【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成26年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、研究成果展開事業、研究成果最適展開支援プログラム(A−STEP)、産学共同促進ステージ ハイリスク挑戦タイプ、「液晶性有機トランジスタ材料の開発」産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【文献】
COLVIN, E. W. ET AL,A simple procedure for the elaboration of carbonyl compounds into homologous alkynes,Journal of the Chemical Society, Perkin transactions I,1977年,(8),869-874
【文献】
BEDRICH K. et al.,Synthesis and mesomorphic properties of liquid crystalline [1]benzothieno[3,2-b][1]benzothiophene derivatives,Liquid Crystals,2004年,Vol.31, No.10,pp.1367-1380
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0032】
(化合物)
本発明の化合物は、一般式(1)又は(4)で表されるように、ベンゾチエノベンゾチオフェン([1]ベンゾチエノ[3,2−b][1]ベンゾチオフェン。以下、BTBTと略す)環に置換基としてR
1及びR
2を有する化合物であり、当該置換基の少なくとも一方が、特定のアリーレンアセチレン構造からなる一般式(2)又は(3)で表される基であり、もう一方の置換基が、水素原子、メチル基、シアノ基、フルオロ基、トリフルオロメチル基から選ばれる基であることに特徴を有する。
【0034】
(式中、R
1が(I)の何れかの基であり、R
2が(II)の何れかの基から選ばれる基である。
(I)一般式(2)又は一般式(3)である基
【0037】
(Ar
1は炭素数2〜18のアルキル基を置換基として有する芳香族炭化水素基又は複素芳香族基であって、該芳香族炭化水素基又は複素芳香族基が単環式又は環数が2若しくは3の多環式である基、Ar
2は置換基を有してもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有してもよい複素芳香族基、R’は水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有してもよい芳香族炭化水素基又は複素芳香族基である。)
(II)水素原子、メチル基、シアノ基、フルオロ基、トリフルオロメチル基から選ばれる基である。)
【0038】
本発明の化合物は、BTBT環を含む主骨格がアセチレン部位を介して芳香環等と連結することで、溶媒溶解性が向上し、更にπ共役平面の拡張により移動度が向上する。
【0039】
又、一方の置換基を、水素原子、メチル基、シアノ基、フルオロ基、及びトリフルオロメチル基の如く、短くすることで、置換基間相互作用が単純化し、均質な半導体膜を提供することが可能となる。即ち、“インク液滴を滴下し、そのものを乾燥する”という簡便な湿式法であっても、高い移動度の有機半導体膜を与えることが可能となる。
【0040】
次に、本発明の化合物の置換基について説明する。
【0041】
本発明の一般式(1)で表される化合物の置換基R
2は、水素原子、メチル基、シアノ基、フルオロ基、トリフルオロメチル基から選ばれる基である。
【0042】
一方、本発明の一般式(1)で表せる化合物の置換基R
1は、一般式(2)又は(3)で表される置換基である。
【0045】
一般式(2)で表される置換基のAr
1は、炭素数2〜18のアルキル基を置換基として有する芳香族炭化水素基又は複素芳香族基であって、該芳香族炭化水素基又は複素芳香族基が単環式又は環数が2若しくは3の多環式である基であれば、特に制限はないが、例えば以下のものを挙げることができる。
【0046】
炭素数2〜18のアルキル基を置換基として有する芳香族炭化水素基の芳香族炭化水素基としては、フェニル基、ナフチル基、アズレニル基、アセナフチレニル基、アセナフテニル基、アントラセニル基、フェナントリル基、ナフタセニル基、フルオレニル基、ピレニル基、クリセニル基、ペリレニル基、ビフェニル基、p−ターフェニル基、クォーターフェニル基等の炭素数6〜24の単環又は多環式芳香族炭化水素基、等が挙げられる。
【0047】
炭素数2〜18のアルキル基を置換基として有する芳香族炭化水素基(Ar
1)の具体例としては、4−エチルフェニル基、4−n−プロピルフェニル基、4−イソプロピルフェニル基、4−n−ブチルフェニル基、4−n−ペンチルフェニル基、4−n−ヘキシルフェニル基、4−n−ヘプチルフェニル基、4−n−オクチルフェニル基、4−n−ノニルフェニル基、4−n−デシルフェニル基、9,9’−ジヘキシルフルオレニル基、等が挙げられるが、これらに限られるものではない。
【0048】
又、炭素数2〜18のアルキル基を置換基として有する複素芳香族基の複素芳香族基としては、ピロリル基、インドリル基、フリル基、チエニル基、ビチエニル基、ターチエニル基、クォーターチエニル基、チエノチエニル基、イミダゾリル基、ベンゾフリル基、トリアゾリル基、ベンゾトリアゾリル基、ベンゾチエニル基、ピラゾリル基、インドリジニル基、キノリニル基、イソキノリニル基、カルバゾリル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチオフェニル基、インドリニル基、チアゾリル基、ピリジル基、ピリミジニル基、ピラジニル基、ピリダジニル基、チアジアジニル基、オキサジアゾリル基、ベンゾキノリニル基、チアジアゾリル基、ピロロチアゾリル基、ピロロピリダジニル基、テトラゾリル基、オキサゾリル基、ビチエニル基、ターチエニル基、クォーターチエニル基等、5員環又は6員環の複素芳香族基や、該複素芳香族基に他の芳香族基が縮合するなどした多環式複素芳香族基、等が挙げられる。
【0049】
炭素数2〜18のアルキル基を置換基として有する複素芳香族基(Ar
1)の具体例としては、5−エチルチエニル基、5−n−プロピルチエニル基、5−イソプロピルチエニル基、5−n−ブチルチエニル基、5−n−ペンチルチエニル基、5−n−ヘキシルチエニル基、5−n−ヘプチルチエニル基、5−n−オクチルチエニル基、5−n−ノニルチエニル基、5−n−デシルチエニル基、等が挙げられる。
【0050】
Ar
1について、上記の中でも、溶媒溶解性の観点からは、炭素数2〜18のアルキル基を置換基として有するフェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、チエニル基、ベンゾチエニル基が好ましく、半導体特性の観点からは、炭素数2〜10のアルキル基を置換基として有する芳香族炭化水素基又は複素芳香族基が好ましく、従って、溶媒溶解性及び半導体特性、両観点からは、炭素数2〜10のアルキル基を置換基として有するフェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、チエニル基、ベンゾチエニル基が特に好ましい。
【0051】
一般式(3)で表される置換基のAr
2は、置換基を有してもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有してもよい複素芳香族基であれば、特に制限はないが、例えば以下のものを挙げることができる。
【0052】
フェニレン基、ナフチレン基、アズレニレン基、アセナフテニレン基、アントラセニレン基、フェナントレニレン基、ナフタセニレン基、フルオレニレン基、ピレニレン基、クリセニレン基、ペリレニレン基、ビフェニレン基、p−ターフェニレン基、クォーターフェニレン基等の炭素数6〜24の単環又は多環式芳香族炭化水素二価基、
