(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ベンゾオキサジン樹脂、及び式(1):
【化1】
(式中、Xは、炭化水素環から2個の水素原子を除いて得られる2価の基、又は式(2):
【化2】
(式中、Yは、C1〜6のアルキレン基、酸素原子(−O−)又は式:−S(O)
m−(式中、mは0、1又は2を示す。)で示される基である。)で表される2価の基であり、
R
1は同一又は異なって、C1〜18のアルキル基、C2〜9のアルケニル基、シクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基であり、これらの基は、一部の炭素原子が、酸素原子及び窒素原子からなる群より選ばれる少なくとも1種の原子で置換されていてもよく、
R
2は同一又は異なって、C1〜18のアルキレン基であり、この基は、ケイ素原子に直接結合した炭素原子を除く一部の炭素原子が、酸素原子及び窒素原子からなる群より選ばれる少なくとも1種の原子で置換されていてもよく、
R
3は同一又は異なって、C1〜18のアルキル基、C2〜9のアルケニル基、シクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基であり、これらの基は、一部の炭素原子が、酸素原子及び窒素原子からなる群より選ばれる少なくとも1種の原子で置換されていてもよく、
nは同一又は異なって、0〜3の整数である。)
で表される化合物を含有し、
前記ベンゾオキサジン樹脂が、式(5):
【化3】
(式中、R
4は、C1〜6のアルキレン基、酸素原子(−O−)、−CO−、式:−S(O)
p−(式中、pは0、1又は2を示す。)で示される基、式(7):
【化4】
で示される基、又は式(8):
【化5】
で示される基であり、R
5は、置換基を有していてもよいアリール基である。)
で表される化合物及び/又はその開環重合体、或いは、式(6):
【化6】
(式中、R
6は、C1〜6のアルキレン基、酸素原子(−O−)、−CO−、式:−S(O)
q−(式中、qは0、1又は2を示す。)で示される基、又は式(9):
【化7】
で示される基であり、R
7は、水素原子、又は置換基を有していてもよいC1〜6のアルキル基である。)
で表される化合物及び/又はその開環重合体である、
ベンゾオキサジン樹脂組成物。
前記請求項1に記載のベンゾオキサジン樹脂組成物、又はその硬化物が用いられている半導体封止体、液状封止材、ポッティング材、シール材、プリント基板材料又は複合材料。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1及び2に記載のベンゾオキサジン樹脂は優れた特性を有しているものの、耐熱性、誘電特性、及び金属に対する接着性においては未だ不十分である。
【0008】
本発明は、耐熱性、誘電特性、及び金属に対する接着性に優れたベンゾオキサジン樹脂組成物、その製造方法、及び該組成物の用途を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題を解決するべく鋭意研究を行った結果、ベンゾオキサジン樹脂及び所定のケイ素原子を含有する化合物を含むベンゾオキサジン樹脂組成物が、上記の課題を解決できることを見出した。この知見に基づいてさらに研究を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明は、ベンゾオキサジン樹脂及び下記に示すケイ素原子を含有する化合物を含むベンゾオキサジン樹脂組成物、その製造方法、及びその用途に関するものである。
【0011】
項1 ベンゾオキサジン樹脂、及び式(1):
【0012】
【化1】
【0013】
(式中、Xは、炭化水素環から2個の水素原子を除いて得られる2価の基、又は式(2):
【0014】
【化2】
【0015】
(式中、Yは、結合手、C1〜6のアルキレン基、酸素原子(−O−)又は式:−S(O)
m−(式中、mは0、1又は2を示す。)で示される基である。)で表される2価の基であり、
R
1は同一又は異なって、C1〜18のアルキル基、C2〜9のアルケニル基、シクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基であり、これらの基は、一部の炭素原子が、酸素原子及び窒素原子からなる群より選ばれる少なくとも1種の原子で置換されていてもよく、
