(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ポリイミド層の片側の表面に機能層を有し、機能層と反対側のポリイミド層の表面に支持材を有するロール状の積層体であって、ポリイミド層は平坦部と傾斜部を有し、傾斜部はポリイミド層の幅方向の両端部側にポリイミド層の厚みが末端に向かって減少するように設けられており、この傾斜部は、ポリイミド層の末端からポリイミド層の平坦部の厚みの10倍以上離れた位置から始まり、末端から平坦部の厚みの10倍の距離の範囲において、その平均厚みがポリイミド層の平坦部の厚みの1/2以下であること、支持材とポリイミド層の剥離強度が平坦部において0.1N/m以上200N/m以下であることを特徴とするフレキシブルデバイス用積層体。
支持材の幅方向の両末端側の一部が露出するようにポリイミド層が積層され、機能層がポリイミド層表面から支持材表面まで連続しており、かつ、機能層が支持材に密着していることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のフレキシブルデバイス用積層体。
前記機能層が、透明導電層、配線層、導電層、ガスバリア層、薄膜トランジスタ、電極層、発光層、接着剤層、粘着剤層、透明樹脂層、カラーフィルターレジスト、及びハードコード層からなる群から選択されたいずれか1種又は2種以上の組み合わせを含む層である請求項1〜6のいずれかに記載のフレキシブルデバイス用積層体。
請求項1〜11のいずれかに記載のフレキシブルデバイス用積層体から、ポリイミド層の傾斜部に対応する部分および支持材を除去したことを特徴とするフレキシブルデバイス。
支持材上にポリイミド層を有する積層体であり、ポリイミド層は平坦部と傾斜部を有し、傾斜部はポリイミド層の幅方向の両端部側に、ポリイミド層の厚みが末端に向かって減少するように設けられてれており、この傾斜部は、ポリイミド層の末端からポリイミド層の平坦部の厚みの10倍以上離れた位置から始まり、末端から平坦部の厚みの10倍の距離の範囲において、その平均厚みがポリイミド層の平坦部の厚みの1/2以下であること、支持材とポリイミド層の剥離強度が平坦部において0.1N/m以上200N/m以下であることを特徴とするポリイミド層の片側の表面に機能層を有するロール状のフレキシブルデバイス用積層体に用いられる積層体。
ポリイミド層の表面に機能層を有するフレキシブルデバイスの製造方法であって、a)ロール状に巻き取られた長尺の支持材を長手方向に繰り出して、ポリイミド前駆体溶液またはポリイミド溶液を、表面粗さRaが100nm以下の支持材上に塗布した後、熱処理し、平坦部と傾斜部を有するポリイミド層であって、傾斜部はポリイミド層の幅方向の両端部側に、ポリイミド層の厚みが末端に向かって減少するように設けられてれており、この傾斜部は、ポリイミド層の末端からポリイミド層の平坦部の厚みの10倍以上離れた位置から始まり、末端から平坦部の厚みの10倍の距離の範囲において、その平均厚みがポリイミド層の平坦部の厚みの1/2以下であること、支持材とポリイミド層の剥離強度が平坦部において0.1N/m以上200N/m以下であることを満足するポリイミド層と支持材の積層体を得る工程、b)ポリイミド層平坦部から傾斜部を除去することなく、ポリイミド層の表面に機能層を形成する工程と、c)表面に機能層を有するポリイミド層の平坦部から傾斜部に対応する部分の分離および支持材の除去を行う工程、を順次行うことを特徴とするフレキシブルデバイスの製造方法。
前記工程a)における塗布は、ポリイミド前駆体溶液またはポリイミド溶液を、定量ポンプによりタンクからコーターに供給することにより内圧を高めたコーターから吐出することを特徴とする請求項15〜17のいずれかに記載のフレキシブルデバイスの製造方法。
前記工程a)と工程b)の間に、a-2)少なくとも二列のポリイミド層を形成後、このポリイミド層間を長手方向に沿って切断し、少なくとも二条の積層体を得る工程を有することを特徴とする請求項19に記載のフレキシブルデバイスの製造方法。
工程a)において、支持材の端部側が露出したポリイミド層と支持材の積層体を得て、前記工程b)は、機能層をポリイミド層の表面から支持材まで連続的に形成し、かつ、機能層が支持材に密着するよう形成する請求項15〜21のいずれかに記載のフレキシブルデバイスの製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記のように、表示装置等で用いられているガラス基板を樹脂基板(樹脂フィルムを含む。)に置き換えることで、薄型、軽量、フレキシブル化が可能になる。特に、スマートフォンをはじめとしたモバイル機器では薄型・軽量化の開発競争が激しく、その要望は極めて強い。ところが、樹脂基板の厚みを薄くするにはハンドリング性を十分考慮する必要があり、とりわけロール・ツー・ロール方式のように長尺の樹脂フィルムを搬送する際には、フィルムが極端に薄いと巻取り時などにおいてその伸びが問題となり、場合によってはフィルムに皺が生じたり、破れが発生してしまう恐れがある。また、フィルム自体に皺や破れなどが発生しない場合であっても、TFTや電極、発光層といったフィルム上に形成される各種機能層が、フィルムの伸縮により製造過程で品質に影響を受ける恐れがある。
【0011】
本発明は、これらの問題を鑑みてなされたものであり、基材となるポリイミド層上に機能層を備えた積層体と、その製造過程におけるハンドリング性を考慮しながら、機能層の品質への影響を抑えて、機能層を備えた積層体を製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明者らは鋭意検討した結果、支持材上にポリイミド層を備えた積層体のポリイミド層側に機能層を形成した後に、ポリイミド層と支持材との界面を利用して支持材を分離し、取り除いて薄肉化することで、製造過程でのハンドリング性の低下や機能層の品質への影響を抑えたフレキシブルデバイス用積層体を得ることができることを見出した。また、ポリイミド層に傾斜部を設けることにより、支持材とポリイミド層の分離性を確保する一方、機能層形成時の工程中での支持材の剥離が防止できることを見出し、本発明を完成させた。
【0013】
すなわち、本発明は、ポリイミド層の片側の表面に機能層を有し、機能層と反対側のポリイミド層の表面に支持材を有するロール状の積層体であって、ポリイミド層は平坦部と傾斜部を有し、傾斜部はポリイミド層の幅方向の両端部側に、ポリイミド層の厚みが末端に向かって減少するように設けられていること、支持材とポリイミド層の剥離強度が平坦部において0.1N/m以上200N/m以下であることを特徴とするフレキシブルデバイス用積層体である。
【0014】
上記フレキシブルデバイス用積層体は、次に示す要件の1又は2以上を満足することが望ましい。
【0015】
1)傾斜部は、ポリイミド層の末端からポリイミド層の平坦部の厚みの10倍以上離れた位置から始まり、末端から平坦部の厚みの10倍の距離の範囲において、その平均厚みがポリイミド層の平坦部の厚みの1/2以下であること。
2)ポリイミド層が、長さ方向に少なくとも二列あること。
3)支持材のポリイミド層と接する表面が、ポリイミドであること。
4)ポリイミド層の平坦部の厚みが、0.1μm以上10μm以下であること。
5)ポリイミド層の440〜780nmの波長領域での透過率が、80%以上であること。
【0016】
6)支持材の幅方向の両末端側の一部が露出するようにポリイミド層が積層され、機能層がポリイミド層表面から支持材表面まで連続しており、かつ、機能層が支持材に密着していること。
7)機能層が、透明導電層、配線層、導電層、ガスバリア層、薄膜トランジスタ、電極層、発光層、接着剤層、粘着剤層、透明樹脂層、カラーフィルターレジスト、及びハードコード層からなる群から選択されたいずれか1種又は2種以上の組み合わせを含む層であること。
8)機能層が、無機材料で形成されていること。
【0017】
9)支持材、機能層又は両者が、電気導電性を有すること。
