【文献】
Biochemical and Molecular Medicine,1996年,Vol.58,p.227-233, Article No. 0053
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記標的のタンパク質を特異的に検出する手段が、抗体若しくは抗体フラグメント、量子ドット、酵素、発蛍光団、又はインターカレート染料及びガングリオシドを含む群から選択される、請求項1−4のいずれか1項に記載の方法。
前記少なくとも1つのFcドメインホモダイマーが、ヒトIgG1、ヒトIgG2、ネズミIgG2a、ネズミIgG2b、若しくはネズミIgG3又は前記の配列変種の1つである、請求項1−9のいずれか1項に記載の方法。
前記モノクローナル抗体が、ネズミモノクローナル抗体、マウス-ヒトキメラモノクローナル抗体、ヒト化モノクローナル抗体、又はヒトモノクローナル抗体である、請求項12に記載の方法。
(i)及び(ii)の標識及び/又は選別工程(iv)が、フローサイトメトリー及び/又はFACS及び/又はミクロ流体技術を含み、工程(a)−(e)が繰り返される、請求項17に記載の方法。
前記第一の酵母細胞が免疫グロブリン軽鎖をコードするポリヌクレオチドを含み、及び/又は前記第二の酵母細胞が免疫グロブリン重鎖をコードするポリヌクレオチドを含む、請求項19に記載の方法。
前記第一の酵母細胞が、免疫グロブリン軽鎖ライブラリーをコードするポリヌクレオチドを含み、前記第二の酵母細胞が、標的のタンパク質に対して予め決定された親和性の免疫グロブリン重鎖をコードするポリヌクレオチドを含む、請求項20に記載の方法。
【背景技術】
【0002】
学界及び医薬産業では、標的対応療法のためのモノクローナル抗体の発見及び開発に多大な資源が費やされている。これまでに開発された利用可能な技術の中で、抗体ライブラリースクリーニングのための高処理技術は、新規な候補分子の同定及び親和性成熟による予備選別結合剤の迅速な最適化を可能にした。
新規な候補分子の同定は大いに技術先導的であるので、新しい強力な技術の発明は、抗体の発見及び開発プロセスをさらに加速する全体的戦略において決定的な部分であることを立証した。80年代中頃のファージディスプレイ技術の出現及び抗体ディスプレイへのその適用以来、いくつかのin vitroディスプレイ技術が現れた。ファージディスプレイに並んで、細胞ディスプレイ、リボソームディスプレイ、mRNAディスプレイ及びDNAディスプレイと称される4つの主要なディスプレイ技術が存在し、ファージディスプレイがもっとも確立された技術である。
【0003】
これまでのところ、ファージディスプレイは、抗体の大収集物のディスプレイ及び選別のために及び選別抗体の更なる操作のためにもっとも広く行きわたった方法である。抗体は、通常‘一価’型として知られるものでディスプレイされ、一価型では抗体-コートタンパク質融合遺伝子はファージミドベクター上で保持され、ディスプレイは、ファージミド保持細菌にヘルパーファージを感染させることによって達成される。この型(3x3型としても知られている)がもっとも好ましい。なぜならば、ファージミドベクターは最も高い親和性をもつ結合剤の選別を提供するので(それら結合剤はアビディティ効果によって歪められない)、ファージミドベクターでのライブラリーの構築は、ファージベクターと比較してファージミドベクターのより高い形質転換効率を提供するからである(Saggy et al., 2012, Protein Eng. Des. Sel. 25, 539-549)。
【0004】
ファージ抗体ディスプレイでもっとも成功した適用には、例えば非免疫及び合成ライブラリーからの高親和性ヒト抗体のde novo単離(自己抗原に対する抗体を含む)、in vitro親和性成熟によるピコモルの親和性を有する高親和性抗体の作製、及び動物又はヒトドナーに由来する非免疫及び免疫ライブラリーからの固有の特性を有する抗体の発見が含まれる(Hogenboom, 2005, Nat. Biotech 23, 1105-1116)。
ファージ抗体ディスプレイの利点にもかかわらず、この技術はまたその使用を制限する欠点もまた有する。すなわち、大腸菌(E.coli)では、機能的抗体フラグメントのペリプラズム腔への効率的な分泌には、制限される分泌性能による折り畳みの誤り及び抗体フラグメントの凝集を防ぐために典型的にはシャペロン及びイソメラーゼの共発現が要求される(Bothmann and Pluckthun, 2000, J. Biol. Chem. Vol. 275(22), 17100-17105)。加えて、奇数のシステイン、陽電荷の出入り及びディスプレイされるペプチド内の定位置のある種の残基に対する生物学的選別が存在するようであり、前記は本質的に抗体フラグメントの偏向選別をもたらす。
【0005】
二番目に頻繁に用いられる技術は酵母ディスプレイであり、前記はコンビナトリアルライブラリーから抗体フラグメントを選別及び操作する強力な技術である。酵母ディスプレイ技術は、オリゴマー分子(例えば完全長IgG免疫グロブリン)の発現に有利である。なぜならば、当該抗体は細菌発現抗体と比較して真核細胞分泌経路を通過する必要があるからであり、前記は全体としてより多くの正確に折り畳まれた免疫グロブリンを生じる。
酵母ディスプレイはいくつかの天然に存在する細胞壁固着タンパク質の存在を利用する。前記タンパク質を用いて、異種タンパク質をC-末端グリコシルホスファチジルイノシトール接着シグナル(一般的にGPIアンカーと称される)の結合により再外側細胞表面に誘導することができる。最初、酵母ディスプレイは、抗体コードDNA配列の酵母細胞壁のマンノタンパク質の配列とのインフレーム遺伝子融合を拠り所とした(Doerner et al., 2014, FEBS Letter 588, 278-287)。タンパク質レパートリー(表面ディスプレイのために用いられる)は拡大され、今や例えばa-アグルチニン、Flo1p及びα-アグルチニンを含む。これらのうちで、a-アグルチニン利用系がもっとも頻繁に用いられる。
【0006】
a-アグルチニンは、適切な酵母細胞の接合時の細胞対細胞接触を媒介するアグルチンに特異的な2つの接合型の1つである。前記は1つのコアサブユニットAga1pによって形成され、Aga1pはより小さな結合サブユニットAga2pと2つのジスルフィド架橋を介して連結される。Aga1pのGPI接着シグナルのために、コアサブユニットはAga複合体を細胞壁に固着させる。A-アグルチニンのモジュール構造はさらにまた、単一ユニットGPIによって固着されるタンパク質と比較して、ディスプレイされるべき異種タンパク質のAga2pのC-又はN-末端への融合を可能にする(単一ユニットGPI固着タンパク質は、要求されるC-末端GPI接着シグナルのために異種タンパク質のN-末端融合しか許容されない)。Flo1pによる系は、N-末端凝集機能ドメイン(細胞表面の炭水化物ユニットと結合すると考えられている)との融合を介して異種タンパク質と非共有結合的に接着しこれを固定することができるという点で相違する。
【0007】
染色体によりコードされるAGA1及びエピソームによりコードされるAGA2-融合タンパク質の過剰発現は、典型的には誘導性Gal10プロモーターによって駆動され、その量は両サブユニットの化学量論的レベルに達する(前記サブユニットは小胞体内で結合する)。ガラクトース誘導発現は、宿主細胞表面での約10
4−10
5コピーの融合タンパク質ディスプレイをもたらす(Doerner et al., 2014, FEBES letter 588, 278-287;Boder and Witrup, 1997, Nat. Biotechnol. 15, 553-557)。表面暴露融合タンパク質の検出はエピトープタグにより又はその活性によってもたらされ、抗体の場合、当該活性は可溶性抗原に対するその結合親和性である。検出は、典型的には対応するビオチン化抗原及び二次試薬(例えばストレプトアビジン結合発蛍光団)又は他の標識抗原を用いて実施される。
【0008】
あるアプローチでは酵母ディスプレイは改造された。前記は標的結合タンパク質の選別のための分泌捕捉細胞表面ディスプレイとして知られている(SECANT
TM、Rakestraw et al., 2011, Protein Eng Des Sel. Jun;24(6):525-30)。この技術を用いて、完全長の免疫グロブリンG(IgG)抗体を酵母細胞表面にディスプレイすることができた。SECANT
TM技術では、標的のタンパク質(POI)は小ビオチンアクセプターペプチド(BAP)と遺伝的に融合され、その後にTEVプロテアーゼ切断部位が続いて精製が促進される。TEV-BAPペプチドはPOIのN-又はC-末端に融合できる。TEV-BAPタグの反対側のPOI末端で、POIは遺伝的にあるタグ(典型的にはFLAGタグ)と融合され、したがって全BAP、POI及びFLAGタグ遺伝子は酵母分泌シグナル(典型的には操作されたaMFppリーダー配列、インバターゼリーダー配列又は合成リーダー配列、前記の後にKex2タンパク分解性切断部位が続く)の3'側に位置する(Rakestraw et al., 2011, Protein Eng Des Sel. Jun;24(6):525-30)。POIの選別のために、POIの遺伝子はBAPのN-又はC-末端融合物として発現される(前記はBirAビオチンリガーゼ及びシャペロンと共発現される)。BirAビオチンリガーゼはPOIのBAPタグをビオチン化する。分泌に際して、POIは続いて表面局在アビジンと結合し、さらにその後の検出及び精製のために、発蛍光団タグ付き抗エピトープ抗体又は発蛍光団タグ付き抗原で標識できる。
【0009】
SECANT技術は、複合分子(例えばIgG免疫グロブリン)の分泌及び精製を可能にするが、この技術はなおPOIの遺伝的改造及びビオチンリガーゼの共発現を必要とし、前記はスクリーニング及び選別手順に追加工程を付加する。
酵母ディスプレイ、特に複合分子のディスプレイ並びに抗体の同定及び成熟におけるその使用に関する喫緊の要請はなお続いており、新規な抗体候補を同定するためのスクリーニング手順にかかわるコスト削減及び時間短縮についての要求もまた継続している。
したがって、遺伝的にコードされる固着タンパク質又は細胞内抗体改造を必要としないで、標的のタンパク質の同定のために宿主細胞表面で複合分子をディスプレイすることを可能にする方法を提供することが本発明の目的である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明は下記で詳細に記載されるが、本発明は、本明細書に記載される個別の方法論、プロトコル及び試薬に限定されないことは理解されねばならない。なぜならばそれらは変動しうるからである。本明細書で用いられる述語は個別の実施態様を記載することを目的とし、本発明の範囲(前記は添付の特許請求の範囲によってのみ限定される)を制限する意図はないこともまた理解されるべきである。特段に規定されなければ、本明細書で用いられる全ての技術用語及び学術用語は、当業者が一般的に理解する意味と同じ意味を有する。
以下で本発明の要素が記載されるであろう。これらの要素は具体的な実施態様とともに列挙される。しかしながら、それらは任意の態様及び任意の数で組み合わされて別の実施態様を作出できることは理解されよう。種々に記載された実施例及び好ましい実施態様は、当該あからさまに記載された実施態様にだけ本発明を限定すると解されるべきではない。本記載は、あからさまに記載された実施態様を多数の開示要素及び/又は所望の要素と結びつける実施態様を支持し包含すると理解されるべきである。さらにまた、本出願に記載された全ての要素の任意の置換及び組合せが、当該文脈が特段に指示しないかぎり、本出願の記載によって開示されたと考えられるべきである。
【0025】
本明細書及び下記に続く特許請求の範囲を通して、文脈が特段に要求しない限り、用語“comprise(含む)”及び変化型、例えば“comprises”及び“comprising”は記述されたメンバー、整数又は工程を含むが、記述されていない他の任意のメンバー、整数又は工程を排除しないことを暗示していることは理解されるであろう。“consist of(〜から成る)”という用語は“comprise”という用語の特別な実施態様であり、この場合には記述されていない他のいずれのメンバー、整数又は工程も排除される。本発明の関係では、“comprise”という用語は“consist of”という用語を包含する。
本発明を記載する文脈で(特に特許請求の範囲の文脈で)用いられる用語“a”及び“an”及び“the”及び同様な指示は、本明細書で特段の指示がなければ又は文脈により明瞭に矛盾が生じなければ、単数及び複数をカバーすると解されるべきである。本明細書で値の範囲の列挙は、当該範囲に入る各々別個の値を個々に指示するための省略方法とし機能させることが単に意図される。本明細書で特段に指示されないかぎり、それぞれ個々の値は、あたかも当該値が個々に本明細書に列挙されたかのごとく当該出願明細書に含まれる。本明細書のいずれの言葉も、本発明の実施に必須である特許請求されていない任意の要素を指し示していると解されてはならない。
いくつかの文書類が本出願明細書の本文を通して引用される。本明細書に(上記又は下記にかかわらず)引用された文書類(全ての特許、特許出願、学術刊行物、製造業者の仕様明細書、指示書などを含む)の各々は、参照によりその全体が本明細書に含まれる。そのいずれも、本発明が先行する発明のためにそのような開示の日付に先行する資格を持たないことを容認したと解されるべきではない。
【0026】
記載の目的は、本発明によって、好ましくは添付の特許請求の範囲の主題によって解決される。本発明は、驚くべきことに、本発明の方法によってタンパク質を宿主細胞の表面に非共有結合によりディスプレイできることを見出した。
本発明は、第一の実施態様にしたがい、宿主細胞でタンパク質をディスプレイする方法によって解決される。ここで本発明の方法は以下の工程を含む:(a)宿主細胞に、前記宿主細胞の表面でディスプレイされるべき標的のタンパク質をコードする少なくとも1つ以上のポリヌクレオチドを導入する工程;(b)前記宿主細胞の表面を第一の標識と接触させる工程;(c)(b)の前記宿主細胞の表面を第二の標識と接触させ、それによって第二の標識が、特異的かつ非共有結合的に前記第一の標識及び前記少なくとも1つ以上のポリヌクレオチドによってコードされる前記標的のタンパク質と結合する工程;(d)前記少なくとも1つ以上のポリヌクレオチドを、当該少なくとも1つ以上のポリヌクレオチドによってコードされる前記標的のタンパク質の分泌に十分な条件下で、前記宿主細胞で発現させる工程;(e)宿主細胞の表面で当該第二の標識によって結合された工程(d)の標的のタンパク質をディスプレイする前記宿主細胞を検出する工程;(f)工程(e)の前記宿主細胞を、前記第二の標識によって結合された前記標的のタンパク質を特異的に検出する手段と接触させる工程。本発明の方法で用いられる“宿主”細胞は当該標的のタンパク質の発現に適切な任意の細胞、例えば酵母細胞、昆虫細胞、魚類又は哺乳動物の細胞でありうる。
【0027】
本発明の方法で用いられる“導入する”という用語は、ポリヌクレオチドを宿主細胞に導入又は移転するために適切な任意の方法、例えば当業界で公知の任意の技術による形質転換、形質導入、トランスフェクションを指すであろう。ここで、本発明の方法で用いられる“形質転換”という用語は、ポリヌクレオチド(例えばプラスミド)の酵母細胞又は菌類細胞への導入を記載するために用いられ、本発明の方法で用いられる“形質導入”という用語は、ポリヌクレオチド又は遺伝物質の哺乳動物、魚類又は昆虫細胞へのウイルス性導入又はウイルス性移転を指す。本発明の宿主細胞の形質導入には任意のウイルス系を用いることができる。例えば、アデノウイルスによる系、アデノ付随ウイルス(AAV)による系、レトロウイルス系(例えばモロニ―ネズミ白血病ウイルス(Mo-MLV)による系又はレンチウイルス発現系)、又は単純ヘルペスウイルス(HSV)による系、又は他のウイルスによる系、例えばワクシニア、エプスタイン-バー、センダイ、シンドビス、ポリオーマ及び麻疹ウイルスによる系を用いることができる(例えば以下を参照されたい:Mah et al. (2002) Clin. Pharmocokin (12):901-911)。本発明の方法で用いられる宿主細胞が昆虫細胞ならば、例えばバキュロウイルス発現系を用いて少なくとも1つ以上のポリヌクレオチドを宿主細胞に導入できるが、しかしながらバキュロウイルスもまた本発明のポリヌクレオチドの当該宿主細胞への導入のために用いることができる(例えば以下を参照されたい:Hofmann et al., Proc Natl Acad Sci USA (1995), 92:10099-10103;Boyce FM, et al. Proc Natl Acad Sci USA (1996), 93:2348-2352)。本発明の方法のために用いられる“トランスフェクション”という用語は、当業界で公知の任意の適切な方法を介する宿主細胞による核酸の取り込みを指す。前記方法は、例えば以下に開示された方法(Graham et al. (1973); Sambrook et al. (1989) Molecular Cloning, a laboratory manual, Cold Spring Harbor Laboratories, New York, Davis et al. (1986) Basic Methods in Molecular Biology, Elsevier)、特にリン酸カルシウム共沈殿、培養細胞への直接的マイクロインジェクション、超音波媒介遺伝子トランスフェクション、エレクトロポレーション、リポフェクション、又はヌクレオフェクションである。
【0028】
例えば、酵母細胞を本発明の方法で用いることができ、前記を培養して文献(Benatuil et al. Protein Engineering, Design & Selection vol. 23 no. 4 pp. 155-159, 2010)に記載されているように形質転換することができる。例えばエレクトロコンピテントな酵母細胞を得るために、S.セレビシアエ細胞(EBY100)をプラットフォームシェーカー上で225rpm、30℃で静止期(OD600は約3)まで一晩YPD培地(10g/L酵母ニトロゲンベース、20g/Lペプトン及び20g/L D-(+)-グルコース)で増殖させることができる。続いて、一晩培養のアリコットを例えば0.3のイニシャルOD600で接種できる。例えば、細胞の増殖をプラットフォームシェーカー上で225rpm、30℃でOD600が約1.6になるまで継続できる。続いて細胞を3000rpmで3分間の遠心分離によって収集し、培地を除去できる。続いて、細胞を例えば50mLの氷冷水で2回、50mLの氷冷エレクトロポレーション緩衝液(1Mソルビトール/1mM CaCl