R
2は同一又は異なって、C1〜18のアルキレン基であり、この基は、ケイ素原子に直接結合した炭素原子を除く一部の炭素原子が、酸素原子及び窒素原子からなる群より選ばれる少なくとも1種の原子で置換されていてもよく、
R
3は同一又は異なって、C1〜18のアルキル基、C2〜9のアルケニル基、シクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基であり、これらの基は、一部の炭素原子が、酸素原子及び窒素原子からなる群より選ばれる少なくとも1種の原子で置換されていてもよく、
nは同一又は異なって、0〜3の整数である。)
で表される化合物(エポキシ樹脂)を含有するベンゾオキサジン樹脂組成物。
【0016】
項2 前記ベンゾオキサジン樹脂が、式(5):
【0017】
【化3】
【0018】
(式中、R
4は、C1〜6のアルキレン基、酸素原子(−O−)、−CO−、式:−S(O)
p−(式中、pは0、1又は2を示す。)で示される基、式(7):
【0019】
【化4】
【0020】
で示される基、又は式(8):
【0021】
【化5】
【0022】
で示される基であり、R
5は、置換基を有していてもよいアリール基である。)
で表される化合物及び/又はその開環重合体、或いは、式(6):
【0023】
【化6】
【0024】
(式中、R
6は、C1〜6のアルキレン基、酸素原子(−O−)、−CO−、式:−S(O)
q−(式中、qは0、1又は2を示す。)で示される基、又は式(9):
【0025】
【化7】
【0026】
で示される基であり、R
7は、水素原子、又は置換基を有していてもよいC1〜6のアルキル基である。)
で表される化合物及び/又はその開環重合体である項1に記載のベンゾオキサジン樹脂組成物。
【0027】
項3 前記項1に記載のベンゾオキサジン樹脂組成物の製造方法であって、前記ベンゾオキサジン樹脂及び前記式(1)で表される化合物を混合する工程を含む、製造方法。
【0028】
項4 前記項1又は2に記載の
ベンゾオキサジン樹脂組成物を硬化した物。
【0029】
項5 前記項1又は2に記載のベンゾオキサジン樹脂組成物、又はその硬化物(前記項4に記載のベンゾオキサジン樹脂組成物を硬化した物)が用いられている半導体封止体、液状封止材、ポッティング材、シール材、プリント基板材料又は複合材料。
【0030】
項6 半導体封止体、液状封止材、ポッティング材、シール材、プリント基板材料又は複合材料の用途に用いられる前記項1又は2に記載のベンゾオキサジン樹脂組成物。
【0031】
項7 半導体封止体、液状封止材、ポッティング材、シール材、プリント基板材料又は複合材料を製造するための前記項1又は2に記載のベンゾオキサジン樹脂組成物の使用。
【発明の効果】
【0032】
本発明のベンゾオキサジン樹脂組成物は、その硬化物が優れた耐熱性、誘電特性(低誘電率及び低誘電正接)、及び金属に対する高い接着強度を有している。そのため、本発明のベンゾオキサジン樹脂組成物は、例えば、半導体封止体、液状封止材、ポッティング材、シール材、プリント基板材料、複合材料等の用途に好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本明細書において、ある成分を「を含む」又は「を含有する」という表現には、当該成分を含みさらに他の成分を含んでいてもよい意味のほか、当該成分のみを含む意味の「のみからなる」、及び当該成分を必須として含む意味の「から必須としてなる」の概念も包含される。
【0035】
本発明のベンゾオキサジン樹脂組成物は、ベンゾオキサジン樹脂及び式(1)で表される化合物を含有することを特徴とする。
【0036】
本発明のベンゾオキサジン樹脂組成物は、ベンゾオキサジン樹脂を含有する。ベンゾオキサジン樹脂とは、分子内にベンゾオキサジン環を有する化合物(以下「ベンゾオキサジン化合物」とも表記する。)及び/又はその開環重合体であれば特に限定されない。反応性と架橋密度の観点から、該化合物は、1分子内に2個以上のベンゾオキサジン環を有することが好ましい。
【0037】
ベンゾオキサジン化合物としては、例えば、式(5):
