【文献】
Journal of the Science of Food and Agriculture,1999年,vol.79,no.8,p.1117−1122
【文献】
Trends in Food Science & Technology,2002年,vol.13,issues.9−10,page.334−340
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
原料乳中の乳糖が5.0重量%以上9.0重量%以下および/または発酵前の乳糖含量に対する発酵後の乳糖分解率が30%以上100%以下である、請求項1または2に記載の方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記の乳糖分解処理工程を含む発酵乳製造方法であっても、得られる甘味の増加は限られており、発酵乳における風味改善の課題は解決できていなかった。
【0007】
したがって、本発明は、発酵乳の風味を改善する方法および風味が改善された発酵乳を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
従来の問題点に鑑み、本発明者らは鋭意研究を進めたところ、乳糖分解酵素によって原料乳中の乳糖を分解する工程を含む発酵乳の製造方法において、原料中にホエイ粉を配合することにより、発酵乳の甘味と酸味のバランスが調整されることを見出し、本発明を完成するに至った。また、本発明の発酵乳製造方法を用いることにより、砂糖などの甘味料を使用しなくても好適に摂取でき、かつ新規な風味を有する発酵乳が得られることも見出した。
【0009】
すなわち、本発明は、以下の[1]〜[8]を提供するものである。
[1]原料乳中にホエイ粉を配合する工程および乳糖分解酵素によって原料乳中の乳糖を分解する工程を含む、発酵乳の製造方法。
[2]ホエイ粉が、1.0重量%以上4.0重量%以下である、[1]に記載の方法。
[3]ホエイ粉が、65重量%以上95%重量%以下の乳糖含有量であって、5.0重量%以上20重量%以下のホエイタンパク質含有量である、[1]または[2]に記載の方法。
[4]原料乳中の乳糖が5.0重量%以上9.0重量%以下および/または乳糖分解率が30%以上100%以下である、[1]〜[3]のいずれか一項に記載の方法。
[5][1]〜[4]のいずれか一項に記載の方法で製造された、発酵乳。
[6]グルコース含有量が、0.5重量%以上4.0重量%以下であり、pHが、3.8以上5.5以下である、[5]に記載の発酵乳。
[7]発酵乳が、ドリンクヨーグルトである、[5]または[6]に記載の発酵乳。
[8]甘味料を添加しない、[5]〜[7]のいずれか一項に記載の発酵乳。
【発明の効果】
【0010】
本発明の発酵乳製造方法によって、乳糖分解酵素により原料乳中の乳糖をより甘味の強いグルコースとガラクトースに分解することにより、発酵乳の甘味を増加する。さらに、原料乳中にホエイ粉を添加することにより、ホエイ粉に含有される乳糖が乳糖分解酵素によって分解されるため、より甘味を引き出すことができる。また、基本的に乳糖は分解されるため、乳糖不耐症に関する問題も生じにくい。
【0011】
さらに、ホエイ粉にはナトリウム塩やカリウム塩などの塩類が高濃度に含まれているため、塩類による酸味のマスキング効果が期待でき、効果的に甘味を引き出すことができる。そして、ホエイタンパク質が有する独自の風味によって、単に甘味を増すだけではなく、酸味を抑えること、つまり発酵乳の甘味と酸味のバランスを同時に調整することを可能とする。したがって、発酵乳中に添加するホエイ粉は少量でも効果を十分に発揮するため、添加によって製品の品質に悪影響を与えない。
また、従来の乳糖分解処理に比べ、短時間の処理で十分な甘味を呈する発酵乳の製造が可能となる。
【0012】