2)で1回洗浄できる。続いて、この酵母細胞を、20mLの0.1M LiAc/10mM DTTに再懸濁して培養フラスコで30℃、30分間、225rpmで振盪することによって条件付けることができる。その後、当該条件付け細胞を遠心分離によって収集し、例えば50mLの氷冷エレクトロポレーション緩衝液で1回洗浄し、遠心分離によってペレット化し、さらに例えば100から200μLのエレクトロポレーション緩衝液に再懸濁し、最終体積1mLに達することができる(約1.6x10
9細胞/mLに一致)。例えば、酵母細胞400μLのエレクトロポレーションを利用でき、エレクトロポレーションまで氷上で保持することができる。例えば多数のヌクレオチドの形質転換のために必要ならば(例えばヒト抗体ライブラリーで形質転換する場合)、エレクトロポレーションに用いられる酵母細胞の量をスケールアップして、例えば500μL、600μL、700μL、800μL、900μL又は1mLの条件付け細胞を用いることができる。本発明の方法で酵母細胞の形質転換(エレクトロポレーション)のために用いられるポリヌクレオチドは、好ましくは予め調製されるべきである。本発明のポリヌクレオチドのエレクトロポレーションのためには、約1から50μgのポリヌクレオチド、例えば約2μgから約48μg、又は約4μgから約45μg、又は約6μgから約40μg、約8μgから約35μg、約10μgから約25μg、約12μgから約20μg、又は約4μgから約18μg、又は約6μgから約16μg、又は約7μgから約14μg、又は約5μgから約12μg、又は2μg、3μg、4μg、5μg、6μg、7μg、8μg、9μg、10μg、11μg、12μg、13μg、14μg、15μg、16μg、17μg、18μg、19μg、20μg、21μg、22μg、23μg、24μg、25μg、26μg、27μg、28μg、29μg、30μg、31μg、32μg、33μg、34μg、35μg、36μg、37μg、38μg、39μg、40μg、41μg、42μg、43μg、44μg、45μg、46μg、47μg、48μg、49μg、又は50μgのポリヌクレオチドをエレクトロポレーションのために用いることができる。好ましくは、ポリヌクレオチドの体積は50μL未満であるべきである。続いて、条件付け酵母細胞をポリヌクレオチドとともに例えば穏やかに混合し、予め冷却したキュベット(例えば0.2cmの電極ギャップ)に移し、約5分間氷上でインキュベートし、その後で酵母細胞を例えば2.5kV及び25μFでエレクトロポレートすることができ、それによって時間定数は3.0から4.5ミリ秒の範囲であるはずである。続いてエレクトロポレートされた酵母細胞を1Mソルビトール:YPD培地の1:1混合物の8mLに移し、例えばプラットフォームシェーカー上で225rpm及び30℃で1時間インキュベートできる。続いて、細胞を例えば遠心分離によって収集し、SD-UT培地(20g/Lグルコース、6.7g/L酵母ニトロゲンベース(アミノ酸を含まない)、5.4g/L Na
2HPO
4、8.6g/L NaH
2PO
4xH
2O及び5g/Lカザミノ酸[CSM-TRP-URA])に懸濁できる。例えばエレクトロポレートした酵母細胞400μL毎に250mLのSD-UT培地を用いることができる
【0029】
本発明の方法で用いられるポリヌクレオチド又は核酸という用語は複数のヌクレオチドを含む分子を指す。例示的なポリヌクレオチドには、デオキシリボ核酸、リボ核酸、及び前記の合成アナローグ(ペプチド核酸を含む)が含まれる。例えば、本発明のポリヌクレオチドはウイルスRNA又はDNAを含むことができ、前記は、標的のタンパク質をコードする少なくとも1つ、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10又は前記より多いヌクレオチド配列を含む。本発明で用いられる少なくとも1つのポリヌクレオチドはまた、例えば1つ以上の発現ベクターとして、例えば1、2、3、4、5、6又は前記より多い発現ベクターとして提供されうる。したがって、発現ベクターという用語はベクター又はエピソームベクターを指す。前記は一般的にはプラスミドであり、特定の遺伝子(例えば本発明の宿主細胞の表面で非共有結合によりディスプレイされる標的のタンパク質)を標的細胞に導入し発現させるために用いられる。発現ベクターは大量の安定なmRNAの生成を可能にする。いったん発現ベクターが細胞内に存在すると、遺伝子によってコードされるタンパク質は細胞の転写及び翻訳機構によって生成される。プラスミドは、高度に活性なプロモーター(大量のmRNAの生成を引き起こす)を含むように操作される。エピソームベクターは宿主細胞内で自律的に自己複製することができる。少なくとも1つ以上のポリヌクレオチドによってコードされ本発明の方法によって宿主細胞の表面でディスプレイされる“タンパク質”という用語は、完全長のタンパク質、タンパク質フラグメント、それらの自然のままの状態のタンパク質又は変性タンパク質を指す。例えば、本発明にしたがって宿主細胞の表面でディスプレイされるタンパク質又はタンパク質フラグメントは、約50から約35000のアミノ酸、又は約100から約32500のアミノ酸、又は約125アミノ酸から約30000アミノ酸、又は約150から約27500アミノ酸、又は約200アミノ酸から約27000アミノ酸、又は約220から約26750アミノ酸、又は約250から約26500アミノ酸、又は約300アミノ酸から約26000アミノ酸、又は約60、70、80、90、100、110、120、130、140、160、170、180、190、200、210、220、230、240、260、270、280、290、325、350、375、400、425、450、475、500、525、550、575、600、625、650、675、700、725、750、775、800、850、900、950、1000から約1100、1150、1200、1250、1300、1350、1400、1450、1500、1550、1600、1650、1700、1750、1800、1850、1900、1950、2000アミノ酸を含むことができる。
【0030】
本発明の方法はさらに宿主細胞の表面と第一の標識を接触させる工程を含み、それにより、“接触させる”という工程は、少なくとも2つの別個の実体(例えば少なくとも1つの宿主細胞及び少なくとも1つの第一の標識)を接触に持ち込むプロセスを指し、したがってそれらは宿主細胞の表面と反応できるか又は宿主細胞の表面に結合することができる。本発明の第一の標識は、例えば糖、アミノ酸、タンパク質、ペプチド、酵素、脂質、ビタミン、核酸、ペプチド核酸、ガングリオシド、又は量子ドット、タンパク質Aであることができ、それらの各々は本発明の方法の宿主細胞の表面と反応するために官能化されうる。例えば前述の化合物は、反応基、例えばN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)エステル又はテトラフルオロフィルエステル(THF)を含むことができる。本発明の方法はさらに、上記に開示された宿主細胞の表面を第二の標識と接触させる工程を含み、それによって第二の標識は、前記第一の標識及び少なくとも1つ以上のポリヌクレオチドによってコードされる標的のタンパク質と特異的かつ非共有結合的に結合する。本発明の第二の標識は、例えばガングリオシド結合タンパク質(レクチン)、酵素偽基質、酵素(例えばキナーゼ)、融合タンパク質を含むことができ、前記は、本発明の宿主細胞の表面の第一の標識と結合し、かつ標的のタンパク質と結合することができる。例えば第二の標識はマルチマータンパク質であることができ、そのうち少なくとも1つのタンパク質ドメイン又はフラグメントが第一の標識と結合することができ、少なくとも第二のドメインが標的のタンパク質と結合することができる。
【0031】
本発明の方法はさらに、少なくとも1つ以上のポリヌクレオチドによってコードされる標的のタンパク質の分泌のために十分な条件下での当該標的のタンパク質の発現を含む。例えば、哺乳動物細胞を文献(Basic Techniques in Mammalian Cell Tissue Culture ;Phelan, Current Protocols in Cell Biology 1.1.1-1.1.18, September 2007)に記載されたように培養することができ、培養液は、例えばDMEM、RPMI1640、MEM、ハムDMEM/F12、又は無血清若しくは無タンパク質培養液、例えばExpi293
TM(Life Technologies)若しくはFreestyle
TM培地(Life Technologies)を利用できる。例えば、昆虫細胞はグレース昆虫TC培地又はシュナイダードロソフィラ培地で培養できる。
本発明の方法はさらに、工程(e)として、上記に開示の少なくとも1つのポリヌクレオチドによってコードされる標的のタンパク質をディスプレイする宿主細胞を検出する工程を含む(前記標的のタンパク質は、当該宿主細胞の表面で本発明の方法の第二の標識によって結合される)。本発明の方法はさらに、上記に開示の宿主細胞を特異的に標的のタンパク質を検出する手段と接触させる工程を含む(前記標的のタンパク質は第二の標識と非共有結合する)。本発明の方法で用いられる“検出”は、その表面に標的のタンパク質が第二の標識の手段と非共有結合する(それによって第二の標識が当該宿主細胞の表面で第一の標識に結合する)宿主細胞の有無を定量的又は定性的に決定する工程を指す。
【0032】
ある実施態様では、本発明の宿主細胞の表面でディスプレイされる標的のタンパク質はモノマー又はマルチマータンパク質でありうる。例えば、標的のタンパク質は1つのポリペプチド鎖を含むことができ、又は標的のタンパク質は2−22、3−20、4−18、5−17、6−16、7−15、8−14、9−13、10−12、又は2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21若しくは22サブユニットを含むことができ、その各々が上記に開示の多数のアミノ酸を含むポリペプチド又はタンパク質を含むことができる。マルチマータンパク質のポリペプチド鎖はまた例えばジスルフィド結合によって連結され、前記結合は個々のポリペプチド鎖又はタンパク質フラグメントのシステイン残基間で形成されうる。したがって、標的のタンパク質はマルチマータンパク質であることができ、前記は35000を超えるアミノ酸を含む。本発明の方法によってディスプレイされる標的のタンパク質は例えばホモマータンパク質であることができ、前記は同一の複数のポリペプチド又はタンパク質を含む。例えば標的のタンパク質は、2−22、4−18、6−16、8−14、10−12、又は2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22の同一のポリペプチド鎖(サブユニット)を含むことができ、前記は例えばジスルフィド結合によって連結されるか、又は非共有結合性相互作用(例えば疎水性タンパク質-タンパク質相互作用)によってマルチマー複合体を形成することができる。与えられた化合物(例えば標的のタンパク質)に対する疎水性作用の規模は、気相、液相又は固相から水への当該化合物の移動自由エネルギーΔG
trを測定することによって推定できる。ΔG
trの正の値は、当該分子が非水性環境を好むことを意味する。アミノ酸の場合、測定は、有利アミノ酸を用いて又はタンパク質鎖内に取り込まれているアミノ酸をより良好に表すために改造された変種を用いて実施できる。例えば、標的のタンパク質はまたヘテロマータンパク質であることができ、前記は2つ以上の異なるポリペプチド又はサブユニット又はタンパク質を含む。例えば標的のタンパク質は、2−22、又は3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21若しくは22の異なるポリペプチド又はサブユニットを含むことができ、前記はジスルフィド結合、疎水性相互作用によって結合させるか、又はリンカー若しくは人工リンカーによって結合させることができる。本発明の方法の標的のタンパク質について用いられる“リンカー”又は“リンケージ”という用語は、2つのタンパク質又はポリペプチドを繋ぎ、長さが約5から約20原子の骨格を有する連結部分を指す。例えばリンカー又はリンケージは、本発明の標的のタンパク質の2つのポリペプチド又はタンパク質を繋ぐ共有結合、又は長さが1から20原子の鎖、例えば長さが約1、2、3、4、5、6、8、10、12、14、16、18、19又は20の炭素原子の鎖であることができ、ここで、リンカーは直鎖状、分枝状、環状又は単一原子でありうる。ある種の事例では、リンカー骨格の1つ、2つ、3つ、4つ若しくは5つ又はそれより多い炭素原子が場合によって硫黄、窒素又は酸素ヘテロ原子で置換されうる。骨格原子間の結合は例えば飽和又は不飽和であることができ、それにより通常は1つ、2つ又は3つを超えない不飽和結合がリンカー骨格に存在するであろう。リンカーは、例えば1つ以上の置換基、例えばアルキル、アリール又はアルケニル基を含むことができる。リンカーは、非制限的にオリゴ(エチレングリコール)、エーテル、チオエーテル、第三アミン、アルキルを含むことができ、前記は直鎖又は分枝状であることができ、例えばメチル、エチル、n-プロピル、1-メチルエチル(イソプロピル)、n-ブチル、n-ペンチル、1,1-ジメチルエチル(t-ブチル)などである。リンカー骨格は、例えば環式基(例えばアリール、複素環又はシクロアルキル基)を含むことができ、ここで環式基の2つ以上の原子(例えば2、3又は4原子)は当該骨格に含まれ、切断可能又は切断不能でありうる。標的のタンパク質は、例えば人工タンパク質(例えば天然に存在しないタンパク質)であることができ、さらに天然に存在するタンパク質又はタンパク質フラグメントの融合物を含むことができる。又は標的のタンパク質は保存的又は非保存的置換を含むことができ、又は1つ以上のアミノ酸の置換、欠失若しくは付加を含むことができる。例えば、標的の人工タンパク質は、天然に存在するタンパク質又はタンパク質フラグメントと比較して、1−100、5−90、10−80、15−75、20−70、25−65、30−55、35−50、40−45、又は2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69若しくは70の保存的又は非保存的アミノ酸置換を含むことができる。例えば、本発明の標的のタンパク質の保存的アミノ酸置換は、1つのアミノ酸の類似の特性(例えばサイズ、荷電、疎水性、親水性及び/又は芳香性)を有する別のアミノ酸による入替えを指し、以下の5グループの1つの中での交換を含む:
【0034】
本発明の標的のタンパク質の非保存的アミノ酸置換は、例えば上記に記載の異なるグループI−V間での置換、例えばグループIとII、IとIII、IとIV、IとV、IIとIII、IIとIV、IIとV、IIIとIV、IIIとVとの間での置換を含む。
【0035】
ある実施態様にしたがえば、少なくとも1つのポリヌクレオチドによってコードされる本発明の標的のタンパク質はシグナルペプチドを含む。本発明の方法の標的のタンパク質について用いられるシグナル配列は、宿主細胞の小胞体(ER)へのポリペプチドの輸送を開始させることができるアミノ酸配列を指し、当該ポリペプチドに対してシグナル配列は作動できるように、例えばペプチド結合によって連結される。シグナルペプチドは、一般的にはエンドペプチダーゼ(例えば特異的なER-配置シグナルペプチダーゼ)によって切断され、(成熟)ポリペプチドを放出する。シグナルペプチドの長さは典型的には約10から約40アミノ酸の範囲である。本明細書で用いられるある実施態様では、“シグナルペプチドをコードする核酸配列”は、本来シグナルペプチドが小胞体への輸送を開始する同種ポリペプチドの完全長配列をコードする核酸配列をその範囲内に含まない。特に、前記シグナルペプチドは、細胞の分泌路に当該ポリペプチドを誘導する能力を有することができる。例えば、本発明の宿主細胞が哺乳動物細胞である場合、本発明の標的のタンパク質に作動できるように連結されるリーダー配列は以下を含むことができる:MELGLSWIFLLAILKGVQC(配列番号:9)、MELGLRWVFLVAILEGVQC(配列番号:10)、MKHLWFFLLLVAAPRWVLS(配列番号:11)、MDWTWRILFLVAAATGAHS(配列番号:12)、MDWTWRFLFWAAATGVQS(配列番号:13)、MEFGLSWLFLVAILKGVQC(配列番号:14)、MEFGLSWVFLVALFRGVQC(配列番号:15)、MDLLHKNMKHLWFFLLLVAAPRWVLS(配列番号:16)、MDMRVPAQLLGLLLLWLSGARC(配列番号:17)、MKYLLPTAAAGLLLLAAQPAMA(配列番号:18)、MPLLLLLPLLWAGALA(配列番号:19)、MKVLILACLVALALA、MKWVTFISLLFLFSSAYS…RGVFRR(配列番号:20)。
【0036】
例えば、本発明の方法で宿主細胞として昆虫細胞が用いられるならば、昆虫細胞に適切なシグナル配列が用いられるべきであり、前記は1つの例としてMKFLVNVALVFMVVYISYIYA(配列番号:28)を含むことができる。
例えば、本発明の方法で宿主細胞として酵母細胞が用いられるならば、酵母細胞に適切なシグナル配列、例えば下記文献(Massahi et al. Journal of Theoretical Biology 364 (2015) 179-188)に開示されたものが用いられるべきであり、前記は例えば、好ましくはアミノ末端にMF・1pp分泌リーダー、MQVKSIVNLLLACSLAVA(配列番号:21)、MQFNWNIKTVASILSALTLAQA(配列番号:22)、MQFNSVVISQLLLTLASVSMG(配列番号:23)、MRFSTTLATAATALFFTASQVSA(配列番号:24)、MESVSSLFNIFSTIMVNYKSLVLALLSVSNLKYARG(配列番号:25)、MRFPSIFTAVLFAASSALA(配列番号:26)、MFKSVVYSILAASLANA(配列番号:27)を含むことができる。
【0037】
本発明のある実施態様にしたがえば、本発明の方法の第一の標識は宿主細胞の表面に共有結合される。したがって、第一の標識は、例えば哺乳動物細胞の表面に共有結合されるか、又は例えば昆虫細胞の表面に共有結合されるか、又は例えば酵母細胞の表面に共有結合されうる。本発明の方法で用いられるように、“共有結合する”又は“共有結合”という用語は、少なくとも1対の電子を共有することによって形成される2つの原子間の結合、例えばC-C、C=C、N-C又はS-S間で形成される結合を指す。
