【実施例】
【0032】
本発明の光学部材、光半導体デバイス、および照明装置を実施例により詳細に説明する。なお、シリコーン硬化物の作製方法、およびその評価方法は次の通りである。
【0033】
[硬化物の作製]
硬化性シリコーン組成物を熱プレスを用いて150℃で15分間加熱成形した後、150℃のオーブンで1時間ポストキュアして、厚さ1mmのシート状シリコーン硬化物を作製した。
【0034】
[硬化物の光線透過率]
分光光度計(島津製作所製のUV−1650PC)により、フッ素化前およびフッ素化後の厚さ1mmのシート状シリコーン硬化物の波長555nmにおける光線透過率を測定した。
【0035】
[硬化物のパウダー付着テスト]
フッ素化前およびフッ素化後の厚さ1mmのシート状シリコーン硬化物にパウダー{住友3M株式会社製のダイニオン(登録商標)TFマイクロパウダーTF9205;平均粒径8μm}を振りかけ、その後、エアブローし、パウダー付着後のシリコーン硬化物の波長555nmにおける光線透過率を測定した。
【0036】
[X線光電子分光法(XPS)による原子組成百分率の測定]
フッ素化前のシリコーン硬化物およびフッ素化後のシリコーン硬化物について、それらの表面の原子組成百分率をX線光電子分光(X−ray Photoelectron Spectroscopy)により測定した。なお、測定は、Kratos Analytical社製のAXIS Novaを用いた。また、使用したX線の励起源は、Al−K α線を使用し、150W、モノクロメーターを使用し、分析面積は0.4mm×0.9mmとした。得られた原子組成百分率の値から、F原子の比率、およびC原子に対するF原子の割合を求めた。
【0037】
[実施例1]
フェニル基含有シリコーンからなる付加反応硬化性シリコーン組成物を硬化させて、厚さ1mmのシート状シリコーン硬化物を作製した。このシリコーン硬化物は構造中にSi−C
2H
4−Si結合を有し、そのShore D硬さは33であった。このシリコーン硬化物にフッ素ガスと窒素ガスの混合ガス(フッ素ガスの分圧=4.0kPa)を室温(25℃)で30分間接触させて、シリコーン硬化物の表面をフッ素化した。
【0038】
フッ素化前のシリコーン硬化物の光線透過率は84%であり、フッ素化後のシリコーン硬化物の光線透過率は82%であり、フッ素化によっても、シリコーン硬化物の透明性が低下しないことが確認された。
また、フッ素化前のシリコーン硬化物のパウダー付着テストでは、光線透過率が57%であり、フッ素化後のシリコーン硬化物のパウダー付着テストでは、光線透過率が70%であり、フッ素化により、シリコーン硬化物の防汚性が向上していることが確認された。
また、X線光電子分光法(XPS)による原子組成百分率におけるF原子の比率は32.9at%であり、C原子に対するF原子の割合は0.58であった。
【0039】
[実施例2]
フェニル基含有シリコーンからなる付加反応硬化性シリコーン組成物を硬化させて、厚さ1mmのシート状シリコーン硬化物を作製した。このシリコーン硬化物は構造中にSi−C
2H
4−Si結合を有し、そのShore D硬さは33であった。このシリコーン硬化物にフッ素ガスと酸素ガスの混合ガス(フッ素ガスの分圧=1.0kPa)を室温(25℃)で30分間接触させて、シリコーン硬化物の表面をフッ素化した。
【0040】
フッ素化前のシリコーン硬化物の光線透過率は84%であり、フッ素化後のシリコーン硬化物の光線透過率は84%であり、フッ素化によっても、シリコーン硬化物の透明性が低下しないことが確認された。
また、フッ素化前のシリコーン硬化物のパウダー付着テストでは、光線透過率が57%であり、フッ素化後のシリコーン硬化物のパウダー付着テストでは、光線透過率が73%であり、フッ素化により、シリコーン硬化物の防汚性が向上していることが確認された。
また、X線光電子分光法(XPS)による原子組成百分率におけるF原子の比率は13.5at%であり、C原子に対するF原子の割合は0.20であった。
【0041】
[実施例3]
フェニル基を含有しないシリコーンからなる付加反応硬化性シリコーン組成物を硬化させて、厚さ1mmのシート状シリコーン硬化物を作製した。このシリコーン硬化物は構造中にSi−C
2H
4−Si結合を有し、そのShore A硬さは70であった。このシリコーン硬化物にフッ素ガスと窒素ガスの混合ガス(フッ素ガスの分圧=4.0kPa)を室温(25℃)で30分間接触させて、シリコーン硬化物の表面をフッ素化した。
【0042】
フッ素化前のシリコーン硬化物の光線透過率は92%であり、フッ素化後のシリコーン硬化物の光線透過率は85%であり、フッ素化によっても、シリコーン硬化物の透明性が低下しないことが確認された。