【0039】
(式中、R
4は、C1〜6のアルキレン基、酸素原子(−O−)、−CO−、式:−S(O)
p−(式中、pは0、1又は2を示す。)で示される基、式(7):
【0043】
で示される基であり、R
5は、置換基を有していてもよいアリール基である。)
で表される化合物、或いは、式(6):
【0045】
(式中、R
6は、C1〜6のアルキレン基、酸素原子(−O−)、−CO−、式:−S(O)
q−(式中、qは0、1又は2を示す。)で示される基、又は式(9):
【0047】
で示される基であり、R
7は、水素原子、又は置換基を有していてもよいC1〜6のアルキル基である。)
で表される化合物等が挙げられる。
【0048】
式(5)において、R
4で示されるC1〜6のアルキレン基は、直鎖又は分岐鎖状のアルキレン基であり、例えば、メチレン基、メチルメチレン基、エチルメチレン基、ジメチルメチレン基、ジエチルメチレン基、ジメチレン基(−CH
2CH
2−)、トリメチレン基(−CH
2CH
2CH
2−)、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基等が挙げられる。好ましくは、メチレン基、ジメチルメチレン基等のC1〜3のアルキレン基である。
【0049】
R
5で示される置換基を有していてもよいアリール基のアリール基としては、単環、二環又は三環のアリール基が挙げられ、例えば、フェニル基、トルイル基、キシリル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基等が挙げられ、好ましくはフェニル基である。アリール基の置換基としては、例えば、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基等のC1〜4のアルキル基等)、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基等のC1〜4のアルコキシ基等)、アルケニル基(例えば、ビニル基、アリル基、クロチル基等のC2〜6のアルケニル基等)等が挙げられる。該アリール基は、1〜3個の該置換基を有していてもよい。
【0050】
pは0、1又は2であり、好ましくは0又は2である。
【0051】
式(5)において、R
4がメチレン基、ジメチルメチレン基、酸素原子、−S−で示される基、式(7)で示される基、又は式(8)で示される基であり、R
5がフェニル基であるものが好ましい。
【0052】
式(6)において、R
6で示されるC1〜6のアルキレン基は、直鎖又は分岐鎖状のアルキレン基であり、例えば、メチレン基、メチルメチレン基、エチルメチレン基、ジメチルメチレン基、ジエチルメチレン基、ジメチレン基(−CH
2CH
2−)、トリメチレン基(−CH
2CH
2CH
2−)、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、等が挙げられる。好ましくは、メチレン基、ジメチルメチレン基等のC1〜3のアルキレン基である。
【0053】
qは0、1又は2であり、好ましくは0又は2である。
【0054】
R
7で示される置換基を有していてもよいC1〜6のアルキル基のC1〜6のアルキル基としては、直鎖又は分岐鎖状のアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基等が挙げられる。好ましくは、メチル基、エチル基、イソプロピル基、又はtert−ブチル基等のC1〜4アルキル基である。C1〜6のアルキル基の置換基としては、例えば、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基等のC1〜4のアルコキシ基等)、アルケニル基(例えば、ビニル基、アリル基、クロチル基等のC2〜6のアルケニル基等)、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等)等が挙げられる。該C1〜6のアルキル基は、1〜3個の該置換基を有していてもよい。
【0055】
式(6)において、R
6がメチレン基、ジメチルメチレン基、又は酸素原子であり、R
7が水素原子であるものが好ましい。
【0056】