好ましい実施態様にしたがえば、本発明の第一の標識はビオチン又はビオチン誘導体である。したがって、本発明の方法の第一の標識は、ビオチン又はビオチンアナローグ、例えばデスチオビオチン、オキシビオチン、2’-イミノビオチン、ジアミノビオチン、ビオチンスルホキシド、ビオシチンなどを含むことができ、前記は、本発明の宿主細胞の表面に反応基(例えばN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)エステル又はテトラフルオロフィルエステル(THF))によって共有結合されうる。例えば、本発明の方法で第一の標識として用いることができるビオチン誘導体はまたリンカーを含むことができ、前記は例えば-LC-ビオチン、-LC-LC-ビオチン、-SLC-ビオチン又は-PEGn-ビオチン(nは3−12、例えばn=1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11又は12)である。例えば、第一の標識は以下を含むことができる:NHS-PEO4-ビオチン、NHS-dPEG4-ビオチン、NHS-PEG12-ビオチン、NHS-dPEG12-ビオチン、ビオチン-PEG-SCM(3.4kD)、スルホ-NHS-ビオチン、スルホ-NHS-LC-ビオチン、スルホ-NHS-LC-LC-ビオチン、アルコキシアミン-PEG12-ビオチン、アルコキシアミン-PEG4-ビオチン、ヒドラジド-ビオシチン、ヒドラジン-PEG4-ビオチン、ピリジルジスルフィド-ビオチン、ビオチン-BMCC(1-ビオチンアミド-4-[4'-(マレイミドメチル)シクロヘキサンカルボキサミド]ブタン)、マレイミド-PEO2-ビオチン、マル-dPEG2-ビオチン、マレイミド-PEG2-ビオチン、マレイミド-PEO11-ビオチン、マル-dPEG11-ビオチン、マレイミド-PEG11-ビオチン、又は長鎖(LC)ヨードアセチル-ビオチン。
【0038】
ある実施態様にしたがえば、本発明の方法の第二の標識はさらに別のタンパク質又はポリペプチドである。例えば、本発明の方法の第二の標識は、上記に開示のビオチン又はビオチン誘導体と結合するさらに別のタンパク質でありうる。
本発明の好ましい実施態様では、本発明の方法の第二の標識はマルチマータンパク質である。したがって、さらに別のタンパク質(第二の標識)は1つ以上のタンパク質を含むことができる。例えば第二の標識は2、3、4、5、6、7、8、9又は10のタンパク質を含むことができ、前記タンパク質は、当該第二の標識に含まれる個々のタンパク質間の例えば1つ以上のジスルフィド結合によって共有結合により連結されうる。しかしながら本発明の方法の第二の標識に含まれるタンパク質はまた、例えば、第二の標識の個々のタンパク質構成成分間で荷電アミノ酸残基間の疎水性相互作用、静電的相互作用によって非共有結合的に連結されうる。
【0039】
ある実施態様にしたがえば、本発明の方法の第二の標識は、タンパク質A、タンパク質L、タンパク質G、タンパク質A-G融合物、又はタンパク質AのドメインE、D、A、Bの1つを含む。したがって、第二の標識タンパク質A、タンパク質L、タンパク質G、タンパク質A-G融合物、又はタンパク質AのドメインE、D、A、Bは、上記に開示の本発明の第一の標識と特異的かつ非共有結合的に結合する。したがって、第二の標識は、タンパク質A、タンパク質L、タンパク質G、タンパク質A-G融合物、又はタンパク質AのドメインE、D、A、Bに加えて、例えばアビジン又はストレプトアビジンを含むことができる。例えば、本発明の方法の第二の標識は、例えばタンパク質A-アビジン融合タンパク質、又はタンパク質L-アビジン融合タンパク質、又はタンパク質Gアビジン融合タンパク質、又はアビジンと融合したタンパク質A-G融合物、又はアビジンと融合したタンパク質AのドメインE、又はアビジンと融合したタンパク質AのドメインD、又はアビジンと融合したタンパク質AのドメインA、又はアビジンと融合したタンパク質AのドメインB、又は例えばタンパク質A-ストレプトアビジン融合タンパク質、又はタンパク質L-ストレプトアビジン融合タンパク質、又はタンパク質Gストレプトアビジン融合タンパク質、又はストレプトアビジンと融合したタンパク質A-G融合物、又はストレプトアビジンと融合したタンパク質AのドメインE、又はストレプトアビジンと融合したタンパク質AのドメインD、又はストレプトアビジンと融合したタンパク質AのドメインA、又はストレプトアビジンと融合したタンパク質AのドメインBを含むことができる。本発明の第二の標識とともに用いられる“融合タンパク質”又は“融合物”という用語は、ペプチド結合によって連結される成分、例えばタンパク質又はポリペプチドを指す。本発明の融合タンパク質は、アミノ末端又はカルボキシ末端融合物でありうる。ある実施態様では、本発明の第二の標識はまたニュートラアビジン、ニワトリアビジン関連タンパク質(AVR、例えばAVR4)、二重鎖アビジン(dcAvd)、又はその配列変種、例えばアビジン変異体Y33H、アビジン変異体H117C、アビジン変異体[W110K][N54A]、ストレプトアビジン変異体V47G、ストレプトアビジン変異体S112F、ストレプトアビジン変異体S112R、又はストレプトアビジン変異体S112Kを含むことができ、前記は本発明の第一の標識と結合する。
【0040】
標的のタンパク質と結合する本発明の第二の標識の好ましいタンパク質は、例えば抗体のFcドメイン、又は抗体のFab領域、又は抗体の軽鎖(VL-カッパ)に対して高い親和性を示す、例えば少なくともK
D=10
-9M、10
-10M、10
-11M、又は10
-12Mの結合定数を有するものである。
ある実施態様では、本発明の方法の宿主細胞は例えば哺乳動物、酵母又は昆虫細胞から選択できる。好ましい実施態様では、本発明の方法の宿主細胞は、サッカロミセス・セレビシアエ、ハンセヌラ・ポリモルファ、シゾサッカロミセス・ポンベ、シュワンニオミセス・オクシデンタリス、クルイベロミセスラクチス、ヤロウイア・リポリチカ及びピキア・パストリスを含む群から選択される酵母細胞である。
【0041】
好ましい実施態様にしたがえば、本発明の方法の宿主細胞は哺乳動物細胞である。例えば、哺乳動物細胞は、HEK293、HEK293T、HEK293E、HEK 293F、NS0、per.C6、MCF-7、HeLa、Cos-1、Cos-7、PC-12、3T3、Vero、vero-76、PC3、U87、SAOS-2、LNCAP、DU145、A431、A549、B35、H1299、HUVEC、Jurkat、MDA-MB-231、MDA-MB-468、MDA-MB-435、Caco-2、CHO、CHO-K1、CHO-B11、CHO-DG44、BHK、AGE1.HN、Namalwa、WI-38、MRC-5、HepG2、L-929、RAB-9、SIRC、RK13、11B11、1D3、2.4G2、A-10、B-35、C-6、F4/80、IEC-18、L2、MH1C1、NRK、NRK-49F、NRK-52E、RMC、CV-1、BT、MDBK、CPAE、MDCK.1、MDCK.2、及びD-17を含む群から選択できる。
ある実施態様では、本発明の方法の宿主細胞は昆虫細胞であり、前記はSf9、Sf21、S2、又はBTI-TN-5B1-4細胞を含む群から選択できる。
【0042】
ある実施態様にしたがえば、本発明の方法の宿主細胞の表面で標的のタンパク質を特異的に検出する手段は、抗体若しくは抗体フラグメント、量子ドット、酵素、発蛍光団、又はインターカレート染料及びガングリオシドを含む群から選択される。
したがって、標的のタンパク質を特異的に検出する手段は例えば抗体であることができ、それによって“抗体”という用語は、(a)免疫グロブリンポリペプチド及び免疫グロブリンポリペプチドの免疫学的に活性な部分、すなわち特異的抗原(例えば標的のタンパク質)と免疫特異的に結合する抗原結合部位を含む免疫グロブリンファミリーのポリペプチド又はそのフラグメント、又は(b)抗原(例えば標的のタンパク質(POI))と免疫特異的に結合する免疫グロブリンポリペプチド又はフラグメントの保存的に置換された誘導体を指す。抗体は、例えば下記文献に概説されている:Harlow & Lane, Antibodies: A Laboratory Manual(Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1988)。それにより、本発明の方法で用いられる“免疫特異的に”という用語は、本明細書で開示する個々の抗体又は抗体フラグメントの能力であって、ただ1つの抗原決定基と反応し他のポリペプチドとは特異的に結合しない能力を指す。
【0043】
例えば、量子ドットを用いて、本発明の方法の標的のタンパク質を特異的に検出することができる。本発明の方法では(例えば本発明の方法の工程(e)では)、“量子ドット”という用語は半導体物質の単一球状超微細結晶を指し、ここで、当該超微細結晶の半径は当該半導体物質に対する励起子ボーア半径のサイズ以下である(励起子ボーア半径の値は、半導体の特性に関する情報を含む例えば以下のハンドブックで見出されるデータから計算できる:CRC Handbook of Chemistry and Physics, 83rd ed., Lide, David R.編、CRC Press, Boca Raton, Fla., 2002)。量子ドットは当業界で公知であり、例えば以下の参考文献に記載されている:Weller, Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 32: 41-53, 1993;Alivisatos, J. Phys. Chem. 100: 13226-13239, 1996;及びAlivisatos, Science 271: 933-937, 1996。量子ドットは、直径が例えば約1nmから約1000nm、例えば10nm、20nm、30nm、40nm、50nm、60nm、70nm、80nm、90nm、100nm、150nm、200nm、250nm、300nm、350nm、400nm、450nm、又は500nm、好ましくは少なくとも約2nmから約50nmでありうる。より好ましくは、QDは直径が少なくとも約2nmから約20nm(例えば約2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19又は20nm)である。QDはそれらの均一なナノメートルのサイズによって特徴づけられ、しばしば約10%から15%の多分散又はサイズ範囲を示す。DQは励起に際して電磁放射線を放出する能力を有し(すなわちDQは光発光性である)、1つ以上の第一の半導体物質の“コア”を含み、さらに第二の半導体物質の“シェル”によって取り囲まれうる。半導体シェルによって取り囲まれたQDコアは“コア/シェル”QDと称される。周囲の“シェル”物質は、好ましくはコア物質のバンドギャップエネルギーより大きいバンドギャップエネルギーを有するであろう。前記シェル物質は“コア”物質の原子間隔に近接する原子間隔を有するように選択できる。コア及び/又はシェルは以下を含む半導体物質でありうる(ただしこれらに限定されない):グループII-VIの物質(ZnS、ZnSe、ZnTe、US、CdSe、CdTe、HgS、HgSe、HgTe、MgS、MgSe、MgTe、CaS、CaSe、CaTe、SrS、SrSe、SrTe、BaS、BaSe、BaTeなど)及びグループIII-Vの物質(GaN、GaP、GaAs、GaSb、InN、InP、InAs、InSbなど)及びグループIVの物質(Ge、Siなど)、PbS、PbSe、並びに前記の合金及び混合物。好ましいシェル物質にはZnSが含まれる。
【0044】
宿主細胞の表面で標的のタンパク質を特異的に検出する本発明の方法で用いられる“発蛍光団”、“蛍光標識”又は“蛍光染料”又は“発蛍光団”という用語は、規定の励起波長で光エネルギーを吸収し、異なる波長で光エネルギーを放出する部分を指す。本発明の標的のタンパク質の特異的検出に用いることができる蛍光標識の例には以下が含まれる(ただしこれらに限定されない):ダンシルクロリド、ダポキシル、ジアルキルアミノクマリン、ローダミンイソチオシアネート、Alexa 350、Alexa 430、Alexa Fluor 488、Alexa Fluor 532、Alexa Fluor 546、Alexa Fluor 568、Alexa Fluor 594、Alexa Fluor 633、Alexa Fluor 660、Alexa Fluor 680、AMCA、アミノアクリジン、BODIPY 630/650、BODIPY 650/665、BODIPY-FL、BODIPY-R6G、BODIPY-TMR、BODIPY-TRX、BODIPY FL、BODIPY R6G、BODIPY TMR、BODIPY TR、BODIPY 530/550、BODIPY 558/568、BODIPY 564/570、BODIPY 576/589、BODIPY 581/591、BODIPY 630/650、BODIPY 650/665)、カルボキシローダミン6G、カルボキシ-X-ローダミン(ROX)、カスケード青、カスケード黄、クマリン343、シアニン染料(Cy3、Cy5、Cy3.5、Cy5.5)、ダンシル、ダポキシル、ジアルキルアミノクマリン、4',5'-ジクロロ-2',7'-ジメトキシ-フルオレセイン、DM-NERF、エオシン、エリスロシン、フルオレセイン、FAM、ヒドロキシクマリン、IRDye(IRD40、IRD700、IRD800)、JOE、リサミンローダミンB、マリナ青、メトキシクマリン、ナフトフルオレセイン、オレゴン緑488、オレゴン緑500、オレゴン緑514、パシフィック青、PyMPO、5-カルボキシ-4',5'-ジクロロ-2',7'-ジメトキシフルオレセイン、5-カルボキシ-2',4',5',7'-テトラクロロフルオレセイン、5-カルボキシフルオレセイン、5-カルボキシローダミン、6-カルボキシローダミン、6-カルボキシテトラメチルアミノ、カスケード青、Cy2、Cy3、Cy5、6-FAM、ダンシルクロリド、フルオレセイン、HEX、6-JOE、NBD(7-ニトロベンゾ-2-オキサ-l,3-ジアゾー)、オレゴン緑488、オレゴン緑500、オレゴン緑514、パシフィック青、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、クレシルファストバイオレット、クレシル青紫、ブリリアントクレシルブルー、パラ-アミノ安息香酸、エリスロシン、フタロシアニン、アゾメシン、シアニン、キサンチン、スクシニルフルオレセイン、希土類金属クリプテート、ユーロピウムトリスビピリジンジアミン、ユーロピウムクリプテート又はキレート、ジアミン、ジシアニン、ラホイヤ青染料、アロピコシアニン、アロコシアニンB、フィコシアニンC、フィコシアニンR、チアミン、フィコエリスロシアニン、フィコエリスリンR、REG、ローダミン緑、ローダミンイソチオシアネート、ローダミン赤、TAMRA、TET、TRIT(テトラメチルローダミンイソチオール)、テトラメチルローダミン、又はテキサス赤。例えば、本発明の方法で用いることができるインターカレート染料は、典型的には平面的な、芳香族性、環状形発色団分子である。いくつかの実施態様では、インターカレート染料には蛍光染料が含まれる。多数のインターカレート染料が当業界で知られている。いくつかの非限定的な例には以下が含まれる:PICOグリーン(P-7581(Molecular Probes))、EB(E-8751(Sigma))、ヨウ化プロピジウム(P-4170(Sigma))、アクリジンオレンジ(A-6014(Sigma))、7-アミノアクチノマイシンD(A-1310(Molecular Probes))、シアニン染料(例えばTOTO、YOYO、BOBO及びPOPO)、SYTO、SYBRグリーンI、SYBRグリーンII、SYBR DX、OliGreen、CyQuant GR、SYTOXグリーン、SYTO9、SYTO10、SYTO17、SYBR14、FUN-1、DEADレッド、ヨウ化ヘキシジウム、ジヒドロエチジウム、9-アミノ-6-クロロ-2-メトキシアクリジン、DAPI、DIPI、インドール染料、イミダゾール染料、アクチノマイシンD、ヒドロキシスチルバミジン、BOXTO、LCグリーン、エバグリーン、ベボ。ある実施態様では、例えば標的のタンパク質がガングリオシドと結合する場合、ガングリオシドを用いて本発明の方法の標的のタンパク質を検出することができる。本発明で用いられる“ガングリオシド”という用語は、各分子にいくつかの単糖類単位を含むスフィンゴ糖脂質を指す。ガングリオシド又はガングリオシド誘導体に含まれうる適切な単糖類の例は、D-ガラクトース、N-アセチルD-ガラクトサミン、グルコース及びN-アセチルノイラミン酸である。ガングリオシドは、各分子に結合したシアル酸残基の数に応じて、おおざっぱにモノシアロガングリオシド(GM)、ジシアロガングリオシド(GD)、トリシアロガングリオシド(GT)、及びテトラシアロガングリオシド(GQ)(前記には4つのシアル酸残基が結合する)に分類される。ガングリオシドは結合したシアル酸残基の位置に応じてさらに分類できる。例えば、ガングリオシドは、GMとしてGM1(一般式(1)でn=0、m=1)、GDとしてGD1a(n=1、m=1)及びGD1b(n=0、m=2)、GTとしてGT1b(n=1、m=2)、及びGQとしてGQ1b(n=2、m=2)を含むことができる。本明細書に開示されるガングリオシドは、例えばさらに本明細書に開示の発蛍光団を含むことができるか、又は放射性同位元素(例えば
14C、
3H、
32P、
125I、
131I、又は
125I)を含んでそれらの検出を可能にするか又は補助することができる。
【0045】
ある実施態様では、本発明の方法は、上記に開示の宿主細胞を、本発明の第二の標識と非共有結合する標的のタンパク質を特異的に検出する手段と接触させる工程を含む。したがって、本発明の第二の標識と非共有結合する標的のタンパク質を特異的に検出する手段は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、scFv-Fc、scFv、(Fab’)
2、Fab、ジアボディ、又はVHH抗体の1つであることができ、前記は場合によってさらに別の標識と結合される。例えば、標的のタンパク質は、ポリクローナル抗体若しくはポリクローナル血清、モノクローナル抗体、scFv-Fc、scFv、(Fab’)
2、Fab、ミニボディ、ジアボディ、又はVHH抗体によって検出でき、前記は標的のタンパク質の少なくとも1つのエピトープと特異的に結合するか、又は、前記はまた例えば本発明の第二の標識及びそれと非共有結合する標的のタンパク質によって形成されるエピトープと結合することができる。
【0046】