10)ポリイミド層の傾斜部と支持材の剥離強度が、ポリイミド層の平坦部と支持材の剥離強度より高いこと。
11)支持材とポリイミド層の平坦部との剥離強度が、0.1〜30N/mであること。
【0018】
また、本発明は上記のフレキシブルデバイス用積層体から、ポリイミド層の傾斜部に対応する部分と支持材を除去したことを特徴とするフレキシブルデバイスである。
【0019】
また、本発明は、支持材上にポリイミド層を有する積層体であり、ポリイミド層は平坦部と傾斜部を有し、傾斜部はポリイミド層の幅方向の両端部側に、ポリイミド層の厚みが末端に向かって減少するように設けられていること、支持材とポリイミド層の剥離強度が平坦部において0.1〜200N/mであることを特徴とするポリイミド層の片側の表面に機能層を有するロール状のフレキシブルデバイス用積層体に用いられる積層体である。
上記ポリイミド層は、長さ方向に少なくとも二列あることができる。
【0020】
また、本発明は、ポリイミド層の表面に機能層を有するフレキシブルデバイスの製造方法であって、a)ロール状に巻き取られた長尺の支持材を長手方向に繰り出して、ポリイミド前駆体溶液またはポリイミド溶液を、表面粗さRaが100nm以下の支持材上に塗布した後、熱処理し、平坦部と傾斜部を有するポリイミド層であって、傾斜部はポリイミド層の幅方向の両端部側に、ポリイミド層の厚みが末端に向かって減少するように設けられていること、支持材とポリイミド層の剥離強度が平坦部において0.1〜200N/mであることを満足するポリイミド層と支持材の積層体を得る工程、b)ポリイミド層平坦部から傾斜部を除去することなく、ポリイミド層の表面に機能層を形成する工程と、c)表面に機能層を有するポリイミド層の平坦部と傾斜部に対応する部分の分離および支持材の除去を行う工程、を順次行うことを特徴とするフレキシブルデバイスの製造方法である。
【0021】
上記フレキシブルデバイスの製造方法は、次に示す要件の1又は2以上を満足することが望ましい。
【0022】
1)工程c)において、機能層を有するポリイミド層の平坦部から傾斜部に対応する部分を切断分離した後、支持材を除去すること。
2)工程b)の次に、b-2)機能層側の面に他のデバイスまたはデバイス用部材を装着し、その後、工程c)に付すこと。
3)傾斜部が、ポリイミド層の末端からポリイミド層の平坦部の厚みの10倍の距離の範囲において、その平均厚みがポリイミド層の平坦部の厚みの1/2以下であること。
4)工程a)における塗布は、ポリイミド前駆体溶液またはポリイミド溶液を、定量ポンプによりタンクからコーターに供給することにより内圧を高めたコーターから吐出することにより行われること。
【0023】
5)工程a)では、支持材の長さ方向に少なくとも二列のポリイミド層を形成すること。
6)工程a)と工程b)の間に、a-2)少なくとも二列のポリイミド層を形成後、このポリイミド層間を長手方向に沿って切断し、少なくとも二条の積層体を得る工程を有すること。
7)ポリイミド層と前記支持材の剥離強度が0.1〜30N/mであること。
8)工程a)において、支持材の端部側が露出したポリイミド層と支持材の積層体を得て、前記工程b)は、機能層をポリイミド層の表面から支持材まで連続的に形成し、かつ、機能層が支持材に固着するよう形成すること。
【発明の効果】
【0024】
本発明のフレキシブルデバイスの製造方法によれば、樹脂フィルム上に機能層を備えた積層部材を得る上で、少なくとも機能層を形成する間は支持材とポリイミド層を有する基材積層体の厚みによって機械的強度が確保され、機能層を形成した後には、ポリイミド層と支持材との界面を利用して支持材を分離して取り除き、薄肉化することで、ポリイミド層からなる薄い樹脂フィルム上に機能層を備えた積層部材を不具合なく効率的に製造することができる。また、機能層を形成した後は、ポリイミド層と支持材との界面で容易に支持材を除去できるようにする一方、機能層形成時の工程中に支持材が分離しないため、支持材除去の際の応力で機能層にダメージを与えることなく、機能層形成時の工程中での安定生産が可能となる。機能層形成時の工程中で支持材との分離が起こりやすく、支持材除去の際に機能層にダメージを与えやすい10μm以下のポリイミド層に特に有効である。本発明のフレキシブルデバイス用積層体は、この製造方法に好適に使用される。
【0025】
また、本発明によって得られたフレキシブルデバイスは、樹脂フィルムの厚みを薄くすることができるため、表示装置や各種機能性材料等に好適に用いられ、薄型化、軽量化、フレキシブル化を促進する。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明のフレキシブルデバイス用積層体は、機能層とポリイミド層と支持材を有するロール状の積層体であり、ポリイミド層の片面には機能層が接し、他面には支持材が接している。
ここで、ポリイミド層は支持材上に設けられており、ポリイミド層の幅方向の中央部付近は一定厚みの平坦部となっており、ポリイミド層の幅方向の両末端側は傾斜部となっている。傾斜部はポリイミド層の厚みが末端に向かってなだらかに減少するように設けられている。
また、支持材とポリイミド層の剥離強度は、0.1〜200N/mである。ここで、支持材とポリイミド層の剥離強度は、上記平坦部における剥離強度をいう。
【0028】
本発明のフレキシブルデバイスは、上記のフレキシブルデバイス用積層体から、ポリイミド層の傾斜部に対応する部分と支持材を除去した構造を有するものである。
ここで、傾斜部に対応する部分とは、上記積層体の傾斜部のポリイミド層だけでなく、傾斜部の両表面上に存在する層(支持材、機能層等)の全部を含む。そして、傾斜部が始まる位置から、積層体の幅方向の両末端までを含む。
【0029】
本発明のフレキシブルデバイス用積層体は、人手で曲げられる程度の屈曲性を有する電子機器用素子または電子機器用部材である。フレキシブルデバイスが電子機器に搭載される形態は、曲率が使用時に変化する屈曲用途でもよく、曲率が変化しない固定曲面でもよく、また、平面でもよい。
【0030】
ポリイミド層の幅は支持材の幅より狭く形成してもよく、支持材の全幅に形成していてもよい。ポリイミド層を支持材の全幅に形成することが生産性の観点からは好ましい。
【0031】
機能層をポリイミド層の平坦部から傾斜部を経て支持材まで連続して形成し、かつ、機能層が支持材に密着するように形成することも好ましい形態の一つである。機能層が支持材に密着することにより、工程中の支持材とポリイミド層の剥離の防止の効果をさらに高めることができる。
【0032】
機能層形成のための工程での搬送時には、積層体への張力や温度変化などにより、支持材とポリイミド層の間で応力が発生し、支持材とポリイミド層の剥離の原因となることがあるが、ポリイミド層の両端側に傾斜部を設けることにより、この剥離を防止できる。傾斜部では厚みが緩やかに減じるため、ポリイミド層の両端部への応力の集中を防止し、応力を分散する効果がある。
この傾斜部により、機能層形成時にはポリイミド層と支持材はしっかりと固定される。一方、機能層形成後に傾斜部の分離を行なうことにより、支持材を容易に除去することができる。
【0033】
一般に、ロール・ツー・ロール方式を採用する場合には、送り出し側のロール巻機構に巻き取られた長尺の支持材とポリイミド層の積層体は、送出機構によって長手方向に繰り出されながらロール搬送されて、成膜等のプロセス処理がなされ、巻取機構を介して、巻き取り側のロール巻機構で巻き取られていく。
【0034】
樹脂フィルムが巻き取り側のロール巻機構で巻き取られていく際には引張応力が掛かる状態になることから、少なくとも100μm程度の厚みを有していないと、ロール巻機構で巻き取る際に伸びや縮みにより、皺が発生したり、フィルムが破れてしまうような不具合が発生したり、寸法精度が維持されず、得られるフレキシブルデバイス用積層体やこれから得られるフレキシブルデバイスの品質に影響を与えてしまうこともある。
【0035】