上記式(5)及び式(6)で表される化合物は、公知の方法、例えば、特許文献1及び2、特開2010−254895号公報、国際公開第2012/057298号パンフレット等の記載に基づいて又は準じて製造することができる。
【0057】
上記式(5)で表される化合物は、一般に、ビスフェノール化合物とアミン化合物との反応によって製造することができ、その典型例として、ビスフェノールA型ベンゾオキサジン化合物、ビスフェノールF型ベンゾオキサジン化合物、チオジフェノール型ベンゾオキサジン化合物、フェノールフタレイン型ベンゾオキサジン化合物、ジシクロペンタジエン型ベンゾオキサジン化合物等が挙げられる。
【0058】
上記式(6)で表される化合物は、一般に、フェニルジアミン化合物とフェノール化合物との反応によって製造することができ、その典型例としてジアミノジフェニルメタン型ベンゾオキサジン化合物等が挙げられる。
【0059】
本発明で用いるベンゾオキサジン樹脂としては、入手性の観点から、上記のベンゾオキサジン化合物及び/又はその開環重合体であることが好ましい。即ち、ビスフェノールA型ベンゾオキサジン化合物、ビスフェノールF型ベンゾオキサジン化合物、チオジフェノール型ベンゾオキサジン化合物、フェノールフタレイン型ベンゾオキサジン化合物、ジシクロペンタジエン型ベンゾオキサジン化合物を好適に用いることができる。
【0060】
本発明で用いるベンゾオキサジン樹脂組成物は、式(1)で表される化合物(エポキシ樹脂)を含有する。式(1)において、R
1は同一又は異なって、C1〜18のアルキル基、C2〜9のアルケニル基、シクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基であり、これらの基は、一部の炭素原子が、酸素原子及び窒素原子からなる群より選ばれる少なくとも1種の原子で置換されていてもよい。当該一部の炭素原子は、ケイ素原子に直接結合していない炭素原子であることが好ましい。
【0061】
R
1で示されるC1〜18のアルキル基としては、直鎖又は分岐鎖状のアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、2,2,4−トリメチルペンチル基、n−オクチル基、イソオクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ドデシル基等が挙げられる。好ましくはC1〜10のアルキル基であり、より好ましくはC1〜6のアルキル基であり、さらに好ましくはC1〜3のアルキル基であり、特に好ましくはメチル基である。
【0062】
R
1で示されるC2〜9のアルケニル基としては、直鎖又は分岐鎖状のアルケニル基であり、例えば、ビニル基、アリル基、2−プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基等が挙げられる。好ましくはC2〜4のアルケニル基である。
【0063】
R
1で示されるシクロアルキル基としては、3〜8員環のシクロアルキル基が挙げられ、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、メチルシクロヘキシル基等が挙げられる。
【0064】
R
1で示されるアリール基としては、単環又は二環のアリール基が挙げられ、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、エチルフェニル基、ナフチル基等が挙げられる。中でも、フェニル基が好ましい。
【0065】
R
1で示されるアラルキル基としては、アリール基(特にフェニル基)で置換されたC1〜4アルキル基が挙げられ、例えば、ベンジル基、α−フェネチル基、β−フェネチル基、β−メチルフェネチル基等が挙げられる。
【0066】
R
1として、好ましくはC1〜3のアルキル基であり、より好ましくはメチル基である。
【0067】
式(1)において、R
3は同一又は異なって、C1〜18のアルキル基、C2〜9のアルケニル基、シクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基であり、これらの基は、一部の炭素原子が、酸素原子及び窒素原子からなる群より選ばれる少なくとも1種の原子で置換されていてもよい。R