本発明の方法の実施態様にしたがって用いられうる“Fabフラグメント”という用語は、VL及びCL領域を含む軽鎖並びにVn及びCH1領域を含む重鎖の一部分を含む抗体フラグメントを指す。FabフラグメントはCH2又はCH3領域を含まない(例えば以下を参照されたい:Kuby, Immunology, Second Edition, pp.1 10- 1 1 W.H. Freeman and Co., New York, 1994。様々な種類のFabフラグメントは、ヒンジ領域を全く含まないか、又はヒンジ領域の一部分若しくは完全なヒンジ領域を含むことができる。本発明の方法で用いられることがある“scFv-Fc”は、scFvとFc領域の融合物である組換えタンパク質である(例えば以下を参照されたい:Li et al. (2000), Cancer Immunol, immunother. 49:243-252)。本発明の方法で用いられる“Fcドメイン”又は“Fc領域”という用語は、免疫グロブリン(例えばIgG分子)の部分を指し、前記はIgG分子のパパイン消化によって得られる結晶化可能フラグメントと相関関係にある。Fc領域は、ジスルフィド結合によって連結されるIgG分子の2つの重鎖のC-末端側の半分を含む。前記は抗原結合活性をもたないが、炭水化物部分並びに補体及びFc受容体(FcRn受容体を含む)の結合部位を含む。“Fcドメイン”は、例えば自然のままのFc領域配列及びFc領域変種(例えばWO02/094852に開示されたもの)を含み、同様に多型もFcドメインの多くの位置(270、272、312、315、356及び358位が含まれるが、ただしこれらに限定されない)で観察されている。本発明の方法では“Fc”という用語は、単離状態のこの領域、又は抗体、抗体フラグメント若しくはFc融合タンパク質の状態のこの領域を指すことができる。
【0047】
例えば、IgG Fc領域はIgG CH2及びIgG CH3ドメインを含むことができる。ヒトIgG Fc領域の“CH2ドメイン”は通常、約231位のアミノ酸残基から約340位のアミノ酸残基に及び、それによって炭水化物鎖はCH2ドメインに接着できる。“CH3ドメイン”はFc領域のCH2ドメインのC-末端側の一続きのアミノ酸、例えばIgGの約341位のアミノ酸残基から約447位のアミノ酸残基を含むことができる。
本発明の方法で用いられる“ジアボディ”という用語は、可変重鎖-可変軽鎖の2つのフラグメントのダイマー化によって生成される、二価の一特異的又は二特異的分子である操作された抗体及び/又は抗体フラグメントを指す。本発明の方法に用いられる“VHH”という用語は、軽鎖を欠く単一重鎖可変ドメイン抗体を指す。好ましくは、VHHは、ラクダ科又は軟骨魚類で見出すことができるタイプ(軽鎖を天然に欠く)の抗体フラグメントであるか、又はVHHは文献にしたがって構築できる合成VHHでありうる(例えば以下を参照されたい:Kim et al. Biochimica et Biophysica Acta 1844 (2014) 1983-2001;Janssens, R. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 2006, 103 (41), 15130-15135)。
【0048】
本発明の標的のタンパク質の検出に用いられる“ポリクローナル抗体”又は“ポリクローナル血清”は、多数の異なるBリンパ球によって産生される異種抗体プールを指す。当該プールの種々の抗体は種々のエピトープを認識しこれと特異的に結合する。前記種々のエピトープは、典型的には少なくとも約3から5、好ましくは約5から10又は15、例えば3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14又は15アミノ酸のポリペプチドであるが、典型的には約1000アミノ酸(又はその間の任意の整数)を超えず、それだけで又はより大きな配列の部分として、そのような配列に応答して生じる抗体と結合する配列と定義される。標的抗原は線状及び/又は不連続エピトープを含むことができる。フラグメントの長さに決定的な上限は存在せず、前記は(例えば)完全長に近い抗原配列を含むか、または当該標的抗原の2つ以上のエピトープを含む融合タンパク質すら含むことができる。本発明で使用されるエピトープは、それが由来した標的のタンパク質の部分の正確な配列を有するポリペプチドに限定されず、配列変種を含むことができる。例えば、エピトープは、上記に開示される約1−10の保存的若しくは非保存的アミノ酸置換を含む配列を含むことができ、好ましくは、ポリクローナル抗体又はポリクローナル血清によって認識されるエピトープのアミノ酸配列は、標的のタンパク質の対応する配列と少なくとも85%、又は少なくとも90%、又は少なくとも98%同一である。したがって、本発明の方法に用いられる“エピトープ”という用語は、自然のままの配列と同一の配列とともに自然のままの配列の変異又は改造(例えば欠失、付加及び置換(実際には概ね保存的置換))を包含する。
【0049】
例えば、本発明の標的のタンパク質又は本発明で開示される任意のタンパク質のアミノ酸配列の配列同一性は、配列をアラインメントし必要な場合にはギャップを導入して最大のパーセント配列同一性を達成した後、本発明の標的のタンパク質のアミノ酸残基と同一の候補配列中のアミノ酸のパーセンテージと定義され、いずれの保存的置換も配列同一性の部分としては一切考慮されない。パーセントアミノ酸配列同一性の決定を目的とするアラインメントは、当業界の技術範囲内の多様な方法で、例えば、公的に利用可能なコンピュータソフトウェア(例えばBLAST、BLAST-2、ALIGN、ALIGN-2又はMegalign(DNASTAR))を用いて達成できる。当業者はアラインメントの測定のために適切なパラメーターを測定でき、前記パラメーターには、比較される配列の完全長にわたって最大アラインメントを達成するために必要な任意のアルゴリズムが含まれる。
例えば、パーセント配列同一性はまた以下の文献に開示された方法によって決定することができる:Altschul et al, Bull Math. Bio. 48:603, 1986;及びHenikoff and Henikoff, Proc. Natl Acad. Sci. USA 1992 Nov 15; 89(22):10915-9。略記すれば、ギャップ開始ペナルティ10、ギャップ伸長ペナルティ1及び下記に開示するHenikoff & Henikoffの“BLOSUM 62”スコア行列を用い、アラインメントスコアを最適化するように2つのアミノ酸配列をアラインメントする(アミノ酸は標準的な一文字コードで示される)。続いてパーセント同一性を以下のように計算する:([同一マッチの総数]/[長い方の配列の長さ+2つの配列をアラインメントするために長い方の配列に導入されたギャップ数])
*100)
【0051】
例えば、確立された利用可能な追加的アルゴリズムを用いて、2つ以上のアミノ酸配列をアラインメントし類似性を決定してもよい。ピアソンとリップマン(Peason and Lipman)の“FASTA”類似性検索アルゴリズムは、2つ以上のアミノ酸配列によって共有される同一性レベルを調べる適切なタンパク質アラインメント方法である(例えば以下の文献を参照されたい:Pearson and Lipman, Proc. Natl. Acad. Sci. USA &5:2444, 1988;及びPearson, Meth. Enzymol. 183:63, 1990)。略記すれば、FASTAはまず初めに、最高の同一性密度(ktup変数が1の場合)又は同一性のペア(ktup=2の場合)を有する(保存的アミノ酸置換、挿入又は欠失は考慮しない)クェリー配列及び試験配列により共有される領域を同定することによって配列類似性を特徴づける。続いて、アミノ酸置換行列を用いて全ての対合アミノ酸の類似性を比較することによって、最高の同一性密度を有する10領域を再度スコアリングし、最高スコアに寄与する残基だけを含むように当該領域の末端を“トリミング”する。カットオフ値(配列の長さ及びktup値を基準に予め定めた式によって計算される)より大きいスコアを有するいくつかの領域が存在する場合、トリミングした最初の領域を調べて、当該領域を一緒にして正確に近いアラインメント(ギャップ付き)を形成できるか否かを決定する。最後に、改造したニードルマン-ウンシュ-セーラース(Needleman-Wunsch-Sellers)アルゴリズム(前記アルゴリズムはアミノ酸の挿入及び欠失を許容する)を用いて、2つのアミノ酸配列の最高のスコア領域をアラインメントする(Needleman and Wunsch, J. Mol Biol. 48:444 (1970); Sellers, SIAM J. Appl. Math. 25:787, 1974)。FASTA分析の例示的パラメーターは以下のとおりである:ktup=l、ギャップ開始ペナルティ=10、ギャップ伸長ペナルティ=1、及び置換行列=BLOSUM62。これらのパラメーターは、ピアソンの文献(Pearson, Meth. Enzymol. 183:63,1990)の補遺2で説明されているようにスコアリング行列ファイル(“SMATRK”)を改造することによってFASTAプログラムに導入できる。
【0052】
本明細書で用いられる“モノクローナル抗体”という用語は、実質的に同種の抗体集団から得られる抗体を指す(すなわち、当該集団を構成する個々の抗体は、微量で存在しうる天然に存在する可能性がある変異、又は例えば翻訳後改変(例えばグリコシル化又は末端リジンのプロセッシング)の程度の相違を除いて同一である)。
ある実施態様では、本発明の方法で用いることができるポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、scFv-Fc、scFv、(Fab’)
2、Fab、ジアボディ、又はVHH抗体は、場合によってさらに別の標識と結合されるか又前記を含む。本発明の方法で用いられるさらに別の標識は、例えば放射性同位元素又は蛍光標識でありうる。本発明のさらに別の標識に用いられる“蛍光標識”、“蛍光染料”又は“発蛍光団”という用語は上記に定義されたとおりであり、放射性同位元素という用語は任意の放射性同位元素、例えば
14C、
3H、
32P、
125I、
131I、又は
125Iのいずれかを指し、前記は標的のタンパク質を検出する本発明の方法で用いることができる。
【0053】
ある実施態様にしたがえば、本発明の方法は、上記に開示の本発明の方法の工程(d)の宿主細胞を選別する工程を含む。したがって、本発明の方法は、標的のタンパク質をその表面でディスプレイする上記に開示の宿主細胞を選別する工程を含む。本発明の方法で用いられる“選別する”という用語は、本発明の第二の標識に非共有結合されさらに上記に開示の手段によって検出されてある標的のタンパク質をその表面にディスプレイする細胞を同定及び/又は単離し、さらに当該宿主細胞を例えばその表面に標的のタンパク質をディスプレイしない宿主細胞から分離するプロセスを指す。本発明の方法における選別は、当業者に公知の多様な技術、例えば免疫精選(immuno-panning)(例えば以下を参照されたい:Wysocki et al. Proc. Nati. Acad. Sci. USA Vol. 75, No. 6, pp. 2844-2848, June 1978)、磁気活性化細胞区分け(MACS)、フローサイトメトリー、蛍光活性化細胞区分け(FACS)、又は液滴対応微小流体技術(例えば以下を参照されたい:Mazutis et al., 2013, Nature Protocols 8, 870-891)を含むことができる。本発明の選別細胞は、選別の部分として、上記に開示の方法によって標的のタンパク質をその表面にディスプレイしない宿主細胞から分離及び単離されうる。例えば、FACSを用いて種々のバイアル又は容器に細胞を区分けすることができる。又はMACSを用いて、その表面に当該タンパク質をディスプレイする宿主細胞を分離できる。又は液滴対応微小流体技術を用いて、その表面に標的のタンパク質をディスプレイする本発明の宿主細胞を選別及び単離することができる。
【0054】
ある実施態様では、本発明の方法を用いて改変表現型のタンパク質をディスプレイする細胞を選別できる。したがって、本発明の方法による宿主細胞の選別を用いて、例えば改変された表現型の標的のタンパク質、又は改変された表現型の少なくとも1つの標的のタンパク質を発現する宿主細胞を選別できる。本発明の方法で用いられる“経変された表現型”という用語は、本発明の宿主細胞の表面でディスプレイされる標的のタンパク質又は少なくとも1つの標的のタンパク質の1つ以上の改変された特性を指す。
【0055】
ある実施態様にしたがえば、本発明の宿主細胞でディスプレイされる標的のタンパク質の改変された表現型は、表面発現レベル、タンパク質安定性、タンパク質折畳み、又は親和性の1つでありうる。したがって、例えば、本発明の方法を用いて、参照集団(当該タンパク質を発現しない)と比較して、量が増加した標的のタンパク質又は少なくとも1つの標的のタンパク質をディスプレイする宿主細胞を選別できる。例えば、本発明の方法を用いて、標的のタンパク質をより効率的に細胞の分泌路に誘導するシグナルペプチドをコードするポリヌクレオチドを保有する宿主細胞を選別するか、又は調節配列が改変されて(例えば変異して)標的のタンパク質の発現の増加をもたらすポリヌクレオチドを選別することができる。上記に開示した本発明の方法及び選別を、例えば少なくとも1回、又は2、3、4、5、6、7、8、9、若しくは10回繰り返して、量が増加した標的のタンパク質をディスプレイする宿主細胞を選別又は濃縮できることは当業者には明白であろう。続いて、選別された細胞を用いて、その中に含まれたポリヌクレオチドを単離し、その後で前記ポリヌクレオチドを配列決定に付すことができる。
DNA単離及び配列決定は、当業界で公知の標準的プロトコル(例えば文献(“Molecular Cloning”, 4th edition, CSHL Press)に開示されたもの)にしたがって実施できる。例えば、本発明の選別宿主細胞のポリヌクレオチド(例えばプラスミド)でも市販のキット(例えば、キアゲン(Qiagen)の“DNeasy Blood and Tissue”キット、又はMasterPure
TM 酵母DNA精製キット(Yeast DNA Purification Kit, Epicenter))を用いて実施できる。
【0056】
例えば、本発明の方法はまた、本発明の第二の標識の変異の影響を調べて、標的のタンパク質の非共有結合における1つの変異又は少なくとも1つ以上の変異の影響を評価するために利用することができる。例えば、標的のタンパク質の非共有結合における第二の標識内の非保存的アミノ酸交換の影響を調べることができる。例えば、標的のタンパク質の表面発現の低下は、参照サンプル(第二の標識は改造されていない)と比較して標的のタンパク質の本発明の第二の標識との結合の低下の結果でありうる。参照サンプルは、本発明の方法の手段によって、宿主細胞の表面に標的のタンパク質をディスプレイする、例えば少なくとも1つ、好ましくは少なくとも10、100、10
3、104、10
5、又は10
6の前記宿主細胞を、一切の操作の前に、例えば1つ以上のアミノ酸交換(保存的又は非保存的)、アミノ酸配列の付加(例えばN-結合グリコシル化シグナル)、又は例えば親和性成熟の前に含むことができる。したがって、参照サンプルは例えば、FACS選別のパラメーター(ゲート)で分けられず、分析されるべきサンプル内に含まれる宿主細胞を含むか、又は前記宿主細胞から構成されうる。
したがって、本発明の方法は、例えば、本発明の第二の標識の操作及び選別に、並びに標的のタンパク質との結合が増加した又は結合親和性が増加した第二の標識種の選別に用いることができる。好ましくは、本発明の方法は、例えば、標的のタンパク質との結合増加をディスプレイする本発明の第二の標識の選別に用いることができる。
【0057】
例えば、上記に開示した本発明の方法はまた、改変された表現型、それによれば改変された表現型がタンパク質の安定である標的のタンパク質又は少なくとも1つの標的のタンパク質をディスプレイする細胞の選別に用いられうる。本発明の方法では、“タンパク質安定性”という用語は、構造的関係で(すなわちタンパク質の構造的完全性に関して)、又は機能的関係で(すなわち時間を経てその機能及び/又は活性を維持するタンパク質の能力に関して)用いられる。したがって、本発明の方法を用いて、上記に開示のその表面でタンパク質安定性が増加又は低下した標的のタンパク質をディスプレイする上記に開示の宿主細胞を選別することができる。タンパク質安定性の増加又は低下は、例えば、標的のタンパク質のコンフォーメーション感受性エピトープを認識して特異的に結合する抗体によって決定できる。例えば、タンパク質安定性はまた、蛍光標識抗体の使用を介して、本発明の方法にしたがって宿主細胞の表面でディスプレイされる標的のタンパク質の定性的検出によって査定できる。例えば、上記に開示の1つ以上の発蛍光団に連結又は結合させることができる上記に開示の抗体を用いて宿主細胞表面の標的のタンパク質(POI)を検出できる。このようにして、宿主細胞を続いてFACS分析に付し、参照サンプルと比較して全体的な蛍光シグナルにおける変化を査定することができる。
【0058】
ある実施態様では、本発明の方法を用いて、改変表現型が親和性である宿主細胞を選別できる。例えば、本発明の方法を用いて、標的タンパク質又はエピトープに対する親和性が増加又は低下したPOI(例えば上記に開示の抗体又は抗体フラグメント)を選別できる。したがって、本発明の方法を用いて、例えばあるエピトープに対して親和性が増加した抗体を選別することができ、それによって、本発明の方法を繰り返してあるエピトープに対して親和性が増加した抗体を選別でき、したがって、抗体又は抗体フラグメント(例えば軽鎖及び/又は重鎖の相補性決定領域(CDR)、例えばCDR1、CDR2又はCDR3を含むフラグメント)をコードするプラスミドを用いることができる。すなわち、本発明の方法を上記に開示の抗体又は抗体フラグメントの親和性成熟で用いることができる。
【0059】
本発明の方法で用いられるように、“親和性成熟”という用語は、それによって高親和性の抗体が選別される、連続的な成熟と選別のプロセスを指すであろう。本発明の方法で用いられる“親和性”又は“結合親和性”という用語は結合相互作用の強度を含み、したがって見かけの結合親和性と同様に実際の結合親和性の両方を含む。実際の結合親和性は解離速度に対する結合速度の比である。したがって、結合親和性の付与又は最適化は、結合親和性の所望のレベルを達成するためにこれら成分のどちらか又は両方の改変を含む。例えば、見かけの親和性は相互作用のアビディティを含むことができる。二価の改変された可変領域結合フラグメントは、その結合価のために改変された又は最適化された結合親和性を示すことができる。
例えば、いわゆる“変種ライブラリー”もまた本発明の方法で用いることができ、例えば与えられたエピトープに対して所望の親和性を有するCDRをディスプレイし本発明の方法によって選別できる宿主細胞を選別することができる。変種ライブラリーは、典型的にはヒットライブラリーの変種プロフィールのコンビナトリアルな列挙に由来するin silicoのアミノ酸配列を含む。イン・ターンヒット変種ライブラリーは、機能的スクリーニングのために縮重オリゴヌクレオチドライブラリーによってin vitroで発現されるアミノ酸配列ライブラリーである。ヒット変種ライブラリーは、逆翻訳、最適化コドン使用頻度、ヌクレオチドレベルでの組換え及び生じたコンビナトリアル核酸ライブラリーの発現のために、他のヒット変種ライブラリーの配列空間を拡大する。