また、本発明の発酵乳は、従来の製造方法よりも甘酸バランスが優れており、酸味の強さより甘味の強さが好まれるドリンクタイプのヨーグルトにおいても、発酵後に甘味料を添加しないで提供することを可能とする。
【0013】
さらに、これまでドリンクヨーグルトに使用が困難であった酸味の強いハードタイプヨーグルトからでも、甘味料を添加しなくてもおいしく飲むことのできるドリンクヨーグルトの製造が可能となる。したがって本発明は、甘味料の添加をしなくてもよく、甘味と酸味のバランスが調整された、新規な風味を有する飲みやすいドリンクヨーグルトの提供も可能とする。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の発酵乳の製造方法は、原料乳中にホエイ粉を配合する工程(ホエイ粉配合工程)および乳糖分解酵素よって原料乳中の乳糖を分解する工程(乳糖分解工程)を含む。
【0015】
発酵乳
本明細書において「発酵乳」とは、乳及び乳製品の成分規格等に関する省令(乳等省令)で定義される「発酵乳」、「乳製品乳酸菌飲料」、および「乳酸菌飲料」を包含し、ヨーグルトなども含まれる。
例えば、発酵乳は、生乳、牛乳、特別牛乳、生山羊乳、殺菌山羊乳、生めん羊乳、成分調整牛乳、低脂肪牛乳、無脂肪牛乳および加工乳などの乳またはこれと同等以上の無脂乳固形分を含む乳等を、乳酸菌または酵母で発酵させ、糊状または液状にしたものまたはこれらを凍結したものをいい、これらにはハードヨーグルト、ソフトヨーグルト(糊状発酵乳)またはドリンクヨーグルト(液状発酵乳)が含まれる。
【0016】
本発明における好ましい発酵乳は、ドリンクヨーグルトである。一般的に、プレーンヨーグルトなどのハードヨーグルトは、容器に原料を充填させ、その後に発酵させること(後発酵)により製造される。一方、ソフトヨーグルトやドリンクヨーグルトは、発酵させた発酵乳を微粒化処理や均質化処理した後に、容器に充填させること(前発酵)により製造される。
【0017】
原料乳
「原料乳」は、ヨーグルトなどの発酵乳の原料となるもので、ヨーグルトミックスや発酵乳ミックスなどともよばれる。本発明では、公知の原料乳を適宜用いることができる。原料乳には、殺菌前のものも、殺菌後のものも含まれる。
原料乳の具体的な原料には、水、生乳、殺菌処理した乳、脱脂乳、全脂粉乳、脱脂粉乳、バターミルク、バター、クリーム、ホエイタンパク質濃縮物(WPC)、ホエイタンパク質単離物(WPI)、α(アルファ)−ラクトアルブミン(La)、β(ベータ)−ラクトグロブリン(Lg)などが含まれてもよい。あらかじめ温めたゼラチンなどを適宜添加してもよい。あらかじめ乳糖分解酵素を添加して、乳糖を適宜分解してもよい。原料乳は、公知であり、公知の方法に従って調製することができる。
【0018】
本明細書中において、%は重量%(w/w)を意味する。
本発明における好ましい原料として、生乳、脱脂乳、クリームが含まれるが、これらに限定されるものではない。本発明において使用される原料乳は、固体非脂肪分が6.0%以上10.0%以下が好ましく、より好ましくは7.0%以上9.0%以下である。また、脂肪分は0.5%以上4.0%以下が好ましく、より好ましくは1.0%以上3.0%以下である。
【0019】
また、発酵前の原料中の乳糖は、好ましくは4.0%以上10.0%以下の割合で含まれ、より好ましくは5.0%以上9.0%以下である。
【0020】
発酵乳を製造するための原料、装置、および製造条件は、特開2004−180526号公報、特開2005−176603号公報、特開2006−288309号公報、米国特許第6025008号明細書、米国特許第5482723号明細書、米国特許第5096731号明細書、米国特許第4938973号明細書などにも開示されている。例えば、発酵乳を製造する装置として、後発酵製品には、充填後に発酵を行う発酵室、前発酵商品には、発酵を行う発酵タンクおよび発酵乳カードを破砕するためのラインフィルターや均質機などを使用でき、製造条件として、脱酸素装置などを適宜採用することができる。