トリレン基、キシリレン基、エチルフェニレン基、プロピルフェニレン基、イソプロピルフェニレン基、ブチルフェニレン基、ペンチルフェニレン基、ヘキシルフェニレン基、ヘプチルフェニレン基、オクチルフェニレン基、ノニルフェニレン基、デシルフェニレン基、メチルナフチレン、9,9‘−ジヘキシルフルオレニル基等、前記芳香族炭化水素二価基が炭素数2〜18のアルキル基で置換されたアルキル置換芳香族炭化水素二価基、
フルオロフェニレン基、クロロフェニレン基、ブロモフェニルン基等、前記の芳香族炭化水素二価基がフッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲンで置換されたハロゲン化芳香族炭化水素二価基等が挙げられる。
【0053】
更に、チエニレン、ピリジレン等の複素芳香族二価基や、これらが置換された複素芳香族二価基も使用することができる。
【0054】
又、一般式(3)で表される置換基のR’は水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有してもよい芳香族炭化水素基又は複素芳香族基であれば、特に制限はないが、例えば以下のものが挙げられる。
【0055】
炭素数1〜20のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、1−メチルペンチル基、4−メチル−2−ペンチル基、3,3−ジメチルブチル基、2−エチルブチル基、n−ヘプチル基、1−メチルヘキシル基、シクロヘキシルメチル基、n−オクチル基、tert−オクチル基、1−メチルヘプチル基、2−エチルヘキシル基、2−プロピルペンチル基、n−ノニル基、2,2−ジメチルヘプチル基、2,6−ジメチル−4−ヘプチル基、3,5,5−トリメチルヘキシル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、1−メチルデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、1−ヘキシルヘプチル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−エイコシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、4−メチルシクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等の直鎖、分岐又は環状のアルキル基、
【0056】
置換基を有してもよい芳香族炭化水素基としては、フェニル基、ナフチル基、アズレニル基、アセナフテニル基、アントラニル基、フェナントリル基、ナフタセニル基、フルオレニル基、ピレニル基、クリセニル基、ペリレニル基、ビフェニル基、p−ターフェニル基、クォーターフェニル基等の炭素数6〜24の単環又は多環式芳香族炭化水素基、
o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、2,4−キシリル基、2,6−キシリル基、メシチル基、ジュリル基、4−エチルフェニル基、4−n−プロピルフェニル基、4−イソプロピルフェニル基、4−n−ブチルフェニル基、4−n−ペンチルフェニル基、4−n−ヘキシルフェニル基、4−n−デカフェニル基、4−ステアリルフェニル基、9,9‘−ジヘキシルフルオレニル基等、前記芳香族炭化水素基が炭素数1〜18のアルキル基で置換されたアルキル置換芳香族炭化水素基、
スチリル基、4−ブテニルフェニル基、4−オクタデセニルフェニル基等、前記の芳香族炭化水素基が炭素数2〜20のアルケニル基で置換されたアルケニル置換芳香族炭化水素基、
【0057】
4−フルオロフェニル基、2,6−フルオロフェニル基、4−クロロフェニル基、2,3,4,5,6−パーフルオロフェニル基等、前記の芳香族炭化水素基がフッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲンで置換されたハロゲン化芳香族炭化水素基、
4−(2−エトキシエチル)フェニル基、4−(2−n−ヘキシルオキシエチル)フェニル基、4−(2−n−ヘプチルオキシエチル)フェニル基、4−(2−n−テトラデシルオキシエチル)フェニル基、4−(2−シクロヘキシルオキシエチル)フェニル基、4−(12−エトキシドデシル)フェニル基、4−(シクロヘキシルオキシエチル)フェニル基等、前記芳香族炭化水素基が炭素数3〜20のアルコキシアルキル基で置換されたアルコキシアルキル置換芳香族炭化水素基、
【0058】
4−(メチルスルファニルプロピル)フェニル基、4−(2−n−ヘキシルスルファニルエチル)フェニル基、4−(3−n−デシルスルファニルプロピル)フェニル基、4−(シクロヘキシルスルファニルプロピル)フェニル基等、前記の芳香族炭化水素基が炭素数3〜20のアルキルスルファニルアルキル基で置換されたアルキルスルファニルアルキル置換芳香族炭化水素基、
4−(3−オクチルアミノプロピル)フェニル基、4−(3−ドデシルアミノプロピル)フェニル基、4−(ジエチルアミノエチル)フェニル基等、前記の芳香族炭化水素基が炭素数3〜20のアルキルアミノアルキル基で置換されたアルキルアミノアルキル置換芳香族炭化水素基、等が挙げられる。
【0059】
又、置換基を有してもよい複素芳香族基としては、ピロリル基、インドリル基、フリル基、チエニル基、イミダゾリル基、ベンゾフリル基、トリアゾリル基、ベンゾトリアゾリル基、ベンゾチエニル基、ピラゾリル基、インドリジニル基、キノリニル基、イソキノリニル基、カルバゾリル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチオフェニル基、インドリニル基、チアゾリル基、ピリジル基、ピリミジル基、ピラジニル基、ピリダジニル基、チアジアジニル基、オキサジアゾリル基、ベンゾキノリニル基、チアジアゾリル基、ピロロチアゾリル基、ピロロピリダジニル基、テトラゾリル基、オキサゾリル基等、5員環又は6員環の複素芳香族基や、該複素芳香族基にベンゼンが縮合した多環式複素芳香族基、
5−メチルチエニル基、5−ヘキシルチエニル基、5−デカチエニル基、5−ステアリルチエニル基等前記複素芳香族基が炭素数1〜20のアルキル基で置換されたアルキル置換複素芳香族基、
【0060】
フルオロピリジニル基、フルオロインドリル基等、前記の複素芳香族基がフッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲンで置換されたハロゲン化複素芳香族基、5−(2−エトキシエチル)チエニル基、5−(2−n−テトラデシルオキシエチル)チエニル基、
5−(2−シクロヘキシルオキシエチル)チエニル基、5−(12−エトキシドデシル)チエニル基等、前記芳香族炭化水素基が炭素数3〜20のアルコキシアルキル基で置換されたアルコキシアルキル置換複素芳香族基、
【0061】
5−(メチルスルファニルプロピル)チエニル基、5−(2−n−ヘキシルスルファニルエチル)チエニル基、5−(3−n−デシルスルファニルプロピル)チエニル基、5−(シクロヘキシルスルファニルプロピル)チエニル基等、前記の芳香族炭化水素基が炭素数3〜20のアルキルスルファニルアルキル基で置換されたアルキルスルファニルアルキル置換複素芳香族基、
5−(3−オクチルアミノプロピル)チエニル基、5−(3−ドデシルアミノプロピル)チエニル基、5−(ジエチルアミノエチル)チエニル基等、前記の複素芳香族基が炭素数3〜20のアルキルアミノアルキル基で置換されたアルキルアミノアルキル置換複素芳香族基、等が挙げられる。
【0062】
以上の如くして説明した置換基を有する本発明の具体的な化合物として、以下を挙げることができるが、これらに限られるものではない。
【0066】
