特許第6656508号(P6656508)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6656508ベンゾチエノベンゾチオフェン誘導体、有機半導体材料、及び有機トランジスタ
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  • 特許6656508-ベンゾチエノベンゾチオフェン誘導体、有機半導体材料、及び有機トランジスタ 図000031
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6656508
(24)【登録日】2020年2月7日
(45)【発行日】2020年3月4日
(54)【発明の名称】ベンゾチエノベンゾチオフェン誘導体、有機半導体材料、及び有機トランジスタ
(51)【国際特許分類】
   C07D 495/04 20060101AFI20200220BHJP
【FI】
   C07D495/04 101
   C07D495/04CSP
【請求項の数】1
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2015-193557(P2015-193557)
(22)【出願日】2015年9月30日
(65)【公開番号】特開2017-66089(P2017-66089A)
(43)【公開日】2017年4月6日
【審査請求日】2018年7月25日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成26年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、研究成果展開事業、研究成果最適展開支援プログラム(A−STEP)、産学共同促進ステージ ハイリスク挑戦タイプ、「液晶性有機トランジスタ材料の開発」産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】304021417
【氏名又は名称】国立大学法人東京工業大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177471
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 眞治
(74)【代理人】
【識別番号】100124970
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 通洋
(72)【発明者】
【氏名】半那 純一
(72)【発明者】
【氏名】岡村 寿
(72)【発明者】
【氏名】臼井 孝之
(72)【発明者】
【氏名】飯野 裕明
【審査官】 伊佐地 公美
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−078174(JP,A)
【文献】 特開2008−290963(JP,A)
【文献】 特開2015−129098(JP,A)
【文献】 特開2012−001442(JP,A)
【文献】 特開2009−267132(JP,A)
【文献】 特開2011−258900(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/121393(WO,A1)
【文献】 国際公開第2006/077888(WO,A1)
【文献】 特開2015−054855(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
C09D
H01L
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)
【化1】
(式中、Arは置換基を有してもよい芳香族炭化水素基又は複素芳香族基を表し、R、Rは、それぞれ独立して、炭素数1〜20のアルキレン基、又は二価の脂環族基を表し、X、Xは、それぞれ独立してO、S、NHを表し、nは0又は1を表し、は、n=0の場合、置換基として芳香族炭化水素基、複素芳香族基又は脂環式炭化水素基をもつ炭素数1〜20のアルキル基、又は一般式(A)〜(C)
【化2】
(Ar’は置換基を有してもよい芳香族炭化水素基又は複素芳香族基を表し、mは、1〜20の整数を表す。)
から選ばれる基を表し、
n=1の場合、置換基を有しても良い芳香族炭化水素基又は複素芳香族基、置換基として芳香族炭化水素基又は複素芳香族基を有してもよい炭素数1〜20のアルキル基、又は一般式(A)〜(C)
【化3】
(Ar’は置換基を有してもよい芳香族炭化水素基又は複素芳香族基を表し、mは、1〜20の整数を表す。)
から選ばれる基を表す。)
で表される化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベンゾチエノベンゾチオフェン誘導体、それを用いた有機半導体材料、これを含有する有機半導体インク、及びそれを用いた有機トランジスタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アモルファスシリコンや多結晶シリコンを用いてなる薄膜トランジスタ(TFT)が、液晶表示装置や有機EL表示装置などのスイッチング素子として広く用いられている。しかし、これらシリコンを用いたTFTの作製に用いられるCVD装置は、高価であるため、大型のTFT素子の製造は製造コストの増大を招くことになる。また、シリコン材料は高温下で成膜されるため、今後フレキシブルディスプレイの基板候補であるプラスチック基板には耐熱性の問題から展開できない。これを解決するために、シリコン半導体に代えて、有機半導体をチャネル半導体層に用いた有機TFTが提案されている。
【0003】
有機半導体は溶液とすることで、低温で印刷成膜できるため、大規模な製造設備を必要とせず、また、耐熱性の乏しいプラスチック上にも適用でき、フレキシブルディスプレイを牽引すると期待されている。一方、有機半導体はシリコン半導体に比べ、キャリア移動度が低く、その結果、TFTの応答速度が遅くなることが実用化の課題であったが、近年、アモルファスシリコン同等の移動度の有機半導体が開発されてきた。
【0004】
例えば、特許文献1には、2,7−置換[1]ベンゾチエノ[3,2−b][1]ベンゾチオフェン骨格(以下、[1]ベンゾチエノ[3,2−b][1]ベンゾチオフェンをBTBTと略する)を有する化合物が記載されており、その置換基として、ハロゲン、C−C18アルキル、ハロゲンを有するC−C18アルキル、C−C18アルキルオキシ、C−C18アルキルチオ、もしくはアリール、又は、ハロゲン、C−C18アルキル、ハロゲンを有するC−C18アルキル、C−C18アルキルオキシ、C−C18アルキルチオの少なくとも一つを有するアリールであるものが記載されている。これら化合物の移動度(cm/Vs)は、0.17〜0.31cm/Vsであるという。
【0005】
また、特許文献2には、2,7−置換BTBT骨格を有する化合物が記載されており、その置換基として、水素原子、ハロゲノ置換C−C36脂肪速炭化水素基であるものが記載されている。これら化合物の移動度(cm/Vs)は、0.12〜4.5cm/Vsであることが記載されている。
【0006】
一方、特許文献3には、2−アルキル−7−アリールBTBTが開示されている。この化合物は、高次の液晶相を経由して結晶化することにより、分子配列の秩序性が高い
膜を簡便に形成することができ、移動度5cm/Vsに達する高い移動度の膜を容易に与えることができるという。しかし、この化合物は、アリール基がBTBTと直接結合しており、有機溶媒への溶解性が低いことが課題となっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】WO2006−077888号公報
【特許文献2】WO2008−47896号公報
【特許文献3】WO2012−121393号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来材料は、未だ移動度が1cm/Vs未満のものが多く、液晶表示装置や有機ELを駆動するには不十分である。また、高移動度が報告されている特許文献2の化合物はスピンコート成膜することができるものの、高移動度を発現するためには熱処理しなければならず、処理温度や処理時間のバラツキによって、同条件で作製したTFTであっても、移動度のバラツキが大きい。
【0009】
従って、有機半導体材料には分子自身のキャリア移動度の向上に加え、印刷成膜しても性能が低下せず、容易に高い移動度の膜を形成することが求められている。
【0010】