【0021】
本発明の一態様において、発酵乳の製造工程に、原料乳を脱酸素処理する脱酸素処理工程を含んでもよい。脱酸素工程は、例えば、原料乳に不活性ガスを混入するか、低圧や真空で脱気して、原料乳中に存在している酸素を取り除くための工程である。この工程により、酸素が除かれる他、タンパク質が保護されると推測される。
【0022】
脱酸素工程では、例えば、原料乳中の溶存酸素を不活性ガスにより置換するための公知の装置を適宜用いることができ、不活性ガスにより原料乳中に溶解している酸素を追い出せばよい。かかる公知の装置は、特開2001−78665号公報、特開2001−9206号公報、または特開2005−110527号公報にも開示される。
「不活性ガス」は、ヘリウム、ネオン、アルゴン、キセノンなどの希ガスの他、窒素などのガスであってもよい。
【0023】
なお、不活性ガスを混入する代わりに、原料乳中に溶解している酸素を脱気により取り除いても構わない。このような脱気装置は、特開2002−370006号公報、または特開2005−304390号公報にも開示される。
【0024】
脱酸素工程は、例えば、原料乳に溶解している酸素の量(溶存酸素濃度、DO)が、5.0ppm以下、好ましくは3.0ppm以下、より好ましくは2.0ppm以下となる程度まで脱酸素を行えばよい。
【0025】
ホエイ粉配合工程
「ホエイ粉配合工程」は、原料乳中にホエイ粉を配合または添加する工程である。本明細書において使用する「ホエイ粉」(ホエイパウダー)の用語は、乳等省令で定義されるような、乳を乳酸菌で発酵させ、または乳に酵素もしくは酸を加えてできた乳清(ホエイ)からほとんどすべての水分を除去し、粉末状にしたものを包含する。ホエイとは、例えば牛乳から脂肪、カゼイン、脂溶性ビタミンなどを除去した際に残留する水溶性成分である。ホエイは一般的に、ナチュラルチーズやレンネットカゼインを製造した際に、副産物として得られるチーズホエイやレンネットホエイ(またはスイート(甘性)ホエイともいう)、脱脂乳から酸カゼインやクワルクを製造した際に得られるカゼインホエイ、クワルクホエイ(またはアシッド(酸)ホエイともいう)のことである。ホエイの主成分は、タンパク質(β−ラクトグロブリン、α−ラクトアルブミンなど)、乳糖、水溶性ビタミン、塩類(ミネラル成分)である。
【0026】
「ホエイ関連製品」には、ホエイを濃縮処理した濃縮ホエイ、ホエイを乾燥処理したホエイパウダー、ホエイの主要なタンパク質などを限外濾過(Ultrafiltration:UF)法などで濃縮処理した後に乾燥処理したホエイタンパク質濃縮物(Whey Protein Concentrate:「WPC」ともいう)、ホエイを精密濾過(Microfiltration:MF)法や遠心分離法などで脂肪を除去してからUF法で濃縮処理した後に乾燥処理した脱脂WPC(低脂肪・高タンパク質)、ホエイの主要なタンパク質などをイオン交換樹脂法やゲル濾過法などで選択的に分画処理した後に乾燥処理したホエイタンパク質分離物(Whey Protein Isolate:「WPI」ともいう)、ナノ濾過(Nanofiltration:NF)法や電気透析法などで脱塩処理した後に乾燥処理した脱塩ホエイ、ホエイ由来のミネラル成分を沈殿処理してから遠心分離法などで濃縮処理したミネラル濃縮ホエイなどを挙げられる。
また、ホエイやホエイ成分を含有する組成物を用いて、ホエイ粉の配合と同等となるように添加してもよい。例えば、乳清を濃縮し、固形状にしたものである濃縮ホエイを用いてもよい。また、乳清の乳糖を除去したものからほとんどすべての水分を除去し、粉末状にしたホエイタンパク質濃縮物なども使用できる。