【0060】
ある実施態様では、上記に開示の本発明の方法をあるエピトープに対して親和性が増加した抗体の選別のために用いることができ、前記は、配列変種軽鎖CDR配列を含む変種ライブラリーを配列不変ポリヌクレオチドと組み合わせて用いることによって実施され、前記配列不変ポリヌクレオチドは、例えば配列不変V
H配列をコードする、例えば配列不変V
H CDR1、CDR2、CDR3及びFR(例えばFR1、FR2、FR3及びFR4)配列をコードする、例えば標的のタンパク質に対して予め決定した親和性のV
Hをコードする。例えば、V
L変種ライブラリーは、軽鎖CDR(例えばCDR1、CDR2、CDR3)のいずれか1つの配列変種を含むことができ、又はV
L変種ライブラリーは、フレーム配列(FR)が固定され、V
L CDR1、CDR2、CDR3をコードするポリヌクレオチドがその配列で可変であるV
L変種ライブラリーを含むことができる。例えば変種ライブラリーは、可変CDR1、CDR2及びCDR3ポリヌクレオチド配列を有するV
L FR1-CDR1−FR2-CDR2−FR3-CDR3-FR4をコードする。V
L FR1-CDR1−FR2-CDR2−FR3-CDR3-FR4をコードする変種ライブラリーはまた、例えばそのフレームワーク配列FR1、FR2、FR3若しくはFR4のいずれかの配列変種、又はCDR及びFR配列の両方の配列変種、例えばFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4の少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ若しくは5、6又は全ての配列変種でありうる。上記に開示したものに加えて本発明の方法で用いることができる配列ライブラリーは、例えば、PCR系技術、例えば以下に記載された技術によって作製されるライブラリーを含むことができ(Proc. Natl. Acad. Sci. USA Vol. 86, pp. 3833-3837, May 1989;Science (1989) 246(4935):1275-1281;又はNucleic Acids Research, 2005, Vol. 33, No. 9 e81)、それによって上記に記載の配列変種ライブラリーは適切な発現ベクターに含まれる。前記は、例えば酵母でV
L又はV
Hの発現に適切な発現ベクター、例えば本明細書に開示のもの、又は例えばpESC-LEU、pESC-leu2d、p4X3、p4X4、p4X5、p4X6、又は例えば下記文献(Yeast 1993 Dec;9(12):1309-18)に記載されたものである。例えば、本発明の方法を少なくとも1回、2回、3回、4回、5回又は6回適用して、標的のタンパク質(例えば所望の特性を有する抗体)を選別することができ、例えば、標的の抗原又はエピトープに対して所望の親和性のV
L及びV
H鎖を有する抗体をディスプレイする酵母細胞クローンを選別することができる。例えば、本発明の方法はまた、上記に開示の本発明の方法によってV
H CDR配列変種ライブラリーの使用を介して重鎖CDRの任意の1つの親和性成熟のために用いることができる。例えば、V
L鎖をコードする配列不変ポリヌクレオチドと組み合せたV
H FR1-CDR1−FR2-CDR2−FR3-CDR3-FR4配列変種ライブラリーを親和性成熟で用いることができる。V
H FR1-CDR1−FR2-CDR2−FR3-CDR3-FR4をコードする変種ライブラリーは、例えばそのフレームワーク配列FR1、FR2、FR3若しくはFR4のいずれかの配列変種、又はCDR及びFR配列の両方の配列変種、例えばFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4の少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ若しくは5、6又は全ての配列変種でありうる。
【0061】
ある実施態様では、本発明の方法の選別工程はさらに選別宿主細胞を参照サンプルと比較する工程を含む。したがって、本発明の方法の選別工程は、本発明の方法によって選別されたPOIの表現型を、非改変表現型のPOIをディスプレイする参照宿主細胞の同じ表現型と比較する工程を含む。例えば、上記に開示の宿主細胞の表面でディスプレイされる抗体又は抗体フラグメント(少なくとも1ラウンドの親和性成熟に付されている)の結合親和性を、例えば親和性成熟前の対応する抗体の親和性と比較することができる。他の例には、上記に開示の本発明の方法によって選別されてある宿主細胞の蛍光強度と、宿主細胞が本発明の方法によってまだ選別されていない参照サンプルとの比較が含まれうる。例えば、FACS分析を用いて、本発明の方法によって選別された宿主細胞を参照配列と比較することができる。或いは、例えば典型的なFACS分析では、FACS分析の選別基準セットに収まらない宿主細胞は参照サンプルとして役立ちうる。
ある実施態様にしたがえば、本発明の方法の工程(a)の少なくとも1つ以上のポリヌクレオチドによってコードされる標的のタンパク質は、上記に開示の少なくとも1つのFcドメイン又はFcドメインホモダイマーを含む。したがって本発明の標的のタンパク質は、例えば、上記に開示の少なくとも1つのFcドメイン、又は上記に開示の少なくとも2つのFcドメイン、又は例えば3、4、5若しくは6つのFcドメインを含むことができる。
【0062】
好ましい実施態様にしたがえば、本発明の標的のタンパク質のFcドメインは、ヒトIgG1、ヒトIgG2、ネズミIgG2a、ネズミIgG2b、若しくはネズミIgG3又は前記の配列変種の1つである。したがって、本発明のPOIは、少なくとも1つの、例えば1、2、3、4、5又は6つのヒトIgG1 Fcドメイン、又は例えばヒトIgG2 Fcドメイン、又はネズミIgG2a Fcドメイン、又はネズミIgG2b Fcドメイン、若しくはネズミIgG3 Fcドメイン、又は上記に開示のその配列変種を含むことができる。本発明のPOIのFcドメイン配列変種はさらに、上記に規定された1つ以上の保存的又は非保存的アミノ酸置換を含むことができ、前記置換は好ましくはFcドメインと本発明の第二の標識との結合を減少させない。ある特徴では、本発明の標的のタンパク質は、N-末端Fcドメイン融合タンパク質、C-末端Fcドメイン融合タンパク質又は抗体でありうる。好ましくは、本発明の方法の標的のタンパク質は上記に開示のモノクローナル抗体である。
好ましい実施態様にしたがえば、本発明の標的のタンパク質はモノクローナル抗体であり、前記は、ネズミモノクローナル抗体、マウス-ヒトキメラモノクローナル抗体、ヒト化モノクローナル抗体、又はヒトモノクローナル抗体でありうる。本発明の方法に関して又は本発明の方法のために用いられる“キメラ抗体”という用語には一価、二価又は多価免疫グロブリンが含まれる。一価キメラ抗体は、例えばジスルフィド架橋によりキメラL鎖と結合したキメラH鎖によって形成されるダイマー(HL)でありうる。又は、例えば二価キメラ抗体は、少なくとも1つのジスルフィド架橋により結合した2つのHLダイマーによって形成されるテトラマー(H2 L2)である。例えば、多価キメラ抗体はまた凝集するCH領域を利用することによって入手できる(例えばIgM H鎖から)。本発明のネズミ及びキメラ抗体、フラグメント並びに領域は個々の重鎖(H)及び/又は軽鎖(L)免疫グロブリン鎖を含むことができる。例えば、キメラH鎖は、標的のタンパク質に特異的な非ヒト抗体のH鎖から誘導される抗体結合領域を含むことができ、前記はヒトH鎖C領域(CH)の少なくとも一部分(例えばCH1又はCH2)に連結される。本発明のキメラL鎖は、標的のタンパク質に特異的な非ヒト抗体のL鎖から誘導される抗原結合領域を含み、前記はヒトL鎖C領域(CL)の少なくとも一部分に連結される。
【0063】
例えば、同じ又は異なる可変領域結合特異性のキメラH鎖及びL鎖を有する本発明の抗体、フラグメント又は誘導体はまた、公知の方法の工程にしたがって個々のポリペプチド鎖の適切な結合によって調製できる(例えば以下を参照されたい:Harlow and Lane, Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1988)。キメラ抗体は組換えDNA技術によって構築でき、それらは例えば以下の文献に記載されている:Shaw, et al., J. Immun., 138:4534, 1987;Sun, L. K, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 84:214-218, 1987;Waldmann, 1991, Science 252: 1657。
ある特徴では、標的のタンパク質はヒト化抗体であり、それによって用いられる“ヒト化抗体”という用語は、別の哺乳動物種(例えばマウス、ウサギ又はラット)の生殖細胞系列から誘導されたCDR配列がヒトフレームワーク配列に移植されてある抗体を含む。追加のフレームワーク領域の改造は、別の哺乳動物種の生殖細胞系列由来のCDR配列内と同様にヒトフレームワーク配列内でも実施できる。本発明のヒト化抗体は任意の抗体形(例えば上記に開示した抗体形)でありうる。いくつかの実施態様では、それらは完全な免疫グロブリン分子(完全長抗体)であり、IgG、IgA、IgD、IgE及びIgM、Fab、F(ab')
2、Fv、ミニボディ又はジアボディを含む。例えば、本発明の方法で用いることができるヒト化抗体はまた、トランスジェニック動物(ヒト生殖細胞系列の免疫グロブリン遺伝子を用いる)のB細胞から入手できる(例えば以下を参照されたい:Macdonald et al. (2014) Proc Natl Acad Sci U S A. Apr 8; 111(14):5147-52)。
【0064】
本発明の標的のタンパク質はまた例えばヒト抗体であることができ、それによって“ヒト抗体”という用語は、フレームワーク及びCDR領域の両方がヒト生殖細胞系列の免疫グロブリン配列から誘導される可変領域を有する抗体を含む。ヒト抗体が定常領域を含む場合、当該定常領域はまたヒト生殖細胞系列免疫グロブリン配列から誘導される。本発明のヒト抗体は、ヒト生殖細胞系列免疫グロブリンによってコードされないアミノ酸残基を含むことができる(例えば、in vitroランダム若しくは位置特異的変異誘導によって、又はin vivo体細胞変異によって導入される変異)。しかしながら、本発明で用いられる“ヒト抗体”という用語は、別の哺乳動物種(例えばマウス、ラット又はウサギ)の生殖細胞系列に由来するCDR配列がヒトフレームワーク配列に移植されてある抗体を含むことは意図されない。ヒト抗体又は前記をコードするポリヌクレオチドは、例えばマウス免疫系の代わりにヒト免疫系の部分を保持するトランスジェニックマウスから入手することができる。例えば、完全にヒトのモノクローナル抗体をコードするポリヌクレオチドを本発明の方法で用い、ヒト免疫グロブリン重鎖及び軽鎖遺伝子座の大部分についてトランスジェニックであるマウスを免疫することによって調製できる(例えばUS 6,150,584を参照されたい)。ヒト化抗体をコードするポリヌクレオチドは、例えば当業界で公知の標準的な方法によって入手することができる。
【0065】
ある実施態様にしたがえば、本発明の第二の標識は、ヒトIgG1、ヒトIgG2、ネズミIgG2a、ネズミIgG2b、又はネズミIgG3のFcドメインと特異的に結合する。本発明を通して及び本発明の第二の標識のために用いられる“特異的に結合する”及び“特異的結合”という用語は、一般的には、結合ドメイン(例えば本発明の第二の標識又は本明細書に開示の抗体)が種々のタンパク質、タンパク質フラグメント、ペプチド又は抗原の均質な混合物に存在する特定のタンパク質、タンパク質フラグメント、ポリペプチド、又は抗原と優先的に結合する能力を指す。典型的には、特異的な結合相互作用は、サンプル中の10
7、10
8、10
9、5x10
9又は10
10を超えるタンパク質、タンパク質フラグメント、ペプチド又は抗原で所望されるものと所望されないものを区別するであろう。例えば、特異的結合は、少なくとも約10
-7Mから少なくとも約10
-12M、又は例えば少なくとも1x10
-7M、2.5x10
-7M、5x10
7M、7.5x10
-7M、10
-8M、2.5x10
-8M、5x10
-8M、7.5x10
-8M、10
-9M、2.5x10
-9M、5x10
-9M、7.5x10
-9M、10
-10M、2.5x10
-10M、5x10
-10M、7.5x10
-10M、10
-11M、2.5x10
-11M、5x10
-11M、7.5x10
-11M、又は10
-12Mの結合親和性を含むことができる。例えば、第二の標識は、タンパク質A、タンパク質L、タンパク質G、タンパク質A−G融合物、タンパク質AのドメインE、D、A、B、又は前記のフラグメントを含むことができ、それらは、ヒトIgG1、ヒトIgG2、ネズミIgG2a、ネズミIgG2b、又はネズミIgG3のFcドメインと結合する。
【0066】
上記に開示のFcドメインと特異的に結合する上記に提供されたタンパク質に加えて、複数のタンパク質、例えば免疫グロブリン新抗原受容体(IgNAR)、Hcab、アンチカリン(例えば以下を参照されたい:Beste et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA Vol. 96, pp. 1898-1903, March 1999)、シスチンノットミニタンパク質/ノッチン(例えば以下を参照されたい:Kolmar, FEBS J. 2008 Jun;275(11):2684-90)、アフィボディ(例えば以下を参照されたい:Nord et al. Nat Biotechnol. 1997 Aug;15(8):772-7)、アプタマー、DARPin(例えば以下を参照されたい:Binz et al. (2003) J. Mol. Biol. 332, 489-503)又はアフィリン(例えば以下を参照されたい:Ebersbach et al., 2007, J. Mol. Biol. 372, 172-185)を本発明の方法で用いて、本明細書に規定の抗体、又は標的のタンパク質(Fcドメインを含んでいてもFcドメインを欠いていてもよい)と特異的に結合させることができる。
例えば、免疫グロブリン新抗原受容体(IgNAR)を第二の標識として用いることができ、例えば前記を本発明の第二の標識に含むことができる。IgNARは軟骨魚類(例えばサメ)に由来し、重鎖抗体である。IgNARは以下の点で他の抗体と顕著な構造的相違を示す:各鎖につき通常は3つに代わって5つの定常ドメイン(CH)、通常ではない位置にいくつかのジスルフィド結合を含み、相補性決定領域3(CDR3)は、他の抗体の軽鎖と結合する部位をカバーする伸長ループを形成する(例えば以下を参照されたい:Barelle et al., (2009) Adv Exp Med Biol. 655:49-62)。
例えば、本発明の方法で用いられる“Hcab”という用語は、ラクダ科の種(すなわち、カメルス・ドロメダリウス(Camelus dromedarius)、カメルス・バクトリアヌス(Camelus bactrianus)、ラマ・グラマ(Lama glama)、ラマ・グアノコ(Lama guanoco)、ラマ・アルパカ(Lama alpaca)及びラマ・ビクグナ(Lama vicugna))の抗体で見いだされる抗体を指し、前記はL鎖を欠く(例えば以下を参照されたい:Muyldermans et al., 2009, Veterinary Immunology and Immunopathology 128, 178-183)。HCAb内のH鎖は4つの代わりに3つの球状ドメインから構成され、2つの定常ドメインは古典的抗体のFcドメイン(CH2−CH3)と高度に相同である。古典的抗体のCH1ドメインに対応するドメインはHCAbでは失われている。したがって、古典的抗体の抗原結合フラグメント(Fab)はHCAbでは単一の可変ドメインに縮小される。VHHと称されるこの可変ドメインは順化されて、可変軽鎖(VL)ドメインの非存在下で抗原結合に機能的になる。
【0067】
好ましい実施態様では、本発明の第二の標識は、配列番号:1のアミノ酸配列及び/又は配列番号:2のアミノ酸配列を含む。したがって、本発明の第二の標識は、配列番号:1のアミノ酸配列、又は配列番号:2のアミノ酸配列、又は配列番号:1及び配列番号:2の両方のアミノ酸残基を含むことができる。本発明の第二の標識はまた、配列番号:1又は配列番号:2の各々若しくは両方の配列変種を含むことができる。例えば、配列変種は上記に規定した保存的及び非保存的アミノ酸置換を含むことができる。好ましくは、アミノ酸置換は第二の標識と標的のタンパク質との特異的結合の低下をもたらさない。例えば、結合親和性は、1x10
-7M、2.5x10
-7M、5x10
7M、7.5x10
-7M、10
-8M、2.5x10
-8M、5x10
-8Mを超えないはずである。配列番号:1、配列番号:2又は両方のアミノ酸配列を含む本発明の標識の配列変種は、配列番号:1及び/又は配列番号:2と少なくとも80%、85%、90%、95%若しくは98%、又は約92%から約98%、例えば92%、93%、94%、95%、96%、97%又は98%同一であり、したがって配列類似性は上記に記載したように計算することができる。配列類似性は、配列番号:1及び/又は配列番号:2のアミノ酸配列の全長にわたって計算することができるが、類似性はまた、配列番号:1及び/又は配列番号:2のアミノ酸配列の10−100アミノ酸、又は20−90アミノ酸、30−80アミノ酸、40−70アミノ酸、50−60アミノ酸の長さ、例えば約15−55アミノ酸の長さ、又は約25−115アミノ酸の長さ、又は約35−95アミノ酸の長さ、又は約45−85アミノ酸の長さ、又は約12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、32、34、35、36、37、38、39、40、42、46、48、51、54、56、57、59又は60アミノ酸の長さの任意の部分又は位置にわたって計算することができる。
好ましい実施態様にしたがえば、本発明の第二の標識は配列番号:3のアミノ酸配列を含む。したがって、本発明の第二の標識は、配列番号:4のシグナルペプチドが除去されてある配列番号:6のアミノ酸配列を含む。本発明の第二の標識はまた配列変種を含むことができ、前記は配列番号:3と少なくとも80%、85%、90%、又は98%同一であり、ここで%同一は、例えば配列番号:3の完全なアミノ酸配列にわたって、又は例えば上記に開示したように配列番号:3のアミノ酸配列の任意の部分及び長さにわたって上記に記載したように計算することができる。
【0068】
