特許第6656238号(P6656238)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6656238光学部材、光半導体デバイス、および照明装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6656238
(24)【登録日】2020年2月6日
(45)【発行日】2020年3月4日
(54)【発明の名称】光学部材、光半導体デバイス、および照明装置
(51)【国際特許分類】
   C08J 7/00 20060101AFI20200220BHJP
   G02B 1/04 20060101ALI20200220BHJP
   H01L 33/56 20100101ALI20200220BHJP
【FI】
   C08J7/00 ACFH
   G02B1/04
   H01L33/56
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-519705(P2017-519705)
(86)(22)【出願日】2015年10月16日
(65)【公表番号】特表2017-533979(P2017-533979A)
(43)【公表日】2017年11月16日
(86)【国際出願番号】JP2015005238
(87)【国際公開番号】WO2016063509
(87)【国際公開日】20160428
【審査請求日】2018年10月4日
(31)【優先権主張番号】62/065,972
(32)【優先日】2014年10月20日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】719000328
【氏名又は名称】ダウ・東レ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男
(74)【代理人】
【識別番号】100094400
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 三義
(73)【特許権者】
【識別番号】590001418
【氏名又は名称】ダウ シリコーンズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100094400
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 三義
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男
(72)【発明者】
【氏名】吉田 伸
(72)【発明者】
【氏名】吉田 宏明
(72)【発明者】
【氏名】森 一高
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー エス マクミラン
【審査官】 鶴 剛史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−296500(JP,A)
【文献】 米国特許第04491653(US,A)
【文献】 特開2014−122274(JP,A)
【文献】 特開2004−077116(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第02246386(EP,A1)
【文献】 特表2010−539251(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 7/00
G02B 1/04
H01L 33/56
WPI
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ素化された表面を有するシリコーン材料からなる光学部材であって、前記シリコーン材料が構造中にSi−R−Si結合(式中、Rはアルキレン基またはアリーレン基である。)を有し、該フッ素化された表面のX線光電子分光法(XPS)による原子組成百分率において、F原子の比率が0.1〜45at%であること、および/または、C原子に対するF原子の割合が0.01〜1.00であることを特徴とする、光学部材。
【請求項2】
前記シリコーン材料の表面がフッ素ガスを少なくとも含むガスによりフッ素化されてなる、請求項1に記載の光学部材。
【請求項3】
発光素子、該素子を封止もしくは被覆した光学部材から少なくとも構成される光半導体デバイスであって、前記光学部材が請求項1または2に記載の光学部材である、光半導体デバイス。
【請求項4】