そこで、本発明の課題は、高い溶媒溶解性をもち、煩雑なプロセスを得ることなく高いキャリア移動度をもった膜を得ることができる化合物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明では、鋭意検討を行ったところ、BTBT誘導体のアルキル置換基に特定構造の可溶性官能基を導入することで、有機溶媒への高い溶解性を示し、高い移動度の膜を容易に形成することを見出し、本発明を完成するに至った。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、高い溶解性と高い移動度を兼ね備えた有機半導体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】ボトムゲートボトムコンタクト型トランジスタの模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
即ち、本発明は以下の項目から構成される。
1.一般式(1)
【0015】
【化1】
【0016】
(式中、Arは置換基を有してもよい芳香族炭化水素基又は複素芳香族基を表し、R、Rは、それぞれ独立して、炭素数1〜20のアルキレン基、又は二価の脂環族基を表し、X、Xは、それぞれ独立してO、S、NHを表し、nは0又は1を表し、は、n=0の場合、置換基として芳香族炭化水素基、複素芳香族基又は脂環式炭化水素基をもつ炭素数1〜20のアルキル基、又は一般式(A)〜(C)
【0017】
【化2】
【0018】
(Ar’は置換基を有してもよい芳香族炭化水素基又は複素芳香族基を表し、mは、1〜20の整数を表す。)
から選ばれる基を表し、
n=1の場合、置換基を有しても良い芳香族炭化水素基又は複素芳香族基、置換基として芳香族炭化水素基又は複素芳香族基を有してもよい炭素数1〜20のアルキル基、又は一般式(A)〜(C)
【0019】
【化3】
【0020】
(Ar’は置換基を有してもよい芳香族炭化水素基又は複素芳香族基を表し、mは、1〜○の整数を表す。)
から選ばれる基を表す。)
で表される化合物、
2.1.に記載の化合物を含有する有機半導体材料
3.2.に記載の有機半導体材料を含有する有機半導体インク、
4.2.に記載の有機半導体材料を含有する有機半導体膜、
5.2.に記載の有機半導体材料を用いてなる有機半導体デバイス、
6.2.に記載の有機半導体材料を有機半導体層として用いる有機トランジスタ。
【0021】
(一般式(1)で表される化合物)
本発明の一般式(1)で表される置換基のArは、置換基を有してもよい芳香族炭化水素基または置換基を有してもよい複素芳香族基であれば、特に制限はないが、例えば以下のものを挙げることができる。
置換基を有してもよい芳香族炭化水素基としては、フェニル基、ナフチル基、アズレニル基、アセナフテニル基、アントラニル基、フェナントリル基、ナフタセニル基、フルオレニル基、ピレニル基、クリセニル基、ペリレニル基、ビフェニル基、p−ターフェニル基、クォーターフェニル基などの無置換の炭素数6〜24の単環または多環式芳香族炭化水素基、
o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、2,4−キシリル基、2,6−キシリル基、メシチル基、ジュリル基、4−エチルフェニル基、4−n−プロピルフェニル基、4−イソプロピルフェニル基、4−n−ブチルフェニル基、4−n−ペンチルフェニル基、4−n−ヘキシルフェニル基、4−n−デカフェニル基、4−ステアリルフェニル基、9,9‘−ジヘキシルフルオレニル基など、前記芳香族炭化水素基が炭素数1〜18のアルキル基で置換されたアルキル置換芳香族炭化水素基、
スチリル基、4−ブテニルフェニル基、4−オクタデセニルフェニル基など、前記の芳香族炭化水素基が炭素数2〜20のアルケニル基で置換されたアルケニル置換芳香族炭化水素基、
【0022】
4−フルオロフェニル基、2,6−フルオロフェニル基、4−クロロフェニル基、2,3,4,5,6−パーフルオロフェニル基など、前記の芳香族炭化水素基がフッ素原子、塩素原子、臭素原子などのハロゲンで置換されたハロゲン化芳香族炭化水素基、
4−(2−エトキシエチル)フェニル基、4−(2−n−ヘキシルオキシエチル)フェニル基、4−(2−n−ヘプチルオキシエチル)フェニル基、4−(2−n−テトラデシルオキシエチル)フェニル基、4−(2−シクロヘキシルオキシエチル)フェニル基、4−(12−エトキシドデシル)フェニル基、4−(シクロヘキシルオキシエチル)フェニル基など、前記芳香族炭化水素基が炭素数3〜20のアルコキシアルキル基で置換されたアルコキシアルキル置換芳香族炭化水素基、
4−(メチルスルファニルプロピル)フェニル基、4−(2−n−ヘキシルスルファニルエチル)フェニル基、4−(3−n−デシルスルファニルプロピル)フェニル基、4−(シクロヘキシルスルファニルプロピル)フェニル基など、前記の芳香族炭化水素基が炭素数3〜20のアルキルスルファニルアルキル基で置換されたアルキルスルファニルアルキル置換芳香族炭化水素基、
4−(3−オクチルアミノプロピル)フェニル基、4−(3−ドデシルアミノプロピル)フェニル基、4−(ジエチルアミノエチル)フェニル基など、前記の芳香族炭化水素基が炭素数3〜20のアルキルアミノアルキル基で置換されたアルキルアミノアルキル置換芳香族炭化水素基、などが挙げられる。
【0023】
また、置換基を有してもよい複素芳香族基としては、ピロリル基、インドリル基、フリル基、チエニル基、イミダゾリル基、ベンゾフリル基、トリアゾリル基、ベンゾトリアゾリル基、ベンゾチエニル基、ピラゾリル基、インドリジニル基、キノリニル基、イソキノリニル基、カルバゾリル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチオフェニル基、インドリニル基、チアゾリル基、ピリジル基、ピリミジル基、ピラジニル基、ピリダジニル基、チアジアジニル基、オキサジアゾリル基、ベンゾキノリニル基、チアジアゾリル基、ピロロチアゾリル基、ピロロピリダジニル基、テトラゾリル基、オキサゾリル基など、5員環または6員環の複素芳香族基や、該複素芳香族基にベンゼンが縮合した多環式複素芳香族基、
5−メチルチエニル基、5−ヘキシルチエニル基、5−デカチエニル基、5−ステアリルチエニル基など前記複素芳香族基が炭素数1〜20のアルキル基で置換されたアルキル置換複素芳香族基、
【0024】
フルオロピリジニル基、フルオロインドリル基など、前記の複素芳香族基がフッ素原子、塩素原子、臭素原子などのハロゲンで置換されたハロゲン化複素芳香族基、
5−(2−エトキシエチル)チエニル基、5−(2−n−テトラデシルオキシエチル)チエニル基、5−(2−シクロヘキシルオキシエチル)チエニル基、5−(12−エトキシドデシル)チエニル基など、前記芳香族炭化水素基が炭素数3〜20のアルコキシアルキル基で置換されたアルコキシアルキル置換複素芳香族基、
【0025】
5−(メチルスルファニルプロピル)チエニル基、5−(2−n−ヘキシルスルファニルエチル)チエニル基、5−(3−n−デシルスルファニルプロピル)チエニル基、5−(シクロヘキシルスルファニルプロピル)チエニル基など、前記の芳香族炭化水素基が炭素数3〜20のアルキルスルファニルアルキル基で置換されたアルキルスルファニルアルキル置換複素芳香族基、
5−(3−オクチルアミノプロピル)チエニル基、5−(3−ドデシルアミノプロピル)チエニル基、5−(ジエチルアミノエチル)チエニル基など、前記の複素芳香族基が炭素数3〜20のアルキルアミノアルキル基で置換されたアルキルアミノアルキル置換複素芳香族基、などが挙げられる。
【0026】
上記の中でも、高い溶解性と移動度を維持するため、Arは、単環式芳香族炭化水素基、または単環式複素芳香族基が好ましい。また、置換基を有す場合は、炭素数1〜12の置換基を有する芳香族炭化水素基または複素芳香族基が特に好ましい。
【0027】
一般式(1)の−R−X−(R−X)n−Rで表される置換基のR、Rは、それぞれ独立して、炭素数1〜20のアルキレン基、又は脂環族基であれば、特に制限はないが、Rは、溶解性と移動度の観点から炭素数8〜15が好ましい。 Rは、溶解性の観点から、炭素数5以下が好ましく、特に好ましくは、炭素数3以下である。
【0028】
一般式(1)で表されるX1、は、それぞれ独立してO、S、NHであれば、特に制限はないが、溶解性と移動度の観点からOが好ましい。
【0029】
一般式(1)で表されるRは、n=0の場合、置換基として芳香族炭化水素基、複素芳香族基又は脂環式炭化水素基をもつ炭素数1〜20のアルキル基、又は一般式(A)〜(C)