(本発明化合物の合成)
本発明化合物の合成は、公知慣用の方法を組み合わせて行うことができる。
合成経路の一例を、以下に挙げるが、本発明化合物の合成はこれらに限るものではない。
【0067】
先ず、母骨格となるBTBT環に、反応(A)〜(D)の如くして、置換基R
2に相当する基として、メチル基、シアノ基、フルオロ基、又はトリフルオロメチル基を導入する。
【0069】
化合物(a−2)の合成では、先ず、BTBTをホルミル化し、化合物(a−1)を得る。次に、このものを還元反応によりメチル化する。
【0070】
化合物(b−2)の合成では、先ず、BTBTを臭素化し、化合物(b−1)を得る。次に、このものを、銅(I)塩存在下でバートン試薬と反応させることでトリフルオロメチル化する。
【0071】
化合物(c−3)の合成では、先ず、BTBTをニトロ化し、化合物(c−1)を得る。次に、このものを、還元反応せしめ、然る後、シアン化銅を作用させる(ザンドマイヤー反応)。
【0072】
化合物(d−1)の合成は、前記化合物(c−2)をジアゾニウムフルオロボレートとし、これを熱分解する。
【0073】
BTBT環への置換基R
2の導入は、ここに示した反応(A)〜(D)に限定されるものではなく、公知慣用の反応を適用することができる。
【0074】
次に、R
2(水素原子、メチル基、シアノ基、フルオロ基、トリフルオロメチル基)を置換基として有するBTBT(e−1)に、カルボン酸塩化物とを反応させ、アシル化し、次いでトリアルキルシリルジアゾメタンの金属塩を反応せしめることで、一般式(2)で表される置換基をR
1として有する目的とする化合物(e−3)を得ることができる(反応(E))。ここで、「トリアルキルシリルジアゾメタンの金属塩」中のトリアルキルシリル基としては、例えば、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリブチルシリル基、トリイソプロピルシリル基などを挙げることができ、好ましくはトリメチルシリル基である。又、「トリアルキルシリルジアゾメタンの金属塩」中の金属塩を形成する金属としては例えば、リチウム、ナトリウム、マグネシウム、亜鉛、アルミニウムを挙げることができ、好ましくはリチウムである。
【0076】
(式中、R
2及びAr
1は上記と同義である。)
なお、反応(E)は、R
2がアルキル基である場合においても適応可能であり、又、Ar
1が、前記した置換基である場合に加え、無置換の芳香族炭化水素基若しくは複素芳香族基、及びメチル基(炭素数1のアルキル基)を置換基として有する芳香族炭化水素基若しくは複素芳香族基の場合においても適応可能である。
【0077】
又、R
2(水素原子、メチル基、シアノ基、フルオロ基、トリフルオロメチル基)を置換基として有するBTBT(f−1)に、ハロゲン化剤を反応させ、ハロゲン化し(f−2)、次いでパラジウム触媒と塩基の存在下、有機ホウ素化合物をクロスカップリングさせることで、一般式(3)で表される置換基をR
1として有する目的とする化合物(f−3)を得ることができる(反応(F))。
【0079】
(式中、R
2、Ar
2及びR’は上記と同義であり、Xはハロゲン原子を表す。)
なお、BTBT環への置換基R
1の導入は、ここに示した反応(E)〜(F)に限定されるものではなく、公知慣用の反応を適用することができる。
【0080】
(有機半導体材料・インク)
本発明の化合物は、有機半導体素子を用途とした、有機半導体材料として使用することができる。本発明の化合物を、有機半導体として使用するためには、通常、膜形態(有機半導体膜又は有機半導体層)にて使用される。膜の形成にあたっては、真空蒸着等公知慣用の乾式成膜法により形成しても構わないが、低温成膜が可能で、生産性に優れる印刷法にて形成することが好ましく、そのために、本発明の化合物、即ち有機半導体材料は、インクとして使用することが好ましい。インクを調製するためには、本発明の化合物を溶媒に溶解する。又、半導体性能を損なわない範囲で、インク特性を付与するために、フッ素系やシリコン系等のレベリング剤、およびポリスチレン、アクリル樹脂、半導体高分子等の高分子化合物を粘度調整剤として添加することもできる。
【0081】
使用する溶媒は何を用いても構わず、又2種以上の溶媒を混合して用いても良い。具体的には、n−ヘキサン、n−オクタン、n−デカン、n−ドデカン等の脂肪族系溶媒;シクロヘキサン等の脂環式系溶媒;ベンゼン、トルエン、クメン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、p−シメン、メシチレン、アニソール、2−メチルアニソール、3−メチルアニソール、4−メチルアニソール、2,5−ジメチルアニソール、3,5−ジメトキシトルエン、2,4−ジメチルアニソール、フェネトール、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、安息香酸ブチル、1,5−ジメチルテトラリン、n−プロピルベンゼン、n−ブチルベンゼン、n−ペンチルベンゼン、1,3,5−トリエチルベンゼン、1,3−ジメトキシベンゼン、2,5−ジエチルシベンゼン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン等の芳香族系溶媒;テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジエチルエーテル、アニソール、ベンジルエチルエーテル、エチルフェニルエーテル、ジフェニルエーテル、メチル−t−ブチルエーテル等のエーテル系溶媒;酢酸メチル、酢酸エチル、エチルセロソルブ、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート等のエステル系溶媒;メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、2−ヘキサノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン等のケトン系溶媒;その他ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジエチルホルムアミド等が挙げられるが、これらに限定されることはない。
調製された液体組成物における本発明の化合物の濃度としては、0.01〜20重量%であることが好ましく、さらには0.1〜10重量%であることが好ましい。
【0082】
(有機半導体素子)
本発明の化合物を有機半導体材料として用いてなる有機半導体素子としては、ダイオード、有機トランジスタ、フォトダイオード、発光ダイオード、発光トランジスタや、ガスセンサー、バイオセンサー、血液センサー、免疫センサー、人工網膜、味覚センサー等のセンサー類、さらには、メモリ、RFID等が挙げられる。
中でも、本発明の化合物は、有機半導体材料として、1cm
2/Vs以上の高い電荷移動度を有するので、有機トランジスタ又は発光素子への応用が特に有用である。
【0083】
(有機トランジスタ)
次に本発明の有機半導体材料を有機半導体層として用いてなる有機トランジスタについて説明する。
有機トランジスタは、通常、ソース電極、ドレイン電極およびゲート電極、およびゲート絶縁層、有機半導体層を有してなるものであり、各電極や各層の配置によって種々のタイプのトランジスタがあるが、本発明の有機半導体材料はトランジスタの種類に限定されることなく、何れのトランジスタにも使用することができる。トランジスタの種類については、アルドリッチ社の材料科学の基礎第6号「有機トランジスタの基礎」等を参照することができる。
【0084】
図1に示すボトムコンタクト型を一例に詳説すると、1は基板、2はゲート電極、3はゲート絶縁層、4は有機半導体層、5はソース電極、6はドレイン電極である。
【0085】
