、蒸気供給手段3の蒸気供給管31の先端側(蒸気の噴出口側)が上側供給管31aと下側供給管31bとの2本に分岐しており、上側供給管31aは、載置台20に載置された個食包装体19(収容体10E)に接続され、下側供給管31bは、載置台20の天井板21の下方に延びている。収容体10Eの周面部12には、図5(b)に示すように、上側供給管31aを挿入可能な蒸気供給管挿入口16が形成されている。蒸気供給管挿入口16は、周面部12を構成する前記4枚の平板状の側壁部のうちの一枚の上端部に形成されている。蒸気供給管挿入口16は、図5(a)に示すように、収容体10Eに収容されている食品Fより上方に位置する蒸気の導入部として機能する。
【0044】
斯かる構成の加熱調理器1Dにおいては、下側供給管31bによって載置台20の下方に蒸気が直接供給されると共に、上側供給管31aによって載置台20上の個食包装体19(収容体10E)内の食品Fに、該食品Fより上方に位置する蒸気供給管挿入口16から蒸気が直接供給される。下側供給管31bによって載置台20の下方に供給された蒸気は、蒸気透過性の天井板21を透過し、さらに、収容体10Eの底面部11の通気孔15を介して個食包装体19内に導入されるので、加熱調理器1Dにおいては、個食包装体19内の食品Fに対し、食品Fの上下両方向から蒸気を供給可能である。加熱調理器1Dによっても加熱調理器1B,1Cと同様の効果が奏される。
【0045】
図3図5に示す実施形態は何れも、個食包装体19を構成する収容体10D,10Eの底面部11に蒸気通気用の通気孔15を有していたが、底面部11に通気孔15を有していなくても良い。収容体10D,10Eの底面部11に通気孔15が存在すると、個食包装体19を加熱調理したときに内部の食品から滲み出る水分等の液体(結露水)が底面部11の通気孔15から排出されるという利点がある一方で、加熱調理済みの個食包装体19の底部から結露水が排出されるので、これを喫食・提供する際にはこの結露水を受ける受け皿が別途必要となり、個食包装体19を取り扱う際の簡便さが低下する。収容体の底面部11に通気孔15を設けない場合は、このような取扱性の低下が防止されるという利点がある。一方、底面部11に通気孔15を設けない場合に懸念される結露水の排出の問題については、前述したように、個食包装体19内に供給する蒸気の量を調節することで対応可能である。尚、図3図5に示す実施形態において底面部11に通気孔15を設けない場合には、加熱室2内の蒸気は、収容体10D,10E内の食品より上方位置の上部開口14あるいは通気孔15のみから供給されることになるため、図3図5に示すように底面部11にも通気孔15を設けて食品の上下両方向から蒸気が供給されるように構成した場合に比して、調理時間の短縮効果等は低下する。
【0046】
図6には、収容体の底面部に蒸気通気用の通気孔が設けられていない実施形態が示されている。図6(a)に示す加熱調理器1Eにおいては、個食包装体19が、通気孔が設けられていないトレー型の収容体10Fと、収容体10Fの上部開口14を覆う立体的形状の蓋部17とを備え、蓋部17に設けられた蒸気供給管挿入口16を介して蒸気供給管31が個食包装体19(収容体10E)に接続されている。収容体10Fは、蒸気通気用の通気孔が一切設けられていない点以外は、収容体10Dと同様に構成されており、上部開口14のみから蒸気を取り込み可能になされている。斯かる構成の加熱調理器1Eにおいては、個食包装体19(収容体10F)内の食品Fに対し、その上方に位置する蒸気供給管31(蒸気供給管挿入口16)のみから蒸気が直接供給される。立体的形状の蓋部17は、蒸気供給管挿入口16が設けられている周面部170と、周面部170の上端部に連接され、収容体10Fの底面部11と相対向する上面部171とを有し、周面部170の下端部が、収容体10Fの上部開口14の開口縁部に係合(嵌合)可能に構成されている。
【0047】
図6(b)に示す加熱調理器1Fは、通気孔が設けられていない収容体10Fを用いている点、及び、包装体カバー23に設けられた蒸気供給管挿入口16を介して蒸気供給管31が接続されている点で、図3(a)に示す加熱調理器1Bと異なる。
【0048】
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は前記実施形態に制限されない。前述した一の実施形態のみが有する部分は、すべて適宜相互に利用できる。前記実施形態においては、収容体の複数の通気孔は互いに同形状同寸法であったが、形状及び/又は寸法の異なる複数の通気孔の組み合わせを採用することもできる。また前記実施形態においては、個食包装体を構成する収容体はトレーであったが、本発明に係る収容体は、前記加熱室内の蒸気を該収容体(前記個食包装体)の内部に取り込み可能になされていれば良く、例えば、食品を個別包装する樹脂製の包装袋であっても良い。この包装袋は、自立可能ないわゆるスタンディングパウチでも良い。収容体として包装袋を使用する場合、図4に示す支持部材6の如き、包装袋を載置台の上面より上方位置で支持し得る部材を併用することが好ましい。
【0049】
本発明の食品調理システムは、蒸気とマイクロ波とで食品を加熱する調理器具に適用可能であり、例えば、電子レンジ、オーブンレンジ、解凍装置等に適用することができる。また、個食包装体内の食品は、麺類、ご飯類などの主食材の他、主食材と一緒に喫食される副食材、例えば、ソース、具材、トッピング等を含んで構成されていても良い。