本発明のある特徴では、上記に開示の第二の標識、例えば配列番号:3の第二の標識はさらにまた改造されて、N-結合グリコシル化を指令する1つ以上のアミノ酸配列(グリコシル化コンセンサス配列)を含むことができる。例えば、本発明の第二の標識は改造されてアミノ酸配列N-x-S/Tを含むことができ、ここでxはプロリンを除く任意のアミノ酸でありうる。開示されるグリコシル化コンセンサス配列はアミノ末端又はカルボキシ末端に付加されるか、又は配列番号:3の本発明の第二の標識のアミノ酸配列中に埋め込まれ、したがってグリコシル化コンセンサス配列は、タンパク質ドメイン間、例えば配列番号:1及び配列番号:2の間に挿入されうる。グリコシル化コンセンサス配列を本発明の第二の標識中に含むことは、宿主細胞での本発明の第二の標識の発現レベルの増加に有用であり、標的のタンパク質の共同発現であれ例えば適切な細胞による発現であれ、精製及び本方法におけるその後の使用のために本発明の標識の十分な量を得ることができる。本発明の第二の標識はまた、例えばその個々のドメインを分離させるアミノ酸配列(例えば“スペーサー”)(例えばWO 2014/101287に開示されているもの)を含むことができる。
【0069】
好ましい実施態様では、本発明の方法の単離及び/又は検出工程はさらに以下の工程を含む:
(i)宿主細胞を、検出できるように標識した抗体又は抗体フラグメントと接触させる工程であって、前記抗体又は抗体フラグメントが、ヒトIgG1、ヒトIgG2、ネズミIgG2a、ネズミIgG2b、若しくはネズミIgG3のFcドメイン又はその変種配列と特異的に結合する、前記工程;
(ii)当該宿主細胞を、第二の標識に結合された抗体と特異的に結合する抗原及び/又はエピトープと接触させる工程であって、前記抗原及び/又はエピトープが(i)で用いられた標識とは別個のさらに別の検出可能な標識と結合される、前記工程;
(iii)前記宿主細胞で(i)及び/又は(ii)の標識を検出する工程;
(iv)参照サンプルと比較して、(i)で用いられた標識、及び/又は(ii)で用いられた標識の改変量をディスプレイするか、及び/又は両標識の改変量をディスプレイする宿主細胞を選別する工程。
本発明の方法で用いられる“検出できる”又は“検出できるように”という用語は検出することができる分子又は粒子を指し、蛍光、化学発光、放射線が含まれ(ただしこれらに限定されない)、例えば蛍光標識には上記に開示したものが含まれる。
【0070】
例えば、上記に開示の本発明の方法の単離及び/又は検出工程はまた、前記宿主細胞を検出できるように標識した抗体又は抗体フラグメントと接触させることによって実施され、前記抗体又は抗体フラグメントは、ヒトIgG1、ヒトIgG2、ヒトIgG3、ヒトIgG4、ネズミIgG2a、ネズミIgG2b、若しくはネズミIgG3の軽鎖又はその変種配列、例えばヒトカッパ若しくはラムダ軽鎖、ネズミカッパ若しくはラムダ軽鎖、又は例えばヒトIgG1、ヒトIgG2、ネズミIgG2a、IgG2b若しくはIgG3のいずれかのIgG F(ab’)2フラグメントと特異的に結合する。例えば、ヒト軽鎖エピトープと特異的に結合する抗体には、例えば下記文献(Clin Immunol Immunopathol. 1991 Apr;59(1):139-55)に記載されたものが含まれる。例えば、本発明の方法の単離及び/又は検出工程は以下の工程を含むことができる:
(i)宿主細胞を、検出できるように標識した抗体又は抗体フラグメントと接触させる工程であって、前記抗体又は抗体フラグメントは、ヒトIgG1、ヒトIgG2、ネズミIgG2a、ネズミIgG2b、若しくはネズミIgG3の軽鎖(例えばヒトカッパ又はラムダ軽鎖)又はその変種配列と特異的に結合する、前記工程;
(ii)当該宿主細胞を、第二の標識に結合された抗体と特異的に結合する抗原及び/又はエピトープと接触させる工程であって、前記抗原及び/又はエピトープが(i)で用いられた標識とは別個のさらに別の検出可能な標識と結合される、前記工程;
(iii)前記宿主細胞で(i)及び/又は(ii)の標識を検出する工程;
(iv)参照サンプルと比較して、(i)で用いられた標識、及び/又は(ii)で用いられた標識の改変量をディスプレイするか、及び/又は両標識の改変量をディスプレイする宿主細胞を選別する工程。
好ましい実施態様にしたがえば、本発明の方法の工程(i)及び(ii)で用いられた標識の検出及び/又は選別、並びに工程(iv)の宿主細胞の選別は、上記に開示のフローサイトメトリー及び/又はFACS及び/又はミクロ流体技術を含む。
【0071】
ある実施態様では、上記に開示の本発明の方法は繰り返すことができる。例えば、上記に開示の本発明の方法の使用により選別された宿主細胞を、上記開示の本発明の方法によって例えば少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10ラウンドの選別に付すことができる。本発明の方法によって選別された宿主細胞はまた、例えばそれらからポリヌクレオチドを単離するために、及び単離ヌクレオチドを例えば配列決定、PCR増幅、PCR系変異誘導に付すために利用することができる。
本発明の関係で用いられるPCR増幅は、それによって任意の標的DNA配列を選択的に増幅することができる方法を指す。当該方法は、フォワード及びリバース配列特異的プローブ対を用い、前記プローブは、標的DNA配列にフランキングする領域に特異的であり、標的DNAの反対の鎖とハイブリダイズしさらに増幅されるべき配列の境界の範囲を明示する。特異的に設計されたオリゴヌクレオチドは、熱安定性DNAポリメラーゼ(例えばテルムス・アクアチクス(Thermus aquaticus、(Taq)ポリメラーゼ、又はテルモコッカス・リトラリス(Thermococcus litoralis)ポリメラーゼ(Vent
TM, New England Biolabs)、又はTthIポリメラーゼ(Perkin-Elmer))によって触媒される多重連続DNA合成ラウンドを開始させる。各合成ラウンドは典型的には融解及び再アニーリング工程によって分けられ、与えられたDNA配列の数百倍の1時間未満での増幅を可能にする。PCR増幅の方法は、当業界では文献に記述されている(例えば以下を参照されたい:PCR Technology: Principles and Applications for DNA Amplification ed. HA Erlich, Stockton Press, New York, N.Y., 1989;PCR Protocols: A Guide to Methods and Applications, eds. Innis, Gelfland, Snisky, and White, Academic Press, San Diego, Calif., 1990;Mattila et al., 1991, Nucleic Acids Res. 19: 4967)。PCRはまた、例えばPOIが抗体であるか、又は抗体フレームワークに融合又は連結されたある抗体の抗体フラグメント(例えばCDR1、CDR2又はCDR3)である場合、当該POIの親和性成熟のために本発明で用いることができる(例えば以下を参照されたい:Gram et al, Proc Natl Acad Sci U S A. 1992 Apr 15;89(8):3576-80)。
【0072】
ある実施態様では、本発明の方法の宿主細胞は酵母細胞であり、かつ本発明の方法の工程(a)はさらに少なくとも第一及び第二の酵母細胞の接合を含み、それによって前記第一及び第二の宿主細胞は異なるポリヌクレオチドを含み、そのうちの少なくとも1つはFcドメイン含有融合タンパク質をコードし、かつ前記第一及び第二の宿主細胞の前記ポリヌクレオチドは少なくとも1つの別個の選別可能なマーカーを含む。本発明の方法の酵母細胞の接合は、当業界の標準的プロトコルにしたがって、例えば以下の文献に開示されたように実施できる:Weaver-Feldhaus et al., 2004, FEBS Letters 564, 24-34;又はBaek et al., J. Microbiol. Biotechnol., 2014, 24(3), 408-420。したがって、本発明の方法のある特徴では、第一の酵母細胞の1つの細胞又は複数の細胞は重鎖ライブラリーを保有することができ、第二の宿主細胞は軽鎖ライブラリーを保有することができ、それによって両宿主細胞又は重鎖及び軽鎖のポリヌクレオチドは別個の選別可能マーカーを含む。
【0073】
例えば、本発明の方法の酵母細胞の接合は以下のように実施できる:重鎖ライブラリーを構築してJAR300酵母細胞でディスプレイすることができる(前記酵母細胞は以下の栄養要求性マーカーを有する:ura3-52、trp1、leu2N200、his3N200、pep4:HIS3、prbd1.6R、can1、及びGAL)。前記株はBJ5465から誘導されたEBY100を土台とし、MATaである。KanMU4遺伝子(G418に対する耐性を付与する)を、例えばポリメラーゼ連鎖反応(PCR)生成物の相同組換えにより挿入することができる(前記生成物は45bpのURA3遺伝子によってフランキングされるKanMU4遺伝子をコードする)。軽鎖Fabは例えばYVH10細胞で発現でき、前記は(Ura3、Trp3、BJ5464、MAT-アルファ)である。接合条件は例えば以下のとおりでありうる:YVH10/pPNL30-LC(MATK株)及びJAR300/pPNL20-HC(MAT“a”株)の新しい培養を選別可能培地、例えばSDCAA+トリプトファン又はSDCAA+ウラシルで増殖させることができる。各培養の1 OD600/mL(2U107酵母)を例えば一緒に混合し、ペレットにし、200 WI YPDに再懸濁した後、予め30℃に温めたYPDプレートの中央に置くことができる(その後の拡散は実施しない)。続いてプレートを、例えば30℃で約4−6時間インキュベートすることができる。続いて、酵母のスポットをSDCAA培地に再懸濁させることができる。10%の二倍体形成を基準に適切な希釈をプレートすることができ、SDCAA寒天プレートにプレートするか、又はSDCAA液体培地で撹拌しながら30℃で増殖させることができる。増殖開始のOD600の読みは例えば好ましくは0.1 OD600/mLより低く、二倍体の増殖が増殖しない一倍体を打ち負かすことを可能にする。Fabライブラリーの作製のためには、より多数の酵母を用いることができ、したがって体積は調整することができる。
【0074】
ある実施態様では、本発明は単離された配列番号:5の核酸を提供する。本発明の核酸に用いられる“単離された”という用語は、本質的に他の核酸が存在しない、例えば少なくとも約20%純粋、好ましくは少なくとも約40%純粋、より好ましくは少なくとも約60%純粋、さらに好ましくは少なくとも約80%純粋、もっとも好ましくは少なくとも約90%純粋である核酸配列を指す(例えばアガロースゲル電気泳動によって、又は例えばOD
260/OD
280比を測定することによって決定される)。単離核酸配列は、当該核酸配列の天然の場所から異なる部位(そこで当該核酸が複製されるであろう)に移すために遺伝子操作で用いられる標準的なクローニング手順によって入手できる。クローニング手順は、例えばポリペプチドをコードする核酸配列を含む所望の核酸フラグメントの切り出し及び単離、当該フラグメントのベクター分子又はプラスミド(前記は本明細書では集合的に“構築物”、“プラスミド”又は“ベクター”と称することができる)への挿入、及び宿主細胞(ここで当該核酸配列の多数のコピー又はクローンが複製されるであろう)への当該組換えベクターの取り込みを含むことができる。核酸配列は、ゲノム起原、cDNA、RNA、半合成起原若しくは合成起原、又は前記の任意の組み合わせでありうる。
【0075】
当該用語は例えば以下をカバーする:(a)天然に存在するゲノム分子の部分の配列を有するDNAであって、前記DNAが天然に存在する種のゲノムで当該分子の当該部分にフランキングするコード配列の少なくとも1つによってフランキングされていない前記DNA;(b)ある核酸がベクターに又は原核細胞若しくは真核細胞のゲノム核酸に、得られた分子がいずれのベクター又は天然に存在するゲノムDNAとも同一ではない態様で取り込まれている前記核酸;(c)ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、リガーゼ連鎖反応(LCR)又は化学合成によって分離した分子(例えばcDNA、ゲノムフラグメント、フラグメント)、又は制限フラグメント;(d)ハイブリッド遺伝子(すなわち融合タンパク質をコードする遺伝子)の部分である組換えヌクレオチド配列;及び(e)天然には存在しないハイブリッド配列の部分である組換えヌクレオチド配列。本発明で用いられる“核酸”という用語はさらに改造又は誘導ヌクレオチド及びヌクレオシドを含み、前記には、例えばハロゲン化ヌクレオチド(例えば5-ブロモウラシルであるがただしこれだけではない)及び誘導ヌクレオチド(例えばビオチン標識ヌクレオチド)が含まれるが、ただしこれらに限定されない。
【0076】
ある特徴では、本発明はまた、ストリンジェントな条件下で配列番号:4の核酸分子とハイブリダイズする単離核酸分子を提供する。本発明の任意の単離核酸について用いられる“ストリンジェントな条件”という用語は当業界で公知なパラメーターを指す。例えば、本明細書で用いられるストリンジェントな条件は、3.5xSSC、1xデンハルト溶液、25mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.0)、0.5% SDS及び2mM EDTA中にて65℃で18時間のハイブリダイゼーションを指す。この後、2xSSC、0.1% SDS中にて65℃で20分のフィルター洗浄4回、さらに0.3xSSC、0.1% SDS中にて20分までの洗浄1回が続く。用いることができ、同程度のストリンジェンシーをもたらす他の条件、試薬などが存在する。
ある実施態様では、本発明は、配列番号:5の核酸によってコードされる単離タンパク質を提供する(前記配列では配列番号:4のアミノ酸配列が)。したがって、本発明によって提供されるタンパク質は配列番号:3のアミノ酸配列を含む。本発明のタンパク質に用いられる“単離タンパク質”という用語は、本質的に他の細胞成分(例えば脂質、DNA、RNA及び細胞タンパク質)が存在しないタンパク質を指す。したがって、本発明のタンパク質は、前記が少なくとも60%、又は少なくとも70%、又は少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、95%純粋ならば、本質的に細胞成分が存在しないと言われる。例えば、単離タンパク質という用語はまた、適切な宿主細胞での単離核酸の発現によって生成されるタンパク質を指すことができる。
ある実施態様では、本発明は、配列番号:5の核酸配列、又はストリンジェントな条件下で配列番号:5の核酸配列とハイブリダイズする核酸を含む少なくとも1つの核酸分子を含む宿主細胞を提供する。したがって、本発明は上記に開示の宿主細胞を提供し、前記細胞は配列番号:5の核酸配列を含む少なくとも1つの核酸分子を含む。例えば、本発明の宿主細胞は、当該宿主細胞で配列番号:5のヌクレオチド配列を発現させるために適切なベクター又はプラスミドを含むことができる。配列番号:5の本発明の核酸の発現を指令するために用いられる的確な発現ベクターは宿主細胞に左右されうるが、しかしながら、例えばpCMV、pcDNA、p4X3、p4X4、p4X5、p4X6、pVL1392、pVL1393、pACYC177、PRS420が含まれ、ウイルスを土台とするベクター系の場合はpBABEpuro、pWPXL、pXP-由来ベクターが用いられうる。
【0077】
ある実施態様では、本発明は、以下の工程によって、ある核酸分子を含む宿主細胞(前記は例えば配列番号:5の核酸配列を含むことができる)の培養によりタンパク質を生成する方法を提供する:タンパク質発現に十分な条件下で前記宿主細胞を培養する工程、配列番号:5の核酸配列によってコードされるタンパク質を発現させる工程、及び配列番号:5によってコードされるタンパク質を精製する工程。例えば、上記に開示の方法は配列番号:5を含む核酸分子の導入に利用することができ、当業界で公知の任意の技術(例えばリポフェクション、エレクトロポレーション、リン酸カルシウムによるトランスフェクション、ウイルスによる形質導入)によって実施できる。続いて、タンパク質発現に十分な条件下で細胞を増殖させることができる。例えば、配列番号:3を含む少なくとも1つの核酸分子を含む哺乳動物細胞を、10%のFBSを含むDMEMで増殖させることができる。前記細胞は10%のCO
2下において37℃で、例えば無タンパク質培地でインキュベートされてその後の単離及び精製を促進するか、又は、例えばグレースの昆虫培地、express Five(商標)SFM(Life Technologies)、又はHigh Five(商標)培地(Life Technologies)、YNM培地、YPDブロス、又は例えばPichiaPink(Life technologies)でインキュベートされた。
【0078】
細胞は、例えば12−408時間、例えばプレート後約12から約400時間、例えば14時間、16時間、18時間、20時間、24時間、36時間、48時間、72時間、96時間から約120時間、144時間、168時間、192時間、216時間、240時間、264時間、288時間、312時間、336時間、360時間、384時間、408時間増殖させることができる。その後で、本発明の配列番号:5を含む核酸によってコードされたタンパク質を単離及び精製できる。例えば、本発明のタンパク質は、クロマトグラフィー(例えばイオン交換クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー)、硫安沈殿、又は限外ろ過によって精製及び単離できる。
本発明の好ましい実施態様では、精製タンパク質は配列番号:3のアミノ酸を含む。したがって、本発明の精製タンパク質はシグナル配列を欠き、例えば配列番号:4のアミノ酸配列が除去されたペプチド配列である。
【0079】
本発明の好ましい実施態様にしたがえば、単離及び精製されたタンパク質はマルチマーである。例えば単離及び精製されたタンパク質は少なくとも2つ又は4つのサブユニットを含み、その各々は配列番号:3のタンパク質を含む。好ましくは、本発明の単離及び精製されたタンパク質はテトラマーである。
本発明のある実施態様では、上記に開示の単離及び精製されたタンパク質は上記に開示の本発明の方法で用いることができる。例えば、本発明の単離及び精製されたタンパク質は、上記に開示のFc含有タンパク質を非共有結合で表面ディスプレイする本発明の方法の第二の標識として用いることができる。例えば、本発明のタンパク質を、モノクローナル抗体の表面ディスプレイ、又は例えばFcドメイン含有抗体フラグメントの表面ディスプレイに用いて、例えば所望の表現型(例えば与えられたエピトープ又は抗原に対する親和性の増加)を有する抗体又は抗体フラグメントを選別することができる。