光源、該光源から発光される光が透過する光学部材から少なくとも構成される照明装置であって、前記光学部材が請求項1または2に記載の光学部材である、照明装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学部材、光半導体デバイス、および照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコーン材料は、近年、半導体、トランジスタ、集積回路(IC)、発光ダイオード(LED)等の(光)電子部品の封止材や被覆材に用いられている。しかし、このようなシリコーン材料は、その表面に粘着性を有するため、防汚性が乏しいという課題がある。
【0003】
一方、シリコーン材料の表面の粘着性を低下させるために、その表面をフッ素ガスで処理することが知られている(特許文献1、2参照)。しかしながら、フッ素ガスにより表面を処理されたシリコーン材料は透明性が低下したり、強度が変化したりして、良好な光透過性、耐熱性及び強度を有しつつ、防汚性に優れる光学部材用のシリコーン材料については検討されていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭64―66245号公報
【特許文献2】特開2005−325176号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、良好な光透過性、耐熱性及び強度を有しつつ、防汚性に優れたシリコーン材料からなる光学部材、並びに防汚性に優れる光半導体デバイスおよび照明装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の要旨は以下の通りである。
(1)フッ素化された表面を有するシリコーン材料からなる光学部材であって、該フッ素化された表面のX線光電子分光法(XPS)による原子組成百分率において、F原子の比率が0.1〜45at%であること、および/または、C原子に対するF原子の割合が0.01〜1.00であることを特徴とする光学部材。
(2)前記シリコーン材料の表面がフッ素ガスを少なくとも含むガスによりフッ素化されてなる、(1)に記載の光学部材。
(3)前記シリコーン材料が構造中にSi−R−Si結合(式中、Rはアルキレン基またはアリーレン基である。)を有する、(1)または(2)に記載の光学部材。
(4)発光素子、該素子を封止もしくは被覆した光学部材から少なくとも構成される光半導体デバイスであって、前記光学部材が(1)乃至(3)のいずれか1に記載の光学部材である、光半導体デバイス。
(5)光源、該光源から発光される光が透過する光学部材から少なくとも構成される照明装置であって、前記光学部材が(1)乃至(3)のいずれか1に記載の光学部材である、照明装置。
【発明の効果】
【0007】
本発明の光学部材は、良好な光透過性、耐熱性及び強度を有しつつ、防汚性が優れているという特徴がある。また、本発明の光半導体装置および照明装置は、防汚性が優れるという特徴がある。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の光半導体デバイスの一例であるLEDの断面図である。
図2】本発明の光半導体デバイスの一例である他のLEDの断面図である。
図3】本発明の照明装置の一部破断面を有する側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明をより詳細に説明する。
(光学部材)
本発明の光学部材は、フッ素化された表面を有するシリコーン材料からなり、該フッ素化された表面のX線光電子分光法(XPS)による原子組成百分率において、F原子の比率が0.1〜45at%であること、および/または、C原子に対するF原子の割合が0.01〜1.00であることを特徴とする。
【0010】
本発明に用いられるシリコーン材料については、特に限定されず、用途によって適したシリコーン材料を用いることができる。
例えば、付加反応で硬化したシリコーン材料、縮合反応で硬化したシリコーン材料、有機過酸化物によるラジカル反応で硬化したシリコーン材料、熱可塑性のシリコーン材料、硬化性のシリコーン材料が挙げられる。
【0011】
特に、本発明の光学部材は、優れた光透過性、耐熱性及び強度を実現できることから、付加反応で硬化したシリコーン材料からなるものが好ましい。
【0012】
また、本発明に用いられるシリコーン材料は、その構造中にSi−R−Si結合を有することが好ましい。これは、このような結合を有するシリコーン材料は、その表面をフッ素化しても、透明性を保つことができるからである。
【0013】