【0027】
本発明においては、好ましくはホエイ粉が使用される。ホエイ粉は、好ましくは原料乳中に1.0%以上4.0%以下の割合で配合され、より好ましくは、1.5%以上3.0%以下の割合で配合される。さらに好ましくは、1.7%以上2.8%以下であり、より好ましくは1.8%以上2.3%以下の割合で配合される。ホエイ粉の配合量が多量な場合、乳糖に由来する甘味を強く感じるとともに、ホエイタンパク質の風味およびホエイ粉に由来する塩味が強く発生して発酵乳の風味を損ねるため、本発明が意図とするほのかな甘味を引き出す効果が薄れる。また、ホエイ粉の配合量が多量になると、ホエイタンパク質に由来する収斂味を強く感じることから品質に悪影響を与えやすく、少なすぎると甘味と酸味の調整効果を期待しにくい。
【0028】
本発明において使用するホエイ粉は、甘性ホエイ粉、脱塩ホエイ粉、濃縮ホエイ粉などであってもよく、好ましくは甘性ホエイ粉が用いられる。また、これらは組み合わせて使用されてもよく、市販品を使用してもよい。
【0029】
本発明において使用するホエイ粉の成分組成は、固形分が90%以上100%以下が好ましく、より好ましくは95%以上100%以下である。また、ホエイタンパク質は、5.0%以上20%以下が好ましく、より好ましくは10%以上15%以下である。さらに、乳糖は、65%以上95%以下が好ましく、より好ましくは70%以上90%以下である。灰分は、1%以上15%以下が好ましく、より好ましくは5%以上10%以下である。
【0030】
また、ナトリウムは、好ましくはホエイ粉100gにつき300mg以上1200mg以下の量で含まれ、500mg以上1000mg以下であることがより好ましい。さらに、カリウムは、好ましくはホエイ粉100gにつき1500mg以上4000mg以下の量で含まれ、2000mg以上3000mg以下であることがより好ましい。
また、上述のとおり、ホエイやホエイ成分を含有する組成物を用いて、これら配合と同等となるように添加してもよい。
【0031】
発酵工程
発酵乳を製造するためには、原料乳を発酵させる。原料乳の発酵工程は、2段階の発酵などであってもよい。発酵工程を経ることで、商品価値のある発酵乳を得ることができる。本発明において、好ましくは原料乳にスターターを混合して発酵する。
【0032】
スターターとして、公知のスターターを適宜用いることができる。好ましいスターターとして乳酸菌スターターがあげられ、乳酸菌スターターとして、ラクトバチルス・ブルガリカス(L.bulgaricus)、ストレプトコッカス・サーモフィルス(S.thermophilus)、ラクトバチルス・ラクティス(L.lactis)、ラクトバチルス・ガッセリ(L.gasseri)またはビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)の他、発酵乳の製造に一般的に用いられる乳酸菌や酵母の中から1種または2種以上を用いることができる。
【0033】
これらの中では、コーデックス規格でヨーグルトスターターとして規格化されているラクトバチルス・ブルガリカス(L.bulgaricus)とストレプトコッカス・サーモフィルス(S.thermophilus)の混合スターターをベースとするスターターが好ましい。このヨーグルトスターターをベースとして、得ようとする発酵乳に応じて、さらにラクトバチルス・ガッセリ(L.gasseri)やビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)などの他の乳酸菌を加えてもよい。スターターの添加量は、公知の発酵乳の製造方法において採用されている量などを適宜採用すればよい。スターターの接種方法は、発酵乳を製造する際に用いられる公知の方法に従って行えばよい。
【0034】
乳糖分解工程