基板としては、ガラス、樹脂、プラスチックが用いられるが、フレキシブルな有機トランジスタを得るためには、ガラス製シート、樹脂製シート、プラスチックフィルムを用いることが出来る。中でも、樹脂製シートやプラスチックフィルムを用いると、フレキシブル性に加え、軽量化を図ることができ、可搬性を高めることが出来るとともに、衝撃に対する耐性を向上出来るので好適である。材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、ポリイミド、ボリカーボネート(PC)、セルローストリアセテート(TAC)、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)等を挙げることが出来る。
【0086】
ゲート電極、ソース電極、及びドレイン電極の電極材料は、導電性材料であれば特に限定されず、白金、金、銀、ニッケル、クロム、銅、鉄、錫、酸化スズ、アンチモン、酸化インジウム・スズ(ITO)、フッ素ドープ酸化亜鉛、炭素、グラファイト、グラッシーカーボン、銀ペースト、カーボンペースト、リチウム、ベリリウム、ナトリウム、マグネシウム、カリウム、カルシウム、スカンジウム、チタン、マンガン、ジルコニウム、ガリウム、ニオブ、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム、リチウム、アルミニウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム混合物、リチウム/アルミニウム混合物等が用いられる。さらに、ドーピング等で導電率を向上させた公知の導電性ポリマー、例えば、導電性ポリアニリン、導電性ポリピロール、導電性ポリチオフェン、ポリエチレンジオキシチオフェンとポリスチレンスルホン酸の錯体(PEDOT/PSS)なども好適に用いられる。
【0087】
電極の形成方法としては、上記材料を原料として蒸着やスパッタリング等の方法を用いて形成した導電性薄膜を、公知のフォトリソグラフ法やリフトオフ法を用いてパターン化する方法、又は前記導電性薄膜上に、熱転写やインクジェット等によるレジストをパターン成膜し、然る後エッチングする方法がある。更には、導電性ポリマーの溶液若しくは分散液、又は導電性微粒子の分散液を直接インクジェットによりパターニングしてもよいし、導電性ポリマーの溶液若しくは分散液、又は導電性微粒子の分散液若しくはペーストを塗工し、斯くの如くして得られた塗工膜をリソグラフやレーザーアブレーションなどによりパターン化してもよい。更には、導電性ポリマーの溶液若しくは分散液、又は導電性微粒子の分散液若しくはペーストを、スクリーン印刷法、オフセット印刷法、凸版印刷法、反転印刷法、マイクロコンタクトプリント法等、各種印刷法でパターニングする方法も用いることが出来る。
【0088】
ゲート絶縁層は、ポリパラキシリレン、ポリスチレン、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂などの熱可塑性樹脂;エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、メラミン樹脂などの熱硬化性樹脂;UV硬化性樹脂などの有機薄膜が好適に使用出来、さらには、酸化シリコン膜などの無機材料も用いることが出来る。
【0089】
ゲート絶縁層はスピンコート法、キャスト法、ディップ法、ドクターブレード法、ワイヤーバーコート法、スプレーコート法、ディスペンス法、インクジェット法、スクリーン印刷法、グラビア印刷法、オフセット印刷法、凸版印刷法、反転印刷法、マイクロコンタクトプリント法、等の公知の湿式成膜方法により薄膜を作製することが可能であり、必要に応じフォトリソグラフ法で必要な形状にパターニングしてもよい。
【0090】
有機半導体層は、本発明の化合物を用いて真空蒸着法等の公知慣用の乾式成膜法にて成膜することができるが、前記本発明のインクを用いて印刷等の湿式成膜法にて成膜することが好ましい。有機半導体層の膜厚は、特に制限されることはないが、通常、0.5nm〜1μmであり、2nm〜250nmであると好ましい。
【0091】
又、有機半導体層は、結晶性を高め半導体特性の向上等を図ることを目的に、必要に応じて、成膜後にアニーリングを実施してもよい。アニーリングの温度は50〜200℃が好ましく、70〜200℃であるとさらに好ましく、時間は10分〜12時間が好ましく、1時間〜10時間がより好ましく、30分〜10時間であるとさらに好ましい。
【0092】
成膜方法としては、例えば、スピンコート法、キャスト法、ディップ法、ドクターブレード法、ワイヤーバーコート法、スプレーコート法、ディスペンス法、インクジェット法、スクリーン印刷法、グラビア印刷法、オフセット印刷法、凸版印刷法、反転印刷法、マイクロコンタクトプリント法等の公知の湿式成膜方法を挙げることが出来る。
【0093】
本発明の有機トランジスタは、ディスプレイを構成する画素のスイッチング用トランジスタ、信号ドライバー回路素子、メモリ回路素子、信号処理回路素子等として好適に使用できる。ディスプレイの例としては、液晶ディスプレイ、分散型液晶ディスプレイ、電気泳動型ディスプレイ、粒子回転型表示素子、エレクトロクロミックディスプレイ、有機エレクトロルミネッセンスディスプレイ、電子ペーパー等が挙げられる。
【実施例】
【0094】
本発明を実施例で更に詳細に説明する。
(実施例1)<化合物の製造>
まず、BTBT(0.51g、2.12mmol)にアルゴン雰囲気下で脱水ジクロロメタン30mLを加え、攪拌した。次に混合液を−70℃に冷却し、塩化アルミニウム(1.10g、8.25mmol)を添加し、さらにp−プロピルベンゾイルクロリド(0.35mL、1.99mmol)を滴下した。反応液を0℃まで昇温し、1.5時間攪拌した後、反応液を水に再沈して反応を停止した。そこへクロロホルムを加え、分液ロートへ移送し、有機層を水、食塩水で分液洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、濃縮した。精製はシリカゲルカラム(溶媒組成はヘキサン:ジクロロメタン=100:0から30:70のグラディエント)で回収した生成物をアセトンで再結晶し、2−(4−プロピルベンゾイル)BTBTを0.45g得た(収率55%)。
【0095】
次いで、2Mのトリメチルシリルジアゾメタン溶液(1.20mL、2.40mmol)をアルゴン雰囲気下で脱水テトラヒドロフラン13.5mLに加え、攪拌した。更に混合液を−70℃に冷却し、1.55Mのn−ブチルリチウム溶液(1.50mL、2.33mmol)を滴下し、トリメチルシリルジアゾメタンのリチウム塩を発生させた。30分攪拌した後、脱水テトラヒドロフラン4mLを加えた2−(4−プロピルベンゾイル)BTBT(0.44g、1.14mmol)溶液を、反応液へ加えた。その後反応液を室温まで昇温し、1.5時間攪拌した後、酢酸10%のメタノール溶液を加え反応を停止した。そこへジクロロメタンを加え、分液ロートへ移送し、有機層を水、食塩水で分液洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、濃縮した。精製はシリカゲルカラム(溶媒組成はヘキサン:ジクロロメタン=100:0から90:10のグラディエント)で回収した生成物を56℃に加熱したアセトンに溶解後、金属スカベンジャーを加え攪拌し、金属スカベンジャーをろ別除去し、ろ液から再結晶することで、(I)で表されるBTBT誘導体を0.04g得た(収率9%)。
【0096】
1H−NMR(300MHz、CDCl
3) δ 8.09(s、1H、BTBT環)、7.94−7.88(dd、2H、BTBT環)、7.86(d、1H、BTBT環)、7.60(d、1H、BTBT環)、7.50−7.47(dd、2H、フェニル)、7.46−7.40(dd、2H、BTBT環)、7.18(d、2H、フェニル)、2.62(t、2H、BTBT−CH
2)、1.66(q、2H、BTBT−CH
2−CH
2)、0.96(t、3H、CH
3).