ある実施態様では、本発明は複数の部分を有するキットを提供し、前記キットは、上記に開示の第一の標識、上記に開示の配列番号:3のアミノ酸配列を含む単離タンパク質、又は上記に開示の配列番号:5のヌクレオチド配列を含む核酸分子、及び上記に開示の宿主細胞を含む。
【0080】
本発明の複数の部分のキットに含まれる核酸分子及び/又はタンパク質は凍結乾燥形で提供される。本発明のある特徴では、第一の標識及び第二の標識は別々のバイアル又は包装で提供されうる。本発明の複数の部分のキットはさらに、本方法及びその中に含まれる物質の使用についての指示を含むことができる。
本発明は、本明細書に記載された個別の方法論、プロトコル及び試薬に限定されないことは理解されよう(なぜならばそれらは変動しうるからである)。本明細書で用いられる用語は個別の実施態様を記載することのみを目的とし、本発明の範囲を限定しようとするものでないこともまた理解されよう(本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ制限される)。特段の規定がなければ、本明細書で用いられる全ての技術用語及び学術用語は、当業者が通常理解する意味と同じ意味を有する。
【0081】
[実施例1]
実施例1:ストレプトアビジン-ZZ(SA-ZZ)の作出及び調製
ストレプトアビジン及び黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)タンパク質A由来ZZドメインのキメラ構築物のDNA配列をGeneArt(商標)(Life Technologies)で合成し、PAC選別マーカーを含むpCMV系ベクターでクローニングした。合成配列は、ヒト成長ホルモンシグナルペプチド、ストレプトアビジン遺伝子、GS-リンカー及びZ-ドメインの2つのコピーを含む。
このプラスミドをCHO-S細胞にトランスフェクトして当該タンパク質を生成した。続いて、IgGと結合させたNHS-活性化セファロース(当該タンパク質の主要アミノ基を介する)を用いるアフィニティークロマトグラフィー及びサイズ排除クロマトグラフィー(HiLoad Superdex 2000カラム(GE Healthcare))によって、上清から前記タンパク質を精製した。
安定な細胞を選別してSA-ZZの生成に用いた。分泌された粗物質をIgGと結合させたNHS-活性化セファロース(当該タンパク質の主要アミノ基を介する)で精製した(DI-17E6)。
クーマシーブルーゲル分析は、予想されたサイズ(31kD)を有するモノマーに関して見かけの分子量91kDを示した(
図1)。オクテット分析は、SAとビオチン化標的及びZZと抗体の両方の結合を示した(
図2)。ウェスタンブロット分析もまた、SA-ZZ融合タンパク質がIgG及びビオチン化タンパク質の両方と結合することを示した(
図1)。
【0082】
[実施例2]
プラスミド
酵母の形質転換に用いたベクターはいずれも、Invitrogenから市場で入手できるpYD1プラスミド骨格を土台にした(酵母ディスプレイベクターキット、バージョンD、#V835-01)。各ベクターの構築はS.セレビシアエの同種組換え機構を用いて実施した。その目的のための抗体遺伝子は、両サイドに相同配列の40から50bpの伸長を導入するHPLC精製プライマーとともにPhusion(商標)ハイフェデリティDNAポリメラーゼ(New England Biolabs)を用いて増幅された。酵母中の重鎖及び軽鎖プラスミドの選別を可能にするために、軽鎖プラスミドはLeu栄養要求マーカーを含み、重鎖プラスミドはTrpマーカーをコードした。ディスプレイされるべき各抗体(マツズマブ、アダリムマブ、抗cMet-B10、トラスツズマブ)のVH及びVL領域を対応するプラスミドでクローニングした(前記プラスミドは既にシグナル配列及びIgG1 CH1-Fc領域(pYD-mcs-CH1-Fc)又はラムダ/カッパ定常領域を含んでいた)。可溶性抗体分泌は、抗体遺伝子の5’をインフレームクローニングしたαMFpp8シグナル配列を用いて誘導された。抗体遺伝子の発現は、ガラクトース誘導Gal1プロモーターによって駆動された。
【0083】
[実施例3]
CDR-H3ライブラリー作出
社内で選別したヒトcMet特異的ファージディスプレイ由来抗体のVH領域を含むCDR-H3変異ライブラリーをGeneArt(商標)(Life Technologies)に注文して入手した。30ヌクレオチドDNAストレッチを含むライブラリー内で、ドーピング混合物を選択して、CDR-H3親型の各アミノ酸を頻度60−70%で維持しさらにシステイン及びメチオニン残基と同様に終止コドンの導入を回避した。合成dsDNA構築物をPCR増幅の鋳型として用いた。PCRの最中に、酵母のギャップ修復クローニングのための両サイドへの45bp伸長が達成された。Phusion(商標)ハイフェデリティDNAポリメラーゼ(New England Biolabs)を製造業者のプロトコルにしたがって用いて、96反応を実施した。各反応について、総体積50μLで50ngの予め増幅した鋳型DNAを用いた。PCR完了後に反応物を一緒にし、Wizard(商標)SVゲル及びPCRクリーンアップシステム(Promega)を用いて精製し、当該配列のアクセプタープラスミド5’及び3’への相同配列アタッチメントを保持する、最終量102μgのライブラリーDNAを得た。ライブラリーのシグナルペプチド及びヒトCH1-Fc領域(すでにプラスミド骨格に含まれている)とのインフレームクローニングを可能にするために、以下のプライマーを増幅に用いた:上側プライマー、5’-CTATTGCCAGCATTGCTGCTAAAGAAGAAGGGGTACAACTCGATAAAAGAG AAGTGCAGCTGGTGCAGTCTG-3’;下側プライマー、5’-CTCTTGGAGGAGGGTGCCAGGGGGAA GACCGATGGGCCCTTGGTGGAGGCTGAGGAGACGGTGACCAGGG-3’。ギャップ修復クローニングのために、制限酵素BamHI及びEcoRIを用いてpYD-mcs-CH1-Fcを線状化し、Wizard(商標)SVゲル及びPCRクリーンアップシステム(Promega)を用いて精製した。EBY100細胞でのギャップ修復クローニングによるライブラリー作出は、Benatuilと共同研究者らが確立したプロトコルにしたがって実施した
33。10回のエレクトロポレーションを4μgの線状化ベクター及び10μgのPCR生成物を用いて実施した。ライブラリーサイズはプレート希釈によって推定し、1.5x10
9形質転換体が明らかになった。
【0084】
[実施例4]
抗体捕捉のための細胞表面官能化
抗体捕捉のために、ストレプトアビジン及びZZドメインから成る融合タンパク質(SA-ZZ、実施例1参照)を構築し、安定的にトランスフェクトされたCHO-S細胞から精製した。融合物が、抗体結合能を維持している間に細胞表面に捕捉されうるか否かを精査するために、市販のビオチン試薬(ビオチン-PEG-SCM 3.4 kDa(Creative PEGWorks))を用いて細胞表面をビオチン化し、続いて組換えSA-ZZ融合タンパク質を添加した。
最初に、細胞表面の十分な標識のためのビオチン試薬及びSA-ZZの量を検査した。その目的のために、1x10
7細胞につき1−6mgのビオチン-PEG-SCM 3.4 kDaを用いてBJ5464 S.セレビシアエをビオチン化した。表面標識の程度を分析するために、細胞をストレプトアビジン-Dylight633とともにインキュベートし、蛍光をフローサイトメトリーで検出した。試薬の量が増すにつれ、蛍光シグナルは持続的に強化した(
図4A)。1mgのビオチン試薬で標識した細胞は、陰性コントロールと比較して蛍光が約1桁の増加を既に示したので、その後のSA-ZZ固定化のためには1mgの試薬を選択し、細胞表面への高濃度の抗体充填時に生じうる抗原結合におけるアビディティ効果を回避した。種々の量のSA-ZZ(2μg、3μg、4μg)をビオチン化細胞とのインキュベーションに用い、細胞表面をIgG-捕捉ドメインで官能化した。官能化細胞をタンパク質A特異的FITC結合ヤギ抗体(ab7244(abcam))とインキュベートし、固定化細胞表面のフローサイトメトリーを可能にする。SA-ZZの量の増加は蛍光シグナルの強化をもたらし(
図4B)、固定された捕捉ドメインのより高い細胞密度によって引き起こされた。陰性コントロールと比較して完全に異なる蛍光シフトが検査された全てのSA-ZZについて検出された。
【0085】
[実施例5]
IgG捕捉
官能化細胞がなお可溶性の高品質抗体を分泌する能力を調べた。3つの異なるモノクローナル抗体をコードする重鎖及び軽鎖プラスミドでBJ5464細胞を形質転換した。これらの抗体は、マツズマブ(K
D 113nM)、アダリムマブ(K
D 30pM)及び抗cMet-B10(K
D 40nMで分析)であった(表1参照)。IgG捕捉の分析は、フローサイトメトリーによるIgGディスプレイの検出のために、表1に列挙した蛍光標識抗原及び抗Fc特異的AlexaFluor647-結合F(ab’)
2フラグメント(109-606-008(Jackson ImmunoResearch))又はヤギ抗Fc PE結合抗体(109-115-098(Jackson ImmunoResearch))とともに改造細胞をインキュベートすることによって実施した(
図5A−C)。陰性コントロールはIgGディスプレイの検出のためにのみ染色された(
図5D−F)。3つの被験二重染色サンプルは、抗Fcのみで標識された対応する陰性コントロールと比較して二重陽性蛍光によって指示されるように、抗体ディスプレイ及び抗原結合について陽性シグナルを示した。
IgG発現及びZZドメイン占有の更なる分析のために、マツズマブの重鎖及び軽鎖プラスミドを保持するBJ5464細胞を本発明の方法によって官能化させ、さらにガラクトース培地を用いて抗体発現を誘導した。ZZドメインによる細胞標識の後で、細胞を増殖させマツズマブを分泌させた。期待したように、細胞壁に共有結合したZZドメインの数は、固定後6及び20時間で減少した。これらおそらく、細胞増殖及び出芽とともに20℃の培地での長期インキュベーションにおける融合タンパク質の分解又は不活化による(
図6C−E)。固定化ZZドメインのマツズマブによる占有(
図6B)はヤギ抗Fc PE結合抗体を用いて同時にモニターされ、ZZドメインの場合と同様な標識パターンが示された(
図6I−J)。非占有ZZドメインは分泌マツズマブによって覆われない細胞表面に存在するか否かを精査するために、マツズマブ分泌の誘導後3時点で細胞を収集し、過剰のゴリムマブ抗体とインキュベートした。酵母細胞表面の非占有ZZドメインとゴリムマブの結合を対応する蛍光標識抗原、TNFαの添加によってモニターした。発現から6時間後、全ての官能化細胞は内因性マツズマブを捕捉し(
図4)、一方、外部から添加した抗体による細胞染色は弱く、20時間のインキュベーション後には完全になくなり(
図4H)、酵母細胞表面に存在するZZドメインは内因的に生成された抗体で完全に飽和されていることを示唆した。
【0086】
[実施例6]
酵母株、培地及び接合
抗体軽鎖を保有する酵母株は、アメリカ培養細胞系統保存機関(ATCC)から入手したS.セレビシアエBJ5464株であった。S.セレビシアエEBY100株は抗体重鎖を保有し、節減的重鎖ライブラリーの作出に用いた。この株は、pYD1酵母ディスプレイベクターキット(#V835-01(Life Technologies))の部分としてInvitrogenから入手した。全抗体及びライブラリーは、接合後に得られた二倍体細胞によって分泌された。
重鎖及び/又は軽鎖プラスミドを保有する酵母細胞の培養のために、全ての必須試薬(トリプトファン及び/又はロイシンを除く)を含む培地を、市販のドロップアウトミックス及び最小SDベースミックス(#630414、#630413、#630417及び#630411(Clontech))を用いて調製した。遺伝子発現の誘導は、以下と混合した同じドロップアウトミックスで実施した:最小SDベースGal/Raf(#630421(Clontech))、1M緩衝液(以下を含む:8.56g NaH
2PO
4及び5.4g Na
2HPO
4(pH 7.4))及び11% w/v PEG8000。酵母細胞接合のために用いた富栄養培地(YPD)は、20gグルコース、20gペプトン及び10g酵母抽出物(Merck KGaA)から調製した。凍結用媒体は、2%グリセロール及び0.67% Difco
TM酵母ニトロゲンベース(BD)を用いて調製した。
【0087】
接合
酵母の接合は、一倍体EBY100細胞(Mat a)のCDR-H3ライブラリーを一倍体BJ5464細胞(Mat α)の対応する軽鎖と合体させて重鎖及び軽鎖プラスミドを保有する二倍体細胞を得るために用いた。したがって、それぞれ重鎖又は軽鎖抗体のプラスミドを保持する酵母細胞をまず初めにそれらの対応する培地で別個に30℃及び250rpmで一晩培養した。次の日、各株の1x10
8細胞を50μLのYPD培地に再懸濁し、予め温めたYPDプレートの中央に滴下し、このプレートをその後30℃で一晩培養した。続いて薄い細胞層を10mLのYPD培地で洗い落とした。接合プロセス効率を計算するために、細胞懸濁物のOD
600を測定し、希釈プレートを調製した。細胞懸濁物を500mLの二重選別培地で培養した。続いて2x10
9細胞を培養後24及び48時間で新しい培地に移した。その後、二倍体細胞を凍結用媒体に懸濁し、凍結バイアルに移して-80℃で保存した。
【0088】
[実施例7]
遺伝子型-表現型連結及びライブラリースクリーニング
遺伝子型-表現型連係が本発明の方法について存在することを立証するために、混合実験を実施した。EGFR結合マツズマブをディスプレイする細胞(
図5A)をトラスツズマブディスプレイ細胞と1:1,000,000比で混合し、通常の免疫ライブラリーサイズに似せた。SA-ZZを酵母細胞表面に固定し、この混合物を誘導培地に移して20時間インキュベートし、続いてEGFR-フィコエリトリン(EGFR-PE)結合物及び抗Fc AlexaFluor647-結合抗体で蛍光的に標識し、さらに連続4ラウンドの区分けに付した(
図5C−F)。区分け及び4ラウンド目再区分けの後で、EGFR結合細胞の単一細胞分析をフローサイトメトリーで実施した。10分析クローンのうち、9クローンがEGFR-PEとの結合をディスプレイし、濃縮の成功が確認された(データは示されていない)。
この結果に鼓舞されて、社内製ファージディスプレイライブラリーのスクリーニングキャンペーンから誘導したcMet特異的抗体の親和性成熟を実施した(K
D 40nM)。この目的のために、重鎖の可変ドメインのCDR-H3ループの節減的変異導入を実施し、ここで10残基全てをCys及びMet以外の19アミノ酸全てでランダム化し、約60−70%の頻度で各位置の元々のアミノ酸を維持した。S.セレビシアエEBY100株でライブラリーを構築し1.5x10
9の形質転換体を得た。ランダムに採取したクローンの配列分析は、CDR-H3の10残基内で平均3.4の置換があることを示した。一倍体ライブラリー細胞は、一倍体BJ5464(MAT-アルファ細胞で親抗体軽鎖を保持する)と接合効率15%で接合した。二倍体を二重選別培地での増殖能力によって選別し、SA-ZZで修飾した。分泌抗体を細胞表面で再捕捉し、抗Fc AlexaFluor647-結合F(ab’)
2及びPE-結合cMet抗体で標識して、二重染色細胞をFACSで単離した(
図6)。
より高い親和性を有する結合剤を得るために、3ラウンドの区分けの間にcMet濃度を250nMから15nMに連続的に減少させた。3回目の区分けの後で、酵母細胞のプラスミドDNAを単離し、大腸菌細胞の形質転換に用いた。得られた単一コロニーの重鎖プラスミドのVH領域を配列決定し、固有の配列を用いて親軽鎖プラスミドをもつ酵母細胞をエレクトロポレーションによって共同形質転換した。cMet結合に関して表現型分析を酵母細胞表面で実施した。100nMのcMet濃度では、ディスプレイ比を標準化したとき、親抗体と比較して1つの変種が抗原結合の蛍光シグナルのわずかな強化を示した(
図7)。
続いて、Expi293F
TM細胞での可溶性発現のために選別配列を哺乳動物ベクターでサブクローニングした。抗体発現及び精製に続いて、当該抗体変種の反応速度分析は、親抗体(
図7C)と比較してcMet(
図7D)に対して5倍の親和性改善を示した。この相違は主としてk
disの低下によって生じる。
【0089】
[実施例8]
細胞表面操作
3.4 kDaビオチン-PEG-SCM(Creative PEGWorks)を用いて酵母細胞をビオチン化した。前記ビオチン化を達成するために、1x10
7細胞を炭酸緩衝液(4.2% NaHCO
3及び0.034% Na
2CO
3(pH8))で2回洗浄し、最終量40μLの緩衝液(1−4mgの溶解ビオチン試薬を含む)に再懸濁した。続いて混合物を室温で15分間インキュベートした。細胞をペレットにし、さらに100mMグリシン含有PBS(1mL)で2回洗浄して遊離ビオチン-PEG-SCMを飽和させた。その後のビオチン化細胞の官能化は、PBS中のストレプトアビジン-ZZ融合物(0.76−1.52μM)とともに細胞を氷上でさらに15分間インキュベートすることによって実施された。最終工程で、当該細胞を1mLのPBSで1回洗浄した。
【0090】
[実施例9]
IgGディスプレイ、蛍光染色及びFACS
分泌されたIgG分子の酵母細胞での再捕捉及びディスプレイのために、ペトリ皿又は深底ウェルプレートを用いる静置培養(開始細胞濃度1x10
7細胞、20℃、20時間)で発現を実施した。表面ビオチンを特異的に標識するために、1x10
7ビオチン化細胞を20μL中の1.3μMストレプトアビジン-DyLight633結合物(Thermo Scientific/Pierce)とともに4℃で15分間、光の非存在下でインキュベートし、標識後PBSで1回洗浄した。表面固定ZZドメインの染色は、1x10
7細胞を20μL中の3.3μMのヤギ由来タンパク質A特異的FITC結合検出抗体(Abcam)とともに15分間4℃で光の非存在下にてインキュベートすることによって実施した。抗体とのインキュベーションに続いて、細胞をPBSで1回洗浄し、氷上で分析まで維持した。ディスプレイされた抗体の染色は、20μL中の0.5μMのAlexaFluor647-結合ヤギ抗-Fc F(ab’)
2-フラグメント又はPE-結合ヤギ抗Fc抗体(ともにJackson Immunoresearch)及び種々の濃度の対応する蛍光標識抗原(cMet又はEGFR(Merck Serono)及びTNFα(R&D Systems))を用いて実施された。抗原(cMet及びEGFR)の標識はLYNX迅速RPEキット(BioRad)を用いて実施した。TNFαの標識はDylight650 NHSエステル(Thermo Scientific)を用いて実施した。PE-結合抗原による染色のために、細胞を氷上及び光の非存在下で15分間インキュベートし、1mLのPBSで1回洗浄した。遊離の表面ZZドメインを標識する外部添加抗体ゴリムマブ(MSD)の濃度は、最大シグナル強度の決定のために実験前に滴定された。ゴリムマブ処理細胞をその後250nMのDyligt650-結合TNFαとともにインキュベートした。CDR-H3ライブラリーの選別は、Summit5.3を用いMoFlo XDP細胞分類装置(Beckman Coulter)で実施した。最初の選別で2x10