3がオキシラン環と直接結合する場合、当該一部の炭素原子は、オキシラン環に直接結合していない炭素原子であることが好ましい。
【0068】
R
3で示されるC1〜18のアルキル基、C2〜9のアルケニル基、シクロアルキル基、アリール基及びアラルキル基はそれぞれ、上記R
1で示される対応する置換基と同様のものが挙げられる。
【0069】
R
3として、好ましくはC1〜3のアルキル基であり、より好ましくはメチル基である。
【0070】
式(1)において、nは同一又は異なって、0〜3の整数である。好ましくは、0又は1であり、より好ましくは0である。
【0071】
式(1)において、R
2は同一又は異なって、C1〜18のアルキレン基であり、直鎖又は分岐鎖状のアルキレン基であり、例えば、メチレン基、メチルメチレン基、エチルメチレン基、ジメチルメチレン基、ジエチルメチレン基、ジメチレン基(−CH
2CH
2−)、トリメチレン基(−CH
2CH
2CH
2−)、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基、ノナメチレン基、デカメチレン基、ウンデカメチレン基、ドデカメチレン基、トリデカメチレン基等が挙げられる。好ましくはC2〜10のアルキレン基であり、より好ましくはC2〜4のアルキレン基であり、さらに好ましくはC2又は3のアルキレン基(特にジメチレン基又はトリメチレン基)であり、特に好ましくはC2のアルキレン基(特にジメチレン基)である。
【0072】
このC1〜18のアルキレン基は、ケイ素原子に直接結合した炭素原子を除く一部の炭素原子が、酸素原子及び窒素原子からなる群より選ばれる少なくとも1種の原子で置換されていてもよい。当該一部の炭素原子は、R
2がオキシラン環と直接結合する場合、オキシラン環に直接結合していない炭素原子であることが好ましい。
【0073】
式(1)において、Xで示される炭化水素環から2個の水素原子を除いて得られる2価の基の「炭化水素環」としては、単環若しくは多環(特に2又は3環)の脂肪族炭化水素環又は単環若しくは多環の芳香族炭化水素環が挙げられる。例えば、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、テトラリン環、デカヒドロナフタレン環、1,2,3,4,5,6,7,8−オクタヒドロナフタレン環、ノルボルネン環、アダマンタン環、ベンゼン環、トルエン環、キシレン環、ナフタレン環、フェナントレン環、アントラセン環、ピレン環、トリフェニレン環等が挙げられる。好ましくはシクロヘキサン環、ベンゼン環である。Xで示される2価の基として、好ましくはシクロヘキサン−1,4−ジイル基、1,4−フェニレン基が挙げられ、より好ましくは1,4−フェニレン基である。
【0074】
式(2)において、Yで示されるC1〜6のアルキレン基としては、鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基であり、例えば、メチレン基、メチルメチレン基、エチルメチレン基、ジメチルメチレン基、ジエチルメチレン基、ジメチレン基(−CH
2CH
2−)、トリメチレン基(−CH
2CH
2CH
2−)等が挙げられる。
【0075】
式(2)において、mは0、1又は2であり、好ましくは0又は2である。
Yは好ましくは、結合手、酸素原子、メチレン基、ジメチルメチレン基、−S−、−SO
2−であり、より好ましくは、結合手、ジメチルメチレン基、酸素原子、−SO
2−である。
【0076】
式(2)で表される2価の基のうち好ましくは、式(2a):
【0078】
(式中、Yは前記に同じ。)
で表される基である。
【0079】
式(2a)において、Yが結合手、ジメチルメチレン基、酸素原子、−SO
2−であるものが好ましい。
【0080】
上記式(1)で表されるエポキシ樹脂のうち好ましくは、式(1a):
【0082】
(式中、各記号は前記に同じ。)
で表される化合物である。
【0083】
式(1a)において、R
1がいずれもC1〜3アルキル基(特にメチル基)であり、nが共に0であり、R
2が共にジメチレン基であり、Xが1,4−フェニレン基であるものが好ましい。
【0084】