【0030】
【化4】
【0031】
(Ar’は置換基を有してもよい芳香族炭化水素基又は複素芳香族基を表し、mは、1〜20の整数を表す。)
から選ばれる基であれば問題ないが、Rは、溶解性と移動度の観点から5以下のアルキル基が好ましく、特に好ましくは炭素数3以下のアルキル基である。
【0032】
また、置換基として芳香族炭化水素基は、フェニル基、ナフチル基、アズレニル基、アセナフテニル基、アントラニル基、フェナントリル基、ナフタセニル基、フルオレニル基、ピレニル基、クリセニル基、ペリレニル基、ビフェニル基、p−ターフェニル基、クォーターフェニル基などの無置換の炭素数6〜24の単環または多環式芳香族炭化水素基、
【0033】
o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、2,4−キシリル基、2,6−キシリル基、メシチル基、ジュリル基、4−エチルフェニル基、4−n−プロピルフェニル基、4−イソプロピルフェニル基、4−n−ブチルフェニル基、4−n−ペンチルフェニル基、4−n−ヘキシルフェニル基、4−n−デカフェニル基、4−ステアリルフェニル基、9,9‘−ジヘキシルフルオレニル基など、前記芳香族炭化水素基が炭素数1〜18のアルキル基で置換されたアルキル置換芳香族炭化水素基、
スチリル基、4−ブテニルフェニル基、4−オクタデセニルフェニル基など、前記の芳香族炭化水素基が炭素数2〜20のアルケニル基で置換されたアルケニル置換芳香族炭化水素基、
【0034】
4−フルオロフェニル基、2,6−フルオロフェニル基、4−クロロフェニル基、2,3,4,5,6−パーフルオロフェニル基など、前記の芳香族炭化水素基がフッ素原子、塩素原子、臭素原子などのハロゲンで置換されたハロゲン化芳香族炭化水素基、
4−(2−エトキシエチル)フェニル基、4−(2−n−ヘキシルオキシエチル)フェニル基、4−(2−n−ヘプチルオキシエチル)フェニル基、4−(2−n−テトラデシルオキシエチル)フェニル基、4−(2−シクロヘキシルオキシエチル)フェニル基、4−(12−エトキシドデシル)フェニル基、4−(シクロヘキシルオキシエチル)フェニル基など、前記芳香族炭化水素基が炭素数3〜20のアルコキシアルキル基で置換されたアルコキシアルキル置換芳香族炭化水素基、
【0035】
4−(メチルスルファニルプロピル)フェニル基、4−(2−n−ヘキシルスルファニルエチル)フェニル基、4−(3−n−デシルスルファニルプロピル)フェニル基、4−(シクロヘキシルスルファニルプロピル)フェニル基など、前記の芳香族炭化水素基が炭素数3〜20のアルキルスルファニルアルキル基で置換されたアルキルスルファニルアルキル置換芳香族炭化水素基、
4−(3−オクチルアミノプロピル)フェニル基、4−(3−ドデシルアミノプロピル)フェニル基、4−(ジエチルアミノエチル)フェニル基など、前記の芳香族炭化水素基が炭素数3〜20のアルキルアミノアルキル基で置換されたアルキルアミノアルキル置換芳香族炭化水素基、などが挙げられる。
【0036】
また、置換基として複素芳香族基は、ピロリル基、インドリル基、フリル基、チエニル基、イミダゾリル基、ベンゾフリル基、トリアゾリル基、ベンゾトリアゾリル基、ベンゾチエニル基、ピラゾリル基、インドリジニル基、キノリニル基、イソキノリニル基、カルバゾリル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチオフェニル基、インドリニル基、チアゾリル基、ピリジル基、ピリミジル基、ピラジニル基、ピリダジニル基、チアジアジニル基、オキサジアゾリル基、ベンゾキノリニル基、チアジアゾリル基、ピロロチアゾリル基、ピロロピリダジニル基、テトラゾリル基、オキサゾリル基など、5員環または6員環の複素芳香族基や、該複素芳香族基にベンゼンが縮合した多環式複素芳香族基、
5−メチルチエニル基、5−ヘキシルチエニル基、5−デカチエニル基、5−ステアリルチエニル基など前記複素芳香族基が炭素数1〜20のアルキル基で置換されたアルキル置換複素芳香族基、
【0037】
フルオロピリジニル基、フルオロインドリル基など、前記の複素芳香族基がフッ素原子、塩素原子、臭素原子などのハロゲンで置換されたハロゲン化複素芳香族基、5−(2−エトキシエチル)チエニル基、5−(2−n−テトラデシルオキシエチル)チエニル基、5−(2−シクロヘキシルオキシエチル)チエニル基、5−(12−エトキシドデシル)チエニル基など、前記芳香族炭化水素基が炭素数3〜20のアルコキシアルキル基で置換されたアルコキシアルキル置換複素芳香族基、
【0038】
5−(メチルスルファニルプロピル)チエニル基、5−(2−n−ヘキシルスルファニルエチル)チエニル基、5−(3−n−デシルスルファニルプロピル)チエニル基、5−(シクロヘキシルスルファニルプロピル)チエニル基など、前記の芳香族炭化水素基が炭素数3〜20のアルキルスルファニルアルキル基で置換されたアルキルスルファニルアルキル置換複素芳香族基、
5−(3−オクチルアミノプロピル)チエニル基、5−(3−ドデシルアミノプロピル)チエニル基、5−(ジエチルアミノエチル)チエニル基など、前記の複素芳香族基が炭素数3〜20のアルキルアミノアルキル基で置換されたアルキルアミノアルキル置換複素芳香族基、などが挙げられる。
【0039】
また、置換基として脂環式炭化水素基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロプロペン基、シクロブテン基、シクロペンテン基、シクロへキセン基、シクロヘプテン基、シクロオクテン基などが挙げられる。
【0040】
上記の中でも、高い溶解性を維持するため、置換基としては、単環式芳香族炭化水素基、単環式複素芳香族基が好ましい。
【0041】
一般式(1)で表されるRは、n=1の場合、置換基を有しても良い芳香族炭化水素基又は複素芳香族基、置換基として芳香族炭化水素基又は複素芳香族基を有してもよい炭素数1〜20のアルキル基、又は一般式(A)〜(C)
【0042】
【化5】
【0043】
(Ar’は置換基を有してもよい芳香族炭化水素基又は複素芳香族基を表し、mは、1〜○の整数を表す。)
から選ばれる基であれば特に制限はないが、溶解性の観点から、炭素数5以下のアルキル基が好ましく、特に好ましくは炭素数3以下のアルキル基である。
【0044】
また、Ar’は置換基を有してもよい芳香族炭化水素基又は複素芳香族基であるが、当該Ar’は、前記の置換基を有してもよい芳香族炭化水素基又は複素芳香族基と同一の基を挙げることができる。
【0045】
また、一般式(1)の−R−X−(R−X)n−Rで表される置換を具体的には、n=0の場合、(I)アラルコキシアルキル基、n=1の場合、(II)アルコキシアルコキシアルキル基、(III)アリールオキシアルコキシアルキル基であり、それぞれを以下のように例示できる。
【0046】
(I)アラルコキシアルキル基としては、例えば、ベンジルオキシメチル基、2−(ベンジルオキシ)エチル基、3−(ベンジルオキシ)プロピル基、4−(ベンジルオキシ)ブチル基、5−(ベンジルオキシ)ペンチル基,6−(ベンジルオキシ)ヘキシル基、7−(ベンジルオキシ)ヘプチル基、8−(ベンジルオキシ)オクチル基、9−(ベンジルオキシ)ノニル基、10−(ベンジルオキシ)デシル基、 11−(ベンジルオキシ)ウンデシル基、12−(ベンジルオキシ)ドデシル基、13−(ベンジルオキシ)トリデシル基、14−(ベンジルオキシ)テトラデシル基、15−(ベンジルオキシ)ペンタデシル基、16−(ベンジルオキシ)ヘキサデシル基、17−(ベンジルオキシ)ヘプタデシル基、18−(ベンジルオキシ)オクタデシル基、19−(ベンジルオキシ)ノナデシル基、20−(ベンジルオキシ)イコシル基、
【0047】
フェネトキシメチル基、2−フェネトキシエチル基、3−フェネトキシプロピル基、4−フェネトキシブチル基、5−フェネトキシペンチル基,6−フェネトキシヘキシル基、7−フェネトキシヘプチル基、8−フェネトキシオクチル基、9−フェネトキシノニル基、10−フェネトキシデシル基、 11−フェネトキシウンデシル基、12−フェネトキシドデシル基、13−フェネトキシトリデシル基、14−フェネトキシテトラデシル基、15−フェネトキシペンタデシル基、16−フェネトキシヘキサデシル基、17−フェネトキシヘプタデシル基、18−フェネトキシオクタデシル基、19−フェネトキシノナデシル基、20−フェネトキシイコシル基、
などが挙げられる。
【0048】