1H−NMR(300MHz,CDCl
3):δ 8.09(1H,d,J=1.1Hz),7.94−7.83(3H,m),7.62−7.59(1H,m),7.50−7.39(4H,m),7.19(2H,d,J=8.4Hz),2.62(2H,t,J=7.5Hz),1.66(2H,td,J=15.0,7.5Hz),0.96(3H,t,J=7.3Hz).
FD−MS:[M]
+=382
【0097】
【化21】
【0098】
<有機トランジスタの製造>
ガラス基板(
図1の1に相当)上に金属マスクを用いてアルミニウムを真空蒸着法にて約30nmの厚さで成膜して、ゲート電極を形成した(
図1の2に相当)。ここに、パリレン蒸着装置(ラボコーターPDS2010、日本パリレン製)を用いて、ジクロロ−ジパラキシリレン(DPX−C、日本パリレン製)を原料にして、ポリパラクロロキシリレン(パリレンC)薄膜(厚さ500nm)をケミカルベーパーデポジション(CVD)法にて作製し(
図1の3に相当)、さらに、真空蒸着法によって、金薄膜(厚さ40nm)からなるソース・ドレイン電極をパターン形成した(
図1の5と6に相当。チャネル長L(ソース電極−ドレイン電極間隔)を75μm、チャネル幅Wを5.0mmとした)。次に、このようにして得られた基板を、ペンタフルオロチオフェノールの0.1%エタノール溶液に1時間浸漬したのち、窒素ブローで乾燥し、前記化合物BTBT誘導体化合物(I)の0.4%p−キシレン溶液(有機半導体インク)の液滴0.1μLを、前記ソース・ドレイン電極の間にドロップキャスト(滴下)した後、自然濃縮により乾固させることで、前記化合物BTBT誘導体化合物(I)よりなる有機半導体層(
図1の4に相当)を形成した(有機半導体溶液(インク)液滴の滴下(ドロップキャスト)とその乾燥によって有機半導体層を形成)。
【0099】
<半導体特性(移動度)の評価>
このようにして得られた有機トランジスタについて、半導体特性(移動度)を評価した。半導体特性(移動度)は、ソース電極を接地し、ドレイン電極に−80Vを印加した状態で、デジタルマルチメーター(SMU237、ケースレー製)を用いて、ゲート電極に0から−80V、電圧(V
g)をスイープ印加しながら、ドレイン電極に流れる電流(I
d)を測定し、√I
d−V
gの傾きから、(式1)を用いて求めた。単位はcm
2/V・sである。
【0100】
【数1】
【0101】
(式中、Wはチャネル幅、Lはチャネル長、μは移動度、Cはゲート絶縁層の単位面積当たりの電気容量、V
Tは閾値電圧を表す。)
評価結果を表1に示した。
【0102】
(実施例2)<化合物の製造>
まず、BTBT(0.50g、2.08mmol)にアルゴン雰囲気下で脱水ジクロロメタン35mLを加え、攪拌した。次に混合液を−70℃に冷却し、塩化アルミニウム(1.16g、8.70mmol)を添加し、さらにp−ペンチルベンゾイルクロリド(0.5mL、2.46mmol)を滴下した。反応液を0℃まで昇温し、4時間攪拌した後、反応液を水に再沈して反応を停止した。そこへクロロホルムを加え、分液ロートへ移送し、有機層を水、食塩水で分液洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、濃縮した。精製はシリカゲルカラム(溶媒組成はヘキサン:ジクロロメタン=100:0から30:70のグラディエント)で回収した生成物をシクロヘキサンで再結晶し、2−(4−ペンチルベンゾイル)BTBTを0.49g得た(収率57%)。
【0103】
次いで、2Mのトリメチルシリルジアゾメタン溶液(1.20mL、2.40mmol)をアルゴン雰囲気下で脱水テトラヒドロフラン10mLに加え、攪拌した。更に混合液を−70℃に冷却し、1.55Mのn−ブチルリチウム溶液(1.50mL、2.33mmol)を滴下し、トリメチルシリルジアゾメタンのリチウム塩を発生させた。30分攪拌した後、脱水テトラヒドロフラン7mLを加えた2−(4−ペンチルベンゾイル)BTBT(0.49g、1.18mmol)溶液を、反応液へ加えた。その後反応液を室温まで昇温し、3.5時間攪拌した後、酢酸10%のメタノール溶液を加え反応を停止した。そこへジクロロメタンを加え、分液ロートへ移送し、有機層を水、食塩水で分液洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、濃縮した。精製はシリカゲルカラム(シリカゲルと金属スカベンジャーにまぶした生成物を、55℃に加熱したシクロヘキサンで分取)で回収した生成物をアセトンで再結晶することで、(II)で表されるB
TBT誘導体を0.06g得た(収率13%)。
【0104】
1H−NMR(300MHz,CDCl
3):δ 8.08(1H,dd,J=4.4,3.7Hz),7.87(3H,ddt,J=19.3,11.0,3.6Hz),7.61−7.56(1H,m),7.49−7.39(4H,m),7.19(2H,d,J=8.1Hz),2.63(2H,t,J=7.1Hz),1.68−1.58(2H,m),1.34(4H,dt,J=12.6,5.0Hz),0.90(3H,dd,J=9.0,5.0Hz).
FD−MS:[M]
+=410
【0105】
【化22】
【0106】
<有機トランジスタの製造及び半導体特性(移動度)の評価>
化合物(I)のかわりに、化合物(II)を用いた以外は、実施例1と同様にして、有機トランジスタの製造、半導体特性(移動度)の評価を実施した。結果を表1に示す。
【0107】
(実施例3)<化合物の製造>
まず、BTBT(0.50g、2.09mmol)、塩化アルミニウム(1.16g、8.70mmol)にアルゴン雰囲気下で脱水ジクロロメタン25mLを加え、攪拌した。次に混合液を−70℃に冷却し、p−ヘプチルベンゾイルクロリド(0.70mL、1.45mmol)を滴下した。反応液を0℃まで昇温し、3時間攪拌した後、反応液を水に再沈して反応を停止した。そこへクロロホルムを加え、分液ロートへ移送し、有機層を水、食塩水で分液洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、濃縮した。精製はシリカゲルカラム(溶媒組成はヘキサン:ジクロロメタン=100:0から30:70のグラディエント)で回収した生成物をアセトンで再結晶し、2−(4−ヘプチルベンゾイル)BTBTを0.39g得た(収率39%)。
【0108】
次いで、2Mのトリメチルシリルジアゾメタン溶液(0.85mL、2.07mmol)をアルゴン雰囲気下で脱水テトラヒドロフラン5mLに加え、攪拌した。更に混合液を−70℃に冷却し、1.55Mのn−ブチルリチウム溶液(1.0mL、1.55mmol)を滴下し、トリメチルシリルジアゾメタンのリチウム塩を発生させた。30分攪拌した後、脱水テトラヒドロフラン12mLを加えた2−(4−ヘプチルベンゾイル)BTBT(0.36g、0.82mmol)溶液を、反応液へ加えた。その後反応液を室温まで昇温し、3時間攪拌した後、酢酸10%のメタノール溶液を加え反応を停止した。そこへジクロロメタンを加え、分液ロートへ移送し、有機層を水、食塩水で分液洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、濃縮した。精製はシリカゲルカラム(溶媒組成はヘキサン:ジクロロメタン=100:0から90:10のグラディエント)で回収した生成物を56℃に加熱したアセトンに溶解後、金属スカベンジャーを加え攪拌し、金属スカベンジャーをろ別除去し、ろ液から再結晶することで、化合物(III)で表されるBTBT誘導体を0.04g得た(収率11%)。
1H−NMR(300MHz,CDCl
3):δ 8.09(1H,d,J=0.7Hz),7.94−7.83(3H,m),7.60(1H,dd,J=8.3,1.3Hz),7.49−7.40(4H,m),7.19(2H,d,J=8.1Hz),2.63(2H,t,J=7.7Hz),1.60−1.56(2H,m),1.31(8H,m),0.89(3H,t,J=6.8Hz).