式(1)で表されるエポキシ樹脂(式(1a)で表されるエポキシ樹脂を包含する)は、公知の方法、例えば、特開2012−1668号公報、及び英国特許第123960号公報等の記載に基づいて又は準じて製造することができる。具体例の1つとして、次の反応式により製造することができる。
【0086】
(式中、R
2Aは、C1〜18のアルキリデン基又はC2〜18のアルケニル基であり、他の記号は前記に同じ。)
R
2Aで示されるC1〜18のアルキリデン基としては、直鎖又は分岐鎖状のアルキリデン基であり、例えば、メチリデン基、プロピリデン基、イソプロピリデン基、ブチリデン基、イソブチリデン基、sec−ブチリデン基、ペンチリデン基、イソペンチリデン基、オクチリデン基、イソオクチリデン基等が挙げられる。好ましくはC1〜10のアルキリデン基であり、より好ましくはC1〜4のアルキリデン基であり、さらに好ましくはC1〜3のアルキリデン基であり、特に好ましくはメチリデン基又はエチリデン基である。
【0087】
R
2Aで示されるC2〜18のアルケニル基としては、直鎖又は分岐鎖状のアルケニル基であり、例えば、ビニル基、アリル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノルボルネニル基、シクロヘキセニル基等が挙げられる。好ましくはC2〜10のアルケニル基であり、より好ましくはC2〜4のアルケニル基であり、さらに好ましくはC2又は3のアルケニル基であり、特に好ましくはビニル基又はアリル基である。
【0088】
式(3)で表される化合物と式(4)で表される化合物をヒドロシリル化反応させて製造することができる。ヒドロシリル化反応は、通常、触媒の存在下、溶媒の存在下又は非存在下で実施することができる。
【0089】
ヒドロシリル化反応に用いられる触媒は、公知の触媒でよく、例えば、白金カーボン、塩化白金酸、白金のオレフィン錯体、白金のアルケニルシロキサン錯体、白金のカルボニル錯体等の白金系触媒;トリス(トリフェニルフォスフィン)ロジウム等のロジウム系触媒;ビス(シクロオクタジエニル)ジクロロイリジウム等のイリジウム系触媒が挙げられる。上記の触媒は溶媒和物(例えば、水和物、アルコール和物等)の形態であってもよく、また使用にあたり触媒をアルコール(例えば、エタノール等)に溶解して溶液の形態で用いることもできる。
【0090】
触媒の使用量は、触媒としての有効量でよく特に限定されないが、通常、上記式(3)で表される化合物と式(4)で表される化合物の合計量100質量部に対して 0.00001〜20質量部、好ましくは0.0005〜5質量部である。
【0091】
前記ヒドロシリル化反応は溶媒を用いなくても進行するが、溶媒を用いることにより穏和な条件で反応を行うことができる。溶媒としては、例えば、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素溶媒;ヘキサン、オクタンなどの脂肪族炭化水素溶媒;テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル系溶媒;エタノール、イソプロパノールなどのアルコール系溶媒などが挙げられ、これらは単独であるいは2種以上組み合わせてもよい。
【0092】
式(4)で表される化合物の使用量は、式(3)で表される化合物中のSi−H基1モルに対して、通常、0.5〜2モル、好ましくは0.6〜1.5モル、さらに好ましくは0.8〜1.2モルである。
【0093】
反応温度は20℃〜150℃、好ましくは50℃〜120℃であり、反応時間は1時間〜24時間程度である。
【0094】
反応終了後、反応液から溶媒を留去するなどして、式(1)で表される化合物を得ることができる。
【0095】
式(1)で表される化合物の配合量は、ベンゾオキサジン樹脂100質量部に対して、通常、5〜500質量部、好ましくは10〜200質量部、より好ましくは15〜150質量部、特に好ましくは20〜100質量部である。
【0096】