8細胞がプロセッシングされた。その後の2ラウンドの区分けの間に、残りの種々雑多なライブラリーは少なくとも100倍オーバーサンプリングされた。
【0091】
[実施例10]
サブクローニング、哺乳動物発現及びタンパク質精製
抗体遺伝子の哺乳動物発現プラスミドのサブクローニングを実施して、Expi293F
TM 細胞(Life Technologies)でのIgG分子の可溶性発現を可能にした。したがって、標的の遺伝子はアクセプタープラスミド(Lucigen)との相同性オーバーラップによりPCRによって増幅された。その後、One Shot(商標)TOP10化学的コンピテント大腸菌細胞(Life Technologies)を1μLのPCR生成物及び1μLのプラスミドとともに30分間インキュベートし、製造業者のプロトコルにしたがって形質転換させた。クローンの選別はLB-ampプレートで実施した。37℃で24時間のインキュベーションの後でコロニーを採取し、プラスミドDNAを単離し、配列決定のためにMWG Biotechに送付した。続いて的確なプラスミドDNAを用い、ExpiFectamine
TM 293トランスフェクションキット(Life Technologies)によりExpi293F
TM 細胞を製造業者のプロトコルにしたがってトランスフェクトした。細胞を37℃、180rpm及び5% CO
2で5日間インキュベートした。細胞懸濁物の遠心分離(1500xg、10分)によってIgGを含む上清を採集した。PROSEP(商標)-Aスピンカラム(Merck Millipore)を用いて上清から抗体を精製した。
【0092】
[実施例11]
結合の反応速度論
サブクローニングして精製したIgG分子の結合の反応速度をオクテットREDシステム(ForteBio, Pall Life Science)を用いて分析した。PBS中の2.5μg/mLの抗体を抗ヒトFC(AHC)バイオセンサー上で600秒間捕捉した。全ての測定はカイネティクス緩衝液(PBS pH7.4、0.1%(w/v)BSA、0.02% Tween(商標)20)で実施した。cMet(10nM、50nM、100nM)との結合を300秒間測定し、続いて600秒間解離させた。各抗体の1つのコントロールをカイネティクス緩衝液のみを用いて分析し、cMetとの相互作用から得られた全ての結合曲線から差し引いた。ForteBioデータ分析ソフト8.0を用い、処理した結合曲線をSavitzky-Golayフィルタリング後に1:1結合モデルを用いて評価した。
【0093】
[実施例12]
IgGディスプレイ酵母集団の標識
完全なIgGをディスプレイする酵母細胞(前記はそれら表面の軽鎖及び重鎖の集合によって酵母細胞の全プールで目立たせられる)を同定するために、酵母細胞を上記に記載したように非共有結合による表面ディスプレイのために誘導し(実施例9を参照)、PE-結合ヤギ抗ヒトラムダ又はカッパF(ab’)
2及びAlexa 647-結合抗原(ThermoFisher)で染色した。この実験で得られた結果は、抗原結合とIgGディスプレイレベルとの相関性を示している(
図11A)。2つの抗原(抗原A及び抗原B)にそれぞれ特異的な2つの別個の抗体を用いて軽鎖実験を実施した。
図11Bに示すように、得られた結果は、抗Fc抗体と抗軽鎖抗体による染色で類似している。驚くべきことに、抗軽鎖染色は相関性の改善を示した(
図11B)。
【0094】
[実施例13]
軽鎖標識及び選別によるクローン濃縮
軽鎖染色方法を利用するクローン濃縮のためのある実施例では本発明の酵母ディスプレイ系が用いられた(実施例12参照)。クローン濃縮のために、酵母細胞クローン(上記に開示の本発明の方法を利用してその表面にY抗原特異的抗体をディスプレイする(抗原Y特異的酵母ディスプレイクローン))を抗原Z特異的酵母ディスプレイクローンと1:1,000,000の比で混合した。Y抗原特異的抗体は、いくつかのアイソフォームが存在する標的のタンパク質(POI)に対抗する(当該アイソフォームの1つは抗原Xを含むが抗原Yは含まない)。したがって、Y抗原特異的抗体は、抗原Xを含むPOIアイソフォームを認識しないであろう。実施例1−6に記載した酵母操作手順にしたがい、10
8酵母細胞をスクリーニングし、3ラウンドの濃縮のために区分けし、その後のFACS区分けのためにPE結合ヤギ抗ヒトラムダF(ab’)
2(Southern Biotech)を用いてIgGディスプレイ集団を標識した。SONY SH800細胞分類装置を用いた3ラウンドの細胞区分け及び濃縮の後で、区分けされた細胞(すなわち
図11Bに示すゲートパラメーター内の細胞)を引き続き、Alexa 647-結合抗原X、抗原Y又は抗原Z(無関係タンパク質、陰性コントロール)とともに前記細胞をインキュベートすることによって分析した。Alexa 647-結合抗原Yに対する明瞭な結合特異性が選別細胞で認められ、選別プロセスの間に、的確な抗体クローンが元々の1:1,000,000比から首尾よく濃縮され、所望しないバックグラウンドクローンが首尾よく排除されることを示した(
図12)。
【0095】
[実施例14]
軽鎖シャッフリングによる親和性成熟
本発明の酵母ディスプレイ方法はまた軽鎖シャッフリング親和性成熟に利用できるという概念の証明として、軽鎖シャッフリングライブラリーを構築した(前記は親の抗抗原1クローン由来の重鎖とペアを形成していた)。3ラウンドの仕分け及び濃縮(上記の実施例に開示したように実施した)に続いて、高親和性の抗原結合酵母細胞が単離され(
図13A)、さらに酵母のプラスミドDNAが単離された。抗体配列を再フォーマットし、哺乳動物発現ベクターでサブクローニングして哺乳動物発現系で発現させ、続いてIgG抗体を精製し結合の反応速度を測定した(Biacore instrument(GE Healthcare or Octet, Pall Fortebio))。軽鎖シャッフリングスクリーニングから選別したこのクローンの結合親和性は、親クローンと比較して約5倍改善された(
図13B)。
【0096】
表1:本発明の方法によってBJ5464細胞でディスプレイされる抗体の抗原特異性及びKD値
次に、本発明の態様を示す。
1. 以下の工程を含む、宿主細胞表面でタンパク質をディスプレイする方法:
(a)宿主細胞に、前記宿主細胞の表面でディスプレイされるべき標的のタンパク質をコードする少なくとも1つ以上のポリヌクレオチドを導入する工程;
(b)前記宿主細胞の表面を第一の標識と接触させる工程;
(c)(b)の前記宿主細胞の表面を第二の標識と接触させ、それによって第二の標識が、特異的かつ非共有結合的に前記第一の標識及び前記少なくとも1つ以上のポリヌクレオチドによってコードされる前記標的のタンパク質と結合する工程;
(d)前記少なくとも1つ以上のポリヌクレオチドを、当該少なくとも1つ以上のポリヌクレオチドによってコードされる前記標的のタンパク質の分泌に十分な条件下で、前記宿主細胞で発現させる工程;
(e)工程(d)の前記宿主細胞を、前記第二の標識が非共有結合により結合した前記標的のタンパク質を特異的に検出する手段と接触させ、その表面で標的のタンパク質をディスプレイする宿主細胞を検出する工程。
2. 前記少なくとも1つ以上のポリヌクレオチドによってコーダされるタンパク質がモノマー又はマルチマーである、上記1に記載の方法。
3. 前記少なくとも1つ以上のポリヌクレオチドによってコードされるタンパク質がシグナルペプチドを含む、上記1又は2に記載の方法。
4. 前記第一の標識が前記宿主細胞の表面と共有結合により結合する、上記1−3のいずれか1項に記載の方法。
5. 前記第一の標識がビオチン又はビオチン誘導体である、上記1−4のいずれか1項に記載の方法。
6. 前記第二の標識がさらに別のタンパク質又はさらに別のポリペプチドである、上記1−5のいずれか1項に記載の方法。
7. 前記第二の標識のさらに別のタンパク質がマルチマータンパク質である、上記6に記載の方法。
8. 前記第二の標識が、タンパク質A、タンパク質L、タンパク質G、タンパク質A−G融合物、タンパク質AのドメインE、D、A、Bの1つであるか、又は前記を含み、アビジン、ストレプトアビジン、ニュートラビジン、又はその配列変種と融合される、上記1−7のいずれか1項に記載の方法。
9. 前記宿主細胞が哺乳動物、酵母又は昆虫細胞から選択される、上記1−8のいずれか1項に記載の方法。
10. 酵母宿主細胞が、サッカロミセス・セレビシアエ(Saccharomyces cerevisiae)、ハンセヌラ・ポリモルファ(Hansenula polymorpha)、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)、シュワンニオミセス・オクシデンタリス(Schwanniomyces occidentalis)、クルイベロミセスラクチス(Kluyveromyceslactis)、ヤロウイア・リポリチカ(Yarrowia lipolytica)及びピキア・パストリス(Pichia pastoris)を含む群から選択される、上記1−8のいずれか1項に記載の方法。
11. 哺乳動物宿主細胞が、HEK293、HEK293T、HEK293E、HEK 293F、NS0、per.C6、MCF-7、HeLa、Cos-1、Cos-7、PC-12、3T3、Vero、vero-76、PC3、U87、SAOS-2、LNCAP、DU145、A431、A549、B35、H1299、HUVEC、Jurkat、MDA-MB-231、MDA-MB-468、MDA-MB-435、Caco-2、CHO、CHO-K1、CHO-B11、CHO-DG44、BHK、AGE1.HN、Namalwa、WI-38、MRC-5、HepG2、L-929、RAB-9、SIRC、RK13、11B11、1D3、2.4G2、A-10、B-35、C-6、F4/80、IEC-18、L2、MH1C1、NRK、NRK-49F、NRK-52E、RMC、CV-1、BT、MDBK、CPAE、MDCK.1、MDCK.2、及びD-17を含む群から選択される、上記1−9のいずれか1項に記載の方法。
12. 昆虫細胞が、Hi5、Sf9、Sf21、S2及びBTI-TN-5B1-4を含む群から選択される、上記1−9のいずれか1項に記載の方法。
13. 前記標的のタンパク質を特異的に検出する手段が、抗体若しくは抗体フラグメント、量子ドット、酵素、発蛍光団、又はインターカレート染料及びガングリオシドを含む群から選択される、上記1−12のいずれか1項に記載の方法。
14. 前記タンパク質を特異的に検出する手段が、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、scFv-Fc、scFv、(Fab’)2、Fab、ミニボディ、ジアボディ、又はVHH抗体の1つであり、場合によってさらに別の標識と結合される、上記1−13のいずれか1項に記載の方法。
15. さらに宿主細胞を選別する工程を含む、上記1−14のいずれか1項に記載の方法。
16. 前記選別された宿主細胞が改変された表現型の標的のタンパク質をディスプレイする、上記15のいずれか1項に記載の方法。
17. 前記改変表現型が、表面発現レベル、タンパク質安定性、タンパク質の折り畳み又は親和性の1つである、上記16に記載の方法。
18. 前記改変された表現型が、工程(e)の前記宿主細胞を参照サンプルと比較することによって決定される、上記1−17のいずれか1項に記載の方法。
19. 工程(a)の少なくとも1つ以上のポリヌクレオチドによってコードされる標的のタンパク質が少なくとも1つのFcドメインホモダイマーを含む、上記1−18のいずれか1項に記載の方法。
20. 前記少なくとも1つのFcドメインホモダイマーが、ヒトIgG1、ヒトIgG2、ネズミIgG2a、ネズミIgG2b、若しくはネズミIgG3又は前記の配列変種の1つである、上記19に記載の方法。
21. 前記Fcドメイン含有タンパク質がN-末端Fcドメイン融合タンパク質、C-末端Fcドメイン融合タンパク質又は抗体である、上記19又は上記20に記載の方法。
22. 前記抗体がモノクローナル抗体である、上記21に記載の方法。
23. 前記モノクローナル抗体が、ネズミモノクローナル抗体、マウス-ヒトキメラモノクローナル抗体、ヒト化モノクローナル抗体、又はヒトモノクローナル抗体である、上記22に記載の方法。
24. 前記第二の標識が、ヒトIgG1、ヒトIgG2、ネズミIgG2a、ネズミIgG2b、又はネズミIgG3のFcドメインと特異的に結合する、上記1−23のいずれか1項に記載の方法。
25. 前記第二の標識の抗体結合の親和性が、少なくともKd=10-8M、2.5x10-8M、5x10-8M、7.5x10-8M、10-9M、5x10-9M、7.5x10-9M、10-10M、2.5x10-10M、5x10-10M、7.5x10-10M、10-11M、2.5x10-11M、5x10-11M、7.5x10-11M、又は10-12Mである、上記1−24のいずれか1項に記載の方法。
26. 前記第二の標識が配列番号:1のアミノ酸配列及び/又は配列番号:2のアミノ酸配列を含む、上記1−25のいずれか1項に記載の方法。
27. 前記第二の標識が配列番号:3のアミノ酸配列を含む、上記1−26のいずれか1項に記載の方法。
28. 工程(e)がさらに以下の工程を含む、上記1−27のいずれか1項に記載の方法:
(i)前記宿主細胞を、検出できるように標識された抗体又は抗体フラグメントと接触させる工程であって、前記抗体又は抗体フラグメントが、ヒトIgG1、ヒトIgG2、ネズミIgG2a、ネズミIgG2b、若しくはネズミIgG3のFcドメイン又はその変種配列と特異的に結合する、前記工程;
(ii)前記宿主細胞を、第二の標識を結合させた抗体と特異的に結合する抗原及び/又はエピトープと接触させる工程であって、前記抗原及び/又はエピトープが(i)で用いられた標識とは別個のさらに別の検出可能な標識と結合される、前記工程;
(iii)前記宿主細胞で(i)及び/又は(ii)の標識を検出する工程;
(iv)参照サンプルと比較して、(i)で用いられた標識、及び/又は(ii)で用いられた標識の改変量をディスプレイするか、及び/又は両標識の改変量をディスプレイする宿主細胞を選別する工程。
29. 工程(e)の検出できるように標識された抗体又は抗体フラグメントが、ヒト若しくはネズミのIgG1、ヒトIgG2、ネズミIgG2a、ネズミIgG2b、又はネズミIgG3のカッパ若しくはラムダ軽鎖、又は前記の配列変種と特異的に結合する、上記28に記載の方法。
30. (i)及び(ii)の標識及び/又は選別工程(iv)が、フローサイトメトリー及び/又はFACS及び/又はミクロ流体技術を含む、上記28又は上記29に記載の方法。
31. 工程(a)−(e)が繰り返される、上記1−30のいずれか1項に記載の方法。
32. 宿主細胞が酵母細胞であり、工程(a)がさらに少なくとも第一及び第二の酵母細胞の接合を含み、前記第一及び第二の宿主細胞が異なるポリヌクレオチドを含み、その少なくとも1つがFcドメイン含有融合タンパク質をコードし、かつ前記第一及び第二の宿主細胞の前記ポリヌクレオチドが少なくとも1つの選別可能な別個のマーカーを含む、上記1−31のいずれか1項に記載の方法。
33. 前記第一の酵母細胞が免疫グロブリン軽鎖をコードするポリヌクレオチドを含み、及び/又は前記第二の酵母細胞が免疫グロブリン重鎖をコードするポリヌクレオチドを含む、上記32に記載の方法。
34. 前記第一の酵母細胞が、免疫グロブリン軽鎖ライブラリーをコードするポリヌクレオチドを含み、前記第二の酵母細胞が、標的のタンパク質に対して予め決定された親和性の免疫グロブリン重鎖をコードするポリヌクレオチドを含む、上記33に記載の方法。
35. 配列番号:5のヌクレオチド配列を含む単離核酸分子。
36. 配列番号:5の核酸配列によってコードされる単離タンパク質であって、配列番号:4のアミノ酸が除去されている、前記単離タンパク質。
37. 上記35に記載の少なくとも1つの核酸分子を含む、宿主細胞。
38. 以下の工程を含む、タンパク質を生成するプロセス:
−上記37に記載の宿主細胞をタンパク質発現に十分な条件下でin vitro培養する工程;
−上記35に記載のポリヌクレオチドによってコードされるタンパク質を発現させる工程;
−前記タンパク質を単離及び精製する工程。
39. 前記単離タンパク質が配列番号:3のアミノ酸配列を含む、上記38に記載のプロセス。
40. 前記単離及び精製されたタンパク質がマルチマーである、上記38又は上記39に記載のプロセス。
41. 上記1−34のいずれか1項に記載の方法における、上記38−40のいずれか1項に記載のプロセスにしたがって入手できるタンパク質の使用。
42. 以下を含む、複数の部分のキット:
−上記1−34のいずれか1項に記載の第一の標識;
−上記36に記載の単離タンパク質、及び/又は上記38−40のいずれか1項に記載のプロセスで使用される配列番号:5のヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド;
−上記1−34のいずれか1項に記載のタンパク質ディスプレイの方法で使用される宿主細胞。
43. 前記宿主細胞が、サッカロミセス・セレビシアエ、ハンセヌラ・ポリモルファ、シゾサッカロミセス・ポンベ、シュワンニオミセス・オクシデンタリス、クルイベロミセスラクチス、ヤロウイア・リポリチカ、ピキア・パストリス、HEK293、HEK293T、HEK293E、HEK 293F、NS0、per.C6、MCF-7、HeLa、Cos-1、Cos-7、PC-12、3T3、Vero、vero-76、PC3、U87、SAOS-2、LNCAP、DU145、A431、A549、B35、H1299、HUVEC、Jurkat、MDA-MB-231、MDA-MB-468、MDA-MB-435、Caco-2、CHO、CHO-K1、CHO-B11、CHO-DG44、BHK、AGE1.HN、Namalwa、WI-38、MRC-5、HepG2、L-929、RAB-9、SIRC、RK13、11B11、1D3、2.4G2、A-10、B-35、C-6、F4/80、IEC-18、L2、MH1C1、NRK、NRK-49F、NRK-52E、RMC、CV-1、BT、MDBK、CPAE、MDCK.1、MDCK.2、D-17、Hi5、Sf9、Sf21、S2又はBTI-TN-5B1-4の1つである、上記42に記載の複数の部分のキット。
44. 上記36に記載の単離タンパク質及び/又は配列番号:5のヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドが凍結乾燥されている、上記42又は上記43に記載の複数の部分のキット。