(II)アルコキシアルコキシアルキル基としては、例えば(メトキシメトキシ)メチル基、2−(メトキシメトキシ)エチル基、3−(メトキシメトキシ)プロピル基、4−(メトキシメトキシ)ブチル基、5−(メトキシメトキシ)ペンチル基、6−(メトキシメトキシ)ヘキシル基、7−(メトキシメトキシ)ヘプチル基、8−(メトキシメトキシ)オクチル基、9−(メトキシメトキシ)ノニル基、10−(メトキシメトキシ)デシル基、11−(メトキシメトキシ)ウンデシル基、12−(メトキシメトキシ)ドデシル基、13−(メトキシメトキシ)トリデシル基、14−(メトキシメトキシ)テトラデシル基、15−(メトキシメトキシ)ペンタデシル基、16−(メトキシメトキシ)ヘキサデシル基、17−(メトキシメトキシ)ヘプタデシル基、18−(メトキシメトキシ)オクタデシル基、19−(メトキシメトキシ)ノナデシル基、20−(メトキシメトキシ)イコシル基、
【0049】
(メトキシエトキシ)メチル基、2−(メトキシエトキシ)エチル基、3−(メトキシエトキシ)プロピル基、4−(メトキシエトキシ)ブチル基、5−(メトキシエトキシ)ペンチル基、6−(メトキシエトキシ)ヘキシル基、7−(メトキシエトキシ)ヘプチル基、8−(メトキシエトキシ)オクチル基、9−(メトキシエトキシ)ノニル基、10−(メトキシエトキシ)デシル基、11−(メトキシエトキシ)ウンデシル基、12−(メトキシエトキシ)ドデシル基、13−(メトキシエトキシ)トリデシル基、14−(メトキシエトキシ)テトラデシル基、15−(メトキシエトキシ)ペンタデシル基、16−(メトキシエトキシ)ヘキサデシル基、17−(メトキシエトキシ)ヘプタデシル基、18−(メトキシエトキシ)オクタデシル基、19−(メトキシエトキシ)ノナデシル基、20−(メトキシエトキシ)イコシル基、
【0050】
(メトキシプロポキシ)メチル基、2−(メトキシプロポキシ)エチル基、3−(メトキシプロポキシ)プロピル基、4−(メトキシプロポキシ)ブチル基、5−(メトキシプロポキシ)ペンチル基、6−(メトキシプロポキシ)ヘキシル基、7−(メトキシプロポキシ)ヘプチル基、8−(メトキシプロポキシ)オクチル基、9−(メトキシプロポキシ)ノニル基、10−(メトキシプロポキシ)デシル基、11−(メトキシプロポキシ)ウンデシル基、12−(メトキシプロポキシ)ドデシル基、13−(メトキシプロポキシ)トリデシル基、14−(メトキシプロポキシ)テトラデシル基、15−(メトキシプロポキシ)ペンタデシル基、16−(メトキシプロポキシ)ヘキサデシル基、17−(メトキシプロポキシ)ヘプタデシル基、18−(メトキシプロポキシ)オクタデシル基、19−(メトキシプロポキシ)ノナデシル基、20−(メトキシプロポキシ)イコシル基、
【0051】
(ベンジルオキシメトキシ)メチル基、2−((ベンジルオキシ)メトキシ)エチル基、3−((ベンジルオキシ)メトキシ)プロピル基、4−((ベンジルオキシ)メトキシ)ブチル基、5−((ベンジルオキシ)メトキシ)ペンチル基、6−((ベンジルオキシ)メトキシ)ヘキシル基、7−((ベンジルオキシ)メトキシ)ヘプチル基、8−((ベンジルオキシ)メトキシ)オクチル基、9−((ベンジルオキシ)メトキシ))ノニル基、10−((ベンジルオキシ)メトキシ)デシル基、11−((ベンジルオキシ)メトキシ)ウンデシル基、12−((ベンジルオキシ)メトキシ)ドデシル基、13−((ベンジルオキシ)メトキシ)トリデシル基、14−((ベンジルオキシ)メトキシ)テトラデシル基、15−((ベンジルオキシ)メトキシ)ペンタデシル基、16−((ベンジルオキシ)メトキシ)ヘキサデシル基、17−((ベンジルオキシ)メトキシ)ヘプタデシル基、18−((ベンジルオキシ)メトキシ)オクタデシル基、19−((ベンジルオキシ)メトキシ)ノナデシル基、20−((ベンジルオキシ)メトキシ)イコシル基、
【0052】
(フェネトキシメトキシ)メチル基、2−((フェネトキシ)メトキシ)エチル基、3−((フェネトキシ)メトキシ)プロピル基、4−((フェネトキシ)メトキシ)ブチル基、5−((フェネトキシ)メトキシ)ペンチル基、6−((フェネトキシ)メトキシ)ヘキシル基、7−((フェネトキシ)メトキシ)ヘプチル基、8−((フェネトキシ)メトキシ)オクチル基、9−((フェネトキシ)メトキシ))ノニル基、10−((フェネトキシ)メトキシ)デシル基、11−((フェネトキシ)メトキシ)ウンデシル基、12−((フェネトキシ)メトキシ)ドデシル基、13−((フェネトキシ)メトキシ)トリデシル基、14−((フェネトキシ)メトキシ)テトラデシル基、15−((フェネトキシ)メトキシ)ペンタデシル基、16−((フェネトキシ)メトキシ)ヘキサデシル基、17−((フェネトキシ)メトキシ)ヘプタデシル基、18−((フェネトキシ)メトキシ)オクタデシル基、19−((フェネトキシ)メトキシ)ノナデシル基、20−((フェネトキシ)メトキシ)イコシル基、
【0053】
(ベンジルオキシエトキシ)メチル基、2−((ベンジルオキシ)エトキシ)エチル基、3−((ベンジルオキシ)エトキシ)プロピル基、4−((ベンジルオキシ)エトキシ)ブチル基、5−((ベンジルオキシ)エトキシ)ペンチル基、6−((ベンジルオキシ)エトキシ)ヘキシル基、7−((ベンジルオキシ)エトキシ)ヘプチル基、8−((ベンジルオキシ)エトキシ)オクチル基、9−((ベンジルオキシ)エトキシ))ノニル基、10−((ベンジルオキシ)エトキシ)デシル基、11−((ベンジルオキシ)エトキシ)ウンデシル基、12−((ベンジルオキシ)エトキシ)ドデシル基、13−((ベンジルオキシ)エトキシ)トリデシル基、14−((ベンジルオキシ)エトキシ)テトラデシル基、15−((ベンジルオキシ)エトキシ)ペンタデシル基、16−((ベンジルオキシ)エトキシ)ヘキサデシル基、17−((ベンジルオキシ)エトキシ)ヘプタデシル基、18−((ベンジルオキシ)エトキシ)オクタデシル基、19−((ベンジルオキシ)エトキシ)ノナデシル基、20−((ベンジルオキシ)エトキシ)イコシル基、
【0054】
(フェネトキシエトキシ)メチル基、2−((フェネトキシ)エトキシ)エチル基、3−((フェネトキシ)エトキシ)プロピル基、4−((フェネトキシ)エトキシ)ブチル基、5−((フェネトキシ)エトキシ)ペンチル基、6−((フェネトキシ)エトキシ)ヘキシル基、7−((フェネトキシ)エトキシ)ヘプチル基、8−((フェネトキシ)エトキシ)オクチル基、9−((フェネトキシ)エトキシ))ノニル基、10−((フェネトキシ)エトキシ)デシル基、11−((フェネトキシ)エトキシ)ウンデシル基、12−((フェネトキシ)メトキシ)ドデシル基、13−((フェネトキシ)エトキシ)トリデシル基、14−((フェネトキシ)エトキシ)テトラデシル基、15−((フェネトキシ)エトキシ)ペンタデシル基、16−((フェネトキシ)エトキシ)ヘキサデシル基、17−((フェネトキシ)エトキシ)ヘプタデシル基、18−((フェネトキシ)エトキシ)オクタデシル基、19−((フェネトキシ)エトキシ)ノナデシル基、20−((フェネトキシ)エトキシ)イコシル基、
【0055】
(ベンジルオキシプロポキシ)メチル基、2−((ベンジルオキシ)プロポシ)エチル基、3−((ベンジルオキシ)プロポシ)プロピル基、4−((ベンジルオキシ)プロポ)ブチル基、5−((ベンジルオキシ)プロポキシ)ペンチル基、6−((ベンジルオキシ)プロポキシ)ヘキシル基、7−((ベンジルオキシ)プロポキシ)ヘプチル基、8−((ベンジルオキシ)プロポキシ)オクチル基、9−((ベンジルオキシ)プロポキシ))ノニル基、10−((ベンジルオキシ)プロポキシ)デシル基、11−((ベンジルオキシ)プロポキシ)ウンデシル基、12−((ベンジルオキシ)プロポキシ)ドデシル基、13−((ベンジルオキシ)プロポキシ)トリデシル基、14−((ベンジルオキシ)プロポキシ)テトラデシル基、15−((ベンジルオキシ)プロポキシ)ペンタデシル基、16−((ベンジルオキシ)プロポキシ)ヘキサデシル基、17−((ベンジルオキシ)プロポキシ)ヘプタデシル基、18−((ベンジルオキシ)プロポキシ)オクタデシル基、19−((ベンジルオキシ)プロポキシ)ノナデシル基、20−((ベンジルオキシ)プロポキシ)イコシル基、
【0056】