また、フッ素化前のシリコーン硬化物のパウダー付着テストでは、光線透過率が16%であり、フッ素化後のシリコーン硬化物のパウダー付着テストでは、光線透過率が75%であり、フッ素化により、シリコーン硬化物の防汚性が向上していることが確認された。
また、X線光電子分光法(XPS)による原子組成百分率におけるF原子の比率は11.8at%であり、C原子に対するF原子の割合は0.27であった。
【0043】
[実施例4]
フェニル基を含有しないシリコーンからなる付加反応硬化性シリコーン組成物を硬化させて、厚さ1mmのシート状シリコーン硬化物を作製した。このシリコーン硬化物は構造中にSi−C
2H
4−Si結合を有し、そのShore A硬さは70であった。このシリコーン硬化物にフッ素ガスと酸素ガスの混合ガス(フッ素ガスの分圧=1.0kPa)を室温(25℃)で30分間接触させて、シリコーン硬化物の表面をフッ素化した。
【0044】
フッ素化前のシリコーン硬化物の光線透過率は92%であり、フッ素化後のシリコーン硬化物の光線透過率は82%であり、フッ素化によっても、シリコーン硬化物の透明性が低下しないことが確認された。
また、フッ素化前のシリコーン硬化物のパウダー付着テストでは、光線透過率が16%であり、フッ素化後のシリコーン硬化物のパウダー付着テストでは、光線透過率が82%であり、フッ素化により、シリコーン硬化物の防汚性が向上していることが確認された。
また、X線光電子分光法(XPS)による原子組成百分率におけるF原子の比率は8.3at%であり、C原子に対するF原子の割合は0.15であった。
【0045】
[実施例5]
フェニル基を含有しないシリコーンからなる付加反応硬化性シリコーン組成物を硬化させて、厚さ1mmのシート状シリコーン硬化物を作製した。このシリコーン硬化物は構造中にSi−C
2H
4−Si結合を有し、そのShore A硬さは74であった。このシリコーン硬化物にフッ素ガスと窒素ガスの混合ガス(フッ素ガスの分圧=0.5kPa)を室温(25℃)で5分間接触させて、シリコーン硬化物の表面をフッ素化した。
【0046】
フッ素化前のシリコーン硬化物の光線透過率は91%であり、フッ素化後のシリコーン硬化物の光線透過率は91%であり、フッ素化によっても、シリコーン硬化物の透明性が低下しないことが確認された。
また、フッ素化前のシリコーン硬化物のパウダー付着テストでは、光線透過率が63%であり、フッ素化後のシリコーン硬化物のパウダー付着テストでは、光線透過率が83%であり、フッ素化により、シリコーン硬化物の防汚性が向上していることが確認された。
また、X線光電子分光法(XPS)による原子組成百分率におけるF原子の比率は4.9at%であり、C原子に対するF原子の割合は0.11であった。
【0047】
[実施例6]
フェニル基を含有しないシリコーンからなる付加反応硬化性シリコーン組成物を硬化させて、厚さ1mmのシート状シリコーン硬化物を作製した。このシリコーン硬化物は構造中にSi−C
2H
4−Si結合を有し、そのShore A硬さは74であった。このシリコーン硬化物にフッ素ガスと窒素ガスの混合ガス(フッ素ガスの分圧=2.0kPa)を室温(25℃)で5分間接触させて、シリコーン硬化物の表面をフッ素化した。
【0048】
フッ素化前のシリコーン硬化物の光線透過率は91%であり、フッ素化後のシリコーン硬化物の光線透過率は81%であり、フッ素化によっても、シリコーン硬化物の透明性が低下しないことが確認された。
また、フッ素化前のシリコーン硬化物のパウダー付着テストでは、光線透過率が63%であり、フッ素化後のシリコーン硬化物のパウダー付着テストでは、光線透過率が76%であり、フッ素化により、シリコーン硬化物の防汚性が向上していることが確認された。
また、X線光電子分光法(XPS)による原子組成百分率におけるF原子の比率は2.3at%であり、C原子に対するF原子の割合は0.05であった。
【0049】
[比較例1]
フェニル基含有シリコーンからなる付加反応硬化性シリコーン組成物を硬化させて、厚さ1mmのシート状シリコーン硬化物を作製した。このシリコーン硬化物は構造中にSi−C
2H
4−Si結合を有し、そのShore D硬さは33であった。このシリコーン硬化物にフッ素ガスと窒素ガスの混合ガス(フッ素ガスの分圧=4.0kPa)を40℃で30分間接触させて、シリコーン硬化物の表面をフッ素化した。
【0050】
フッ素化前のシリコーン硬化物の光線透過率は84%であり、フッ素化後のシリコーン硬化物の光線透過率は65%であり、フッ素化によって、シリコーン硬化物の透明性が著しく低下したことが確認された。
また、X線光電子分光法(XPS)による原子組成百分率におけるF原子の比率は47.3at%であり、C原子に対するF原子の割合は1.06であった。