そこで、本発明においては、支持材上にポリイミド層を備えた積層体(基材積層体ともいう。)を用いるようにし、ロール・ツー・ロール方式等によって少なくとも機能層を形成する間は、支持材の厚みによって機械的強度を確保するようにし、機能層を形成した後には、ポリイミド層と支持材との界面を利用して支持材を分離して取り除くことで、ポリイミド層からなる薄い樹脂フィルム上に機能層を備えた積層部材を得るようにする。また、この基材積層体については、機能層を積層する前には、短辺方向のフィルム幅を所定の幅に切断するためのスリット加工を実施しないことにより、支持材とポリイミド層が機能層形成中に剥離を防止する。
なお、本発明におけるフレキシブルデバイスの製造方法は、送り出し側のロール巻機構と巻き取り側のロール巻機構とを備えたロール・ツー・ロール方式に適用できることは勿論、例えば、巻き取り側のロール巻機構の手前の巻取機構によってロール搬送された基材積層体をシート状に裁断するような不完全なロール・ツー・ロール方式にも適用することができる。本発明のフレキシブルデバイス用積層体は、ロール・ツー・ロール方式のいずれかの場面で積層体に搬送のための張力が掛かりながら、搬送装置のガイドロールやフローティング炉のノズル部などで積層体が曲面となり搬送されるような場合に特に有効である。
【0036】
本発明のフレキシブルデバイス用積層体において、傾斜部は、ポリイミド層の末端からポリイミド層の平坦部の厚みの10倍以上離れた位置から始まることがよく、好ましくは10倍以上、2mm以下である。なお、傾斜部以外は平坦な平坦部とすることがよく、平坦部は傾斜部に比べて50倍以上の十分な幅を有することがよい。
傾斜部のポリイミド層の厚みは順次減少することがよく、末端から平坦部の厚みの10倍の距離の範囲において、その平均厚みがポリイミド層の平坦部の厚みの1/2以下であることがよく、末端の厚みは0であることがよい。
【0037】
フレキシブルデバイス用積層体のポリイミド層は、二列以上設けてもよい。この場合、各列にはポリイミド層末端があるので、各列の末端側には傾斜部を有する
【0038】
本発明のフレキシブルデバイス用積層体において、支持材は樹脂であっても、金属箔であってもよいが、また、単一層からなっても、複数層からなってもよいが、フレキシブルである必要がある。更に、ポリイミド層と接する表面層は、ポリイミド層と一定の接着強度(剥離強度)を有する材質とする。このような目的のためには、ポリイミド層と接する表面層はそれとは同一又は異なるポリイミドであることが有利である。
支持材とポリイミド層の平坦部との剥離強度が、0.1〜30N/mであることにより、フレキシブルデバイスの製造工程においては、剥離等を防止し、支持材を分離する工程においては、これを容易に剥離できる。また、ポリイミド層の傾斜部と支持材の剥離強度が、ポリイミド層の平坦部と支持材の剥離強度より高くすることが製造工程における剥離等を防止するために望ましい。
【0039】
支持材を複数層とする場合、支持材の各層の熱膨張係数が異なっていても良い。支持材とポリイミド層の熱膨張係数が異なる場合、積層体に反りが発生することがあるが、支持材を複数層とし各層の熱膨張係数を厚み方向で分布をもたせることより、積層体の反りを減ずることができる。支持材の熱膨張係数がポリイミド層の熱膨張係数より低い場合、支持材のポリイミド層と反対側の層の熱膨張係数を、支持材のポリイミド層側の熱膨張係数より高くすることで積層体の反りを防止することができる。
【0040】
ポリイミド層の平坦部の厚みは、0.1〜10μmであることがよく、ポリイミド層の440〜780nmの波長領域での平坦部における透過率が、80%以上であることがよい。
【0041】
本発明のフレキシブルデバイス用積層体において、支持材の幅方向の両末端側の一部が露出するようにポリイミド層が積層され、機能層がポリイミド層表面から支持材表面まで連続しており、かつ、機能層が支持材に密着していることにより、積層体全体として剥離強度が高まる。
【0042】
本発明のフレキシブルデバイス用積層体において、機能層としては、透明導電層、配線層、導電層、ガスバリア層、薄膜トランジスタ、電極層、発光層、接着剤層、粘着剤層、透明樹脂層、カラーフィルターレジスト、及びハードコード層からなる群から選択されたいずれか1種又は2種以上の組み合わせを含む層であることがよい。また、機能層が、無機材料で形成されていることも好ましい。更には、支持材、機能層又は両者が、電気導電性を有することも、用途によっては好ましい。
【0043】
次に、上記ポリイミド層について説明する。
本発明において、ポリイミド層と支持材との界面を利用して支持材を分離して取り除き、機能層が積層されたフィルムを薄肉化できるようにするためには、ポリイミド層と支持材との界面を剥離し易い状態にする必要がある。その手段として、好適には、ポリイミド層と支持材との界面において、特定の化学構造を有するポリイミドを利用するのがよい。
【0044】
一般に、ポリイミドは、原料である酸無水物とジアミンとを重合して得られ、下記一般式(1)で表すことができる。
【化1】
式中、Ar
1は酸無水物残基である4価の有機基を表し、Ar
2はジアミン残基である2価の有機基であり、耐熱性の観点から、Ar
1、Ar
2の少なくとも一方は、芳香族残基であるのが望ましい。
【0045】
本発明において好適に用いられるポリイミドは、その第1の例として、下記繰り返し構造単位(a)を有するポリイミドが挙げられる。すなわち、ポリイミド層がこのようなポリイミドにより形成されるようにするか、あるいは支持材の表面がこのようなポリイミドからなる耐熱性ポリイミド面を有するようにすることで、ポリイミド層と支持材との界面での分離を容易にすることができる。好ましくは、下記繰り返し構造単位(b)を有するポリイミドである。繰り返し構造単位(a)又は(b)を80モル%以上の割合で含有することがよい。
【化2】
【0046】
この第1の例のような繰返し構造単位(a)又は(b)を有するポリイミドであれば、ガラス転移温度(Tg)が300℃以上の耐熱性ポリイミド面を形成することができ、ポリイミド層と支持材との界面で両者を分離する場合の分離を容易にする接着強度範囲とすることができる。
【0047】
ここで、上記第1の例として示したポリイミドを利用する場合、そのポリイミド以外のポリイミド成分を最大20モル%未満の割合で含んでいてもよい。その他のポリイミドについては、特に制限されるものではなく、後述するような一般的な酸無水物とジアミンを使用することができる。
【0048】
また、好適に用いられるポリイミドの第2の例としては、含フッ素ポリイミドが挙げられる。すなわち、ポリイミド層がこのようなポリイミドにより形成されるようにするか、あるいは支持材の表面がこのようなポリイミドからなる耐熱性ポリイミド面を有するようにすることで、ポリイミド層と支持材との界面での分離を容易にすることができる。ここで、含フッ素ポリイミドとは、ポリイミド構造中にフッ素原子を有するものを指し、ポリイミド原料である酸無水物、及びジアミンの少なくとも一方の成分において、フッ素含有基を有するものである。このような含フッ素ポリイミドとしては、例えば、上記一般式(1)で表されるもののうち、式中のAr
1が4価の有機基であり、Ar
2が下記一般式(2)又は(3)で表される2価の有機基で表されるものが例示される。
【化3】
【0049】
上記一般式(2)又は一般式(3)におけるR
1〜R
8は、互いに独立に水素原子、フッ素原子、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、又は炭素数1〜5のフッ素置換炭化水素基であり、一般式(2)にあっては、R
1〜R
4のうち少なくとも一つはフッ素原子又はフッ素置換炭化水素基であり、また、一般式(3)にあっては、R
1〜R
8のうち少なくとも一つはフッ素原子又はフッ素置換炭化水素基である。このうち、R
1〜R
8の好適な具体的としては、−H、−CH
3、−OCH
3、−F、−CF
3などが挙げられるが、式(2)又は式(3)において少なくとも一つの置換基が、−F又は−CF
3の何れかであるのが好ましい。