FD−MS:[M]
+=438
【0109】
【化23】
【0110】
<有機トランジスタの製造及び半導体特性(移動度)の評価>
化合物(I)のかわりに、化合物(III)を用いた以外は、実施例1と同様にして、有機トランジスタの製造、半導体特性(移動度)の評価を実施した。結果を表1に示す。
【0111】
(実施例4)<化合物の製造>
まず、BTBT(0.50g、2.08mmol)にアルゴン雰囲気下で脱水ジクロロメタン35mLを加え、攪拌した。次に混合液を−70℃に冷却し、塩化アルミニウム(1.13g、8.48mmol)を添加し、さらにp−デシルベンゾイルクロリド(0.6mL、2.14mmol)を滴下した。反応液を0℃まで昇温し、3時間攪拌した後、反応液を水に再沈して反応を停止した。そこへクロロホルムを加え、分液ロートへ移送し、有機層を水、食塩水で分液洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、濃縮した。精製はシリカゲルカラム(溶媒組成はヘキサン:ジクロロメタン=100:0から30:70のグラディエント)で回収した生成物をシクロヘキサンで再結晶し、2−(4−デシルベンゾイル)BTBTを0.54g得た(収率54%)。
【0112】
次いで、2Mのトリメチルシリルジアゾメタン溶液(1.10mL、2.20mmol)をアルゴン雰囲気下で脱水テトラヒドロフラン10mLに加え、攪拌した。更に混合液を−70℃に冷却し、1.55Mのn−ブチルリチウム溶液(1.40mL、2.17mmol)を滴下し、トリメチルシリルジアゾメタンのリチウム塩を発生させた。30分攪拌した後、脱水テトラヒドロフラン6mLを加えた2−(4−デシルベンゾイル)BTBT(0.54g、1.11mmol)溶液を、反応液へ加えた。その後反応液を室温まで昇温し、4時間攪拌した後、酢酸10%のメタノール溶液を加え反応を停止した。そこへジクロロメタンを加え、分液ロートへ移送し、有機層を水、食塩水で分液洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、濃縮した。精製はシリカゲルカラム(シリカゲルと金属スカベンジャーにまぶした生成物を、55℃に加熱したシクロヘキサンで分取)で回収した生成物をアセトンで再結晶することで、化合物(IV)で表されるBTBT誘導体を0.11g得た(収率21%)。
1H−NMR(300MHz,CDCl
3):δ 8.08(1H,t,J=3.1Hz),7.94−7.81(3H,m),7.60(1H,dd,J=8.1,1.5Hz),7.50−7.39(4H,m),7.18(2H,d,J=8.1Hz),2.63(2H,t,J=7.7Hz),1.60(2H,t,J=7.3Hz),1.29(14H,m),0.88(3H,t,J=6.6Hz).
FD−MS:[M]
+=480
【0113】
【化24】
【0114】
<有機トランジスタの製造及び半導体特性(移動度)の評価>
化合物(I)のかわりに、化合物(IV)を用いた以外は、実施例1と同様にして、有機トランジスタの製造、半導体特性(移動度)の評価を実施した。結果を表1に示す。
【0115】
(実施例5)<化合物の製造>
2−メチルBTBT(0.50g、2.08mmol)にアルゴン雰囲気下で脱水ジクロロメタン25mLを加え、攪拌した。次に混合液を−70℃に冷却し、塩化アルミニウム(1.12g、8.40mmol)を添加し、さらにp−プロピルベンゾイルクロリド(0.5mL、2.84mmol)を滴下した。反応液を0℃まで昇温し、2時間攪拌した後、反応液を水に再沈して反応を停止した。そこへクロロホルムを加え、分液ロートへ移送し、有機層を水、食塩水で分液洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、濃縮した。精製はシリカゲルカラム(溶媒組成はヘキサン:ジクロロメタン=90:10から50:50のグラディエント)を行い、2−メチル−7−(4−プロピルベンゾイル)BTBTを0.54g得た(収率64%)。
【0116】
次いで、2Mのトリメチルシリルジアゾメタン溶液(1.35mL、2.70mmol)をアルゴン雰囲気下で脱水テトラヒドロフラン4.5mLに加え、攪拌した。更に混合液を−70℃に冷却し、1.55Mのn−ブチルリチウム溶液(1.75mL、2.71mmol)を滴下し、トリメチルシリルジアゾメタンのリチウム塩を発生させた。30分攪拌した後、脱水テトラヒドロフラン21mLを加えた2−メチル−7−(4−プロピルベンゾイル)BTBT(0.54g、1.34mmol)溶液を、反応液へ加えた。その後反応液を室温まで昇温し、2.5時間攪拌した後、酢酸10%のメタノール溶液を加え反応を停止した。そこへクロロホルムを加え、分液ロートへ移送し、有機層を水、食塩水で分液洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、濃縮した。精製はシリカゲルカラム(シリカゲルと金属スカベンジャーにまぶした生成物を、55℃に加熱したシクロヘキサンで分取)で回収した生成物をアセトンで再結晶することで、化合物(V)で表されるBTBT誘導体を0.12g得た(収率23%)。
1H−NMR(300MHz,CDCl
3):δ 8.07(1H,d,J=0.7Hz),7.76(3H,dt,J=17.6,6.8Hz),7.58(1H,dd,J=8.4Hz,1.5Hz),7.48(2H,t,J=4.2Hz),7.28(1H,t,J=2.8Hz),7.18(2H,d,J=8.1Hz),2.61(2H,t,J=7.5Hz),2.52(3H,s),1.66(2H,td,J=15.0,7.3Hz),1.66(2H,td,J=15.0,7.3Hz),0.95(3H,t,J=7.3Hz).