(フェネトキシプロポキシ)メチル基、2−((フェネトキシ)プロポキシ)エチル基、3−((フェネトキシ)プロポキシ)プロピル基、4−((フェネトキシ)プロポキシ)ブチル基、5−((フェネトキシ)プロポキシ)ペンチル基、6−((フェネトキシ)プロポキシ)ヘキシル基、7−((フェネトキシ)プロポキシ)ヘプチル基、8−((フェネトキシ)プロポキシ)オクチル基、9−((フェネトキシ)プロポキシ))ノニル基、10−((フェネトキシ)プロポキシ)デシル基、11−((フェネトキシ)プロポキシ)ウンデシル基、12−((フェネトキシ)プロポキシ)ドデシル基、13−((フェネトキシ)プロポキシ)トリデシル基、14−((フェネトキシ)プロポキシ)テトラデシル基、15−((フェネトキシ)プロポキシ)ペンタデシル基、16−((フェネトキシ)プロポキシ)ヘキサデシル基、17−((フェネトキシ)プロポキシ)ヘプタデシル基、18−((フェネトキシ)プロポキシ)オクタデシル基、19−((フェネトキシ)プロポキシ)ノナデシル基、20−((フェネトキシ)プロポキシ)イコシル基、などが挙げられる。
【0057】
(III)アリールオキシアルコキシアルキル基としては、例えば(フェノキシメトキシ)メチル基、2−(フェノキシメトキシ)エチル基、3−((フェノキシメトキシ)プロピル基、4−(フェノキシメトキシ)ブチル基、5−(フェノキシメトキシ)ペンチル基、6−(フェノキシメトキシ)ヘキシル基、7−(フェノキシメトキシ)ヘプチル基、8−(フェノキシメトキシ)オクチル基、9−(フェノキシメトキシ)ノニル基、10−(フェノキシメトキシ)デシル基、11−(フェノキシメトキシ)ウンデシル基、12−(フェノキシメトキシ)ドデシル基、13−(フェノキシメトキシ)トリデシル基、14−(フェノキシメトキシ)テトラデシル基、15−(フェノキシメトキシ)ペンタデシル基、16−(フェノキシメトキシ)ヘキサデシル基、17−(フェノキシメトキシ)ヘプタデシル基、18−(フェノキシメトキシ)オクタデシル基、19−(フェノキシメトキシ)ノナデシル基、20−(フェノキシメトキシ)イコシル基、
【0058】
(フェノキシエトキシ)メチル基、2−(2−フェノキシエトキシ)エチル基、3−((2−フェノキシエトキシ)プロピル基、4−(2−フェノキシエトキシ)ブチル基、5−(2−フェノキシエトキシ)ペンチル基、6−(2−フェノキシエトキシ)ヘキシル基、7−(2−フェノキシエトキシ)ヘプチル基、8−(2−フェノキシエトキシ)オクチル基、9−(2−フェノキシエトキシ)ノニル基、10−(2−フェノキシエトキシ)デシル基、11−(2−フェノキシエトキシ)ウンデシル基、12−(2−フェノキシエトキシ)ドデシル基、13−(2−フェノキシエトキシ)トリデシル基、14−(2−フェノキシエトキシ)テトラデシル基、15−(2−フェノキシエトキシ)ペンタデシル基、16−(2−フェノキシエトキシ)ヘキサデシル基、17−(2−フェノキシエトキシ)ヘプタデシル基、18−(2−フェノキシエトキシ)オクタデシル基、19−(2−フェノキシエトキシ)ノナデシル基、20−(2−フェノキシエトキシ)イコシル基、
【0059】
(3−フェノキシプロポキシ)メチル基、2−(3−フェノキシプロポシ)エチル基、3−(3−フェノキシプロポキシ)プロピル基、4−(3−フェノキシプロポキシ)ブチル基、5−(3−フェノキシプロポキシ)ペンチル基、6−(3−フェノキシプロポキシ)ヘキシル基、7−(3−フェノキシプロポキシ)ヘプチル基、8−(3−フェノキプロポキシ)オクチル基、9−(3−フェノキシプロポキシ)ノニル基、10−(3−フェノキシプロポキシ)デシル基、11−(3−フェノキシプロポキシ)ウンデシル基、12−(3−フェノキシプロポキシ)ドデシル基、13−(3−フェノキシプロポキシ)トリデシル基、14−(3−フェノキシプロポキシ)テトラデシル基、15−(3−フェノキシプロポキシ)ペンタデシル基、16−(3−フェノキシプロポキシ)ヘキサデシル基、17−(3−フェノキシプロポキシ)ヘプタデシル基、18−(3−フェノキシプロポキシ)オクタデシル基、19−(3−フェノキシプロポキシ)ノナデシル基、20−(3−フェノキシプロポキシ)イコシル基、などが挙げられる。
【0060】
上記の中でも、
(I)炭素数8〜20の脂肪族炭化水素からなるアラルコキシアルキル基、
(II)炭素数8〜20の脂肪族炭化水素からなるアルコキシアルコキシアルキル基、
(III)炭素数8〜20の脂肪族炭化水素からなるアリールオキシアルコキシアルキル基、が有機溶媒溶解性および移動度の観点から好ましい。
【0061】
また、上記の中でも脂肪族炭化水素の炭素の数は、R>(R+R)であることが、有機溶媒溶解性および移動度の観点からさらに好ましい。
【0062】
以上説明した置換基を有する本発明の具体的な化合物として、以下を挙げることがで
きるが、これらに限られるものではない。
【0063】
【化6】
【0064】
【化7】
【0065】
【化8】
【0066】
【化9】
【0067】
【化10】
【0068】
【化11】
【0069】
(本発明化合物の合成)
本発明化合物の合成は、公知慣用の方法を組み合わせて行うことができる。
合成経路の一例は、以下を挙げることができる。
(合成ルートの一例)
【0070】
【化12】
【0071】
先ず、BTBTを臭素化後、アリール誘導体との鈴木宮浦カップリング反応を行う。次 に、ハロゲン置換された脂肪族カルボン酸クロライドフリーデルクラフツアシル化反応し、その後、ウォルフ・キッシュナー還元することにより末端にハロゲン基を有するアルキル化された化合物を得る。次いで、水酸基を有する化合物とエーテル化反応を行うことで目的の化合物を得ることができる。
【0072】
上記反応は、特に限定されることなく、公知慣用の試薬が使用でき、反応温度も公知慣用何れの温度も適用することができる。
【0073】
以上のように得られる本発明の有機半導体材料は、溶媒溶解性が高く、成膜後に分子の並びが制御されているため、高い電荷移動度を発現する。従来化合物より素子間での移動度のバラツキが少なくなるため、種々の有機半導体デバイスに有用である。
【0074】
本発明に関わる有機半導体材料をデバイスに応用する観点からみると、コア部のHOMO、LUMOのエネルギー準位も重要となる。一般に、有機半導体のHOMOレベルは、脱水されたジクロロメタンなどの有機溶媒に被検物質を、例えば、1mmol/Lから10mmol/Lの濃度となるように溶解し、テトラブチルアンモニウム塩などの支持電解質を0.2mol/L程度加え、この溶液にPtなどの作用電極とPtなどの対向電極、およびAg/AgClなど参照電極を挿入後、ポテンショスタットにて50mV/sec程度の速度で掃引し、CV曲線を書かせ、ピークの電位および基準となる、例えばフェロセンなどの既知物質との電位の差より、HOMOレベル、LUMOレベルを見積ることができる。HOMOレベル、LUMOレベルが用いた有機溶媒の電位窓よりも外れている場合、紫外可視吸収スペクトラムの吸収端より、HOMO−LUMOレベルを計算し、測定できたレベルから差し引くことでHOMOレベルやLUMOレベルを見積ることができる。この方法は、J.Pommerehne, H.Vestweber, W.Guss, R.F.Mahrt, H.Bassler, M.Porsch,and J.Daub,Adv.Mater.,7,551(1995)を参照にすることができる。
【0075】
一般に、有機半導体材料のHOMO,LUMOレベルは、それぞれ陽極、陰極と電気的な接触の目安を与え、電極材料の仕事関数との差によって決まるエネルギー障壁の大きさによって電荷注入が制限されることになるので、注意が必要である。金属の仕事関数は、しばしば、電極として用いられる物質の例をあげると、銀(Ag)4.0eV、アルミニウム(Al)4.28eV、金(Au)5.1eV、カルシウム(Ca)2.87eV、クロム(Cr)4.5eV、銅(Cu)4.65eV、マグネシウム(Mg)3.66eV、モリブデン(Mo)4.6eV、白金(Pt)5.65eV、インジウムスズ酸化物(ITO)4.35〜4.75eV、酸化亜鉛(ZnO)4.68eVであるが、前述の観点から、有機半導体材料と電極物質との仕事関数の差は1eV以下が好ましく、より、好ましくは0.8eV以下、さらに好ましくは、0.6eV以下である。金属の仕事関数は、必要に応じて、下記の文献を参照することができる。
文献D:化学便覧 基礎編 改訂第5版II−608−610 14.1 b仕事関数 (丸善出版株式会社)(2004)
【0076】
コア部の共役したπ−電子系の大きさによりHOMO、LUMOエネルギー準位は影響を受けるため、共役系の大きさは材料を選択する際に参考となる。また、HOMO、LUMOエネルギー準位を変化させる方法として、コア部にヘテロ元素を導入することは有効である。
【0077】
適用可能な有機半導体デバイスとしては、ダイオード、有機トランジスタ、メモリ、フォトダイオード、発光ダイオード、発光トランジスタや、ガスセンサー、バイオセンサー、血液センサー、免疫センサー、人工網膜、味覚センサーなどのセンサー類、RFID等が挙げられる。
【0078】