【0050】
含フッ素ポリイミドを形成する際の一般式(1)中のAr
1の具体例としては、例えば、以下のような4価の酸無水物残基が挙げられる。
【化4】
【0051】
上記のような含フッ素ポリイミドには透明性に優れたものが含まれ、例えば液晶表示装置や有機EL表示装置等の表示装置をはじめ、それらで使用されて透明性が要求される積層部材を得る場合には、ポリイミド層を形成するものとして好適であるが、その透明性をより優れたものとしたり、ポリイミド層と支持材との界面での剥離性をより向上させることなどを考慮すれば、一般式(1)におけるAr
2を与える具体的なジアミン残基として、好ましくは、以下の基が挙げられる。
【0053】
また、このような含フッ素ポリイミドにおいて、次に挙げる一般式(4)又は(5)で表される構造単位のどちらか一方を80モル%以上の割合で有する場合には、透明性と剥離性が優れる他、熱膨張性が低く寸法安定性に優れることからより好ましい。すなわち、下記一般式(4)又は(5)で表される構造単位を有するポリイミドであれば、440nmから780nmの波長領域での透過率が70%以上、好適には80%以上を示すことから、表示装置等のように透明性が要求される積層部材におけるポリイミド層を形成するものとしてより有利である。また、300℃以上のガラス転移温度(Tg)を有するようになると共に、熱膨張係数は25ppm/K以下、好適には10ppm/K以下にすることができる。そのため、このようなポリイミドをポリイミド層と支持材との両方で使用することで、プロセス中に温度変化を受けても両者の熱膨係数が近いため、反ったり皺が寄ったりすることを防止できる。
【化6】
【0054】
ここで、ポリイミドを一般式(4)又は(5)の構造に係るポリイミドとした場合、そのポリイミド以外に最大20モル%未満の割合で添加されてもよい。その他のポリイミドについては、特に制限されるものではなく、一般的な酸無水物とジアミンを使用することができる。なかでも好ましく使用される酸無水物としては、ピロメリット酸二無水物、3,3',4,4'−ビフェニルテトラカルボン酸ニ無水物、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、2,2'−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物等が挙げられる。一方の、ジアミンとしては、4,4'−ジアミノジフェニルサルフォン、トランス−1,4−ジアミノシクロヘキサン、4,4'−ジアミノシクロヘキシルメタン、2,2'−ビス(4−アミノシクロヘキシル)−ヘキサフルオロプロパン、2,2'−ビス(トリフルオロメチル)−4,4'−ジアミノビシクロヘキサン等が挙げられる。
【0055】
上記第1及び第2の例を含めて、各種ポリイミドは、ポリアミド酸をイミド化して得ることができる。ここで、ポリアミド酸の樹脂溶液は、原料であるジアミンと酸二無水物とを実質的に等モル使用し、有機溶媒中で反応させることによって得るのがよい。より具体的には、窒素気流下にN,N−ジメチルアセトアミドなどの有機極性溶媒にジアミンを溶解させた後、テトラカルボン酸二無水物を加えて、室温で5時間程度反応させることにより得ることができる。塗工時の膜厚均一化と得られるポリイミドフィルムの機械強度の観点から、得られたポリアミド酸の重量平均分子量は1万から30万が好ましい。なお、得られるポリイミド層の好ましい分子量範囲もこのポリアミド酸と同じ分子量範囲である。また、ポリイミド層は、単層で形成されていてもよく、複数層から形成されてもよい。複数層から形成される場合には、少なくとも支持材との界面を形成する層については、上記第1及び第2の例として挙げたようなポリイミドを用いるようにすればよい。
【0056】
次に、本発明のフレキシブルデバイスについて説明する。
本発明のフレキシブルデバイスは、上記フレキシブルデバイス用積層体から、ポリイミド層の傾斜部に対応する部分を切断除去し、更に残った平坦部に対応する部分からと支持材を剥離除去することなどにより得ることができる。傾斜部に対応する部分の切断除去では、傾斜部を含む両端側を切断すればよく、要求される平坦部の幅に応じて、平坦部の一部にかかる部分から切断除去してもよい。
【0057】
次に、本発明のロール状のフレキシブルデバイス用積層体に用いられる積層体(基材積層体)について説明する。
この積層体は、本発明のフレキシブルデバイス用積層体の中間体として有用であり、フレキシブルデバイス用積層体に機能層を設ける前の積層体である。
【0058】
この積層体は、支持材上にポリイミド層を有する積層体であり、ポリイミド層は平坦部と傾斜部を有し、傾斜部はポリイミド層の幅方向の両端部側に、ポリイミド層の厚みが末端に向かって減少するように設けられていること、支持材とポリイミド層の剥離強度が平坦部において0.1N/m〜200N/mである。
【0059】
この積層体は、本発明のロール状のフレキシブルデバイス用積層体から機能層を省いたこと以外は、フレキシブルデバイス用積層体と共通するから、その他の説明は、フレキシブルデバイス用積層体でしたと同様な説明が参照される。すなわち、支持材、ポリイミド層、傾斜部等は、本発明のフレキシブルデバイス用積層体についての説明と同様である。
【0060】
この積層体は、ポリイミド層が少なくとも二列あることがよい。ポリイミド層が少なくとも二列ある積層体を長さ方向に分割することにより、両端部に傾斜部を有するポリイミド層と支持材の積層体が複数同時に得られ、生産性の観点から好ましい。
【0061】
次に、本発明のフレキシブルデバイスの製造方法について、説明する。
本発明のポリイミド層の表面に機能層を有するフレキシブルデバイスの製造方法は、
a)ロール状に巻き取られた長尺の支持材を長手方向に繰り出して、ポリイミド前駆体溶液またはポリイミド溶液を、表面粗さRaが100nm以下の支持材上に塗布した後、熱処理し、平坦部と傾斜部を有するポリイミド層であって、傾斜部はポリイミド層の幅方向の両端部側に、ポリイミド層の厚みが末端に向かって減少するように設けられていること、支持材とポリイミド層の剥離強度が平坦部において0.1〜200N/mであることを満足するポリイミド層と支持材の積層体を得る工程、
b)ポリイミド層平坦部から傾斜部を除去することなく、ポリイミド層の表面に機能層を形成する工程と、
c)表面に機能層を有するポリイミド層の平坦部に対応する部分から、傾斜部に対応する部分の分離、および支持材の除去を行う工程を有する。
【0062】
工程a)で得られるポリイミド層と支持材の積層体は、上記基材積層体に対応する。また、工程b)で得られるポリイミド層の表面に機能層を有する積層体は上記フレキシブルデバイス用の積層体に対応するが、基材積層体及びフレキシブルデバイス用の積層体の製造方法はこれに限定されない。
【0063】
前記工程a)における塗布は、ポリイミド前駆体溶液またはポリイミド溶液を、定量ポンプによりタンクからコーターに供給することにより内圧を高めたコーターから吐出する方法が適する。ポリイミド層に傾斜部を設けるには、ポリイミド前駆体溶液またはポリイミド溶液の粘度を調整して、塗布末端側の液を流下させることや、支持材上に塗布した後、端部側をスクレーパーでかきとる方法が例示される。更に、傾斜部を形成するために、工程a)において、ポリイミド前駆体溶液またはポリイミド溶液を支持材上に二層以上塗布し、その際、少なくとも一層が他の層から幅方向にはみ出るように形成する方法でもよい。また、ポリイミド層を形成したのち、ポリイミド層と支持材の積層体を長手方向に沿って斜めに切断する方法であってもよい。
【0064】
前記工程a)は、支持材の長さ方向に少なくとも二列のポリイミド層を形成することもよく、この場合、工程a)と工程b)の間に、a-2)少なくとも二列のポリイミド層を形成後、このポリイミド層間を長手方向に沿って切断し、少なくとも二条の積層体を得る工程を有することも有利である。
【0065】