式中、Rはアルキレン基またはアリーレン基である。このアルキレン基としては、メチルメチレン基、エチレン基、プロピレン基、メチルエチレン基、ブチレン基、イソブチレン基等の炭素数2〜12のアルキレン基が挙げられる。また、このアリーレン基としては、フェニレン基、トリレン基、キシリレン基、ナフチレン基等の炭素数6〜12のアリーレン基が挙げられる。
【0014】
また、本発明の光学部材の第1の特徴としては、シリコーン材料の表面のX線光電子分光法(XPS)による原子組成百分率におけるC原子に対するF原子の割合が0.01〜1.00の範囲内となることである。これは、C原子に対するF原子の割合が上記範囲の下限以上であれば、シリコーン材料の表面に十分な防汚性を付与できるからであり、一方、上記範囲の上限以下であると、シリコーン材料の透明性を損なうことがないからである。
【0015】
また、本発明の光学部材の第2の特徴としては、X線光電子分光法(XPS)による原子組成百分率における、シリコーン材料の表面でのF原子の比率が0.1〜45at%の範囲内となることである。これは、F原子の割合が上記範囲の下限以上であれば、シリコーン材料の表面に十分な防汚性を付与できるからであり、一方、上記範囲の上限以下であると、シリコーン材料の透明性を損なうことがないからである。
【0016】
また、本発明に用いられるシリコーン材料として、ガス透過率の小さいシリコーン材料、具体的には、フェニル基含有シリコーン材料を用いた場合には、フッ素化されたシリコーン材料の表面のX線光電子分光法(XPS)による原子組成百分率におけるC原子に対するF原子の割合は0.001以上であり、好ましくは、0.01以上であり、一方、1.00以下であり、好ましくは、0.80以下、または0.60以下である。これは、C原子に対するF原子の割合が上記範囲の下限以上であれば、フッ素化されたシリコーン材料の表面に十分な防汚性を付与できるからであり、一方、上記範囲の上限以下であると、フッ素化されたシリコーン材料の透明性を損なうことがないからである。
【0017】
また、上記のフッ素化されたシリコーン材料の表面のX線光電子分光法(XPS)による原子組成百分率におけるF原子の比率は0.1at%以上であり、好ましくは、1at%以上、または2at%以上であり、一方、45at%以下であり、好ましくは、40at%以下、または35at%以下である。これは、F原子の比率が上記範囲の下限以上であれば、シリコーン材料の表面に十分な防汚性を付与できるからであり、一方、上記範囲の上限以下であると、シリコーン材料の透明性を損なうことがないからである。
【0018】
このようなフェニル基含有シリコーン材料を形成する付加反応硬化性シリコーン組成物としては、例えば、東レ・ダウコーニング株式会社製のOE−6630、OE−6636、OE−6662等が入手可能である。
【0019】
一方、本発明に用いられるシリコーン材料として、ガス透過率の大きいシリコーン材料、具体的には、フェニル基を含有しないシリコーンを用いた場合には、フッ素化されたシリコーン材料の表面のX線光電子分光法(XPS)による原子組成百分率におけるC原子に対するF原子の割合は0.001以上、好ましくは、0.01以上であり、一方、1.00以下であり、好ましくは、0.50以下、0.40以下、または0.30以下である。これは、C原子に対するF原子の割合が上記範囲の下限以上であれば、フッ素化されたシリコーン材料の表面に十分な防汚性を付与できるからであり、一方、上記範囲の上限以下であると、フッ素化されたシリコーン材料の透明性を損なうことがないからである。
【0020】
また、上記のフッ素化されたシリコーン材料の表面のX線光電子分光法(XPS)による原子組成百分率におけるF原子の比率は0.1at%以上であり、好ましくは、1at%以上であり、一方、45at%以下であり、好ましくは、40at%以下、30at%以下、または20at%以下である。これは、F原子の比率が上記範囲の下限以上であれば、シリコーン材料の表面に十分な防汚性を付与できるからであり、一方、上記範囲の上限以下であると、シリコーン材料の透明性を損なうことがないからである。
【0021】
このようなフェニル基を含有しないシリコーン材料を形成する付加反応硬化性シリコーン組成物としては、例えば、東レ・ダウコーニング株式会社製のEG−6301、OE−6336、OE−6370HF、MS−1001、MS−1002、MS−1003等が入手可能である。
【0022】
本発明の光学部材において、シリコーン材料の表面をフッ素化する方法としては、フッ素ガスを少なくとも含むガスにより処理する方法が挙げられる。このフッ素ガスを少なくとも含むガスとしては、フッ素ガス、フッ素ガスと窒素ガスとの混合ガス、フッ素ガスと酸素ガスとの混合ガス、フッ素ガスとアルゴンガスとの混合ガスが例示される。混合ガスを用いる場合、フッ素ガスの分圧は、好ましくは、0.1〜20kPaの範囲内、または1〜10kPaの範囲内である。これは、フッ素ガスの分圧が上記範囲の下限以上であるとシリコーン硬化物の表面のフッ素化を十分に行うことができるからであり、一方、上記範囲の上限以下であると透明なフッ素化されたシリコーン材料を得ることができからである。