中でも、本発明の有機半導体材料は、0.1cm/Vs以上の高い電荷移動度を有するので、有機トランジスタまたは発光デバイスへの応用が特に有用である。有機トランジスタは、ディスプレイを構成する画素のスイッチング用トランジスタ、信号ドライバー回路素子、メモリ回路素子、信号処理回路素子等として好適に使用できる。ディスプレイの例としては、液晶ディスプレイ、分散型液晶ディスプレイ、電気泳動型ディスプレイ、粒子回転型表示素子、エレクトロクロミックディスプレイ、有機エレクトロルミネッセンスディスプレイ、電子ペーパー等が挙げられる。
【0079】
なお、有機トランジスタは、通常、ソース電極、ドレイン電極およびゲート電極、およびゲート絶縁層、有機半導体層を有して成るものであり、各電極や各層の配置によって種々のタイプのトランジスタがあるが、本発明の有機半導体材料はトランジスタの種類に限定されることなく、何れのトランジスタにも使用することができる。トランジスタの種類については、アルドリッチ社の材料科学の基礎第6号「有機トランジスタの基礎」などを参照することができる。
【0080】
(移動度について)
本発明における移動度は、ホールや電子などのキャリアの移動度であり、有機半導体材料の性能を表す指標となる。移動度には、TOF(Time−of−Flight)法による移動度(μTOF:単位cm/V・s)、および有機トランジスタにより求められる移動度(μFET:単位cm/V・s)があり、μTOFやμFETが高いほど、キャリアが流れ易いことになる。
【0081】
移動度(μTOF)は、TOF測定用セルの電極間の電圧をV、電極間距離をd、光電流の波形から算出した膜厚中を横切る時間をTrとし、下記式(i)により求められる。また、移動度(μFET)は、ドレイン電圧Vを固定し、ゲート電圧Vを変化させることによって得られる伝達特性の曲線を用いて、下記式(ii)により求められる。
【0082】
【数1】
【0083】
【数2】
【0084】
(式(ii)中、Cinはゲート絶縁膜の単位面積当たりの電気容量、Iはドレイン電流、Lはチャンネル長、Wはチャンネル幅、VTHは閾値電圧である。)
有機半導体をデバイスに応用する際の有用性はその物質の示す移動度が一つの目安となる。これは、移動度によってデバイスの特性が制限されるからである。従来、アモルファス有機半導体においては、移動度は高いものでも10−2cm/Vs程度であり、一般には10−5〜10−3cm/Vsの値である。
【0085】
液晶性物質は、非液晶物質と同様、結晶相を示すことから、液晶物質を有機半導体として用いる際、液晶相ばかりでなく、結晶相において有機半導体として用いることができることは言うまでもない。一般に、結晶相における移動度は液晶相における移動度に比較して、約半桁から1桁程度高い場合が多く、特に、高移動度を必要とするトランジスタ応用や電荷やエキシトンの大きな拡散長が要請される太陽電池等への応用には結晶
相の利用が有効である。
【0086】
(半導体デバイス動作の確認)
実施例に示すように、FETを作製し、その特性を評価することにより本発明の有機半導体材料が、有機トランジスタとして使用可能であることを確認可能である。
このような方法による半導体デバイス動作確認の詳細に関しては、例えば文献 S. F.Nelsona,Y.−Y.Lin,D.J.Gundlach,and T. N.Jackson、Temperature−independent transport in high−mobility pentacene transistors,Appl.Phys.Lett.,72,No.15 1854−1856(1998)を参照することができる。
【0087】
(有機半導体インク)
本発明の有機半導体材料は、蒸着して半導体膜を形成しても構わないが、低温成膜が可能で、生産性に優れる印刷用インクとして使用するのが好ましい。インクを調製するためには、本発明の有機半導体材料を溶媒に溶解し、半導体性能を損なわない範囲で、インク特性を付与するために、フッ素系やシリコン系などのレベリング剤、およびポリスチレンやアクリル樹脂などの高分子化合物を粘度調整剤として添加することもできる。
【0088】
使用する有機溶媒は何を用いても構わず、また2種以上の有機溶媒を混合して用いても良い。具体的には、n−ヘキサン、n−オクタン、n−デカン、n−ドデカンなどの脂肪族系溶媒;シクロヘキサンなどの脂環式系溶媒;ベンゼン、トルエン、クメン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、p−シメン、メシチレン、アニソール、2−メチルアニソール、3−メチルアニソール、4−メチルアニソール、2,5−ジメチルアニソール、3,5−ジメトキシトルエン、2,4−ジメチルアニソール、フェネトール、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、安息香酸ブチル、1,5−ジメチルテトラリン、n−プロピルベンゼン、n−ブチルベンゼン、n−ペンチルベンゼン、1,3,5−トリエチルベンゼン、1,3−ジメトキシベンゼン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン等の芳香族系溶媒;テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジエチルエーテル、アニソール、ベンジルエチルエーテル、エチルフェニルエーテル、ジフェニルエーテル、メチル−t−ブチルエーテル等のエーテル系溶媒;酢酸メチル、酢酸エチル、エチルセロソルブ、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート等のエステル系溶媒;メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、2−ヘキサノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン等のケトン系溶媒;その他ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジエチルホルムアミドなどが挙げられるが、これらに限定されることはない。
調製された液体組成物における本発明の有機半導体材料の濃度としては、0.01〜20重量%であることが好ましく、さらには0.1〜10重量%であることが好ましい。
使用する有機溶媒は1種類でもよいが、所望の均質性の高い薄膜を得るため、複数の種類の溶媒を混合して用いてもよい。
【0089】
(有機トランジスタ)
次に本発明の有機半導体材料を含有する有機トランジスタについて説明する。
有機トランジスタは、通常、ソース電極、ドレイン電極およびゲート電極、およびゲート絶縁層、有機半導体層を有して成るものであり、各電極や各層の配置によって種々のタイプのトランジスタがあるが、本発明の有機半導体材料はトランジスタの種類に限定されることなく、何れのトランジスタにも使用することができる。トランジスタの種類については、アルドリッチ社の材料科学の基礎第6号「有機トランジスタの基礎」などを参照することができる。
図1に示すボトムコンタクト型を一例に詳説すると、1は基板、2はゲート電極、3はゲート絶縁層、4は有機半導体、5はソース電極、6はドレイン電極である。
【0090】
基板としては、ガラスやフレキシブルな樹脂製シートで構成され、例えば、プラスチックフィルムをシートとして用いることができる。前記プラスチックフィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、ポリイミド、ボリカーボネート(PC)、セルローストリアセテート(TAC)、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)等からなるフィルム等が挙げられる。このように、プラスチックフィルムを用いることで、ガラス基板を用いる場合に比べて軽量化を図ることができ、可搬性を高めることができるとともに、衝撃に対する耐性を向上できる。
【0091】
ゲート電極、ソース電極、又はドレイン電極の電極材料は、導電性材料であれば特に限定されず、白金、金、銀、ニッケル、クロム、銅、鉄、錫、酸化スズ・アンチモン、酸化インジウム・スズ(ITO)、フッ素ドープ酸化亜鉛、炭素、グラファイト、グラッシーカーボン、銀ペーストおよびカーボンペースト、リチウム、ベリリウム、ナトリウム、マグネシウム、カリウム、カルシウム、スカンジウム、チタン、マンガン、ジルコニウム、ガリウム、ニオブ、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム、リチウム、アルミニウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム混合物、リチウム/アルミニウム混合物等の金属電極が用いられるが、ドーピング等で導電率を向上させた公知の導電性ポリマー、例えば、導電性ポリアニリン、導電性ポリピロール、導電性ポリチオフェン、ポリエチレンジオキシチオフェンとポリスチレンスルホン酸の錯体なども好適に用いられる。