ポリイミド層と前記支持材の剥離強度が0.1〜30N/mであることがよい。好ましくは平坦部における剥離強度が上記範囲内であることがよい。また、工程a)において、支持材の端部側が露出したポリイミド層と支持材の積層体を得て、前記工程b)は、機能層をポリイミド層の表面から支持材まで連続的に形成し、かつ、機能層が支持材に固着するよう形成することもよい。また、前記傾斜部が、ポリイミド層の末端からポリイミド層の平坦部の厚みの10倍の距離の範囲において、その平均厚みがポリイミド層の平坦部の厚みの1/2以下であることがよい。
【0066】
前記工程b)の次に、b-2)機能層側の面にデバイスまたはデバイス用部材を装着し、その後、工程c)に付すことが有利である。そして、前記工程c)において、機能層を有するポリイミド層の平坦部から傾斜部に対応する部分を切断分離した後、支持材を除去することが有利である。
【0067】
そして、支持材上にポリイミド層を有した基材積層体を得るには、支持材にポリアミド前駆体溶液またはポリイミド溶液を塗布した後、例えば、150〜160℃程度で加熱処理して樹脂溶液中に含まれる溶剤を除去し、更に高温で加熱処理してポリアミド酸をイミド化させる。イミド化に際して行う加熱処理は、例えば、160℃程度の温度から350℃程度の温度まで連続的又は段階的に昇温を行うようにすればよい。この際、長尺の支持材を用意しておき、これをロール・ツー・ロール方式で搬送しながら、ポリイミド層を形成するポリアミド酸の樹脂溶液を塗布するキャスト法を採用するのが好適である。
【0068】
ポリアミド前駆体溶液またはポリイミド溶液には、必要に応じて離型剤が含まれていてもよい。また、触媒、酸化防止剤、熱安定剤、帯電防止剤、難燃剤、紫外線吸収剤、滑剤等の添加剤が含まれていてもよい
【0069】
支持材については、フレキシブル性を有すると共に、少なくともポリアミド酸溶液を塗布してイミド化させてポリイミド層を形成する際の熱処理に耐え得る耐熱性を備えたものであればよい。具体的には、銅箔やSUS箔などの金属箔、銅張積層体(CCL)などの金属箔−樹脂積層体やポリイミド、ポリイミド前駆体、ポリアミド等の樹脂フィルム等が挙げられる。このうち、上述したように、支持材の表面が第1及び第2の例で挙げたようなポリイミドからなる耐熱性ポリイミド面を有するようにするには、これらのポリイミドを備えた金属箔−ポリイミド積層体のような支持材とするか、あるいはこれらのポリイミドからなるポリイミドフィルムを単独で支持材として用いるようにしてもよい。また、ポリイミド層と支持材との界面での分離を最も容易にするには、ポリイミド層と支持材との界面がいずれも第1及び第2の例で挙げたポリイミドによって形成されるのがよい。
【0070】
また、本発明における支持材については、ポリイミド層と支持材との界面での分離を容易にできる観点から、好ましくは、ポリイミド層と支持材との界面における支持材の表面は、表面粗さRaが100nm以下であるのがよい。更には、支持材が電気導電性を有するか、又は機能層が電気導電性を有すると、ロール・ツー・ロール方式のようにフィルムを繰り出し、それを巻き取る際に発生する静電気による帯電を防止できる利点がある。
【0071】
ポリイミド層の熱膨張係数は特に限定されないが、機能層形成後の応力低減、カールの防止のためには、15×10
-6/K以下であることが好ましい。また、積層体のカールを防止するためには、ポリイミド層、支持材の熱膨張係数の差は小さいことが好ましい。それぞれの厚み、弾性率などによって積層体がフラットとなる熱膨張係数差は異なるが、ポリイミド層と支持材の熱膨張係数の差は10×10
-6/K以下であることが好ましい。
【0072】
ポリイミド層の厚みは特に限定されないが、タッチパネル、液晶表示装置、有機ELディスプレー、有機EL照明、カラーフィルターなどのポリイミド層に透明性が要求される用途に適用するためには、ポリイミド層が80%以上の透過率であること求められ、このためポリイミド層の厚みは10μm以下が好ましく、5μm以下がさらに好ましい。
【0073】
本発明においては、上記で例示したポリイミドを用いるなどすることにより、好適には、ポリイミド層と支持材との界面における接着強度が0.1N/m〜200N/mにすることができて、例えば人の手で容易に剥離することができるようになる。ポリイミド層から基材を除去する際のポリイミド層と支持材の剥離強度の上限は、ポリイミド層の厚み、機能層の種類、剥離方法などにより異なり、特に限定されないが、ロール・ツー・ロール方式で搬送しながら、ポリイミド層から基材の除去を容易とするためには、200N/m以下にすることが好ましい。剥離強度が0.1N/m以下であると搬送中にポリイミド層と基材の界面で剥離が起こり、安定走行が困難となる。
【0074】
また、機能層が無機材料のときは、ポリイミド層から基材を除去する際に発生する応力により、無機材料のクラック、ポリイミド層からの剥離が起こりやすいため、ポリイミド層と支持材の剥離強度は30N/m以下が好ましく、15N/m以下がより好ましく、7.0N/m以下がさらに好ましい。
【0075】
フレキシブルデバイスの薄化、透明性の向上のためにはポリイミド層の厚みは10μm以下が好ましい。しかしながら、ポリイミド層の厚みが10μm以下では、ポリイミド層から基材を除去する際に発生する応力でポリイミド層に皺が発生することがある。さらにポリイミド層の厚みが5μm以下では、基材を除去する際にポリイミド層が破断するといった問題が発生しやすくなる。これらの問題を防止するために好ましいポリイミド層と基材の剥離強度の上限は、ポリイミド層および機能層の種類、厚みによって異なるが、30N/m以下が好ましく、15N/m以下がより好ましく、7.0N/m以下がさらに好ましい。
【0076】
一方、工程b)においては、工程内でのガイドロールとの接触による摩擦や曲率の変化、工程内で使用する各種薬液との接触、工程での急激な温度変化により、ポリイミド層と支持材が、ポリイミド層の端部より剥離することがある。またポリイミド層の厚みが10μm以下となると、ポリイミド層が微小な応力で容易に変形するため、端部で発生するポリイミド層と基材の微小な剥離が工程中にロールの幅方向に拡大しやすいといった問題がある。
【0077】
本発明においては、前述したように、支持材の存在によって基材積層体の厚みが確保されるため、ポリイミド層の厚みを薄くしても機能層を形成する際の機械的強度は維持される。そのため、ポリイミド層の厚みは100μm以下にすることができ、好適には10μm以下、より好適には5μm以下まで薄くすることができる。なお、機能層を備えた積層部材とする上で、絶縁性を担保することなどを考慮すれば、ポリイミド層の厚みの下限は0.1μm、好ましくは1μmにするのが望ましい。
【0078】
一方、支持材の厚みについては、ポリイミド層を含めて基材積層体として必要な厚さを保つことができればよく、任意に設定することができる。すなわち、支持材としての役割や巻取り性等を考慮すれば、例えば10〜200μmの厚みを例示することができるが、特に制限はない。但し、ポリイミド層の方が支持材よりも薄くなるようにするのが望ましい。
【0079】
本発明における積層部材は、液晶表示装置や有機EL表示装置をはじめ、電子ペーパー、タッチパネル等の表示装置又はその構成部品として用いることができるほか、有機EL照明装置で用いたり、ITO等が積層された導電性フィルム、水分や酸素等の浸透を防止するガスバリアフィルム、フレキシブル回路基板の構成部品などの各種機能を有した機能性材料として用いられるものである。すなわち、本発明で言う機能層とは、これら表示装置、照明装置、検出装置、又はその構成部品をはじめ、各種機能性材料を構成するものであって、具体的には、電極層、発光層、ガスバリア層、接着層、粘着層、薄膜トランジスタ、配線層、透明導電層等の1種又は2種以上を組み合わせたようなものを総称するものである。
【0080】
そして、これらの機能層は、金属等を成膜した後、必要に応じて所定の形状にパターニングしたり、熱処理するなど、公知の方法を用いて得ることができる。すなわち、これら機能層を形成するための手段については特に制限されず、例えば、スパッタリング、蒸着、CVD、印刷、露光、浸漬など、適宜選択されたものであり、必要な場合には真空チャンバー内などでこれらのプロセス処理を行うようにしてもよい。