【実施例】
【0050】
本発明を具体的に説明するために実施例を挙げるが、本発明は以下の実施例によって制限されるものではない。
【0051】
〔実施例1〕
図1に示す加熱調理器1Aと同様の構成の加熱調理器と、被調理物である冷凍ギョウザとこれを収容する収容体とを含む個食包装体との組み合わせからなる食品調理システムを用意した。実施例1の収容体は、図2(a)に示す収容体10Aと同じ構成の平面視長方形形状の蓋部付きトレータイプのポリプロピレン製収容体であり、その詳細は下記の通り。
・食品を収容する空間部の寸法(縦100mm、横175mm、深さ35mm)
・通気孔の形成部位:底面部
・通気孔:平面視真円形状、開孔面積38mm2、底面部の開孔率15%
【0052】
〔参考例1〕
特許文献3に記載の加熱調理器と基本構成が同様の加熱調理器からなる食品調理システムを用意した。特許文献3記載の加熱調理器は、特許文献3の図1等に記載されているように、被調理物が収容された蓋付き容器内に蒸気を直接導入可能に構成されているもので、該容器は、内部空間が蒸気透過性の仕切板によって上下2つに区分されており、その上部空間に被調理物を収容し、下部空間に蒸気が直接供給されるようになされている。
【0053】
〔参考例2〕
特許文献4に記載の加熱調理器と基本構成が同様の加熱調理器からなる食品調理システムを用意した。特許文献4記載の加熱調理器は、特許文献4の図10図12等に記載されているように、被調理物が収容された蓋付き容器内に蒸気を直接導入可能に構成されているもので、該容器は、被調理物が載置される受け皿と、蒸気導入口を備えたグリル皿蓋とを有している。
【0054】
〔評価試験〕
調理作業者5名に、各実施例及び参考例の食品調理システムを用いて冷凍ギョウザを加熱調理(解凍)してもらい、その際の一連の作業における取り扱い衛生度を5点満点で評価してもらった。
また、一連の作業の簡便性の評価指標として、下記方法により作業時間を計測した。作業時間が短いほど、食品調理システムの取り扱いが簡便であり、高評価となる。その結果、実施例1は22秒、参考例1は73秒、参考例2は95秒であった。
【0055】
(作業時間の計測)
実施例1の食品調理システムについては、該システムの一部である個食包装体中に冷凍ギョウザが含まれているので、この個食包装体を予め冷凍庫に保管しておき、個食包装体を冷凍庫から取り出した時点から加熱調理して提供するまでに要した時間(作業時間)を計測した。
参考例1及び2の食品調理システムについては、それぞれ、該システムとは別に、ピロー袋に包装された冷凍ギョウザを用意してこれを予め冷凍庫に保管しておき、ピロー袋を冷凍庫から取り出した時点から加熱調理して提供するまでに要した時間(作業時間)を計測した。参考例1及び2の食品調理システムにおいては、ピロー袋を冷凍庫から取り出した後、ピロー袋を開封し、トングを用いて冷凍ギョウザを該システムの一部である蓋付き容器に収容し、さらに該容器を加熱調理器の加熱室にセットし、しかる後、加熱調理を行った。
尚、本評価試験は、食品調理システムの取り扱いの簡便性、衛生度の評価を主たる目的としているため、何れの例においても冷凍ギョウザの加熱は十分に行われるように調理条件を設定した。そのため、各例で蒸気の温度やマイクロ波の供給条件が異なるので、作業時間については、実際の計測時間から加熱に要した時間を差し引いた時間とし、5名それぞれの作業時間の平均値を算出した。
【0056】
実施例1における加熱調理は、個食包装体が収容された加熱室に温度98℃の蒸気を供給し、その蒸気が収容体の底面部の通気孔を介して該個食包装体内に供給されている状態で、マイクロ波供給手段によって実出力1000Wのマイクロ波を40秒間供給することによって実施した。
参考例1における加熱調理は、容器内部の上部空間にピロー袋から取り出した冷凍ギョウザを収容し、下部空間に温度98℃の蒸気を直接導入しつつ、実出力1000Wのマイクロ波を40秒間供給することによって実施した。
参考例2における加熱調理は、容器を構成する受け皿上に、ピロー袋から取り出した冷凍ギョウザを載置し、該容器を構成するグリル皿蓋側から温度98℃の蒸気を該容器内に直接導入しつつ、実出力1000Wのマイクロ波を180秒間供給することによって実施した。
【0057】
前記取り扱い衛生度の評価点(5名の採点者の平均点)は、実施例1が5.0点であったのに対し、参考例1は3.5点、参考例2は2.2点であった。また、参考例1及び2については一連の作業において下記事項が観察されており、斯かる観察結果からも、参考例1及び2の食品調理システムにはハンドリングやその際の衛生度に改善の余地があることが示唆された。
(参考例1)
・ピロー袋から冷凍ギョウザを取り出す際に、トングを袋の外側に接触させる作業者が1名いた。
・トングを容器に接触させる作業者が2名いた。
(参考例2)
・ピロー袋から冷凍ギョウザを取り出す際に、トングを袋の外側に接触させる作業者が1名いた。
・容器から蓋を取り外す際に、トングを該容器に接触させる作業者が1名いた。
・加熱調理後のギョウザを床に落下させる作業者が1名いた。
図1
図2
図3
図4
図5
図6