FD−MS:[M]
+=396
【0117】
【化25】
【0118】
<有機トランジスタの製造及び半導体特性(移動度)の評価>
化合物(I)のかわりに、化合物(V)を用いた以外は、実施例1と同様にして、有機トランジスタの製造、半導体特性(移動度)の評価を実施した。結果を表1に示す。
【0119】
(実施例6)<化合物の製造>
まず、BTBT(2.51g、10.4mmol)にアルゴン雰囲気下で脱水ジクロロメタン210mLを加え、攪拌した。次に混合液を−70℃に冷却し、塩化アルミニウム(6.09g、45.7mmol)を添加し、さらにブチルジクロロメチルエーテル(2.0mL、14.1mmol)を滴下した。2.5時間攪拌した後、反応液を水に再沈して反応を停止した。そこへ飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え中和した。さらにクロロホルムを加え、分液ロートへ移送し、有機層を水、食塩水で分液洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、濃縮した。精製はシリカゲルカラム(溶媒組成はヘキサン:ジクロロメタン=90:10から10:90のグラディエント)を行い、2−ホルミルBTBTを1.33g得た(収率47%)。
【0120】
次いで、塩化アルミニウム(0.89g、6.68mmol)にアルゴン雰囲気下で脱水ジクロロメタン10mLを加え、攪拌した。更に混合液を0℃に冷却し、tert−ブチルアミンボラン(1.16g、13.3mmol)を加え、再度アルゴン置換を行った。
【0121】
5分攪拌した後、脱水ジクロロメタン20mLを加えた2−ホルミルBTBT(0.60g、2.24mmol)溶液を、反応液へ加えた。1時間攪拌した後、反応液を水に再沈して反応を停止した。そこへ希塩酸を加え中和した。更にクロロホルムを加え、分液ロートへ移送し、有機層を水、食塩水で分液洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、濃縮した。精製はシリカゲルカラム(溶媒組成はヘキサン:ジクロロメタン=95:5から50:50のグラディエント)を行い、2−メチルBTBTを0.28g得た(収率49%)。
【0122】
2−メチルBTBT(0.51g、2.12mmol)にアルゴン雰囲気下で脱水ジクロロメタン25mLを加え、攪拌した。次に混合液を−70℃に冷却し、塩化アルミニウム(1.14g、8.55mmol)を添加し、さらにp−ペンチルベンゾイルクロリド(0.5mL、2.46mmol)を滴下した。反応液を0℃まで昇温し、2時間攪拌した後、反応液を水に再沈して反応を停止した。そこへクロロホルムを加え、分液ロートへ移送し、有機層を水、食塩水で分液洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、濃縮した。精製はシリカゲルカラム(溶媒組成はヘキサン:ジクロロメタン=90:10から50:50のグラディエント)を行い、2−メチル−7−(4−ペンチルベンゾイル)BTBTを0.47g得た(収率52%)。
【0123】
次いで、2Mのトリメチルシリルジアゾメタン溶液(1.00mL、2.00mmol)をアルゴン雰囲気下で脱水テトラヒドロフラン4.5mLに加え、攪拌した。更に混合液を−70℃に冷却し、1.55Mのn−ブチルリチウム溶液(1.50mL、2.33mmol)を滴下し、トリメチルシリルジアゾメタンのリチウム塩を発生させた。30分攪拌した後、脱水テトラヒドロフラン21mLを加えた2−メチル−7−(4−ペンチルベンゾイル)BTBT(0.47g、1.10mmol)溶液を、反応液へ加えた。その後反応液を室温まで昇温し、2時間攪拌した後、酢酸10%のメタノール溶液を加え反応を停止した。そこへクロロホルムを加え、分液ロートへ移送し、有機層を水、食塩水で分液洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、濃縮した。精製はシリカゲルカラム(シリカゲルと金属スカベンジャーにまぶした生成物を、55℃に加熱したシクロヘキサンで分取)で回収した生成物をアセトンで再結晶することで、化合物(VI)で表されるBTBT誘導体を0.10g得た(収率21%)。
1H−NMR(300MHz,CDCl
3):δ 8.06(1H,t,J=3.7Hz),7.82−7.75(2H,m),7.72(1H,s),7.76−7.55(1H,m),7.46(2H,t,J=7.7Hz),7.29(1H,d,J=0.7Hz),7.18(2H,d,J=8.1Hz),2.63(2H,t,J=7.7Hz),2.51(3H,d,J=7.3Hz),1.68−1.58(2H,m),1.36(4H,ddd,J=20.4,10.5,4.9Hz),0.90(3H,t,J=7.0Hz).
FD−MS:[M]
+=424
【0124】
【化26】
【0125】
<有機トランジスタの製造及び半導体特性(移動度)の評価>
化合物(I)のかわりに、化合物(VI)を用いた以外は、実施例1と同様にして、有機トランジスタの製造、半導体特性(移動度)の評価を実施した。結果を表1に示す。
【0126】
(実施例7)<化合物の製造>
2−メチルBTBT(0.40g、1.66mmol)にアルゴン雰囲気下で脱水ジクロロメタン20mLを加え、攪拌した。次に混合液を−70℃に冷却し、塩化アルミニウム(0.90g、6.73mmol)を添加し、さらにp−ヘプチルベンゾイルクロリド(0.5mL、2.10mmol)を滴下した。反応液を0℃まで昇温し、2.5時間攪拌した後、反応液を水に再沈して反応を停止した。そこへクロロホルムを加え、分液ロートへ移送し、有機層を水、食塩水で分液洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、濃縮した。精製はシリカゲルカラム(溶媒組成はヘキサン:ジクロロメタン=90:10から50:50のグラディエント)を行い、2−メチル−7−(4−ヘプチルベンゾイル)BTBTを0.54g得た(収率71%)。
【0127】
次いで、2Mのトリメチルシリルジアゾメタン溶液(1.20mL、2.40mmol)をアルゴン雰囲気下で脱水テトラヒドロフラン4.5mLに加え、攪拌した。更に混合液を−70℃に冷却し、1.55Mのn−ブチルリチウム溶液(1.50mL、2.33mmol)を滴下し、トリメチルシリルジアゾメタンのリチウム塩を発生させた。30分攪拌した後、脱水テトラヒドロフラン21mLを加えた2−メチル−7−(4−ヘプチルベンゾイル)BTBT(0.54g、1.19mmol)溶液を、反応液へ加えた。その後反応液を室温まで昇温し、2.5時間攪拌した後、酢酸10%のメタノール溶液を加え反応を停止した。そこへクロロホルムを加え、分液ロートへ移送し、有機層を水、食塩水で分液洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、濃縮した。精製はシリカゲルカラム(シリカゲルと金属スカベンジャーにまぶした生成物を、55℃に加熱したシクロヘキサンで分取)で回収した生成物をアセトンで再結晶することで、化合物(VII)で表されるBTBT誘導体を0.13g得た(収率24%)。
1H−NMR(300MHz,CDCl
3):δ 8.05(1H,t,J=3.3Hz),7.81−7.71(3H,m),7.57(1H,dt,J=10.5Hz,3.8Hz),7.46(2H,t,J=7.3Hz),7.29(1H,d,J=0.7Hz),7.17(2H,t,J=7.3Hz),2.66(2H,dd,J=23.3,16.0Hz),2.51(3H,d,J=6.6Hz),1.61(2H,dd,J=14.7,7.3Hz),1.30(8H,dd,J=7.2,5.0Hz),0.89(3H,t,J=6.8Hz).