【0023】
また、シリコーン材料の表面をフッ素化する際の処理温度、処理時間は特に限定されないが、好ましくは、処理温度が0〜100℃、または10〜30℃で、処理時間が0.1〜3600秒、または5〜1200秒である。これは、処理温度が上記範囲の下限以上であると、シリコーン材料の表面のフッ素化を十分に行うことができるからであり、一方、上記範囲の上限以下であると、透明なフッ素化されたシリコーン材料を得ることができるからである。また、処理時間が上記範囲の下限以上であるとシリコーン材料の表面のフッ素化を十分に行うことができるからであり、一方、上記範囲の上限以下であると透明なフッ素化されたシリコーン材料を得ることができるからである。
【0024】
このような本発明の光学部材の形状は、特に限定されず、例えば、シート状、フィルム状、ファイバー状、板状、球状、半球状、凸レンズ状、凹レンズ状、フレネルレンズ状、円柱状、円筒状が挙げられる。また、本発明の光学部材は単体で使用することもできるが、例えば、光半導体デバイスにおける発光素子の封止材、接着材、被覆材としても用いることができ、光半導体デバイスにおけるレンズや、太陽電池における保護材や集光レンズとして用いることもできる。
【0025】
(光半導体デバイス)
本発明の光半導体デバイスは、発光素子、該素子を封止もしくは被覆した光学部材から少なくとも構成され、前記光学部材が上記の光学部材であることを特徴とする。一般に、光半導体デバイスでは、光透過性、耐熱性及び強度が要求され、埃や汚れの付着に起因した光透過性の低下が深刻な問題となり得ることから、本発明による光半導体デバイスでは、このような問題を解決することができる。
【0026】
本発明の光半導体デバイスを図1、2により詳細に説明する。
図1は本発明の光半導体デバイスの一例であるLEDの断面図である。このLEDは、基板1の上面に発光素子2を搭載し、発光素子2を本発明の光学部材からなり、レンズとしても作用する封止材3で封止している。
【0027】
また、図2は本発明の光半導体デバイスの一例である他のLEDの断面図である。このLEDは、発光素子2がリードフレーム4’上にダイボンドされており、発光素子2とリードフレーム4とがボンディングワイヤ5により電気的に接続されている。また、発光素子2の周囲には枠材6が設けられており、発光素子2が本発明の光学部材からなる封止材3により封止されている。
【0028】
このような本発明の光半導体デバイスとしては、例えば、高出力LED/高輝度LED、表面実装型PLCC LED、標準輝度のスルーホール型LED、車載用のチップLED、フラッシュ用LED、7セグメント型をはじめとする各種LED表示器、またこれらのLED表示器を用いたデジタル・サイネージ、信号機、車載照明、一般照明、民生用電子機器、家電機器、携帯型機器等の製品が挙げられる。
【0029】
(光半導体デバイス)
本発明の照明装置は、光源、該光源から発光される光が透過する光学部材から少なくとも構成され、前記光学部材が上記の光学部材であることを特徴とする。一般に、照明装置では、光透過性、耐熱性及び強度が要求され、埃や汚れの付着に起因した光透過性の低下が深刻な問題となり得ることから、本発明による照明装置では、このような問題を解決することができる。
【0030】
本発明の照明装置を図3により詳細に説明する。
この照明装置は、例えば、電球の形状をしており、光源7を囲むように本発明の光学部材からなるグローブ8が設けられている。
【0031】
本発明の照明装置における光学部材は、図3で示されるような電球におけるグローブに限定されず、信号機、街灯、ヘッドランプ等の光を透過する光学部材として好適である。
【実施例】
【0032】
本発明の光学部材、光半導体デバイス、および照明装置を実施例により詳細に説明する。なお、シリコーン硬化物の作製方法、およびその評価方法は次の通りである。
【0033】
[硬化物の作製]
硬化性シリコーン組成物を熱プレスを用いて150℃で15分間加熱成形した後、150℃のオーブンで1時間ポストキュアして、厚さ1mmのシート状シリコーン硬化物を作製した。
【0034】
[硬化物の光線透過率]
分光光度計(島津製作所製のUV−1650PC)により、フッ素化前およびフッ素化後の厚さ1mmのシート状シリコーン硬化物の波長555nmにおける光線透過率を測定した。
【0035】