【0081】
支持材を分離して取り除くのは、各種プロセス処理を経て機能層を形成した直後でもよく、ある程度の期間で支持材と一体にしておき、他のデバイスまたはデバイス用部材と貼り合わせた後に分離して取り除くようにしてもよい。デバイスの例としては、液晶表示装置、有機ELディスプレー、有機EL照明、電子ペーパー、タッチパネルが例示される。デバイス用部材としては、ガラス、プラスチック板、フィルム、回路基板、筐体が例示される。本発明でいうフレキシブルデバイスは、これら液晶表示装置等のデバイスを有するものであってもよく、デバイスと接合する機能層だけを有するものものであってもよい。他のデバイス用部材としては、例えば、液晶表示装置、有機ELディスプレーや有機EL照明である場合、機能層としては、ガスバリア層、半導体層、電極層、発光層、フィルター層や保護膜層等の複数の層が考えられるが、これらを複数回に分けて積層する場合の後段の層や、これらに取り付けられる端子や配線や表面板等の部材がある。
【0082】
以下、本発明について、図面を用いながら具体的に説明する。なお、本発明はこれらの内容に制限されるものではない。
【0083】
図1には、ロール・ツー・ロール方式により、支持材上にポリイミド層を積層した積層体(基材積層体)10上に機能層を形成する様子が示されている。このロール・ツー・ロール装置は、送り出し側のロール巻機構14に巻き取られた長尺の支持材とポリイミド層の積層体10が、送出機構12により長手方向に繰り出されて、スパッタ装置等のプロセス処理部11で所定の金属を成膜して機能層が形成され、巻取機構13を介して、巻き取り側のロール巻機構15で巻き取られていく。ここで、プロセス処理に真空環境が必要な場合は、ロール・ツー・ロール装置全体は真空チャンバー内に設置される。
【0084】
また、
図2には、長尺ロール状の支持材とポリイミド層の積層体10が示されている。
この支持材とポリイミド層の積層体10は、
図3の断面図に示されるように、支持材1上にポリアミド酸溶液またはポリイミド溶液を塗布して形成したポリイミド層2を備えたものであり、両端部に徐々にポリイミド層の厚みが減少する傾斜部4を有する。傾斜部4は直線状であっても、曲線状であってもよい。ここで、ポリイミド層の幅方向の末端の厚みが0となり、支持材層が露出することがよいが、露出しなくともよい。
【0085】
図4は、ポリイミド層2の表面に機能層3を設けた構造を示す。機能層3はポリイミド層2より幅が狭いものとなっているが、それを超えて支持材1に達していてもよい。
この傾斜部4を含む部分は、所定幅の製品とするため、ポリイミド層2の表面に機能層3を形成した後は、切断除去される。製品となる部分は、ポリイミド層2の平坦部であって、機能層が積層された部分である。
【0086】
図5は、傾斜部を切断除去した上で、ポリイミド層2と支持材1との界面を利用して支持材1を分離し、取り除いて薄肉化して、製品とする態様を示す。
【0087】
図7は、ポリイミド層が、長さ方向に二列ある支持材1とポリイミド層2の積層体10が示されている。ポリイミド層2が二列あるため、傾斜部を4列有し、これに機能層を全面又は平坦部に積層したのち、傾斜部を切断除去することにより、製品を同時に2条製造することができる。
【0088】
図6は、長尺ロールで傾斜部を除去するためのスリット加工機の模式図を示す。
従来、長尺ロールは所定の幅にスリッター30で所定の幅に切断して、切断された両端部40を除いて、製品又は中間体とされる。
中間体の場合、この長尺ロールは
図1に示すロール・ツー・ロール製造装置に設置されて、所定のプロセス処理がなされる。スリット加工を行った長辺側エッジ部は、ポリイミド層2と支持材1との界面が露出した状態となり、両者の界面で剥離し易い状態となる。また、長尺ロールは巻き取り側のロール巻機構で巻き取られていく際には引張応力が掛かる状態になることから、ポリイミド層2と支持材1との界面がプロセス処理中に剥離する可能性が更に高くなる。そこで、傾斜部を形成した後、スリット加工を行わずにプロセス処理を行う。つまり、支持材1上にポリイミド層2を形成するが、支持材1の端部に傾斜部があるため、剥離が防止され。そして、スリット加工を行わずにプロセス処理を行ってから、スリット加工を行う。
【0089】
支持材とポリイミド層の積層体10上に形成される機能層については、上記のようなものを例示することができる。以下、いくつかの用途について、機能層を得るための具体例を説明する。
【0090】
(透明導電フィルムの製造)
支持材1上にポリイミド層2を備えた長尺のロール状積層体10に透明導電層を積層することで、透明導電フィルムを得ることができる。すなわち、この場合は透明導電層が機能層3に相当する。透明導電フィルムを得るにあたっては、例えば、上記第2の例で示した一般式(4)又は(5)で表される構造単位のどちらか一方を80モル%以上の割合で有するポリイミドからなるポリイミドフィルムを支持材1とし、ポリイミド層2についても同様のポリイミドからポリイミド層の両端に傾斜部を有するように形成されるようにして、ロール状に巻き取られた長尺の基材積層体としての積層体10を用意する。ここで、支持材1のポリイミドフィルムは、上記第1の例で示した構造単位(a)を有するポリイミドであってもよい。
【0091】
この積層体10を
図1に示されたようなロール・ツー・ロール装置にセットする。
図1に示したように、積層体10は、送り出し側のロール巻機構14、送出機構12、巻取機構13、及び巻き取り側のロール巻機構15に保持され、長手方向に繰り出された積層体10のポリイミド層2の表面に対して、プロセス処理部11で蒸着法等の手段によって透明導電層が積層される。その際、透明導電層の積層のために真空環境が必要な場合には、ロール・ツー・ロール装置全体を真空チャンバー内に設置してプロセス処理を行うようにすればよい。
【0092】
ここで、上記一般式(4)又は(5)で表される構造単位のどちらか一方を80モル%以上の割合で有するポリイミドによってポリイミド層2を形成する場合、低熱膨張性でありながら、可視光領域における透過率が高くて透明性に優れる。また、寸法安定性にも優れて、耐熱性が高く、更には、表面平滑性が良好であり、面内方向のリタデーションが小さいといった特徴を有する。しかも、支持材1についても同様のポリイミドからなるポリイミドフィルムを使用することで、キャスト法により形成されたポリイミド層2と支持材1とはある程度の接着力により一体化されて、ロール・ツー・ロール装置にて透明導電層を形成することができ、透明導電層を形成した後には、支持材1とポリイミド層2との界面を利用して容易に分離して薄肉化することができる。
【0093】
ところで、透明導電層としてITOを使用すると、積層体10上に蒸着した時点ではアモルファス状態であって、その抵抗値は高い。例えば、透明導電フィルムをタッチパネルに適用する場合、低抵抗化が必要である。そのため、タッチパネル用の電極パターンにパターニング処理した後には200℃〜300℃程度のアニール処理を施して抵抗値を下げるようにするが、本実施形態のような基材積層体であれば、このようなアニール温度に対して十分な耐熱性を有しており、アニール処理により十分な低抵抗化を図ることができる。
【0094】
上記の工程の際は、ポリイミド層は傾斜部を有したままで処理される。この傾斜部により、端部からの剥離を防止することができる。上記の工程の後にポリイミド層中央部と傾斜部を分離する。この分離は、スリット加工により行ってもよい。
【0095】
また、透明導電フィルムをタッチパネル等に供することを考慮すると、できるだけその厚みは薄い方が良い。例えば、厚み50μmのフィルムを単独でロール・ツー・ロール装置に適用すると、ハンドリングのし難さや搬送過程でのフィルムの伸びが問題になる。ところが、本実施形態のような基材積層体を用いれば、例えばポリイミド層2の平坦部の厚みを10μm以下とすれば、これらの問題を解決しながら、厚みがおよそ10μm以下の透明導電フィルム(透明導電層の厚みは100nm程度)を工業的に生産性良く製造することができる。