本発明のベンゾオキサジン樹脂組成物は、必要に応じて、ベンゾオキサジン樹脂及び式(1)で表される化合物以外のその他の樹脂を含有してもよい。上記その他の樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル、ビニルエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ポリウレタン、ケイ素樹脂、ポリイミド、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリスチレン、メタクリル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、フッ素樹脂、ポリアミド、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、液晶性ポリマー等が挙げられる。
【0097】
本発明のベンゾオキサジン樹脂組成物は、更に硬化促進剤を含有していてもよい。これにより、硬化物の耐熱性、金属への接着性、耐薬品性等を更に向上させることができる。硬化促進剤としては、特に限定されないが、例えば、アミン系硬化促進剤、グアニジン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤、ホスホニウム系硬化促進剤、金属系硬化促進剤等が挙げられる。これらは1種又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0098】
前記硬化促進剤の配合量は特に限定されないが、硬化物の耐熱性、金属への接着性等がより優れたベンゾオキサジン樹脂組成物が得られることから、ベンゾオキサジン樹脂及び式(1)で表される化合物の合計量100質量部に対して、好ましくは0.1〜5.0質量部であり、より好ましくは0.5〜2質量部である。
【0099】
本発明のベンゾオキサジン樹脂組成物は、本発明の目的や効果を損なわない範囲で、必要に応じて添加剤を含有してもよい。前記添加剤としては、例えば、無機フィラー、繊維状強化剤、エラストマー成分、酸化防止剤、無機蛍光体、滑剤、紫外線吸収剤、熱光安定剤、分散剤、帯電防止剤、重合禁止剤、消泡剤、硬化促進剤、溶剤、老化防止剤、ラジカル禁止剤、接着性改良剤、難燃剤、界面活性剤、保存安定性改良剤、オゾン老化防止剤、増粘剤、可塑剤、放射線遮断剤、核剤、カップリング剤、導電性付与剤、リン系過酸化物分解剤、顔料、金属不活性化剤、物性調整剤等が挙げられる。
【0100】
本発明のベンゾオキサジン樹脂組成物は、ベンゾオキサジン樹脂、及び式(1)で表される化合物、さらに必要に応じて他の成分を混合することにより製造することができる。混合方法は、均一に混合できる方法であれば特に限定はない。
【0101】
本発明のベンゾオキサジン樹脂組成物を硬化することにより硬化物を得ることができる。硬化の方法は、特に限定されず、例えば、該組成物を加熱硬化することで実施できる。また、ベンゾオキサジン樹脂組成物を溶剤(例えば、トルエン、アセトン等)に溶解させてワニスを調製し、該ワニスを基材(例えば、銅箔、アルミ箔、ポリイミドフィルム等)上に塗布し加熱することによりフィルム状の硬化物を得ることができる。また、該ワニスを、繊維状強化剤(ガラス繊維、カーボン線維等)の基材に含浸させて乾燥したプリプレグを、加熱加圧してシート状の硬化物にすることもできる。硬化温度は、通常120〜250℃であり、硬化時間は、通常1〜12時間である。
【0102】
本発明のベンゾオキサジン樹脂組成物は、硬化後の硬化物が優れた耐熱性及び接着性を有することから、例えば、半導体封止体、液状封止材、ポッティング材、シール材、プリント基板材料、複合材料等の用途に好適に用いることができる。また、本発明には、当該ベンゾオキサジン樹脂組成物又はその硬化物が用いられた半導体封止体、液状封止材、ポッティング材、シール材、プリント基板材料、及び複合材も包含される。
【実施例】
【0103】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されない。
【0104】
製造例1(式(1)で表されるケイ素含有化合物の製造)
攪拌機、温度計及び冷却器を備え付けた500mL容の四つ口フラスコに、窒素雰囲気下で、ビニルシクロヘキセンオキシド25g、ヘキサクロロ白金酸六水和物の2wt%エタノール溶液0.25g、トルエン250gを仕込み、70℃まで昇温させた後、1,4−ビス(ジメチルシリル)ベンゼン20gをゆっくりと滴下し、その後、90℃で4時間攪拌した。トルエンを濃縮後、微黄色液体(ケイ素含有化合物:1,4−ジ[2−(3,4−エポキシシクロヘキシルエチル)ジメチルシリル]ベンゼン)42gを取得した。