「乳糖分解工程」は、乳糖分解酵素によって乳糖が分解される工程である。乳糖分解酵素は、製造工程のいずれの段階で添加されてもよい。乳糖分解酵素は、原料乳および/またはホエイ粉に添加することができる。
【0035】
一般的に、細菌汚染のリスクを低減する観点から、低温で乳糖分解後に加熱殺菌を行って酵素を失活または死滅させ、その後、発酵を進める。
一方、本発明において、発酵工程は、ヨーグルトミックス(原料乳)にスターターと乳糖分解酵素を混入し、酵素が活性を有している状態のものを発酵してもよい。そして、原料乳に含まれる乳糖などが分解されることにより、酸が生じ、酵素が失活するようにしてもよい。このような処理を行うことで、乳糖分解率を効果的に高めることができる。
【0036】
また、原料乳にスターターと乳糖分解酵素を混入して発酵させる場合、高温加熱殺菌を施す前に、酵素反応を進行させる必要がなくなるため、発酵乳の製造工程を簡略化できるとともに、発酵乳本来の風味を最大限に生かすことができるようになる。さらに、このような処理を行うと、乳糖分解率を効率的に高めることができるようになるため、乳糖分解率と発酵の程度(酸度の変化)を個別に管理し続ける必要がなくなり、製品管理が極めて容易になる。
【0037】
したがって、本発明において、乳糖分解酵素は、スターターとともに原料乳に添加されることが好ましい。しかしながら、乳糖分解酵素は、発酵スターターの添加前に添加されても、スターターと同時または添加後に添加されてもよい。乳糖分解酵素およびスターターを混合する原料乳を使用する場合、原料乳中の乳糖は発酵工程の経過とともに分解される。
また、乳糖分解酵素は、脱酸素処理工程の前に添加されても、脱酸素処理工程の後に添加されてもよい。
【0038】
本発明の乳糖分解酵素は、活性の至適pHが中性領域であり、かつ酸性領域で失活する酵素であって、活性状態において、乳糖を分解できるものが好ましい。このような酵素の例は、特許文献3に開示された乳糖分解酵素である。乳糖分解酵素は、例えば、細菌または酵母由来のものがあげられる。そして、活性の至適pHとして6.3以上7.5以下かつ失活pHとして6.0以上4.0以下があげられる。また、乳糖分解酵素としては、クルイベロミセス・ラクチス(Kluyveromyces lactis)由来の乳糖分解酵素またはクルイベロマイセスフラギリス(Kluyveromyces fragilis)由来の乳糖分解酵素が好ましい。クルイベロミセス・ラクチス由来の乳糖分解酵素は、クルイベロミセス・ラクチスそのもののほか、クルイベロミセス・ラクチスから派生した乳糖分解酵素が含まれる。なお、乳糖分解酵素は、市販されており、市販されている乳糖分解酵素の例は、ラクターゼF(天野エンザイム社製)、ラクトレスL−3(大和化成社製)、およびラクトレスL−10(大和化成社製)である。
【0039】
発酵および乳糖分解条件
発酵温度などの発酵条件は、原料乳に添加された乳酸菌の種類や、求める発酵乳の風味などを考慮して適宜調整すればよい。具体的な例として、発酵室内の温度(発酵温度)を30℃以上50℃以下に維持するものがあげられる。この温度であれば、一般的に乳酸菌が活動しやすいので、効果的に発酵を進めることができる。このときの発酵温度として、より好ましくは40℃以上45℃以下、さらに好ましくは41℃以上44℃以下である。
【0040】
発酵時間は、スターターや発酵温度などに応じて適宜調整すればよく、具体的には1時間以上5時間以下であり、2時間以上4時間以下であってもよい。
【0041】
また、原料中の乳糖分解率は、一般的に65%以上であれば風味の良い発酵乳を得ることができる。しかし、本発明の製造方法によると、ホエイ粉を添加することにより甘味と酸味のバランスが調整され、乳糖分解率が低くても十分な甘味が得られる。したがって、本発明においては、乳糖分解率は、30%以上100%以下で使用可能となるが、甘味を増すためには60%以上100%以下であってもよい。