【0092】
電極の形成方法としては、上記を原料として蒸着やスパッタリング等の方法を用いて形成した導電性薄膜を、公知のフォトリソグラフ法やリフトオフ法を用いて電極形成する方法、アルミニウムや銅などの金属箔上に熱転写、インクジェット等によるレジストを用いてエッチングする方法がある。また導電性ポリマーの溶液あるいは分散液、導電性微粒子分散液を直接インクジェットによりパターニングしてもよいし、塗工膜からリソグラフやレーザーアブレーションなどにより形成してもよい。更に導電性ポリマーや導電性微粒子を含むインク、導電性ペーストなどを凸版、凹版、平版、スクリーン印刷などの印刷法でパターニングする方法も用いることができる。
【0093】
ゲート絶縁層は、パリレン、ポリスチレン、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂などの熱可塑性樹脂;エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、メラミン樹脂などの熱硬化性樹脂;UV硬化性樹脂などの有機薄膜が好適に使用できるが、酸化シリコン膜などの無機材料も用いることができる。
【0094】
ゲート絶縁層はスピンコート法、キャスト法、ディップ法、インクジェット法、ドクターブレード法、スクリーン印刷法、オフセット印刷法、凸版印刷法、反転印刷法、マイクロコンタクトプリント法、ワイヤーバーコート法、スプレーコート法、ディスペンス法等の公知の湿式成膜方法により薄膜を作製することが可能であり、必要に応じフォトリソグラフ法で必要な形状にパターニングしても良い。
有機半導体層は、真空蒸着法等の公知慣用の製造方法で製造することができるが、組成物を有機半導体材料用インクとし、印刷法で簡便に有機半導体層を形成できる。
【0095】
印刷法の一例を挙げると、スピンコート法、キャスト法、ディップ法、インクジェット法、ドクターブレード法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、オフセット印刷法、凸版印刷法、反転印刷法、マイクロコンタクトプリント法、ワイヤーバーコート法、スプレーコート法、ディスペンス法等の公知の湿式成膜方法により薄膜を作製することが可能である。また、キャスト法などによっては平板状結晶や厚膜状態の形態をとることも可能である。
本発明の有機トランジスタは、ディスプレイを構成する画素のスイッチング用トランジスタ、信号ドライバー回路素子、メモリ回路素子、信号処理回路素子等として好適に使用できる。ディスプレイの例としては、液晶ディスプレイ、分散型液晶ディスプレイ、電気泳動型ディスプレイ、粒子回転型表示素子、エレクトロクロミックディスプレイ、有機エレクトロルミネッセンスディスプレイ、電子ペーパー等が挙げられる。
【0096】
(有機半導体デバイス)
適用可能な有機半導体デバイスとしては、ダイオード、有機トランジスタ、メモリ、フォトダイオード、発光ダイオード、発光トランジスタや、ガスセンサー、バイオセンサー、血液センサー、免疫センサー、人工網膜、味覚センサーなどのセンサー類、RFID等が挙げられる。
【実施例】
【0097】
本発明を実施例でさらに詳細に説明する。
<トランジスタの作製>
熱酸化膜付シリコンウエハー(ヘビードープp型シリコン(P+−Si)、熱酸化膜(SiO)厚さ:300nm)を20×25mmに切断後、この切断したシリコンウエハー(こののち基板と略す)を中性洗剤、超純水、イソプロピルアルコール(IPA)、アセトン、IPAの順に超音波洗浄を行った。
次に、以下実施例、比較例で合成した化合物をp−キシレンに溶解させ、溶液を調整した。溶液の濃度は0.4wt%から0.1wt%とした。この溶液、および、溶液を基板に塗布するガラス製のピペットを予め、ホットステージ上で所定の温度に加熱しておき、上記の基板をオーブン内に設置したスピンコータ上に設置し、オーブン内を60℃に昇温した後、溶液を基板上に塗布し、基板を回転(約3000rpm、30秒)させた。回転停止後、基板を素早く取り出し室温まで冷却させた。
更に、有機半導体層を塗布した基板に、真空蒸着法(2×10−6Torr)を用いて、金をメタルマスクを介してパターン蒸着することにより、ソース・ドレイン電極を形成した(チャネル長:チャネル幅=75μm:3000μm)。
【0098】
作製した有機トランジスタの評価は、通常の大気雰囲気下において、2電源のソース・メジャーメントユニットを用いて、ソース電極、ドレイン電極間に流れる電流を、ゲート電極(P+−Si)に電圧をスイープ印加(Vsg:+40〜−60V)しながら測定(伝達特性)することによりおこなった(ソース電極、ドレイン電極間電圧Vsd:−80V)。移動度は、該伝達特性における、√Id−Vgの傾きから、飽和特性の式を用いた周知の方法により算出した。なお、移動度、オンオフ比の測定は5つのトランジスタについて行い、その平均値を記載した。
【0099】
(溶解性試験)
25±1℃の恒温水槽中で、スクリュー管に以下実施例、比較例で合成した化合物を0.1g仕込み、任意量のp−キシレンを全内容量に対して化合物が1wt%となるように加え、溶解性試験を行った。目視により溶解を確認し、恒温水槽中に30分放置し、析出がない場合を溶解量とした。1wt%で溶解しない場合、p−キシレンを加え、0.05wt%刻みになるよう合成化合物量を下げ、溶解するまで試験を行った。
(実施例1)
【0100】
【化13】
【0101】
特開2010−275192号公報に記載の方法で得たBTBT 4.45g(18.5mmol)、クロロホルム400mL、臭素3.58g(22.4mmol)をクロロホルム20mLに溶解した溶液を加え、室温で3日間反応した。次いで、反応液に1%次亜塩素酸ナトリウム水溶液50mLを加えて撹拌し、有機相を分離した。有機相を飽和塩化ナトリウム水溶液50mLで洗浄し、有機相を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒留去して2−ブロモBTBTの混合物を得た。
【0102】
【化14】
【0103】
次に、前記の2−ブロモBTBTの混合物に、フェニルホウ酸3.4g(27.9mmol)、炭酸カリウム6.3g(46mmol)、ジオキサン400mL、蒸留水50mLを加え、フラスコ内をアルゴンで20分間置換後、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム1.0g(0.9mmol)トリt−ブチルホスフィン4.3mL(4.3mmol)を加え、3時間加熱還流した。冷却後、蒸留水400mLを加え、不溶分をろ集、水洗し、さらにメタノールで洗浄した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:シクロヘキサン)により、反応生成物から原点成分を除去して2−フェニルBTBTの混合物4.04gを得た後、さらにトルエン60mLで再結晶して2−フェニルBTBT3.23g(BTBTからの収率56%)を得た。
H−NMR(CDCl):8.14ppm(d,J=1.6Hz,1H)、7.95ppm(d,J=7.0Hz,1H)、7.94ppm(d,J=8.2Hz,1H)、7.90ppm(d,J=8.2Hz,1H)、7.71ppm(dd,J=7.0and1.6Hz,1H)、7.70ppm(dd,J=7.2and1.4Hz.2H)、7.49ppm(t,J=7.2Hz,2H)、7.47ppm(t,J=8.2Hz,1H)、7.42ppm(t,J=8.2Hz,1H)、7.35ppm(tt,J=7.2and1.4Hz,1H)
【0104】
【化15】
【0105】
12−ブロモドデカン酸2.80g(10.1mmol)を脱水クロロホルム(20mL、関東化学製)に溶解し、氷浴下、塩化オキザリル2.67g(21mmol)次いで、脱水DMF0.1mLを滴下する。さらに45℃(浴温)で2時間反応後、反応液を溜去し、さらにベンゼンを加え濃縮する。残留物(少量のガム状固体を含むオイル)を石油ベンジン(〜30mL)で抽出し、氷水で洗浄、無水硫酸ナトリウムで脱水後、濃縮乾固して12−ブロモドデカノイルクロリド2.93g(98%)を得た。