[硬化物のパウダー付着テスト]
フッ素化前およびフッ素化後の厚さ1mmのシート状シリコーン硬化物にパウダー{住友3M株式会社製のダイニオン(登録商標)TFマイクロパウダーTF9205;平均粒径8μm}を振りかけ、その後、エアブローし、パウダー付着後のシリコーン硬化物の波長555nmにおける光線透過率を測定した。
【0036】
[X線光電子分光法(XPS)による原子組成百分率の測定]
フッ素化前のシリコーン硬化物およびフッ素化後のシリコーン硬化物について、それらの表面の原子組成百分率をX線光電子分光(X−ray Photoelectron Spectroscopy)により測定した。なお、測定は、Kratos Analytical社製のAXIS Novaを用いた。また、使用したX線の励起源は、Al−K α線を使用し、150W、モノクロメーターを使用し、分析面積は0.4mm×0.9mmとした。得られた原子組成百分率の値から、F原子の比率、およびC原子に対するF原子の割合を求めた。
【0037】
[実施例1]
フェニル基含有シリコーンからなる付加反応硬化性シリコーン組成物を硬化させて、厚さ1mmのシート状シリコーン硬化物を作製した。このシリコーン硬化物は構造中にSi−C−Si結合を有し、そのShore D硬さは33であった。このシリコーン硬化物にフッ素ガスと窒素ガスの混合ガス(フッ素ガスの分圧=4.0kPa)を室温(25℃)で30分間接触させて、シリコーン硬化物の表面をフッ素化した。
【0038】
フッ素化前のシリコーン硬化物の光線透過率は84%であり、フッ素化後のシリコーン硬化物の光線透過率は82%であり、フッ素化によっても、シリコーン硬化物の透明性が低下しないことが確認された。
また、フッ素化前のシリコーン硬化物のパウダー付着テストでは、光線透過率が57%であり、フッ素化後のシリコーン硬化物のパウダー付着テストでは、光線透過率が70%であり、フッ素化により、シリコーン硬化物の防汚性が向上していることが確認された。
また、X線光電子分光法(XPS)による原子組成百分率におけるF原子の比率は32.9at%であり、C原子に対するF原子の割合は0.58であった。
【0039】
[実施例2]
フェニル基含有シリコーンからなる付加反応硬化性シリコーン組成物を硬化させて、厚さ1mmのシート状シリコーン硬化物を作製した。このシリコーン硬化物は構造中にSi−C−Si結合を有し、そのShore D硬さは33であった。このシリコーン硬化物にフッ素ガスと酸素ガスの混合ガス(フッ素ガスの分圧=1.0kPa)を室温(25℃)で30分間接触させて、シリコーン硬化物の表面をフッ素化した。
【0040】
フッ素化前のシリコーン硬化物の光線透過率は84%であり、フッ素化後のシリコーン硬化物の光線透過率は84%であり、フッ素化によっても、シリコーン硬化物の透明性が低下しないことが確認された。
また、フッ素化前のシリコーン硬化物のパウダー付着テストでは、光線透過率が57%であり、フッ素化後のシリコーン硬化物のパウダー付着テストでは、光線透過率が73%であり、フッ素化により、シリコーン硬化物の防汚性が向上していることが確認された。
また、X線光電子分光法(XPS)による原子組成百分率におけるF原子の比率は13.5at%であり、C原子に対するF原子の割合は0.20であった。
【0041】
[実施例3]
フェニル基を含有しないシリコーンからなる付加反応硬化性シリコーン組成物を硬化させて、厚さ1mmのシート状シリコーン硬化物を作製した。このシリコーン硬化物は構造中にSi−C−Si結合を有し、そのShore A硬さは70であった。このシリコーン硬化物にフッ素ガスと窒素ガスの混合ガス(フッ素ガスの分圧=4.0kPa)を室温(25℃)で30分間接触させて、シリコーン硬化物の表面をフッ素化した。
【0042】
フッ素化前のシリコーン硬化物の光線透過率は92%であり、フッ素化後のシリコーン硬化物の光線透過率は85%であり、フッ素化によっても、シリコーン硬化物の透明性が低下しないことが確認された。
また、フッ素化前のシリコーン硬化物のパウダー付着テストでは、光線透過率が16%であり、フッ素化後のシリコーン硬化物のパウダー付着テストでは、光線透過率が75%であり、フッ素化により、シリコーン硬化物の防汚性が向上していることが確認された。
また、X線光電子分光法(XPS)による原子組成百分率におけるF原子の比率は11.8at%であり、C原子に対するF原子の割合は0.27であった。
【0043】
[実施例4]