【0096】
(ガスバリアフィルムの製造)
例えば、有機EL装置の有機EL発光層に水分や酸素が侵入すると特性劣化を起こすため、水分や酸素の侵入防止するためのガスバリア層が不可欠である。そこで、プロセス処理部11において、例えばCVD法により、酸化珪素、酸化アルミニウム、炭化珪素、酸化炭化珪素、炭化窒化珪素、窒化珪素、窒化酸化珪素等の無機酸化物膜を成膜して機能層とし、それ以外は上記透明導電フィルムの場合と同様にして、薄肉化されたガスバリアフィルムを得ることができる。
【0097】
ところで、無機酸化物膜からなるガスバリア層の熱膨張係数(CTE)と、ポリイミド層2からなるポリイミドフィルムのCTEとの差が大きくなってしまうと、カールが発生してしまうほか、寸法安定性が悪化したり、場合によってはクラックが発生してしまうおそれがある。特に、大面積フィルムを製造した場合には、反りの問題はより顕著になる。ところが、上記一般式(4)又は(5)で表される構造単位のどちらか一方を80モル%以上の割合で有するポリイミドによってポリイミド層2を形成すれば、好適にはCTEを15ppm/K以下にすることができ、一般に10ppm/K以下のCTEを有する無機酸化物膜との差を小さくすることができるため、これらのような不具合発生は解消される。なお、ガスバリア層は上記のような無機膜の1種類から形成されても良く、2種以上を含むようにして形成してもよい。
【0098】
(薄膜トランジスタの製造)
先ず、薄膜トランジスタ(TFT)は、アモルファスシリコンTFT(a-Si TFT)とポリシリコンTFTとに大別され、ポリシリコンTFTでは、プロセス温度の低温化が可能な低温ポリシリコンTFT(LTPS-TFT)が主流となっている。以下では、液晶表示装置のバックプレーン等に利用される薄膜トランジスタ(TFT)を得るにあたり、ボトムゲート構造のa−Si TFTを得る方法を説明する。
【0099】
予め、基材積層体10には、外部からの酸素や水蒸気等の侵入を防止するために、上述したガスバリアフィルムの製造方法と同様の方法でガスバリア層を設けておく。次いで、ゲート電極及び配線を形成するための材料を成膜する。成膜材料としては主にAl系材料が用いられ、スパッタリング等の手段によって積層される。成膜後はホトリソ工程でゲート及び配線のパターンを転写し、エッチング処理によって所定の形状に成形(パターニング)される。
【0100】
次に、ゲート絶縁膜(SiN、SiO
2等)、半導体層(a-Si)が同様にCVD等の方法で成膜され、所定の形状に成形される。以下、同様に成膜工程、ホトリソ工程、エッチング工程等の加工プロセスを繰り返して、ドレイン配線及びソース電極、層間絶縁膜等が形成され、a−Si TFTを得ることができる。なお、上記のようなa−Si TFTを得るには、各種プロセス処理のためのプロセス処理部11をそれぞれ横並びにして、連続して基材積層体10を処理するようにしてもよく、或いは、一旦巻き取られた樹脂フィルムを再度ロール・ツー・ロール方式により繰り出して、プロセス処理をいくつかの工程に分けて行うようにしてもよい。
【0101】
(有機EL表示装置の製造)
例えば、ボトムエミッション構造を有する有機EL表示装置を得るには、先ず、基材積層体10のポリイミド層2側に対して、上述した方法と同様にしてガスバリア層を設けて、水分や酸素の透湿を阻止する構造にする。次に、ガスバリア層の上面には、やはり上述した薄膜トランジスタ(TFT)を含む回路構成層を形成する。この場合、薄膜トランジスタとしてLTPS−TFTが主に選択される。この回路構成層には、その上面にマトリックス状に配置された画素領域のそれぞれに対して、例えばITOの透明導電膜からなるアノード電極を形成して構成する。更に、アノード電極の上面には有機EL発光層を形成し、この発光層の上面にはカソード電極を形成する。このカソード電極は各画素領域に共通に形成される。そして、このカソード電極の面を被うようにして、再度ガスバリア層を形成し、更に最表面には、表面保護のため封止基板を設置する。この封止基板のカソード電極側の面にも水分や酸素の透湿を阻止するガスバリア層を積層しておくのが望ましい。
【0102】
このように、有機EL表示装置では、上記順序で基材積層体としての積層体10のポリイミド層2に対して、各種薄膜を成膜し、最後に封止基板で封止するのが一般的である。なお、有機EL発光層は、正孔注入層−正孔輸送層−発光層−電子輸送層等の多層膜(アノード電極−発光層−カソード電極)で形成されるが、特に、有機EL発光層は水分や酸素により劣化するため真空蒸着で形成され、電極形成も含めて真空中で連続形成されるのが一般的である。
【0103】
(有機EL照明装置の製造)
有機EL照明を得るにあたり、その機能層については、上述した有機EL表示装置におけるTFT層を除いたボトムエミッション構造が一般的である。ここで、アノード電極は一般にITO等の透明電極が用いられ、電極抵抗は高温処理をするほど低抵抗となる。上記でも述べたように、ITOの場合、200〜300℃程度の熱処理が一般的である。なお、有機EL照明は大形化の方向にあり、ITO電極では抵抗値が不十分になりつつあり、様々な代替電極材料が探索されている。その場合、アニール処理の温度が200〜300℃よりも更に高温になる可能性が高いが、上記のようなポリイミドを用いた基材積層体であれば十分な耐熱性を有するため、様々な代替電極材料にも対応することができる。
【0104】
(その他機能層の製造)
上記の例以外にも、例えば、電子ペーパーやタッチパネル等を得るために必要な各種機能層を基材積層体上に形成し、その後にポリイミド層2と支持材1との界面を利用して支持材1を分離して取り除き、薄肉化した積層部材とすれば、従来の物よりも薄型、軽量化を図ることができる。
【実施例】
【0105】
以下、実施例に基づいて、本発明について説明する。
先ず、ポリイミドを合成する際の原料モノマーや溶媒の略語、及び実施例中の各種物性の測定方法とその条件について以下に示す。
【0106】
・DMAc:N,N−ジメチルアセトアミド
・PDA:1,4−フェニレンジアミン
・TFMB:2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4'−ジアミノビフェニル
・BPDA:3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物
・6FDA:2,2'−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物
・PMDA:ピロメリット酸二無水物
【0107】
・表面粗さ(Ra)
ブルカー社製の原子間力顕微鏡(AFM)「Multi Mode8」を用いて表面観察をタッピングモードで行った。10μm角の視野観察を4回行い、それらの平均値を求めた。表面粗さ(Ra)は、算術平均粗さ(JIS B0601-1991)を表す。
【0108】
・剥離強度
東洋精機製作所社製ストログラフR−1を用いて、基材積層体を幅10mmの短冊状に切断したサンプルの支持材とポリイミド層とにおける界面について、T字剥離試験法によるピール強度を測定することにより評価した。
【0109】
・透過率(%)
基材積層体を構成するポリイミド層からなるポリイミドフィルム(50mm×50mm)について、U4000形分光光度計を使って440nmから780nmにおける光透過率の平均値を求めた。
【0110】
・ガラス転移温度(Tg)
粘弾性アナライザ(レオメトリックサイエンスエフィー株式会社製RSA−II)を使って、10mm幅のサンプルを用いて、1Hzの振動を与えながら、室温から400℃まで10℃/分の速度で昇温した際の、損失正接(Tanδ)の極大から求めた。
【0111】
・熱膨張係数(CTE)