【0106】
【化16】
【0107】
2−フェニルBTBT1.59g(5.03mmol)(1.59g)のジクロロメタン溶液180mLに6℃(内温)に冷却下、無水塩化アルミニウム2.39g(18.1mmol)を加え、さらに30分間で、−60℃に冷却し、2−ブロモドデカノイルクロリド2.93g(9.9mmol)のジクロロメタン溶液8mLを滴下する。その温度で2時間反応後、水100mLを滴下して反応を停止し、室温で1晩攪拌する。クロロホルム約400mLを加えて下層(固体を含んでいる)を取り、10%食塩水で洗浄後、下層を濃縮し、メタノールを加えて攪拌後、固体を濾取し、これをトルエンから再結晶化して精製し、2−(12−ブロモドデシル−1−オン)−7−フェニルBTBT2.39g(81%)を得た。
【0108】
【化17】
【0109】
2−(12−ブロモドデシル−1−オン)−7−フェニルBTBT2.33g(4. 04mmol)のジクロロメタン300mL懸濁液を、予め調製したBH−tBuNH2.3gとAlCl 1.69g混合物のジクロロメタン溶液35mL中に氷浴下、滴下する。15℃で1晩反応後、0.5M塩酸60mLを加えて反応を停止し、クロロホルムで常法の後処理後、濃縮乾固して2−(12−ブロモデシル)−7−フェニルBTBT2.21g(3.93mmol、97%)を得た。
【0110】
【化18】
【0111】
2−(12−ブロモデシル)−7−フェニルBTBT200mg(0.354mmo l)を脱水THF10mL 、脱水DMF2mL 、ベンジルアルコール2mLの混液に溶解し、氷浴中冷却下、55%水素化ナトリウム100mgを加える。室温で20分攪拌後、80℃(浴温)で更に2時間反応する。氷浴下、1M塩酸(2.5mL)を加えて反応を停止し、クロロホルムで抽出する。下層は更に水で5回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで脱水後、大部分溶媒を溜去し、生じた固体にメタノール10mLを加えて1時間攪拌し、濾取する。この固体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液;シクロヘキサン−クロロホルム、2:1から1:1)で精製し、目的物である2−(11−(ベンジルオキシ)ドデシル)−7−フェニルBTBT142mg(収率68%)を得る。これをさらにトルエン−リグロインから再結晶化し、123mgを得た。
得られた化合物について、上記トランジスタを作製し、移動度、オンオフ比ならびに、溶解性を評価し、結果を表1にまとめた。
1H-NMR(500MHz、CDCl):δ 8.12(d,1H,J1.8Hz),7.92(d,1H,J8.2Hz),7.79(d,1H,J〜8Hz),7.73(br.s,1H),7.69(dx2,3H,J〜8Hz),7.49(t,2H,J〜8Hz),7.38(tt,1H,J〜1,〜8Hz),7.34〜7.2(m,6Hoverlappd),4.50(s,2H,CH-Ph),3.46(t,2H,J6.7Hz),2.77(t,2H,J7.7Hz),1.70(quint.2H,J〜7Hz)1.61(quint.2H,J〜7Hz),〜1.2〜1.4(m,16H)
(実施例2)
【0112】
【化19】
【0113】
2−(12−ブロモデシル)−7−フェニルBTBT200mgを実施例1と同様にして、ベンジルアルコールに代わりに、2−メトキシエタノール2mLを用いて反応し、シリカゲルカラムで精製して目的物である2−(11−(2−メトキシエトキシ)ドデシル)−7−フェニルBTBT135mg(68%)を得、トルエン−リグロインから再結晶化し110mgを得た。得られた化合物について、実施例1と同様に溶解性および作製したトランジスタの評価結果を表1に記載した。
H−NMR(500MHz、CDCl):δ 8.12(d,1H,J1.8Hz),7.92(d,1H,J8.2Hz),7.79(d,1H,J〜8Hz),7.73(br.s,1H),7.69(dx2,3H,J〜8Hz),7.49(t,2H,J〜8Hz),7.38(tt,1H,J〜1,〜8Hz),7.29(dd,1H,J>1,7.8Hz),3.55(m,4H,OCO),3.45(t,2H,J6.8Hz),3.38(s,3H,OCH),2.77(t,2H,J7.7Hz),1.70(quint.2H,J〜7Hz),1.59(quint.2H,J〜7Hz),〜1.2〜1.4(m,16H)
(実施例3)
【0114】
【化20】
【0115】
2−(12−ブロモデシル)−7−フェニルBTBT200mgを実施例1と同様にして、ベンジルアルコールの代わりに、2−フェノキシエタノール(2mL)を用いて反応し、シリカゲルカラムで精製して2−(12−(2−フェノキシエトキシ)ドデシル)−7−フェニルBTBT(143mg、収率65%)を得、トルエンから再結晶化して103mgを得た。得られた化合物について、実施例1と同様に溶解性および作製したトランジスタの評価結果を表1に記載した。
H−NMR(400MHz、CDCl):δ 8.12(dd,1H,J0.5,1.8Hz),7.92(dd,1H,J0.5,8.2Hz),7.79(d,1H,J〜8Hz),7.73(br.s,1H),7.69(dx2,3H,J〜8Hz),7.49(t,2H,J〜8Hz),7.38(tt,1H,J〜1,〜8Hz),7.25〜7.30(m,3H,H−3and2HofOPh),6.93(m,3H,OPh),4.11(t−likem,2H,OCHCHO),3.775(t−likem,2H,OCHCHO),3.52(t,2H,J6.8Hz),2.77(t,2H,J7.7Hz),1.70(quint.2H,J〜7Hz),1.60(quint.2H,J〜7Hz),〜1.2〜1.4(m,16H),
(実施例4)
【0116】
【化21】
【0117】
2−(12−ブロモデシル)−7−フェニルBTBT200mgを実施例1と同様にして、ベンジルアルコールの代わりに、2−(ベンジルオキシ)エタノール2mLを用いて反応し、シリカゲルカラムで精製して目的物である2−(12−(2−(ベンジルオキシ)エトキシ)ドデシル)−7−フェニルBTBT(133mg、収率59%)を得、トルエン−石油ベンジンから再結晶化して103mgを得た。得られた化合物について、実施例1と同様に溶解性および作製したトランジスタの評価結果を表1に記載した。
H−NMR(400MHz、CDCl):δ 8.12(dd,1H,J0.5,1.8Hz),7.92(dd,1H,J0.5,8.2Hz),7.79(d,1H,J〜8Hz),7.73(br.s,1H),7.69(dx2,3H,J〜8Hz),7.49(t,2H,J〜8Hz),7.38(tt,1H,J〜1,〜8Hz),7.25〜7.36(m,6H,H−3and5HofCHPh),4.57(s,2H,CHPh),3.61(m,4H,OCO),3.45(t,2H,J6.8Hz),2.77(t,2H,J7.7Hz),1.70(quint.2H,J〜7Hz),1.58(quint.2H,J〜7Hz),〜1.2〜1.4(m,16H)。
【0118】
(比較例1)
特開2015−129098記載の方法にて以下の化合物を合成した。得られた化合物について、実施例同様に溶解性および作製したトランジスタの評価結果を表1に記載した。
【0119】
【化22】
【0120】
(比較例2)
実施例1の12−ブロモデカン酸を4−ブロモブタン酸に変えた以外、同様の方法で得られた2−(4−ブロモブチル)−7−フェニルBTBTと、実施例2のメトキシエタノールをブタノールに変えたい以外は同様の方法で、2−((4−ペンチルオキシ)ブチル)−7−フェニルBTBTを合成した。得られた化合物について、実施例1と同様に溶解性および作製したトランジスタの評価結果を表1に記載した。
【0121】
【化23】
【0122】
【表1】
【0123】
表1より、本発明の有機半導体材料は、溶解性が高く、実用的な移動度をもつトランジスタ素子を与え、製造時の取り扱いに優れる。これに対し、比較例の化合物は、得られるトランジスタ特性の移動度が低く実用的な移動度をもつトランジスタ素子を得ることができない。または、溶解性が低いため、製造時の取り扱いが困難となる。
【産業上の利用可能性】
【0124】
本発明の化合物は有機半導体としての利用が可能であり、該有機半導体材料を有機半導体層として用いる有機トランジスタへの利用が可能である。
【符号の説明】
【0125】
1.基板
2.ゲート電極
3.ゲート絶縁膜
4.有機半導体
5.ソース電極
6.ドレイン電極
図1