【0042】
また、原料中の乳糖分解工程は、殺菌前、または発酵と同時のいずれも方法で実施しても問題がない。一般的に乳糖分解時の温度は、乳糖分解酵素が活力を維持する0℃以上55℃以下であればよく、好ましくは、30℃以上50℃以下、さらに好ましくは40℃以上45℃以下である。乳糖分解時間は、一般的な乳糖分解酵素の好適温度40℃以上45℃以下で1時間以上であればその目的を達成できる。しかし、本発明によると、乳糖分解処理の時間を、従来よりも短縮して行うことも可能であり、40℃以上45℃以下での乳糖分解時間は、15分以上1時間以下であればよく、好ましくは30分以上45分以下である。
【0043】
発酵乳の風味など
本明細書中において、「甘酸バランス」とは、甘味と酸味の強さのバランスを示す用語であり、おいしさの指標の一つでもある。「甘酸バランスの調整」とは、甘酸バランスを摂取に好ましい範囲に調整すること、例えば、従来の悪い評価を改善して高めることを指し、甘味を強めることまたは弱めること、および/または酸味を強めることまたは弱めることによって、風味を整えることを包含する。
【0044】
また、甘酸バランスの調整は、糖分(または糖度)およびpHなどの、甘味および酸味などの指標となる物性値の変化を常に伴う必要はなく、また、官能試験などにおける甘味および酸味などの個別の風味の指標の変化を常に伴う必要もない。
【0045】
本発明の発酵乳の風味の評価は、官能試験などによって測定される。例えば、分析型官能評価として、2点識別法、3点識別法、順位法などの識別型試験を用いることができる。また、スコアリング法、プロフィール法などの記述型試験を用いてもよく、定量的記述分析法(QDA)によっても評価することができる。
例えば、甘味の程度および酸味の程度などの風味の指標の強弱などとともに、甘酸バランスの程度の評価を、基準と比較した相対評価として、または絶対評価として、5段階評価などで行うことができる。パネルは、例えば専門パネルを用いる場合、少なくとも5人、通常であれば10人以上15人以下程度の人数で行うことができる。
【0046】
本発明の一態様においては、甘味および酸味などの個別の風味の指標を維持したまま、発酵乳の甘酸バランスを高めることができる。
また、本発明によると、発酵乳の食感を軽くすることができる。特に、ドリンクヨーグルトなどにおいては、後味の改善および/または飲みやすさ(のどごし)の改善をすることも可能である。したがって、総合的に風味が改善された発酵乳の提供も可能となる。
【0047】
本発明の発酵乳は、限定されるものではないが、原材料以外に甘味料としての砂糖(グラニュー糖など)を添加せずに、そのまま提供することができる。また、本発明は、発酵乳の風味や食感を改善して甘酸バランスがとれた、新規な飲みやすいドリンクヨーグルトを提供する。
【0048】
本発明の発酵乳は、グルコース含有量が、0.5%以上4.0%以下が好ましく、より好ましくは、1.0%以上3.0%以下、さらに好ましくは1.5%以上2.5%以下である。また、酸味の指標となり得るpHは、3.8以上5.5以下が好ましく、より好ましくは4.0以上5.0以下、さらに好ましくは4.3以上4.8以下である。
[実施例]
【0049】
実施例1