フェニル基を含有しないシリコーンからなる付加反応硬化性シリコーン組成物を硬化させて、厚さ1mmのシート状シリコーン硬化物を作製した。このシリコーン硬化物は構造中にSi−C−Si結合を有し、そのShore A硬さは70であった。このシリコーン硬化物にフッ素ガスと酸素ガスの混合ガス(フッ素ガスの分圧=1.0kPa)を室温(25℃)で30分間接触させて、シリコーン硬化物の表面をフッ素化した。
【0044】
フッ素化前のシリコーン硬化物の光線透過率は92%であり、フッ素化後のシリコーン硬化物の光線透過率は82%であり、フッ素化によっても、シリコーン硬化物の透明性が低下しないことが確認された。
また、フッ素化前のシリコーン硬化物のパウダー付着テストでは、光線透過率が16%であり、フッ素化後のシリコーン硬化物のパウダー付着テストでは、光線透過率が82%であり、フッ素化により、シリコーン硬化物の防汚性が向上していることが確認された。
また、X線光電子分光法(XPS)による原子組成百分率におけるF原子の比率は8.3at%であり、C原子に対するF原子の割合は0.15であった。
【0045】
[実施例5]
フェニル基を含有しないシリコーンからなる付加反応硬化性シリコーン組成物を硬化させて、厚さ1mmのシート状シリコーン硬化物を作製した。このシリコーン硬化物は構造中にSi−C−Si結合を有し、そのShore A硬さは74であった。このシリコーン硬化物にフッ素ガスと窒素ガスの混合ガス(フッ素ガスの分圧=0.5kPa)を室温(25℃)で5分間接触させて、シリコーン硬化物の表面をフッ素化した。
【0046】
フッ素化前のシリコーン硬化物の光線透過率は91%であり、フッ素化後のシリコーン硬化物の光線透過率は91%であり、フッ素化によっても、シリコーン硬化物の透明性が低下しないことが確認された。
また、フッ素化前のシリコーン硬化物のパウダー付着テストでは、光線透過率が63%であり、フッ素化後のシリコーン硬化物のパウダー付着テストでは、光線透過率が83%であり、フッ素化により、シリコーン硬化物の防汚性が向上していることが確認された。
また、X線光電子分光法(XPS)による原子組成百分率におけるF原子の比率は4.9at%であり、C原子に対するF原子の割合は0.11であった。
【0047】
[実施例6]
フェニル基を含有しないシリコーンからなる付加反応硬化性シリコーン組成物を硬化させて、厚さ1mmのシート状シリコーン硬化物を作製した。このシリコーン硬化物は構造中にSi−C−Si結合を有し、そのShore A硬さは74であった。このシリコーン硬化物にフッ素ガスと窒素ガスの混合ガス(フッ素ガスの分圧=2.0kPa)を室温(25℃)で5分間接触させて、シリコーン硬化物の表面をフッ素化した。
【0048】
フッ素化前のシリコーン硬化物の光線透過率は91%であり、フッ素化後のシリコーン硬化物の光線透過率は81%であり、フッ素化によっても、シリコーン硬化物の透明性が低下しないことが確認された。
また、フッ素化前のシリコーン硬化物のパウダー付着テストでは、光線透過率が63%であり、フッ素化後のシリコーン硬化物のパウダー付着テストでは、光線透過率が76%であり、フッ素化により、シリコーン硬化物の防汚性が向上していることが確認された。
また、X線光電子分光法(XPS)による原子組成百分率におけるF原子の比率は2.3at%であり、C原子に対するF原子の割合は0.05であった。
【0049】
[比較例1]
フェニル基含有シリコーンからなる付加反応硬化性シリコーン組成物を硬化させて、厚さ1mmのシート状シリコーン硬化物を作製した。このシリコーン硬化物は構造中にSi−C−Si結合を有し、そのShore D硬さは33であった。このシリコーン硬化物にフッ素ガスと窒素ガスの混合ガス(フッ素ガスの分圧=4.0kPa)を40℃で30分間接触させて、シリコーン硬化物の表面をフッ素化した。
【0050】
フッ素化前のシリコーン硬化物の光線透過率は84%であり、フッ素化後のシリコーン硬化物の光線透過率は65%であり、フッ素化によって、シリコーン硬化物の透明性が著しく低下したことが確認された。
また、X線光電子分光法(XPS)による原子組成百分率におけるF原子の比率は47.3at%であり、C原子に対するF原子の割合は1.06であった。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明の光学部材は、良好な光透過性、耐熱性及び強度を有しつつ、防汚性が優れるので、前記光学部材を光半導体素子の封止材もしくは被覆材とする、防汚性が優れる光半導体デバイス、あるいは、前記光学部材を有する照明装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0052】
1 基板
2 発光素子
3 封止材
4、4’ リードフレーム
5 ボンディングワイヤ
6 枠材
7 光源
8 グローブ
図1
図2
図3