FD−MS:[M]
+=452
【0128】
【化27】
【0129】
<有機トランジスタの製造及び半導体特性(移動度)の評価>
化合物(I)のかわりに、化合物(VII)を用いた以外は、実施例1と同様にして、有機トランジスタの製造、半導体特性(移動度)の評価を実施した。結果を表1に示す。
【0130】
(実施例8)<化合物の製造>
特許文献7に従って合成した2−デシルBTBT(0.50g、1.31mmol)にアルゴン雰囲気下で脱水ジクロロメタン25mLを加え、攪拌した。次に混合液を−70℃に冷却し、塩化アルミニウム(0.70g、5.25mmol)を添加し、さらにベンゾイルクロリド(0.2mL、1.45mmol)を滴下した。反応液を0℃まで昇温し、2時間攪拌した後、反応液を水に再沈して反応を停止した。そこへクロロホルムを加え、分液ロートへ移送し、有機層を水、食塩水で分液洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、濃縮した。精製はシリカゲルカラム(溶媒組成はヘキサン:ジクロロメタン=90:10から50:50のグラディエント)を行い、2−デシル−7−ベンゾイルBTBTを0.35g得た(収率55%)。
【0131】
次いで、2Mのトリメチルシリルジアゾメタン溶液(0.72mL、1.44mmol)をアルゴン雰囲気下で脱水テトラヒドロフラン4mLに加え、攪拌した。更に混合液を−70℃に冷却し、1.55Mのn−ブチルリチウム溶液(0.93mL、1.44mmol)を滴下し、トリメチルシリルジアゾメタンのリチウム塩を発生させた。30分攪拌した後、脱水テトラヒドロフラン7mLを加えた2−デシル−7−ベンゾイルBTBT(0.35g、0.72mmol)溶液を、反応液へ加えた。その後反応液を室温まで昇温し、2.5時間攪拌した後、酢酸10%のメタノール溶液を加え反応を停止した。そこへクロロホルムを加え、分液ロートへ移送し、有機層を水、食塩水で分液洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、濃縮した。精製はシリカゲルカラム(シリカゲルと金属スカベンジャーにまぶした生成物を、55℃に加熱したシクロヘキサンで分取)で回収した生成物をアセトンで再結晶することで、(VIII)で表されるBTBT誘導体を0.09g得た(収率25%)。
1H−NMR(300MHz,CDCl
3):δ 8.08(1H,d,J=1.8Hz),7.83(1H,d,J=8.2Hz),7.78(1H,d,J=7.8Hz),7.72(1H,s),7.61−7.55(3H,m),7.38−7.35(3H,m),7.29(1H,dd,J=7.8Hz),2.77(2H,t,J=7Hz),1.70(2H,quint.,J=7Hz),1.55−1.27(14H,m,J=15.0,7.3Hz),0.88(3H,t,J=7Hz).
FD−MS:[M]
+=480.3
【0132】
【化28】
【0133】
(実施例9)<化合物の製造>
特許文献7に従って合成した2−デシルBTBT(0.50g、1.31mmol)にアルゴン雰囲気下で脱水ジクロロメタン25mLを加え、攪拌した。次に混合液を−70℃に冷却し、塩化アルミニウム(0.70g、5.25mmol)を添加し、さらにp−トルオイルクロリド(0.2mL、1.45mmol)を滴下した。反応液を0℃まで昇温し、2時間攪拌した後、反応液を水に再沈して反応を停止した。そこへクロロホルムを加え、分液ロートへ移送し、有機層を水、食塩水で分液洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、濃縮した。精製はシリカゲルカラム(溶媒組成はヘキサン:ジクロロメタン=90:10から50:50のグラディエント)を行い、2−デシル−7−(4−トルオイル)BTBTを0.36g得た(収率57%)。
【0134】
次いで、2Mのトリメチルシリルジアゾメタン溶液(0.72mL、1.44mmol)をアルゴン雰囲気下で脱水テトラヒドロフラン4mLに加え、攪拌した。更に混合液を−70℃に冷却し、1.55Mのn−ブチルリチウム溶液(0.93mL、1.44mmol)を滴下し、トリメチルシリルジアゾメタンのリチウム塩を発生させた。30分攪拌した後、脱水テトラヒドロフラン7mLを加えた2−デシル−7−(p−トルオイル)BTBT(0.36g、0.72mmol)溶液を、反応液へ加えた。その後反応液を室温まで昇温し、2.5時間攪拌した後、酢酸10%のメタノール溶液を加え反応を停止した。そこへクロロホルムを加え、分液ロートへ移送し、有機層を水、食塩水で分液洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、濃縮した。精製はシリカゲルカラム(シリカゲルと金属スカベンジャーにまぶした生成物を、55℃に加熱したシクロヘキサンで分取)で回収した生成物をアセトンで再結晶することで、(IX)で表されるBTBT誘導体を0.09g得た(収率24%)。
1H−NMR(300MHz,CDCl
3):δ 8.08(1H,d,J=1.8Hz),7.83(1H,d,J=8.2Hz),7.78(1H,d,J=7.8Hz),7.72(1H,s),7.57(1H,dd,J=8.2Hz),7.44(2H,d),7.29(1H,dd,J=7.8Hz),7.16(2H,d),2.77(2H,t,J=7Hz),2.37(3H,s),1.70(2H,quint.,J=7Hz),1.55−1.27(14H,m,J=15.0,7.3Hz),0.88(3H,t,J=7Hz).
FD−MS:[M]
+=494.3
【0135】
【化29】
【0136】
(比較例1)
WO2006/077888記載の方法にて(I’)で表される化合物を合成した。得られた化合物について、実施例1と同様に有機トランジスタの製造、半導体特性(移動度)の評価を実施した。結果を表1に示す。
【0137】
【化30】
【0138】
(比較例2)
国際公開第2009/125721号記載の方法にて(II’)で表される化合物を合成した。得られた化合物について、実施例1と同様に有機トランジスタの製造、半導体特性(移動度)の評価を実施した。結果を表1に示す。
【0139】
【化31】
【0140】
(比較例3)
国際公開第2014/038708号記載の方法にて(III’)で表される化合物を合成した。得られた化合物について、実施例同様に溶解性の評価、又トランジスタ評価を行った結果を表1に記載した。
【0141】
【化32】
【0142】
【表1】
【0143】
表1の結果より、本発明の化合物は、溶媒溶解性が高く、又、与える多結晶膜の均質性が高いため、有機半導体溶液(インク)液滴の滴下(ドロップキャスト)とその乾燥によって有機半導体層を形成しても、高い半導体特性(移動度)を呈する有機トランジスタを与える。これに対し、比較例の化合物は、当該成膜法では、半導体特性(移動度)が低い。