脂肪分1%、タンパク質34%、乳糖54%の脱脂粉乳(商品名:「明治脱脂粉乳、明治乳業社製」、脂肪分3.9%、タンパク質3.2%、乳糖4.7%の牛乳(商品名:「明治牛乳」、明治乳業社製)、および脂肪分1.0%、タンパク質12%、乳糖76%、固形分97%、灰分8.6%、ナトリウム0.7%、カリウム2.5%のホエイ粉(商品名:「明治ホエイパウダー」、明治乳業製)を用いて表1に示す配合を用いて作成した。乳酸菌スターター(明治乳業社製「明治ブルガリアヨーグルト」(商品名)より単離したLactobacillus bulgaricus 2038株およびStreptococcus thermophilus 1131株)と同時に乳糖分解酵素(ラクターゼ)(商品名:「GODO−YNL」、合同酒精製)を添加し、43℃で、pH4.4に達するまで発酵し(約3時間程度)、形成した発酵乳カードをフィルターで破砕、冷却することで作成した。比較対照としては、ホエイ粉の代わりに粗製乳糖(乳糖含量99.5%、商品名:「LACTOSE GRANDEUR」、FIRST DISTRICT ASSOCIATION社製)を用いて乳糖含量を実施例1と同等に調整し、実施例1と同一の方法にて発酵、カード破砕を行い比較例1とした。
【表1】
表1に示される実施例1および比較例1の組成および分析値を表2に示す。なお、脂肪、タンパク質量、乳糖・グルコース含量および乳酸酸度は、それぞれケルベル法、ケルダール法、酵素法(F−kit:JKインターナショナル製)および滴定法で測定した。
【表2】
【0050】
実施例1および比較例1を専門パネル12名による官能検査(5段階のスコアリング法)に供した結果を表3に示す。発酵乳は、製造後1日冷蔵保持し、試供前に十分に攪拌してから、それぞれ約50mLずつ提供した。甘味の程度および酸味の程度として、強い(5)、やや強い(4)、普通(3)、やや弱い(2)、弱い(1)の5段階で、甘酸バランス、のどごしおよび後味の評価として、良い(5)、やや良い(4)、どちらともいえない(3)、やや悪い(2)、悪い(1)の5段階で、食感の程度として重い(5)、やや重い(4)、どちらともいえない(3)、やや軽い(2)、軽い(1)の5段階で評価を行った。
【表3】
実施例1、比較例1は、酸味の指標となり得るpH、甘味源であるグルコース含量が同等であるにもかかわらず、酸味の程度、甘酸バランスの評価において、有意差が認められており(p<0.01)、ホエイ粉の利用により、効率的に乳糖分解による酸味改善、甘酸バランス改善効果を引き出すことができる。
【0051】
実施例2
脂肪分1%、タンパク質34%、乳糖54%の脱脂粉乳(商品名:「明治脱脂粉乳」、明治乳業社製)、脂肪分3.9%、タンパク質3.2%、乳糖4.7%の牛乳(商品名:「明治牛乳」、明治乳業社製)、および脂肪分1.0%、タンパク質12%、乳糖76%、固形分97%、灰分8.6%、ナトリウム0.7%、カリウム2.5%のホエイ粉(商品名:「明治ホエイパウダー」、明治乳業製)を用いて表4に示す配合を用いて作成した。乳酸菌スターター(明治乳業社製「明治ブルガリアヨーグルト」(商品名)より単離したLactobacillus bulgaricus 2038株およびStreptococcus thermophilus 1131株)と同時に乳糖分解酵素(商品名:「GODO−YNL」、合同酒精製)を添加し、43℃で、pH4.4に達するまで発酵し(約3時間程度)、形成した発酵乳カードをフィルターで破砕、冷却することで作成した。比較対照としては、ホエイ粉の代わりに脱脂粉乳を用いて乳糖含量を実施例2と同等に調整し、実施例2と同一の方法にて発酵し、pH4.7に達した段階で、カード破砕・冷却を行い比較例2とした。
【表4】
表4に示す実施例2と比較例2の組成および分析値を表5に示す。
【表5】
【0052】
実施例1と同様に、実施例2および比較例2を専門パネル12名による官能検査(5段階のスコアリング法)に供した結果を表6に示す。
【表6】
酸味の指標としてのpHが比較例2に比べて実施例2では低く、甘味の指標としてのグルコース含量は同等である。官能評価の結果では、甘酸バランスの項目で有意差が認められることから、ホエイ粉を配合することで、pHが低下した際にも良好な甘酸バランスを維持することができ、保存中の乳酸菌の性質によるpHの低下によっても風味変化の小さい良好な発酵乳を提供することが可能となる。