【0105】
実施例1〜4、比較例1〜2
表1に記載した配合量の各成分を均一に加温混合し、その後、充分に脱気することでベンゾオキサジン樹脂組成物を調製した。
【0106】
表1中の各成分は以下の通りである。
・ベンゾオキサジン樹脂:フェノール−ジアミノジフェニルメタン型(P−d型)ベンゾオキサジン樹脂(四国化成(株)製)
・ビスフェノールA型エポキシ樹脂:JER828(三菱化学(株)製)
【0107】
(1)アルミニウムAに対する引張せん断接着強度
実施例1〜4及び比較例1〜2で得られた各ベンゾオキサジン樹脂組成物を、接着部が12.5×25mmの長方形になるようにアルミニウムA:アルミニウム板(JIS H4000、A1050P)(サイズ2×25×100mm)に塗布し、もう一枚のアルミニウム板を貼り合わせ、180℃で2時間、200℃で3時間加熱して硬化させ、引張せん断接着試験片とした。
【0108】
得られた接着試験片について、引張試験機(AGS−X、島津製作所(株)製)を用いて、つかみ具間距離100mm、試験速度5mm/minの条件で引張せん断接着試験を行い、最大破断強度の測定値と接着面積から、引張せん断接着強度を算出した。
【0109】
(2)アルミニウムBに対する引張せん断接着強度
実施例1〜4及び比較例1〜2で得られた各ベンゾオキサジン樹脂組成物を、接着部が12.5×25mmの長方形になるようにアルミニウムB:アルミニウム板(JIS H4000、A5052P)(サイズ2×25×100mm)に塗布し、もう一枚のアルミニウム板を貼り合わせ、180℃で2時間、200℃で3時間加熱して硬化させ、引張せん断接着試験片とした。
【0110】
得られた接着試験片について、引張試験機(AGS−X、島津製作所(株)製)を用いて、つかみ具間距離100mm、試験速度5mm/minの条件で引張せん断接着試験を行い、最大破断強度の測定値と接着面積から、引張せん断接着強度を算出した。
【0111】
(3)銅に対する引張せん断接着強度
実施例1〜4及び比較例1〜2で得られた各ベンゾオキサジン樹脂組成物を、接着部が12.5×25mmの長方形になるように無酸素銅板(JIS H3100、1020P)(サイズ2×25×100mm)に塗布し、もう一枚の無酸素銅板を貼り合わせ、180℃で2時間、200℃で3時間加熱して硬化させ、引張せん断接着試験片とした。
【0112】
得られた接着試験片について、引張試験機(AGS−X、島津製作所(株)製)を用いて、つかみ具間距離100mm、試験速度5mm/minの条件で引張せん断接着試験を行い、最大破断強度の測定値と接着面積から、引張せん断接着強度を算出した。
【0113】
(4)電気特性(誘電特性)
実施例1〜4及び比較例1〜2で得られた各ベンゾオキサジン樹脂組成物を樹脂製モールド(厚さ2mm)に流し込み、100℃で1時間、120℃で2時間、150℃で2時間加熱して硬化させ、誘電率測定用試験片とした。
【0114】
得られた試験片について、誘電率測定装置(インピーダンスアナライザー、アジレント(株)製)を用いて、PTFEで校正した後、比誘電率(1GHz)及び誘電正接(1GHz)を測定した。その結果を表1に示す。
【0115】
(5)ガラス転移温度
実施例1〜4及び比較例1〜2で得られた各ベンゾオキサジン樹脂組成物を樹脂製モールドに流し込み、180℃で2時間、200℃で3時間加熱して硬化させ、ガラス転移温度測定用試験片としたとした。
【0116】
得られた試験片について、熱機械分析装置(SSC5200、エスアイアイ・ナノテクノロジー社製、SSC5200)を用いて、圧縮モード、荷重50mN、5℃/minで、ガラス転移温度を測定した。
【0117】
【表1】
【0118】
実施例1〜4に記載の式(1)で表されるケイ素含有化合物を含むベンゾオキサジン樹脂組成物は、金属に対する優れた接着性及び高耐熱性を有している。さらに、低誘電率、低誘電正接であり優れた誘電特性を有している。
【0119】
一方で、ベンゾオキサジン樹脂のみの場合(比較例1)は、接着強度及び耐熱性に劣っている。また、ケイ素含有化合物に代えて、ビスフェノールA型エポキシ樹脂を含むベンゾオキサジン樹脂組成物(比較例2)は、接着強度及び電気特性の点で劣っている。