3mm×15mmのサンプルを切り出し、熱機械分析(TMA)装置にて5.0gの荷重を加えながら一定の昇温速度(20℃/min)で30℃から260℃の温度範囲で引張り試験を行い、温度に対するサンプルの伸び量から熱膨張係数(×10
-6/K)を測定した。
【0112】
・端面剥離試験
支持材とポリイミド層の積層体のポリイミド層の長手方向に沿った端面に25mm幅の粘着テープを圧着させた後、粘着テープを引き剥がし、支持材とポリイミド層端面の剥離の有無を目視で観察した。評価は次のとおり。
剥離なし:○
剥離あり:×
【0113】
・支持材除去
支持材を剥離除去する際の評価は次のとおり。
極めて容易:A
容易:B
可能;C
破断;D
【0114】
合成例1
窒素気流下で、300Lのタンクの中で攪拌しながらPDA8.00kgを溶剤DMAcに溶解させた。次いで、この溶液BPDA22.00kgを加えた。その後、溶液を室温で5時間攪拌を続けて重合反応を行い、一昼夜保持した。粘稠なポリアミド酸溶液が得られ、高重合度のポリアミド酸Aが生成されていることが確認された。
【0115】
合成例2
窒素気流下で、300Lのタンクの中で攪拌しながらTFMB12.08kgを溶剤DMAcに溶解させた。次いで、この溶液にPMDA6.20kgと6FDA4.21kgを加えた。その後、溶液を室温で5時間攪拌を続けて重合反応を行い、一昼夜保持した。粘稠なポリアミド酸溶液が得られ、高重合度のポリアミド酸Bが生成されていることが確認された。
【0116】
実施例1
厚み18μm幅510mmの長尺状の電解銅箔上に、合成例1で得たポリアミド酸Aの樹脂溶液を506mm幅で塗布した後、130℃で加熱乾燥し溶剤を除去した。次に、130℃から180℃まで約0.5℃/分の昇温速度で熱処理し、厚み10μmのポリイミド(表面粗さRa=1.0nm)を有する銅張積層板(熱膨張係数17.5ppm/K)を得て、支持材とした。
【0117】
得られた銅張積層板のポリイミド面に対して、合成例2で得たポリアミド酸Bの樹脂溶液を、タンクからギアポンプを用いてダイコーターに定量供給し、硬化後のポリイミド層が厚み10μm、幅500mmとなるように塗布した後、130℃で加熱乾燥し、樹脂溶液中の溶剤を除去した。次に、180℃から360℃まで約0.5℃/分の昇温速度で熱処理することでポリアミド酸をイミド化させて、基材積層体を得た。このときポリイミド層の両端部に傾斜部が形成され、ポリイミド層端部から100μmの範囲の左右の平均厚みは、それぞれ2.7μm、2.8μmであった。また傾斜部の幅は260μmであった。この基材積層体について端面剥離試験を実施した結果、剥離はなかった。
【0118】
上記で得られた基材積層体について、傾斜部を分離することなく、
図1に示したロール・ツー・ロール装置を模した試験機に装着し、ロール状に巻き取られた積層体を長手方向に繰り出し、搬送ロールを経由して真空チャンバー内に設置されたプロセス処理部に導入させて、該プロセス処理部でポリイミド層上にスパッタリング法により厚さ100nmのITOを連続処理により成膜した。次いで、所定の長さに切り出した上で、250℃でアニール処理を施してITO膜を結晶化させて、基材積層体のポリイミド層上にITOを有するロール状の積層体を得た。ITOはポリイミド層表面から支持材表面まで連続して形成され、支持材に密着していることをSEMにより確認した。
【0119】
上記で得られた基材積層体のポリイミド層上にITOを有するロール状の積層体について、傾斜部を含む両端側をスリッターで切断分離した後、ITO側を粘着剤付きの厚さ125μmのPETフィルムと貼り合せてから、支持材を引き剥がすようにして取り除き、厚さ10μmのポリイミド層とITOからなる透明導電層とPETフィルムの積層体を得た。支持材とポリイミド層との界面での剥離強度は14N/mであり、容易に剥離できた。また、支持材と傾斜部の剥離強度は33N/mであった。
【0120】
実施例2
支持材として厚さ25μm幅520mmの長尺状のポリイミドフィルム(ユーピレックスS、宇部興産株式会社製:表面粗さRa=10nm、Tg=359℃、熱膨張係数12.5ppm/K)を使用し、この上に合成例2で得たポリアミド酸Bの樹脂溶液を、タンクからギアポンプを用いて第一のダイコーターに定量供給し、支持材の進行方向に向かって右半分に硬化後のポリイミド層が厚み5μm、幅250mmとなるように塗布した後、支持材の左半分に第二のダイコーターで同様に塗工し、130℃で加熱乾燥し、樹脂溶液中の溶剤を除去した。次に、180℃から360℃まで約5℃/分の昇温速度で熱処理することでポリアミド酸をイミド化させて、支持材上に隙間が10mmある二列のポリイミド層を有する長尺状のポリイミドフィルムとポリイミド層からなる基材積層体を得た。このときポリイミド層のそれぞれの列の両側の端部に傾斜部が形成され、ポリイミド層端部から50μmの範囲の平均厚みはそれぞれ1.2μm、1.3μm、0.9μm、0.8μmであった。この基材積層体を幅方向の中心線で半裁した後、二列のポリイミド層のそれぞれについて端面剥離試験を実施した結果、剥離はなかった。
【0121】
上記で得られた基材積層体について、実施例1と同様にして、ポリイミド層上にITOを有するロール状の積層体を得た。ITOはポリイミド層表面から支持材表面まで連続して形成され、支持材に密着していることをSEMにより確認した。
【0122】
上記で得られた支持材とポリイミド層上にITOを有するロール状の積層体について、傾斜部を分離した後、ITO側を粘着剤付きの厚さ125μmのPETフィルムと貼り合せ、続いて、支持材を分離して取り除き、厚さ5μmのポリイミド層とITOからなる透明導電層とPETフィルムの積層体を得た。支持材とポリイミド層との界面での剥離強度は7N/mであり、極めて容易に剥離できた。
【0123】
実施例3
支持材として厚さ25μm幅510mmの長尺状のポリイミドフィルム(カプトンH、東レ・デュポン株式会社製:表面粗さRa=33nm、Tg=428℃、熱膨張係数28.5ppm/K)を使用し、この上に合成例2で得たポリアミド酸Bの樹脂溶液を、タンクからギアポンプを用いてダイコーターに定量供給し、硬化後のポリイミド層が厚み5μm、幅500mmとなるように塗布した後、130℃で加熱乾燥し、樹脂溶液中の溶剤を除去した。次に、180℃から360℃まで約5℃/分の昇温速度で熱処理することでポリアミド酸をイミド化させて、ポリイミド層と支持材からなる基材積層体を得た。このときポリイミド層の両端部に傾斜部が形成され、ポリイミド層端部から50μmの範囲の平均厚みは2.2μm、2.0μmであった。この支持材とポリイミド層の積層体について、端面剥離試験を実施した結果、剥離はなかった。
【0124】
得られた基材積層体ついて、傾斜部を分離した後、支持材であるポリイミドフィルムとポリイミド層との界面で、支持材を分離して取り除き、厚さ5μmのポリイミド層を得た。その際の剥離強度は33N/mであり、剥離は可能であったが、剥離時の応力によりポリイミド層に皺が発生することがあった。
【0125】
製造例1
支持材とポリイミド層上にITOを有するロール状の積層体について、傾斜部を分離せずに、ITO側を粘着剤付きの厚さ125μmのPETフィルムと貼り合せ、続いて支持材を分離したこと以外は実施例1と同様にした。この支持材の分離の際に、ポリイミド層端部でポリイミド層の破断が発生した。
【0126】
製造例2
実施例1で得られたポリイミド層の両端部に傾斜部が形成されたポリイミド層と支持材からなる基材積層体を、スリッターを用いて両端部の傾斜部を分離した。この傾斜部を分離したポリイミド層と支持材の積層体に対し、端面剥離試験を実施した結果、剥離がみられた。
【0127】
製造例3
実施例3のポリイミド層と支持材からなる基材積層体を幅方向の中心線で半裁し、ポリイミド層の片側のみに傾斜部を有する支持材とポリイミド層の積層体を得た。この積層体について、端面剥離試験を実施した結果、傾斜部のないポリイミド層の端面で剥離がみられた。また、この積層体から支持材を除去する際に、ポリイミド層の片側の傾斜部でポリイミド層の破断が発生した。
【0128】
【表1】